ペプチド、タンパク質医薬の経口製剤化
著者 森下 真莉子
雑誌名 星薬科大学紀要
号 46
ページ 1‑10
発行年 2004
URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000113/
Proc. Hoshi Univ, No.46,2004
総 説
ペプチド、タンパク質医薬の経ロ製剤化
森 下 真莉子
星薬科大学 薬剤学教室
The strategies of oral peptidelprotein drugs delivery systems
Mariko MORISHITA
Depαr meη彦0ブPんαrmαceμτjCS, HOSれ仇iuer8吻
1.はじめに
ゲノムに刻まれた生命現象の最後の産物であり、生命 が織りなすあらゆる現象を演出するのはタンパク質であ る。ポストゲノムで特に注目されるのは、このタンパク 質のダイナミックスを解析するプロテオームの研究であ る。プロテオームの研究成果は、ごく近い将来、新規薬 物となり得るペプチド、タンパク性シーズを生み出すこ とになろう。その創薬が現実となったとき、デリバリー に代表される創剤の貢献なくしてその実用化は困難をき たすはずである。特に、それらの薬物をコンプライアン スの高い経口経路からデリバリーできることは、最も望 ましい結果であり、それを可能とするためのさらなるデ リバリー知識および技術の集積が今、ぜひとも必要であ ると考えられる。
これまでに著者は代表的なペプチド薬物であるインス リンを、ポストゲノムに誕生するタンパク質医薬のプレ カーサー的な薬物と位置付けて、経口吸収率をあげるこ とを主目的に様々な製剤学的アプローチを試みてき たP 4)。本総説では特に、スマートハイドロゲルpoly
(methacrylic acid)grafted with poly(ethylene glycol)
(以下P(MAA−g−EG)と略)を用いた、インスリンの理 想的経口送達の成功例について述べる。このスマートハ イドロゲルはこれまでの著者の研究から①優れた薬物放 出制御能力、②タンパク分解酵素阻害作用、③粘膜付着 性作用の全てを有する薬物送達キャリアであることが明 らかにされ、ペプチド・タンパク薬物の経粘膜吸収には 極めて有用であると考えられている。
一方、これまでにペプチド、タンパク薬物、あるいは 経ロデリバリーに利用できるキャリア自身の生体膜透過 機構、特に消化管に関する研究は十分であるとは言い難 く、生体の本来有する複雑な吸収障壁の詳細な機能を明 らかにするまでには至っていない。こうした背景から、
消化管粘膜透過障壁としての粘液/グライコカリックス 層の薬物送達キャリアに対する寄与についても触れ、こ
れらの知見を通して、より高いバイオアベイラビリティ を持つペプチド、タンパク質医薬の経口製剤化について 考察したい。
2.スマートハイドロゲルの基本的物性
P(MAA−g−EG)の構造式とその機能を模式的に表し たものを図1に示す。P(MAA−g−EG)は、 tetraethylene glycol dimethacrylateを架橋剤としてmethacrylic acid
(MAA)とmethoxy−terminated poly(ethylene glycol)
monomethacrylateとをフリーラジカル連鎖重合させて
5 o胡αc〃
PMAA network
pH
→
仰ρθr5㌘α〃ξη ¢5劾ε
図1.Reversible Interpolymer Complexation Decomplexation of P(MAA−g−EG)Smart Hydrogels
PMAA network CH3 CH3 i l
−−
CH2−C−CH2−C−.・・
1 「
C=O C=O
l l
O O H H
l 砂〆 09ぴbθ嬬胡9
1 1
−一・−
CH2CH20−CH2CH20−…
PEG graft
図2.Interpolymer Complexation in P(MAA−g−EG)Smart
Hydrogels
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18 816
喜ll
ξ1:
oE呂皇︸山
64 2
03
4
5pH
6
7 8
図3.Equilibrium swelling ratio fbr P(MAA・g−EG)samples containing di丘brent ra七ios of IVLAA!EG and PEG graft chains of molecular weight 1000 swollen in buf丘red so−
lutions(1=0.110 M NaCl)at 37°C plotted as a f廿nction of pH(mean±SD,η=3). Molar ratio of]WVEG:4:1
(○),2:1(●),1:2(□),1:1(■).
ぷ峯ω§壱£=︸山
18 §16 三14
…1・
竃10
8
6
4
2 03 4 5
pH
6 7
8図4.Equilibrium swelling ratio Ibr P(MAA−g−EG)samples
containing PEG graft chains of different molecular
weight in a MAA/EG ratio of 1:1swollen in buf民red so−lutions(1=0.110 M NaCl)at 37°C plotted as a f㎞nction of pH(mean±SD,炉3). MW 200(口), MW 400(●),
MW 1000(○).
合成した鋤。このグラフト共重合体は、フィルム状、
ディスク状、あるいはナノサイズの粉末状8)に自由に成 型することが可能である。
P(MAA−g−EG)は分子内複合体を形成することによ り、環境下のわずかなpHの変化にも速やかに応答した 膨潤挙動を示す5) 8)。図2に示すように酸性条件下では、
バックボーンチェインであるpoly methacrylic acid
(PMAA)のカルボン酸のプロトンとグラフトチェイン poly(ethylene glycol)(PEG)のエーテル基との間での 水素結合により、分子内で安定な高分子複合体が形成さ れ、高分子が高度に収縮する。この状態では、高分子ネッ
トワークのメッシュサイズが非常に小さくなるため、取 り込まれた薬物の有効拡散面積が減少することになり、
薬物は容易に拡散することが出来ない。また、中性から 塩基性では、高分子複合体はイオン化して解離し、高度 に膨潤したハイドロゲルが形成される。この状態におい ては、取り込まれた薬物は高分子ネットワークから容易 に放出される。この膨潤収縮の変換は環境下のpHある いはイオン強度の変化に応じて非常に速やかにおこる。
ここで、高分子を構成するMAAとEGのモル比はどの ようにハイドロゲルの膨潤収縮に関係してくるのであろ うか?図3に、MAAとEG(分子量1000)のモル比の異 なるP(MAA−g−EG)の平衡膨潤比率をpHに対してプロッ トしたものを示す。pH 5から6を境に最大15倍程度ま で速やかに膨潤し、EGのMAAに対する比が多いほど高 度に膨潤することが示されている。特にMAA/EGのモ ル比1:1のP(MAA−g−EG)は酸性下で最も高度に収縮 し、中性で最大に膨潤することが明らかである。これは、
高分子内でのPEGの比率が多くなるほどcross−linking がルーズになるために高分子が膨潤しやすくなることに
よる9}。また、グラフトチェインPEGの分子量の影響を 検討した結果を図4に示した。]㎜Gのモル比1:1 のP(MAA−g−EG)を用いて、 PEGの分子量を200、400 あるいは1000として、その平衡膨潤比率を比較した結 果、分子量1000を用いた場合にP(MAA−g−EG)のpHに 対する応答性が最も良好であることが明らかとなった。
これは、膨潤の駆動力になるバックボーンチェインのグ ラフト間のイオン化領域がこの試料で最大になるためと 考えられる。なお、この高分子のメッシュサイズは最大 に膨潤した場合、収縮時のほぼ3倍となり約210Aになる ことが報告されている㌧
3.スマートハイドロゲルの薬物の封入/放出挙動 次に実際に、P(MAA−g−EG)を利用したペプチド、
タンパク薬物経口製剤化の可能性を検討した。これには、
グラフトチェインPEGの分子量としてpH応答性がもっ とも良好な1000を選択し、比較のためにMAA/EGのモ ル比が異なる3種類を試料として用いた。各粒子のサイ ズは100−150μmとした。
3−1.インスリン
まず始めにインスリンのスマートハイドロゲルへの親 和性について検討を行った。この実験では、pH7.4に調 整したインスリン溶液に各種高分子試料を添加して、経 時的にインスリン濃度をHPLCで測定し,溶液中残存量 から取り込み率を算出した。図5Aに示すようにインス リンはいずれの高分子試料にも添加1時聞以内にその70
%以上が取り込まれ、P(MAA−g−EG)に対して高い親 和性を持っていることが認められた。特に、PEGをグ
ラフトすることによって,取り込み量およびその速度も
増加し、モル比1:1の試料では高分子添加30分以内に
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、。。1
50
冨盲﹂o合8日ま
0
0
12
OO =︵鴎邑
125
10①
75 50 25 0
0 2 4 6 8
図5.Insulin Incorporation(A)and Release(B)Profiles
100
X 75 8
:50 了
Σ
、 25 邑
0
乃ε1∫ψ〃 ゴ
0 30 60 90 120 150 180
Time(min)
図6.Calcitonin Release Profiles
XOヨ×︵8Σ︑Σ︶
125 100
75 50 25
0肋ε2〃〃刀μ 〃
0 30 60 90 120 150 180
Time(min)
ほぼ100%のインスリン分子がP(MAA−g−EG)に分配す ることが明らかになった。
次に、インスリン含有試料からのインスリン放出挙動 を図5Bに示す。放出試験は、インスリンをスマートハ イドロゲルに含有させた後に、これを減圧乾燥後、打錠 した試料について、日本薬局方溶出試験法第2法パドル 法に準じて行った。PMAA単独のハイドロゲルからは,
第1液中(pH1.2)でインスリンの放出が徐々におこり、
2時間後には約50%のインスリンが放出されることがわ かる。一方、PEGの含有率が高くなるほど、第1液中で のインスリンの放出が抑制され、特にモル比1:1の試 料では約10%の放出にとどまった。また、いずれの高 分子も第2液中(pH6.8)ではインスリンをすみやかに 放出し、インスリン放出制御性が極めて良好なことが示 された。なお、この放出液をラットに皮下注(0.3 1U/kg)した結果、同投与量の標準品に比較して、血中 インスリン濃度一時間曲線下面積および血糖低下作用の 低下は認められず、このことから製剤調製過程での生物 活性の損失はないものと考えられる。
3−2.カルシトニン
図6は、アミノ酸32個、分子量約3400のペプチド、カ ルシトニンについてスマートハイドロゲルからの放出挙 動を検討し、それをインスリンと比較した結果を示して いる。インスリンが示したようなハイドロゲルに対する 高い親和性はカルシトニンにも認められたが、図6から 明らかなように、放出挙動については第1液中での漏出 がインスリンのそれより高いことが認められた。
3−3.インターフエロンβ
アミノ酸166個、分子量約23,000のインターフェロン βについてもスマートハイドロゲルへの封入/放出挙動 を検討した。タンパク薬物であるインターフェロンβに ついてもインスリン、カルシトニンと同様に、高い親和 性が認められたものの、第1液中での漏出はカルシトニ ンと同様に大きいことが示唆された。また、第2液にお けるインターフェロン放出量はインスリンに比べて著し
く低く、インターフェロンのもつ糖鎖とスマートハイド ロゲルのPEG鎖が相互作用している可能性が示唆され
ている。
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00 1
75
50
25
(=︒自壱田●5胃﹂昆﹂︒︒自国
0
加θウεro〃β
FD−20 FD−10
Each value represents the me組±S.1).(n=34).
図7.Drug Incorporation Efficiency
3−4.薬物封入効率
数種の薬物についてスマートハイドロゲルへの封入効 率を比較し、分子量の小さい順に比較した結果を図7に 示した。親水性高分子のデキストラン(nuorescein
isothiocyanate−labeled dextran with MW of 4.4(FD−
4),10(FD−10),20(FD−20))については、スマートハ イドロゲルへの親和性は著しく低く、10%以下にとど まった。一方、ペプチド薬物のインスリンでは平均約90
%、カルシトニンでは約50%という高い封入率が得ら れており、分子量が比較的近いカルシトニンとFD−4を 比較してもその差は大きく、このスマートハイドロゲル がペプチドに対して親和性が特異的に高いことが明らか である。さらに、インターフェロンβの封入率も高く、
タンパク薬物に対するハイドロゲルの応用性も、ペプチ ド薬物のそれと比較して遜色ないものと考えられる。
以上の仇励roにおける検討結果から、このハイドロ
ゲルは胃内での放出を回避し、腸管内で高濃度に放出さ せることが望ましい薬物にとっては、有用性の高い薬物 送達キャリアに成りうるものと考えられる。特にペプチ ド薬物であるインスリンに対してはその生物活性を失う ことなくほぼ完全にハイドロゲル内に取り込むこと、お よびその分配率の高さから含有量を自由に調節できるメ リットを有する優れた製剤素材であると考えられる。
4.ペプチド、タンパク薬物封入スマートハイドロゲ ルの薬理効果
4−1.消化管吸収性
それでは、実際にペプチド、タンパク薬物はスマート ハイドロゲルをキャリアとして、経口的に吸収されるこ とが出来るのであろうか?これを碓認するために、まず インスリン、カルシトニン、インターフェロンβがスマー
トハイドロゲルをキャリアとして小腸から実際に吸収さ れるかどうかを η8 μloop実験により碓認した。イン スリン封入スマートハイドロゲル(ILP)、カルシトニ ン封入スマートハイドロゲル(CLP)およびインターフェ ロンβ封入スマートハイドロゲル(INLP)をラット回 腸部に直接投与した時の結果をそれぞれ図8、9および 10に示す。ILPについては、3種類の粒子サイズ(SS−
ILP:<43μm、 S−ILP:43−89μmおよびL−ILP:180−230 μm)に製し、インスリン粘膜吸収性について検討した 結果、インスリンはスマートハイドロゲルより速やかに 放出されて吸収され、血糖値を著しく低下させることが 認められた10)。回腸粘膜からのインスリン吸収率は、
スマートハイドロゲルの粒子サイズが小さい程高く、最 も小さいサイズのSS−ILPでは、皮下投与時に比較して 約13%のバイオアベイラビリティとなった。同様に、
⊇(日︑∋e■●c二=2三偏ε゜・句=
600
㎜
400
300
200
100
0 0
Plasma insulin level
60 120
Time(min)
180 240
=日三盲ボご●﹀皇●吻8三︒.唱8■
200
150
100
50
0 0
Plasma glucose level
60 120
Time(min)
(○)lnsulin PBS so】ution(contro1);(▲)L−ILP;(■)S−ILP;(●)SS−ILP
180 240
図8.Ileal Absorption of Insulin伽m ILP
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§ 膏
ξ100 言 芭
ヱ
ヨ75 召 麦 : ;
50
0 60 120 180
Time(min)
図9.Ileal Absorption of Calcitonin f沁m ILP
240
図9に示すように、カルシトニンの回腸粘膜吸収性も良 好で、SS−CLPより速やかに吸収され、血中カルシウム 濃度を著しく低下させた。インターフェロンβの腸管吸 収性については図10に示すように、コントロールであ るインターフェロン溶液の投与に比べ、INLPの投与で は明らかな血中濃度の上昇が認められ、スマートハイド ロゲルのインターフェロン粘膜吸収性の改善作用が示唆 された。また、INLPは投与量依存的にインターフェロ ンの吸収を増大させることも明らかとなっている。
4−2.経ロ投与実験
これらの結果を踏まえて、1型糖尿病モデルであるス トレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを用いて、経口投与 によるインスリン吸収実験を行った 1)。具体的には、SS−
ILPあるいはL−ILPをそれぞれゼラチンカプセルに充填 し、48時間絶食したラットに経ロゾンデで無麻酔下固 定板法によりインスリンとして251U/kg投与した。その 結果、図11に示すように、経口投与において、水溶液 を投与したコントロール群に比べて、強い血糖低下作用
が認められ、その作用は8時間以上にわたって持続した。
また、」η8 ωloop実験で認められたように、粒子サイ ズが重要な因子であり、小さい程、血糖低下作用が強い ことが明らかとなった。この製剤の皮下投与に対する薬 理学的利用率は、101U/kg経口投与時で平均約10%と算 出され、本製剤の病態モデルでの有効性が確認された。
さらに、SS−ILPはその有効性が2型糖尿病モデルラット においてもすでに碓認されている。
しかしながら、実際の臨床の場では、一日数回の繰り 返し投与が必要である。インスリンの場合も、摂食後の 血糖上昇の回避と基礎インスリン分泌を補うための頻回 投与が余儀なくされている。絶食下、単回経口投与で薬 理効果が認められたとしても、より臨床的である摂食下 の繰り返し投与によっても、インスリン封入スマートハ イドロゲルは果たして充分に血糖値を制御できるのであ ろうか?これを検証するために1型糖尿病ラットにおけ る一日3回、SS−ILP、251U/kgの連続投与実験を行っ た12)。その結果、図12に示すようにSS−ILPは食後高血 糖を完全には抑制できなかったものの摂食下という条件 においてもSS−ILP投与群の血糖値は、コントロールに 比べて有意に低く抑えられ、ほぼ投与前値を維持するこ
とが出来た。さらに、2型糖尿病モデルラットにおける 連続投与実験でも同様の効果がすでに碓認されており、
SS−ILPは経口投与で良好な血糖コントロールを可能と する優れたインスリン製剤となり得るものと考えられる。
5.スマートハイドロゲルの薬物吸収改善機構 ペプチド薬物に対し優れた封入および放出制御能力を 持つスマートハイドロゲルをキャリアにした場合、確か に仇ujuoでペプチド薬物が有する臨床効果を発現でき ることが明らかとなったのであるが、ペプチド薬物自身
50 ω 30 20 10 0
ゴ ξ⊇ごΦ︾Φこ5﹂雀£庄6∈詔=
INLP 2.25 x 1061U kg
0 60 120 180 240 300 360
Time(min)
ゴ50 ξ
340 喜
豊30 匡
芒20 き
§1°
ξo
0 60 120 180 240 300 360
Time(min)
Each value represe耐s the mean宝S.E.
図10.Ileal Absorption of lnterfbronβ丘om INLP
(n=3−8).
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宕140
三ξ12・
三1・・
ヱ
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言 60
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4
Time(hr)
6 8
図11.Oral Absorption of Insulin fをom ILP in Type l Diabe七ic
Rats
0 0 0 0 0
祐♪ 08 6 4 2 0
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1 1 1 1 1
(玉る=︒ま︶τ>2嵩8三bω言o田
P L
O▲1﹂
S S
6 12 牛 十
SS−ILP ⑨S−ILP
Time(hr)
18 24
図12.SS−II.P Multiple Oral Administration to Type l Dia−
betic Rats
loo
90 言
ξ8°
ξ・・
ご60
.ぎ50
・§
…40
.…、。言 三 20
10
ρ<{D.01
0
55,1LP CO〃〃0
図13.Insulin Protection Ability of Smart Hydrogels fトom
Pepsinic Degradation
100 e,。
.昌
660 壱
840 呂
Σ20
0
Dμ04e〃μ加 」4瑚μ泡 ㌃<0.05
〃ε〃卿
図14.Mucoadhesion of ILP at Various Intestinal Sites
P
は腸管から吸収されないため、これらハイドロゲルの特 質のみが腸管吸収性を増大させるとは考えにくい。した がって、スマートハイドロゲルによるペプチド薬物の吸 収改善機構を明らかにするために、まず酸性条件下での 薬物放出制御能力が、直接インスリンの胃内での分解を 保護しているか否かについて検討を行い、その結果を図 13に示した。この検討では、ラットより抽出した胃液 にSS−ILPを添加し、37℃、1時間インキュベーション 行った後、SS−ILPに残存するインスリン量を、スマー
トハイドロゲル非存在下のコントロールと比較した。一 方、スマートハイドロゲル自身にはペプシンによるイン スリン分解を抑制する作用が無いことがすでに碓認され ている。これらの結果から、スマートハイドロゲルは酸 性中で高度に収縮する機能だけで、インスリンを酵素分 解から保護していることが明らかである。さらに、この スマートハイドロゲルは図14に示すように、粒子サイ ズに依存した粘膜付着性も持っている。したがって、胃 内ではインスリンはスマートハイドロゲルの収縮機能に より充分に酵素分解から保護され、ハイドロゲル粒子の
胃排出後は、消化管粘膜上の付着部位で高濃度に放出さ れ、そこでの酵素分解を免れた分子のみが吸収されたと いう可能性が考えられる。確かにこれは消化管粘膜の integrityを維持したままペプチド/タンパク質医薬の 粘膜吸収率を受動的に上げる最良の方法でもある。しか しながら、消化管のインスリン分子に対する厳しい環境 を考えれば、たとえ無傷のインスリンが大量に小腸で放 出されたとしても、SS−ILPが示したような強い血糖低
ド作用が発現することは考えにくい。
近年、poly(acrylic acid)誘導体であるcarbopol 934Pやpolycarbophilはトリプシンのようなカルシウム 依存型酵素の活性を阻害することが報告されているB汕。
この.
酵素阻害作用は高分子の濃度依存的カルシウム吸着 能力に直接比例することが、LueBenらによって明らか にされている131。このことから本研究でもスマートハイ
ドロゲルのカルシウム吸着能力をpoly(acrylic acids)の
それと比較検討した9 。この結果を表1に示す。このハ
イドロゲル:P(MAA−g−EG)のカルシウムの吸着能力
はpoly(acrylic acids)の約13程度ではあるものの、
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表1Calcium bound to swollen polymer in MES/KOH b過br,
pH 6.7(mean±SD, n=3)
Polymer PEG gra chain MAA:EG Bound Ca2+
molecロ1ar in bydr㎎el mg C82+ノg po」ymer
weight
表2Membrane electrical resistance(Rm), fbllowing applica−
tion of PBS(control), SS−ILP and NA2EDTA into the
ileal Segment
C934P PCP
P(MAA−g−EG)
P(MAA・g−EG)
P(MAA・g−EG)
P(MAA・g−EG)
P(MAA−g−EG)
P(MAA・g・EG)
1000 1000 1000 1000 400 200
1:1
2:1
4:1
1:2
1:1
1:1
167.5圭i6.2
Preparation
Rm[Ω・cm 2]
5min 30min
170.1±4.6
66.1±3.3 75.5±6.1 86.1±5.4
Control SS−ILP
Na2EDTA
42.7±5.0
402土4,3 *
24.6±5.242.3土2.9 36。1土2.0
*
25.4土2.955.5±2.3 62.1±3.9
5L5土3.4
Data:mean±SD(n=3−4)
*ρ〈0.05against control
OO =︵8
120 100 80 60
ミ、。 :
)
200
0 20
∬一πP加Pβ∫
∬』LPカ2功ε枷ぴ血㎡ノ7〃∫4
Time(mm)
40 60
図15.Profiles of Insulin Release f沁m SS−ILP in the Intesti−
nal Fluid
確かに存在し、トリプシン阻害作用も示した。また直接 的な証明として、腸液中での酵素阻害作用についても検 討した結果を図15に示した。この結果から、腸液中で は、SS−ILPから放出されたインスリンは徐々に分解さ れるものの、最初のburst的放出時には、酵素非存在下 での放出量に匹敵するインスリンが放出されることが明 らかである。これらの結果から、スマートハイドロゲル には胃内でのインスリン分解保護作用、小腸での粘膜付 着性作用と同時に膵酵素阻害作用があり、これらのこと が相乗効果としてインスリンの小腸吸収に有利に働いた
ものと考えられる。
6.スマートハイドロゲルの消化管粘膜傷害作用 一方、消化管粘膜適用製剤として、毒性および刺激性 がないことは必須条件である。スマートハイドロゲル:
P(MAA−g−EG)にはカルシウム吸着作用および強い吸 水能力があることから、腸吸収上皮細胞の細胞間の密着 接合部tight junctionに作用することも予測されるため、
ハイドロゲル適用時の膜抵抗値(TEER)の経時的変化 について検討を行った °)。その結果、表2に示すように ハイドロゲルを直接小腸回腸部に5あるいは30分間適用 しても、TEERにはほとんど変化が無く、このことから、
tight junctionへのスマートハイドロゲルの影響はほと んど無いものと考えられた。さらに、スマートハイドロ ゲルの粘膜傷害性の検討を腸管適用後の粘膜からの乳酸 脱水素酵素(LDH)の漏出から検討した結果、スマート ハイドロゲルによってLDHの漏出はほとんど惹起され なかった。この結果はカプリン酸ナトリウムやグリココー ル酸がLDHを著しく漏出しているのとは対照的であり、
スマートハイドロゲルは細胞傷害性を持たない安全性の 高い薬物送達キャリアであると考えられる。
7.消化管粘液/グライコカリックス層の薬物送達キャ リアに対する寄与
一般に、腸管上皮細胞のmicrovilli上に存在する粘液
/グライコカリックス層は非撹拝水層を形成し、特に脂 溶性薬物の腸管粘膜吸収における拡散障壁となると考え られているが、ペプチド、タンパク薬物をはじめとする 高分子薬物、さらに薬物送達キャリアへの直接的な影響 についてはこれまでに未だ明らかにされていない。近年 の薬物送達システムの開発においては、種々のデリバリー キャリア、すなわち、リボソーム、マイクロスフェア、
ナノスフェアなどが経ロキャリアとして開発研究されて いる。その中には、積極的に腸管粘膜への付着性や分子 認識能を付与したキャリアも多数報告されている。一方、
こういう付着性キャリアの設計に関し、本来付着するべ き粘液/グライコカリックス層との直接的な相互作用を 仇びε〃oで検討した例は報告されていない。グライコカ
リックスは、glycoprotein、 glycolipid、ムコ多糖類のh
yaluronan、 proteoglycanなど、細胞由来の複合糖質で
構成されており、50−100nmの厚みで上皮細胞を覆って
いる。この構成成分の一つであるビアルロナンを特異的
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100
80 § 言
・
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160 口
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﹄
β司40 20
∬・皿Pσ01耽紗
+石馳∫μ o〃 吻∫e
∬」」圧Pθ01㎝㎏戊
0 0
0 1 2 3 Time(hr)
図16.Effbct of Mucous!Glycocalyx Layers Reduction on Insulin Absorption症om SS−ILP
4
に分解する酵素として、ビアルロニダーゼが知られてい るが、筆者はこのビアルロニダーゼを粘液/グライコカ リックス層の修飾基剤のツールとして用いる方法を考案 し、この手法を用いて粘膜付着性キャリアの挙動が粘液
/グライコカリックス層にどのように影響をされている のか検討を行った15)。図16Aはこのスマートハイドロゲ ルの粘膜付着性をコンロトール群とビアルロニダーゼ処 理群とで比較した結果を示している。ビアルロニダーゼ 処理群、すなわち粘液/グライコカリックス層が減少し ている粘膜ではこのキャリアの付着性は著しく低下する ことが明らかとなった。一方、図16Bに示すように、イ ンスリン吸収性について仇sj九で比較検討したところ、
粘液/グライコカリックス層の減少がインスリン吸収を 強く促進することが明らかであった。このことは、ペプ チド薬物については、粘膜付着性よりも、酵素阻害作用 の方が吸収には強く影響することを示唆するものと考え
られる。
8.おわりに
薬物を毎日繰り返し必要とする患者の利便性、ひいて はコンプライアンスの向上を考える時、注射以外の製剤 が望ましいことは言うまでもない。このような背景のも と、経粘膜ペプチド・タンパク薬物送達システム製剤の 開発は、常に精力的に研究されてきたものの、なかなか 研究の域をぬけず実用化が見えてこなかった。しかしな がら、ここ数年の間にいくつかの画期的な非侵襲的製剤 が臨床治験段階に入り、臨床応用が現実のものとなって きた。現在、インスリン経口製剤でも5社が臨床治験を 展開中である。米国・ニューヨークのEmisphere Tech nologiesは、自社開発したDelivery agent(sodium N−[8一
(2−hydroxybenzoyD amino】caprylate:SNAC)を用い て、経ロカルシトニン、インスリン、ヒト副甲状腺ホル モンおよびヒト成長ホルモン製剤の開発を展開し、この 分野でトップを走っている。彼らの開発した技術は、分 子量300−400程度の両親媒性の低分子をタンパク・ペプ チド薬物と共存させ、消化管粘膜を受動拡散によって透 過させようとするコンセプトに基づく 6L 7)。この技術は、
本論文で紹介したスマートポリマーと同様に、従来検討 されてきたような方法、すなわち、タンパク質に化学的 修飾を施す、あるいは生体膜の構造変化を伴う吸収促進 技術などを用いることなく、高分子の薬物を吸収させる ことができる安全性の高い方法である。このような優れ た薬物送達方法の利用と、それに加えて、消化管粘膜透 過障壁の詳細な機能解析に基づく薬物送達方法の最適化 を行うことによって、臨床適用も可能なペプチド、タン パク質医薬の経口吸収率を得ることは充分可能となるに 違いない。
謝 辞
本研究を遂行するにあたり、平成15年度星薬科大学 大谷記念助成金を賜りまして、深くお礼申し上げます。
本研究をご指導いただきました、星薬科大学永井恒司前
学長ならびに薬剤学教室 高山幸三教授に深く感謝申し
上げます。また、本研究に多大な御協力をいただきまし
た薬剤学教室の皆様に心より感謝申し上げます。
Proc. Hoshi Univ. No.46,2004
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Proc. Hoshi Univ. No.46,2004
The strategies of oral peptide/protein drugs delivery systems
Mariko MORISHITA
Department of Pharmaceutics, Hoshi University School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences
The potential of graft copolymer networks with poly(methacrylic acid−g−ethylene glycol)(P(MAA−g−EG))負)r oral dosage 飴ms to enhance peptide句rotein dmgs absorption is reviewed. The smart polymer hydrogels exhibited unique pH−responsive characteristics in which interpolymer complexes were fbrmed and dissociated, respectively, in acidic and neutra1/basic environ−
ments;the latter fbrming hydrogels. Correspondingly, the smart polymer was capable of highly incorporating and rapidly re−
leasing(<20 min)calcitonin, insulin and interfbronβin vitro. The swelling ratio, mesh size of the gel structure, and drug in−
corporation of P(MAA−g−EG)were maxi皿ized when the polymer contained equimolar MAA and PEG(molecular weight=
1000).The insulin loaded smart hydrogel microparticles were orally administered to both type l and 2 diabetic rats. The microparticles showed approxima七ely 10%pharmacological availability(relative to subcutaneous administration)of insulin after single oral administration, and significantly suppressed the postprandial rise in blood glucose fbllowing multiple oral ad−
ministration. Enhanced calcitonin, insulin and interfbronβabsorption were demonstrated with direct intestinal administra−
tion(in situ closed loop)with a maximum ef琵ct seen in the ileum. This implies that the smart polymer has a direct absorption enhancing e丘bct local to the intestine in addition to七he protective ef壬bct(inhibition of drug release)as the drug loaded smart hydrogel microparticles passes through the low pH environment of the stomach. Indeed, it was shown in vitro that enzymatic degradation of insulin ill intestinal fluid(pH=7.4)was inhibi七ed in the presence of P(MAA−g−EG). The smart polymer was also shown to possess mucoadhesive properties, when the hydrogels were fbrmed. The mucoadhesion of the microparticles was,
however, reduced by removing mucous!glucocalyx layers by hyaluronidase trea七ment. Furthermore, the smart hydrogel microparticles demonstrated high calcium binding and water absorption, which may aflbct the proteolytic activity of calcium−
dependent enzymes. Consequently, it was suggested that P(MAA−g−EG)was advaDtageous by virtue of pH−responsive interpolymer complexation(protection f士om enzymatic digestion and rapid release on absorption site), mucoadhesion, and pro−
tease inhibition due to calcium−binding. On the other hand, the s皿art hydrogels application did not release lactate dehydrogenase丘om the intestinal membrane and also not innuence on the transepithelial resistances, implying the increased peptideφrotein absorption was not caused by cellular damage. Thus, the smart polymer hyrogels is thought to be highly safb and has the potential to be used as a carrier五)r oral dosage fbrms of peptide/protein drugs to enhance its absorption R)llowing administration.