431.71
ガラス電極電位の精密測定 (第1報)
一Vh, Vnaの交互測定一
谷 岡 守, 三 浦 和 久*
(昭和49年9月30日受理)
Preci$e and Accurate Measurement of Glass−electrode potential ・ ( 1 ) 一 Alternate Measurements of Vh and Vna 一
Mamoru TANioKA and Kazuhisa MiuRA
(Received september 30, 1974)
In order to measure alternately the potential differences, Vh and Vna, between one of two glass electrodes (one sensitive to H+ ions and the other sensitive Na+ ions) and calomel electrode and to measure simultaneously the electric conductivity in the electrolyte solution, the system of apparatus for measuring the quantities mentioned above is a$sembled and the conditions of the highiy precise and highly accurate measurements (± O.005 %) are examined.
1 緒 言
最近,種々のイオンに特異な透過特性を示すガラス膜を 利用したガラス電極が数多く開発されているが1),2),3),著 者らは,古くから研究されているpH測定用ガラス電極(H 電極と略記する)ならびに最近開発されたナトリウムイオ
ン濃度測定用ガラス電解),4)(Na電極と略記)の,飽和甘 コウ比較電極(C電極と略記)に対する電位を,切り.換え スウィッチによって交互に有効数字4桁の実測値が得られ る精度で測定すること,また同時に,電位変化として現わ れた現象を裏打ちする意味で,試料溶液の電導度を測定す
ることを目的として種々の検討を行なったので,これら検 討の諸結果を報告する。
2 測定システム
本研究において,上記諸量を測定するために用いた測定 システムは,1)電極類ならびに測定容器,2)電位差測 定サブシステム,3)電導度測定装置,4)恒温槽ならび に水温調節装置,5)溶液撹拝装置,6)室温調節装置,
7)電源安定化装置からなっている。
電極類ならびに測定容器の概略をFig. 1に示した。
1−A
1−C 1−E
トF
P−D↓
1−B
一 覧 ︷
三
1−e
マ15一..堂.
*金属工学科
ISmm
Fig.1 Arrangement of electrodes in the electrolyte solution.
1−A: Tall beaker, 1−B: Rubber cork, 1−C: Burette,
1−D : Electrodes for conductivity measurement, 1−E:
Combined electrodes for pH measurement, 1−F: Glass eleptrode for Na+concentration皿easurement,1−G:
Stirring gtigk. .
津山高専紀要第12号(1974)
1−Aは,石英ガラスee 200mlトールビーカー,1rBは,
電極類ならびにビュレットを固定してあるゴム栓,11」Cは 重量法で検定された50mlビュレット,1−D.は,電導度測.
定用電極(東亜電波CG−201PL型),1−Eは, pH測定用複 合電極(H電極とC電極を一本化したもの・.東亜電波GgT
−155型),1−Fは,Na電極(東亜東波NA−155型),1−G は,撹伴子(小磁石棒を塩化ビニール製容器に密封したも の)である。
Fig・2は,測定システムの概略図であるQ
2−E ロ 一。2−D 寮
2−F
2−A 0
FIEJvH/
2−M 2−H
、. 2一巳.
卜K2→ .1.
ワ …。1_1
:al 2−1 .陣]
Fig.2 Schematic representation of the system of appara−
tus for measuring the electric potential differences and the electric conductivity.
2−A: Vh−Vna switch box, 2−B: pH meter, 2−C: Out−put switch of pH meter, 2−D: Digital voltmeter, 2−E: D−A converter,2−F:皿V recorder,2−G:Electrodes and beaker,
2−H: Apparatus for measuring the electric conductivity,
2−1: Water bath, 2−J: Water temperature regulator, 2−K,
2−K : Magnetic stirrer, 2−L : Room temperature regulator,
2−M: Voltage stabi1izer.
r
2−Aは,Vh−Vna切り換えスウィッチ箱,2−Bは, pHメ ーター(東亜電波HM−5A型),2−Cは, pHメーター出力ス ウィ.ッチ,.2−Dは,デジタル電圧計(タケダ理研TR−6515 型,5桁表示),2−Eは,デジタルーアナログ変換器(タ ケダ理研TR−88883型,5桁の電圧値の内,任意の3桁を アナmグ量に変換する。),2−Fは,mV記録計(東亜電波 EPR−2TC型)である。また,2−Gは, Fig.1に示した電極 類,測定容器である。
2−Hは,電導度測定装置(東亜電波CM−10B型),2一一 1 は,塩化ビE一一ル製水槽,2−」は,水温調節装置(大洋科 学C−550型,設定温度±0.05de9),2−Kは,溶液撹伴装置
(柴田化学製マグネティック・スターラーの,磁石部分を
.塩化ビニール箱に密閉して恒温水槽中に沈め,撹伴回転数 調節部分を外部に取り出している。),2−Lは,室温調節 装置(市販のクーラーならびに温風器を,三洋ART−6型 温度調節器で制御している。設定温度土1deg),2−Mは,
電源安定化装置(松下電器MA−1K6A型,入力電圧80V〜
110V,出力電圧100V)である。
この外,pHメーターを中心とした電位差測定サブシス テムの校正のために,高分解能デジタル電圧計(タケダ理 研,TR−6515型電圧計,.TR−6018型μVレインジ・ユニッ
ト)で校正された安定化直流電源(東亜電波SV−1A型直 流電圧標準器)を使用している。
3 測定条件の検討
緒言において述べたように,本研究では,有効数字4 桁,すなわち誤差が0.005%以内の高精度(High Precision and High Accuracy)5)で電位差値を得ることを1つの目的 としているため,測定と関連した諸条件を,従来のものよ
VOユ.tage stabilizer Stahilizing tirne
Stabi].ity of meters and switehes Appara七uR
Stab±lizing time
Concentration Preparation
erature ﹂
rature Humidity
亟 Earth 恥s七in g!ass−electr。de
狽?獅獅奄獅≠戟@of pH−me七er
璽七ugiallectrodestrolytie soln︒ 一 曽 層 r − F 一 一 一 一 層
。f measuring 3 differenoe ; 5
@ 一 一 一 膠 , 甲
̲Mass of dropping SQ〕.ution
3 1
@ 旨
@ l
lass of water in the beaker
Stabiユity。f pH−meter C。ntac七P。むen七ial
@ Kσユ. concentration i1〕 ca]一〇mel electrode
@ I弧bbユ.es a七 9]一ass−eユ.pc七rode sllrfaoe
@ 曹一曹「一層.一冒一■藺・一.一一一一一曹、 一,F幽■一一「
@ 田emperature .Tempera七ure regulator}
@ Stirring C。ndition
@ Vo!㎜e
@ 加nsity
」三唱竃璽蟹
Impurities
A)kali KCI H2CO3
So]一ubi]Lity Qf alkaユ.i from glass−electrode Diffusion of KCI from calom61 eユectrode Absorption of CO2 in the air
Fig.3 Cenditions of the highly precise and highly accurate measurement.
ガラス電極電位の精密測定(第1報) 谷岡・三浦
り,さらに厳しいものにする必要がある。Fig. 3に電位差 測定,電導度測定と関連した諸因子およびそれらの測定へ の影響の現われ方を図示した。
3・1電位差測定サブシステムと関連した諸条件 飽和甘コウ比較電圧(C電極)と,H電極またはNa電 極との間の電位差,VhまたはVnaを,2−A(Fig.2, Aの 略記)に示したVh−Vna切り換えスウィッチによって交互
に測定するのであるが,H電極, Na電極などのガラス電 極の電気抵抗が数十MΩと非常に大きいため,pHメータ ーのような超高内部抵抗を持った電圧計でなければ,この 種の電位差は測定できない。著者らは,市販のガラス電極 pHメーター(0.5級〜1級)を比較検討し,2−Bに示した pHメーターを電位差測定サブシステムの主直流増幅器と
して用いている。これは,チョッパによる交流変換形式の 直流増幅器と指示計とからなり,この指示計の目盛は,最 小目盛が10mVで零点を中心として左右にエ700mVのも の,すなわち,0.7級の目盛である,このpHメーターの増 幅器を,有効数字4桁の測定値を必要とする電位差測定に 用いるには,装麗の使用条件を厳しくし,増幅器の安定度 を有効数字5桁程度の測定に耐えるものにしなければなら ない。また,電位差測定サブシステムの指示計としては,
2−Dに示した5桁表示のデジタル電圧計を使用し,前述 のpHメーターの指示計を補助指示計として用いる。さら に,電位差の微小な時間的変化を検討するために,デジタ ル電圧計の5桁の表示値の,任意の連続3桁を,2−Eに示
したD−A変換器で取り出し,この電圧を,2−Fに示した mV記録計に入力し,記録させている。
3.1.1直流増幅器の安定性と室温
真空管を用いた直流増幅器の安定性は,著しく室温の変 化,とくに増幅器そのものの温度変化に支配され,2−しに 示した室温調節装置の設置条件,空気の撹伴条件などが重 要な因子となる。本実験においては,室温調節装置の感温 部を電気的にシールドして,増幅器の近くにおき,さらに 扇風器を用いて冷風が増幅器に常時あたるような条件で,
諸測定を行なっている。このような条件で,室温が制御さ れている場合,pHメーターのスウィッチをONにして,約
1時間放置すれば,温度調節の影響が,±30μVすなわち,
数百mVの電位差を測定している場合,±0.005%程度と なり,有効数字4桁の精度の電位差測定が可能となる。
室温調節の条件設定が悪いと,増幅度が大きく変化し,
設淀温度±1degの影響が,最悪の場合±300μV程度とな るので,室温調節装置の設置条件については,とくに注意 を要する。
3.1.2端子類に生じた錆に起因する接触電位差 湿度の高い時には,pHメーターの入力端子に錆が発生
し,この錆に起因した接触電位差が閥題になる場合があ
る。本研究においては,ガラス電極端子H(電極またはNa 電極とpHメーターを接続する端子)に錆が発生し,数mV 程度の接触電位差が生じた。このような場合には,端子を 傷付けないように注意しながら,ガーゼと目の細かい研磨 剤を用いて,錆落しを行なう必要がある。著者らは,この 種の系統的誤差を除くために,ガラス電極端子を使用しな いで,Fig.4,Aに示したVh−Vnaスウィッチ箱(内部に は乾燥剤を入れておく)から取り出したガラス電極コード を,直接,pHメーター内部の接続点にハンダ付けをした 状態で測定を行なっている。
A
曇一 曜一一〒『一一一一一一一一一一一一 一国凹一
・4十5
S十6
S一A−7
巨曇_ 曇璽
工…囮セ …一登釜二±:
什4二「…一
4−B−4
4−B−5
B
(A L一一.
1 P Z?4−BptJ.1一 14一一B−1
4−B−3
Fig.4 Vh−Vna switch box and out−put switch of pH meter.
4−A−1:C−e!ectrode, 4−A−2: H−e1ectrode, 4−A−3: Na−elec−
trode, 4−A−4: Earth terrninal of Vh−Vna switch box, 4−A−
5: Reference e]ectrode terminal of pH meter, 4−A−6:Glass electrode terminal of p且meter,4−A−7:Earth terminal of pH meter, 4−B−1: Out−put terminal of pH meter, 4−B−2:
Electric resistance (50.OS]1), 4−B−3: Earth terminal of switch box, 4−B−4: ln−put terminal of digital voltmeter,
4−B−5: Earth terminal of digital voltmeter.
3.1.3回路のシールドと関連した問題
電位差測定の際には,測定時に作られる回路の電気抵 抗,すなわち,ガラス電極の電気抵抗およびpHメーター の内部抵抗が極端に大きく,電磁的な誘導を拾い易いた め,この回路のシールド条件,アース条件にとくに注意す る必要がある。
本実験においては,Fig.4,Aに示したように, pHメt一一 ターの入力端子に接続するコード類,Vh−Vnaスウィッチ 箱を完全にシールドするとともに,シールド線のアース,
pHメーターのアースを一緒にして,接地抵抗の小さなア ース端子(第1種の接地端子)に接続する。また,各種計
津山高専紀要 第12号(1974)
器のアース,Fig・4,Bに示したpHメーターの出力スウィ ッチ箱のアースを一緒にして別のアース端子に,水槽,水 温調節装置,室温調節装置,電源安定化装置などのアース を水道に接続している。
3・1.4電位差測定サブシステムの校正
これまで述べてきた測定条件下で,高精度の電位差測定 を行なうのであるが,測定に先立って,この電位差測定サ ブシステムの校正を行なう必要があり,これには,2項の 終わりの所で述べた高分解能デジタル電圧計,安定化直流 電圧電源を使用する。
まず,高分解能デジタル電圧計,D−A変換器,記録計 を用いて,安定化直流電圧電源の安定性を検討したとこ ろ,電位差測定と同じ測定条件下で,±0.5μVの安定性が 得られたので,この直流電源を高分解能デジタル電圧計で 校正し,この校正された直流電源の出力をpHメーターの 入力端子に加えて,電位差測定サブシステムの校正を行な った。ただし,電位差測定サブシステムの指示計として用 いられているデジタル電圧計の表示値Vaは,直流電源の 出力電圧Vではなく,pHメーターの増幅器によって増幅 された値である。このため,校正の際に,V/Va比を測定 しておき,実測値Vaからvを算出するのにv/vσ比を使 用している。また,Fig. 4,Bに示したpHメーター出力ス ウィッチをOFFにすれば, pHメーターの指示計の表示値 Vo(0.7級表示)が得られる。
Table 1には,これまで述べて来た測定条件下の, i著者 らの装置についての,V。, V, VaならびにV/Va比の値 を示した。この結果によれば,Voが100mV変化すること に,V/Va比は0.02%程度変化するので,例えば, Vo値
Table 1 V/Va values corresponding to Va values.
Va (mV) v, (rnv)1 v (mv)1 v/v.
一5022.1
−4304.2
−3587.2
−2870.4
−2153. 4
−1437.2 一 719.1
0 717.6
1435. 4
2147.7 2865.6 3583.6 4301.6 5040.5
00000000000000000000007.6冠り4︸39μ−一 一 ﹁
【
一
[
一
0000000↓←234567
一699.6
−599.6
−499.7
−399.8
−299.9
−199.9
−100.O o.0 99.9 199.9 299.1 399.1 499.1 599.1 702.0
O.13930 0.13931
0. 13930
0.13928 0.13927 0.13909 0.13906
O.13921 0.13926
0. 13927
0.13927 0.13927 0.13927 0.13927
が400mVと500mVの間にある場合には,400mVと500mV にそれぞれ対応するV/Va値の平均値を実測値Vaに乗じ て,電位差Vを決定している。
3.2飽和甘コウ電極と関連した諸条件
3.1項では,飽和甘コウ電極(C電極)の単極電位が一 定であるときの,検討の結果を述べたが,C電極について は,以下に述べる2つの問題点が挙げられる。
3.2.1KCIの試料溶液中への拡散
C電極の内部には飽和K:Cl溶液が入れてあり, KC1が電 極の液警部を通って試料溶液中に拡散する。すなわち,試 料溶液中に不純物としてKCIが含まれることになる。
著者らは,KCIの試料溶液中への拡散速度を,電導度測 定より求めた。すなわち,1−Dに示した電導度測定用電極 と,2−Hに示した電導度測定装置とによって,100日頃の水 の,諸電極浸漬下の電導度変化を測定したところ,25。C において,電導度は,毎分0.22μU/cmの速度で増大し,
この速度は,溶液の撹伴によっては変化しなかった。KCl 濃度と電導度との関係を,あらかじめ測定し,この結果に 基づいて,KCIの拡散速度を求めると,2x10−79−equiv/
min,すなわち,1.5×10−5 g/min程度となる。
3.2.2 C電極中のKC1濃度と単極電位
C電極中のKCIが前項で述べた原因で減少するので,長 時間使用している間に,C電極中のKCI溶液が飽和状態で なくなり,C電極の単極電位が変化する恐れがある。この ため,C電極のKCI溶液に,時々,再結晶操作によって純 度を高めたKCI結晶を加える必要がある。
3.3スウィッチ類のON, OFFと関連した条件 本実験で採用している測定システムには,多くのスウィ
ッチ類があり,また計器類の中には,真空管を用いた計器 もあるので,各種計器のメイン・スウィッチをONにし て,一定時間(安定化時間,多くの場合,1時聞程度)放 置しないと,高精度の電位差測定が可能な状態にはならな い。この外,Vh−Vna切り換えスウィッチ, pHメーター 出力スウィッチなどの切り換えスウィッチを使用している が,この場合も,これらスウィッチを切り換えた後,1〜
2分放置しないと電位差は一定値にならない。
3.4試料熔液の調整と関連した事項
1−Cのビュレットに入れてある滴下溶液(濃度,密度既 知)の一定量を,1−Aのビーカー内の一定量の水に滴下し て,一定溶質濃度の試料.溶液を調整するのであるが,溶質 濃度が,溶液中でのガラス電極電位,電導度へ最も大きな 影響を与える因子であるので,これと関連した事項をまと
めておく。
3.4.1溶媒としての水
本実験においては,イオン交換水を蒸溜し,外気から遮 断して,諸測定を行なう温度と同じ温度で,4〜5時間放
ガラス電極電位の精密測定(第ユ報) 谷岡・三浦
浮し,測定中に気泡の発生が起こらないものを,溶媒とし て使用している。この状態での水の電導度は1μU/cm程 度である。
気泡が発生すると,これが電極類表面をおおい,電位差 測定および電導度測定における系統的誤差の原因となるの で,気泡の除去には,とくに注意する必要がある。
3。4.2滴下溶液
重量法で検定された50mlメスフラスコに,電解質試料
(特級試薬)の一定量wと前:項で述べた水を入れて,50ml として,溶液の質量Wを測定し,室温(24。C)における溶 液の溶質濃度C。と密度dを決定する。溶液の体積をvで 表わせば,調整直後の滴下溶液の濃度と密度の誤差は,
砦÷團・卸器 +0・讐02÷・・…4
(1)
〈!t;一=;]1 一{1 L N 〈itlgL ] = 一Qilill:{i−Ooi5 + 一9i 1119!OoOi = =・o . ooo3
i i l i
程度となる。ただし,Zi Vは,メスフラスコ検定時の誤差 と,液面を外線に合わせる時の誤差が重なったものであ る。この外,溶質濃度の誤差は,当然ながら,溶質試料の 純度とも関係する。
3.4.3試料溶液
1−Aのトールビーーカーに約100m1の水(3.4.1参照)を 取り,質量を測定した後,水中に1−Gの撹伴子を入れ,レ Bのゴム栓をして,外気を遮断する。また,1−Bのゴム栓 には,1−C,1−D,1−E,1−Fに示したビュレット,電極 類が取り付けられ,ゴム栓をした状態で,電極類は水中の 一定位置におかれる。さらに,このトールビーカーを,2−
1の水槽中で,2−K藍汁装置上におく。
滴下溶液をビュレット中より水中に滴下して,種々の溶 質濃度の溶液を調整するのであるが,C。 v。一Cvが成立す
るので,溶液の濃度Cの誤差は,
dc ]Ac,1.ldv
この溶液を,1−Aのビーカーに入れ,ゴム栓をして,測定 を始めればよい。
3.4.4試料溶液中の不純物
本実験において,試料溶液に溶け込む不純物としては,
1)空気中の炭酸ガス吸収によって生じた炭酸,2)甘コ ウ電極から拡散するKCI,3)電極類のガラス壁より溶け 出たアルカリ類などが挙げられるが,Vh測定と関連して は,炭酸ガスの吸収が大きな誤差の原因となるので,外気 の遮断には,とくに注意を要する。またVna測定と関連 しては,Na+イオンが低濃度のとき,甘コウ電極からの KCIが系統的誤差の原因となるが,ガラス壁から溶け出た
アルカリ類は,殆どVna測定に影響を与えないことを確認
した。
3.5水温の調節
2−Jに示した水温調節装置によって,水槽内を設定温度
±0、05deg,さらにピーーカー内を設定温度±0.02 degの条 件で調節しているが,この温度変化の電位差への影響をネ ルンストの式6)に基づいて検討すれば,
AV . A(ErEo)
V 一 EeEo
dT O.02
T = :撃堰f66ZoTor 一= o. oooo7 (3)
C=堰@LOS:; i+i T i+i 一tY (一〇・ OOO4+ if 66iUor +
AVe O.Ol 舞1…
となり,おもに滴下溶液ig Voの誤差に支配され,(dC/C)
×100(%)の値は,vo=1[m1〕のとき,1%, vo ・= 50[ml]の とき,0.07%となる。この結果に基づけば,低濃度溶液に ついて諸測定を行なう場合には,低濃度の滴下溶液を使用 すればよいことが判る。
著者らの実験では,上記の方法で,溶質濃度を逐次変化 させて諸測定を行なっているが,この場合,滴下溶液を加 えた後の溶液の安定化時間を考慮する必要があり,低濃度 のときには,この安定化時間が,30分〜1時間に達するこ とがある。
また,あらかじあ試料溶液が調整されている場合には,
となり,有効数字4桁の電位差測定が可能となる。しか し,この温度変化の電導度σへの影響を,電導度の温度変 化の検討7)の結果より判断すれば,Aσ/σ・sO.0004,すなわ ち0.04%の誤差となり,電導度についても有効数字4桁の 実測値を得る必要のある場合には,さらに水温調節を厳し いものにしなければならない。
3.6溶液の握搾
1−Gに示した擬伴子および2−Kに示した溶液概拝装置に
10
︵︐ε
5
︐︿
.
.
A
●一
/
B
o−o.o−o−o−
e o loo 200 3ee 400 soo
R.P, M, (min−t)
Fig.5 Plots of the potential difference increment vs.
rotating speed of magnetic stick.
A: Water (31bu/cm) , B: NaCl aqueous solution (1×
lo−lg一一equiv/l)
津山高専紀要 第12号(1974)
よって,試料溶液の撹伴を行なっているが,概伴による電 位差の増加,電導度の減少は,擬丁子ならびにビーカーの 形状,大きさ,水の量,電極類の配置,溶質濃度などに依 存する量であり,著者らは,直径5mm,長さ30mmの撹 伴子,直径50皿mのビーカーを使用し,水の量が100m1,
電極類の配置がFig.1に示した状態にあるときの,撹伴回 転数と撹梓による電位差増加との関係を,測定によって求 め,この結果をFig・5に示した。
Fig.5において, Aは,電導度が3μU/cmの水, Bは,
1×10−19−equiv/1のNaCl溶液についての,回転数一dV関 係である。これを見れば,撹拝の影響は,低溶質濃度のと
きに大きいことが判る。
3.7電導度測定
本研究においては,緒言において述べたように,電位変 化として現われた現象を裏打ちする意味で,溶液の電導度 測定を行なっているが,この測定には,1−Dの電導度測定 用電極および2−Hの電導度測定装置を使用し,装置の校正 には,KCI標準溶液8)を用いた。
この装置を用いれば,有効数字4桁の電導三値が得られ るが,3.5項において述べたように,設定温度±0.02deg の温度変化によって,電導度σは±0.04%程度変化するの で,実測値の有効数字3桁が信頼できるだけである。この 外C電極から一定速度で試料溶液中にKCIが拡散するので
(3.2.1項参照),K:C1による電導度の増加を考慮する必要 がある。
4 ガラス電極電位の検討
2項および3項に,Vh, Vnaの高精度交互測定の詳細を 述べたので,ここでは,得られた結果の処理,すなわち,
ガラス電極電位(単極電位)Eh, Enaの算出,単極電位と 関連した定数である膜透過率丁の決定などを述べる。
C電極(飽和甘コウ電極)の単極電位Ecについては,古 くから研究が行なわれており,25。Cにおいて245.75mV 9)
と,試料溶液と関係なく一定値を示す。この値と実測値 Vh, Vnaとを用いて, H電極およびNa電極の単極電位Eh,
Enaは,
(,
、工
3eo
200
100
ltt lo3 一 一 一rt2 一@IGS
c ︵音ε9田iv/l ︶
Fig.6 Plots of Eh and E.a vs. concentration of Na OH at 2s.ooC.
欄
︵宅︶唱唱﹈
ノ)
イノ/o
/〉く\ \● 、・ 、、
\過 、 、、
、 \.
600
Eh=Vh+Ec Ena=Vna+Ec
︹︸巳︶虚
0 0 5
400
(4}
で表わされる。
著者らは,NaOH溶液, HC1溶液およびK:C1溶液のそれ ぞれについて,25。Cにおいて電位差測定を行ない,その 結果より,溶質濃度Cと,ガラス電極の単極電位Eh, Ena
との関係を求め,Fig.6,Fig.7およびFig. 8に示した。
一方,ガラス電極の単極電位Eは,膜電位式10)
lg 10 10 10
0
︵
9−aq凹iヅ1 )
Fig.7 Plots of Eh and Ena vs. concentration of HCI at 25.oOC.
︵言︶田
400
3eo
e一一一一tny一1
踊L一一....
_O 〇一〇
o ● ● ● o◎● ●o艦● ●顧艦●●●●Eh s
計 o.o・oeaoon. O aO
ロ リヨ ユ バ
10 10 10 10 0(9−equiy/1>
Fig.8 Plots of Eルan(1 E紹vs。 concentration of K:Cl at 25.0。C.
ガラス電極電位の精密測定(第1報) 谷岡・三浦
E==Eo +:ll;tL;.] ( ufi17) ln ai
t
(5)
によって表わされる。ここでE。は関係しているすべてのイ オンの活量が1のときの単極電位,Rは気体定数, Tは絶 対温度,Fはファラデー定数,η, Zi, aiは,イオンiの
膜透過率,原子価および活量である。
この(5)式を,活量値が濃度値に等しいと仮定して,Fig.
6〜Fig.8のC−E関係に適用し, H電極およびNa電極に対 するH+,Na+およびK:+の膜透過率を求め, Table 2に示
した。
Table 2 Values of membrane transmission coefficient of ions for glass electrodes at 25.00C.
Concentration of ions (g−equiv/l)
H−el・ectrode
Concentration of ions (g−equiv/1)
Na−electrode
H+
10−13.」IO−1
O.98
10−4Nlo−1
O.98
Na+ K+
10−4NIO−1 10−4Nlo−1
o.o o.o
10−4〜10『1 110−4〜6×10−3
O.99 O.11
6×10−3NIO−1
O. 44
H電極に対するNa+の膜透過率は,別にNaC正溶液につ いて同様な測定を行ない,零であることを確認した。
本実験で使用したNa電極に関しては, Na+およびH+の 膜透過率は殆ど1に近いが,K+の膜透過率はかなり小さ く,さらに,K+の濃度6×10−3g−equiv/1を境にして,異 なった値を示している。
5 結 言
著者らは,この数年来,界面活性剤のミセル形成に関す る研究を行なっているが,この種の研究に電位差測定を用 いる目的で,VhとVnaを交互に高精度で測定すること,お よびこれと同時に電導度を測定することの検討を進めてき たが,2項に示した測定システムを用い,3項で検討した 測定条件の下で,目的にかなった測定が可能となった。
本報告で述べた諸結果は,著者らの界面活性剤に関する 研究のみでなく,種々のイオンの電位差滴定,pH測定な
どの電気化学的分析法の精度を高める上で寄与するものと 考えられる。
最後の項で述べた単極電位に関する検討は,測定を行な った試料が少ないため,充分とは云えず,さらに測定を重 ねることにより,ガラス電極に関するより多くの知見が得
られると思われる。
文 献
1)佐々木弘;東亜ニュース,No.208(1972),9 2)外島 忍;基礎電気化学(1965),170,朝倉書店 3)吉田梅次郎;電子工学と化学計測(1964),249〜251,
昭晃堂
4)武内次夫,吉森孝良;電気滴定法(1971),95〜99,講 談社
5) W. J. Blaedel and V. W. Meloche;Elementary Ouantitative Analysis (1957) 37 Haper, New York
6)前田正雄;電極の化学(1964)51技報堂
7)吉沢四郎,渡辺信淳;電気化学1(1966),30,共立出版 8)後藤廉平,青木幸一郎;新編物理化学(1967),259,廣川 書店
9)後関璋一編;図説電気工学大事典電気化学編(1965),
42,電気書院
10)松浦二郎;電気化学(1965),125,六六房
終わりに,本研究と関連して多くの御助言を頂いた岡山 大学理学部,森本哲雄教授に厚く御礼申し上げる。