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島状金ナノ粒子固定ITO電極を用いたピロールの電解重合

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65 Journal of the Society of Photography and Imaging of Japan, vol 83, p65-68(2020)

1.緒言 我々は金属ナノ構造を有する電極を用いて,導電性高分子 や金属酸化物などの電気化学活性物質のエレクトロクロミッ ク(EC)特性を検討してきた.特にテンプレート法で得ら れた金ナノロッドアレイ膜電極を用いることで,EC 変化の 応答性と耐久性を同時に改善できることを明らかにした.ア スペクト比が高いナノロッド電極表面に固定化された薄膜状 の EC 物質は,ロッド長軸方向の長い光路長により強い着色 が得られる.一方,EC 物質内部での電荷移動は,膜の真下 に電極が存在するために,膜厚分の短距離・短時間で完了す る.このように光路と電荷移動の方向を直交化できることが, 薄膜でも強い着色,高速応答(短時間の電荷移動)を実現さ せていると考えられる1)2)3)4) スパッタリングや電気化学析出で容易に得られる島状金ナ ノ粒子を固定した透明電極を用いることで,導電性高分子の EC 応答性を改善できたことを最近報告した5)6). このよう な EC 変化の高速化には,数十 nm の粒径の金ナノ粒子のプ ラズモン電場による吸収の増強が EC 材料膜の薄膜化に寄与 すること,および,EC 材料と金ナノ粒子の間に形成される 誘電体 - 金属 - 誘電体(DMD)構造が EC 材料の電気伝導性 を向上させていることが関係しているものと考えられる. これらの島状金ナノ粒子による EC 特性への影響の例とし て,今回は EC 変化の耐久性に着目した.特に,導電性高分 子は酸化還元により大きく力強い体積変化を伴うことが知ら れている.この現象による高分子膜の電極からの剥離は, EC 素子全体の耐久性に大きな影響を及ぼしているものと考 えられる. 本研究では,ポリピロール EC 変化の耐久性に 関して,通常の ITO 電極に対して島状金ナノ粒子を固定化 した ITO 電極を用いる利点について比較検討した結果を述 べる. 2.方法 2.1 島状金ナノ粒子固定 ITO 電極の作製 金ナノ粒子を ITO 電極上に得るための電解液は,超純水 に亜硫酸カリウム 100 mM と亜硫酸金(Ⅰ)ナトリウム 30 mM を含む水溶液として調製された.シリコンオーリン グ(開口部面積:2 cm2)を介して 2 枚の ITO 薄膜つきガラ ス電極(ジオマテック製)で電解液をはさみ電解素子を作成 した.電解条件の一例として,電解素子に,電圧-10 V を 短時間(数 ms)印加し金の核を電極上に析出させ,その後 電圧-1.1 V を 60 s 間印加して金の核を成長させた.得られ た電極を超純水で洗浄後,大気下で自然乾燥した. 令和 2 年 1 月 6 日受付,令和 2 年 2 月 11 日受理 Received 6th, January 2020, accepted 11th, February 2020 東京工芸大学工学部,〒 243-0297 神奈川県厚木市飯山 1583 Tokyo Polytechnic University, 1583, Iiyama, Atsugi, Kanagawa 243-0297, Japan

一般論文

島状金ナノ粒子固定 ITO 電極を用いたピロールの電解重合

Electropolymerization of Pyrrole on ITO Electrode Modified with Au Nano-island

山田勝実・金沢恵美・常安翔太・越地福朗・内田孝幸・佐藤利文

Katsumi Y

amada

, Emi K

anazawa

, Shota T

suneYasu

, Fukuro K

oshiji

, Takayuki u

chida

, Toshifumi s

aToh

要 旨 パルス電解法により島状金ナノ粒子を ITO 膜付きガラス板上に固定化した.それを電極(Au-ITO)として,ピロールの 連続的な電位掃引による電解重合を行い,未処理 ITO 電極(ITO)と重合過程の比較を行った.その結果,Au-ITO を用 いることで,ピロールの酸化が少なくとも 200 mV 以上低い電位で起こっていることを確認した.また,Au-ITO の使用 で重合中のピロール高分子の電気化学的な劣化を抑制できることも明らかとなった. Abstract Au nanoparticles were immobilized on glass plate with ITO film by pulsed electrolysis. Using the product(Au-ITO) as an electrode, an electrochemical polymerization of pyrrole was carried out by continuous potential sweeps, and the  polymerization process was compared with that on an untreated ITO electrode(ITO).  As a result, it was confirmed  that the oxidation of pyrrole on Au-ITO electrode occurred at more negative potential(at least 200 mV)than that  on ITO electrode.  It was also found that the use of Au-ITO can suppress the electrochemical deactivation of the  polypyrrole during the polymerization. キーワード:島状金ナノ粒子固定 ITO 電極,ポリピロール,電解重合,耐久性 Key words: ITO Electrode modified with Au Nano-island, Polypyrrole, Electrochemical polymerization, Durability 写真学会83_1-一般論文-山田.indd 65 2020/02/29 14:32:14

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日本写真学会誌 83 巻 1 号(2020 年,令 2) 66 2.2 ピロールの電解重合 透明ガラスセルを容器として,ピロール 10 mM と過塩素 酸リチウム 0.1 M を含む重合用水溶液を導入し,銀塩化銀を 参照電極,白金ワイヤーを対向電極および各種 ITO 電極を 作用電極として浸した状態で-500 mV ~+800 mV の範囲 で 50 mV/s の速度で電位走査重合を行い,ポリピロール膜 を電極上に固定化した. 2.3 透過率変化の測定 透明ガラスセル内における電解重合中の電極上の透過率変 化は,電解セル全体の透過率変化としてタングステン光源に よる白色光入射に対する波長 700 nm での時間変化を測定し た. 3.結果及び考察 3.1 島状金ナノ粒子固定 ITO 電極の表面状態と分光透過率 Fig. 1 にパルス電圧を用いた電解析出後の ITO 電極表面 の電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)画像を示した. 高電圧-10 V を 2 ms 印加し,その後に低電圧-1.1 V で 60  s 間電解を行った場合,得られた金ナノ粒子の粒径は約 50 nm となった.得られた電極の透過率測定の結果,金ナノ 粒子のプラズモン散乱の吸収ピーク波長は 550 nm,その波 長での透過率は 75% となった.過去に報告したように,核 形成を目的としたパルス状高電圧,核成長を目的とした低電 圧の長時間印加を組み合わせることで,金ナノ粒子の粒径や 色調を容易に制御できる6). 以降の実験には,粒径 50 nm の島状金ナノ粒子を固定した ITO 透明電極(Au-ITO)を 用いた. 3.2 電解重合中の電流応答

Fig. 2 に ITO 電極と Au-ITO 電極を用いた重合中の初回 走査時のサイクリックボルタモグラムを示した.モノマー酸 化の電流を比較すると+800 mV の折り返し地点で,Au-ITO の方が の折り返し地点で,Au-ITO 電極と比べて約 10 倍大きな電流値を示して いる.一般的にこの電流には,モノマー酸化の電流と電極上 に吸着(または析出)した高分子の酸化電流が混在している ものと考えられる.また,正方向の走査時の電流に対して折 り返して逆方向への走査時の電流が小さい場合には,電気伝 導性物質の吸着や析出が少ない状態と考えられる.これらの 結果から,立体的な金ナノ構造が島状に存在する Au-ITO 電 極では,ITO 電極に比べてモノマー酸化に対して有効な電 極表面積が大幅に拡大していることが示唆された.これに加 えて注目すべきは,モノマー酸化電流の立ち上がり電位の違 いで,Au-ITO 電極ではかなり低い電位(ITO 電極に比べて 少なくとも 200 mV 以上)から酸化が始まっている.Fig. 2 の金平板電極でのピロールの重合では,ITO 電極よりもモ ノマーの酸化電流が大きくなっている.これは,金の電気伝 導度が ITO よりも大幅に高いため,電源端子から電極表面 (電解液との接触界面)までの電圧降下が抑制され,より低 い電位で酸化が起こっているためと考えられる.Fig. 2 には, Au-ITO 電極では同じ金属材料が用いられている金平板電極 よりもさらに大きなモノマー酸化電流が認められている.電 源端子から電解液界面までの電圧降下は,ITO が用いられ ているため不利と考えられる.この現象に関しては,金ナノ 粒子同士が数ナノメータ間隔で並んでいるところがありその 隙間に電解液が存在することによる立体的な DMD 構造の形 成による導電性の向上が考えられる.他にも,金ナノ粒子の 間隔が狭くなると,隙間が電気二重層で満たされる場合があ り(この電解液濃度では間隔の距離は数ナノメートルと考え られる),その場では電子交換が促進されることはよく知ら れている.酸化電位の低下に関しては引き続き検討を行って いく必要がある. 水溶液中でのピロールの電解重合において印加電位をより 低くできることで,重合反応と同時に起こる加水分解などの 劣化反応を抑制できる7)8).重合生成物にπ共役が途切れた 分解部分が含まれることで EC 反応中の電流効率が低下する とともに,未劣化部分への印加電位に対する負担が大きくな りさらに劣化が早く進むことが考えられる. 二回目電位走査以降の重合は,電極上に得られたポリピ ロールの電気化学活性が同じになるように,+200 mV の酸 化電流が 50 μA に到達するまで行われた. Fig. 1  FE-SEM image and transmittance spectra of the ITO elec-trode obtained after pulsed electrolysis. Fig. 2  Cyclic voltammograms(scan rate : 50 mV/s)of the pyrrole  polymerization  on  ITO,  Au-ITO  and  Au  plate  electrodes  during their first potential scannings.

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山田勝実・金沢恵美・常安翔太・越地福朗・内田孝幸・佐藤利文  島状金ナノ粒子固定 ITO 電極を用いたピロールの電解重合 67 3.3 Au-ITO と ITO の重合中の透過率変化 本実験系では,電解重合セルには透明ガラス容器を用いて いる.この容器は Fig. 3 の模式図に示したように,ITO(Au-ITO)→電解液→ガラスの順で入射光を透過させることがで きる.電解開始後,電極上で生じるモノマー酸化体,二量体, オリゴマー,吸着前の高分子などは測定波長域に吸収帯を有 する可能性がある.しかしながら,これらは拡散し電解液内 に希釈されてしまうのに対して,電極上に析出・固定化され る重合生成物(ポリピロール)はセル透過率の変化の主な要 因となるものと考えられ,本測定系により電極表面上での重 合反応を追跡できる. Fig. 4 は,波長 700 nm における重合中のセル全体の透過 率変化を示している.ここでは,電解前の状態のセルの透過 率をリファレンス(100%)としている.ITO 電極上での重 合では,電解開始後しばらくはわずかな透過率の低下が続き, 印加電位の走査が 14 周あたりから周期的な増減変化が始ま る.この周期的増減は,電極にポリピロールが析出固定化さ れ,それらの酸化還元に伴う EC によりこの波長域での透過 率変化が生じているものと考えられる.その後 25 周まで増 減幅(最大 8%)を拡大しながら,全体的な透過率の低下が 継続する.それ以降は増減幅が縮小し,全体的な透過率の変 化がなくなる傾向がある.一方,Au-ITO 電極では,二周目 走査からは,小さい周期的な増減が認められ,早い段階で高 分子の析出が起こっているものと考えられる.その後の周期 的増減(12%)は拡大しながら全体的な透過率低下が重合終 了まで持続している. Au-ITO 電極の特徴としては,まず ITO 電極では重合初 期にはポリピロールの析出が起こりにくい,対照的に Au-ITO では析出が起こりやすことである.Au-Au-ITO 電極では酸 化電流が大きく,モノマー酸化物の電極近傍での濃度が高く なり,二量体形成,それ以降の高分子成長およびこれらの電 極への吸着析出・核形成が促進されたことが考えられる.さ らに,Au-ITO の表面は未処理 ITO よりも凹凸が大きく, 核形成が起こりやすくなっていることも要因と考えられる. また,ITO 電極では 25 周目以降で周期的な透過率の増減幅 が減少している.これは,電極上に形成されたポリピロール の膜厚が大きくなると電気的な抵抗が大きくなりポリピロー ル/電解液界面での電圧降下によりモノマー酸化が起こりに くくなっていることが考えられる.(ポリピロールのさらな る形成が抑制されていることを意味している.)さらに,形 成したポリピロール膜の酸化還元に伴う体積変化は,膜厚が 大きくなるに従い影響が大きくなり,電極近くでは体積変化 に対する機械的ストレスが蓄積され,次第に電極からの膜の 剥離が始まるものと考えられる.剥離が起これば,EC に関 係できるポリピロールが減少し透過率の変化量も減少する. 一方,Au-ITO 電極上に存在するナノ構造による微細な凹凸 は,形成したポリピロールの立体的なスタッキングを強化し ているものと考えられる.このような密着性の向上が,ポリ ピロールの体積変化による剥離に対して効果的に機能し,電 極上への残留性を高めているに違いない.また,前述の金ナ ノ粒子表面近傍の電気伝導性の向上は,金ナノ粒子の隙間に 析出したポリピロール膜内部の電圧降下を補い,継続的なモ ノマー酸化および高分子形成に貢献しているものと考えられ る. 両電極に流れる酸化還元電流はほとんど同じ大きさ(50  μA)であるにもかかわらず,Au-ITO 電極上のポリピロー ルの EC による透過率変化(12%)は ITO 電極の場合(8%) よりも少し大きくなっている.このような EC 効率の向上に 対しても,プラズモン電場増強を含め今後様々な方向から検 討を行う予定である. 4.まとめ 本研究で用いられた Au-ITO では,ITO 表面へ金のナノ 構造が隣接して島状に形成されており,それらの立体構造に より電気化学反応に有効な電極面積を大幅に増大させている ことが明らかとなった.Au-ITO 電極を利用した場合,この 電極面積の増大により通常の ITO 電極と比べてポリピロー ルの重合及び電極上への析出が容易に起こるようになってい る.Au-ITO 電極では,隣接した金ナノ粒子の表面に形成さ れたポリピロール膜の導電性が向上しているため,膜の電圧 Fig. 3  Schematic diagram of the electrochemical glass cell for the  pyrrole polymerization. Fig. 4  Changes in the transmittance of the glass cell at the wave-length of 700 nm during the electropolymerization of pyrrole  with ITO and Au-ITO electrodes. 写真学会83_1-一般論文-山田.indd 67 2020/02/29 14:32:14

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日本写真学会誌 83 巻 1 号(2020 年,令 2) 68 降下が少なくなり高分子/電解液界面でのモノマー酸化およ び高分子形成を持続させることが可能である.また,Au-ITO 電極の立体ナノ構造は,表面に形成されたポリピロー ルの密着性を向上させ,酸化還元に伴う体積変化による剥離 を抑制できる.これらのことから,Au-ITO 電極は ITO 電 極よりポリピロールの電解重合を効率的に行うことができ, かつ EC 耐久性を向上させる効果があるものと考えられる. 参 考 文 献 1) K. Yamada, K. Seya and G. Kimura, Synth. Met., 159, 188 (2009). 2) G. Kimura and K. Yamada, Synth. Met., 159, 914(2009). 3) Y. Mizukoshi and K. Yamada, Bull. Soc. Photogr. Imag. Japan,  24, 12(2014). 4) K. Yamada, Y. Tanaka and S. Akimoto, Bull. Soc. Photogr.  Imag. Japan, 25, 38(2015). 5) 田中優貴,山田勝実,日写誌,80, 60(2017). 6) K. Yamada, F. Koshuiji and T. Uchida, Bull. Soc. Photogr.  Imag. Japan, 28, 1(2018). 7) I. Rodriguez, B. R. Scharifker and J. Mostany, J. Electroanal.  Chem., 491, 117(2000). 8) T. F. Otero, M. Marquez and I. J. Suarez, J. Phys. Chem. B,  108, 15429(2004). 写真学会83_1-一般論文-山田.indd 68 2020/02/29 14:32:14

Fig. 2 に ITO 電極と Au-ITO 電極を用いた重合中の初回 走査時のサイクリックボルタモグラムを示した.モノマー酸 化の電流を比較すると+800 mV  の折り返し地点で,Au-ITO の方が の折り返し地点で,Au-ITO 電極と比べて約 10 倍大きな電流値を示して いる.一般的にこの電流には,モノマー酸化の電流と電極上 に吸着(または析出)した高分子の酸化電流が混在している ものと考えられる.また,正方向の走査時の電流に対して折 り返して逆方向への走査時の電流が小さい場合には,電気伝 導

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