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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:西 尾 健 介

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:口腔扁平上皮癌原発巣と転移巣における

matrix metalloproteinases

の発現および

tumor-associated macrophages

の分布に関する研究

腫瘍細胞と腫瘍微小環境の間には複雑な相互作用があり, 癌の発生や進行において極めて重要な役 割を担っている。

Matrix metalloproteinases (MMPs)

は細胞外マトリックスのリモデリングにおいて重 要な役割を有する分子である。中でも

MMP-2

MMP-9

は基底膜の主要な成分である

IV

型コラーゲ ンを分解し

,

腫瘍の転移に深く関係している。また癌の転移活性は

,

それぞれの癌細胞の

MMP

活性と 相関することから

MMPs

は癌治療の標的になると考えられている。

一方, 腫瘍間質に浸潤する

tumor-associated macrophages (TAMs)

は腫瘍の発育に対して多彩な機能 を発揮するとされている。原発巣のみならず, 転移巣にも

TAMs

が存在していることは知られていた が, その分布の詳細は未だに不明な点もある。口腔扁平上皮癌 (

oral squamous cell carcinoma,

OSCC)

は頭頚部の悪性腫瘍の中でも最も発症頻度の高い病変であり

,

様々な研究が行われている。

OSCC

における

MMPs

の発現や

TAMs

の分布について研究されているが

,

原発巣と転移巣での発現量 の違いや分布を比較した報告は見当たらない。こうした背景に基づき, OSCCの原発巣と転移巣におけ

MMPs

の発現強度および

TAMs

分布について検索することとした。

日本大学歯学部病理学講座に保管されている

OSCC

症例の中から, リンパ節転移を認めた

29

症例を 選び

,

原発巣および転移巣の標本をそれぞれ抗

MMP-2

抗体

,

MMP-9

抗体およびマクロファージの マーカーである抗

CD68

抗体を用いて免疫染色を行い

, MMP-2

および

MMP-9

の発現強度と

CD68

陽性

TAMs

の分布を比較した。また

, OSCC

由来細胞株である

Ca9-22

および

HSC3

における

MMP-2

および

MMP-9

の発現量を

real-time PCR

法を用いて比較し, 腫瘍の分化度との関係について検討した。

本研究に用いた症例の概要は, 患者の年齢が

18

歳から

88

歳であり, 平均年齢は

62

歳であった。性 別は男性

17

名に対し女性

12

名で, 男女比は

1.4

1

であった。症例の部位による内訳は, 舌癌

13

例, 肉癌

14

,

及び頬粘膜癌

2

例であった。また腫瘍の分化度は

, Grade I

19

, Grade II

8

, Grade III

2

例であった。

免疫染色の結果

, MMP-2

および

MMP-9

両分子共に腫瘍細胞の細胞質に陽性反応を示した。原発巣 と転移巣での発現強度の比較では, MMP-2の発現は

MMP-9

に比べて低かったが, 舌癌の転移巣におい ては有意な増強を認めた。一方, MMP-9では舌癌, 歯肉癌において, 転移巣により強い染色強度が見ら れたものの, 有意な差は認められなかった。次に転移巣における

MMPs

の発現を舌癌と歯肉癌の間で 比較した。

MMP-9

の発現量は舌癌において

, MMP-2

の発現は

,

歯肉癌において高い値を認めたが

,

に有意な差は認められなかった。また

MMPs

の発現量と癌の進行度の関係について比較した。

Grade I

の症例では

MMP-2

および

MMP-9

共に転移巣での発現が有意に高かったが

, Grade II

以上の症例では有 意な差は認められなかった。培養細胞における

MMP-2

および

MMP-9

の発現は, 分化度の低い

HSC3

において, 分化度の高い

Ca9-22

と比較して, MMP-2および

MMP-9

共に有意に高かった。

次に

CD68

陽性

TAMs

の分布を

,

原発巣と転移巣で比較した。

TAMs

は原発巣および転移巣の間質で 共に認められ

,

浸潤最先端部のみならず非浸潤部においても検出された。

TAMs

の数は舌癌および歯 肉癌の原発巣において最も多く存在しており

,

転移巣での

TAMs

の数を

1

とした際に

,

原発巣での

TAMs

数は

,

舌癌で

1.9

,

歯肉癌で

1.5

倍と有意に高い値を示した。

本研究の結果, リンパ節転移した腫瘍細胞が, 転移後にも高い転移能を有しており, その活性は原 発巣に存在する腫瘍細胞より高い可能性を示唆していた。また

Grade

分類での解析や培養細胞を用い た実験より, 腫瘍の分化度と

MMPs

の発現に相関があることが示唆された。TAMs の分布は

MMP-2

および

MMP-9

とは異なり

,

原発巣において高かった。癌の発育に関与する

TAMs

の数と

MMPs

の発

(2)

2

現が

,

原発巣と転移巣で逆相関の結果になった点は非常に興味深い。しかし

,

そのメカニズムは現時 点では不明である。

MMPs

の発現は様々なサイトカインの影響を受けることが知られており

,

間質細 胞やその他の細胞から分泌される可溶性因子が一つの要因である可能性がある。

一方で

TAMs

は自身の置かれた組織環境に応じて, M1および

M

2の機能の異なる二つのサブセット に分化することが報告されており

,

それぞれ腫瘍の成長と退縮に寄与していると考えられている。実 際に

M

2マクロファージはトランスフォーミング増殖因子

β (TGF-β)

を産生することが知られており, また

MMPs

の発現は

TGF-β

などのサイトカインにより調節されている。従って

, TAMs

phenotype

をさらに追求し

TAMs

MMPs

発現に対する影響についてさらに検討する必要がある。また今後は

,

Grade II

以上での比較をさらに行うと同時に, 唾液腺悪性腫瘍など, 他の組織系での解析も必要である

と考えられた。

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