長崎大学総合環境研究 第
9
巻 第2
号pp. 1 7‑25 2007
年9
月学校給食における脂肪エネルギー比率の現状と 今後の献立のあり方
秋永優子*,中村 修**,渡蓮美穂 ***,片測結子****,宮崎 藍 ***,下村久美子*****
S t udyo nt her a t i oo ff a t ‑ de r i v e de ne r g yo fs c ho o l l unc hs e r v i c e sa nd t heme nusa si to ug htt obe .
YdkoAKI NAGA,Os a m uNAKAMUR
A, Mi hoWATANABE, Yui koKATAFUCHI
,AiMI YAZAKIa ndKumi koSHI MOMUR A
Abs t r a c t :Wl t ht hef o c uso nt hef a ti n t a kef r o m s c h oo ll u nc hs e r vi c e s ,t her a t i oo f f a t ‑ d e r i ve de ne r g ya ndt heme nusa si to u g h tt obewe r es t ud i e d. Theme n uso ft e n s c ho o l swe r ea na l y z e da ndt hef bl l o wl ngr e s ul t swe r eo b t a i ne d.
Ma nys c ho ol sp r e s e n t e dahi g ha ve r a geo ft her a t i ooff a t ‑ de r i ve de ne r g y . Ha l foft he s c ho ol sma r ke d 25 . 4% o rl e s sf o rt he" J a pa ne s e ‑ S t yl eme a l l lme nuswhi l ema nyma rke d 32. 1 % o na n a ve r a gef o rt hel ' o t he rt ype "me n us . Ata l loft hes c ho ol s ,t her a t i owi t ht he 1 . d e e p‑ f r i e df oo di nc l u de d' 'me n uswa shi g he rt ha n t ha twi t ht he" nod e e p‑ f r i e df o o d i nc l u de d"me n us ,33. 0% f o rt hef o r m e ra ga i ns t 28. 5% f o rt hel a t t e rona ve r a geoft het e n s c ho o l s . Ata l lo ft hes c hoo l s , t hef a t ‑ d e r i ve de ne r g yr a t i owa si nt her a ngef r o m 22. 2% t o 29. 9% wi t ht hel l r i c eba s e d"me nus , a nd 32 . 3 %t one a r l y 40% wi t ht he' ' o t he rt yp e . . me n us .
Ke ywo l . d sIs c hooll u nc hs e r v i c e s ,r at i oo ff at ‑ de r i v e de ne r gy ,me nu s
Ⅰ緒言
前報 1において,子 どもの肥満や生活習慣病雁患, 生活習慣病予備軍が増加 している現状 と脂肪摂取量 に関する問題 について,明 らかにした。
肥満は,エネルギー摂取量が消費量よ り大き くな った状態が持続 した ときに生 じるものであるが,エ ネルギーの総摂取量 に加え,その内容 として総エネ ルギーに占める総脂質の割合(以下,脂肪エネルギー
* 福 岡教育大学教育学部,
**
長崎大学大学院生産科学研究科,
* ** 長崎大学大学院生産科学研究科博士前期課程,
*** * 福 岡教育大学大学院教育学研究科修士課程,
*** **純真短期大学
受簡年月 日 2 0 0 6 年 ( 平成 1 8 年) 1 1月 2 9 日 受理年月 日 2 0 0 7 年 ( 平成 1 9 年) 5 月 1 4 日
比率)や動物性脂質摂取量の増加が注 目されている。
その深刻な事態に対応するため,国の基準 として の脂肪の所要量が,1
7
歳以下では長年「 25%‑30%」
であったのが,平成
1 7
年5月に示された 日本人の食
事摂取基準2では「 20%以上 30%未満」 と,下限が
大きく引き下げ られた。学校給食の脂肪エネルギー比率 については,平均 摂取栄養量 として学校給食要覧3の中に,本年
3
月発 行のものに初めて示された。それによると,平成1 6
年度は,全国平均で小学校29. 2%,中学校 28. 0%で
あったO最新の国民健康 ・栄養調査報告4によると,7 歳‑14
歳の平均値では,男子28
.4%,女子29. 0%で
あったOすなわち,学校給食の脂肪エネルギー比率 は,食生活全般 を通 した平均値 とも近似 した値 とな秋永優子 ・中村 修 ・渡遵美穂 ・片
捌結子 ・宮崎 藍 ・下村久美子
っていると言える。また,前報で も,学校給食にお ける脂肪エネルギー比率が必ず しも低 くはないこと が示された。 しかし,新 しい日本の食事摂取基準が 出された後の給食における脂肪摂取のあり方 として, 個々の学校の給食の脂肪エネルギー比率を細か く検 討 したデータはみ られない。
本研究では,学校給食における脂肪摂取の問題に 注 目し, 日本人の食事摂取基準が公表された後に実 施された個々の給食について,献立を分析 し,脂肪 エネルギー比率の現状 を明 らかにし,今後の給食献 立のあ り方について検討する。
Ⅰ
方法
福岡県内の種々の給食実施態勢の学校 1 0 校につ いて,給食の脂肪エネルギー比率を調べた。平成 1 7 年 5 月に日本人の食事摂取基準が示されて半年あま
りが経過 した平成 1 8 年 1 月に実施された給食の献立 票,または給食 日誌,月報等を用いて分析 した。各 学校の属性は表 1 に示 したo
各学校の給食献立を次の観点か ら分析 し,脂肪エ ネルギー比率を比較 した。
1 .脂肪エネルギー比率の月平均値 2. 和食献立であるかどうか 3. 主食が米飯であるか どうか 4. 揚げ物を含むか どうか
5. 主菜の主材料が魚や大豆 ・豆製品であるかどうか 6. 冷凍や レ トル トなどの二次加工品の使用の有無
6. については,材料配合の示された資料の得 ら れた 7 校 についてのデータを分析 した。
解析には, EXCELL アンケー ト太閤を用い,対応 のある場合の母平均の差の検定,および単相関係数 の算出による母相関の検定を行った。
Ⅲ 結果および考察
1 . 学校給食における脂肪エネルギー比率の月平均値 1 0 校の給食について,それぞれ脂肪エネルギー比 率の月平均値を算出し,表 1 に記 した。
脂肪エネルギー比率が 20% 台であったのは 4 校で, 残 りの 6 校は 30% 以上であった。新 しい食事摂取基 準の上限 「 30% 未満」を越えている学校が過半数見
られたことになる。
また,学校給食には平均栄養所要量の基準
5が定め られている。日本人の栄養所要量の基準を参考 とし, 食事摂取基準の考え方 を尉酌 しつつ算出されたもの で, 脂肪 については, 「 学校給食による摂取エネルギ ー全体の 25%‑30%」 とされている。各校の脂肪エ ネルギー比率の月平均値をこれ と照 らし合わせて も, 上限を越えた学校が 1 0 校中 4 校にも及んでいること がわかった。また, 基準内には収まっていた ものの, 基準のち ょうど上限の値 に相当している学校 も, 2 校見 られた。基準の中間値以下を示 した学校は,わ ずか 2 校 にすぎなかった。
この 1 0 校の数値 を, 緒言で示 した学校給食におけ る脂肪エネルギー比率の全国平均( 小学校 29. 2% ,中 学校 28. 0%) と比較すると,これ らよ り高い値 となっ ているところが多 く,平均値で 1 ポイン ト程の差で あった。 しかし, この全国平均 自体が決 して低いも のではな く,前述の国民健康 ・栄養調査報告の結果 ( 7 歳 ‑ 1 4 歳の男子平均値 28
.4%,女子 29. 0%) とも 近似 したものとなっている。言い換えると,本研究 の調査対象校の過半数の学校の給食は,食生活全般 を通 した脂肪エネルギー比率の平均値よりも高い値 となっているということになるO
学校給食は,栄養のバランスのとれた食事ができ るよう工夫され,成長期にある児童生徒の健康の保 持増進等に大きな役割 を果たす とともに,望ましい 食習慣を形成する重要な役割 を担っている
6。にもか
表 1 学校給食における脂肪エネルギー比率の月平均値
学校 A B C D E F G H l J 平均値
校種 小学校 小学校 小学校 小学校 小学校 小学校 小学校 中学校 中学校 中学校 小学校 中学校 調理方式 単独調理 単独調理 単独調理単独調理 単独調理単独調理単独調理 単独調理 共同調理 共同調
献立方式 自校献立 自校献立 自校献立 自校献立 参考献立疏‑献立統一献立 自校献立 自校献立 自校献古
平
値
均 エネルギー ( k c al ) 6 4 5 6 3 7 6 4 7 6 8 4 6 4 2 6 5 2 6 3 5 7 8 3 7 9 9 7 9 9 6 4 9 7 9 4 僻 肪 ( g ) 21 . 0 21 . 2 2 2 . 1 2 4. 9 1 8. 8 2 1 . 7 2 1 . 8 2 4. 4 2 3 . 8 2 8 . 5 21 . 6 2 5 . 6
注 脂肪エネルギー比率は、エネルギー ( k c a りと脂肪 ( g ) から著者が算出した
‑1 8‑
学校給食 における脂肪エネルギー比率の現状 と今後の献立のあ り方
かわ らず, このように脂肪エネルギー比率が高いと いう事実は,一般には知 られていない。現在 これほ ど問題視 されるようになった脂肪量の多い食事 を, 公教育の場で子 どもたちに施 している学校が多いと いうことを意味している。さらに, このような給食 を子 どもたちに食べさせているということは,脂肪 を好む噂好 を育ててお り,生涯の食生活 と健康に影 響を及ぼ している可能性があるということも,学校 給食に携わる諸機関において充分認識 されなければ な らないことである。子 どもたちの脂肪摂取過剰の 実態,そ して,健康状態の悪化を踏 まえ,早急 に見 直 しが必要である。
近い将来, 学校給食の平均栄養所要量の基準で も, 食事摂取基準 と同様 に下限が 20% となるもの と予 想されることか ら考えても,脂肪エネルギー比率の 低い給食献立への改善は,急務 と言える。
2 . 高い脂肪エネルギー比率の背景
学校給食の脂肪エネルギー比率が高 くなる原因に ついては,主 として, 子 どもたちの食事傾向の問題, 効率化 による冷凍食品などの二次加工品使用の影響, そして脂肪摂取に対する危機感の薄さの問題 という 3 つの背景があると考え られる。
まず,子 どもたちの食事傾向の問題では,脂肪を 含んだ ものを好む食嘩好が定着 しているため,あっ さりした料理は食べず に残 して しまうという実態が よく聞かれる。また,子 どもが少食であるという傾 向が強 くなっているにも関わ らずエネルギーの基準 は高 く設定されているため, 栄養士は苦労 してお り, エネルギーの基準を満たすために脂肪含量を多 くし なければな らないとも言われる。
例えば, B 校の栄養士は,脂肪の使用量を抑える と,一食全体のエネルギーが低 くなるため,デザー トをつけるなどしてエネルギーを高 くしていると, 述べている。 C 校の栄養士は,主食がパンであるよ りもご飯である方が,子 どもたちは好み,糖質性エ
ネルギーがきちんと確保できるので,望ましいと述 べている。
2 点 目に関しては,二次加工晶には脂肪含量が多 く,脂肪エネルギー比率が高 くな りやすいと言われ る。表
1で最高値を示 した
D校では,調理員の数が 際立って少な く,設備 も不十分であるために,二次 加工品の使用が多 くなってお り,その影響があるも のと予想される。
3 点 目については,わが国では長い間,栄養素不 足を心配する考え方が強かったため,脂肪に関して ち,「 過剰に摂取 してはよくない」という意識が現在 も強 く働いていないためと考え られる。先に示 した 学校給食要覧の平均摂取栄養量を見て も,栄養所要 量に対する充足率を示す際,脂肪については,範囲 を持ったものとして取 り扱わなければな らないはず であるが,一覧表には,上限の数値に対 して算出し た数値のみが表記されている。 これでは,上限の数 値までは多 く摂るほどよいという印象を与えやすい。
表 1 で見てきたように,上限を越えている学校が多 いことか らも,また, F 校や B 校のように毎月の平 均値がほぼ 30% となっている学校があることか ら
ち ,25‑30% ではな く,上限の 30% となることを目 指 して献立が立て られている学校 も少なくないこと が予想 される。
学校給食は,児童の実態に則 した,健康 を導 くも ので あ らねば な らな い。上記 の基準 に関 して も,
「 個々の児童生徒等の健康及び生活活動等の実態並 びに地域の実情等に十分配慮 し,弾力的に運用する こと」 とされている。子 どもたちの過剰摂取傾向の 現状に鑑みると,脂肪摂取量の特別 に少ない地域に 該当することが明 らかでない限 り,基準の上限を目 安に献立作成するのでは,子 どもの健康を考えた学 校給食 とは言い難い。 この基準値は自分たちの地域 で現実的な ものに変 える ことはできる 7 のであるか ら,む しろ,児童の実態に則 したものに積極的に変 えて実施 していくことが必要であろうO
表 2 和食献立とそれ以外の場合における学校給食の脂肪エネルギー比率
単位 :鶴 献立群 学校 A ら C D E F 伝 H I J 平均値 完全な和食 2 6 , 8 2 6 . 8 2 8 . 8 2 9 . 9 2 3 , 3 2 2 . 6 2 6 . 9 2 2 . 6 2 3 . 0 2 3 ‑ 8 2 5 . 4
*デザ‑ ト以外は和食 2 3 . ー 2 2 . 2 0 O 1 8 . 9 3 一 . 3 2 8 一 0 1 8 . 0 0 2 5 . 0 2 3 . 8
* *p
く0. 01
秋永優子 ・中村 修 ・渡連美穂 ・片捌結子 ・宮崎 藍 ・下村久美子
そ こで,脂肪含量の少ない給食献立への改善 に向 け,高脂肪エネルギー比率 を生 じる要 因について,
1 0
校 の献立 における脂肪エネルギー比率 を分析 し て検討す る。3 .
和食献立かどうかに関して一般 に,和食は,油や動物性食品の使用が少な く, 脂肪含量が低 い と言われて いることか ら,和食であ るか どうか による脂肪エネルギー比率の違 いを調べ たO
献立 を和 食 で あ るか ど うかで分 類 した と ころ,
「完全な和食」と 「デザー ト以外は和食」, 「その他」
の
3
種 に分 け られた。 「完全な和食」はデザー トに至 るまで全 て和食料理で構成 されて いる場合, 「デザ ー ト以外は和食」は献立構成上附属品的な存在 と考 え られ るデザー トのみが和食ではな い場合, 「そ の 他」は和食料理 を一品以上含むが 「デザー ト以外は 和食」ではない場合で ある。学校 ごとに3種の献立群の脂肪エネルギー比率の 平均値 を算 出 した ところ, 「完全な和食」献立群 と
「その他」献立群 とでは,全ての学校 において 「完 全な和食」献立群が顕著 に低かった(表
2)
。両者の差 は,最低で も4. 0
ポイ ン ト,最高で1 1 . 1
ポイ ン トに 達 した。 「完全な和食」献立群 における脂肪エネルギ ー比率は,半数の学校が25%以下であったが,ほぼ 30%含んでいた ところ も見 られたO 「
その他」献立群 については,脂肪エネルギー比率は,28.5%‑33. 9%
の間に分布 してお り,33%前後の学校が多かった。
学校給食 において,和食の献立の脂肪エネルギー
比率が低 く,新 しい食事摂取基準 に照 らし合わせて も,望 ましいものであることが明 らかにな った。
4 .
主食が米飯かどうかに関して次 に,主食が米飯であるか否かの違 いによって脂 肪エネルギー比率が どのよ うに異なるかを調べた。
「米飯」, 「米飯 とそれ以外 との組合せ」および 「そ の他」に献立 を分類 し,学校 ごとにそれぞれの平均 値 を算 出 し,表
3
にま とめたO主食が 「米飯
」
献立群 と 「その他」
献立群 とでは 脂肪エネルギー比率は,いずれの学校で も 「米飯」献立群が低かったO 「米飯」献立群の場合,脂肪エネ ルギー比率は
22. 2%か ら29. 9%の範囲の分布 となっ
ていた。一方, 「その他」献立群は,脂肪エネルギー 比率が非常 に高 く,低 いところで も32
.3%,高いところでは
40%近 い値 を示 した。
日本人の食事摂取基準 と照 らし合わせ ると,米飯 給食の場合は基準の範囲内にち ょうど納 まって いる が,米飯以外 の献立 の場合 は全 て の学校 にお いて
30%とい う上限を越 えている ことになる。つま り,
米飯以外 を主食 とす る献立は,子 どもたちにとって 明 らかに脂肪摂取過剰 を招 いていることが示 された。5 .
揚げ物を含むかどうかに関して揚げ物 は,食物 中の水分が油 と交替 し, こくとサ クサ クした 口ざわ りで,子 どもにも人気が高いが, 当然脂肪 を多 く含みやすい。
献立 に揚げ物 を含 んで いるか どうか によって脂 肪エネルギー比率が どのよ うに異なるかを,学校 ご
表 3 主食が米飯の場合とその他の場合における学校給食の脂肪エネルギー比率 単位 :鶴 献立群 学校 A B
CD E F G H I J 平均値
米飯 2 乱4 2 7 . 7 2 9 . 2 2 9 . 9 2 2 , 2 2 3 . 4 2 7 . 0 2 6 . 6 2 5 . 3 2 7 . 9 … … 拝 米飯 とそれ以外 との組合せ 2 3 . 2
0O 0 ー 7 . 6 0 3 2 , 2 1 8 , 0 0 0
* *p く 0 . 0 1
表 4 揚げ物料理の有無に見た学校給食献立の脂肪エネルギー比率
単位 :鶴 献立群 学校 A a
C D E.F 伝
HI J 平均値 揚げ物 を含む献立 3 5 . 2 3 3 . 4 3 4 . 2 3 6 . 5 .2 6 . 6 3 6 . 7 3 4 , 6 2 9 . 3 2 7 . 5 3 5 . 5 : : : :] * 糠p ( 0 . 01
‑20
‑学校給食における脂肪エネル ギー比率の現状 と今後の献立のあ り方
表 5 主菜の主材料別 にみ た学校給食の脂肪エネルギー比率
単位 :鶴 献立群 学校 A B C D E ド G H I J 平均値 負 . 大豆 . 豆製品 2 6 . 5 2 8 . 7 2 9 . 0 3 0 . 8 2 4 . 7 2 4 , 0 2 6 . 1 2 一 . 2 2 2 . 8 2 8 . 4 … … こ :] .*
* *p
く0, 01
とに調べた結果を表
4に示す。「 揚げ物 を含む」献立 群は,「 揚げ物を含 まない」献立群 と比べて,総 じて 高かった。その差は,最高では 8 ポイン ト以上で, 最 も少ない学校ではわずかに 0. 2 ポイ ン トであった。
6 . 主菜の主材料に関して
脂肪は全般 に,摂 りすぎると肥満や生活習慣病の 原因となるが,とりわけ畜肉は,血清 コレステロー ル値を上げる飽和脂肪酸を多 く含むため,よ り有害
8である。 日本の食事摂取基準 2 では,飽和脂肪酸の 食事摂取基準 も設け られ,摂取量に対する注意が求 められている。そ こには,「 1 0歳以上で血中 LDL コレステロール値が高い場合,動脈硬化が進行する 可能性があるので,飽和脂肪酸摂取量の制限を含め た対策が望 まれる」 と付記されている。学校給食に おいて も,動物性脂質の摂取量の基準が設け られて いる。 この動物性脂質は,飽和脂肪酸が問題になっ ていることか ら,肉( 畜肉) を指す ものである。魚は, 動物性食品ではあるが,高度不飽和脂肪酸 を飽和脂 肪酸以上に含んでお り,大豆 ・豆製品 と同様,健康 上好ましいとされている。
そ こで,魚や大豆 ・豆製品を主菜の主材料 として
図1
二次加工品の使用頻度と使用献立群の脂肪エネルギー比率
D
校 ◆C校
▼
B
校▼
◆ A
校◆
l校◆ H H
校校0 . 0 0 0 . 1 0 0 . 2 0 0 . 3 0 0 . 4 0 0 . 5 0 0 . 6 0 0 . 7 0 0 . 8 0 0 . 9 0 1 .
00使った献立の場合 と,肉などを主材料 とした場合 に おける脂肪エネルギー比率を調べた( 表 5 ) a
全ての学校において,魚や大豆 ・豆製品を主菜の 主材料 として使った献立群は,脂肪エネルギー比率 が低 く, 21 . 2% か ら 30. 8% の間であった。その他の 材料を用いた献立群は,最低で 27. 1% , 最高で 33
.2%と, 日本の食事摂取基準 と比べても高めの脂肪エネ ルギー比率 となっていた。
7 . 二次加工品使用に関して
給食の脂肪の含量が多 くなる原因として,冷凍や レトル トなどの二次加工品の使用, とりわけ主菜 と しての使用の問題があげ られている。そ こで,二次 加工品を用いた献立の脂肪エネルギー比率について 調べた。
二次加工晶を使用 した献立群の方が脂肪エネルギ ー比率が高い学校 と,使用 していない献立群の方が 高い学校 とがあった。
そ こで,二次加工品使用頻度 と給食の脂肪エネル ギー比率の関連を調べるために,表 1 で示 した各学 校の月平均値 と二次加工品使用頻度を対比 してプロ ッ トしたところ, r‑0. 88 で,相関が認め られた( 図 1 ) 。 このことか ら,二次加工品の使用頻度が高 くな ると,給食の脂肪エネルギー比率が全般に高 くなる ことが明 らかになった。
8 . 牛乳に関して
牛乳の脂肪は, 3. 8% の含有率で,一人分 208 g 中 に 7. 8 g 含まれ, 70. 2kc a l に相当する。 これは,例え ば小学校中学年の場合,学校給食の平均栄養所要量 の基 準 で 示 され て い る総 エ ネル ギ ー 650 kc a l の 1 0. 8% もに当たるO
食事摂取基準に当てはめて考えると,低学年では 一食で摂取する脂肪の 4 割 ‑6 割,中学生では 3 割 弱 ‑4 割強を牛乳で占めることになる.
このような脂肪含量である牛乳は,いずれの学校
秋永優子 ・中村 修 ・渡連美穂 ・片捌結子 ・宮崎 藍 ・下村久美子
でも,調査の対象 となった全ての 日に供されていた。
9 . 脂肪エネルギー比率増加を押さえるための学校給 食献立のあり方
学校給食献立 における脂肪エネルギー比率の高 低に関わる要素 として,和食,米飯,揚げ物,主菜 の主材料 としての魚や大豆 ・豆製品,冷凍や レ トル トの二次加工品,そ して牛乳の 6 つが見出されたO このうち、脂肪エネルギー比率に有意差の見 られた 和食,米飯,揚げ物,主菜の主材料 としての魚や大 豆・ 豆製品を要素とする各献立群の 1 0 校の脂肪エネ ルギー比率平均値を、表 6 にまとめた。
各献立群間の比較すると,米飯 とその他 との差が
表 6 種々の献立群の平均値の養
(
% )
掛]7‑1#
qrヰH等
碧 00005050332215.0
最 も大き く, 8. 5 ポイ ン トであった。次が,完全な和 食であるかその他であるかで、やは り和食が低 く, 6. 7 ポイ ン トの差であった。揚げ物 を含むか否か と, 主菜の主材料に関しては,差はともに 4. 5 ポイン ト 程度であったが、現代の子 どもの脂肪の摂取状況を 考えると、大きな意味を持つ数値である。厚生労働 省平成 1 5 年国民健康 ・栄養調査報告 9 をもとに子 ど もの摂取する脂肪エネルギー比率を図示 した( 図 2) . 食事摂取基準をオーバー している子 どもは、各年齢 で 2 割強か らおよそ 4 割 に上ることがわかる。食事 摂取基準を 4. 5 ポイン ト程オーバー している子 ども は、各年齢で 2 割前後 と考えられる。子 どもの健康 を考えた際,脂肪エネルギー比率低減のために,米 飯,和食、揚げ物を含 まない献立,主菜の主材料 と
して魚や大豆 ・豆製品の使用が期待 される。
次に,上記の献立要素のうちのどれか ら取 り組ん でいくとや りやすいかについて、検討する。どの程 度容易に実施できそ うかという,実施可能性につい てみてみる。一般的に見て可能性の高いものか ら順 にあげると,次のようであると考え られる。
( 1 ) 和食の献立を増やす
( 2) 主菜の主材料 として,魚や大豆 ・豆製品を積極的 に用いる
( 3) 揚げ物 を減 らす
冷凍や レトル トの二次加工品を減 らす ( 4) 牛乳回数を減 らす
( 5) 米飯回数を増やす
図
2
男女別年齢別 にみた脂肪エネルギー比率の分布6‑8
歳
9‑12歳
12‑14歳
6‑8歳
9‑12歳 1 2 ‑1 4 歳
( 厚生労働省平成晃 年国民健康 ・栄養調査報告 ( 2 0 06) を もとに作成)
‑22‑
学校給食 における脂肪エネル ギー比率の現状 と今後の献立のあ り方
和食の献立については,表
7
に示 したように,1
校を除いて,非常 に実施頻度が低 い。和食をとる ことの大切 さは,多 くの栄養士か らよ く聞かれること であ り,また,経費を伴 うもので もないため,献立 に多 く取 り入れて実施することは困難ではないはず である。
子 どもたちの噂好 も大きなネ ックとなってお り, 和食は教職員 には評判が良いが,逆 に子 どもたちの 残食は多いという実態は以前か ら見 られ,近年その 傾向は強 くなっているOそ こに声かけし,和食 に対 する関心 を高め,食べ る意欲 を引き出す ことが重要 である。いかに温か く,楽 しくいざな うことができ るかは,教師の力量にかかっている
1 0
と言える。 し か し,担任教師には,子 どもたちへの食教育 に対す る意識の低 い人 も多いため,栄養士および調理員 に よる子 どもたちへの直接的働きかけと,教師に対す る提言や助言 による間接的働きかけが非常 に重要 に なって くる。主菜の主材料 として,肉を減 らして魚な どを積極 的に用いることに対 して も,栄養士はすでに取 り組 んでいる。表
7
に示 した数値は,魚料理を主材料 と する献立 にわずかに大豆 ・豆製品を主材料 とした献 立が含 まれるものであるが,一般家庭の魚料理の出 現頻度 と比較すると高い頻度で実施 しているといえる。ただ,魚料理には二次加工品が用い られること が多いため,揚げ物加熱に供 されることや予想以上 に脂肪含量が高い料理 も少な くない。また,素材 と しての魚か らの調理 に比べると風味が悪 く,子 ども の残食の原因ともなっている。素材か ら作 る魚料理 を供する中での子 どもたちの食噂好形成が望 まれ る。
学校給食 において揚げ物献立が実施 され る理 由, および二次加工晶が使用 される理 由は,主 として時 間 と手間の節約のためであるという説明がよくな さ れる。 また,蒸 し物設備がない,焼き物設備がない などの調理設備の問題があげ られるOまた,主食 と
して揚げパ ンやピロシキな どが取 り入れ られるのは, 献立のバ リエーシ ョン付加が 目的 とされているのか
もしれないが、要するに子 どもの噂好への配慮 と考 え られ る。全般 に揚げ物献立の実施頻度は高 く、半 数の学校は
3
日に1
回か ら4
日に1
回供 されている ことになる。生活習慣病雁患者や生活習慣病予備軍 の子 どもを育てると, 自治体や国は、後の医療保健 への出費 と就業者の確保 に苦 しむ ことになる。それ よ りは、自治体の一時的な支出は伴 って も,子 ども を健康 に育てていくための投資 と考えて,給食調理 の施設設備の充実に積極的に取 り組む ことが先見性 があると言えよう。牛乳 については,予算の問題がか らまず,簡単 に
表 7
種々の献立の実施頻度秋永優子 ・中村 修 ・渡連美穂 ・片
親
結子 ・宮崎 藍 ・下村久美子実施できそ うに思われがちであるO しか し, 日本人 には,牛乳信仰
1
1があるため,牛乳の登場回数 を減 らすのは容易ではない。学校給食の栄養所要量の基準では,多 くの栄養素 等は
1
日の所要量の33%とされているにもかかわ ら
ず,カル シウムは50%となっている。 「
牛乳 につい て,児童生徒等のカル シウム摂取 に効果的であるた め,その飲用 に努める こと1 2 」
とされている。実は牛乳では,大多数の 日本人が該 当する乳糖不 耐症の場合,カルシウムが吸収 されないだけではな く,カル シウムの排浬が促進 され る
1 3
上,脂肪 を多 く含んで いることも看過できない。牛乳 をすべての 献立につける ことは,味の調和の点か らも不適 当で, 子 どもたちの味覚や噂好の形成 に及ぼす影響が心配 される。 また,牛乳 を給食 につけるのをやめた こと によって,児童 にとって食事の量が適量 にな り,秦 かずや ご飯 の残食 も減 る ことが報告1 4
されて いる。前述 のよ うに、主食 を米飯 にす る ことによる脂肪 エネルギー比率の低減 は,最 も顕著で あった。表
7
中で米飯実施頻度が0. 8前後 となって いる学校は,
米飯が週4
回実施 されているところである。 これ ら の学校 には、脂肪エネルギー比率が特 に高いところ は含 まれていなかった。米飯実施 回数 の低 いところ は,回数 を増やす ことが望 まれるO しか し,米飯給 食の回数は, 自治体 によって定め られているため, 栄養士の一存では変 え られない場合が多 い。米飯 に は,食事全体 の脂肪エネルギー比率 を下げるだけで な く,次 のような利点があるため,基本的には,毎 日の実施が望 ましい。全国の4. 5%の学校で、米飯給
食週5日以上が行われている。
(1)ご飯 は,身体 に負担 のな いエネルギー源 として 優れた ものである。
( 2)
ご飯は,リー ド性1 5
の高い主食で ある。口中調味 をしなが ら食事 をする 日本人にとって,ご飯は,秦 かずがお いしく感 じられ る主食であ り,一緒 にいろ いろなおかず を食べた くなるO他 の主食 には味がつ け られてお り,味の面で完結 して しまうため,おか ず を食べたいと感 じられない。( 3)ご飯 はお い しく,子 どもたちの多 くは,給食の
パ ンよ りもご飯の方が好 き1 6
である。( 4)
米は 自給率が高い食品であ り,さ らに地場産の も のを容易 に入手する ことができる。子 どもに将来 に わたって食べ させる主食 として適 して いる。 また,‑24‑
国産であるため,農薬の使用が限 られてお り,安全 性が高い。一方,小麦粉製品には,外国産小麦が使 用 されて いるため,ポス トハーベス トもされてお り, 特 に学校給食用パ ンには農薬の含有量が多 い
1 7
こと が明 らか になっている。( 5)米は,社会科や総合学習,家庭科な どで学習 の
題材 とな り,さ らに地場産であれば,みそ作 りに利 用する,生産者 と交流する,循環授業1 8
で学ぶな ど, 子 どもたちへの教育的価値が高 く,相互 に影響 し合 って子 どもたちの米飯給食 に対す る関心 を高める機 会が多 い。( 6)
米飯 を主食 とした食事 によるア トピー の改善な どが聞かれている。1 0. まとめ
学校給食は,子 どもたちの現在の食生活や健康だ けでな く,成人後 の食習慣や食噂好 にも強い影響力
1 9
を持つ ものである。学校給食の脂肪エネルギー比率 は高い学校が多 く,献立作成時 における脂肪摂取 に 対する危機感の薄 さが感 じられた。子 どもたちが生活習慣病 を回避でき,健康 に過 ご し,成長 し,成人 として元気 に就労 していくために, 脂肪エネルギー比率へ配慮 した献立構成 による学校 給食の実施が望 まれる。
施設設備や 自治体 の取 り決 めな どと関連 の大 き い事項 もみ られ るが,設置者 にそれ らの充実 を働き かける一方で,給食献立の見直 しによる改善 も,早 急 に必要である。
Ⅳ
要約本研究は,学校給食 における脂肪摂取の問題 に注 目し,脂肪エネルギー比率の観点か ら現状 を調べ, 増加す る要因を検討 した。新 しい 日本人の食事摂取 基準が平成
1 7年 4月に公表 された後 に実施 された 1 0
校 の給食献立 を分析 した ところ,以下の結果 を得 た。給食の脂肪エネルギー比率の月平均値が高 い学校 が多 く
,6
校では食事摂取基準の上限を越 えていた。「完全な和食」献立群では半数の学校が
25%以下
であったが, 「その他」献立群では33%前後 の学校
が多かった。いずれの学校で も 「米飯」献立群 の脂肪エネルギ ー比率は
22. 2%か ら 29. 9%の範囲であったが, 「
そ学校給食 における脂肪エネル ギー比率の現状 と今後の献立のあ り方
の他」献立群は,32.
3%か ら40%近 い値であったO
「揚げ物 を含む」献立群の脂肪エネルギー比率は,
「揚げ物 を含 まない」献立群 と比べて, どの学校で も高 く,1
0
校 の平均値は33. 0%
と28. 5%であった。
全ての学校 において,魚や大豆 ・豆製品を主菜 の 主材料 として使 った献立群は,脂肪エネルギー比率 が低 く,21
. 2%か ら 30. 8%の間であった。その他 の
献立群では,27.1%か ら 33
.2%とな っていた。二次加工品使用や牛乳が,給食の脂肪エネルギー 比率 を上げている ことな ども示 され,給食献立の総 合的な見直 しの必要性が明 らかにな った。
謝辞
資料 を提供 していただいた
1 0校 の学校栄養士 の
皆様 に感謝 し,厚 く御礼 申し上げ ます。引用文献
1秋永優子,中村修,渡連美穂,片
測
結子,谷遼平, 宮崎藍 :子 どもの生活習慣病の観点か ら見た学校給 食における脂肪摂取量 に関する研究 ,長崎大学総合 環境研究,第9
巻,第1
号,63‑68(2006)
2第一出版編集部 :厚生労働省策定 日本人の食事摂 取基準(
2005
年版),第一出版,62(2005)
3日本スポーツ振興セ ンター健康安全部健康安全事 業課 :学校給食要覧, 日本スポーツ振興セ ンター,
56( 2006)
4健康 ・栄養情報研究会 :厚生労働省平成
1 5
年国民 健康 ・栄養調査報告,第一出版,52( 2006)
5日本スポーツ振興セ ンター (前出),35
6日本スポーツ振興セ ンター (前出),1
2
7
幕内秀夫,鈴木公子,清水修 :給食の力,風涛社, 東京,202( 200 4)
8中川雅夫 :生活習慣病の