石川県珠洲市方言の「ク」と「フ」
著者 川本 栄一郎
雑誌名 金沢大学語学・文学研究
巻 1
ページ 110‑98
発行年 1970‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/2297/23687
石川県珠洲市方言の「ク」と「フ」
川本栄一郎
1.はじめに
珠洲地方で,「ク」と「フ」をとりちがえて発音するということは,すでに多くの方々によ って指摘されてきた(注1)。しかし,その実態は,必ずしも明らかにされているとは言えな い。地理的分布はもちろんのこと,音声そのものについてもまだわかっていない点が多い。今 のうちにくわしく調べておかないと,こういう変わった訓りの現象は,近い将来,消え失せて しまうのではないかと思い,昭和44年8月から同年11月にかけて現地に赴き,調査を行なった。
珠洲地方における「ク」と「フ」の靴りについては,幸い,明治54年12月に刊行(昭和5年 12月再版)された石川県教育会編「石111県方言彙集」と,昭和15.4年ごろに刊行された(注2)
石川県国語及漢文学会編「石川県の訓音調査」にたくさん用例が掲げてあるので,筆者(IⅡ本)
が臨地調査した結果を報告するとともに,それらの文献を参考としながら,珠洲地方で,「ク」
と「フ」の音がどのように移り変わってきたかを探ってみることにしたい。
なお,能登島の野崎と須曾にも,「ク」と「フ」の計上りが見られるので(注5),能登島の 例も参照しながら考えを進めていくことにしたい。
2.資料
資料は,すべて昭和44年8月から11月にかげて行なった臨地調査によって集めたものである。
調査のしかたはすべて「なぞなぞ式」によった。
調査地点は,「ク」を「フ」に誰る現象の最も著しい珠洲市宇都山を中心に内陸部から6地 点,海岸部から5地点,能登島から2地点選んだ。調査地点の位置は,地点番号を用いて図1 以下の地図に示してある。
被調査者は,すべてその土地生え抜きの老人である。60歳以下になると,「ク」を「フ」に訓 る現象がほとんど認められなくなってしまうので,70歳以上の高齢者だけを被調査者に選ん だ。各地点1名を原則とし,できるだけ女性を対象としたが,小泊と中では適当な人が見つか
らなかったので,男性を調べた。
次に,被調査者の性別と生まれ年を示す。〔〕の中の数字は,すべて「明治何年生まれ」
かを表わしている。なお,地点名の左に記してある数字は地点番号である。
表1被調査者一覧
1珠洲市大谷(おおたに)〔女10〕2珠》'1市折戸(おりと)〔女28〕
珠洲市狼煙(のろし)
〃飯田(いいだ)
〃中田(なかだ)
〃中(なか)
〃上山(か承やま)
鹿島郡能登島町須曾(すそ)
5579椚旧
〔女25〕
〔女29〕
〔女51〕
〔男24〕
〔女24〕
〔女55〕
4珠洲市小泊仁どまり)
6〃岡田(おかた)
8〃宇都山(うつやま)
10〃宗末(むねすえ)
12鹿島郡能登島町野崎(のざき)
〔男29〕
〔女28〕
〔女29〕
〔女25〕
〔女18〕
図I綱覆勉怠、
沸洲市
21---§
2 3
111
z-7、11
二二』憲舎ノ’二 二二』憲舎ノ’二
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』』・CD50〃●。h■■〉 ●一 ●一 ●戸 0能蓬晃
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------騨市塩野
02 02 13
13
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3.字都山方言の音韻体系
「ク」を「フ」に計上る地点の代表として珠洲市宇都山方言(8゜以下,()の中の数字は 地点番号を示すb)をあげ,「ク」と「フ」および「ク」・「フ」以外の力行音.,、行音・ウ 段音の実態を示して承よう。なお,「標」は「標準語」の略称,「字」は「宇都山方言」の略
称である。
し牛ノウノ鮒
の嫁叫:写'ん②源,L:rim 鬼[uM01〕臼[0sわ
)w,すLlWu9sIコヰ[OS).]
<M4LaM''1コうなれⅢzWi〕
繍座因か ①図地艇
Uし:字イ
[d墓Yグ⑪
[tぅMzl]
[slゴヱタM1。
寿司[sYsY.
汝隊[上1上1コ 伝[。≦ソ]
上[槌1柳 靴[州刷〕
zpB4化I震Y励 蠕弓LSiM.
繩鵬父繩川剛謂
[ヒシ山JldH〕鍬[+靴シ厚]
MoM`繊宅[SMLzか]
[9M,'ルコ燦叫uM1Cフ
[L】ル急1b`MUN弘企[、①。Mプ リ矢じりしコカヌ[4.9W・フ
岬汕]艸咋iji?n゜]
[|,`ユロル〕笈伽。□1コ
が、ム[。洲川蝿M・ルコ
鵜勵柵馴:二号
枕[q,レレリコップ[腕Pro。
蛎匹比加石脚〃T]
汝[sYMヲ[joMi]
仁ルプujMiい〕冬[午必ルコ 牛ゾム[3jい』、卿郊[永『畑 野邦[J4l〔j川
zLT[a・も川]
よし、i,)DM'Wx〕
)鍬[lti叫押 瀧融叩:W〕
繩[S川り。〕
(1)「ク」と「フ」
①源にu:学k叫②朧kい;字luL③鰊luル:亨|,M
索[M℃]鋳[午uLりi]犬録Lヰル1K州 販[蝿ku,し〕九フLL`;wk叫販L蝿“]
藤[:鰍?蕊(憩二/,葦坊{鮴?□
顎叩kMLJpL艸七ゴロ篝し牛山|号〕
ふくろうE艸艸[〆j)メリ、L牛wMMし〕得L干しM9コ 毒[J小川喬L中wLbi〕I;1ブi和し郵与棚
扉侭L七・jwq
犬LQkWLj
二食リij4ルJ察し蜂uLsO℃]ナイフLM9“〕
鰯小[I2MbL9jニケリ'州]
「薬」と「暗い」の「ク」を発音する際にも唇に摩擦が生ずるが,しかし,完全に〔の〕には なり切ってはおらず〔k〕の音もまじって聞こえる。母音は〔のul〕や〔k虹〕と同様に平口の
〔Uu〕である。こういう種類の音は仮に〔'伽'〕という記号で表わすことにする。
次に,「ク」が〔①〔u〕または〔1N(,Cu〕になる現象が語頭にだけ認められる点が注目され る。宇都山の被調査者は,「九九」をはじめ〔のび'い,〕と発音したが,それではおかしいと
思ったのか,すぐ〔のwkn〕と言い直している。
(2)力行音
「鯉・声・瘤・婿・柿・舵・火事・左官・やかん・西瓜・煙・桶.菊.きせる.桐.息.
球・お径・キャラメル・脚絆」などの語を調査語彙として,「..力.ケ.キ.キュ.キヨ.
キャ」などの音についても調べてふたが,「火事・左官・やかん・西瓜」の「力」が,合勧音の
〔腕〕になるほかは標準語の音とほとんど変わりがない。調べた限りでは,珠洲地方と能登 島には,「.・力・ケ・キ・キュ・キヨ・キャ」が「ホ・ハ・へ・上.ヒュ.ヒョ.ヒャ」に 言化る現象は1例も認められなかったので(注4),くわしいことは省略する。
(3)ハ行音
「ほたる・二本・大砲・箸・春・針・位牌・二杯・庇・蛇・ひげ・膝.左.あひる.朝日.
霊・土俵・百姓・二百」などを調査語彙として,「ホ・ハャヘ.上.ヒョ.ヒュ.ヒャ」など
の音を調べてふたが,「屍・蛇・ひげ・膝・左・あひる・朝日」などの「ヘ」.「上」がとも
に〔99〕,「雷・土俵・二俵」の「ヒョ」が〔のjo,〕,「二百」の「ヒャ」が〔ja〕と
発音されているのを除けば,あとはふな標準語の音と変わりがない。調べた限りでは,珠洲地
方と能登島には,「ホ・ハ・ヘ・上・ヒュ・ヒョ・ヒャ」が「.・力・ケ・キ・キュ・キヨ・
キャ」に誰る現象は1例も認められなかったので(注5),くわしいことは省略する。
宇都山では,ウ段音がオ段音になる例が著しく,また,そうならない場合でも,母音が〔u〕
であることが多い。ただし,勧音と「ズ・ス・ツ」の場合は,オ段音になることはほとんどな い。鋤音では母音が〔皿〕になることが多く,また,「ズ・ス.ツ」は〔dzl〕〔SI〕
〔tsnと発音され,「ジ.シ,チ」と同じ音になってしまう。「ズ.ス.ツ」と「ジ.シ
・チ」の問題についてはいずれ稿を改めて述べるついである。なお,宇都山では,「イ」と
「エ」も区別がなく,ともに〔c〕と発音される。
以上のような実態に即して,宇都山方言の音韻体系をモーラ表で示せば,次の通りとなる。
なお,モーラ表に掲げてある記号のうち,Nははねる音,Qはつまる音,Rは長める音を示し,
-はモーラの欠けている箇所,()は,適当な語例が見当たらないが可能性のあるモーラを
示す。
uoae--jojawa
huhohahe-hjuhjohia-
9ugogagegi gjugjogjagwa kukokakekikjukjokjakwa
-zozazeziziuzjozja-
-sosasesisjusjosja-
----ciciucjocja-
-dodade-
-tota上e-
nunonaneninjunjonja-
ruroTarerirjurjorja-
mumomamemi(mju)mjomja-
bubobabebi(bju)bjobja-
pupopapepi(pju)pjopja-
N Q
R次に,宇都山以外の地点における「ク」とけ」の状態を見てふよう。
14.「ク」と「フ」の地理的分布
表2は,珠洲地方および能登島で「ク」と「フ」がどのように発音されているかを地点ごと に調べ,それを一覧表にして示したものである。
表2で注目すべき点をまとめて示せば次の通りとなる。
(1)能登島には,「ク」が〔。、〕になる現象と「ク」と「フ」が同じ音の〔Mのu'〕にな る現象とが認められるが,珠洲地方には「フ」の誹りは認められず,「ク」が〔の'、〕
と〔'や、〕に誰る現象だけが認められる。
〔薊一望]:, 冒金]… 〔三号].
OG、
⑥⑥○
RL刺「、L因蝿
ト
圏缶鵜一騒鰻 11や
+やi、
胴I率 侭1号 柧囎 牢 跡程 、<(’
后wo..、
ィK噂 題
⑥
③
⑤
③
② 鰯
③
⑳
②
②
⑤
③
⑨ 轍
③
⑫
③ 鰯
③
⑨
⑰
⑮
③
⑤
⑲
⑨
⑨
⑮ 鰯
⑱
⑬
⑯
⑥ 鋤
③
⑬
②
⑲
⑧ 鯵
②
⑮
⑱ 鯵
轡 畷 鯵
⑭ 鰯 鋤 鯵
⑬
③
⑨
③ 鰯
⑲
⑨ 鞠
③ 愚 41,1
⑬ (熟 愈
瞳 鰯 酌
③
⑤
②
。
③
⑨
②
⑬
③ 鯛 鰯
③
⑧
⑬
⑥
⑬ 勘
⑨
⑨
② 鰯
③
② 鱒
③
② 鰯
鰯 職
② 躯
⑥
⑮ 鞭 鐙 鰯
⑭ 鯵 で〉
イ’
職 鰯
⑬ 鰯
⑫
⑨
⑬ 鞠
③
⑨
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⑥
②
③
③
⑬
②
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⑨
⑬ 鰯
⑬
③
⑱
⑫
②
⑭
⑨
④
③
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、 ̄ Cl (Y、、!‐
Z, (。 心 00 (y ̄ 。 ̄■- -- ̄ C、(口一 [vフマ■己(2)珠洲地方でも能登島でも,「ク」と「フ」の誹りは語中語尾には認められず,語頭にだ
け認められる。
次に,図2は,表2をもとに,「ク」が〔のUu〕になる割合を地点ごとに数え,それを地図 で示したものである。なお,「フ」の誰りは,能登島の野崎(12)と須曾(15)にだけしか認 められないので,地図で示すことは省略する。また,「ク」以外の力行音および,、行音の場合 は,ほとんど地域差がなく,どの地点もふな先に示した宇都山の場合と大同小異であるので,
地理的分布を示すことは,やはり省略する。
さて,現在,珠洲地方には,「ク」の説りだけが認められ,「フ」の計上りは認められないの であるが,先に紹介した「石川県方言彙集」と「石)||県の訓音調査」によると,かつて珠洲地 方にも,現在の能登島と同様に,「ク」と「フ」の誹りがあったということになる(注7)。
次に,「石jll県方言彙集」と「石)Ⅱ県の訓音調査」に出ていくる,ク→フとう→クの例を見
てふよう。
5.方言集の「ク」と「フ」
まず,はじめに,明治54年12月に刊行(昭和5年12月に再版)された「石)11県方言彙集」の ilまうから見て承よう。なお,用例のあとに記してある「珠」は「珠洲」の略称である。
<でフデ(筆)珠 くぢフヂ(藤)珠 くれフネ(舟)珠 ぐんどフンドウ(分銅)珠
マョア
ふびクビ(首)珠
ふる主クルマ(車)珠
ふざクギ(釘)珠
ふしクシ(櫛)珠
ふりクリ(栗)珠
/
ふちょ-クチャウ(区長)珠 ふらがりクラガリ(闇)珠
次に,昭和1564年ごろに刊行された「石川県の誰青調査」(「鳳至・珠洲地方」の部)の 用例を見てふよう,なお,「鳳至・珠ilMI地方」の担当者は,飯田高等女学校の神谷忠幸氏(注8)
ということになっている。
「ふ」ヨリ「<」(ぐ)へ くふ文
<ね舟 くるしき風呂敷 くう風呂
ママぐずまMiL
〈ところI懐 くまんぞ<不満足
<とん蒲団
<たつ二つ くゆ冬 くさ房
くるくら古蔵(珠洲郡‘地名)
くぢの藤里(珠洲郡・個人姓)
ヨマー手くちほら漢}原(珠洲郡・個人姓)
くる振る くさがるふさがる
<く吹く(風が)
<とる太る
<坐む含tj くるい古い
<で筆 くぎ鴎 ぐうだ?ヒリミ風呂棚
司アマくた蓋
<んどし繩
<じさん富士山
<しぎ不思議 くしあな節火 くくる袋 くぼ父母 ぐんまわし筆Bil くぢ藤 くち緑
ママ<tf踏む
<ける更ける
<やすふやす くる降る(雨が)
〈上らむふくらむ
<上 拭く
<つうに普通に
とうぐ豆腐 せんぐうき扇風機
さいく財布
「<」ヨリ「ふ」へ ふし 櫛・串 ふうぎ空気 ふさ草 ふしい苦心
ママ
ふく靴
,ママJg露ぴ首
ふわのは桑の葉
ふき ふる主 ふすり ふらけ
マーマレ白露り ふらがり ふらう
母 労 茎車薬水一栗闇苦
ふさり鎖 ふけばり桁針′
ふい
抗 ふしかき串柿
ママ"占竪う食ふ ふむ汲む ふらうなる暗うなる
ふぎ ふも ふせん ふさる ふける ふすぶる ふらい
釘 雲 九銭 腐る 紡げる
くすぶる 暗い
コンフリコンクリ力、承ふづ紙屑 なふ泣く
語中語尾における誰りの例は少なく,「石川県の靴音調査」に,ク-フとう→クの例が各五
例ずつ見られるにすぎない。
二つの方言集には,珠洲地方以外の地域の訓音も記してあるが,「ク」と「フ」に関しては,、
わずかに「石川県の訓音調査」に,
くすぶるフスブル(鱒ル)金沢
<くめる含める(ふくめる)松任 く人めるふくめる(含める)羽|牢 くすべるふすくる河北
などがあげられてあるにすぎない。「ク」と「フ」をとりちがえて発音する現象は,もともと,
珠洲地方・能登島などごく一部の限られた地方だけのものだったようである。
6.ク→フとう→クが併存した事情
二つの方言集によると,かつて珠洲地方には,ク→う゛フ→クという相反する方向に向かう 二様の音韻変化があったということになるが,しかし,ほんとうに「ク」と「フ」の誹りは,
二つの方言集が述べているように,「ク」が「フ」になり,「フ」が「ク」になるという形で
行なわれたのかどうか。
というのは,同じ時期に同じ地域で,しかも主として語頭という同じ音声環境のもとで,全 く逆の方向に向かう,ク→フ・フ→クという変化が,はたして起こり得るものかどうか疑問に
思われるからである。
あるいは,かつて珠洲地方でも,能登島の野崎と須曾に見られる例のように,「ク」と「フ」
が同じ音で〔1やul〕と発音されていたのを,方言集の筆者が,「ク」の計上りは「フ」にひき つけて書き取り,「フ」の計上りは「ク」にひきつけて書き取るということをしたために,「ク」
と「フ」は全く逆に発音されているという表記のしかたになってしまったのではなかろうか○
二つの方言集には,現在の状態から推測するにたぶん当時も同じ音一たとえば,〔dZI〕
〔sI〕〔tsn-になっていたと思われる,「ズ・ス・ツ」と「ジ.シ・チ」を二つに分
けて扱い,「ズ.ス・ツ」は「ジ.シ●チ」に誹り,「ジ.シ・チ」は「ズ.ス・ツ」に計上る
という表記のしかたをしている例がたくさん見られるわけだから,「ク」と「フ」の誹りにつ
いても,同じやり方で書き記したということは十分に考えられる。
因承に,二つの方言集では,「エ」と「イ」の誹り,「ヘ」と「上」の誹りも同様のやり方
で書き表わしている。
次に’二つの方言集における,「ズ・ス・ツ」と「ジ。シ・チ」の靴り,「エ」と「イーの誰
り,「へ」と「上」の誹りの書き表わし方を見て承よう。
(1)「石川県方言彙集」から
しじめスズメ(雀)すずめがひシジミガヒ(蜆)
ママしなスナ(砂)すずス:j,(筋)
し承スミ(墨・炭)シシ(獅子) すし
しそスソ(裾)すずスシ(鮓)
しりぽちノスリパチ(擢鉢)すつけシツケ(朧)
しス(酢)ずつさくシッサク(失策)
すペ シベ(糟)
いび ぃだ し、くぼ
エビ(蝦)
ニダ(枝)
ヱク韻(笑騒)
ち ねもたんすぐぽ えええええええ
JJJJEJJJ稲芋板犬子唇焼 くくくI崎髄叔 ネモタヌ イイイイスチイ イグ
イひぴ ひ承 ひつつし、
ヘビ(蛇)
同
ヘッツヒ(竈) ヘヘヘヘベマ 一つ櫛マ ぼ
さ 戎ヒモ(紐)
上(火)
ヒイサマ(太陽)
ピッ(櫃)
ヒベチ(火鉢)
(2)「石ノ'1県の訓音調査」(「鳳至・珠洲地方」の部)から しずぐん琳||郡ず字 し壁め雀す蟹筋 ち蟹りかた綴方す賀ふかひ蜆貝
ママしず煤つ型、地図 しな砂す上寿司 し糸墨。炭つユ父
<つ
ち上土十口
いび いだ
蝦枝 えん
えぼ
犬洗
杖声
つし、こし、
ねた 鰐え』え 稲板
ひつ上ひ篭へばち火鉢
ひら篦へぼ 紐
ひ竺 蛇へげ髪
「石Ill県の訓音調査」(「鳳至・珠UII地方」の部)には,以上のほかに同趣の誹りが,「ズ・
ス・ツ」95例,「ジ.シ・チ」158例,「エ」58例,「イ」88例,「ヘ」25例,「上」99例もあ゛
げてある。
さて,それでは,語頭にくる「ク」と「フ」は,どうして同じ音の〔'ゆりu〕に誰ることにな ったのであろうか。これについては,次のようなこと力簿えられる。
(1)特に語頭にくる「ク」の場合に,〔ku〕の母音〔u〕をはっきり発音しようとして唇に 力がはいり,その影響で子音〔klが唇音化し,同時に母音〔u〕の唇音的|生質が子音に吸 収されて弱まり,〔'ゆUu〕という音が生じたのではないか。
(2)「フ」の場合は,ハ行音における〔の〕→〔h〕という変化が「フ」にも及んで〔のuu1 が〔hxu〕に変わったが(注9),特に語頭では力がはいって破裂音の〔k〕が加わり,
〔1W11〕という音になったのではあるまいか。
(3)「フ」の〔kMl〕はあとで「ク」の〔1や:11〕に統合され,「フ」も「ク」と同じように C伽'〕と発音されることになったのではなかろうか。
「ク」の〔i⑥エ'〕については十分可能|生が認められるが,「フ」の〔Ⅲ。)虹〕については確
かなことは言えない。
現在,珠洲地方には,「フ」の計上りは認められず,「ク」の誹りだけが認められるが,これ は,おそらく,「石川県の訓音調査」の作られた昭和15.4年ごろから現在までの間に,「ク」
の計上りだけが残って「フ」の靴りはなくなるという変化が,珠洲地方で行なわれたことによる
しのでばないかと思われる。
それでは,この変化は,具体的にはどのような形で行なわれたのであろうか。以下,その問
題について考えてみることにしたい。
7ク→フだけが残った理由
表Zを見ると,宇都山では,語頭にくる「クjMフ」もほとんど〔のu〕になっているが,
この〔・ロロ〕は,〔lbuu〕の〔k〕が脱落して生じた音であろうと思われる。宇都山では,
「んの〔IやU〔'〕も「フ」の〔'伽'〕も同じように〔'やpu〕→〔のU〔,〕と変化したので あるか,「フ」の場合は,そういう変化の結果生じた〔のJu〕の音が,標準語の「フ」の音と 同じような音であるために,いわゆる「誹り」ではなくなってしまい,「ク」の〔のUu〕だけ がF計上り」として残ることになったものと思われる。、現在,宇都山にク→フだけが認められ,
フークが認められないのは以上のような事情によるものと推測される。
それでは,〔'や幻→〔⑪'〕という変化はどうして行なわれることになったのであろう
か。
〔l、皿〕と〔①[、〕のちがいは母音にはなく,子音にあるわけだから,〔'⑪Cu〕→〔Ouu〕とい う変化は,力行音→ハ行音という変化と関連があるのではないかということが,まず考えられ る。しかし,すでに述べてある通り,珠UII地方にも能登島にも,力行音がハ行音に託るという
現象は1例も認められない。
子音に原因がないとすれば,母音はどうかということになるが,これについては十分可能性
が認められる。
というのは,「ク」が「フ」になる現象とウ段音がオ段音になる現象とは,この問題を考え
るのにきわめて有益な地理的分布を示しているからである。
「ク」の分布は,すでに図2に示してあるので省略し,ここでは,「ク」・「フ」以外のウ
段音の分布を示すことにする。
まず,はじめに,ウ段音の地点別一覧表を掲げる。
図5は,表5をもとに,ウ段音になる割合を地点ごとに数え,それを地図で示したものであ
る。
す`Z分
←蝋鱗勒
q■(」
図5によると,「ク」が「フ」に計上る現象の著しい宇都山・中(9)・折戸(2)などの地点では,
ウ段音がオ段音に誰る現象も著しく,逆に,「ク」が「フ」に計上る現象の少ない,飯田(5)・岡 田(6)・中田(7)などの地点では,ウ段音がオ段音に計上る現象も少ないということになるが,この ことは,「ク」が「フ」に言化る現象とウ段音がオ段音に計上る現象とは互いに相関関係にあるこ
とを示すものと解される。
おそらく,宇都山・中・折戸などの地点では,まず,はじめに,ウ段音の母音の持つ唇音的 性質が素因となって,〔ku〕→〔Rbuu〕という変化とウ段音→オ段音という変化とが平行して起 こり,次に〔'やCu〕はやはりウ段音の母音にひかれてさらに唇音化し,〔のUu〕になったので あろう。狼煙(3)・野I崎U小須曾(13)の〔のuu〕についても同様のことが考えられる。
大谷(1)・宗末(、I・上山(11)などの地点には,現在,「ク」が〔ouu〕〔'や,u〕になる例が少 ししか認められないので,確かなことは言えないが,上黒丸(宗末と上山との間にある集落)
の新谷ゑさを氏(上黒丸生まれ。中年の女性)によると,「上黒丸では「ク」と「フ」をとり
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