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軽度発達障害児が在籍する通常学級における授業研究

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(1)

軽度発達障害児が在籍する通常学級における授業研究

一養護教諭の視点から一

斉 藤 ふ く み * ・ 井 上 理 恵 * * ・ 坂 田 真 衣 * * 新 福 直 子 * * * ・ 西 原 絵 里 子 * * ・ 村 田 茉 知 * *

A Lesson Research in an nI clusive Regular Class having  a Child with Mild Developmental Disabili

‑From a Viewpoint of Yogo Teacher‑

Fukumi SAITO

Rie INoUE

Mai SAKATA

Naoko SHINPUKU  Eriko Nrs

f.回収

A

Machi MURATA 

.はじめに

近 年 , 特 別 支 援 教 育 対 象 児 の 増 加 , 学 習 障 害

(LD)

・注意欠陥多動性障害

(ADHD)

・高機能自閉症 などへの対応の必要性,盲・聾・養護学校在籍児の障 害の重度・重複化等の教育情勢の変化

1)

により,従 来の特殊教育で定められた障害の概念の拡大が図ら れるようになった.そのため,障害の種類や程度に重 点を置い.た特殊教育から,児童生徒の個別的なニー ズへの対応を重視した特別支援教育へ転換されてい る.これまでの特殊教育では,盲・聾・養護学校や特殊 学級に通う児童生徒に対しての支援に重点が置かれ,

通常学級に在籍する特別支援が必要な児童生徒に対 しての支援については十分な対応がなされていない という現状があったが,平成

19

4

1

日学校教育 法等の一部を改正する法律の施行に伴い,通常の学 級にいる気になる子への支援が注目されている

2)

平成

14

年に文部科学省が実施した「通常の学級に 在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に 関する全国実態調査J の結果では,約

6 %

程度の割 合で通常の学級に在籍している可能性を示してい る

3)

と報告されている.また,全国養護教諭連絡協 議会「平成

17

年度悉皆調査速報J

4)

では,小学校に おいて現職の養護教諭が直接関わっている特別な支 援 が 必 要 な 子 ど も た ち の 状 況 と し て 高 機 能 自 閉 症

J63.7%

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又はその疑い

J6.1 7%

と高く 軽度発達障害等が半数以上を占めている.さらに,

LD

ADHD

,高機能自閉症等の児童については,

これまで定義・判断基準が明らかでないなどの理由

*熊本大学養護教諭特別別科

**熊本大学医学部附属病院

***宮崎市役所介護長寿課

から,学習や生活上で困難を抱える子どもの早期発 見や専門家等との連絡・連携による適切な指導体制 の確立等の十分な対応がなされておらず,その教育 的対応が重要な課題となっている

5)

今後の学校現 場における支援体制について考えると特別な支援を 要する児童に直接指導を行う学級担任を始め,全教 職員が特別支援教育に対して深い理解と関心を持つ ことが重要である.近年では兼職発令によって養護 教諭が保健学習を行う機会も増加しており,養護教 諭が教室で授業を行う場面も少なくない.そのため,

今後養護教諭も授業を行う一教師として,特別支援 を必要とする児童への指導について考えていく必要 がある.鈴木

6)

は,保健指導及び保健学習に関する 支援の必要な子どもへの養護教諭の対応について述 べているが,実際に授業実践をして授業研究をした 例はあまりみられない.

そこで,本研究は軽度発達障害の中でも,アスペ ルガー症候群に焦点をあて,

K

市内にある

1

小学校 において該当児童が在籍する通常学級において授業 を実施し,授業分析を行うことを通して養護教諭と して特別支援を必要とする児童への保健学習・保健 指導を行う際,養護教諭の専門性を活かすためには どのような視点を持ち, どのように指導や支援をす ればよいかについて検討した.

.対象および方法

対象は,

K

市内にある

1

小学校で、あり,アスペル ガー症候群と診断された

1

名 の 児 童 ( 以 下 該 当 児童J

)

が在籍する

1

学級(児童数

29

名)である.

調査校は,全校児童約

500

名,学級数は各

3

学級

(4

年生のみ

2

学級)及び特殊学級

2

学級の計

19

学 級である.調査対象学級の指導は,これまで主に学 級担任のみで行なわれてきたが,平成

18

年より週

2

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(2)

回で支援員

1

名と学生ボランティア

2

名が配属され るようになった.なお,倫理的配慮として,同校の 校長,学級担任,養護教諭に対して,研究の目的,

方法,研究による利益と負担及び危険が伴わないこ と,個人情報が完全に保護されることを口頭および 文書で説明し,調査協力を得た.研究期間は,平成

18

年1

2

月中旬から

12

月下旬である.

方法は,調査者

5

名により該当児童が在籍する学 級の理科・学活の授業中における該当児童ならびに 学級担任・他児童の様子について授業参観を行った.

授業参観は①座席の位置,②授業中の様子,③学級 担任による声かけおよび該当児童の反応,④支援方 法,⑤周囲の様子,⑥休み時間の様子の

6

つの視点 について行った.得られた情報を基に,調査者

1

名 が授業を実施した.授業内容は

6

年生体育科(保 健),単元「生活のしかたと病気の予防

J

( 4 5分行っ た後,休憩をはさみ,

15

分行った 計

60

分)である.

なお,授業実施日は,平成1

8

年1

2

7日

( 木:

)2

校時で ある.授業を教室後方側よりビデオ撮影し,プロセ スレコードを作成し,学習活動・形態,授業者の支 援,授業者の発言,授業者の発問,教材,学級全体 の反応,該当児童の反応,児童Aの反応,児童 Bの 反応,児童

Cの反応,特別支援・配慮,担任の支援

の各項目に分類し質的に分析した.なお,児童A ・

C

については,該当児童の隣の席の児童を児童 A,該当児童の右後ろの席の児童を児童 B,該当児 童の後ろの席の児童を児童 Cとした.

.結果および考察

)授業参観から捉えられた該当児童の特性 アスペルガー症候群は,高機能自閉症の定義から みて,言葉の発達の遅れが目立たない良好なものと される

7)

高機能自閉症の定義(文部科学省,

2003)

は,以下のとおりである.

I

高機能自閉症と は

3

歳位までに発症し,①他人との社会的関係の 形成の困難さ,②言葉の発達の遅れ,③興味や関心 が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動 の障害である自閉症のうち,知的機能の発達の遅れ を伴わないものをいう.また,自閉症は中枢神経系に 何らかの要因による機能不全があると推定される.

授業参観では,該当児童は皆の前で発表すること はできるが自分の意見に自信が持てないため,個別 に声かけをして自信がもてるように支援する必要が あること,自由な時間は何をしてよいのか分からな いため不安になりやすいので,

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愛味な表現ではなく 具体的に指示をする必要があること,さらに該当児 童ばかりに注目するのではなく,他の児童への配慮 も忘れずクラス全体へ目を向ける必要があるという

ことが把握された.

また,該当児童の授業への集中や落ち着きは,そ の時の児童が安定しているかどうかに関係している ため,児童の状態の変化を把握しておく必要がある

と考えられる.

2)

授業実践を通して

特別支援を必要とする児童が在籍する学級での授 業実践を通して,授業中は該当児童にだけ目を向け るのではなく学級全体を見渡し授業を進めていかな ければならないことに非常に難しさを感じた.該当 児童は比較的おとなしく,真面目に授業に取り組み,

話し合いなどにも積極的に参加でき,一見して特別 支援を必要としないようにも思われる.しかし,児 童間でトラブルが発生するとその後,気持ちの整理 ができずに授業に集中できなくなってしまうという ことが見受けられた.このような状況になったとき に,該当児童に目を向けながら,学級全体を見渡し 指示を出したり,授業を進めたりしなければならな いと感じられた.適切に該当児童に支援をしながら 学級全体をまとめるためにも,学級担任と学級全体 の児童との信頼関係が大変重要であると思われた.

また,該当児童だけでなくその他にも授業に集中 できなかったり,周囲の児童との私語が多かったり する児童など支援や配慮が必要である.と思われる児 童も数名見られた.そのような児童が積極的に授業 に参加できるような授業計画を立てる必要もあるこ と,授業中の机問指導の際の声かけや挙手の際の指 名などで児童に刺激を与え参加できる機会を与える ことも大切であると感じられた.さらに教材を用い て授業を進めることで児童の理解を支援することが できるが,教材の使用時間,使用する量など活用方 法を工夫する必要があると思われた.教材の使用に より児童の理解を深めることもできる一方で,使用 方法によっては児童の集中力を妨げる要因になると 把握された.児童は興味のあることには意欲を示す が,わかりにくいことや興味がないことには意欲を 示しにくいことが推察される.児童が授業に集中で きるような視覚的な教材の活用や,口頭による説明 など展開を考える必要があると感じられた.

学級全体では,発聞に対して思い思いに自分の意 見を述べることができているのに対し,該当児童は 自ら挙手し,指名を受けて意見を述べることが苦手 な傾向が見受けられた.意見を発表しやすい学級作 りも大切であるが,意見を発表しやすい発聞を作成 し

1

人の児童だけが発表するのではなくグループ で発表するなどの配慮をすることが大切であると感

じられた.

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(3)

3)

問題発生時の対応について

授業のプロセスレコードを場面ごとに区切ってナ ンパーリングをしていったところ,計

147

場面に分

けられた. ここでは,授業中に発生したトラブノレに 焦点をあてて考察する.図

1

に,問題発生の場面を 中心に前後のプロセスレコードを示した.

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図 1 問題発生の場面

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(4)

今回の授業を行う中で,場面123において,該当 児童と学級の児童との問でトラフソレが発生し,該当 児童が感情的になる場面があった.

ブレンダが r多くのアスペルガー症候群の生徒 にとって,学校はたえずストレスを感じる場です.

団体生活には,予定の変更により何が起こるか分か らないとか,先生からの指示や友だちとの関わりに どう対応してよいか分からないなど,強烈なストレ ス 源 と な る こ と が 多 く , た え ず そ れ に さ ら さ れ J8)と述べている.授業中の様子を検証した結果,

該当児童がパニックを起こし,泣き出した場面がビ デオに映っておらず,根本の原因は明らかにならな かったが, Bと何かしらのトラブノレがあったことは 確認された.パニックは,自分の中で納得のいかな いことが少しずつ積み重なり,限界を超したときに 起 こ る . ス ー ザ ン は パ ニ ッ ク へ の 対 処 に は , 前 段階である不安の兆しにまず気づくことが必要J9)  と述べている.不安の兆しは,アスペルガー症候群 の児童によってさまざまである.該当児童の様子を 振り返ると,場面48においてBによる「ね,俺6 て言ったじゃん.最初」という発言のあとに,場面 49で,表情が曇っていると思われる場面が見受けら れ,それが不安の兆しだ、ったのではないかと考えら れる.今回のトラブルの原因は明らかにはできな かったが,該当児童にとっては,ストレスと感じる ことが,授業の中で何度も重なり,結果として場面

123において,それが爆発してしまったのではない かと考えられる.したがって,不安やストレスを溜 め込み,パニックに陥ることを避けるためには,児 童のちょっとした変化を見逃さず,不安やストレス を少しずつ緩和させる働きかけが必要であると考え

る.

また,そのような変化を見分けるためにも, 日頃 から児童と密な関わりを持ち,どんなときに不安を 感じるのか,何に対してストレスを感じるのかなど を知っておくことが,学校で児童が快適に過ごすた めの効果的な支援につながると考える.

場面134で,問題発生時の該当児童は,周りの児 童が止めるのも聞かず Bが机の中に直したプリン トをどうにかして取り上げようとし,なにか書こう と 必 死 に 抵 抗 し て い た . ま た , 該 当 児 童 は あ ん たがいつも吹っかけてくるんだろうが!J といって 怒りを言葉で表現していたが,その一度を除いては 言葉で

B

に文句を言ったりすることはなく,表現す ることのできない怒りは, Bの机をけったりしなが ら表出していたと考えられる.

また,場面136Bの机の脚をつかみ, Bがプリ ントに記入できないように,手でっかみ Bの机を

わざと斜めにするなどの様子が見られた.このとき,

場面137で,来室した学級担任は,まず該当児童が プリントを持っていないことに気づき,教卓に取り に行くように促した.このことは,該当児童の意識 がトラブルに向いているのを「プリントを取りに行 く」という行為に一時的に向け,注意の転換となり,

該当児童の気持ちを落ち着かせる事に繋がっている と考える.プリントを取りにいった該当児童は,教 卓の前に行ったものの授業者が他の児童と話してお り,その次にどうしたらいいかわからず戸惑ってい るように見えた.そこでもすかさず学級担任が場面

138 rプリントを取りに来たといわないと先生は わからないぞ.Jといって助言をしている.ここで,

具体的な助言をすることによって,該当児童自身も どうしたらいいかわからない状況から自分で授業者 に対し,プリントを取りに来たということを伝える ことが出来ていたと思われる.

トラブルが起こった場合でも学級担任は叱ると いった様子はなく,冷静に低いトーンで,話をして いた.アスペルガー症候群とパニックへの対処法に よ る と 教 師 に は , 危 機 を 和 ら げ る 対 処 法 の 理 解 が重要であるのとまったく同様に,教師側のどんな 振る舞いによって生徒の問題行動は広がりやすいの かを,教師たる者はよく心得ておかねばなりませ ん.J 10) と 述 べ ら れ て い る . ま た , ア ル パ ー ト

(1989)は 危 機 的 状 況 か ら さ ら に パ ニ ッ ク 発 作 を 生みだしかねない教師側の言動をリストアップJ

している.教師が声を荒らげたり,怒鳴ったりする ことは逆効果であるため,冷静な対応が行われてい たのではないかと考えられる.また,学級担任から の情報によると,該当児童はパニックを起こしてい る際には信頼関係を築いていない人の言うことを絶 対に聞かないため,まずは話を受け入れてくれるよ

うな関係をつくることが必要である.

場面128に お い て い つ も の こ と だ か ら 大 丈 夫 で す.J と周囲の児童は,冷静に対処している様子が 窺えた.今回は,該当児童への対応に戸惑ってし まったが, Bや周囲の児童に対しでもどうして該当 児童がパニックを起こしたのか,何がきっかけだっ たのかを振り返る時間を設ける必要があったのでは ないかと考える.

アスペルガー症候群の児童にとっては,学級とい う集団の中で生活するには,ストレスのたまること も納得いかないことも出てくるであろう.学級全体 で該当児童の心の中で何が起こっているのか理解を 深め,より生活しやすい環境を作ることも必要とな

るかもしれない.

‑108‑

(5)

4)

養護教諭が保健教育を実施する上での留意点に ついて

本研究において,筆者らはアスペルガー症候群の 児童が在籍している学級での授業を実施する前に,

まず該当児童の授業中の様子・児童の反応,学級担 任による声かけや支援という視点を持ち児童の特性 を把握し,児童を理解する必要があると考えた.そ のため,学級担任の授業参観を行い,情報収集を行 なった.そこでは, 指名されたら皆の前で発表す ることができるぺ 静かに授業を聞くことができ る 理解力がある"などといった反面, 自分の 意見に自信がもてない 自由な時間に何をしてよ いか分からず具体的な指示が必要である"等の情報 が得られた.また, 学級担任は,該当児童と他の 児童とは,基本的には同じように接している"とい

うことも把握できた.

今回実施した授業中に休み時間をはさみトラブル が起きた.その時,教室には授業者と調査者,児童 がいた.筆者らは事前に, パニックの時は何もせ ずに落ち着くまで見守る"という情報を担任から得 ていたものの,実際の場面ではどう対処してよいの か分からず戸惑った.

以上のような事実を基に,養護教諭が授業を行う 際に,養護教諭の専門性を活かすためにはどのよう な視点を持ち, どのように指導や支援をすればよい か検討し,以下の①チームで対応する②日常的な情 報収集・情報交換③障害を知る④他の児童への配慮 の四つの視点から考察した.

①  チームで対応する

養護教諭が兼職発令を受けて授業を行う際,特別 支援を必要とする児童を含む通常学級で授業を行な う場合もあり,児童が突然パニックを起こすことも 十分に予想される.そのため,パニックに対応でき るように,学級担任が日頃どのように対応している かなどの対処方法を確認する必要があると考える.

また,養護教諭が授業を行なう場合のみならず,ど の教諭が授業を行なう場合にも,いざという時に対 応できるような共通認識を教職員聞でチームとなり 十分に検討し,対応する必要があると考える.また,

実際の事例を基に,学級担任,保護者,管理職,外 部の専門家,他校の養護教諭などと検討会を行い,

学びを共有することも大切なことであると考える.

②  日常的な情報収集・情報交換

児童一人一人にとって充実した授業にするために も , 日頃から担任や他の教職員と児童の様子につい て話をしたり,実際に授業を見に行くなどして情報 を得るだけでなく,さらに児童と関わりを持つこと で児童を理解することが大切ではないかと考える.

養護教諭が自ら行動することで,特別支援を必要と する児童の情報ばかりでなく,学級の実態や学年の 様子も把握することができる.また,得られた情報 は,授業に限らず健康診断や保健指導の時など,ど のような場面でも活用することができる.学校の支 援体制や特別支援を必要とする児童の状態によって,

養護教諭がどれくらい密接に児童と関わる機会を持 つかは,個々の事例によって異なってくる.さらに,

児童の理解力などによっても学習支援の程度は様々 である.情報収集を日常的に行い,児童一人ひとり を充分に理解することによって,授業や保健指導が 個に応じたものとなり指導の充実につながるのでは ないかと考える.

③  障害を知る

それぞれの障害についての正しい理解も大切であ る.正しい障害の知識を持つことで,特別な支援が 必要な児童生徒の早期発見に繋がると思われる.ま た,各障害には一般的な特徴があり,初めはそれが 対応の基礎になる.その後,児童との関わりの中で その児童特有の対応法を見い出し,対応の基礎から その児童に応じたものへと展開していくことが望ま しいと考えられる.さらに,養護教諭には情報 収集・処理能力,情報発信能力を必要とされている.

健康,教育情報の収集を活用し,適切な情報を効果 的に発信する能力

J12)

が求められる.教職員全体で 対応していくためにも養護教諭が特別支援コーディ ネーターや専門家などと協働して正しい情報を発信 し,教職員間で障害に関する共通認識を持つことは 大切と考える.

④ 他 の 児 童 へ の 配 慮

学級担任より, 該当児童は他の児童よりも不安 になりやすいため自己肯定感を高めるためによく褒 めることはあるが,基本的には他の児童と同じよう に接している"という話があり,改めて特別支援を 必要とする児童の在籍する通常学級で授業を行なう 際は,該当児童のみを中心にして考えるのではなく,

他の児童への配慮も大切なことであると感じられた.

該当児童を特別扱いすることで,他の児童にとっ ては「どうしてあの子だけ

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という感情を抱きか ねない.もし,学級担任が該当児童を特別扱いする と,周囲の児童は,教師による該当児童への支援に 対し不平・不満を持ってしまうのではないだろうか.

その不平・不満により,周囲の児童による該当児童 への関わりや対応が変化してしまう可能性がある.

アスペルガー症候群の特性として,他の児童よりも 観察力が鋭く,いち早く周囲の変化に気付きゃすい 一面を持っていることがあげられる.周囲の変化に 伴い,自らも他の児童との違いを認識し,周囲から

ハ叫

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(6)

の叱責や拒否により,自己を低く評価してしまうこ とに繋がるかもしれない.さらに, 自分の思いを上 手く伝えられないことによる不満や納得できないこ とを消化しきれないことは,それがストレスとなり 児童の症状の悪化にも繋がる可能性もある.そう考 えた時,教師は一人の児童ばかりでなく,学級全体 の児童にも目を向ける必要がある.該当児童へ配慮 しながらも学級全体に目を向ける等の基本的な対応 を心がけ,個に応じた指導を実施することが大切で ある.

今回,該当児童がパニックを起こした時,周囲の 児童は筆者らに場面

128

で「先生,大丈夫です.

30 

分くらいすれば落ち着きます.

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先生大丈夫です.

と述べている.学級担任が, 特別に機会を設けて,

該当児童の障害について詳しい説明は行っていない.

周囲の児童らは今まで一緒に過ごした学校生活の中 で,接し方やパニック時に該当児童がどのような行 動を起こしどのように対処したらよいのかを自然に 学び,身につけ対応していると述べているよう に,一見周囲の児童らも該当児童のことを理解でき ているように思われる.しかし,該当児童は,以前 よりも症状が安定しつつあるが,これまでの周囲の 児童らの考え方では対応できない場合も予想される.

そのため,これまで以上に周囲の児童らがより該当 児童のことを理解するために,教職員側も保護者と 十分に話し合い,児童らの理解を促すことができる

よう働きかけることが必要であると考える.

小 倉 は 養 護 教 諭 は 保 健 面 の 専 門 性 と 同 時 に 教 育職員としても教職の専門性を発揮し,保健指導と ともに人間形成の教育を行うことが求められている のである.しかも,健康問題には児童生徒の家庭環 境,進路・学業・交友関係などの問題が心因として 絡んでいることが多い.したがって,健康問題の改 善のためにこそ,広い視野からの人間形成の支援な いし教育が求められるともいえる

J13)

と述べている.

よって,養護教諭の専門的知識のみでなく,他の教 職員との連携を図り,情報を共有し,児童一人ひと

りを多角的に捉え,広い視野をもって児童の人間形 成に関わり,支援・指導していく必要があると考え

る.

4.

結 論

本研究を通して,通常学級において特別支援を必 要とする児童への保健学習・保健指導を行う際,養 護教諭の専門性を活かすためにはどのような視点を 持ち,どのように指導や支援をすればよいかについ て,実際に授業実践を行い,授業研究をした結果以 下の知見が得られた.

)授業を行うにあたり,次の

4

点に配慮する.

(1) 

授業者による設問や発問,教材等は,唆昧な 表現を避け,具体的な表現や指示を用いて,児 童の理解を確認しながら授業を展開すること.

(2) 

教材を使用することで,児童の学びをより深 めることができるかを吟味・選択し,口頭によ る説明及び視覚的効果を活用すること.

(3) 

一つ一つの作業に区切りをつけ,児童の集中 を引きつけるなどの環境づくりに配慮すること.

(4) 

事前に,パニックや問題発生時の対応を教職 員間で十分検討し,共通認識を持ち対応できる

ようにすること.

2)

養護教諭は,次の

4

点に留意して取り組む.

(1) 

日頃から児童と関わりを持つことで,信頼関 係を構築すること.

(2) 

特別な支援を必要とする児童について, 日常 的に教職員間で,情報交換や情報収集を行い,

共通理解を図ること.

(3) 

養護教諭が主となり様々な専門職と連携を図 り,障害についての正しい知識を理解できるよ う,適切な情報を発信すること.

性) 広い視野で児童一人ひとりを捉え,教職員と 連携を図り取り組むこと.

最後になりましたが,ご多忙中にもかかわらず,

本研究にご理解・ご協力くださいました,小学校の 校長先生,学級担任,養護教諭をはじめとした先生 方及び児童の皆様に心より感謝し,御礼申し上げま

す.

文 献

)大沼直樹・吉利宗久:特別支援教育の理論と方法

9

, 培風館,

2005. 

2)干川隆編:

r 特別支援教育

J

ライブラリー

1

通常の学級 にいる気になる子への支援 校内支援体制の可能性,

明治図書,

2005. 

3

  , )

5)

今後の特別支援教育の在り方について(最終報 告 ) ー 第 l章 特 殊 教 育 か ら 特 別 支 援 教 育 へ :

ht tp://www.mex.tgo.jpfb̲menu/shingi/chousa/sho

tou/O 18/toushinl03030 lc.h出1

4)

全国養護教諭連絡協議会:会報,第53 号 ,

6‑7

,平成

17

年度悉皆調査速報,

2005. 

6) 鈴木裕子:養護教諭の視点と支援体制,子どもと健康,

85, 35, 2007. 

7)

上野一彦・花熊暁編:軽度発達障害の教育

LD'  ADI

0

・高機能

PDD

等への特別支援,

2

  , 1 日本文化科 学社,

2007. 

) ブ レ ン ダ ・ ス ミ ス ・ マ イ ル ズ & ジ ャ ッ ク ・ サ ウ ス ウィック:アスペノレガー症候群とパニックへの対処法,

36

,東京書籍,

2005. 

U

(7)

9)

スーザン・トンプソン・ムーア:アスペノレガー症候群 への支援一小学校編, 165,東京書籍, 2005. 

10), 11)

前掲書

8)43. 

12)植田誠治監修,石川県‑養護教育研究会・編:新版・養

説教諭執務のてびき

5 23,東山書房, 2006.  13)小倉学:学校健康相談・指導事典, 16,大修館書庖,

1980. 

参照

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