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論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文内容の要旨

わが国には火山が多数存在するため,応用地質学上,火山岩類の特性を理解することは 重要である.火山岩類には,陸上火山活動に伴い形成された火山岩類と,海底火山活動に 伴い形成された火山岩類が存在する.後者の火山岩類は,北海道から山陰地方までの日本 海沿岸地域(いわゆるグリーンタフ地域)に広く分布し,形成時から水が火山岩類の周囲 に多量に存在すること,また,現在までの間に圧密,続成変質作用,隆起に伴う変形作用 を被っていることから,岩石物性が初生的な形成時の火山岩類の岩石物性から崩壊や膨張 を起こしやすい岩石物性に変化している場合が多い.これらのことが,大規模な岩盤崩壊 やトンネルの変状の原因となっている.しかしながら,崩壊や変状の原因となる変質につ いて定量的に取り扱った例は多くはなく,海底火山活動で生じた火山岩類の産状と,その 岩石物性や変質との関連性については不明な点も多い.本研究では,野外地質調査に基づ く安山岩質火山岩類の産状と岩相の観察,同火山岩類の鉱物組合せや組織,全岩化学組成 等の地球化学的データ,岩石強度,孔隙率,細孔分布などの岩石物性のデータに基づき,

グリーンタフ地域に分布する火山岩類のスレーキングの発生機構について検討を行った.

その結果,以下の結論を得た.

氏 名(本籍) 鈴 木 聡(秋田県)

専攻分野の名称 博士(工学)

学 位 記 番 号 工博甲第214号 学位授与の日付 平成26929 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻 工学資源学研究科(資源学)

学 位 論 文 題 名 グリーンタフ地域に分布する火山岩類のスレーキング特性に関 する研究

論 文 審 査 委 員 (主査)教授 石山 大三

(副査)教授 杉本 文男 (副査)教授 及川 洋 (副査)教授 内田 隆

Akita University

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1)脆弱化しやすい産状

安山岩質~玄武岩質火山岩類の中でも,ドレライト岩脈や枕状溶岩,および火山砕屑岩 中の基質との境界が明瞭な岩片部は脆弱化しにくく,枕状溶岩周縁部,火山砕屑岩の基質 部,基質部との境界が不明瞭な火山砕屑岩はスレーキングが顕著で脆弱化しやすいことを 明らかにした.

2)脆弱化しやすい岩石の特徴

a) 続成変質作用に伴い形成された変質鉱物,組織,生成環境

スレーキングが顕著な火山岩類は,スメクタイトを多く含む傾向にあるが,スレーキン グの程度とスメクタイトの含有量の間の相関は明確ではない. スレーキングが顕著な火山 岩類の岩石組織は,網状のスメクタイトの分布を特徴とし,短冊状の斜長石の発達は乏し い.一方,スレーキングしにくい火山岩類にもスメクタイトを多く含む場合があるが,短 冊状の多量の斜長石がスメクタイトの周囲を覆う構造が認められる.これらの火山岩類が 分布する地域は,スメクタイトの広域的な分布や変質により生成した石英の存在より,続 成変質の温度は 80~100℃で 3000m程度の埋没深度であることが推定された.

b) 続成変質作用に伴う元素の物質収支と孔隙形成

火山岩類の化学組成分析値と変質指標図(AI-CCPI 図)による解析結果から,本火山岩類 の変質作用が続成変質作用であること,物質収支の計算からスレーキングが顕著で脆弱化 しやすい岩石は,続成変質作用時の水との反応により SiO2 成分などが溶脱し岩石内に水の 出入りを容易にする孔隙が形成されたこと,基質と岩片が明瞭な火山礫凝灰岩では CaO,MgO,

HCO3-の添加により苦灰石が形成され,炭酸塩鉱物が膠着物質として作用し,スレーキング が抑制されたことを明らかにした.また,資源探査に用いられてきた変質指標図を用いた 解析は,土木地質においても,原岩の推定が困難な変質岩についての原岩の推定,変質作 用の種類の区分,範囲,程度の推定に適用可能である.本解析法は,土木地質においても 地質構造と変質作用の関連性を精度良く表現するための解析方法であることを示した.

c) スレーキングが顕著な火山岩類の岩石物性と細孔分布

スレーキングが顕著な火山岩類は,定性的には岩石の強度が低く孔隙率が大きくなる傾 向が認められる.そして,同火山岩類中の 500nm~10000nm 程度の比較的大きな細孔径の空 隙が,毛細管現象によるスメクタイトへの水の浸透やそれに伴う膨張ならびに乾燥による 収縮に影響を与えたことを明らかにした.

d) 熱水変質岩の孔隙の特徴

熱水変質岩には,イライトや緑泥石を含みスメクタイトが伴われないこと,SiO2 や他の 成分の添加により石英や粘土鉱物が熱水変質岩に膠着物質として形成され,500nm~

10000nm の孔隙が埋められたことより,熱水変質岩ではスレーキングが発生しにくくなった ことを明らかにした.

これらの成果から,土木地質で留意すべき点として,続成変質作用を被ったスメクタイ

Akita University

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トを含む火山岩類については火山岩類の基質部および岩片と基質部が不明瞭な火山岩類が スレーキングにより脆弱化しやすいため斜面崩壊やトンネル変状の素因となる場合がある こと,脆弱化しやすい地域が広域に分布する可能性があることを示した.

論文審査結果の要旨

わが国の日本海沿岸地域(いわゆるグリーンタフ地域)には海底火山活動に伴い形成さ れた火山岩類が広く分布する.その形成時から水が火山岩類の周囲に多量に存在すること,

現在までの間に圧密,続成変質作用,隆起に伴う変形作用を被ったために,岩石物性が形 成時の岩石物性から崩壊や膨張しやすい火山岩類の岩石物性に変化している場合が多い.

これらのことが大規模な岩盤崩壊やトンネルの変状の原因となっている.しかしながら,

崩壊や変状の原因となる変質について定量的に取り扱った例は多くはなく,海底火山活動 で生じた火山岩類の産状と,その岩石物性や変質との関連性については不明な点も多い.

本研究では,野外地質調査に基づく安山岩質火山岩類の構造・組織も含む産状の観察,同 火山岩類の鉱物組合せ,全岩化学組成等の地球化学的データ,岩石強度,孔隙率,細孔分 布等の岩石物性のデータに基づき,グリーンタフ地域に分布する火山岩類のスレーキング の発生機構について検討を行った.その結果,以下のような結果が得られた.

1)脆弱化しやすい産状と特徴

安山岩質~玄武岩質火山岩類の中でも,ドレライト岩脈や枕状溶岩,および火山砕屑岩 中の基質との境界が明瞭な岩片部は脆弱化しにくく,枕状溶岩周縁部,火山砕屑岩の基質 部,基質部との境界が不明瞭な火山砕屑岩は,浸水崩壊度が顕著でスレーキングが顕著で 脆弱化しやすいことが明らかにされた.

2)脆弱化しやすい岩石の鉱物組合せと組織

スレーキングが顕著な火山岩類は,スメクタイトをある程度含み,浸水崩壊度とスメク タイトの含有量の間には弱い相関が認められるが,その相関は明確ではないこと,浸水崩 壊度を顕著には示さない火山岩類は,斜長石の含有量が多く,変質鉱物としてスメクタイ ト,石英を伴うこと,その岩石組織は,多量の拍子木状の斜長石の中にスメクタイトが存 在する組織を示すこと,一方,浸水崩壊度が顕著な火山岩類は,斜長石の含有量が少なく,

相対的に多くのスメクタイトを伴い,変質鉱物としての石英を随伴しないこと,本火山岩 類の岩石組織は,多量の網状のスメクタイトの中に拍子木状の斜長石が分布する組織を示 すことが示された.また,スメクタイトの広域的な分布から,浸水崩壊度が顕著な火山岩 類が続成作用により形成されたこと,その生成環境が 80~100℃で,3000m程度の埋没深 度であることが推定された.

3)続成変質作用に伴う元素の物質収支と孔隙形成

本研究での火山岩類の化学組成分析値と変質指標図(AI-CCPI 図)に基づき,本火山岩

Akita University

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類の変質作用が続成変質作用であること,物質収支の計算から,スレーキングが顕著で脆 弱化しやすい岩石は,続成変質作用時の水との反応によりSiO2成分が溶脱し,岩石内に水 の出入りを容易にする孔隙を形成したこと,基質と岩片が明瞭な火山礫凝灰岩ではCaO MgOの添加により苦灰石が形成され,炭酸塩鉱物が膠着物質として作用し,浸水崩壊度を 抑制していることを明らかにした.

4)スレーキングが顕著な火山岩類の岩石物性と細孔分布

スレーキングが顕著な火山岩類に,定性的には岩石の強度が低いこと,孔隙率が大きい 程顕著になる傾向が認められものの,その関係が明瞭ではないことについて細孔径分布を 検討し,スメクタイトの含有量だけではなく,500nm~10000nm程度の比較的大きな細孔 径が,毛細管現象によるスメクタイトへの水の浸透やそれに伴う膨張ならびに乾燥による 収縮に影響を与えていることを明らかにした.

5)熱水変質岩と続成変質岩の岩石の特徴とスレーキングの特徴の比較

熱水変質岩について変質作用の特徴と細孔分布等の岩石物性の比較を行い,変質鉱物が イライト-緑泥石-石英で特徴づけられ,スメクタイトが伴われないこと,変質作用が

150℃以上の熱水作用により行われたこと,500nm~10000nm 程度の細孔径を持つ孔隙の

存在量がスレーキングを顕著に示す安山岩質火山礫凝灰岩に比較して少ないことを明らか

にし,500nm~10000nm程度の細孔径を持つ孔隙の存在がスレーキングの発生に関連する

ことを示した.

本研究では,野外地質調査に基づく安山岩質火山岩類の構造・組織も含む産状の観察,

同火山岩類の鉱物組合せ,全岩化学組成等の地球化学的データ,岩石強度,孔隙率,細孔 分布等の岩石物性のデータに基づき,グリーンタフ地域に分布する火山岩類のスレーキン グの発生機構を明確にした.得られた成果は,今後のスレーキング機構の解明や土木地質 学的研究の基礎資料として利用されるとともに,土木地質学的応用の際の岩石特性の把握 に大きく貢献するものである.

従って,本論文は博士(工学)の学位論文として十分価値のあるものと判断した.

Akita University

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