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アメリカのバイリンガル教育に関する研究 −カリフォルニア州における展開を中心としてて− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)アメリカのバイリンガル教育に関する研究 −カリフォルニア州における展開を中心として− キーワード:バイリンガル教育、多文化教育、マイノリティ、 『提案 227』 、民族的アイデンティティ 発達・社会システム専攻 藤井 みずほ が長期化するにつれ、 日常会話には不自由しなくなるが、. 1.目次 序. 教科学習にはついていけないという問題が指摘されてお. 章. 第1章 ア メ リ カ に お け る バ イ リ ン ガ ル 教 育 と その歴史的変遷. り、学習言語を習得するためには、母語教育が不可欠で あるとされている。こうした事態に対応するため 1968. 第1節 アメリカにおけるバイリンガル教育. 年 に 成 立 し た 「 バ イ リ ン ガ ル 教 育 法 ( Bilingual. 第2節 歴史的背景. Education Act)」の施行以来、アメリカではマイノリテ. 第3節 バイリンガル教育における最近の傾向. ィの子どもたちの母語を使って教育を施すバイリンガル. 第2章 カリフォルニア州におけるバイリンガ ル教育の動向. 教育が実施されている。特にマイノリティ言語を話す子 どもたちの影響が大きいテキサス州やフロリダ州では、. 第1節 『提案 227』の持つ意味. バイリンガル教育が強力な支持を受けているだけでなく、. 第2節 『提案 227』の成立要因. アメリカ教育省のライリー(Riley)前教育長官は、マ. 第3節 成立後の状況. イノリティ言語の生徒が英語を学びながら母語の能力を. 第3章 カリフォルニア州におけるバイリンガ ル教育の実態と多文化教育への影響 第1節 調査の概要 第2節 調査結果 第3節 分析・考察と今後の課題 第4章 カリフォルニア州における日本語バイ リンガル教育. 維持できるようにするため、また英語を母語とする生徒 たちに外国語を学ぶ機会を十分に与えるために、二カ国 語集中教育計画を承認した。 このように現在のアメリカ社会全体が、多元・多文化 主義的方向性を目指し、言語マイノリティの母語を補償 するバイリンガル教育の推進という流れに向かっている のに対し、カリフォルニア州ではあえて「逆行的」な取. 第1節 調査の概要. り組みが展開されている。同州では、2000 年国勢調査. 第2節 ウィリアム.R ・デ・アビラ小学校の実態. によるとヒスパニック系の人口が州全体の 32.4%にあ. 第3節 日本語バイリンガル・バイカルチュラルプ. たり、さらに現在、学齢人口で英語以外の言語を家庭言. ログラム 第4節 分析・考察と今後の課題 終. 語とする子どもが、すでに 24.9%の約4分の1に達し ている。このような社会的状況をふまえて同州ではこれ まで、様々な種類のバイリンガル教育が施行されていた. 章. 第1節 バイリンガル教育の歴史的変遷と今日的状. ものの、州法の修正法案第 227 号(Proposition 227). 況. −公立学校におけるバイリンガル教育の廃止−(以下、. 第2節 研究の成果. 『提案 227』 )に関する住民投票が 1998 年に実施され、. 第3節 今後の課題. 賛成多数で可決した。そこでは、マイノリティの子ども たちの「民族的アイデンティティ」の形成と保持がうま く行えなくなるという危惧、母語教育がない状況におけ. 2.各章の概要. る「セミリンガル」な子どもの増加、社会全体でますま. 序章. 今日、アメリカでは多様化しているマイノリテ. す加速化するマイノリティの子どもたちに対する軽視、. ィの中でも LEP(Limited English Proficiency:英語. 学校現場における多文化教育の施行に困難を伴うのでは. 能力が不十分である)の子どもたちが、300 万人以上い. ないか、という一抹の不安を感じざるを得ない。以上の. ると推計されている。彼らは、ホスト社会での滞在年数. ようなことを考えた時、『提案 227』可決後のカリフォ.

(2) ルニア州の学校における今日の状況を把握することと、. 面していることに大きく対応した目的であり、ここでも. 多文化教育との関連を探ることが極めて重要であると思. 同化主義的な傾向をもつ結果となった。. われるのである。. これらの結果から明らかになった状況では、学校での. よって本研究では、現代のカリフォルニア州のバイリ. 多文化教育的発展にとって、大きなマイナス的要因とい. ンガル教育の制度・実態を明らかにするとともに、多文. える。そのことは、LEP 児童の言語に対する尊重とい. 化教育という視点から分析・考察を行うことを目的とす. う視点に立つと、消極的な側面を与えているかもしれな. る。. い。 本章ではアメリカのバイリンガル教育につい. しかし、『提案 227』の可決によって、何らかの負の. て全体的な概観を把握した。バイリンガル教育の目的や. 影響を与えるであろうと考えられた多文化的教育活動に. 言語観の他に、ベーカー(Baker, 1996 )によって提. 関して、各学校の多文化教育の実態を調査し、その充実. 唱されているバイリンガル教育の分類表をもとに、特徴. 度を数値化した結果、「積極的なバイリンガル教育」、. や目的にしたがって「積極的なバイリンガル教育」と「消. 「消極的なバイリンガル教育」、「(積極的・消極的なバ. 極的なバイリンガル教育」に分けられることを述べた。. イリンガル教育の)併用型」という形式の違い別にみる. 続いて、アメリカ全体のバイリンガル教育の歴史的経緯. 充実度は、全体的に見るとほとんど違いが見られなかっ. を概観するため、1968 年の「バイリンガル教育法」の. た。ただし、個別にみていくといくつか特徴がみられ、. 発足以来、5度にわたって修正された法について述べて. 例えば「学校あるいは地域によって児童らに話されてい. きた。最後に、イングリッシュ・オンリー(English. る言語や方言の反映と是認」に関しては、「消極的なバ. Only : 英語 第一 主義 )と イング リッ シュ ・プ ラス. イリンガル教育」で充実度がやや低く、負の影響が見ら. (English Plus:多言語主義 )という二つの言語的思. れたが、「民族的に公正に考慮された試験が実施されて. 想の対立による議論からみた、バイリンガル教育を概観. いる」に関しては「消極的なバイリンガル教育」の方が、. した。. やや充実度が高いという結果となった。つまり、「消極. 第1章. ここでは、アメリカにおけるバイリンガル教. 的なバイリンガル教育」「積極的なバイリンガル教育」. 育で著しい展開を遂げ、常に注目されているカリフォル. の双方とも、 学校における多文化的教育活動に関しては、. ニア州の動向について、バイリンガル教育の一つの転換. それぞれ利点・欠点がみられることがわかった。. 点である『提案 227』(公立学校におけるバイリンガル. 第4章. 教育の廃止)の可決に着目し、それが持つ意味や可決に. ンガル教育のケーススタディとしてサンフランシスコに. 至った要因を様々な側面から立証的に述べるとともに、. おける日本語のバイリンガル・バイカルチュラルプログ. 『提案 227』の成立前と成立後のカリフォルニア州の状. ラム(Japanese Bilingual-Bicultural Program 以下、. 況を概観している。. JBBP)を行っている一つの小学校を取り上げた。そこ. 第3章. この章では、カリフォルニア州のサンフラン. では、ベーカーの分類によると「積極的なバイリンガル. シスコとロサンゼルスの全公立Vャ 学校を対象としたアン. 教育」を行っており、日本語を母語とする教師の「セン. ケート調査をもとに、バイリンガル教育の今日的状況を. セイ(sensei)」とアメリカ人教師とのチームワークモ. 把握し、その実施状況、形式の分類、目的などを明らか. デルが注目に値する。またカリキュラムに関しては、学. にした。その結果、回答を得た学校によると『提案 227』. 校行事の中で日本文化が日常的に取り入れられており、. 施行後にもかかわらず、LEP 児童に対する何らかのバ. 「ラジオ体操」や「運動会」などが実施されていた。こ. イリンガル教育を行っている学校は 93%にも及んでい. れらの活動には、コミュニティや保護者の参加、協力が. る、という事実が明らかになった。しかしその内訳は「消. 必要不可欠であり、それが JBBP を根底から支えてい. 極的なバイリンガル教育」が多く、さらに LEP 児童の. る。. 母語を全く使わず英語のみを使って教授する「サブマー. 終章. ジョン型」が 64.4%を占めていたことから、結果的に. 語的思想が政治にまで発展し、激しい議論が取りだたさ. は同化主義的なプログラムを実施しているところが多く、. れてきた。それは LEP の子どもたちに対するバイリン. 実質的にバイリンガル教育廃止の状況に近い形態である. ガル教育にも大きな影響を与えており、カリフォルニア. ことが確認された。さらに、バイリンガル教育の実施目. 州の『提案 227』の可決は、同州における移民の増加と. 的では「主流社会へと同化すること」、「仕事や地位を得. いう社会的背景だけでなく、そうした政治に絡んだ言語. るため」の二つが最も多く、LEP 児童が現実社会で直. 的思想の影響が強く反映して出されたものである。. 第2章. 本章では、カリフォルニア州におけるバイリ. アメリカでは近年、英語の位置づけに関する言.

(3) また、バイリンガル教育廃止後においても、何らかの バイリンガル教育が実施されているが、ここでいうバイ リンガル教育の 64.4%は LEP の子どもたちの母語を使 わない「サブマージョン型」であり、LEP の子どもた ちの主流社会への同化、あるいは LEP の子どもたちが 職業を得るために実施されているなど、その目的は極め て同化主義的な傾向にあることが確認された。しかしな がら、このようなバイリンガル教育は必ずしも学校にお ける多文化的教育活動へ負の影響を与えているわけでは なく、一概に多文化教育の推進という流れと、英語の強 化(LEP 児童の第一言語の軽視)という流れが矛盾す るわけではないことが本研究より明らかとなった。 今後の課題としては、カリフォルニア州における特徴 をさらに浮き彫りにするため、似たような状況にある他 の州(フロリダ州、テキサス州、アリゾナ州など)と比 較することが必要だと思われる。. 3.主要参考文献 ・ Crawford James, 1992, Hold Your Tongue:. Bilingualism and the Politics of “English. Only”,. Addison-Wesley Publishing Company. ・ Colin Baker, 1996, Foundation of Bilingual. Education and Bilingualism, Multilingual Matters. ・ 末藤美津子,1996,「アメリカにおけるバイリンガ ル教育法の展開−1970 年代から 1980 年代への動 きを中心にして−」『国際教育第3号』,日本国際教 育学会,pp.48-63。.

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