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磯部 俶 の男声合唱作品 解説

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Academic year: 2021

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磯部 俶 の男声合唱曲 解説

2015.9.5. この『磯部 俶 の男声合唱作品 解説』は、いそべ男声の資料として作成したもので、詩の掲載誌・詩集、 作曲の経緯、初演の記録などの他、男声編曲の元となった独唱曲、女声/混声合唱曲などの、初出・初演、 掲載曲集も、関連のあるものは載せるように努めた。作品が掲載されている楽譜についても、いそべ男声 の出版楽譜以外のものも、分かっている主なものは載せた。更に、関連した話題など、いそべ男声にとっ て興味のあるものは、適宜、載せた。新しい事実が判明するたびに改訂に努めているが、把握できていな い事柄も多く、誤りもあると思うので、お気付きの点は、長田までお願いします(平成27年9月改訂)。

男声合唱作品の分類

1 オリジナルの男声合唱作品

(単独のもの。混声・女声も同時に作曲したものを含む) ふるさと 遙かな友に 草の葉の祈り ねずみ 若人の歌 幼 年 未来は遥か 郷 愁 君に捧げるうた 春の動物園 乳母車 遠いわらべうた 歌の仲間 メンソーレ沖縄

2 オリジナルの男声合唱組曲

きけ わだつみのこえ―『日本戦没学生の手記』抜萃― 序 唱 ふるさとの野いばら 泥 濘 夜の春雷 (ふるさとの野いばら) (終 唱) おかあさんのばか (古田 幸 詩) 〔中田喜直との共作〕 語りの音楽 じんちょうげ おかあさんのばか おにいちゃんの成績 知能テスト シーツ おくり火 〔磯部 俶 作曲のものだけ掲載〕 なんなん ななつの(宮澤章二 詞) もうすぐ春 なんなん ななつの 夏みかん 生まれたばかりの きつねの嫁入り 岬のうた(西岡光秋 詞) ひとり旅 岬はいつも あの日のこだま 叫ぶ灯台 パウラ(いそべ かず 詞) 思い出のリュウデスハイム ひとりぼっちのベルリン 乾杯、ミュンヘン パパゲーノの詠唱の音楽(モーツアルト) ザルツブルグの幻想 花ひらくウィーン 星野富弘の詩による六つの男声合唱曲 はなしょうぶ さつき たんぽぽ れんぎょう なずな ねこじゃらし

3 混声合唱組曲を男声合唱にしたもの

北への回帰 ―1917年―(小林純一 詞) 磁 石(序章) 真昼幻想 北限の花 白南風(シラハエ)のうた 憤怒の竜 春への期待 室生犀星の詩による三つの男声合唱曲 枇杷(ビワ)の花 麻の実をくだく山雀(ヤマガラ) 子守唄 優しい愛のうた 前奏曲/おやすみなさい 〔おにいちゃんの成績〕 さかな どうぶつえん

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終曲/「片耳の大鹿」よ ※〔 〕は重複 チュウちゃんが動物園へ行ったお話 <音楽ものがたり> カ バ ゾ ウ ペンギン 〔磯部 俶 作曲のものだけ掲載〕

4 「子どもの歌」を男声合唱組曲/曲集にしたもの

七つの子供の歌 〈旧「新らしい子供の歌」3曲(*印)を含む〉 *ヘリコプター *いちじく とっきゅう こだま うしがないた 大ずもう のぼろう のぼろう *おさるのやきゅう こどもの四季 さくらのはなさん 一年生くん弟くん 〔び わ〕 海は呼んでる ぶらんこ ぶらんこ 秋のにおい 〔月 夜〕 七五三 やきいものうた 空とぶ手紙 ※〔 〕は他のと重複 磯部俶 こどもの世界 (曲集) おすもうくまちゃん 〔おさるのやきゅう〕 つりかわさん 〔一年生くん弟くん〕 〔び わ〕 〔いちじく〕 チャンバラ 〔大ずもう〕 〔空とぶ手紙〕 ※〔 〕は他と重複 まど・みちお/いそべ・とし こどもの世界 (曲集) 〔び わ〕 〔つりかわさん〕 りんご 〔おさるのやきゅう〕 〔さくらのはなさん〕 たなをつくりましょう 〔いねかり〕 〔やきいものうた〕 ハンカチ 〔ヤマアラシ〕 ※〔 〕は他と重複

5 子どもの歌を男声合唱に編曲したもの

月 夜 び わ ヤマアラシ 少年が来てハトが来て いねかり

6 歌曲から男声合唱組曲に編曲したもの

かやの実 ―島田忠夫 童謡詩『柴木集』から―〈旧「柴木集」〉 巣 鹿 狐の祠 いろり かやの実

7 歌曲・独唱曲・重唱曲から男声合唱に編曲したもの

美しきためいき お祈り 心の薬 あじさい ゴキブリの唄 丘のはたけ あのころ 風の四季

8 混声/女声合唱から男声合唱に編曲したもの

(元は歌曲だったもの、組曲から抜き出したもの も含む) 別れのとき さざんかの手紙 お月さまの子守うた かえしておくれ青空を 松の花 鬼やんま 星くず屋の唄 横浜はじめて物語 藤棚の下にわたしは眠る 犀 川 時無草 木せい 貝 殻 林のなか

9 ポピュラーソング/フォークソングなどを男声合唱に編曲したもの

(同声合唱を含む) 風になりたい 海の子守唄(ララバイ) 風の住む街 私ひとりの海 緑の雨・江の島 霧に消えた人 道志川旅情

10 カノン

(コーダを男声合唱に改編したものを含む) 村祭り(4声) 雪(3声) ゆりかごのうた(3声) 魔 女(3声)

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道志川合唱祭の歌(2声) 〔ペンギン(3声)〕

11 早稲田の歌など 特定のグループのためのもの

輝く太陽 (早大グリー) 青春の空 (早大グリー)

稲門グリークラブ・エール (稲門グリー) いざ、乾杯の (早稲田大学)

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1. オリジナルの男声合唱作品

磯部先生が早大グリーの指揮者をしていた頃の初期の作品には、オリジナルの無伴奏男声4部合唱曲が 多い。詩人・作家の作品(詩)から選んで曲を付けたもの、それも難解な詩が多いのが特徴といえよう。混声 合唱組曲の中に入っている男声合唱、コンクール課題曲などで混声/女声版と同時に作曲した男声合唱も、 男声オリジナルとしてここに入れた。 ふるさと 室生犀星 詩 無伴奏男声4部(1950) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『ふるさと』いそべ男声(2003-2015) 【楽譜】平成12年度全日本合唱コンクール課題曲集『合唱名曲シリーズ 29』 (社)全日本合唱連盟(2000) 【楽譜】[ピース] カワイ合唱名曲選 M4『ふるさと』カワイ楽譜(1964) 【楽譜】『合唱アルバム9 磯部 俶 編』音楽之友社(1957) 【楽譜】『合唱文庫8 男声編』全音楽譜(1957) 昭和26(1951)年の全日本合唱コンクール課題曲の公募作品として作曲した無伴奏男声4部合唱曲。詩は 室生犀星の詩集『叙情小曲集』(大正7)の中の、有名な「ふるさとは遠きにありて思ふもの……」。しかし、 この年の公募入選作は中村仁策作曲の「山の朝」に決まった。早大音協グリーは、夏休みの合宿から練習 を始め(津久井渓谷・夫婦園)、「ふるさと」を自由曲として「第6回 関東合唱コンクール」(1951.11.3. 中 大講堂)に臨んだ。これが初演(指揮:磯部 俶)。ちなみに、コンクールの結果は、早大音協グリーは僅差の 2位。1位は横浜国大グリー(指揮:山根一夫)だった。以後の3年間、早大グリーは一度も、山根一夫の横 浜国大グリーに勝てなかった。 この年に続いて行われた、「早大音楽協会 研究発表演奏会」(大隈講堂)、「東京六大学合唱連盟 結成式」 (明大講堂、いずれも 指揮:磯部 俶)、そして「第2回 早関交歓演奏会」(東京家政学院 講堂)でも、早大 音協グリー(指揮:玉崎洋一)により演奏されている。翌 昭和27年4月の、「第1回 磯部 俶 作品発表会」(読 売ホール)では、東京グリークラブが「ふるさと」を歌った(指揮:磯部 俶)。 昭和32年の『合唱アルバム9 磯部 俶編』(音楽之友社)、『合唱文庫8 男声編』(全音楽譜)に収められ、 昭和39年には、ピースのカワイ合唱名曲選 M4『ふるさと』(カワイ楽譜) も出版された。 いそべ男声としては、昭和52(1977)年4月の、「藤沢北西ロータリークラブ 認証状伝達式」(藤沢市民会 館)での演奏が最初(指揮:磯部 俶)。津久井町に「遥かな友に」の歌碑ができた後の「遥かな友に」道志川 合唱祭で、平成4(1992)年の第1回から平成8(1996)年の第5回まで、毎年、「ふるさと」を歌った。 磯部先生が亡くなった翌々年 平成12(2000)年に、「全日本合唱連盟 合唱コンクール課題曲」の一つ(男 声3) に「ふるさと」が選ばれた。 平成23(2011)年は、「ふるさと」「遥かな友に」が誕生して満60年。この年は、9月25日の磯部 俶 記念 「遥かな友に」道志川合唱祭(青根・緑の休暇村)、10月23日の江東区民合唱祭(江東区文化センター)、11月 13日の東京男声合唱フェスティバル(浜離宮朝日ホール)、更に、翌 2012年1月22日の新春ファミリーコン サート&パーティー(豊洲文化センター レクホール)まで、この2曲の還暦をアピールして演奏した(いず れも 指揮:須賀敬一/ピアノ:永井博子)。 ふるさと 室生犀星 詩 男声4部〔ピアノ伴奏付き〕(2005) 【楽譜】[ピース] 磯部 俶 男声4部合唱曲『ふるさと』いそべ男声(2011-2014) 【楽譜】[ピース] 磯部 俶 男声4部合唱曲『ゴキブリの唄/ふるさと』いそべ男声(2014)

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2005年に、加藤崇子氏がピアノ伴奏を制作。第60回東京都合唱祭(2005.6. 五反田ゆうぽうと)で、いそ べ男声が初演。指揮:須賀敬一/ピアノ:落合 茂。2013年12月のいそべ男声40周年記念演奏会のアンコール での演奏を、1月に YouTube にアップしたところ、5月には1,000アクセスを突破。 遙かな友に 磯部 俶 詞 無伴奏男声4部(1951) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『歌の仲間』いそべ男声(2003-2012) 【楽譜】[ピース] カワイ合唱名曲選 M3/G9『遙かな友に』カワイ楽譜(1964) 【楽譜】『合唱アルバム9 磯部 俶 編』音楽之友社(1957) 他多数 昭和26年7月の、神奈川県津久井渓谷・夫婦園での早大音協グリークラブの合宿で生まれた、無伴奏男声 4部合唱曲。合宿の夜、新入部員が枕投げなどをしてなかなか寝ないで困るので、何か静かな曲を作って ください、と4年部員が磯部先生にお願いした、ということになっているが、このまくら投げの逸話は怪 しい。「遙かな友に」誕生の裏話は、『いそべ男声ニュース』239/240号の「『遙かな友に』よ永遠に」①②(楢 木潔身)に詳しい。 ちなみに、澤登氏がこの時のバスのパートリーダー、故・楢木氏も新しい先輩としてこの合宿に参加して いた。この合宿の参加メンバーとしては、当時、早大グリー1年部員の須賀氏と、河合・長田・村岡・若月の 5人。他に鈴木(邦)氏もいたが、田邉・新田の両氏はこの合宿には参加していなかった。 昭和26年11月26日の「第2回 早関交歓演奏会」(東京家政学院 講堂)で「遙かな友に」が合同演奏され ている(指揮:磯部 俶)が、直前の「早大音楽協会演奏会」(大隈講堂)のプログラムには「遙かな友に」は載 っていないので、11月26日が初演であろう。 磯部先生は、作詞者名を最初は <津久井青根> としていたが、後に、NHKやJASRACなどからの問い合 わせが度々くるようになって、とうとうベールを脱いだという。この曲は、曲が先にできて詞を後から付 けたことがはっきりしているが、磯部 俶 作詞・作曲のものには、曲が先または詞と同時というものが、他 にもあるかもしれない。 昭和32(1957)年になって、『合唱アルバム9 磯部 俶 編』(音楽之友社)に収めた。 昭和36(1961)年5月に吹き込んだボニージャックスのレコード『遙かな友に』(シングル盤)の大ヒット がきっかけとなって、磯部先生はキングレコードの専属作曲家となった。キングの専属期間は、昭和 36(1961)年7月1日~48(1973)年6月30日の12年間。 無伴奏男声4部合唱で作曲した「遙かな友に」は、その後、何度も手直しをして現在の形になったが、 ピアノ伴奏付きで混声/女声合唱にも編曲した。数多くの曲集に載り、海外の合唱団でも広く歌われるよう になった。磯部先生は昭和39(1964)年、 カワイ合唱名曲選 M3/G9『遙かな友に』出版の際に、後書きにこ んなことを書いている――「いろいろな形の編曲があります。初めから5小節目の『おもい』の個所は、 3度になっている編曲もありますが、この楽譜から、その個所は全部、ユニゾンにしました」。これが決定 版ということになるだろう。 なお、昭和34年発行のカワイ出版の『グリークラブ アルバム』に載っている「遙かな友に」は、磯部先 生のオリジナルではなく、林 雄一郎氏が勝手に関学グリーのために編曲し、関学グリーで歌われていたも のを、作曲者の了解もとらずに『グリークラブ アルバム』に収録したもの。磯部先生が、「決してトップ の張り上げた音色ではなく、優しく静かなハーモニーで」と意図して A-dur にしていたものを、3度も上 げてC-dur にしてある。磯部先生は、合唱界の先達でもある林さんに遠慮して抗議はされなかったものの、 編集者たちには怒りを覚えていたという。全国の男声合唱団への影響の大きい『グリークラブ アルバム』 だけに、残念である。だいぶ後になって、磯部先生自身が、半音上げた B-dur で演奏するようになったの で、いそべ男声の楽譜は B-dur にしてある。

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昭和41(1964)年になって、「遥かな友に」は歌曲集にも取り上げられるが、昭和41年の『日本の名歌110 曲集2』(全音楽譜)で磯部先生は、「遥かな友に」の曲想をこんなふうに書いている――曲想における特徴 は、4小節3拍め(弱起小節からカウントしている)の「いつも」の旋律、8小節1拍め、付点4分音符及 び8分音符の旋律、そして15小節1・2拍フェルマータのついている旋律にあります。これらの旋律は、減 5度、短7度、短6度と変化はしていますが、いづれもD音に向かっており(A-dur)、この曲をまとめてい る特徴部分ともいえるので、音程をだいじに歌ってください。 昭和61(1986)年7月には、「遙かな友に」誕生の地、道志川畔・夫婦園に近い、神奈川県津久井町の青根 緑の休暇村に「遙かな友に」の歌碑が建ち、除幕式と記念合唱祭が盛大に行われた。この時「合唱の里」 と宣言した津久井町では、平成4(1992)年から毎年、9月の敬老の日(後に第4日曜日に変更)に、「〈合唱 の里〉津久井『遙かな友に』道志川合唱祭」が催されており、二十数団体500人近い参加者が、青空の下で のコーラスを楽しんでいる。平成17(2005)年の第14回から、「磯部 俶 記念『遙かな友に』道志川合唱祭」 と名称が変わったが、この年は台風で合唱祭は流れてしまった。平成18年には町村合併で津久井町が相模 原市に編入され、平成22年に政令指定都市に移行した際に、相模原市緑区青根となって、「津久井」という 地名が消えてしまった。 平成23(2011)年は、「ふるさと」「遥かな友に」が誕生して満60年。この年は、9月25日の磯部俶記念「遥 かな友に」道志川合唱祭(青根・緑の休暇村)、10月23日の江東区民合唱祭(江東区文化センター)、11月13 日の東京男声合唱フェスティバル(浜離宮朝日ホール)、更に、翌2012年1月22日の新春ファミリーコンサ ート&パーティー(豊洲文化センター レクホール)まで、この2曲の還暦をアピールして演奏した(いずれ も 指揮:須賀敬一/ピアノ:永井博子)。 草の葉の祈り―アルト独唱と男声合唱― 三木露風 詩 無伴奏男声4部(1952) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『ふるさと』いそべ男声(2003-2015) 【楽譜】『合唱アルバム9 磯部 俶 編』音楽之友社(1957) 昭和27(1952)年に東京グリークラブのために作曲した、アルト・ソロ付きの男声合唱曲。『象徴詩集』(大 正11)の中の、「黒き小舎をめぐりて かそけく満つるこゑ 夜をこめて 草の葉に祈あり……」という宗教性 を込めた露風の詩は難解だが、アルト・ソロと男声合唱がよく調和している。 昭和27年4月の「第1回 磯部 俶 作品発表会」(読売ホール)での東京グリーの演奏が初演(指揮:磯部 俶/アルト独唱:四家文子)。1952.3.28.と日付が入っているこの時の楽譜は、コーラスだけの楽譜で、頭に 前奏と思われる全休符の3小節があるので、伴奏譜が別にあったと思われるが、伴奏譜は見つかっていな い。この発表会での東京グリーの演奏は無伴奏。昭和30年3月に、「早大グリー 第6回送別演奏会」(日本 青年館)で、卒業生が演奏しているが(指揮:磯部 俶/メゾソプラノ・ソロ:城 須美子)、この時の楽譜も、頭 に全休符の3小節の付いた楽譜で、演奏は無伴奏だった。 ちなみに、早大グリーが送別演奏会に卒業生だけで1ステージ持てたのは、この年が初めて。この時の 早大グリー卒業生に、須賀氏をはじめ、河合・田邉・長田・村岡・若月の6人、他に大久保・鈴木(邦)・新田諸 氏の計9人が含まれている。このステージでのソリスト 城 須美子氏は、安部(建)氏の叔母さんに当たる 声楽家で、早大グリーでは、発声の建て直しのため、前の年からボイストレーナーをお願いしており、合 宿などでしごかれていた。 昭和32年発行の『合唱アルバム9 磯部 俶 編』(音楽之友社)に載っている楽譜では、この頭の3小節は 外されており、無伴奏男声合唱の形に整っている。 いそべ男声としては、昭和54(1979)年の「いそべ男声/沖縄男声 合同演奏会」(那覇市民会館)での合同 演奏が最初(指揮:磯部 俶/テノール・ソロ:宮城 敏)。なお、この合同演奏会は、その後、約5年ごとに、 東京/沖縄と交互に開催され、平成26年11月には第10回記念合同演奏会を、東京で開催した。

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いそべ男声単独の演奏は、平成10年2月の「クラーククラブ/いそべ男声 ジョイントコンサート」(中央 区中央会館)になる(指揮:須賀敬一/メゾソプラノ・ソロ:田中淑恵)。 2013年になって、磯部周平氏が、磯部先生自筆の浄書楽譜を発見。この楽譜では、タイトルが「草の葉 の祈―男声合唱を伴う独唱曲―」となっていて、原調の F-mol が Es-mol に、8分の6拍子が4分の2拍 子に変わっている。楽譜の頭に「原調はF-mol」(フラット4つで表示)とあるので、前出の合唱譜より後 にできたものであることは間違いない。楽譜の、三木露風の詩が書いてある表紙に、 <15.3.21.> の日付 があるが、この日付は作曲の日付ではなく、三木露風の第6詩集『幻の田園』(1915 東雲堂)の出版の日付 ではないか。非常に丁寧に浄書してあるので、どなたかソリストに贈呈するつもりのものだったか? ねずみ 与謝野晶子 詩 無伴奏男声4部(1953) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『ふるさと』いそべ男声(2003-2015) 【楽譜】『合唱文庫5 男声編』全音楽譜(1957) 昭和28(1953)年に早大グリーのために作曲した無伴奏男声4部合唱曲。 <1953.7.3.> と日付の入った楽 譜が残っている。屋根裏のネズミの足音を、像を刻む音と聞いたり、彼らに食い物あれ、と願ったり、 『み だれ髪』の女流歌人のネズミとのほのぼのとした共同生活を描いた詩(『晶子詩篇全集』(昭4)によるもの。 昭和28年夏、「早大グリー 中国・四国・九州演奏旅行」の「宇部演奏会」(渡辺翁記念館)で演奏されたのが 最初であろう(指揮:木下林策)。「ねずみ」は「ふるさと」などと共に、この演奏旅行各地で、「磯部 俶 作 品集」のステージで演奏されることになっていたが、このステージを振る予定の福井忠雄氏(当時のセカン ドパートリーダー/副指揮者)が急に旅行に参加できなくなり、各地でこのステージが割愛された。宇部で は、木下林策氏(当時の学生指揮者)の棒で演奏された。同年秋の「第2回 東西四大学合同演奏会」(日本 青年館)で、早大グリーが演奏した(指揮:木下林策)。 昭和32年に、『合唱文庫5 男声編』(全音楽譜)に収められた。 昭和52年の「磯部 俶 音楽生活30年を記念する会」(大手町パレスホテル)では、稲門グリー・早大グリー・ いそべ男声が合同で演奏したが(指揮:磯部 俶)、いそべ男声単独では、昭和53年の、「湘南女声(旧藤が岡 コーラス) 第3回演奏会」(藤沢市民会館 小ホール)の賛助出演で演奏したのが最初(指揮:磯部 俶)。 若人の歌 西條八十 詞 無伴奏男声4部(1954) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『歌の仲間』いそべ男声(2003-2012) 【楽譜】『合唱アルバム9 磯部 俶 編』第1刷 音楽之友社(1957) 昭和29年6月の「東京六大学合唱連盟 第3回合同演奏会」(日比谷公会堂/神田共立講堂) のための委嘱 作品で、「明るき歌声に 雲は流れ 花は開く ああ 若き日よ 再びなき日よ……」という青春讃歌(詩も西條 八十に委嘱)。西條八十はプログラムに、次のように寄せている。「……けふここに湧くほがらかな歌声よ。 その大(オホイ)なる谺(コダマ)よ。くらく世界を汚染する、不吉(フキチ)なる原子雲を一掃せよと、切に念じつつ、 「若人の歌」一篇を贈る。」 同じプログラムで磯部先生は、「……愛する彼等若人たちの輝しい歌声が、あ とからあとから僕の胸の中にはっきりと響いて絶えることがなかった。」と結んでいる。この演奏会の合同 演奏のステージの最後で、6校400人の男声の大合唱によって歌われた(指揮:磯部 俶)。 昭和32年の『合唱アルバム9 磯部 俶 編』(音楽之友社)に収められたが、後の第4刷(1964)では他の曲 (「幼 年」「巣」「鹿」「いろり」「かやの実」)に差し替えられた。

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幼 年 神保光太郎 詩 無伴奏男声4部(1957?) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『ふるさと』いそべ男声(2003-2015) 【楽譜】[ピース]『合唱名曲シリーズ No.18』全日本合唱連盟(1989) 【楽譜】『合唱アルバム9 磯部 俶 編』第4刷 音楽之友社(1964) 早大グリーの古い楽譜に、<1957.3.> の日付のある楽譜があるので、昭和32(1957)年、またはそれ以前 の作曲であろう。詩は、詩集『雪 崩』(昭14)にある、幼い日の思い出を重い叙情で描いた詩で、初出は『コ ギト』(昭和10年11月号)。磯部先生は後に、「夕焼けに向かって子供たちが歌うというカロッサ(ドイツ) の詩を思い出し、とくに最後の〈みんなすなおに合唱した〉のくだりで、みずみずしい感動を覚えて作曲 した」と、語っている。 昭和33年3月の「早大グリー 第9回送別演奏会」(日本青年館)で演奏されたのが初演か(指揮:磯部 俶)。 その夏6月の「東京六大学合唱連盟 第7回合同演奏会」(神田共立講堂)でも、早大グリーによって演奏さ れた(指揮:磯部 俶)。 昭和39年の『合唱アルバム9 磯部 俶 編』第4刷(音楽之友社)に、他の曲と差し替えて「幼 年」を載 せている。 いそべ男声としては、「幼 年」が「全日本合唱コンクール 選択曲」の一つ(M3)になったのを記念して、 平成元年10月の「いそべ男声 1989演奏会」(石橋メモリアルホール)で演奏したのが最初(指揮:磯部 俶)。 この時の全日本合唱連盟の「幼 年」の楽譜に〈思い出によせる4章より〉というサブタイトルが付いて いる。昭和56(1981)年に湘南女声の委嘱で作った、「思い出によせる三章」という女声合唱組曲(「秋祭り」 「藤棚の下に私は眠る」「海辺の墓地」の3曲)があるが、この中の「藤棚の下に私は眠る」を、「思い出に よせる三章 Ⅱ」というタイトルで男声合唱にしている。このことから、磯部先生は、「秋祭り」「海辺の墓 地」の男声版も作って、「幼 年」を加えて、男声合唱組曲「思い出によせる4章」とでもすることを考え ていたのだろうか。 ⇒ 「藤棚の下に私は眠る」の項を参照 未来は遥か 笹沢美明 詞 雨宮伊之助 旋律 磯部俶 補修・編曲 男声4部〔ピアノ伴奏付き〕(1958) 【楽譜】『<スクール・コーラス・アルバム> 高等学校編―男声4部』カワイ楽譜 (1966) 【楽譜】『音楽教育7月号 別冊付録』音楽之友社 (1958) 昭和33(1958)年度「第25回 NHK全国唱歌ラジオコンクール」高校の部課題曲。この時代(昭和29~37 年)、NHKの学校音楽コンクール課題曲は、公募メロディーを作曲家が補修・編曲するスタイルだった。 「…… 生命 あふれて みなぎる力、あの力、未来は はるか 雲光る」と、若者の希望を力強く歌っている。 女声3部/混声4部合唱も。 郷 愁 丸山 薫 詩 男声4部〔ピアノ伴奏付き〕(1965) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『ふるさと』いそべ男声(2003-2015) 【楽譜】『NHK合唱コンクール課題曲全集5』音楽之友社(1983) 昭和40(1965)年度の「第32回 NHK全国学校音楽コンクール 高校の部課題曲」で、『教育音楽 中学・高 校版<昭40年6月号>』に掲載されている。6/8のリズムに乗せて、「わが揺籃は山ふかく みどりの森の枝に

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ゆれ……」と歌う。混声4部/女声3部合唱もある。 2010年1月に、女声合唱団ねむの花 が 第7回演奏会(ルーテル市ケ谷ホール)で演奏(指揮:高橋利幸/ ピアノ:前川 夏)したが、この時はオール磯部 俶 プログラムだったので、いそべ男声からも大勢、聴きに 行った。いそべ男声の演奏歴はない。 君に捧げるうた(追悼歌)―故・宮崎正孝氏に捧ぐ― 磯部 俶 詞 無伴奏男声4部(1966) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『歌の仲間』いそべ男声(2003-2012) 昭和41年、東海メール・クワィヤーの故・宮崎正孝会長の追悼用に書いた、無伴奏男声4部合唱曲 (1966.2.28.)。4月に名古屋で行われた「故・宮崎正孝 追悼演奏会」(名古屋市公会堂)で歌われた(指揮: 水谷昌平)。「思い出の中にほほえんでいる君 ぼくたちの胸に笑いかけている君 ひとりさびしく去ってい った君に 今この歌を捧げよう…… 青い空の涯(ハテ)から この歌をききたまえ」という、宮崎会長個人へ の追悼歌だが、歌詞の中に個人の名前は出てこないので、合唱団仲間の追悼に歌えるとして、曲集『歌の 仲間』に収めた。 平成18年夏に楢木/米川両氏を一度に亡くした いそべ男声は、この年9月の「第15回 磯部 俶 記念『遙 かな友に』道志川合唱祭」(津久井緑の休暇村、指揮:大西紹夫)と、10月の「第44回 江東区民合唱祭」(江 東区文化センター、指揮:大西紹夫)で、心を込めてこの追悼歌を捧げた。翌 平成19年の夏は、今度は 長 昭 男氏を送ることになり、5月に「長さんを偲ぶ会」(横浜 オオハラホール)で再び歌うことに(指揮:坪井俊 策)なった。平成27年9月には、その坪井俊策長老のために、横浜稲門と一緒に「君に捧げるうた」を歌う ことになった(早稲田・奉仕園スコットホール、指揮:須賀敬一)。 春の動物園 高田敏子 詞 男声4部(1967) 【楽譜】[ピース] 男声合唱『春の動物園』いそべ男声 (2005) 【楽譜】第10回産業人合唱コンテスト 課題曲集『全国産業人合唱曲』全国文化団体連盟 (1967) 昭和42年度 第10回産業人合唱コンテストの課題曲として作曲したもの。同課題曲集の『全国産業人合唱 曲』(全国文化団体連盟)には、同じ調で女声/男声/混声合唱が掲載されており、女声合唱だけがピアノ伴 奏付きだが、いそべ男声の楽譜ではピアノ伴奏を付けた。高田敏子の平易な言葉で、閉園後の動物園の動 物たちに寄せる優しい思いやりが深く語られており、動物園の閉門の合図の「蛍の光」のメロディーが陰 に用いられている。 このコンテストは全国文化団体連盟(全文連)の主催、NHKおよび労働省(当時)の後援で行われており、 昭和42(1967)年はその第10回。当時は各企業の職場の合唱団の活動の盛んな時期で、県大会、関東大会、 全国大会と、各社が競っていたという。ちなみに、当時、NEC合唱団に在籍していた木下 恊氏が、混声 合唱でこのコンテストに出たことがあるとのこと。 平成6(1994)年に、女声合唱版が『磯部 俶 女声合唱曲集』(音楽之友社)に掲載された。同じ年の秋に 制作されたCD「磯部 俶 合唱曲集『遙かな友に』」には、江東混声演奏の混声版の「春の動物園」が収録 されている(録音:1994.9.11. バリオホール、指揮:磯部 俶/ピアノ:井出久美子)。この時はピアノ伴奏を 付けて演奏している。 乳母車 三好達治 詩 無伴奏男声4部(1980) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『ふるさと』いそべ男声(2003-2015)

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磯部先生が初めていそべ男声のために書き下ろした、無伴奏男声4部合唱曲(1980.5.28.)。詩集『測量 船』(昭5)の、「母よ――淡く悲しきもののふるなり 紫陽花いろのもののふるなり……母よ 私は知ってゐ る この道は遠くはてしない道」という、若き日の三好達治の、母親への思いと自分の行く道への期待と不 安を、テノールが切々と歌い、下3パートがリズムを刻む。 初演は昭和57年5月の「いそべ男声 1982演奏会」(こまばエミナース、指揮:磯部 俶)。16年後の平成10 年2月、「いそべ男声/クラーククラブ ジョイントコンサート」(中央会館ホール)では、メゾ・ソプラノの 田中淑恵氏との共演だった(指揮:須賀敬一)。 平成12年3月の「いそべ男声 25周年記念演奏会」(紀尾井ホール)、翌年2月の「須賀敬一とその仲間た ちのジョイントコンサート」(いたみホール)と演奏したが、どちらも満足のいく演奏ができた(いずれも 指 揮:須賀敬一)。 遠いわらべうた 渡部千津子 詞 無伴奏男声4部(1980) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『歌の仲間』いそべ男声(2003-2012) 昭和55年3月の「稲門グリー 第17回定期演奏会」(厚生年金会館)のために作曲した無伴奏男声4部合唱 曲。この演奏会の第2部〈世界歌の旅〉のステージで初演された(指揮:磯部 俶)。磯部先生はプログラム に、「新しい年1980年になって、矢つぎ早に三つの曲を書いた。ボニージャックスのために書いた 「私ひと りの海」、岡村喬生君のために書いた「海の子守唄(ララバイ)」、そして稲門グリーのために書いた「遠いわら べうた」がそれである。詩はいずれも渡部千津子さん。……稲門グリークラブの依頼で、久しぶりに男声 合唱の曲が生まれた訳だが、決して難しくないので、去年作った「稲門グリー・エール」と共に身近に愛唱 してほしいと希っている」と、書いている。随所に織り込んだ「わらべ歌」のメロディーが、子ども時代 への郷愁をかきたて、それが巧みな転調によって広がり流れてゆく。 その年の5月、いそべ男声は、カナダ演奏旅行の、バンクーバー(クイーンエリザベス・プレイハウス) で演奏している(指揮:磯部 俶/ピアノ:中島順子)。 歌の仲間 磯部 俶 詞 無伴奏男声4部(1982) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『歌の仲間』いそべ男声(2003-2012) もともとは「いそべ男声 クラブソング」として作詞/作曲したもの(楽譜には1982.2.とある)で、昭和57 年5月の「いそべ男声 1982演奏会」(こまばエミナース)で開幕に演奏したのが、最初(指揮:磯部 俶)。6 月にはコーダを改訂し、1小節伸ばして現在の形にした。 後に、この歌詞の一部を変更して、汎用性のあるものにしたのが「歌の仲間」で、混声4部にも編曲し た。「クラブソング」で「僕らの歌を……」と歌っているところを、「歌の仲間」では「みんなの歌を……」 と歌う。「クラブソング」を <いそべ男声愛唱曲集3>『いざや我等の』に、「歌の仲間」のほうは <磯部 俶 男声合唱曲集>『歌の仲間』に載せた。 平成19年4月の「バッカナリアン男声/いそべ男声 ジョイントコンサート」(ティアラこうとう大ホール) では、両団の合同演奏で、「遙かな友に」と「歌の仲間」を、日本語で演奏した(指揮:須賀敬一)。バッカ ナリアン男声では、スエーデンでの自分たちの演奏会でも「歌の仲間」を日本語で歌うという。 メンソーレ沖縄 いそべかず 詞 男声4部〔ピアノ伴奏付き〕(1992)

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【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『歌の仲間』いそべ男声(2003-2012) 磯部 和 さんが、平成3(1991)年に初めて沖縄を訪れた時の感動―エメラルドの海、芭蕉布と赤瓦の上 のシーサー、泡盛など―を生き生きと詠んだ詞を、軽快なビギンのリズムに乗せた曲。ところどころに沖 縄の方言と沖縄の音階が顔を出す。 平成4年11月の「沖縄男声 20周年記念第7回演奏会」(那覇市民会館)のアンコールで、沖縄男声が演奏 したのが初演(指揮:磯部 俶/ピアノ:宮城佳代子)。 平成8年10月に京都で初演された室内オペラ「夕 立」(京都府民ホール)の序曲に、このメロディーを使 っている。ちなみに、この、磯部先生初めての「室内オペラ」の初演は、体調を崩した磯部先生が、早大 グリーの後輩で大阪在住の 合唱界の重鎮・須賀敬一氏に指揮を頼み、公演は成功裏に終わった。 翌 平成12年11月の「沖縄男声 第11回演奏会」(那覇市民会館)の第3部「磯部メモリアルコーナー」で、 磯部周平氏が編曲した混声4部合唱を、賛助出演で沖縄を訪れたフラウエンコールいそべと、沖縄男声・ 同家族コーラスの合同で演奏した(指揮:磯部周平/ピアノ:宮城佳代子)。 平成13年11月の「沖縄男声/いそべ男声 第6回合同演奏会」(石橋メモリアルホール)では、合同演奏の ステージの「閑話休題―磯部さんと沖縄と―」(司会:米川 寛)のコーナーで、この「メンソーレ沖縄」を 合同演奏した(指揮:宮城 敏/ピアノ:宮城佳代子)。

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2. オリジナルの男声合唱組曲

ごく初期の作品以外は、書き下ろしの男声合唱組曲は、ほとんど、いそべ男声のために作曲したもの。 朗読と男声合唱のための

きけ わだつみのこえ

―『日本戦没学生の手記』抜萃― 無伴奏男声4部(1950) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『きけ わだつみのこえ』第2版 いそべ男声(2004-2008) 昭和25(1950)年11月の「東京詩朗読研究会 結成5周年記念発表会」(日比谷公会堂?)のために、同研究 会の委嘱で作曲したもの。戦後の平和反戦運動のシンボルであった『きけ わだつみのこえ』―日本戦没学 生の手記―から、生駒 隆の短歌1首、田辺利宏の詩2篇を選んで作曲したもの。フルート伴奏付きの男声 合唱のボカリーズをバックに詩を朗読、その間にフルートの独奏が入る、という組曲。この発表会で東京 グリークラブにより演奏された(構成・演出:越谷達之助/指揮:磯部 俶/朗読:高倉 彰?/フルート:吉田雅 夫?)。この時の東京グリーの楽譜は、表紙に〈Fluteと男声4部〉とあるが、コーラス・パートだけの楽譜 で、別にあったと思われるフルートの楽譜(コーラスの伴奏および独奏)は不明。しかし、このコーラスの 楽譜から、組曲は、最初は以下のような構成であったと推測される。 1 序 唱〔男声ボカリーズ〕 2 〔フルート独奏〕 3 ふるさとの野いばら〔男声合唱〕 4 泥 濘〔男声ボカリーズと朗読〕 5 〔フルート独奏〕 6 夜の春雷〔男声ボカリーズと朗読〕 7 〔フルート独奏〕 8 (ふるさとの野いばら)〔男声合唱〕(3と同じもの) 9 〔フルートと男声ボカリーズ〕 10 (終 唱)〔男声ボカリーズ〕(1と同じもの) 昭和27(1952)年4月の、「第1回 磯部 俶 作品発表会」(読売ホール)で、東京グリークラブにより再演 されたが、この時はフルート独奏とフルートのからむ曲、およびコーラスだけの「ふるさとの野いばら」 は除外され、〈朗読と男声合唱のための組曲〉というタイトルで、「序 唱」 「夜の春雷」 「泥 濘」 の3曲だ けの演奏だった(指揮:磯部 俶/朗読:高倉 彰)。いそべ男声の出版(第1版)では、この時の演奏の形よった が、この演奏会では演奏されなかった「ふるさとの野いばら」は、後の「ふるさと」(室生犀星)の原形に なった曲でもあり、入れることにした。なお、この演奏会のプログラムでは「春 雷」となっているが、元 の詩の題名の「夜の春雷」に戻した。 1 序 唱 2 ふるさとの野いばら 生駒 隆 作歌(戦没学生) 3 夜の春雷 田辺利宏 作詩(戦没学生) 4 泥 濘 田辺利宏 作詩(戦没学生) また、元の楽譜には記入されていなかった詩を、楽譜と見開きに配して演奏上の便を図ったため、元の 譜と記譜法の異なるところがある(繰り返し部分など)。詩の朗読が男声ボカリーズのどこに入るのかは、 資料がないので分からないが、曲調と詩の内容・長さなどから判断した。記載した詩は、『新版 きけ わだ つみのこえ』日本戦没学生記念会編(1995 岩波文庫)によった。 第2版出版(2006年)に際し、第1版の「夜の春雷」「泥 濘」の順序を初演の時の順序に入れ替え、その

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後にもう一度「ふるさとの野いばら」をもってきて、更に「序 唱」と同じ内容の「終 唱」を最後に置く など、初演の時の形になるべく近づけるように努めた。

おかあさんのばか

古田 幸 詩 中田喜直と共作 男声4部〔ピアノ伴奏付き〕(1965) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『おかあさんのばか』いそべ男声(2008) 【楽譜】男声合唱組曲『おかあさんのばか』音楽之友社(1965) 1 開始の音楽 2 語りの音楽 3 じんちょうげ 4 すきやき 5 おかあさんのばか 6 おにいちゃんの成績 7 白いカーネーションはいや 8 バイオリン 9 雨のふる日 10 知能テスト 11 七 夕 12 シ ー ツ 13 おくり火 14 教会の神様 (太字が 磯部 俶 作曲) ダークダックスが、中田喜直・磯部 俶の両氏に作曲を依頼してできたこの組曲は、初めは小管弦楽を伴 う男声4重唱として作曲され、昭和40(1965)年4月の「ダークダックス 第9回リサイタル」(日比谷公会 堂)で初演されたが、すぐ、ピアノ伴奏による男声4部合唱の曲として書き改められ、音楽之友社から出版 された。 母親を突然の事故で亡くした小学校5年生の古田 幸ちゃんの詩(講談社から出版された同名の詩集)か ら選んだ13篇による組曲で、場内マイクによる「解 説」で始まり、「開始の音楽」、幸ちゃんの「ちかいの ことば」の後、「語りの音楽」が始まる。お母さんのいない悲しさ、でも楽しかった頃を思い出して一生懸 命に生きている姿を歌った曲の間に、お父さんや幸ちゃんの語りが入る、劇的な構成の組曲。 この男声合唱版の初演は、昭和42(1967)年5月の「稲門グリー 第10回定期演奏会」(文京公会堂、指揮: 磯部 俶/ピアノ:村主一彦?)。 昭和41(1966)年には、「じんちょうげ」「シーツ」「おくり火」「知能テスト」の4曲を混声合唱に編曲し、 〈合唱サークル名曲選3〉『磯部 俶 作品集』(音楽之友社)に収めた。その年の11月に、豊中混声によって混 声版が初演されている(大阪府厚生会館、指揮:須賀敬一/ピアノ:宗倉節子)。昭和44(1969)年には、混声版 の楽譜も出版された(音楽之友社)。 いそべ男声としては、混声合唱の演奏のほうが先で、昭和55(1980)年5月のカナダ演奏旅行で、地元の サクラシンガーズとの合同演奏(バンクーバー クイーン・エリザベス・プレイハウス、指揮:磯部 俶/ピア ノ:中島順子/朗読:高松典子・金 昇俶)、同年10月の「桜友女声 第1回定期演奏会」(こまばエミナース) でも混声合唱の合同演奏をしている(指揮:磯部 俶/ピアノ:中島順子/語り:須崎由紀子/ちかいのことば: 小倉雅子/父親の語り: 磯部 俶<テープ>)。この、バンクーバーでの演奏、桜友女声と一緒の混声の「おか あさんのばか」は、自然と涙声になって、とてもまともな演奏ではなかった。 平成13(2001)年9月に、男声の「おかあさんのばか」を演奏しているが、この時は、ニュー・ウェイヴ コ ーラス・フェスティヴァルの「中田喜直 追悼演奏会」で、中田喜直作曲のものだけの演奏だった。

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いそべ男声による男声合唱組曲全曲の演奏は、平成14(2002)年7月の「大田子ども劇場 音楽フェスティ バル」(大田区民プラザ大ホール)になる(指揮:須賀敬一/ピアノ:落合 茂/ナレーション:荒川好江・戸丸 悟)。この演奏会には、「35年後の幸ちゃん」市毛 幸さんを、客席にお招きした。

なんなん ななつの

―宮澤章二の詩による無伴奏男声合唱組曲―(1978) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『なんなん ななつの』いそべ男声(2004-2015) 【楽譜】合唱名曲コレクション B21『なんなん ななつの』音楽之友社(1982) 1 もうすぐ春 2 なんなん ななつの 3 夏みかん 4 生まれたばかりの 5 きつねの嫁入り 昭和53(1978)年に、いそべ男声のために作曲した、初めてのオリジナル無伴奏男声合唱組曲で、秋の合 宿から練習を始めた。土蔵の白壁に映る梅の花の淡い影を、お月さんの映画と見、小川に張った氷に映る ねこやなぎの細い影を、お月さんのテレビに例えて、春を待ちわびる、叙情的な「もうすぐ春」。「なきむ しどうしの なかよしが ならんであそんだ なみだ川」と、「ナ」の音の言葉遊びで楽しい「なんなん なな つの」。夏みかんの肌を、育ちざかりの若者のニキビ面や、年増女のふくれっ面に例える、愉快な「夏みか ん」。みみずの子やもぐらの子は、お家が暗い、からすの子やとんびの子は、風が寒い と、生まれたばか りの動物の子どもたちの戸惑いを温かく歌った「生まれたばかりの」。不気味なあるいは幻想的な「狐火」 を、賑やかなきつねの婚礼の行列と見た「きつねの嫁入り」。土臭さと温かさに包まれた宮澤章二氏の5つ の詩から成っている。 練習場にお見えになった宮澤章二氏が、興味ある話を披露してくださった。「この詞を磯部先生にお渡し したのは15年も前で、「作りましたよ」とご連絡があって古いノートを見たら、確かにありました。磯部さ んにお渡しした時は、たしか女声合唱のつもりだったんですね。私には女声合唱曲が一つも無くて、磯部 さんならいい女声曲を作ってくださるだろうと思ってお渡ししたんですが、男声曲になってしまった。し かし、いま聞きますと、男声のほうが良かったなとしみじみ思いました。5月の発表会を楽しみにしてお ります」 その、昭和54(1979)年5月の「いそべ男声 5周年記念コンサート&パーティー」(早大大隈会館)で演奏 したのが初演(指揮:磯部 俶)。昭和57年に、『合唱名曲コレクション B21』として出版された(音楽之友社)。 平成27年になって、曲集「いそべ・とし 花ごよみ」をまとめた際、「もうすぐ春」を、ピアノ伴奏を付け て(制作:井出久美子)曲集の第1曲に入れた。

岬のうた

西岡光秋 詞 無伴奏男声4部(1988) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『岬のうた』いそべ男声(2004-2008) 1 ひとり旅 2 岬はいつも 3 あの日のこだま 4 叫ぶ灯台 昭和63(1988)年4月に、いそべ男声のために作った、オリジナルの無伴奏男声合唱組曲。春の合宿で「ひ とり旅」の練習を始めた。水平線の彼方へ心を馳せる岬は、潮騒の優しさに慰められても、いつもひとり

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ぼっち、と歌う「ひとり旅」。岬の友だちはいつも風、その風の持つ激しさと温かさ、その二つと、じっと 黙って向き合っている岬の凛々しさを讃えた「岬はいつも」。岬の上に限りなく広い空がひろがる、その岬 の上にたたずんで、希望と夢を海に向かって歌ったあの遠い日のこだまが、今、帰ってくる、と歌う「あ の日のこだま」。そして、岬にひとり突っ立って光の刃を振りかざす怒れる灯台を、慰めいたわる岬よ、君 は、悲しいまでに人の温みを持つ、と感心する「叫ぶ灯台」。男声合唱でなくては表現できない、男の哀歓 の世界の4曲。 1988年10月の 第26回江東区民コーラス発表会(江東区文化センター)で、「ひとり旅」と「あの日のこだ ま」の2曲を演奏、残りの「岬はいつも」と「叫ぶ灯台」は、翌年の同 第27回コーラス発表会で演奏した (いずれも 指揮:磯部 俶)が、組曲全曲の演奏は、同じ1989年10月の「いそべ男声 1989演奏会」(石橋メモ リアルホール) 指揮:磯部 俶。 1998年11月、新・波の会 第2回ニュー・ウェイヴ コーラス・フェスティヴァル(なかのZEROホール)で、 いそべ男声が演奏(指揮:須賀敬一)したが、この日は磯部先生の葬儀の翌日で、辛い演奏になった。 2014年になって、この組曲にピアノ伴奏を付けることになり、「ふるさと」のピアノ伴奏を作った加藤崇 子氏にピアノ伴奏を付けてもらった。この際、「岬はいつも」のバリトン・ソロをテノールパートのユニゾ ンに変更した。ピアノ伴奏版の「岬のうた」の初演は、2014年10月の第52回江東区民合唱祭(江東区文化セ ンター ホール)、指揮:須賀敬一/ピアノ:加藤崇子。

パウラ

いそべかず 詞 男声4部〔ピアノ伴奏付き〕(1989) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『パウラ』いそべ男声(2008-2015)改訂版 【楽譜】男声合唱組曲『パウラ』音楽之友社(1992) 1 思い出のリュウデスハイム Slow Waltz 2 ひとりぼっちのベルリン Rumba 3 乾杯、ミュンヘン Jitterbug パパゲーノの詠唱の音楽(モーツァルト) 4 ザルツブルクの幻想 Tango 5 花ひらくウィーン Waltz 実際に踊れるスローワルツの曲を、ということで作曲され、昭和63(1988)年10月にいそべサロンで行わ れた「磯部 和さん 誕生パーティー」で発表されたのが、「思い出のリュウデスハイム」(作詞:いそべ か ず/ソロ:堀部隆二/バイオリン:繁桝百合子/ピアノ:江藤純子)。そこに居合わせたいそべ男声のメンバーが、 ぜひ、続きを書いて物語を発展させ、男声合唱組曲にしてください、とお願いした。年が明けて昭和64年、 磯部夫妻は1カ月のドイツ取材旅行に出掛け、帰国してすぐ、作詞/作曲にとりかかった。 こうして、リュウデスハイムで出会って別れて、ウィーンで再会するまでの、青年とパウラとの恋物語 が、スローワルツ、ルンバ、ジルバ、タンゴ、ワルツと、それぞれ異なったダンスリズムにのった5曲の 組曲として生まれた(1989)。 「思い出のリュウデスハイム」は、ライン川のほとりの町リューデスハイムで、美しい娘パウラと出会っ た青年が、ひと晩踊りあかして、翌朝別れるまでの、スローワルツ。「ひとりぼっちのベルリン」は、華や かな文化の町ベルリンへ旅をした青年が、いとしのパウラ、今どこに……と想う、ルンバ。「乾杯、ミュン ヘン」は、ビールの町ミュンヘンで、ふと立ち寄ったビアホールで、見知らぬ若者たちに、Ein Prosit, der Gemütlichkeit と、乾杯の歌で励まされる、ジルバ。「ザルツブルクの幻想」は、モーツアルトの生まれた 町ザルツブルクで、幻想的な夢を見て、オペラ『魔笛』の舞台の中に入り込んでしまう、タンゴ。音楽之 友社で出版される時に、この「ザルツブルクの幻想」の前に、「パパゲーノの詠唱の音楽」を挟んで、「魔 笛」の世界へ誘い込む工夫をしている。最後の「花ひらくウィーン」は、夢の都ウィーンの国立オペラ劇

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場の舞台で、群舞を踊っているバレリーナ・パウラを見つけて……香しい花嫁 いま 僕の胸に で、メデタ シとなる、ワルツ。 昭和64(1989)年10月の「いそべ男声 1989演奏会」(石橋メモリアルホール)で全曲演奏(指揮:磯部 俶/ 編曲・ピアノ:江藤純子/アコーディオン:小林義弘/ナレーション:磯部 和)したのが初演。この時のいそべ 男声の楽譜は合唱パートだけのもので、ピアノ伴奏譜は、前奏・間奏・メロディーとコードネームだけのラ フなもの。楽譜は江藤氏の頭の中にあって、ピアノは即興演奏に近かった。 オリジナルは男声だが、平成4(1992)年に音楽之友社から出版された時には、女声版も同時に出版され た。この時に、第4曲「ザルツブルクの幻想」の前に、「パパゲーノの詠唱の音楽(モーツアルト)」が挿入 され、各曲の前にナレーションが書き込まれた。ピアノ伴奏は、あらためて磯部先生が作成したものか。 平成5(1993)年には混声版も出版され(音楽之友社)、平成5年7月に、「グリーンエコー/大阪府立大グ リー/大阪樟蔭女子大コーラス部 ジョイントコンサート」(吹田市民会館メイシアター大ホール)で初演さ れた(指揮:須賀敬一/ピアノ:加藤崇子/アコーディオン:杉村寿治)。平成6(1994)年に制作したCD『磯部 俶 合唱曲集「遥かな友に」』に収められた「思い出のリュウデスハイム」「ひとりぼっちのベルリン」「花 ひらくウィーン」の3曲は、この演奏会のライブテープから。 平成27年5月の、大阪メール第8回演奏会で、大阪メール/いそべ男声が合同演奏をする際に、楽譜を見 直して、「思い出のリュウデスハイム」「乾杯、ミュンヘン」などで大幅に改訂、その後、「花ひらくウィー ン」で、段の小節の割りふりを一部変更したため、2015年9月に改訂版を作成した。

星野富弘の詩による六つの男声合唱曲

無伴奏男声4部(1991) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『星野富弘の詩による六つの男声合唱曲』いそべ男声(2008) 1 はなしょうぶ 2 さつき 3 たんぽぽ 4 れんぎょう 5 なずな 6 ねこじゃらし 平成3(1991)年10月、いそべ男声のために作曲した、オリジナルの無伴奏男声合唱組曲。秋の合宿で練 習を始めている。 不慮の事故により手足の自由を奪われたが、口にくわえた筆で花の絵を描き、それに詩を添えて、明る く強く生きている星野富弘の、詩画集『風の旅』(立風書房)から選んだ6篇の詩に作曲したもの。磯部先 生は、星野富弘がまだあまり世に知られていない頃から作曲を考えていたが、無伴奏男声合唱にしようと 決めるのに時間がかかった、という。 どぶ水を吸っているのに、きれいな花をつける花菖蒲を見て、それなのに、大ぜいの人の愛の中にいる 私は、なぜ、みにくいことばかり考えるのだろう、と反省する「はなしょうぶ」。同じ障害者からサツキの 花を指の間にはさんでもらって、言葉ではなく「頑張ろう」と励まされたのを感謝した「さつき」。風に吹 かれて空を飛んでいくタンポポを見て、自分も、余分なものを捨てれば、空が飛べるような気がしたよ、 と希望を込めた「たんぽぽ」。自分は傷を持っているが、その傷のところから、あなたの優しさがしみてく る、と感じている「れんぎょう」。風に揺れるペンペングサの実を見ていて、動かなくなったこの腕がもし 動くようなことがあったら、お母さんの肩をたたきたい、と母を思う「なずな」。白い運動靴を初めて買っ てもらって、嬉しそうに原っぱを走り回っている、少年の頃の自分の姿を見ている「ねこじゃらし」の、 6編。珍しく使っている凝った和音は、花に寄せる作者の複雑な気持ちを表現しようとしたものか。 平成4(1992)年3月、「〈第5回春のヴォーカルコンサート〉いそべとし歌のサロン」(江東区文化センタ

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ー)で、「さつき」「たんぽぽ」「れんぎよう」の3曲を演奏したが(指揮:磯部 俶)、組曲全曲の演奏は、同 年10月の「いそべ男声&もりおかセンチュリー

autum

コンサート」(岩手県教育会館)での演奏が最初(指 揮:磯部 俶)。 平成5(1993)年12月の「湘南女声 第9回演奏会」(藤沢市民会館 大ホール)に賛助出演した際の、いそ べ男声の演奏(指揮:磯部 俶/テナー・ソロ:川妻干邦/朗読:戸丸 悟)から、「はなしょうぶ」「さつき」「たん ぽぽ」「なずな」の4曲が、平成6(1994)年制作のCD「磯部 俶 合唱曲集『遥かな友に』」に収められて いる。

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3. 混声合唱組曲を男声合唱にしたもの

磯部先生の混声合唱曲はもともとそう多くないが、混声合唱から組曲として男声合唱になったものは、 先生没後の男声編曲を含めても、「北への回帰」、「室生犀星の詩による三つの無伴奏男声合唱曲」と「優し い愛のうた」「チュウちゃんが動物園へ行ったお話」の4つ。

北への回帰

―1971 年― 小林純一 詞 男声4部〔ピアノ伴奏付き〕(1995) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『北への回帰』いそべ男声(2004-2015) 1 磁 石(序章) 2 真昼幻想 3 北限の花 4 白南風(シラハエ)のうた 5 憤怒の竜 6 春への期待 昭和47(1972)年、キングレコードの委嘱で作曲した混声合唱組曲。「傍題に1971年と附記したのは、これ を作る動機に“沖縄復帰前夜”という歴史的な命題があったからです」と、作詞の小林純一氏は語ってい る。磯部先生は、「小林純一氏とは十数年ものお付き合いなのに、“童謡”的な小品以外にはそれまで組ん だことがなかった」という。この作品は、「沖縄復帰をめぐる複雑な社会動向の中で、微妙に揺れ動く作者 の想念をイメージ化した」大作である。磯部先生が作曲に着手したのは昭和46(1971)年11月、構想に時間 をかけたという。 序章は、これから始まろうとするものへの期待と不安で、細かく揺れながら北を探っているいる、青い 針「磁 石」。真昼の陽に輝く原色の太平洋、そこにただよう微粒プランクトンと沖にうねり流れる黒潮、 その静けさと烈しさを歌いあげる「真昼幻想」。季節は春から始まるもの、春は南から訪れるもの、旅人が 北への旅を続けるなら、その先々で春の花の匂いを感じるだろう、と歌う「北限の花」。詩人の雅(ミヤビ) の心そのままの、夏の知らせ「白南風のうた」。台風、この巨大な怒り、憤怒の竜が通り過ぎた後にこそ、 日本列島に実りの秋が訪れ、空が真っ青に澄みわたる、と高らかに歌あげる「憤怒の竜」。そして再び、序 章の冒頭が繰り返され、山越しの北風も、春の前触れに過ぎないというのか、そうかそうかと、明るく歌 い結ぶ「春への期待」の6曲。 昭和47年7月に、東京都民合唱団により録音され(指揮:浜田徳昭/ピアノ:川村深雪)、組曲「虹」と共に、 レコード『〈東京都民合唱団 ファースト・アルバム〉磯部 俶 混声合唱名曲選』になった(キングレコード)。 その年の12月には、「共立女子大合唱団 第15回定期演奏会」(共立講堂?)で、女声版「北への回帰」が演 奏されている(指揮:磯部 俶/ピアノ:不詳)。 混声合唱の楽譜は、昭和48(1973)年にカワイ楽譜から出版されている。昭和63(1988)年10月の「第26回 江東区民コーラス発表会」(江東区文化センター ホール)で、江東混声が「白南風のうた」「北限の花」の 2曲を演奏したが(指揮:磯部 俶/ピアノ:江藤純子)、平成6(1994)年3月の「江東混声 セカンドコンサー ト」(江東区文化センター ホール)では、混声組曲全曲を演奏した(指揮:磯部 俶/ピアノ:井出久美子)。 男声版は、平成7年11月の沖縄男声との第5回合同演奏会のために、編曲に着手。沖縄での合同演奏に 先立って、10月に、「第33回 江東区民コーラス発表会」(江東区文化センター ホール)で、男声版の「白南 風のうた」「憤怒の竜」を、初めて演奏した(指揮:磯部 俶/ピアノ:井出久美子)。 平成7(1995)年11月の「いそべ男声/沖縄男声 第5回合同演奏会」(那覇市民会館)では、「真昼幻想」「白 南風のうた」「憤怒の竜」の3曲を、合同演奏で歌った(指揮:磯部 俶/ピアノ:井出久美子)。残りの3曲の

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編曲も年内にはでき、男声合唱組曲「北への回帰」が完成した。 男声版組曲「北への回帰」全曲の演奏は、平成10(1998)年2月の「クラーククラブ/いそべ男声 ジョイ ントコンサート」(中央区中央会館ホール)での合同演奏(指揮:須賀敬一/ピアノ:落合 茂)が最初。磯部先 生は残念ながら、演奏会場へ足を運ぶことすら叶わなかった。 念願の、沖縄男声との合同による組曲全曲の演奏は、平成13(2001)年11月に東京で行われた「沖縄男声 /いそべ男声 第6回合同演奏会」(石橋メモリアルホール)で、やっと実現した(指揮:須賀敬一/ピアノ:落 合 茂)。

室生犀星の詩による三つの無伴奏男声合唱曲

須賀敬一 編曲 無伴奏男声4部(2001) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱曲集『ふるさと』いそべ男声(2003-2015) 1 枇杷(ビワ)の花 2 麻の実をくだく山雀(ヤマガラ) 3 子守唄 金沢市中央公民館合唱団から、昭和53年の創立25周年を記念して委嘱された、混声合唱組曲。金沢が生 んだ三大文豪の一人 室生犀星には、女声合唱に「時無草」「犀 川」、男声合唱に「ふるさと」(いずれも 磯 部 俶 作曲)があり、よく歌われているが、混声合唱にそういう作品がないので、永く歌い継がれる混声合 唱曲を、ということでの委嘱だった。 誰の目にも入ろうとせず、庭の片隅に、糀(コウジ)のように遠慮ぶかく寂しく咲いている花を詠んだ「枇 杷の花」(詩集『田舎の花』(大正11)から)、何ひとつ面白くない日が多く、倦怠の毎日を送る自分に、小 さな音を立てて刺激を与えてくれる小鳥に、話しかけている「麻の実をくだく山雀」(詩集『高麗の花』(大 正13)から)の、日常を詠んだ詩2編と、実母を知らなかった犀星が、雪の降る日には、記憶になかったは ずの子守唄がどこからともなく聞こえてくる、と歌う「子守唄」(詩集『田舎の花』から)の3編を取り上 げ、珍しく重い感じのメロディーを付けた地味な作品。 この組曲(混声)は、昭和53(1978)年7月に行われた「金沢市中央公民館合唱団 第26回定期演奏会」(金 沢市観光会館)で初演された(指揮:中村外治)。この演奏会には磯部先生も招待されて出席しており、打ち 上げパーティーで、サイン攻めにあっていた磯部先生が、誰ともなく歌い出した「ふるさと」に、突然、 サインを止めて立ち上がり、指揮を始めた、というひとこまもあった。この組曲は、20年後の平成11(1999) 年7月、同合唱団の第47回定期演奏会(金沢市 文化ホール)で再演されている(指揮:朝倉喜裕)。 金沢での初演時の混声の楽譜を基に、平成13年1月に須賀敬一氏が男声合唱に編曲したが、金沢での初 演からだいぶたって磯部先生自身が大幅に手直ししていた混声合唱の楽譜(江東混声用か?)があり、これ によって、修正を加えた。 この男声合唱版は、平成21(2009)年11月の「いそべ男声 35周年記念演奏会」(ティアラこうとう大ホー ル)で初演された(指揮:須賀敬一)。

優しい愛のうた

①⑤須賀敬一 編曲 男声4部〔ピアノ伴奏つき〕(2010) 【楽譜】磯部 俶 男声合唱組曲『優しい愛のうた』いそべ男声(2010-2015) 1 前奏曲/おやすみなさい 小林純一 詩 須賀敬一 編曲 2 おにいちゃんの成績 古田 幸 詩 3 さかな たきぐち よしお 詩 4 どうぶつえん ほりかわ やえこ 詩 5 終曲/「片耳の大鹿」よ 高嶺織江 詩 須賀敬一 編曲

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合唱団ユーフォニック・コーラスの40周年記念に委嘱され、混声合唱組曲「優しい愛の歌」(全6曲)を作 曲した。この組曲は、―小学生と大人の詩による合唱組曲―という傍題のように、小学生の詩4編と、詩 人の詩2編を取り上げて作曲したもので、昭和48(1973)年2月の「ユーフォニック・コーラス 40周年記念 演奏会」(日本橋三越劇場)で初演されている(指揮:磯部 俶)。ここで取り上げた小学生の詩は、いずれも、 吉田瑞穂編の『小学生詩の本 6年生/1年生』(1969/1970 小峰書店)に載っているもの。 混声合唱の初演時は、 1 前奏曲/おやすみなさい 小林純一 詩 2 おほしさまにおねがい はなじま ひろえ 詩 3 さかな たきぐち よしお 詩 4 星くずやの唄 狩野敏也 詩 5 どうぶつえん ほりかわやえこ 詩 6 終曲/「片耳の大鹿」よ 高嶺織江 詩 の6曲であった。 昭和53(1978)年に、女声合唱組曲を音楽之友社から出版する際に、ちょっと異色な「星くずやの唄」を 外して、5曲の組曲にした。それまでは女声合唱組曲も「星くずやの唄」の入った形で演奏されていた。 平成22(2010)年1月に、須賀敬一氏が組曲を男声合唱に編曲する際に、ご遺族 和先生のご了解を得て、 第2曲の「おほしさまにおねがい」を、組曲「おかあさんのばか」の中の「おにいちゃんの成績」に差し 替えた。第3曲「さかな」は、混声組曲でも、もともと男声4部合唱、第4曲「どうぶつえん」は、男声 4部合唱と女声2重唱の二重合唱なので、女声の部分をそのまま男声に置き換えた。男声版組曲は、平成 23(2011)年1月の「いそべ男声/沖縄男声 第9回合同演奏会」(那覇市民会館)で、いそべ男声が演奏した のが初演(指揮:須賀敬一/ピアノ:永井博子)。 前奏曲/おやすみなさい 混声合唱組曲「優しい愛の歌」(全6曲)は、小学生の詩を取り上げて作曲した組曲だが、その第1曲に はこの小林純一の「おやすみなさい」を前奏曲として用いている。「おやすみなさい あしたまで あかるい あさに あさになるまで」と、やさしく繰り返す。 おにいちゃんの成績 オリジナルの第2曲「おほしさまにおねがい」は、混声組曲の中でも、もともと女声合唱で、男声合唱 になじみにくいとの判断から、磯部家の了解の下に、組曲「おかあさんのばか」の中の「おにいちゃんの 成績」に差し替えさせていただいた。「父兄会で午前中に帰って来たお兄ちゃんが、成績がよくなかったみ たいで、元気がない。あんなに夜遅くまで勉強していたのに、かわいそうだな」というこの、当時小学校 6年生の古田 幸ちゃんの「おにいちゃんの成績」も、前述の吉田瑞穂編『小学生詩の本 6年生』(小峰書 店)に載っている詩。

⇒2 「オリジナルの男声合唱組曲」の「おかあさんのばか」の「おにいちゃんの成績」の項を参照。 さかな もとの混声合唱組曲でも、この第3曲は男声4部合唱オリジナル。「さかなは 目をあいたまま しんでい る。きっと たべられるのまで みようと しているんだね」と、小学校1年生の目で見た、お皿の上の魚を 詠んだ詩。 どうぶつえん 「ぞうのはなは どうしてながいの。はなのさきから かぜがでてるよ」と、小学校1年生 ほりかわやえ

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こ ちゃんの、動物園での、驚きや発見や疑問を、ユーモラスに歌った曲。男声4部で刻むリズムの上に、 女声の2重唱が乗っている形なので、女声をそのまま男声に置き換えた。 終曲/「片耳の大鹿」よ 終曲は、椋 鳩十 の動物物語「片耳の大鹿」を読んで感動した小学校6年生の少女・高嶺織江ちゃんの、 長大な詩「片耳の大鹿 よ」。「片耳の大鹿よ。わたしは、あなたに感動した」と歌い出すこの物語の最後に、 「わたしは思う。愛というものの力強さと、尊さと。かりゅうどと動物の、不思議で密接な関係を」と、力 強く歌いあげる。この1曲だけで、8分半ほどかかる。 <音楽

ものがたり> チュウちゃんが動物園へ行ったお話

ろばの会 作曲 須賀敬一 編曲 男声4部合唱 (ピアノ伴奏付き) (2012) 【楽譜】ろばの会 男声合唱組曲 <音楽ものがたり> 『チュウちゃんが動物園へ行ったお話』いそべ男声(2012) 昭和39(1964)年にカワイ楽譜から出版された <音楽ものがたり>『チュウちゃんが動物園へ行ったお話』 (混声合唱曲)を、須賀敬一氏が男声合唱に編曲したもの。動物園へもぐりこんだネズミの姉弟が、いろい ろな動物と楽しくお話をしたり、虎に脅されたり、蛇に追いかけられたり、モノレールに乗って園内を上 から眺めたりする、ユーモアとサスペンスに富んだ一日に構成した <音楽ものがたり>。 もとは、昭和33(1958)年にろばの会が作曲した、<児童のための音楽入門> LP(キングレコード)で、第 13回芸術祭賞を受賞したもの。当時キングレコードのディレクターであった長田暁二氏は、「ディズニーの ミッキーマウスをガイド役に仕立て、『ペーターと狼』のような構成とナレーションで、『動物の謝肉祭』 の歌版を作った」と、述懐している。 作曲は、ろばの会の五人、作詞は、小林純一、柴野民三、まど・みちお、清水たみ子の四人。「児童のた めの音楽入門」として、ソプラノ/アルト/テノール/バリトン/バスの独唱、幼児の独唱、男声4重唱、女 声/混声合唱、児童の斉唱/合唱/輪唱と、バラエティーに富んだ演奏。 もとのLPレコードの構成は、次のとおり― 1 前奏―イントロダクション 中田喜直 作曲 2 テーマA 中田喜直 作曲 3 もぐりこむ音楽 中田喜直 作曲 4 子ジカ 小林純一 作詞 中田喜直 作曲 児童斉唱:ひばり児童合唱団 5 ラクダ 柴野民三 作詞 中田喜直 作曲 バリトン独唱:友竹正則 6 ヤマアラシさん まど・みちお 作詞 中田一次 作曲 児童斉唱:ひばり児童合唱団 テノール独唱:金谷良三 7 テーマB―小鳥の音楽 中田喜直 作曲 8 クジャク 清水たみ子 作詞 大中 恩 作曲 女声合唱:キング女声合唱団 9 テーマC 中田喜直 作曲 10 カ バ 柴野民三 作詞 磯部 俶 作曲 男声四重唱: ボニージャックス 11 テーマD 中田喜直 作曲 12 ヘビの音楽 大中 恩 作曲 13 ヘビと逃げるチュウちゃんの音楽 大中 恩 作曲 14 赤ちゃんライオン 小林純一 作詞 宇賀神光利 作曲 幼児独唱:柏 正雄 15 うなる音楽 宇賀神光利 作曲 16 逃げる音楽 宇賀神光利 作曲

参照

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