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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 ) 鈴 木 正 美 学 位 論 文 題 名

シンドロームX モデルとしてのWistar fatty ラットの 病態とインスリン抵抗性改善薬の効果に関する研究

学位論文内容の要旨

  

「シンドロームX 」は高インスリン血症、耐糖能異常、高脂血症、高血圧、内臓 脂肪型肥満などを併せ持っインスリン抵抗性を基盤とする病態であり、生活習慣 病、とりわけ動脈硬化症の危険因子として注目されている。雄性Wistar fatty ラットは、内臓肥満、耐糖能異常、高脂血症、高インスリン血症を呈することが 知られており、肥満2 型糖尿病モデル動物として利用されているが、「シンドロ ーム

X

」でみられる高血圧や血管合併症にっいては知見が少なかった。そこで本 研究では、まず「シンドローム

X

」モデルとしての雄性Wistar fatty ラットの有 用性を明らかにするために、本ラットでの血管合併症、特に細小血管障害である 腎症と高血圧の発症について検討した。次に、本ラットに対するインスリン抵抗 性改善薬の効果について、腎症や高血圧との関係を中心に検討し、以下の結果を 得た。

  

雄性

Wistar fatty

ラットは8 週齢頃より加齢とともに血漿グル.コース、イン スリンおよびトリグリセリド値が上昇し、それらにやや遅れて腎症指標であるア ルブミンおよび蛋白の尿中排泄量が増加した。腎臓を病理組織的に検索したとこ ろ、

lean

ラットに比べて糸球体ボーマン嚢の基底膜肥厚、メサンギウム領域の 拡大など糸球体硬化病変とともに尿細管の細胞変性(基底膜肥厚、塩基性変性)

が認められた。これらの変化はヒト糖尿病性腎症の初期病変の所見と類似してい た。また、雌性Wistar fatty や別のモデルである雄性Zucker fatty ラットでも、

肥満、高脂血症、高インスリン血症を発症したが、雄性

Wistar fatty

ラットに 比べて血漿グルコース値は低く、腎症指標の変化も軽微であることから、腎症の 発症・進展に高血糖が重要な一因であることが示唆された。次に、雄性Wistar

fatty

ラットの腎症発症に対し、インスリン抵抗性改善作用をもつ塩酸ピオグリ タゾンの効果を検討した。塩酸ピオグリタゾンを12 週間にわたって投与すると、

高血糖、高インスリン血症、高脂血症はおおむね正常化した。このとき、アルブ

ミ ン お よ び 蛋 白 の 尿 中 排 泄 量 も 低 下 し 、 腎 糸 球 体 病 変 も 改 善 し た 。

  

さらに、雄性

Wistar fatty

ラットは

22

週齢頃より「シンドロームX 」の病態

のーっである高血圧を呈した。この血圧上昇も塩酸ピオグリタゾンの投与により

(2)

正常化し、このとき血圧と血漿インスリン値およびインスリン投与後の血糖値との 間に良好な相関が認められた。また、本ラットのみならず食餌性インスリン抵抗性 モデルであるフルクトース摂取ラットにおいても、塩酸ピオグリタゾンは同様の血 圧低下作用を示した。

  

最後に 、本ラッ トを用い て、塩酸ピオグリタゾンとは異なる機序でインスリン

抵 抗性 改 善作用を 示すビグ アナイド 剤メトフ オルミン の効果に ついても検 討を

加えた 。塩酸ピ オグリタ ゾンは単独で高ケトン血症改善作用を示すとともに、メ

トフオ ルミンと の併用に より相加的な血糖低下作用を示した。また、両薬剤の併

用は骨 格筋にお けるグリ コーゲン含量を増加させ、塩酸ピオグリタゾンによる体

重 増 加 に 対 し て 軽 減 作 用 を 示 し た こ と か ら 、 そ の 有 用 性 が 示 さ れ た 。

  

以上の結果から、雄性Wbtar fatty ラットが高インスリン血症や高脂血症のみな

らず、高血圧や血管合併症のーっである腎症を発症し、典型的な「シンドロームX 」

の病態 を呈する こと、さ らに、これらの病態に対してインスリン抵抗性改善薬で

ある塩 酸ピオグ リタゾン が改善効果を有することが明らかとなった。従って、雄

Wi8tarfatty

ラッ トは、「シ ンドロー ムX 」モデ ルとして 糖尿病や 動脈硬化 症

などの インスリ ン抵抗性 と密接に関連した病態の解析や、その治療薬の開発・評

価 、 さ ら に は 治 療 法 の 確 立 に 極 め て 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。

(3)

学 位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

斉藤 伊藤 安居院 木村

学 位 論 文 題 名

昌之 茂男 高志 和弘

シ ン ド ローム X モ デルとし ての Wistar fatty ラット の 病 態とイン スリン抵 抗性改 善薬の効 果に関する研究

  「シンドロームX」は高インスリン血症、耐糖能異常、高脂血症、高血圧、内臓脂肪型肥満などを併せ持っ インスリン抵抗性を基盤とする病態であり、生活習慣病、とりわけ動脈硬化症の危険因子として注目され ている。雄性Wistar fattyラットは、内臓肥満、耐糖能異常、高脂血症、高インスリン血症を呈すること が知られており、肥満2型糖尿病モデル動物として利用されているが、「シンドロームX」でみられる高血 圧や血管合併症については知見が少なかった。本学位論文は、「シンドロームX」モデルとしての雄性Wistar

fattyラットの有用性を明らかにするために、本ラットでの血管合併症、特に細小血管障害である腎症と高

血圧の発症について検討し、更にそれらに対するインスリン抵抗性改善薬の効果を検証した研究結果をま とめたものである。

  まず、雄性Wistar fattyラットでは8週齢頃より加齢とともに血漿グルコ ース、インスリンおよびトリ グリセリド値が上昇し、それらにやや遅れて腎症指標であるアルブミンおよび蛋白の尿中排泄量が増加す ることを確認した。そこで、腎臓を病理組織的に検索したところ、糸球体ボーマン嚢の基底膜肥厚、メサ ンギウム領域の拡大など糸球体硬化病変とともに尿細管の細胞変性(基底膜肥厚、塩基性変性)が認めら れた。これらの変化はヒト糖尿病性腎症の初期病変の所見と類似していた。また、雌性Wistar fattyや雄 性Zucker fattyラットでも、肥満、高脂血症、高インスリン血症を発症したが、雄性Wistar fattyラッ 卜に比べて血漿グルコース値は低く、腎症指標の変化も軽微であることから、腎症の発症・進展に高血糖 が重要な一因であることが示唆された。さらに、雄性Wistar fattyラッ、トの腎症発症に対するインスリン 抵抗性改善作用をもつ塩酸ピオグリタゾンの効果を検討した。塩酸ピオグリタゾンを12週間にわたって投 与すると、高血糖、高インスリン血症、高脂血症はおおむね正常化した。このとき、アルブミンおよび蛋 白の尿中排泄量も低下し、腎糸球体病変も改善した。

  次に、「シンドロームX」の病態のーっである高血圧にっいて検討したところ、雄性Wistar fattyラッ トでは22週齢頃より血圧が高値となることが明らかとなった。この血圧上昇も塩酸ピオグリタゾンの投与 により正常化し、このとき血圧と血漿インスリン値およびインスリン投与後の血糖値との問に良好な相関 が認められた。また、本ラットのみならず食餌性インスリン抵抗性モデルであるフルクトース摂取ラット においても、塩酸ピオグリタゾンは同様の血圧低下効果を示した。

  最後に、本ラットを用いて、塩酸ピオグリタゾンとは異なる機序でインスリン抵抗性改善作用を示すビ グアナイド剤メトフオルミンの効果についても検討を加えた。塩酸ピオグリタゾンは単独で高ケトン血症 改善作用を示すとともに、メトフオルミンとの併用により相加的な血糖低下作用を示した。また、両薬剤

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の併用は骨格筋におけるグリコーゲン含量を増加させ、塩酸ピオグリタゾンによる体重増加に対して軽減 作用を示したことから、その有用性が示された。

  以上のように本研究によって、雄性Wistar fattyラットが「シンドロームX」モデルとして、糖尿病や 動脈硬化症などのインスリン抵抗性と密接に関連した病態の解析や、その治療薬の開発・評価、さらには 治療法の確立に極めて有用であることが明らかとなった。よって、審査員一同は、上記学位論文提出者鈴 木 正 美 氏 が 博 士 ( 獣 医 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

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参照

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