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博士(医学) 谷口菜津子 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)   谷口菜津子 学位論文題名

気管支喘息・ COPD の発症および病型に関する遺伝的背景の検討

学位論文 内容の要旨

【背景 と目的】 気管支 喘息とCOPDは慢性の気道炎症を特徴とする閉塞性肺疾患である。

気管支喘息の発症には、様々な環境要因、遺伝的要因が関与し、また近年複数の病態から なる疾患群の集合体であると考えられ、病型分類によって、病態への理解、新規治療薬開 発が進展し、個別化治療にっながることが期待されている。一方、COPDにおいても複数の 病型の集合体と考えられている。気管支喘息の病型分類において、発症年齢が重要な因子 のーっとされ、小児発症喘息と比ベ、成人発症喘息には、種々の遺伝要因・環境要因が関 連し、かつ経年的な環境要因の蓄積も考慮すべきである。

  

気道過敏性は喘息病態の重要な要素のーっだが、健常者にも認められ、無症候性気道過 敏 性 と 呼 ぱ れ 、 前 向 き 研 究 で 将 来 の 喘息 発 症 の危 険 因 子 であ る と の報 告 も ある 。

  

喫煙は

COPD

の主な 原因だが 、気管 支喘息の発症や経過にも大きく影響する。しかし、

喫煙と成人発症喘息との関連は、あまり明らかになっていない。また、新たな感受性遺伝 子が検索されても、その寄与度は低く、遺伝的素因と環境素因との相互作用を考慮する必 要性が明らかになっている。

  

今回我々は、気管支喘息に関する遺伝的背景を検討する上で、病型分類の重要性も踏ま え、主に成人・高齢発症喘息を対象とし、気道過敏性との関連が報告されているCC16、酸 化ストレス関連遺伝子CATの2つの遺伝子に着目し検討した。

【研究1:対象 と方法】若年健常者群:呼吸器症状・呼吸器疾患既往のない18〜

35

歳の健 常者154名。症 例一対照 研究:気 管支喘 息患者

504

名と 呼吸器疾 患既往のない健常者736 名。喘息患者は発症年齢別に3群に分類した。′(若年発症:

0

−19歳、中高年発症:

20

−40 歳、高齢発症: 41歳以上)非特異的気道過敏性はメサコリン誘導気道収縮にて判定し(ア ストグラフ@)、指標として呼吸抵抗上昇開始点までの累積吸入メサコリン投与量(Dmin) を使用し た。CC16 38GA遺伝子 多型(rs3741240)を同 定し、血 漿CC16濃度はELISA kitに て測定した。

【研究1:結果】若年健常者において、log DminはCC16  38Aアレルを有する群で

(AA+AG

; 平均土SDl.03土

O

61

)有さない群(GG;平均土SDl.28土

0

.61)と比較して有意に低値、

すなわち 気道過 敏性が亢 進してい た(p=0.012)。 血漿CC16濃 度は38Aアレルを有する群

(平均土SD:6.36土2.

74)

において、有さない群(平均土SD:

7

.57土

3

.21)と比較して低 値であった(p‑ニO. 020)。log Dminと血漿CC16濃度には正の相関があった。症例―対照研究 では、38Aアレルを有することは高齢発症喘息でのみりスクであった(OR,1.63;95% CI,

1

 09

12. 41

;p=0. 016)。

【研究2:対象と方法】症例―対照研究(気管支喘息):気管支喘息患者493名と呼吸器疾 患既 往 の ない 健 常 者1076名 。 症 例一 対照研究

(COPD)

COPD

患者

265

名 。対照群 は健常 者のうち 、年齢

40

歳以上、 喫煙歴 がBrinkman Index  (BI)200以上、

1

秒率≧

70%

であっ た238名 。報告 の多い

2

つの多 型、CAT一

262CT (rs1001179)

とCAT−21AT (rs7943316)を 同定した。COPDにおける気腫病変評価(CTスコア)はGod.dardのスコアリングシステムを 修正し使用した。

−22−

(2)

【研究2:結果】全体での症例―対照研究では−262CT,

‑21AT

ともに多型頻度に有意差を認め なかった。喫煙歴で層別化すると、喫煙者に船いてのみ、

CAT

−262CTで有意差を認め、喫 煙喘息患者ではTアレルを有する頻度が高く、交絡因子で補正しても、有意に高値であり、

T

アレル有することは喘息発症のりスクであった(OR,2.459;95c/oCI,1.

227

−4.929;

p=0. 011)

。発症年齢別の検討では、若年発症では有意差を認めず、成人発症喘息にのみ影 響していた。喘息発症に関して、喫煙の有無別のKaplanーMeier法では、―262Tアレルあり 群では喫煙によって成人後の喘息発症が有意に増加した(p=0. 007)。COPD症例一対照研究 では、両群の背景因子は一致せず、CATー262CT、―21AT遺伝子多型の頻度に有意差は認めな かっ た。

COPD

の気腫型/非気腫型病型を考慮し、

CT

スコアに着目し、多型との関連をみた とこ ろ、

CAT

262T

アレルを有すると

CT

スコアが低い、すなわち非気腫型のCOPDである可 能性が高いという結果であった

(p=0

0296)

【考察】 研究

1

:若年 健常者に おいて 、活性低下との関連が報告されているCC16  38Aア レルを有すると、非特異的気道過敏性が存在し、血漿

CC16

濃度が低下していた。症例一対 照研究で は、同Aアレルが高齢発症喘息への危険因子であることが示され、このニつの結 果からは 、高齢発 症喘息 の一部が 遺伝子 多型に規定された

CC16

濃度の低下を介して、気 道過敏性を獲得し、高齢になってから喘息発症を引き起こすという仮説が成り立っ。機序 としては

CC16

の低下は気道炎症の増加や遷延化を起こし、結果として無症候性気道過敏性 を獲得させる可能性がある。

  

多型との関連が高齢発症喘息にだけ認められ、若年発症では認められなかった理由は、

この多型の影響は、長期間の気道炎症持続や気道過敏性の獲得、気道収縮などを介しての み見られるからかもしれなぃ。

  

研究2:CAT一262Tアレルが喫煙者においてのみ、喘息発症への危険因子であることが示 され、COPDの病型(非気腫型)にも同アレルが影響していることが示唆された。以前の報 告では非喫煙者において、

‑262T

アレルが喘息に対し保護的であるという報告があり、我々 のデータでも同様の傾向が見られ、遺伝子一環境要因の相互作用の重要性を示唆する結果 と言える。機序としては、酸化・抗酸化バランスが酸化に傾くと気道炎症が促進すると考 えられ、気道カタラーゼ活性が少ない場合、気道炎症が遷延し、喘息発症が起こり、タバ コ は そ の 誘 因 の ー っ で あ る た め 、 喫 煙 者で の み 影響 し た とい う 事 が 考え ら れ た。

  

カタラー ゼを含 む抗酸化 酵素はCOPDの発症機序においても着目されているが、以前の 報告と同様に、本研究でも症例一対照研究では有意差を認めず、その理由は

COPD

の対照群 設定の困 難さによ るかも しれない 。一方 、非気腫型

COPD

という病型に着目したところ、

262T

アレル を有する人ではCTスコアが低く、

T

アレルを有すると、喫煙による気道炎症 が起こり、気腫が優位になる前に閉塞性障害をきたし、非気腫型

COPD

と認識される可能性 が考えられた。

  

活性との関連が報告されている

CAT

ー262遺伝子多型がニつの疾患の一部(喫煙者喘息、

非気腫型

COPD)

へ の影響が示されたことで、カタラーゼがこれらの共通病態の一部の役割 を担っている可能性がある。

【結論 】

CC16

遺伝 子多型は 遺伝的に

CC16

濃度を 規定し 、

CC16

濃度の 低下は 、無症候 性 の気道過敏性、更には高齢発症喘息との関連性が示唆された。

  

カタラーゼ遺伝子多型は、喫煙者喘息、非気腫型COPDに関与し、気道におけるカタラー ゼ 活 性 が こ の

2

つ の 疾 患 の 共 通 病 態 の 一 部 を 担 っ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

―23ー

(3)

学位 論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 教授 准教授 教授

有川 西村 矢部 森本

学 位 論 文 題 名

二郎 正治 一郎 裕二

気管支喘息・COPD の発症および病型に関する遺伝的背景の検討

  近 年 気 管 支 喘 息 は 病 型 分 類 が 重 要 と さ れ 、 特 に 発症 年 齢は 重要 な 病型 識別 因 子の ーっ で ある が、

成 人 発 症 喘 息 の 遺 伝 子 多 型 報 告 は 少 な い 。 今 回 は 気管 支 喘息 に関 す る遺 伝的 背 景を 検討 す る上 で、

病 型 分 類 の 重 要 性 も 踏 ま え 、 主 に 成 人 ・ 高 齢 発 症 喘 息 を 対 象 と し 、 気 道 過 敏 性 と の 関 連 が 報 告 さ れ て い るCC16、 酸 化 ス ト レ ス 関 連 遺 伝 子CATの2つ の 遺 伝 子 に 着 目 し 検 討 し た 。 若 年 健 常 者 で はCC16  38Aア レ ル を 有 す る と 、 血 漿CC16濃 度 が 低 下 し 、 気 道 過 敏 性 が 亢 進 し て い た 。 ま た 、 症 例 対 照 研 究 で は 同Aア レ ル が 高 齢 発 症 喘 息 の 危 険 因 子 で あ っ た 。 内 因 性 抗 酸 化 酵 素 の ー っ カ タ ラ ー ゼ で は 酸 化 ス ト レ ス の 代 表 で あ る タ バ コ に 着 目 す る と 、CAT−262Tア レ ル が 喫 煙 者 で の 成 人 発 症 喘 息 の 危 険 因 子 で あ っ た 。COPDで は 発 症 自 体 と の 関 連 は な か っ た が 、 非 気 腫 型 病 型 と の 関 連 が 認 め ら れ た 。 気 管 支 喘 息 . COPDの 遺 伝 子 多 型 研 究 に お い て は 病 型 や 環 境 因 子 を 考 慮 す る こ と が 重 要 と 考 え ら れ た 。

  質 疑 応 答 で は 、 矢 部 准 教 授 よ りCC16でAAの 報 告 や 意 義 に つ い て の 質 問 が あ り 、AAとAGで の 2群 間 比 較 は な く 、AAの み ま た はAG十AAで 危 険 因 子 と い う 報 告 が あ る 。 活 性 に 関 す る 結 果 か ら 、 AG、AAと 段 階 的 に 濃 度 が 低 下 す る こ と が 予 測 さ れ る と の 回 答 が あ っ た 。 ま た 、 周 囲 の 多 型 と の 連 鎖 不 平 衡 の 有 無 に っ い て の 質 問 に は 、CC16と 近 傍 遺 伝 子 の 連 鎖 不 平 衡 を 見 た も の は な か っ た と 記 憶 し て い る と 回 答 が あ っ た 。CATは2多 型 の 解 析 を 行 っ て お り 、 ハ プ ロ タ イ プ 解 析 は 行 っ た か と い う 質 問 に は 、 施 行 し た が‑262Tア レ ル 頻 度 が 非 常 に 低 い た め に 、 表 示 し な か っ た 旨 、 回 答 が あ っ た 。 そ の 他 の デ ー タ と 多 型 と の 関 連 の 有 無 に つ い て の 質 問 に は 、 総IgE値 で は な く ア ト ピ ー 素 因 に 対 す る 検 討 は 行 っ た が 有 意 差 は な か っ た 。 人 種 に よ るCOPD病 型 の 違 い の 有 無 に つ い て は 、 そ の よ う な 報 告 は な ぃ と 思 わ れ る 。 欧 米 か ら の 報 告 で も 同 様 の 病 型 に 関 す る 記 載 が あ る が 、 正 確 な 分 類 基 準 が な ぃ た め 、 正 し い 比 較 が で き て い な ぃ 可 能 性 が あ る と の 回 答 が あ っ た 。 主 査 の 有 川 か ら の 遺 伝 子 多 型 が 活 性 ・ 濃 度 に 影 響 を 与 え る 機 序 に つ い て の 質 問 に は 、 ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 で 転 写 活 性 を み た 研 究 が あ る が 、 被 験 者 に お け る 濃 度 低 下 は 多 数 の 因 子 が 関 与 す る の で 詳 細 は 不 明 で あ る と 回 答 が あ っ た 。 ま た 、 小 児 発 症 で は ない が 成人 発症 喘 息で は関 連 あり とい う こと で、

二 っ は 遺 伝 的 背 景 に 違 い が あ る と 考 え て よ い か と い う 質 問 に 対 し 、 病 型 分 類 の 一 例 だ が 、 多 く の 要 素 が 異 な り 、 か つ 遺 伝 的 背 景 も 異 な っ て い る と 考 え て い る と 回 答 が あ っ た 。 有 川 お よ び 森 本 教 授 か ら の 、 今 回 の 結 果 の 臨 床 応 用 に 関 す る 質 問 に 対 し 、 一 っ は 予 防 的 介 入 で り ス ク の 高 い 人 に 対 し て 気 道 炎 症 の 原 因 を 避 け る こ と で 発 症 を 抑 制 す る 。 も う ー っ は 遺 伝 子 導 入 に よ っ て 、 発 現 ・ 産 生 系 を 上 昇 さ せ る こ と で 保 護 で き る か も し れ な い が こ れ は 実 現 困 難 で あ る 。 そ の 他 病 態 解 明 、 病 型 分 類 マ ー カ ー 、 病 型 毎 の 治 療 標 的 な ど の 考 え が あ る と の 回 答 が あ っ た 。 多 型 の 記 載 方 法 で 、 基

ー24―

(4)

礎 論 文 で はG38A、 卒 論 で は38GAと 異 な っ て い る と い う 質 問 に は 、 意 味 は 同 じ で 、 卒 論 はCAT 揃 え て こ の よ う な 記 載 に し た と 説 明 が あ っ た 。 西 村 教 授 お よ び森 本 教 授 よ り 、2っ の 遺 伝 子を 選 ん だ理 由 に つ い ての 質 問 が あ り、 こ れ ら は 報告 が 多 く 、 多 型と 機 能 変 化 に関 す る 報告 もあり 、CC16 は 位 置 が 喘 息 関 連 遺 伝 子 に あ る た めと 回 答 が あ った 。 最 後 に 指導 教 員 で あ る西 村 教 授 よ り 、は じ め か ら 成 人 発 症 だ け で 有 意 差 が で る と 想 定 し て い た か と い う 質 問 が あ り 、CC16は 小児 発 症 で の 報 告 も 多 く 、 必 ず し も 成 人 発 症 で だけ 出 る と 想 定し て い た わ けで は な く 、 喘息 全 体 で 出 て も良 い と 思 っ て い た と 回 答 が あ っ た 。 本 研究 の 小 児 発 症喘 息 は 診 断 上の バ イ ア ス があ る の で は と いう 質 問 に 対 し 、 す べ て 当 科 に 通 院 中 の 被験 者 な の で 、小 児 期 の み で寛 解 し た 喘 息は 入 ら な い 。 小児 期 か ら 継 続 し て い る 人 と 、 寛 解 後 再 燃し た 人 の 割 合は 把 握 で き てい ず 、 バ イ アス が 存 在 す る 可能 性 は 否 定 で き な い と の 回 答 が あ っ た 。他 に も 多 数 の酵 素 や 蛋 白 が気 道 炎 症 に 対し 関 与 し て い るが 、 そ れ ら と の 報 告 は あ る の か と い う 質問 に 対 し 、 他の 抗 酸 化 酵 素の 報 告 は カ タラ ー ゼ 同 様 に 環境 因 子 の 条 件 っ き や 、 相 反 す る 報 告 が 出て い る 。 気 道炎 症 に 関 わ るす べ て の 酵 素や 蛋 白 等 の 多 型報 告 に っ い て は 未 だ 把 握 し て い な い 旨 、回 答 が あ っ た。 森 本 教 授 より 、 こ の ニ つの 遺 伝 子 は 、 喘息 . COPDの 従 来 の 研 究 で 、 重 要 な 遺 伝 子 と 認 識 さ れ て い る も の な の か と ぃ う 質 問 に 対 し、 大 規 模 な 研 究で 何 度 も 確 認さ れ て い る とぃ う ほ ど で はな い と の 回 答 があ っ た 。

  こ の 論 文 は 病 型 や 環 境 因 子 も 考 慮 し た 遺 伝 子 多 型 研 究 で あ り 、CC16は 健 常 者に お け る 詳 細デ ー タ も 含 む こ と で 機 序 へ の 推 論 も 提案 し て い る 点で 評 価 さ れ 、今 後 の 病 型 分類 、 病 型 毎 の 病態 解 明 への 貢 献 が 期 待さ れ る 。

  審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果を 高 く 評 価 し、 大 学 院 課 程 にお け る 研 鑽 や取 得 単 位 な ども 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

25

参照

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