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新生児胃穿孔の2例 東京女子医科大学外科学教室(主任

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Academic year: 2022

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(1)

轡騨51第繍5溜言)

新生児胃穿孔の2例

東京女子医科大学外科学教室(主任

   岩崎

   イワ サキ

   嶋田

   シマ  ダ

講師 鈴

    スズ

裕・磯部

ヒロシ  イソベ

誠・曽我

マコト  ソ ガ

キ      タダシ

教授 織

    オリ

    織畑秀夫教授)

文隆・小島幸次朗

フミタカ  コジ マコウジロー

忠・助教授

基行・馬渕 丁丁

モトユキ  マブチ  ゲソゴ

    倉 光 秀

    クラ  ミツ  ヒデ

畑 秀 夫

ハタ  ヒデ   オ

麿

マロ

(受付 昭和50年11月8日)

      はじめに

 新生児胃穿孔は,今日なお死亡率の極めて高い 重篤な新生児疾患であり,その病因・早期診断・

治療の面で検討を要する問題が多く残されている

.当教室では昭和39年〜49年の間に4例の新生児 胃穿孔症例を経験し,教室の岡らが症例の報告と 共にその発生原因について詳細に検討したが1),

その後さらに2例の経験を得たのでここに報告し

(表1),二千の文献的考察を加えた.

 症例1

 丁目(No.5):森○沙○,女児,生後4日目.

 主訴:腹部膨満,呼吸困難.

 家族歴:特記すべきことなし.

 妊娠分娩経過=妊娠37週に正常分娩にて出産.生下時 体重3,0009,Apgar s sc・re 10点.

 現病歴:生後24時間より哺乳開始し,哺乳力は良好,

嘔吐なく排便あり.生後3日目より哺乳力低下し腹部膨 満に気付く.生後4日目呼吸困難出現し,本院小児科へ 入院した.

 入院時所見:顔面苦悶状にて呼吸困難および四 肢チアノーゼを認め,腹部膨満著明で,腹壁静脈

の怒張あり.

表1 教室における新生児冑穿孔症例 No.  氏  名

1

2 3 4 5

6

円○加○子 山○ 明○

本○ 万○

加○ 美○

森○ 渉○

畠○ 友○

δ

δ

生下時 体 重

2530g

3100 2700 3000 3460

発症日手術日i穿孔部位1原

1 3

1

3 2 3 3

7 4 4

4

ノ」湾 不明

噴門部 大蛮 胃体上部 大層 胃体上部 大湾 胃体下部 大湾

胃筋層欠損 横隔膜 ヘルニア 胃カテーテル

不明 胃体上〜下部

大健側前壁 不明

手術法陣帰

穿孔部閉鎖

穿孔部閉鎖 胃痩造設 穿孔部閉鎖 胃痩造設 穿孔部閉鎖 穿孔部閉鎖 胃痩造設 幽門形成

治 癒 死 亡 死 亡 死 亡 死 亡 治 癒   Hiroshi IWASAKI, Fumitaka ISOBE, Kδ∫ir6 KqllMA, MakoωSHIMA1)A, Motoyuk董SOGA, Gemgo

MABUCm, Tadash董SUZUK1, Hidemaro KURAMITSU, Hideo O】[UHATA 3 Department of Surgery

(Director:Pro£Hideo ORIHATA), Tokyo Women s Medical College:Two cases of the Gastric Per飾ration in the Newborn.

(2)

 検査所見:一般検血ではHb 16.2g畑, Ht 47

%,赤血球429万,白血球3,800と白血球の減

少を認め,血液ガスではPH 7,098, Po261mm}セ,

Pco240.2㎜㎏, B・E・一16.2, S.B.12.7mEq/1と

高度の代謝性アシドーシスを認める.血液培養に て連鎖球菌100%を認める.立位腹部単純X線撮 影にて多量の腹腔内遊離ガス像を認め(写真1),

消化管穿孔の診断にて緊急手術を施行した.

写真1 症例No.5の刷腹部単純X線像.著明な腹    腔内遊離ガスを認める.

 手術所見:上腹部正中切開にて開腹すると,空 気と共に多量の漿液およびミルクが噴出し,それ

らは腹腔全体に貯溜していた.胃体下部大湾に5

×3cmの穿孔部を認め,穿孔部周囲は壊死に陥 り,非薄化していた.壊死部は切除し2層縫合に て閉鎖した,腹腔内を洗浄後ドレナージして閉腹

す,

 術後経過:全身状態不良にて,術後2時間に一 度心停止あり,蘇生に成功するも,術後9時間に 再び心停止をきたし死亡した.

 第2例

 患児(No.6):畠○友○,男児,生後4日目.

 主訴;腹部膨満,呼吸困難.

 家族歴:特記すべきことなし.

 妊娠分娩経過:母体に軽度妊娠中毒症あり,妊娠39

週に正常分娩にて出産.生下時体重3,460g,Apgar,s sc・re 10点,羊水混濁(升).

 現病歴:生後24時間より哺乳開始,口区吐なく排便あり

.経過良好であったが,生後3日目より哺乳量減少し,

腹部膨満に気付く.生後4日目呼吸困難出現し,当科入 院す,

 入院時所見:四肢チアノーゼあり,腹部膨満著

明.

 検査所見:一一般検血ではHb 21.49/dl, Ht 60

%,赤血球679万,白血球8,200.血液ガスでは pH 7,424, Po265mmH9, Pco234.5mm}壇, B.E−

0.8,S・B 23.6と正常範囲内であった.立位腹部

単純X線撮影にて腹腔内遊離ガスを多量に認め

(写真2),新生児胃穿孔の診断にて緊急手術を施 行した.

写真2 症例No.6の腹部単純X線像.著明な腹    腔内遊離ガス像を認める.

 手術所見1上腹部横切開にて開腹すると,大網 が胃・脾・肝左葉を被う様にして存在し,それら を開くとミルクおよび膿汁が多量に認められた.

すなわち,限局性腹膜炎の形が主で,ガスおよび 少量のミルクが遊離腹腔に出ていたのである.そ れらを吸引すると,胃体上部から下部にかけ大費 より前壁に8×3cmの穿孔が認められ,穿孔部周 囲は1cmの幅で菲薄化した壊死部を認めた,壊死

(3)

部を切除し穿孔部を2層縫合,胃痩造設・幽門形 成施行し,腹腔内を温生食水1000mlにて洗浄し た後,ドレナージして閉腹す.

 術後経過:経過良好にて術後4日目,胃痩より ガストログラフィン造影施行し通過良好なるを認 め(写真3),胃痩より5%糖液投与,5日目より

ミルク投与開始し,7日目よりミルク経口投与に 変え,術後20日目に退院した.本山が術前に比し て良好な経過をとって理由の1つは,腹膜炎が限 局形であったことにあると考えられる.

による破裂穿孔部は,先天性筋層欠損によると報 告されていた組織所見と同様な所見を示すことを 証明し,破裂時に単に筋層が退縮したものであろ

うと報告θ),さらに発生学的にも穿孔部の筋層 のみが欠損することにも疑義がもたれている9).

1969年にLI・ydは,分娩前後のanoxiaによって

asphixial defense mechanism(diving reHex)カミf動 き,重要臓器に血流が集中し,胃・腸管の乏血,

そして低酸素状態が原因で壊死・穿孔へ進むもの ではないかと推定した10).さらに近年交換輸血後 に胃穿孔をきたす症例も報告されており11)12),こ れらの諸説には今だ結着がついていない.

 本症の発生機序は一元的には考え難く,岡の分 類1)(表2)の如く胃壁の減弱,胃内圧の上昇,

表2 新生児胃穿孔の原因分類 胃壁筋層欠損・不全 胃潰瘍;・脳障害

胃壁の減弱 胃憩室 異所性組織 1 外 傷

マスクによる加圧 胃内圧の上昇 幽門閉鎖・十二指腸閉鎖

写真3 症例No.6の術後胃造影.造影剤の漏出    もなく,小腸への排出も良好である.

気管食道痩

横隔膜ヘルニア・膀帯ヘルニア

        11考  按

 歴史および病因=新生児胃穿孔の歴史は,1825 年Sicboleの剖検例の報告に始まる2).最初の 手術例は1929年にSternが報告し3),手術生存第

1例は1950年に工egerによって報告された4).一 方,発生原因として1932年Cushingが胃潰瘍説を 唱え5),これに対し1943年にHerbutは胃穿孔剖 検例にて穿孔部の筋層欠損を認め,本疾患の原因 は先天性胃筋層欠損であると発表した6).1960年 にはAmadioが自験例および報告例,計17例を組 織学的に検索し,Herbutの説を支持し,筋層発 育不全説を病因とした7).しかし1965年になって Shawは自験例8例と動物実験より,胃内圧上昇

敗血症

循環障害

薬剤による呼吸抑制交換輸血

分娩時のStress

(岡による東女医大誌45:314,1975より)

循環障害が,複雑な主因,副因の関係をもつて発 生すると思われ,より多元的にとらえるべきでは ないだろうか.今回われわれが報告した2例も,

組織学的に胃筋層欠損を確認できず,Apgar s scoreも充分であり,他に合併奇形もなく,}三た

る原因は不明であるる.

 穿孔部位:穿孔部位はInouye13)によると大越 側が多く,143例中71例(49.7%),次に前壁が多

く大領と前壁のものを合わせると,143例中96例

(67.1%)と圧倒的に多くなる.われわれの症例 でもほとんどが大蛮であった.

 性別:男女比ではInouye13)によると74:51,

(4)

武藤14)は36:16,Amadeo7)も11:5と,いずれ も男児の発生が多い.これに関してAmes15)が女 児よりも男児の方が胃液酸度の高いことを報告し

ているが,何らかの関連が推測される.

 症状並びに診断:初発症状は哺乳力減退,嘔吐 で始まり,これらは生後3日前後で発症すること が多い13)16).そして吐血,下血をきたす場合もあ り,ほとんど必発の症状として腹部膨満が出現す るが,この時期ではまだ消化管穿孔が疑われない 場合が多く,呼吸困難,チアノーゼを認める時期 になってX線撮影,穿孔確認となる場合が多い.

診断は立位腹部単純x線撮影にて腹腔内に遊離ガ スを証明することであり,胃以外の消化管穿孔と の鑑別は胃泡が認められないこと,遊離ガスが著 しく多いこと,小腸および大腸内ガスは普通か又 は少ないこと等による17).

 治療:早急に開腹手術が必要であるが,術前の 脱水,電解質の不均衡に対し,輸液を行ない,抗 生物質投与,酸素吸入を行なう.またわれわれの 症例No・5の如く高度のアシドーシスに陥ってい

る場合も多く,酸塩基平衡の補正も必要である.

一方,経鼻胃カテーテルによって胃内容の吸引を することが必要であるが,腹部膨満高度:のため呼 吸困難,チアノーゼの強い場合,腹部を穿刺して 脱気することも,心肺機能改善に有効である.開 腹にあたっては,上腹部正中切開,上腹部横切開 の2法があるが,われわれは手術野が広くとれる 上腹部横切開を主に用いている.穿孔部が見つか ったならば,穿孔部周辺の壊死部を切除し,十分 に健常な部分で2層縫合を行なって穿孔部を閉鎖 する.穿孔部が大きい場合,術後胃の変形による 胃内容排出障害が予想され,われわれは幽門形成 を行なう場合もある.胃癌の造設はShawらの推 奨するところで8),減圧の他,栄養補給にも利用 される.汎発性腹膜炎に対して,多量の温生食尽 による腹腔内洗浄が必要で,われわれは1000ml 前後の量で十分に洗浄している.

 死亡率および予後:死亡率は今日なお極めて高 く,MHIer18)の89例の集計では81.5%, Inouye18)

の143例では73%,土田19)の89例では79.3%,武

藤9)の71例では75.2%である.小数例の報告では 非常に良い報告もあるが,集計してみるとおおむ ね70〜80%の死亡率である.

 予後を決定する因子としては,穿孔から治療関 始までの時間,穿孔による腹膜炎の程度(腹膜炎 が限局している場合は当然ながら救命率が高い),

患者の未熟度,奇形の合併の有無等であるが,な んといっても早期診断,早期治療が望まれる.

         おわりに

 当教室では過去4例の新生児胃穿孔の症例を経 験し,岡らが報告したが1),その後相次いで2例 の経験を得,そのうち1例を救命し得た.ここに 若干の文献的考察と共に報告した.

        文  献

1)岡高士・他:新生児胃穿孔の発生について.

  東女医大誌45314(1975)

2)S蓋ebold=Uber Geschwuerbildungen des   Gastro Duodenal Tractus im Kindesalter,

  cited by Thiele p. Erg. inn Med. u. Kinderh   16302 (1919)

3)Stem, M.A. et aL 3 Perfbrated Gastric   Ulcer in a Two−day Old In丘mt. J Lancet 49   492 (1929).

4)LegeちJ.L et a1.:ulcere Gastrigue Per−

 fbr6 chez un Nouveau−neavec Survie. UrioR   on m6d Canada 791277(1950)

5)Cushing, H.;Peptic Ulcers and the Inter.

  brain. Surg Gynec Obst 551(1932)

6)Herbut, P.A.3 Congenital Defect in Muscu−

 lature of Stomach with Rupture量n a Newborn   Infant. Arch Path 3691(1943)

7)Amadeo, J・H・et a1。=Neonatal Gastric  Perfbration caused by congenital De鉛ct of   the Gastric Musculature. Surgery 471011   (1960>

8)Shaw, A. et a1.=Spontaneous Rupture of   the stomach in the Newborn. Surgery 58   61 (1965)

9)気藤良弘・他:新生児胃穿孔の臨床病理学的  検討.日小外誌6157(1970)

10)noyd, J.R.3 The Etiology of Gastrointest加al   PerfbratiorL in the Newborn・Jped Surg 4   77 (1969)

ll)田中猛夫・他:新生児胃穿孔の検討.小児外科   内科5249(!973)

12)岡二士・他:交換輸血後に生じた新生児胃  穿孔の1例.東女医大誌4525(1975)

13)Inouye, W.Y。3 Neonatal Gastric Per飴ration.

(5)

  Arch Surg 88471(1964)

14)武藤輝一・他:新生児胃穿孔の3例.外科診

  療 2 333 (1969)

15)Ames, M.D.=Gastric Acidity in the First   Ten Day of Li免of the Prematurely Born   Baby. Amer J Dis Child 100252(1960)

16)加来信雄・他:新生児胃穿孔10例の検討.日小   外誌9633(1973)

17)長島金二=新生児消化管穿孔の部位診断。小児   科111151(1970)

18)Mi皿er, R.A.= Observation on the Gastric   Acidity During the First Month of Li飴.

  Arch Dis Child 1622(1941)

19)土田嘉昭:新生児消化管穿孔の臨床.日新児誌   362 (1967)

参照

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