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孝一郎, 関戸 伸明, 森田 克哉, 持木 大, 富田 重 之, 渡辺 洋宇

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全文

(1)

HCG産生肺腺癌の1女性例

著者 荒能 義彦, 清水 淳三, 村上 眞也, 林 義信, 小林

孝一郎, 関戸 伸明, 森田 克哉, 持木 大, 富田 重 之, 渡辺 洋宇

著者別表示 Arano Yoshihiko, Shimizu Junzo, Murakami

Shinya, Hayashi Yoshinobu, Kobayashi Ko‑ichi, Sekido Nobuaki, Morita Katsuya, Mochiki Y., Tomita Shigeyuki, Watanabe Yoh

雑誌名 胸部外科 = 日本心臓血管外科学会雑誌

巻 47

号 6

ページ 485‑487

発行年 1994‑06

URL http://doi.org/10.24517/00050898

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

症 例

HCG産生肺腺癌の1女性例

荒 能 義 彦 小林孝一郎 富 田 重 之

清 水 淳 三 関 戸 伸 明 渡 辺 洋 宇 蝋

村 上 真 也 森 田 克 哉

林 義 信 持 木 大

は じ め に 肺 癌 に は ホ ル モ ン 産 生 腫 瘍 が 多 い こ と が 知 ら れ て い る が , ヒ ト 絨 毛 性 ゴ ナ ド ト ロ ピ ン (HCG)を産生するものはきわめてまれである.今 回 , わ れ わ れ は 血 清 学 的 , お よ び 免 疫 組 織 学 的 に HCG産生が証明できた肺腺癌の1女性例を経験した ので報告する.

症 例

症例72歳,女.

主訴:咳,疲.

既往歴:27歳肺結核,38歳子宮摘出術(子宮 筋腫)

家族歴:特記すべきことはない.

現病歴:1992年1月ころより,咳嗽,喀疲が持続 するようになったため,3月に近医を受診した.胸部 X線写真にて,左下肺野に異常陰影を指摘され,4月 精査,加療の目的で当科に紹介され入院となった.

入院時現症:聴診にて,左下肺野の呼吸音の減弱を 認めた.

入院時検査所見(表):腫瘍マーカーでHCG369.8 mlU/m/,P‑HCG19.2ng/m/と異常高値を認めた.

その他の血液生化学検査には異常を認めなかった.

胸部X線所見(図1):左側に胸水と心陰影に重な る径約5cmの腫瘤陰影を認めた.

胸部CTスキャン(図2):左S9を中心とした内部 不均一で,周囲の血管の巻き込みと胸膜嵌入像を伴う 腫瘤が認められた.また,少量の胸水貯留も認めた.

キーワード:ヒト絨毛性ゴナドトロピン,腺癌,肺癌

*Y.Arano,J.Shimizu(講師),S.Murakami,Y.Haya‑

shi,K.Kobayashi,N.Sekido,K・Morita,Y.Mochiki, S.Tomita,Y.Watanabe(教授):金沢大学第一外科.

W B C RBC H b Ht Plt

CRP T P Alb B U N Cr TBil

表.入院時検査所見

5,300/mm3 392×104/mm3 12.4g/d/

38.4%

23.5×104/mm3

0.8mg/dノ 6.7g/d 33g/d 13mg/d 0.6mg/dノ 0.7mg/d/

G O T G P T L D H A L P FBS A F P CEA H C G

"‑HCG SCC CAl9‑9 NSE

141U/ノ 51U/J 2551U//

2011U/ノ 79mg/dノ 10>ng/m/

2.0>ng/mノ 369.8mlU/mノ 19.2"g/"@

1.4ng/m/

24U/m/

2.7ng/m/

HCG値が高値であることから悪性胚細胞腫の肺転 移の可能性も考え,当院婦人科にて検索したが異常は 認められなかった.また,胸水細胞診はclasslで あった.

以上の検査結果から,原発性肺癌と診断し5月15 日手術を施行した.

手術所見:左後側方切開にて開胸した.約300m/

の血性胸水と下葉を中心とした臓側・壁側胸膜の播種 病巣,および肺門リンパ節の腫脹を認めた.左下葉切 除,肺門・縦隔リンパ節郭清,および壁側胸膜の全切 除術を施行した.

切除標本所見:腫瘍は5.5×4.0×3.7cmで'S9を 中心にS8,S'0にまで進展していた.

標本の肉眼所見:割面では,境界明瞭で内部に空洞 形成を伴い,灰白色を呈していた.

病理組織所見:円柱状の腫瘍細胞が乳頭状管状の胞 巣を形成して増生しており,中分化腺癌と診断された (図3‑a).また,胸膜への播種も認められた.抗 HCG抗体を用いた酵素抗体法による染色では,腫瘍

胸部外科Vol.47No.6(1994年6月) 485

(3)

尋 =

奎濁

図 1 . 胸 部 単 純 X 線 所 見

a.H‑E染色,×100 図 3

L

■ 一 一

図2.胸部CTスキャン

b.HCG染色,×100 病理組織標本

細胞の原形質内が褐色に染色され,HCGの局在が示が報告1−11)されている.男女比は男性33例に対し女 された(図3‑b).組織所見から,HCG産生肺腺癌と性6例と男性例が多くを占めているが,これは,男性 の 確 定 診 断 を 得 た . 例 の ほ と ん ど が 併 発 す る 女 性 化 乳 房 の 原 因 検 索 の た め 術後経過:血清HCG値は,術後第3病日の採血でに,血清HCG値が測定され,その結果HCG高値を 38.6mlU/m/と大幅な低下が認められた.術後経過指摘される場合が多いためと考えられる.

は良好で,患者は第31病日目に退院した.外来にて|臨床病期では,大半の約30例が1I1期,1V期の進行 間歌的に術後の化学療法を行いながら,血清HCG値例であり,したがって予後不良のものが多い.本症例 の変動を追跡しているが,術後10ヵ月を経過した現も悪性胸水,胸膜播種を認めるmB期の進行症例で 在,血清HCG値の再上昇はなく元気に通院していあった.

る . 組 織 型 で は , 大 細 胞 癌 2 3 例 , 腺 癌 5 例 , 扁 平 上 皮 癌5例,小細胞癌3例,燕麦細胞癌2例,腺扁平̲'二皮

考 察

癌1例であり,約60%が大細胞癌であった.女性で

HCG産生肺癌は現在までに自験例を含めて39例腺癌の報告は本症例のみであり,きわめてまれな症例

4 8 6 胸 部 外 科 V o I 、 4 7 N o . 6 ( 1 9 9 4 年 6 月 )

(4)

と思われる.

免疫酵素抗体法によるHCG産生細胞の検討では,

1)syncytialtrophoblast類似の多核巨細胞が産生す る' 4),2)紡錘形の腫瘍細胞が産生する5 8)との2説 があるが,本症例では多核巨細胞は認められずウま た,HCG染色で染められたのは紡錘形細胞ではなく 通常の腺癌細胞であった.過去の報告では,巨細胞は 認められず腫瘍細胞のみが染色されたとの報告はある が,腫瘍細胞は染まらず巨細胞のみが染色されたとの 報告はない.これらのことから,われわれはHCGは 腫瘍細胞により産生されており,その細胞変性の過程 で巨細胞が出現するのではないかと考えている.

HCGおよびそのサブユニットであるα‑HCG,"‑

HCGはその半減期が,それぞれ24時間,20分,45 分といずれも短いため,その変動は腫瘍の増減を鋭敏 に反映する.本症例でも,術後のHCG値が急激に低 下したことからも明らかであり,治療経過中の腫瘍の 増減の指標として有用であると思われる.

お わ り に H C G 産 生 肺 腺 癌 の 1 女 性 例 を 経 験 し たので,若干の文献的考察を加えて報告した.

文 献

1)伊藤洋至,森山重治,三宅敬二郎ほか:HCG産生肺

大細胞癌の1女性例.日胸46:333,1987

2)MiyakeM,ItoM,MituokaAetal:Alpha‑

fetoproteinandhumanchoronicgonadotropin‑

prodUcinglungcancer・Cancer60:2744,1987 3)亀井克彦,楠本一生,鈴木俊光:AFP及びhCGの産

生能を有し多彩な組織像を呈した肺癌の1例.肺癌 28:367,1988

4)増本英男,賀来満夫,荒木潤ほか:HCG産生肺癌 の1剖検例日胸48,470,1989

5)三宅正幸,伊藤元彦,和田洋己ほか:HCG産生原発 性肺癌の2例.日胸外会誌拠:519,1986

6)野田康信,下平雅哉,伊藤久芳ほか:女性化乳房を伴 うHumanChorionicGonadotropin産生大細胞癌の 2例.日胸外会誌28:781,1990

7)斉藤拓朗,大石明雄,菅野隆三ほか:HCG産生肺扁 平上皮癌の一例.肺癌34:573,1991

8)新美隆男,梶田正文,山内雅子:血清hCG値が治療 のモニターとして有用であったhCG産生肺大細胞癌 の1例日胸外会誌30:964,1992

9)比留川勝,青木繁,鈴木勝ほか:女性化乳房,血 中高HCG値が化療により軽快した肺癌の1例.日胸 45:1041,1986

10)YoshimotoT,HigashinoK,HadaTetal:Apri.

marylUngcarcinomaproducingalphafetoprotein, carcinoembryonicantigen,andhumanchorionic gonadotropin;immunohistochemicalandbiochem‑

icalstudies.Cancer60:2744,1987

11)小川伸郎,荒井他喜司,稲垣敬三ほか:AFP,CEA, HCC産生肺癌の1手術例日胸49:658,1990

應画雨而頁百羽

SUMMARY AFemaleCaseofAdenocarcinomaoftheLungProducingHCG(HumanChorionic Gonadotropin)

Ybs〃娩娩oA71""ogオα/.,"2脚蹴り"gγ伽g"#"卵7宮膠泓K""az""QU""gぶな動"00ノqf j〃〃c"e,K""αzaz《ノα,ノ α〃

A72‑year‑oldfemalewasadmittedwithcomplaintsofcoughandsputum・ThechestX‑ray filmrevealedasolitaryroundmassandpleuraleffusionintheleftlowerlungfield.

LaboratorytestsdemonstratedelevatedlevelsofserumHCGandB‑HCG.Leftlower lobectomywithpalietalpleurectomywaspe㎡ormedunderthediagnosisofprimarylungcancer withmalignanteffusion.

TheserumHCGleveldecreasedaftertheoperation.Histologically,thetumorwasdiagnosed asmoderatelydifferentiatedpapillo‑tubularadenocarcinomaofthelung.IntheHCGstaining usinganimmunohistochemicalmethod,thetumorcellsshowedapositivereaction・Thus,this tumorwasdefinitivelydiagnosedtobeHCG‑producingadenocarcinomaofthelung.

KEYWORDS:humanchorionicgonadotropin/adenocarcinoma/lungcancer

胸部外科Vol.47No.6(1994年6月) 487

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