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鉄道開削トンネルの性能照査型設計法による試設計と一考察

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Academic year: 2022

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(1)

鉄道開削トンネルの性能照査型設計法による試設計と一考察

中央復建コンサルタンツ(株) 正会員 ○坂田智基 室谷耕輔

(公財)鉄道総合技術研究所 正会員 仲山貴司 柳川一心 焼田真司

1.はじめに

限界状態設計法による「鉄道構造物等設計標準・同解説 開 削トンネル」1)(以後、現行開削標準と呼ぶ)は,平成

13

年に 発刊されてから

10

年以上が経過しており,この間に「鉄道に 関する技術上の基準を定める省令」(国土交通省令

151

号)の 発令にともない,トンネル以外の設計標準は性能照査型設計体 系に改訂している.したがって,開削トンネルについても,地 下環境の特徴や維持管理の実情を踏まえたうえで,性能照査型 設計体系へ移行することが望ましいと考えられている.

そこで,本研究では,他の技術基準や維持管理における調査 事例などを参考に,開削トンネルに対して常時の性能照査型 設計法を試行した.本稿では,床版および側壁の部材スペック

の決定ケースとなる照査の前提(応力度の制限)と耐久性の検討(鋼材の腐食)について,限界状態設計法と性能照 査型設計法の設計計算を比較した結果を報告する.

2.性能照査型設計体系における設計条件の変更点

(1)一般条件:対象躯体は図-1の

1

2

径間の鉄道開削トンネル(幅

9.5m×高さ 5.62m、土被り 6.0m)

2)とし,設計耐 用期間は

100

年,環境条件は現行開削標準における「一般の環境」を想定した.

(2)性能照査:照査の前提(応力度の制限)と耐久性の検討(鋼材の腐食)の照査方法を表-1 に示す.なお,これらは 限界状態設計法の使用限界状態に該当する.曲げひび割れ幅の照査の省略条件である鉄筋の引張応力度の制限 値は,コンクリート標準示方書 3)が改訂された際に変更されているため,これに合わせて乾湿繰返し環境に相当する

120N/mm

2に変更した.一方,コンクリートの圧縮応力度とひび割れ幅の制限値は,コンクリート標準示方書3),RC

標準4)が改定された際に変更されていないため,現行開削標準と同値とする.

(3)構造解析および限界値の計算条件:構造解析および限界値の設定条件を表-2 に示す.土の単位体積重量と地 盤反力係数は基礎標準 5)で改訂されているため,これに準拠して変更した.また,曲げひび割れ幅照査時の

ε’

csd,中 性化に基づく設計かぶりは,地下環境を考慮した値が他の技術基準で明示されていないため,鉄道の維持管理で蓄 積されたデータの分析6),7)に基づき変更した.なお,作用の組合せと係数は現行開削標準と同様とした(表-3)。

キーワード:鉄道、開削トンネル、性能照査型設計、耐久性、曲げひび割れ幅

連絡先:〒102-0083 東京都千代田区麹町

2-10-13

中央復建コンサルタンツ(株)

TEL:03-3511-2006 G.L

500×600 c.t.c4000 300

×300 300

×300 200

×600 200

×600

単位:mm 砂質土 N=3、γ=17kN/m3 砂質土 N=15、γ=17kN/m3 粘性土 N=3、γ=16kN/m3

粘性土 N=3、γ=16kN/m3

粘性土 N=10、γ=17kN/m3

6000 5620 4620 500 500

9500

500 3950 600 3950 500

1500

図-1 対象構造物(1層

2

径間 開削トンネル)2)

表-1 照査方法 表-2 構造解析および限界値の設定条件

現行標準 今回検討 限界状態設計 性能照査型設計

16kN/m

3

18kN/m

3

kv=2360kN/m

3

ks= 787kN/m

3

kv=3330kN/m

3

ks=1110kN/m

3

150×10

-6

300×10

-6

上下床版、側壁

50mm 50mm

中床版、柱

40mm 45mm

項目

設計 かぶり

曲げひび割れ幅 照査時のε'csd 地盤反力係数

(長期)

土の単位体積重量γt

(地下水位以浅)

現行標準 今回検討 限界状態設計 性能照査型設計 コンクリートの

圧縮応力度

σc/0.4f'cd

使用限界状態の検討 σc/0.4f'cd コンクリートの

縁引張応力度 σct<fbd

σct<fbd

鉄筋の

引張応力度 σst<140N/mm2 σst<120N/mm2 曲げ

ひび割れ幅

w/0.005c w /0.005c

※σc:コンクリートの圧縮応力度、f'cd:コンクリート設計圧縮強度

 σct:コンクリートの縁引張応力度、fbd:部材寸法の影響を考慮した設計曲げ強度  σst:鉄筋の引張応力度、w:曲げひび割れ幅、c:かぶり

鋼材の 耐久性 腐食

要求性能と

性能項目 照査指標

(照査の前提)

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

‑423‑

Ⅲ‑212

(2)

3.性能照査型設計法と限界状態設計法による設計結果の比較

(1)断面力: Case1-3と

Case2-3

について,限界状態設計法と性能照査型設計法による曲げモーメントを比較した(図

-2).側壁端部(③)では,2

つの設計法の曲げモーメントは同程度となるが,土の単位体積重量の変更に伴い,上下

床版(①・④,②・⑤)では,性能照査型設計の曲げモーメントのほうが

1~4

割程度大きくなる傾向となった.

(2)照査結果(部材安全率):各部材の着目点は,曲げモーメントが大きくなる端部と径間中央(図-2 の①~⑤)とした.

図-3に照査結果(部材安全率)を示す.曲げひび割れについて,限界状態設計法ではコンクリート設計曲げ強度や鉄 筋応力度の制限値を超過しないためひび割れ幅の検討は省略となるが,性能照査型設計では,すべての部材におい て,コンクリート設計曲げ強度もしくは鉄筋応力度が制限値を超過するが,発生曲げひび割れ幅は許容値以下となっ た.また,コンクリート圧縮応力度について,上下床版と中柱で部材安全率が約

1~2

割増加した.

性能照査型設計では,発生曲げモーメントが大きくなるほか,

ε’

csdと設計かぶりを大きく(有効高さを小さく)設定した ため,限界状態設計法に比べて部材安全率は大きくなる傾向にあるものの,1~2 割程度の増加であり,今回対象とし た開削トンネルでは,全ての位置で照査を満足する結果となった.

4.まとめ

今回対象とした鉄道開削トンネルで は,性能照査型設計法でも全ての位 置で照査を満足し,限界状態設計法と 同等の構造スペックとすることができた.

ただし,開削トンネルには様々な状態 や部材寸法のものがあるため,引続き 妥当性を検証していく計画である.

参考文献

1)

鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設 計標準・同解説 開削トンネル,

2001.

2)

鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設計 標準・ 同解説 開削トンネル 設計計算例 開削トンネル(

1

2

径間),

2003.

3)

土木学会:コンクリート標準示方書 設計編,

2012.

4)

鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設 計標準・同解説 コンクリート構造物,

2012.

5)

鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設 計標準・同解説 基礎構造物,

2012.

6)

柳川一心,牛田貴士,仲山貴司,焼田真 司:開削トンネルの曲げひび割れの検討に おける一考察,土木学会年次学術講演会概 要集,

Vol.69

2014.

7)

牛田貴士,柳川一心,仲山貴司,津野究,

焼田真司:維持管理データを反映した鉄道 開削トンネルの性能設計に関する一考察,

土木学会年次学術講演会概要集,

Vol.69

2014.

表-3 作用の組合せと作用係数

1-1 1-2 1-3 1-4 1-5 2-1 2-2 2-3 2-4 2-5 固定死荷重 D1 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 付加死荷重 D2 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 永久作用としての

鉛直土圧 EDV 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 永久作用としての

側圧 EDH 1.0 1.0 1.0 0.7 0.7 0.7

地表面上の変動

荷重による土圧 GL 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 トンネル内部の

列車荷重 L 1.0 1.0 1.0 1.0 衝撃の影響 I 1.0 1.0 1.0 1.0

全部材の検討

(水平土圧100%) 上下床版の検討

(水平土圧70%)

耐久性 性能

検討の目的 ケース

図-2 曲げモーメントの比較結果の一例

図-3 試計算の照査結果(部材安全率の比較)

圧縮応力度 縁引張応力度コンクリート 鉄筋 応力度

曲げ

ひび割れ幅 圧縮応力度 縁引張応力度コンクリート 鉄筋 応力度

曲げ ひび割れ幅

性能照査 照査の前提 性能照査 照査の前提

限界状態 限界状態

圧縮応力度 コンクリート 縁引張応力度

鉄筋 応力度

曲げ

ひび割れ幅 圧縮応力度 コンクリート 縁引張応力度

鉄筋 応力度

曲げ ひび割れ幅

性能照査 照査の前提 性能照査 照査の前提

限界状態 限界状態

耐久性(鋼材の腐食)

照査指標

部位 下床版

照査指標 上床版

耐久性(鋼材の腐食) 耐久性(鋼材の腐食)

照査指標

部位

中柱

部位 側壁

使用限界 使用限界

部位 照査指標 使用限界

耐久性(鋼材の腐食)

使用限界

0.62 0.65 0.87 0.89 0.97 1.07 0.93 0.0

0.5 1.0 1.5 2.0

σc/0.4f'cd σct/fbd σst/σsl1 w/wa

応答値/限界値

限界状態設計法 性能照査型設計法 上床版(端部)

0.41

0.74 0.71

0.60 0.87 1.04 0.91

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

σc/0.4f'cd σct/fbd σst/σsl1 w/wa

応答値/限界値

限界状態設計法 性能照査型設計法 上床版(径間中央)

0.82 1.32

0.97 0.88 0.85

1.28 1.14 0.97

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

σc/0.4f'cd σct/fbd σst/σsl1 w/wa

応答値/限界値

限界状態設計法 性能照査型設計法 側壁(端部)

0.80

1.29 0.95 0.86

0.79 1.20

0.94 0.94

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

σc/0.4f'cd σct/fbd σst/σsl1 w/wa

応答値/限界値

限界状態設計法 性能照査型設計法

0.52

0.83 0.76

0.69 0.96 1.10 0.95

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

σc/0.4f'cd σct/fbd σst/σsl1 w/wa

応答値/限界値

限界状態設計法 性能照査型設計法 下床版(端部)

下床版(径間中央)

ひび割れ幅 の照査に 至らない。

0.68 0.80 0.0

0.5 1.0 1.5 2.0

σc/0.4f'cd σct/fbd σst/σsl1 w/wa

応答値/限界値

限界状態設計法 性能照査型設計法 中柱(下端)

曲げモーメントが発生しないため、

曲げひび割れに関する照査は省略 ひび割れ幅

の照査に 至らない。

ひび割れ幅 の照査に 至らない。

0 50 100 150 200 250 300 350 400

0 50 100 150 200 250 300 350 400

曲げモーメント(限界状態)

曲げ(性能照査型)

Case1-3 Case2-3

①、④

②、⑤

②上床版  (端部) ①上床版

(径間中央)

③側壁

 (端部) ⑤下床版

 (端部)

④下床版

(径間中央)

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

‑424‑

Ⅲ‑212

参照

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