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L 形構造物による既設矢板岸壁の補強工法について

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Academic year: 2022

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全文

(1)

タイ材(既設)

鋼管矢板(既設)

海底面 海底面

岸壁法線

底版桁

陸側杭 海側杭

床掘り 海面

補強壁

図 1 本工法のイメージ

L 形構造物による既設矢板岸壁の補強工法について

JFEエンジニアリング(株) 正会員 ○田中祐人,若菜弘之,由井陸粋

1.はじめに

既設矢板岸壁の耐震強化あるいは老朽化の対策として,従来から「前面および背面の地盤改良」または「新設 構造物による前出し」が行われている.「地盤改良」は現地工期が長く,岸壁の利用も大きく制限される.また,

「新設構造物による前出し」は岸壁法線(港湾計画)の変更が必要となる.

著者らは,岸壁法線を変更せずに,現地工期の短縮が可能なL形構造物による補強工法(図1参照)を考案し,

その設計手法および耐震性能について検討を行った.

なお,本工法は地盤改良を伴う大規模な補強ではなく,

設計震度が概ね0.1程度の向上に相当する中規模の補強 を目指す.

2.本工法の概要

本工法のイメージを図1に示す.本工法は鋼管矢板と 合成される「補強(鉛直合成)壁」,この補強壁に剛結さ れる「底版(SRC)桁」,この底版桁に剛結される「支 持杭」で構成される.補強壁と底版桁の側面がL形にな ることから,L形構造物(L形ジャケット)と呼ぶ.

本工法のコンセプトは,岸壁法線を変更せずに矢板岸 壁を補強することなので,防舷材の圧縮時高さ以内(圧 縮時の防舷材~岸壁間の隙間)1)に収まるように補強壁 の構造設計を行う.

3.試設計

港湾構造物設計事例集 2)の中から矢板式係船岸を例題と して,図2 に示す水深 12mの岸壁で試設計を行った.こ の岸壁は設計震度kh=0.14にて試設計されたものである.

今回,設計震度をkh=0.14から0.25に引上げ,本工法の 効果を検討した.既設構造物のみでは,タイ材および矢板 が許容応力度比で1.18,1.13となり許容応力度を超過した.

4.設計手法

供用中の既設構造物の各部材には,常時荷重により初期 応力が生じている.この状態で補強構造物を設置するため,

表1のように永続状態では既設構造物のみ,変動状態では 既設と補強構造物が抵抗することになる.すなわち補強の

前後で抵抗構造が異なるので,許容応力度法により各状態での作用応力を重ね合わせることとした.

キーワード 岸壁,護岸,法線,補強,耐震性向上,老朽化 連絡先 JFEエンジニアリング(株) 沿岸鉄構事業部

〒230-8611神奈川県横浜市鶴見区末広町2-1,TEL:045-505-7559

///////////////

- 12.00

←鋼管矢板φ900x14(SKY490)

←岸壁法線

許容応力度比(無補強,変動状態 設計震度 kh=0.14 kh=0.25

タイ材 0.85 1.18 矢板 0.78 1.13 備考 表1のσiiに相当

図 2 試設計の一般図(補強前)

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

‑187‑

Ⅵ‑094

(2)

表 1 本工法の設計手法

状態

(許容値の扱い)

永続状態 (×1.00)

変動状態 (×1.50)

変動状態 (×1.50)

常時荷重 地震時荷重 地震時「増分」荷重

荷重 ③ = ②-①

備考

荷重(土圧)の作用 イメージ

事例2)の方法 ②は①を含んでいる

作用荷重=

(主働土圧)

+(水圧)

-(受働土圧)

抵抗構造 既設構造物 既設構造物 全体構造物

(既設+補強)

仮想鉸点法(σia) 仮想鉸点法(σiia) 適用外 設計法

(算出応力度)

フレームモデル(σib) フレームモデル(σiib) フレームモデル(σiii)

永続状態では σia>σib

照査する応力度 σi(=σia) σii(=σiia) σiii 照査 既設構造物:σi+σiii, 補強構造物:σiii

この重ね合わせにおいて,

補強前後を同一モデルにて解 析を行う方が設計上効率は良 いが,既設構造物をフレーム モデルで検討した場合(σib),

従来の矢板の設計法である仮 想鉸点法 2)での結果(σia) と比較すると1割程度危険側

(σia>σib)となった.

このため,補強前の既設構 造物は仮想鉸点法による従来 の設計法,補強後の一体化し た構造物はフレームモデルを 用いる設計法とした.

5.本工法による効果

設計震度をkh=0.25とした試設計の結果を図3に示す.補強構造物の設置 により,図4に示すように既設構造物のタイ材の許容応力度比は1.18→0.97

(21%減),矢板は1.13→0.96(17%減)に低減できることが分かった.

さらに底版桁のコンクリート剛性も一部考慮し,その剛性UPによる既設 構造物の応力低減効果を検討した.その結果,タイ材は更に 4%減,矢板は 7%低減できることが確認できた.

6.まとめ

L 形構造物を前面海底に設置して既設構造物を補強する本工法により,

kh=0.10程度の耐震性の向上が確認できた.

本工法は1m程度の床掘りで実用的な補強が可能であり,その中に収めら れた底版桁の設計により,既設構造物(タイ材および矢板)の応力負担を自 由に調整できることがわかった.

7.おわりに

現時点では許容応力度法で試設計を行っている.今 後は信頼性設計に向けて,設計法の構築が課題である.

なお,本論文は東亜建設工業(株),JFEスチール(株)

および弊社の三社による共同研究の一部であることを 付す.

参考文献

1)(社)日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・

同解説(下),P947,平成19年9月

2)(財)沿岸開発技術研究センター:港湾構造物設計 事例集,P4-8,平成19年3月

-36.00

~~ ~~

杭 φ 800x12

( 5mピッチ)

底 版 桁 BH800x350

壁法線

0 . 8 0 0 -12.00

図 3 試設計の一般図(補強後)

0.93 1.18

0.97

0.85 0.89

1.13

0.96 0.78

0.50 0.75 1.00 1.25 1.50

kh=0.14 補強前

kh=0.25 補強前

kh=0.25 補強後

(鋼桁のみ)

kh=0.25 補強後

(鋼桁+コン)

許容応力度比

タイ材 矢板

図 4 既設構造物の応力低減効果,変動状態

(括弧内は底版桁のコンクリート剛性を加味するか否かを示す)

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

‑188‑

Ⅵ‑094

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