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健全性診断に向けた実橋梁の損傷と動特性変化の相関把握

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Academic year: 2022

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(1)

健全性診断に向けた実橋梁の損傷と動特性変化の相関把握

舞鶴工業高等専門学校 学生会員 〇安田聖晃 同左 正会員 玉田和也 長岡技術科学大学 正会員 宮下 剛 長井正嗣

京都府中丹東土木事務所 岩崎英徳

1. はじめに

周知の通り,橋梁の老朽化が急速に進行している.

数多くの橋梁に対して効率的な維持管理を行うため には,合理的な管理手法の創出が求められている.

これに向けて,損傷による動特性変化に着目し,

振動を利用した橋梁の健全性診断に関する研究が積 極的に行われている

1)

.ここでは,実橋梁における 損傷と動特性変化の相関把握が求められるものの,

データの蓄積はこれまでほとんどなされていない.

そこで,本研究では撤去する歩道橋(2主鈑桁,ス

パン

28m)に対して,段階的に損傷を与え,その都度,

振動計測を実施し,実橋梁における損傷と動特性変 化の相関関係を把握することを目的とした.

2. 対象橋梁

計測対象とした橋梁は,舞鶴市にある大宮橋の歩道

(側道)橋である(図 1).構造形式は単純活荷重合成 2

鋼鈑桁橋である.スパンは

27.9m

,幅員は

3.3m

,竣工 年は

1985

年である.

3. 計測概要 (1) センサ配置

舗装を撤去した後,図

2

に示すように

14

台のサーボ 型加速度計を主桁直上の床板に設置して,次節で説明 する各損傷ケースに対して,常時微動と衝撃加振を計 測した.サンプリング周波数は

200Hz,

計測時間は各損 傷ケースで約

10

分,計測日時は

2010

9

8

日~

11

日である.

(2) 損傷ケース

3

にもとづいて,橋梁に与えた損傷ケースを説明 する.まず,桁端部の下フランジ自由突出板にスリッ トをガス切断で与え,そして,スリットを約

1.5m

間隔 で与える(図

4).次に,下フランジ自由突出板を切除す

るため,ウェブの溶接線に沿って既存のスリット間に 新しいスリットを与える.ただし,安全のため,自由

突出板は完全には切除しない.これは,腐食による断 面欠損を想定したものである.最後に,桁端部ウェブ に穴を空ける.与えた損傷ケースの総数は

34

である.

4. 計測結果

本研究では,各損傷ケースで計測された常時微動デ ータに着目する.動特性の同定では,NExT-ERA 法

2)

を利用した.図

5

に,損傷を与える前に得られた振動 モード形を示す.

6

に,損傷ケースに対する各振動モードの固有振 動数の変化を示す.これは,

10

分間の常時微動の測定 データを高速フーリエ変換し,求めた結果である.こ のとき,周波数分解能は

0.0017Hz

となる.ここで,

f n0

f nd

は,それぞれ損傷を与える前後での

n

次の固有振 動数であり,図の縦軸は固有振動数の相対変化を表す.

また,損傷ケース

1

は下フランジに等間隔でスリット を与えるケース,損傷ケース

2

は下フランジ自由突出 部を片側切り離すケース,ケース

3

は桁端部ウェブに 穴を開けるケースである.

6

から,以下のことが分かる.

・ 固有振動数の相対変化には,ばらつきが見られるも のの,損傷が進行するにつれて減少する傾向がある.

・ 相対変化の減少量は,ねじれを伴わないモードの方 が大きい.これは,床板,下横構を含む疑似箱断面

図1 対象橋梁

キーワード 健全性,長寿命化,振動,動特性,固有振動数,常時微動

連絡先 〒625-8511 京都府舞鶴市字白屋

234

番地 舞鶴工業高等専門学校 玉田和也 e-mail:tamada@maizuru-ct.ac.jp 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑641‑

Ⅰ‑321

(2)

のねじり剛性に対して,下フランジを傷つけること がねじり剛性に大きな影響を与えないためである ことに起因する.

・ 損傷と固有振動数の変化の相関は,3 次(反対称 1 次)モードが高い.これは,この橋梁のスパンや剛 性から,このモードが励起されやすいことに起因す るものと考えられる.

次に,

3

次モードに着目し,各ケースでの固有振動数 を縦軸にプロットした結果を図

7

に示す.図

7

から,

以下のことが分かる.

・ 下フランジの自由突出板を完全に除去した後,固有 振動数は,損傷を与える前と比較して約

8.4%

低下 した.これは,断面諸元から想定される固有振動数 の低下率と比較して妥当なものである.

・ 図

7

には,損傷を与えているにも関わらず,固有振

動数が約

0.03Hz

と僅かに増加する部分がある.こ

れは計測日時の変化,つまり気温による影響

3)

と考 える.損傷に起因する固有振動数の微小な変化を検 出するためには,温度影響を配慮する必要がある.

5. まとめ

本研究では,橋梁の合理的な健全性診断手法の確立 に向けて,実橋梁における損傷と動特性変化の相関 把握を目的とした.具体的には,撤去する歩道橋に 対して,段階的に損傷を与え,その都度,振動計測 を実施した.その結果,損傷に応じた段階的な固有 振動数の有意な低下を確認することができた.今後 は,計測点数の低減が課題である.

[謝辞]

本研究は,平成

22

年度「高専-長岡技科大連携教育 研究の推進」による研究助成により実施しました.関 係各位に感謝の意を表します.

参考文献

1) Christian Boller, Fou-Kuo Chang and Yozo Fujino (Editors):

Encyclopedia of Structural Health Monitoring, Wiley, 2009.

2)

長山智則,阿部雅人,藤野陽三, 池田憲二: 常時微動計測に基 づく非比例減衰系の非反復構造逆解析と長大吊橋の動特性の理 解,土木学会論文集,

No.745, pp.155-169, 2003.

3)

奥松ら:移動体通信による樺島大橋の振動特性遠隔モニタリン グ,長崎大学工学部研究報告,2006.

下フランジ ウェブ 添接板

図2 センサ配置 図3 下流側主桁損傷ケース

0 5 10 15 20 -1.5 25

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5

x (m) 3.5626 Hz, ξ 3.2015 %, MAC 99.8118

Down Up

0 5 10 15 20 -1.5 25

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5

x (m) 6.0926 Hz, ξ 0.87841 %, MAC 99.9027

Down Up

0 5 10 15 20 -1.5 25

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5

x (m) 9.1772 Hz, ξ 0.66654 %, MAC 99.9767

Down Up

0 5 10 15 20 -1.5 25

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5

x (m) 13.7316 Hz, ξ 0.69505 %, MAC 99.5397

Down Up

0 5 10 15 20 -1.5 25

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5

x (m) 19.9909 Hz, ξ 0.68224 %, MAC 95.7441

Down Up

0 5 10 15 20 -1.5 25

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5

x (m) 22.6315 Hz, ξ 0.47431 %, MAC 95.8601

Down Up

1st (around 3.5Hz) 2nd (around 6.0Hz) 3rd (around 9.0Hz)

4th (around 13.5Hz) 5th (around 20.0Hz) 6th (around 22.5Hz)

図4 ガス切断の様子 図5 同定された振動モード形

0.90  0.92  0.94  0.96  0.98  1.00  1.02 

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36

f

no

/f

nd

Damage Case

1st 2nd

3rd 4th

5th No damage Damage series 1:

Cutting lower flange

Damage series2:

Removing lower flange

Damage series3:

Holling web

y = ‐0.0228x + 9.1872

8.30  8.40  8.50  8.60  8.70  8.80  8.90  9.00  9.10  9.20 

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36

Fr e q ue nc y( H z)

Damage Case No damage Damage series 1:

Cutting lower flange

Damage series2:

Removing lower flange

Damage series3:

Holling web

図6 損傷ケースと固有振動数の相対変化

図7 損傷ケースと3次モードの固有振動数 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑642‑

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参照

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