派生名詞と前置詞に関する試論
著者 小川 明
雑誌名 東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学
巻 36
ページ 143‑149
発行年 1996
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00008948/
派生名詞と前置詞に関する試論
小 川 明
(平成7年9月30日受理)
Derived Nominals and Prepositions
Akira OGAWA
(Received September 30,1995)
0.この小論では,派生名詞と前置詞に関して疑問に思っ
ていることを考察してみたい.Chomsky(1970)によると,the indication of disapprovalのof disap−
provalはD構造ではNPであって後の段階でofが挿 入されると考えられている.たしかに多くの場合,派生
名詞では,機械的にofが挿入されるわけであるが,必ずしもofに限られるわけではない. Ito(1991)は,さ
まざまな前置詞が生じることを指摘している.
(1)forが生じるもの:admiration, desire, respect on:assault, attack
at:attempt, regret, resentment lntO:entranCe,豆nVeStlgat10n
between:comparison, connection, contrast
about:discussionここで疑問が生じる.なぜ多くの場合ofが出現するの
瓶 さらに文の主語(例えばthe arrival of the train)
にあたる時でも,目的語(the discovery of America)
にあたる時でも共通にofであるのはなぜなのか.一方,
(1)が示すように,どうしてof以外の前置詞でなくて はいけない場合があるのか.この疑問を解くためには,
派生名詞に出現するofだけではなく, of全般にっいて,
根本的に検討する必要があるように思われる.
1.すぐ頭に浮かぶのは日本語の「の」はofに似てい
るとよく言われることである.このことは重要な指摘で あると思われるが,どうしてなのか.まずofと「の」
の用法にっいて調べてみよう.「の」がいかに多様な意 味を持っことができるかを見るためには,森(1993)が 参考になる.たくさんあげてある例のうち,その一部を
機械的に羅列してみよう.所有(母の株券)・所属機関
(クラブの会員)。作者(NHKの番組)・主催者(P TAのバザー)・起因(風邪の熱)・時(朝の番組)・
主格(春の到来)・付帯物(サングラスの男)・内容物
(お茶の缶)・情報内容(家族の写真)・用途(風邪の 薬)・数量(二匹のこぶた)・所在場所(額の汗)・行 動場所(海外の生活)・目的格(会期の延長)など.い かにさまざまな意味を持っているかが実感できる.別の 助詞「へ」とか「から」と比較してみれば,「の」がさ まざまな種類の意味を持っているかは,一目瞭然である.
このことは逆に見れば,「の」を含む表現にっいてど う解釈するかは,その表現に含まれる語彙や文脈に頼る ことになる.例えば,「田中さんの手紙」は,「田中さん の書いた手紙」,「田中さん宛の手紙」,「田中さんがよこ
した手紙」などの意味を持っことができる.
このことと連関していると思われるが,「の」はほか の格助詞とは違っていると言う指摘がされている.
連体助詞の「の」は学校文法では格助詞の一っとさ れるが,先にも述べたように,「の」はガ・ヲ・二 などの連用格助詞と異なり,体言と用言の関係を規 定するものではない.また格的意味関係においても,
主格的用法,対格的用法,与格的用法などがあり,
格関係を規定する働きを持たない.「の」は体言と 体言を結びっけ,「より大きな語」(体言)をっくる 働きをするだけである. 小池(1994:139)
英語英文学科 第一英語学研究室
「の」は二っの名詞がなんらかの関係があることを
示すだけで,二っの名詞の関係がどのようなもので
あるかは,名詞相互の意味や文脈に委ねられている
のである. 小池(1994:140)
小川 明
「ノ」を後回しにしたのは,それがこれまで見てき た助詞とはかなり違った性質のものだからである.
国文法で「格助詞」というとき,「ノ」を含めるの が通例になっていて,主格の「ガ」,対格の「ヲ」,
与格の「二」などと並んで,「ノ」は「属格」(また は「所有格」)を表わす格助詞とされる. genitive とか possessive を case として立てるヨーロッパ 文法をひきうっした形跡が明白だ.
寺村(1992:236)
2.一方ofがいかにたくさんのあまり相互に関係のな
い意味を持っているかにっいては,英和辞書を参考にし
てみれば明らかである.新選英和辞典(小学館)のofの項を眺めてみよう.
1.所有・所属
2.材料・要素3.部分
the queen of England a box of wood;afamily of
seventhree of them
4.数量・単位・種類を表わす名詞に付いて acup of tea;three years of
teaching5.原因・動機 6.主格関係 7.目的関係 8.同格関係 9.関係・関連
die of cancer
the coming of the night the love of adventure the crime of murder the story of adventure 10.抽象名詞などと共に
aman of courage
11.It is+形容詞+of名詞+to do
It is kind of you to say so.
12.分離
13.起源・出所
My house is within a mile of the city.
They were both born of noble parents.
14.名詞+of+a(an)+名詞
an angel of a girl 15.名詞+of+mine(yours, hisなど)
afriend of Tom s
16.時 the England of today17.時刻 aquarter 6f twelve
ofがいかにたくさんの,相互に関係のない,ばらば らの意味を持っかは,ofをfromやatと比較してみれ
ば一層明白である.例えばfromを同じように新選英和
辞典で調べてみよう.
1.場所 from a hilltop
2.時 from morning
3.数量・価格 from ten to fifty dollars
4.分離・隔たりbe away from home5.状態の変化 go from bad to worse
6.起源・出典・由来・出身aletter from her
7.原因・理由・根拠cry from pain;judge from the look of the sky 8.原料 Beer is made from barley.
9.相違・区別 He can tell good from evil.
10.除去・選択・解放・奪取
take one from five;rescue the baby from the fire
11.抑制・妨害 prevent us from going out 12.方向 from behind the curtain
たしかに用法の数は多いのであるが,すべての用法は「から」という意味に収敷されていく.ofのようにばら ばらの意味を持っているのではないことに注意すべきで
ある.ω3.さて英語においては,このような曖昧さを持っ表現
がさらに存在する.所有格である.次は安井(1960:164−5)からの引用である.たくさんの意味を持っこ とが可能である点で,ofと似ていることが分かるであ
ろう.
名詞,代名詞の属格にさまざまな用法があること は事実である.通例,文法書は属格の用法を意味に よって分類する. たとえばthe doctor s house/my bookなどは所有属格(Possesive
genitive), the king s death/to mン surpriseな
どは主語属格(Subjective genitive), Caesαr s
murderers/his admirersなどは目的語属格 (Objective genitive)と呼ばれ, her mo腕e〆s love/a womαn s college/herαπ8eZ s face な どは記述属格(Descriptive genitive)と呼ばれる.
また以上のほか,関係・関与の属格…特質の属格…
素材の属格…度量の属格…起源の属格…などの名前
も用いられる.
これらの名称は学者によって異なるし,またその 分類も画然としたものではない.もちろん,このよ
うな分類が全く無意味であるということはない.…
しかしながら,理論的に可能な属格の用法あるいは 実際に用いられている属格の意味の側から分類し記 述することは不可能であり,またその必要もない.
このことは,たとえばmy father s bookとい
う表現が,前後関係や場面によって,私の父が持っ ている本,書いた本という意味だけではなく,収集
した本,製本した本,出版した本…等々の意味にも じゅうぶん用いられうることを考えるだけでもただ ちに了解されるであろう.…
…英語の属格表現を意味の側からいくら細かに分 類してみても,それは要するに果てしない文脈や場 面の分析という結果に終る危険のあることは明らか であろう.…
4.なぜ日本語でも英語でも,このようにたくさんの意 味を持っことができる表現が存在するのであろうか.現 実世界は,とてっもなくたくさんのさまざまな関係を含 んでいる.それらすべてを言語では区別して表現してい るわけではない.なぜなら言語表現には限りがあるから
である.格の内容(すなわち意味)を論理的に体系立てて,
一般言語学的にそのありうべき数を算定しようとの 試みもいろいろ行われている.…名詞とそれが関係 する相手の語(他の名詞・動詞など)は無数といっ てよく,それぞれが固有の意味を持っているから,
その間にありうべき,すべての関係を算定すること はできない.いかなる数を出しても,それは結局,
ある種のわくの数であって,起こりうべき関係の数 は無限である.しかし,無限の格関係の一々に応ず る形態は必要でない.一応の方向づけによって必要 な機能を果たすゆとりが言語にはあるのである.
(国語学辞典 p.144)
なにからなにまですべて表現できるわけではない.と は云っても,表現したい場合にはなんらかの表現方法を 持つであろう.
言語は必要とあれば,その表現の手段を動員して,
種々さまざまな格関係を表示することができる.
(国語学辞典 p.144)
しかし表現しないで済ます場合も多いと思われる.表
現しないで済ますことは,決して言語使用者から考えて マイナスのことではない.相手に表現しなくても理解し てもらうことができれば,話手はいちいち表現する労力 を取らないだろう.かえってわずらわしいであろう.そ れでは表現されていなくても私達が理解できるのは,ど うしてか.それは語彙の持っ意味だけではなく,表現以
外の要素,っまり文脈,現実に関する知識常識などが総動員されて支障がないからである.
言語は,このように表現しないですます装置を内蔵し ているにちがいない.そういう装置は言語全般に均等に 分布しているのではないだろう.ある部分が他の部分よ りたくさん引き受けているだろう.っまり言語表現のす べての部分が均等にその雛寄せを引き受けるのではない だろう.それを引き受けている部分の代表的なものが,
英語におけるofと日本語における「の」ではないか.
さらに英語における所有格ではないだろうか.違う言い 方をすれば,言語で表現しなくても文脈や知識で解決が っく場合,これらのいわば無色透明な装置を使うという
ことになる.
コンテクスト次第で実に多様な解釈が可能であるが,
これは,西山(1991:62)が指摘するように,いわゆる
「言語学的な曖昧さ」とは異なるであろう.コンテクス トが与えられないと解釈ができないのである.
無色透明な装置であれば,ofはなくても意味上はす
むことになるだろうが,英語という言語においては形式 上必要である.例えば,英語では,同格を表わす以外は
NPNPという連鎖は一般に許されない.必ず前置詞を NPとNPの間に挿入しなければならない.このことがChomsky(1970)のof挿入規則の根底にあると思わ
れる.GB理論でいえば,「音形を持っNPは,格を持たなければならない」という格フィルター(Case filter)に違反しないように,前置詞が挿入されなけれ ばならないことになる.
しかし語のレベルではNNという連鎖は許される. N とNの間に前置詞は一般に出現しない.これは複合語を 考えてみればよい.以下はLees(1966:118)の例であ
る.
(2)a.puppydog (=dog which is a puppy)
b.bulldog (ニdog which is like a bull)
c. shepherd sdo9 (ニashepherd sdo9)
d.watch dog (=dog which wathes some
thing)
小川 明
e. police do9 (==dog used by the police)
f.sheep dog (=dog which herds sheep)
g.prairie dog (=dog wh量ch inhabi ts the prairie)
h.hangdog (=one who hangs a dog)
i. fogdo9 (= do9 seen in the fo9)
j. 1apdo9 (=dog for the lap)
k.Eskimo dog(=dog used by the Eskimo)
ここではNとNの間の関係は全く言語で表現されていな
い.しかし一定の意味関係を持っていて,いかにその関 係が多様であるかが分かる.その表現されていない部分
とNP of NPにおけるofは,ある関係を示しているという点でパラレルな働きをしている.もちろん主要語の
位置は逆である.NPofNPでは前のNPの中に主要 語は含まれ,NNでは後のNが主要語になる.片方に
はofが要求され,片方にはなにも表現されなくてよいのは,意味的な制約ではなくて,英語という言語の形式 上の決まりである.
5.さて英語のofと日本語の「の」はどのくらい一致
するのか,どこが一致しないのか.一致しない部分は英 語教育上の問題に繋がっていく.まず異なる点をみてみ よう.文における「が」「を」に対応する時,名詞にお いては「が」「を」はなくて「の」のみである.
(3)a.花子が帰宅する一花子の帰宅 b.事件を調査する一事件の調査
しかし「に」「から」「と」「へ」ではそのまま残って
「の」がその後にっつく.
(4)a.花子と結婚する一花子との結婚 b.アジアへ進出する一アジアへの進出 一方英語においては,ofと他の前置詞は同時に生じな
い.
(5)a.his marriage to(*of)Hanako
b. the advance into(*of)Asia
この事実は英語教育においては,なんらの障害も生じな いのであるが,これは前置詞は重なって用いられないと いうことが,暗黙のうちに身にっいてしまうからであろ う.しかし個々の表現にあたっていくと,さまざまな食 違いがみられ,英語教育上の問題に導かれていく.
Kleinjans(1959:222)を見てみよう.
For example, the Japanese student may identify the no of Japanese with the F
function words of Eng1ish, especially with qf・since both cover approximately the same area of meaning, and both are very frequent in OCCurrenCe.
Kleinjansによると,うまくいく場合といかない場合
がある.例えば,
(6)a.子供の母 mother of the child b.家の屋根 roof of the house では,うまくいくが,
(7)a.動物のハイエナ *hyena of anima1 (the animal, hyena)
b.アメリカの自動車 *acar of America (an American car)
では駄目である.
そしてこのように食い違う例をあげていくことは,た
やすい.(8)a.英語の授業 *the class of English (the class in English)
b.失敗の理由 *the reason of my failure (the reason for my failure)
しかし全体的にはかなりうまくいくのである.これは既 に述べた森(1993)の例を英語に直してみれば,かなり
の例がofになることから明らかである.これはofと「の」の無色透明な装置としての働きがかなり似ている
からである.6.ofは主格関係と目的格関係の両方を表わすことが
できる.次の例では主格にも目的格にもどちらにも解釈
できる.(9)a. the shooting of the rebels
b. the apProval of everyone
しかし次の例は曖昧ではない.
(10) a. the arrival of the tra三n
b.the reminiscences of the Prime Minister (10a)では主格であり,(10b)では目的格である.
なぜか.arrivalは自動詞arriveに由来し,目的語は
取らないからである.またreminiscencesは形容詞
reminiscentと関係し,この形容詞はYour way ofwalking is reminiscent of your mother.(君の歩き 方は,お母さんを思い出させる)のように用いられ,of
はいわば目的格を示すものとして働き,それが名詞
reminiscenceにおいても引継がれているからである.
このことからofはとても消極的な役割しか持っていな
いのではないかという結論がでてくる.
日本語についても,ほぼ同じことが言える.「の」も ofと同様主格と目的格の両方の関係を表わせる.(11a)
では主格にも目的格にもどちらにも取れるが,(11b)
では主格,(11c)では目的格にしか取れない.理由はほ ぼ英語と同じである.(11)の例は西山(1993:66)に
よる.
(11)a.村人の捜査,母親の教育
b.電車の到着,父の死c.定理の証明,死体の解剖
これらの事実を考慮すると,なぜこのように全く異な る主格と目的格のどちらの関係も示すことができるのか という疑問に対して,解答を与えることができる.主格 か目的格かを決定する要素が他に十分あるからというこ とになる.事実(10),(11b−c)では自動詞かどうか,
あるいは,他の品詞として用いられた場合の知識が曖昧 さを消去する.たしかに(11a)は曖昧である可能性を 持っが,「村人の捜査」は目的格と一般には判断される.
「村人の捜査」と「警察の捜査」を比べた場合,前者で は「の」が目的格を表わし後者では主格を表わすとすぐ 解釈できるであろう.なぜか.私達が持っている世界に 関する知識によって判断できるのである.
7.しかし同時に英語も日本語もこの曖昧さを防ぐ手立 てを持っている.もしその関係をもっとはっきりと示し
たいならば,違う表現が存在する.(9)はofをbyで置き換えてそれぞれthe shooting by the rebels, the approval by everyoneとすれば曖昧さはなくなる.ま た(11a)は「村人に対する捜査」とすれば曖昧さはな
くなる.このようにofには,一般にもっと明確に関係を示すための表現が併存することが多い.
(12)a.an agent{for, of}his country b。agood article {on, of}gardening c.achauffeur{to, of}arich family
d. control {over, of} oneself e. the doors {to, of}heaven and hell f, the entrance {to, of}the caveg.the father{to, of}the man h。justification{for, of}the means
i. line 10 {on, of}page 20j.my opinion{on, of}the political situa一
tion
k.passengers {on, of}the train 1. astory{about, of}ahorse m.atutor{to, of}their son
「英語語法大事典」(pp.994−5)は, Thorndike
Barnhart:Junior 1)ictionαrン(s.v. Think)に基 づいて,次のように述べている.(下線は筆者).
…think aboutもth三nk ofもともに「…について
考える」の意味でありますが,αboutのほうに一そう「…について,関して」の意味が強く出ていま す.そしてthink aboutがいろいろ思いを回らし,
心を用いる行為が積極的であるのに対し,think of のほうは「…(のこと)を思うの意味で,思いが何 かの原因でその対象に及ぶのであって行為そのもの は消極的です.
これは多分aboutがofと違って意味が鮮明であるから
だと思われる.
このような交替が見られるのは,単独では,of以外 の前置詞をとる名詞が,inで始まる熟語になるとofに
限られる例である.
(13) a. aid {for, to} in aid of b. chase {for, of} in chase of c. defense {against, for, of}in defense of d. need {for, of} in need of e. search {for, of} in search of f, supPort for in supPort of
これはinで始まる熟語においては,その理由はさだか ではないが,ofの次にくるのは目的格に限られて,曖
昧さがなくなるからであると思われる.これらの語が単 独で生じる場合,ofの後にくるのは,大抵主格になる.
(14)a. the aid of Japan
b.adesperate chase of police
c.the tacit support of the Administration
さらにこれと連関していると思われることは,theの 有る無しでofが主格を示したり,目的格を示すことがある事実である.theがない時は目的格を示す.
(15)a.she is in charge of the sales department.
b. possession of the pills.
ある時は主格を示す.
(16)a.The sales department is in the charge of her.
b.the possession of some children.
小川 明
なぜこのような差が生じるのか今のところわからない.
ただ(15)は熟語(13)とtheがない点で似ている.そ
してどちらも目的格を示す.
ofとそれ以外の前置詞の選択について,もうひとっ
の要因が指摘されている.派生名詞には「行為名詞」と
「結果名詞」の二種類あるが,「結果名詞」のほうが,of 以外の前置詞を取る可能性が高そうである.生成文法的 にいえば,行為名詞は動詞の項構造を受け継ぐが,結果 名詞は受け継ぎに関して,行為名詞ほど規則的ではない.
この差にっいては,本稿では扱わない.このことにっい
ては,島村(1990:98−104),Ito(1991:56−7)を参照.
8.ここで最初の疑問に還ることにする.なぜof以外
の前置詞を必ず使わなければならない例が存在するのか まず何によってどの前置詞を取るかが決まるのか調べて
みよう.(17)自動詞に対応する場合は,自動詞の取る前置詞。
a. adhere to
b.add to c.agree with d.coincide with
adhesion to addition to
agreement withcoincidence with
e.harmonize with harmony withf, long for longing for 9. yearn for yearning for
(18)他動詞と自動詞の両方で使われる動詞の時は自動 詞の取る前置詞.
a.answer(to)
b. attend(at)
C.enter(into)
d.escape(from)
e.flee(from)
f,wish(for)
answer to attendance at entrance lnto escape from flight from wish for
(19)前置詞を用いる構文が存在する時,その時の前置 詞.
a. apPeal to〜for〜 apPeal to〜for〜
b.identify〜with〜 identification with〜
c.warn〜about〜 warning about〜
(20)対応する形容詞があれば,たとえ動詞が前置詞を 取らなくてもそれと共に生じる前置詞.
a.be aquainted with aquaintance with
b.be consistent with consistence with
c.be fasclnated with
d. be obedient to e. be oPPosed to f, be repentant forfascinat量on with obedience to opposltlon to repentance for
(21)今まで挙げた関係づけができないもの.
a.accompany b.admire
c. attack
d.claim
e。damage f.demand
9. request
h.require
i.resemblej.solve k.warn
aCCOmpanlment tO
admlration for attack on
claim{for, to}damage to demand for
request for require for resemblance to solution to warnlng to
(17)から(21)まですべてに共通していることは,
「意味が類似していれば同じ前置詞」という大原則である.
例えば「欲求・要求」の意味を持っ項目は,(17f−g),
(18f),(19a),(21d),(21f−h)が示すようにすべて forを取る.「敬意を払う」という意味を持っ項目も,
(1),(21b)が示すようにforを取る.さらに「答・
解決法」は(18a),(21j)が示すようにtoを取る.
「類似」の意味を持っ時も,(21i)および次の(22)から,
明らかなように,toを取る.
(22)a. closeness to
b.comparison to
c. correspondence to d. equality to
e. likeness tof,similarity to
また(17)から(21)に共通なことは,対応する動詞 あるいは形容詞がなんらかの仕方で前置詞を用いていれ ば,派生名詞においても,それを踏襲するということで ある.ωしかし前置詞を使っている対応物がまったくな い場合は,「意味が同じならば同じ前置詞」という原則
によって決定されるように思われる.例えば,resem.blanceは前置詞を用いている対応物がない.常に他動
詞であり,形容詞形も持たない.しかし意味が類似して いる(22)の例によって,toを取ることが決定されるの
である.
9.それでは,なぜこれらの派生名詞は,ofではない
前置詞を伴なわなければならないのであろうか.今まで
の論理に従えば,ofでは色々な情報を用いても,意味を明確に伝えるのに不十分であるからということになる.
この原則によってかなりうまく説明できるように思われ るが,これにっいては紙幅の関係で,稿を改めて論じて
みたい.注
1.Emonds(1991)はLOCATIONという特性を設
定して,前置詞を分類している.これによると,of,aboutは一LOCATION, to, throughは十1.OCA−
TION, by, withは±LOCATIONを持っことになる.
この分類は本稿で扱っている問題とどのように関連する か定かでない.
2.動詞と形容詞と派生名詞の取る前置詞が食い違う例
が存在する.i. desire−be desirous of−desire for il. hope(for)−be hopeful of−hope of hi. regard−be regardful of−regard for
iv. respect−be respectful to−一一一 respect{for, to}
参考文献
Chomsky, N.1970. Remarks on nominalization.
Readings in transformational grammar, ed.
by R. Jacobs and P. Rosenbaum,184 一 221.
Waltham, MA:Ginn and Company.
Emonds, J,1991. Subcategorization and syntax−
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guage and linguistic theory 9.369−429.
石橋幸太郎他編集.1966.英語語法大事典.大修館.
Ito, T.1991. C−・selection and s−selection in inher−
itance phenomena. English linguistics 8.
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Kleinjans, E.1959. A descriptive−comparative study predicting interference for Japanese in learning English noun−head modification patterns,「日英両語の比較と英語教育」(英語教 育シリーズ19)(伊東正 訳注)大修館.
小池清治.1994.日本語はどんな言語瓶筑摩書房.
Lees, R.1966. The grammar of・ English nominali−
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