物理学概論
(’19
年度)
(到達目標)
物理学という科学的方法を用いた自然の理解の全体像を学ぶ。実験も 行い、楽しみながら実際の現象に親しむ。
(スケジュール)
1.
速度と加速度(直線運動)2.
平面上の運動(等速円運動)3.
力と加速度(例:放物運動)4.
万有引力と惑星の運動5.
エネルギー保存則6.
正弦波、波の基本式7.
横波・縦波、回折、重ね合わせの原理と干渉8.
定常波と気柱の振動9.
ホイヘンスの原理と光の反射・屈折10.
うなり、ドップラー効果11.
静電気12.
電流と磁界13.
温度と熱平衡(熱と温度)14.
熱と内部エネルギー、熱容量15.
実験テーマ: 熱の仕事当量16.
気体分子運動論(参考書等)
・「物理入門」浦尾亮一著 裳華房
・「物理学入門」原 康夫 学術図書
・「物理学講義」加藤潔著 培風館 そのほか必要に応じて紹介します。
(成績評価方法)
平常点
(授業・実験への出席・参加状況、ミニレポート提出状況)
と期末2
レポートにより総合的に評価する。
(ホームページ)
講義ノート、ミニレポート問題、期末レポート問題等は、林の個人ホー ムページの「講義内容」
http://lab.twcu.ac.jp/lim/sub4.html
の所に、また休講等の急なアナウンスは個人ホームページの「トップペー ジ」
http://lab.twcu.ac.jp/lim/index.html
に掲示するので活用して下さい。3
5
第
1
章 速度と加速度(直線運動)19
世紀までに完成した古典的な物理学の二つの大きな柱は「力学」と「電磁気学」である。そこで、まず力学について学ぶことにしよう。力学 とは、物体に力が働いた時に、それによって物体がどの様に運動するか を決める法則を与えるもので、物理学の基本とも言える。
現実的な物体は大きさを持ち、その運動は複雑で扱いにくい。例えば 野球のボールは、球の中心
(重心)
の運動に加えて、その中心の周りで回 転したりする。そこで、この授業では質量を持つが、大きさが無視でき る「質点」
という理想化された物体の運動を考える。以下特に断らない限り、「物体」
と言った場合にはこうした質点を想定している。
1.1
直線運動
まずは、最も簡単な場合として一つの直線上を運動する
「直線運動」
について考えてみよう。直線に沿って
x
軸を導入すると、質点の位置を表す
“位置座標”は質点の x
座標に他ならない。時刻t
における質点の位置座標を
x(t)
と書こう。まず、運動の様子を表す基本的な(物理)量で ある、質点の速度について考えよう。等速運動(等速直線運動)の場合には、x(t)を
t
の関数としてグラフ(横軸に
t、縦軸に x
をとる。x− t
図と呼ばれる)を書くと明らかに直線になる (図
1.1
参照)。すると、速度はこの直線の傾きに他ならない。実 際、t が∆t
増加した時に位置座標x
が∆x
増加するとすると、図1.1
か ら分かる様に、直線の傾きは∆x
∆t (1.1)
6
第1
章 速度と加速度(直線運動)図
1.1:
等速直線運動のx − t
図であるが、一方これは質点の速度
v (velocity,
一定)でもある:v = ∆x
∆t . (1.2)
なお、物理量は長さ、時間といったものなので、単位をどうとるか(メー トルかフィートか)により数値は異なる。こうした量を
“次元を持った量”
という。この講義では
「MKS単位系」
を用いる:
長さ:
m (メートル)
質量:
kg (キログラム)
時間:s (秒)
1.2
瞬間的速度と微分
1.2.
瞬間的速度と微分7
等速運動の場合には、x− t
図の直線の傾きが一定の速度を与え問題な いが、一般的な運動の場合には速度は刻々と変わる。では、ある時刻t
に おける瞬間的な速度はどの様に求めたら良いだろうか?速度が時間的に変化する場合にはグラフは一般に図
1.2
の様に曲線にな る。しかし、時刻t
の近辺(短い時間間隔)で考えれば、x− t
図のグラ フはt
におけるグラフの接線で近似出来る。従って、この接線の傾きがt
における瞬間的な速度v(t)
を与える(図 1.2
参照)。即ち、時刻t
におけ る瞬間的な速度は関数x(t)
のt
に関する微分で与えられる。実際、t から∆t
増加した時にx
座標が∆x
だけ増加したとすると、微分の定義はdx
dt = lim
∆t→0
∆x
∆t = lim
∆t→0
x(t + ∆t) − x(t)
∆t (1.3)
であるが、これは図
1.2
から分かる様にt
におけるグラフの接線の傾きに 他ならない。こうしてv(t) = dx
dt . (1.4)
古典的な力学の理論(ニュートン
(Newton)
力学と呼ばれる)を創始した ニュートン は、そもそも瞬間的な速度を求める目的で微分の概念を発見 したのであった。速度の単位は(m/s)
である。なお、接線の傾きに正負があるように速度にも正負があることに注意 しよう。v(t)
> 0
の場合には、時刻t
でx
は(瞬間的に)増加しているの で、質点はx
軸の方向に運動している。これに対し、v(t)< 0
の場合に はx
軸とは逆向きに運動していることになる。またv(t) = 0
であれば、質点は瞬間的に静止している。これに対して、「速さ」は運動の方向に関 係なく常に正であり、速度の絶対値
| v(t) |
で与えられる事に注意しよう。(N.B.)
この様に、速度は速さだけでなく運動する方向も表していることにな るが、一般的な
3
次元的な運動では、速度は「速度ベクトル
~ v」
で与えられ、運動方向は
~ v
の方向で、また速さはv
はその大きさv = | ~ v | (1.5)
で表される事になる(後述)。
x
軸に沿った1
次元的な運動に戻り、例えばx(t) = 2t 3 − 3t 2
で与えら8
第1
章 速度と加速度(直線運動)図
1.2:
一般的な運動のx − t
図と接線の傾きで与えられる瞬間的な速度れる運動があったとする。この場合の速度は
v(t) = dx
dt = 6t 2 − 6t = 6t(t − 1) (1.6)
となるので、t= 0, 1
の時、物体は瞬間的に静止し、t <0
やt > 1
ではx
軸の向きに、0< t < 1
ではx
軸と逆向きに運動することになる (高 校の数学で学んだ「増減表」をx(t)
について書いてみると分かり易いか も知れない)。しかし、一方で速さ| v(t) |
は当然常に正である。所で、速度は
x
座標の微分で与えられるので、速度v
からx
を求めた ければ、微分の逆演算である積分をしてやれば良いことになる。実際v(t)
を時刻a
からb
まで定積分すると∫ b
a
v(t)dt = [x(t)] b a = x(b) − x(a) (1.7)
となり、時刻a
からb
までの間の物体の位置座標の変化(“変位”)を表 していることになる。例えばa = 0, b = 3 2
とするとx(0) = x( 3 2 ) = 0
な ので変位はゼロであるが、一方で、上で見た様に、0≤ t ≤ 1
ではx
軸と1.3.
加速度と2
階微分9
逆向きに、1≤ t ≤ 3 2
ではx
軸の方向に物体は運動するはずなので、変位 がゼロで同じ点に戻っても、この間の物体の移動距離(実際に動いた距 離)はゼロ ではないはずである。実際、x(1) =− 1
なので、この間に物 体は2 × [0 − ( − 1)] = 2 (m)
だけ動いた事になる。一般に、時刻
a
からb
までの間の物体の移動距離は(1.7)
の様な速度の 積分ではなく、速さ| v (t) |
の定積分で∫ b
a | v(t) | dt (1.8)
と与えられる事が分かる。まず、この定積分は
| v(t) |
のグラフとt
軸、お よび二つの直線t = a, t = b
で囲まれる面積に等しいが、それは区間a ≤ t ≤ b
を幅∆t
のN
個の区間に分割し、i 番目の微小区間での| v(t) |
のグラフとt
軸で囲まれる長方形の面積| v(t i ) | ∆t
を全ての区間について 足し合わせ、N→ ∞
の極限を採ったもの∑ N i=1
| v(t i ) | ∆t → ∫ b
a | v(t) | dt (1.9)
で与えられる(“区分求積法”)ことを思い出そう(図1.3
参照)。一方、| v (t i ) | ∆t
は、この微小区間において∆t
の間に物体が移動した微小な距離 に他ならないので、この定積分は時刻a
からb
の間の物体の移動距離を 表すことになるのである。1.3
加速度と2
階微分
車でアクセルを踏むと速度が増す。つまり物体に力を与えると加速す る。力学ではこの関係(ニュートンの第
2
法則、運動方程式)が最も重要 であると言える。そこで、今度は加速度について考えよう。加速度とは、単位時間当たりの速度の増加(速度の時間的変化率)で あると言えるが、速度の時と同様に、ある時刻での(瞬間的な)加速度
a(t) (acceleration)
は、速度の微分で与えられる:a(t) = lim
∆t → 0
∆v
∆t = dv
dt = d 2 x
dt 2 (1.10)
ここで
(1.4)
を用いた。位置座標x(t)
の2階微分が加速度であることに注意しよう。加速度の単位は
(m/s 2 )
である。例えばx(t) = t 3 + 2t 2
の場合10
第1
章 速度と加速度(直線運動)図
1.3:
物体の動いた距離を表す定積分には
a(t) = d 2 x
dt 2 = 6t + 4 (1.11)
となり、この場合、加速度は時間と共に増加する。
1.4
等加速度運動例えば、地上で自由落下する物体(落体)の速度
v
をt
の関数として グラフ(“v − t
図”)に描くと直線になる。つまり、自由落下は等加速度運 動の例である。その一定の加速度の大きさは9.8 (m/s 2 )
であり、これを 重力加速度g
と呼ぶ:g = 9.8 m/s 2 . (1.12)
一般的に一定の加速度
a (a :
定数)の等加速度運動を考えると、速度は 一定の割合a
で増加するので、t= 0
での速度をv 0 (“初速度”)
とするとv(t) = at + v 0 (1.13)
1.4.
等加速度運動11
となる。見方を変えると加速度は速度の微分でa = dv dt
なので、v はa
の(不定)積分で与えられる。よって
v(t) =
∫
a dt = at + c (c :
任意定数(積分定数)) (1.14)
となる。t= 0
とするとv(0) = c
なので、任意定数c
は初速度v 0
に固定 されることが分かる。こうして(1.13)と同じ結果になる。同様に、x(t) はv = dx dt
より、(1.13)をもう一度不定積分して得られる:x(t) =
∫
v dt =
∫
(at + v 0 ) dt = 1
2 at 2 + v 0 t + x 0 (1.15)
ここで任意定数x 0
はx(0) = x 0
よりt = 0
での物体の位置(“初期位置”)で与えられる。
この様に、初速度
v 0
、初期位置x 0
という二つの「初期条件」
を与えると、x(t)、つまり運動が完全に決定されることになる。
例として落体の運動を、鉛直上向きに
y
軸をとってy(t)
を用いて表す と、加速度はa = − g
なので、(1.15)よりy(t) = − 1
2 gt 2 + v 0 t (1.16)
となる(ただし、初期位置を原点にとり、y(0) = 0とした)。v
0 = 0
だと 自由落下、v0 > 0
だと“投げ上げ”の場合になるが、この様に考えると一
つの式
(1.16)
で落体の運動が一般的に表され、個々の場合について公式を覚える必要はないのである。
13
第
2
章 平面上の運動(等速円 運動)実際の物体の運動は直線上に限定されず、3次元空間(点の位置座標
が
(x, y, z)
で表される)の中を運動する。ここでは、良く目にする運動として平面上の(2次元的な)運動に限定して考えてみよう。
既に述べたように、3次元的な運動や平面上の
2
次元的な運動では、速 度は速度ベクトル~ v(t)
で表され、その方向は物体の運動方向を、またそ の絶対値は速さv(t)
を表す:v(t) = | ~ v(t) | . (2.1)
平面としてx − y
平面(z= 0)を考えると、物体の位置は、原点から
物体の位置に向かう「位置ベクトル」~ r
で表され、その二つの成分は物体 の位置座標(x, y)
に他ならない:~ r(t) = (x(t), y(t)). (2.2)
すると,直線運動の時と同様に、時刻t
における瞬間的な速度は位置ベク トル~ r(t)
のt
による微分で与えられる。ベクトルの微分も通常の関数の 微分と同様に計算出来て~ v = d~ r
dt = lim
∆t → 0
∆~ r
∆t = lim
∆t → 0
~ r(t + ∆t) − ~ r(t)
∆t (2.3)
で与えられる。(2.2) を
(2.3)
の右辺に代入すると分かるように、位置ベ クトルの微分は、x, y座標のそれぞれをt
で微分したものに等しい:~ v = lim
∆t → 0 ( x(t + ∆t) − x(t)
∆t , y(t + ∆t) − y(t)
∆t )
= ( dx dt , dy
dt ). (2.4)
なお、(2.3)で
∆t
が十分小さいと、∆~r
は時刻t
での運動方向(運動の軌 跡(一般に曲線)の接線の方向)を向くので、~ v
は確かに運動方向を向い14
第2
章 平面上の運動(等速円運動)ていることが分かる。また、
v (t) = | ~ v(t) | = lim
∆t → 0
| ∆~ r |
∆t (2.5)
において、
∆t
が十分小さいと、| ∆~ r |
は| ∆t |
の間の物体の微小な移動距離 なので、v(t)が確かに時刻t
での物体の速さを表していることが分かる。同様に、加速度は速度の時間微分で与えられるが、加速度もやはりベ クトル(加速度ベクトル)である:
~a(t) = d~ v
dt = d 2 ~ r dt 2
= ( dv x dt , dv y
dt ) = ( d 2 x dt 2 , d 2 y
dt 2 ). (2.6)
さて、直線運動だと速さ一定の等速直線運動では加速度はゼロである が、平面上の運動においては、等速運動でも加速度ゼロとは限らない。そ れは、速さが一定でも運動方向が変われば速度ベクトルは変化するから である。この例として代表的なのが等速円運動である。そこで以下でこ の運動について考えてみよう。
x − y
平面上で原点を中心とし半径r
の円周上を一定の速さv
で物体 が運動する、という「等速円運動」
を考える。この場合、運動の軌道は円なので速度ベクトルは円の接線方 向を向く。また、図を描いてみると分かるように、∆tの間の速度ベクト ルの変化
∆~ v = ~ v(t + ∆t) − ~ v(t)
は、ほぼ円の中心方向に向く。よって加 速度ベクトルは中心方向を向くことに成る。これを、微分を用いた計算で確認しよう。まず、円運動の場合は、物体 の位置を表すのに
(x, y)
という直交座標より(r, θ)
という極座標を用いる と便利である。ここでr
は中心からの距離であり、θ(セータ)
はx
軸から 測った偏角である。因みに、直交座標との関係はx = r cos θ
y = r sin θ (2.7)
であり、円運動の場合には
r
は円の半径で定数である。位置ベクトル
~ r(t) = (x(t), y(t)) = (r cos θ(t), r sin θ(t))
をt
に関して微 分すると、速度ベクトルが~ v = d~ r
dt = ( dx dt , dy
dt ) = r( d cos θ
dt , d sin θ
dt ) = rω( − sin θ, cos θ) (2.8)
15
と計算される。ここで「合成関数の微分の公式」dx dt = dθ dt dx dθ
等を用いた。また、
ω = dθ
dt (2.9)
であり、ωは単位時間当たりの角度の進みを表し
「角速度」あるいは「角振動数」
と呼ばれる。~
v · ~ r = 0
なので速度ベクトルは位置ベクトルと直交し、予 想通り接線方向を向くことが分かる。また円運動の速さはv = | ~ v | = rω | ( − sin θ, cos θ) | = rω (ω > 0
の時)(2.10)
で与えられることも分かる。v が定数(等速)なのでω
も定数である。単 位時間にω
ラジアンだけ角度が進むと円周上ではrω
の距離だけ進むの で、この関係は当然ではある。なお、ω が一定なので、t= 0
でθ = 0
で あるとするとθ = ωt (2.11)
と書ける。
同様に、加速度ベクトルは
~a = d~ v
dt = − rω 2 (cos θ, sin θ)
= − ω 2 ~ r (2.12)
となり、加速度の方向は中心方向で、またその大きさは
a = | ~a | = ω 2 | ~ r | = rω 2 (2.13)
であることも分かる。まとめると、等速円運動の場合の加速度についてはa = | ~a(t) | = rω 2
~a(t)
の方向: 円の中心方向(2.14)
となる。後で述べる様に、力学における「ニュートンの第2法則」より 物体に働く力は加速度に比例するので、これは、等速円運動の場合には 物体には中心に向く力(向心力と呼ばれる)が働くことを意味する(等 速でない円運動の場合には角速度が変化するので、接線方向の力も存在 することになる)。
16
第2
章 平面上の運動(等速円運動)2.1
単振動
原点を中心とする半径
A
の円上の等速円運動を考え(角速度ω)この
運動を
x
軸上に“射影”して見よう。すると、射影された影は x
軸上を運動し、円運動が
t = 0
でy
軸上の負の部分から出発し反時計回りに回る とすると、時刻t
の時の影のx
座標は((2.11) と同様に)x = A sin(ωt) (2.15)
となる。この影の運動の事を
「単振動」あるいは「調和振動」
と言う。ここで、A は振動の振れ幅を表すので
“振幅 (amplitude)”
と呼 ばれる。単振動の代表的な例は、バネの先に取り付けられた質点の運動 である。単振動する物体を「単振動子」あるいは「調和振動子(harmonic oscillator)」
とも言う。
単振動の往復の時間を周期
T
と言う。これは円運動で言えば円を一周 する時間と等しくT = 2π
ω (2.16)
で与えられる。実際、(2.15) の関数の周期も容易に
2π ω
であることが分 かる。17
第
3
章 力と加速度(例: 放物 運動)
いよいよ、力学の主題と言える、力が働いた時に物体がどの様な運動 をするか、という事について考えてみよう。古典的な力学を完成させた のはニュートン
(I. Newton)
である。この章では、この「ニュートン力学」
について学ぶ。
3.1
三つの運動法則理想化された、摩擦のない
“滑々の”台の上で物体をある初速度で運動
させると、初速度を保ったまま運動し続けると考えられる。即ち、「物体に力が働かなければ、物体は等速直線運動をする」
と言える。これは元々ガリレオが主張した事で、
「慣性の法則」
と呼ばれている。「慣性」とはそれまでの運動状態を保持しようとする性 質の事である。例えば、ひもに結ばれた物体が円運動している時にひもが 切れると円の接線方向に物体が飛んで行くが、これは慣性のために、そ の時の速度を維持し続けようとするからである。
では、物体に力が働くとどうなるであろうか? ひもに結ばれた物体が 等速円運動している場合を考えると、物体は、ひもから引っ張られるの で、中心に向かう力(“向心力”)を受けるが、一方、前章で学んだよう に物体の加速度も中心方向を向く。つまり、力の働いた方向に速度が変 化し、加速度が生じる、と言えそうである。
また、同じ力で物体を押したとしても、質量の大きな(重い)物体ほ ど、その速度はあまり変化せず加速度は小さくなる。よって、質量とい うのは
18
第3
章 力と加速度(例: 放物運動)“加速され難さ”
を表している。
まとめると、加速度は力に比例し物体の質量には反比例しそうである。
これを法則の形で表すと
~a = F ~
m → F ~ = m~a. (3.1)
ここで、
F ~
は物体に働く力(force)、また m
は物体の質量(mass)
である。この法則は力学で最も重要な関係式であると言え、
「ニュートンの運動方程式」
と呼ばれる。(3.1)より
a = | ~a | = | m F ~ | = F m
なので、質量が大きいとあま り加速しないことが分かる。また、(3.1)より~a
はF ~
に比例するので、予 想した様に、「力の働いた方向に加速度が生じる」
事も分かる。
また、力の性質としては、物体
A
が物体B
にF ~
という力を及ぼすと き、逆に、物体B
は物体A
に、大きさが同じで逆向きの− F ~
の力を及ぼ すことが知られている。また、これらの力は同一の作用線上にある。この 様に、力は、一方的にではなく相互に働くので、「相互作用(interaction)」
とも呼ばれる。この
“お互い様”の法則を
「作用・反作用の法則」
と呼ぶ。
ニュートン力学は上記の様な「3つの運動法則」、即ち
1.
慣性の法則2.
運動方程式3.
作用・反作用の法則に基づいて構築されたものである。特に
2
番目の運動方程式により、物 体の運動の様子から物体に働く力を求めたり、逆に物体が受けている力 の情報から、物体の運動を決めたりすることが出来るのである。3.2
一定重力下での放物運動
地表で質量
m
の物体に働く重力は鉛直下向きで、その大きさ(物体の 重さ)は、F= ma (F = | F ~ | , a = | ~a | )
でa = g (g :
重力加速度) としてmg (3.2)
3.2.
一定重力下での放物運動19
であることが分かる。地表近くでは重力は一定と見なして良い(しかし、例えば富士山頂では、重力の大きさは
0.1
%ほど弱まる)。鉛直上向きにy
軸を採ると、重力を受けて運動する「落体」の運動はy
軸と初速度ベク トルを含む一つの平面内に限定される。そこで、この平面で水平方向にx
軸を採ることにする。質量
m
の物体に働く重力は(x − y
平面上のベクトルなので、そのx, y
成分のみ書くと)F ~ = (0, − mg)
と書ける。物体の加速度ベクトルを~a = (a x , a y )
と書くと、運動方程式はF ~ = m~a → (0, − mg) = m(a x , a y ) → a x = 0, a y = − g (3.3)
の様に、それぞれの成分に分けて考えることが出来る。まず鉛直方向を考えると、y 方向には
− g
の等加速度運動をするので、初速度ベクトルの
y
成分をv 0y
とすると、(1.16) と同様にy = − 1
2 gt 2 + v 0y t (3.4)
と時刻
t
におけるy
座標が求まる。次にa x = 0
よりx
方向には等速運動 をするので、明らかにx = v 0x t (3.5)
が得られる。なお、(3.4)、(3.5)において、物体は
t = 0
で原点にいたと している。原点
(地表の一点)
から、水平方向からの角度(仰角)θ でv 0
の大きさの初速度で打ち出されたボールを考えると、v
0x = v 0 cos θ, v 0y = v 0 sin θ
なので(3.4)、(3.5)
より時刻t
における位置座標はx = v 0 (cos θ)t, y = v 0 (sin θ)t − 1
2 gt 2 (3.6)
となる。ここで物体の位置ベクトルは
~
r = (x, y) = (v 0 (cos θ)t, v 0 (sin θ)t) + (0, − 1
2 gt 2 ) (3.7)
と書けることに注意しよう。これは、t 秒後の物体の位置は、仮に無重力 状態で直線的にv 0 t
だけ進んだとした位置から1 2 gt 2
だけ下方に自由落下 した位置と考えてよい、ということを言っているのである。20
第3
章 力と加速度(例: 放物運動)(3.6)
の上の式からt = v x
0
cos θ
として下の式に代入しt
を消去するとy = − g
2v 0 2 cos 2 θ x 2 + (tan θ)x (3.8)
という放物線の方程式が得られる。これが正に、一定の重力を受けての 運動である「放物運動」
の軌道に他ならない。(3.8)より、同じ初速でボールを最も遠くまで飛ば そうとすると、(空気抵抗等を無視すると)仰角
θ
を45
度とすれば良い ことが分かる。21
第
4
章 万有引力と惑星の運動
ニュートンは、水平に投げ出す(「水平投射」と呼ばれる)物体の初速 を次第に大きくすると、地球が球形であるために、いずれは地表に落下 せず、地球の周りを周回する様になると考えた。ニュートンは、これと 同様に、地球の周りを回る月も、地上の木から落ちるリンゴの様な落体 と同様にいわば
“地球に向けて落下し続けている”
と考えたという。そして、地表でリンゴが落ちるのも、月が地球に向かっ
て
“落ちる”のも、また惑星が太陽に向かって “落ちる”のも、全て同じ物
理法則に従っている事を見抜いたのである。それが、すべての質量を持 つ物の間に普遍的に働く
“万有引力”に関する
「万有引力の法則」
である。
実際、ニュートンは、仮に月が地球からの万有引力を受けないと、1秒 経つと円軌道のある点
(図 4.1
の点P)
から円の接線方向に円運動の速さ の分だけ進んだ点(図4.1
の点Q)に達すると考え、その点(Q) から円
軌道上の位置(Q’)
に落下したと見なして、1秒間の月の落下距離(QQ’)
を求めた(約1 mm)。この落下距離と地上のリンゴの 1
秒間の落下距離1
2 g = 4.9 m
とを比較し、月の落下距離が小さいのは、地球から月の方がずっと離れているからであると考え、万有引力の法則を発見したと言わ れている。
ニュートンに依れば、質量
M, m
の二つの物体A, B
が、距離r
離れて いる時に両者の間にはF = G M m
r 2 (逆二乗則)
(4.1)
の大きさの万有引力が働く。ここで
G = 6.67 × 10 − 11 (m 3 /(kg · s 2 )) (4.2)
22
第4
章 万有引力と惑星の運動図
4.1:
地球に向かって落下する月は「重力定数」あるいは「万有引力定数」と呼ばれる。作用・反作用の法 則により、A, B の受ける引力は
A, B
を結ぶ直線上で働き、二つの力は 逆向きである。前節で述べた地上の物体に働く重力は、地球の質量が地 球の中心に集中したと考えた時の、物体が地球から受ける万有引力に他 ならない(なぜ地球の中心に集中したと考えてよいかは、ここでは説明 しないが、電磁気学における「ガウスの法則」と同様の法則を用いて示 せる)。よって、(地表での)重力加速度g
はG
と地球の半径R E
、地球 の質量M E
を用いてmg = G M E m
R 2 E → g = G M E
R E 2 (4.3)
と表される
(右辺を計算し、確かに重力加速度となることを確かめてみよ
う)。例えば、富士山の頂上では重力は地上の場合より0.1
% ほど小さ くなるが、これは地球の中心から離れるために(4.3)
のR E
がR E + 3776
(3776 m
は富士山の高さ)に変更されるからであるとして理解できる。万有引力の法則を用いて、太陽の周りの惑星の運動に関するケプラー の第
3
法則、即ち「惑星の公転周期の2
乗は楕円軌道の長半径の3
乗に比23
例する」という法則を導いてみよう。ただし、簡単のために惑星の運動を 太陽を中心とする等速円運動だとしよう。すると、円運動の角速度をω、
円の半径、つまり太陽と惑星との距離を
r
とすると、F= ma (m :
惑星 の質量)と、等速円運動の加速度の大きさがa = rω 2
であることからG M S m
r 2 = mrω 2 → ω 2 = GM S
r 3 (4.4)
の関係が得られる。ここで
M S
は太陽の質量。円運動の周期T
はT = 2π ω
で与えられるので、T を用いると、(4.4) はT 2 = (2π) 2
GM S r 3 → T 2 ∝ r 3 (4.5)
と書き直せる。こうしてケプラーの第3
法則が導かれたことになる。な お、ここでは示さないが(4.5)
の関係は、惑星の軌道が(現実的な)楕円 軌道の場合にも成立する。25
第
5
章 エネルギー保存則
この章では、物理で大変重要な役割を演じる
「エネルギー保存則」
について考えよう。
5.1
仕事と運動エネルギー
まずは「仕事」という概念について考えよう。簡単のために、一定の 力、したがって一定の加速度
a
でx
軸上を運動する、等加速度運動を考 えよう。速度v、位置座標 x
は、加速度a
を時刻t
について順次(不定)積分すれば得られ、
a(定数) → v = at + v 0 (v 0 :
初速度)→ x = 1
2 at 2 + v 0 t (最初原点にいたとする) (5.1)
となる。この2
式からt
を消去しv
とx
の関係をみよう。そのために(5.1)
の上の式からt = v − a v
0 として下の式に代入し、少し整理するとx = v 2 − v 0 2
2a → v 2 − v 0 2 = 2ax (5.2)
の関係が得られる。両辺をm 2
倍すると(m: 物体の質量)1
2 mv 2 − 1
2 mv 2 0 = max = F x (5.3)
となる。F は物体に働く力であり、運動方程式F = ma
を用いた。ここ で、物体の運動エネルギーK
をK = 1
2 mv 2 (5.4)
26
第5
章 エネルギー保存則 また、力が物体にした仕事W
をW = F x (力 ×
移動距離)(5.5)
で定義すると、(5.3)はK − K 0 = W (5.6)
つまり
「された仕事の分だけ物体の運動エネルギーは増加する」
ということを言っていることになる。
なお、3次元空間に拡張すると、力
F ~
がする微小な仕事は、ベクトル の内積を用いて∆W = F ~ · ∆~ r (5.7)
と定義される。ここで、∆~
r
は物体の位置の変化を表す“変位ベクトル”
である。実際、等速円運動では
F ~
と∆~ r
は直交するので(5.7)
で定義され た仕事はゼロになる。一方で、等速なので運動エネルギーは増加しない ので、(5.6) が相変わらず成立して都合が良いのである。5.2
位置エネルギーとエネルギー保存則
次に「位置エネルギー」を導入しよう。
例えば、ある人が物体
(質量 m)
を地面上の点O
から鉛直上方の高さh
の点P
まで、重力に逆らって静かに持ち上げたとする。この時に人が物 体にした仕事はmg × h = mgh (5.8)
である。
そこで
「人が物体に働く力に逆らって、基準点からある位置まで物体を運ぶ時 に物体にした仕事
=
位置エネルギー」と定義し位置エネルギー(potential energy)を
V
と書くと、高さh
にお ける重力による位置エネルギーはV = mgh (5.9)
であると言える。
5.2.
位置エネルギーとエネルギー保存則27
点P
まで持ち上げたその後静かに手を離すと、物体はP
からO
まで自 由落下するが、この間に重力が物体にした仕事もやはり人が物体を持ち上 げる時にした仕事に等しくmgh
である。それは、両者を比べると力の方 向は逆だが、移動方向も逆のため(5.7)
の内積が同じになるからである。この自由落下について
(5.6)
の関係を具体的に書くと、落下時の速さをv
として
1
2 mv 2 = mgh (5.10)
となるが、この関係は
「運動エネルギーの増加
=
位置エネルギーの減少」と見なせるので、運動エネルギー
K
と位置エネルギーV
の合計を“力学
的エネルギー”E と呼ぶと「力学的エネルギー
E = K + V
は時間に依らず一定に保たれる」と言うことができる。これが
「エネルギー保存則」
である。
エネルギー保存則は、上述のような一定の力で生じる等加速度運動の 場合だけでなく、力が場所に依り変化する一般的な直線運動の場合にも
(実際には
3
次元的運動の場合でも)成立する。その際、座標x
の位置で の位置エネルギーV (x)
は定積分を用いてV (x) =
∫ x
0
( − F (x 0 )) dx 0 = − ∫ x
0
F (x 0 ) dx 0 (5.11)
で与えられる。被積分関数が− F (x 0 )
となっているのは、物体に働く力F (x 0 )
に逆らって人が加える力だからである。(5.11) 右辺の積分は∆x lim → 0
∑
i
( − F (x i ))∆x (5.12)
と書けるので、基準点(この場合は原点)から座標
x
の点までの領域を 細かな区間に分け、i番目の区間で物体に働く力に逆らって人がする微小 仕事( − F (x i ))∆x
を全区間に渡って足し合わせたものを表していること が分かる。なお、位置エネルギーは力を積分して得られるので、逆に力は位置エ ネルギーの微分で書けそうである。実際
(5.11)
よりdV
dx = − F → F = − dV
dx (5.13)
28
第5
章 エネルギー保存則 が言える。(参考までに、一般的な3
次元的な運動では、F ~ = − grad V
と なる。ここで、gradV = ( ∂V ∂x , ∂V ∂y , ∂V ∂z )
である。)(5.13) より、位置エネ ルギーは力の原始関数(不定積分)の符号を変えたもの、という見方も出 来る。原始関数は一意的ではないが、これは位置エネルギーの基準点の 採り方で位置エネルギーが定数だけ変化する不定性に対応している。し かし、位置エネルギーで大切なのはその場所による変化であり、基準点 の取り方は勝手でよく(都合の良い所に採ればよい)、重要ではない。例として、バネによる力(弾性力)による位置エネルギーを考えよう。
この場合、
“自然長”より x
伸びた時にバネから受ける弾性力は、フックの 法則よりF = − kx (k (> 0): バネ定数)
となる(マイナスが付いている のは、バネの伸びる方向と弾性力の方向が逆だからである(“復元力”))。これを
(5.11)
に代入すると、バネの弾性力による位置エネルギーがV (x) = − ∫ x
0
F (x 0 ) dx 0 = − ∫ x
0
( − kx 0 ) dx 0 = k
∫ x
0
x 0 dx 0 = 1
2 kx 2 (5.14)
の様に求まる。29
第
6
章 正弦波、波の基本式
波動(波)というのは振動が空間を伝わって行く現象である。例えば ピアノの弦の一点をハンマーで叩くと、弦の叩かれた部分は振動を始め、
それによりその周りの部分も引っ張られて振動を始める。こうして振動 が次々に弦を伝わって行くことになる。これが波動である。池の一点に 小石を落した時に同心円状に広がる水の波、また音波、光(電磁波の一 種)、等もみな波動である。
例えば、海面に出来る波は三角関数を用いて次の様に表すことが出来 る(図
6.1
を参照):y = A sin { 2π( x
λ − f t) } (λ :
波長、f :
振動数、A :
振幅)(6.1)
ここでy
は時刻t、座標 x
の点における海面の変位(波が無い時からの位 置のずれ)である。(6.1)
でt = 0
として時刻を固定してみると、y= A sin( 2πx λ )
となる。x
が
λ
だけ“進む”と y
が同じ値に戻るようになっていることが分かる。変位の状態(変位が最大、最小の
“山”や “谷”の様な)を位相(phase)と言
う。波長とは同じ位相の状態にある隣り合う2
点間の距離(例えば山と山 の間の距離)なので、確かに(6.1)
のλ
が波長を表していることが分かる。また、(6.1)で
x = 0
として位置を固定してみると、y= − A sin(2πf t)
と なるが、これは単位時間(1秒)で(x= 0
の位置の海面が)f回振動す ることを表している。これが、f が振動数を呼ばれる理由である。つま り、海面の各点は振動数f
で振動(単振動)しているだけで、岸に向かっ て移動してはしない。各点の振動により生じる“波形”が岸に向かって動
いている様に見えるだけである。なお、(6.1) で表される波は
sin
を用いているので「正弦波」
と呼ばれる、cosを用いることも可能であり、最も一般的には、それらを
30
第6
章 正弦波、波の基本式図
6.1:
海面に出来る波。t= 0
の時の海面の変位合成(“三角関数の合成”と同じ)して得られる:
y = A sin { 2π( x
λ − f t) + ϕ } (6.2)
の様に書くことが出来る。ここで、定数ϕ
はt = 0, x = 0
における位相 の状態を表しているので“初期位相”と呼ばれる。
さて、λ と
f
は次の関係を満たす:v = f λ. (6.3)
ここで
v
は波の進行する速さである。この関係は、どの様な波動でも成 立する基本的なもので「波の基本式」
と呼ばれている。実際、波がある方向に進行する時、波長
λ
だけ進むと、海面のある点は上下に一回振動するので、単位時間に
v
だけ進むとv λ
回 振動することになる。一方、これが波の振動数f
に等しいので、f = v
λ → v = f λ (6.4)
31
が言えるのである。この波の基本式を用いると、正弦波
(6.1)
はy = A sin { 2π
λ (x − vt) } (6.5)
とも書けることが分かる。これは考えてみると当然の結果である。(6.5) をグラフにかくと、これは
y = A sin( 2π λ x)、即ち t = 0
の時のグラフをx
軸方向にvt
だけ平行移動したものである。一方、波の速さはv
なので、波は時刻
t
ではvt
だけx
軸方向に移動していることになり、これは当然 であると言える。33
第
7
章 横波と縦波、回折、重ね 合わせの原理と干渉
7.1
横波と縦波波には一般にそれを伝える物質である「媒質」(その振動により波が生 じる)が存在する。(ただし、光(電磁波)の場合には、何も存在しない 真空中でも光は伝わる!)例えば、
海面に出来る波:海水, 音波:空気, 等々.
上で議論した海面に出来る波の場合には、海面の変位の方向、あるい は媒質の各点の振動方向は、波の進行方向と直交している。この様な波 を
「横波
(transverse wave)」
と言う。では媒質の振動方向が波の進行方向と同じ(平行)である場合 はあるだろうか?答えは
Yes
である。こうした波を「縦波
(longitudinal wave)」
と言う。
音波が縦波の典型的な例である。例えばスピーカーから発せられる音 で、その周りの媒質(空気の分子)が振動し、その振動する方向に次々に
(ドミノ倒しのように)振動が伝わる。各場所での空気分子の振動による
(波の進行方向の)変位を縦軸にとって書くと、横波と同じように図
6.1
の様な正弦波のグラフになる。この図から分かる様に、空気の分子が密 になる部分と疎になる部分が交互に現れる。具体的には右下がりに
x
軸を切る点: 密 右上がりにx
軸を切る点: 疎である事が分かる。こうした理由で、縦波は
「疎密波」
34
第7
章 横波と縦波、回折、重ね合わせの原理と干渉 と呼ばれる事もある。7.2
回折、重ね合わせの原理と干渉
7.2.1
回折池の水面に出来る波を考える。波の進行方向にスリット(すき間の開 いた障壁)を置いてみると、スリットの裏側にまで波が回り込む(図
7.1
参照)。こうした現象を「回折」
と言う。粒子であれば、すき間を通り抜けても直進するのでスリットの 裏側に回り込むことは有り得ない。つまり、「回折」は波(波動)に特有 の現象である。
図
7.1:
水面の波の回折所で、海面の波や図
7.1
の池の水面に出来る波の様な2
次元的な広がり を持つ波では、波の位相が同じ点(例えば“山”)を連ねた図形は同心円
の様な曲線になるが、3
次元空間を伝わる波においては球面の様な面にな るので、これを「波面」
と言う。