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津幡 眞一  市田 蕗子  浜道 裕二 橋本 郁夫  岡田 敏夫  村上  新1)

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(1)

日本小児循環器学会雑誌 10巻2号 307〜312頁(1994年)

新生児期カテーテル・インターベーション後に下大静脈閉塞を きたした重症肺動脈弁狭窄に対する経皮的バルーソ

肺動脈弁形成術一経内頸静脈アブP一チの経験

(平成6年1月28日受付)

(平成6年4月12日受理)

 富山医科薬科大学小児科,同 第1外科1)

 国立循環器病センター小児科2),同 放射線診療部3〕

 富山市民病院小児科4)

津幡 眞一  市田 蕗子  浜道 裕二 橋本 郁夫  岡田 敏夫  村上  新1)

越後 茂之2) 木村 晃二3) 北野 尚史4)

key words:経皮的バルーン肺動脈弁形成術,重症肺動脈弁狭窄,合併症,下大静脈閉塞,経皮内頸静脈ア      プローチ

      要  旨

重症肺動脈弁狭窄の6ヵ月乳児に,経内頸静脈アプローチによりカテーテル・インターベンシ・ンを施 行した.患児は,日齢25に経皮的バルーン肺動脈弁形成術を施行された後,両側腎静脈分岐部より末梢 の下大静脈に閉塞をきたしていた.経内頸静脈アプローチによる肺動脈弁狭窄のカイド・ワイヤーの通

過は容易であった.肺動脈弁輪径7.5mmに対し10mmと12mm径の・ミルーンカテーテルを使用した.収 縮期右室圧は140mmHgから40mmHgに低下し,肺動脈弁狭窄の圧較差も122mmHgから26mmHgに

減少した.経内頸静脈アプローチによる血気胸等の合併症は認めなかった.

 新生児期発症の重症肺動脈弁狭窄に対する経皮的バルーン肺動脈弁形成術後の長期予後は不明であ

る.将来再狭窄や残存狭窄の進行の可能性があり,血管損傷をきたさない工夫とアプローチ部位の術後 の深意深い観察が重要と思われた.

 小児の肺動脈弁狭窄における経皮的バルーン肺動脈 弁形成術(以下PTPV)は,その手技および成績にお いてほぼ安定してきた1)2).さらに,新生児期に発症す る動脈管依存性の重症肺動脈弁狭窄においても,好成 績をあげている3) −6).今後,新生児に対するカテーテ ル・インターベンション施行例が増加すると思われる が,それと共にその合併症の増加が考えられ,それに 対する対策が重要となる.今回,われわれは新生児期 に施行されたPTPVにより下大静脈閉塞をきたした 乳児に,その残存する肺動脈弁狭窄を経内頸静脈アブ

別刷請求先:(〒930−01)富山市杉谷2630

     富山医科薬科大学小児科  市田 蕗子

ローチにより再度PTPVを施行し肺動脈狭窄を解除 できたので報告する.

         症  例

 6ヵ月男児.生直後より,チアノーゼ,心雑音を指 摘され新生児期に重症肺動脈弁狭窄,動脈管開存,卵 円孔開存,三尖弁逆流(重度)と診断されLipo・PGE1 投与下に,日齢25に通常の右心および逆行性左心カ

テーテル検査後PTPVを施行した(図1).初回

PTPVでは,左大腿静脈を穿刺し,5Fのシース(長さ 5cm)を挿入した.ヘパリンは心臓カテーテル検査開始 時に50単位/kg投与し,さらにPTPV施行時に半量を 追加した.ガイド・ワイヤーは Hi−Torque Floppy

(0.018inch, Advanced Cardiovascular Systems)を

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図1 初回PTPV施行前の右室造影およひ初回PTPV.右室造影にて主肺動脈に吹  く造影剤のソェノト(白矢)を認める(A,B).直径7mmのパルーソに狭窄による   waist を認め,同 waist の消失を確認した(C, D).

A B

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C

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図2 RI venography.初回PTPV10日後の検査ては,右大腿静脈は開存していたが(A),左大腿  静脈は閉塞していた(B).生後3ヵ月時の検査ては下大静脈は閉塞し,腹壁の皮静脈(黒矢)を  含めた側副血行が発達していた(C),

使用し,肺動脈弁通過は5Fの先穴Bermanカテーテ ルを用い,動脈管を通し下行大動脈に固定した.肺動 脈弁輪径5.7mm,弁口径lmmに対しバルーソ径4mm

と7mmのTyshakカテーテル(Hopkington)を段階 的に用いPTPVを施行した. PTPV後,右室/左室圧 比は1.7から1.0に減少した,また動脈管開存下での肺

(3)

平成6年8月1日 309−(79)

表1 初回PTPV前後の血行動態の変化

Before balloon   dilatation

After balloon  dilatation

LV pressure(mmHg)

RV pressure(mmHg)

RV/LV pressure ration

67/OEDP=13 115/12EDP=14

     1.7

95/⑪EDP=11 96/3EDP=11

    1.0

LV=left ventricle, RV=right ventricle, EDP=end−

diastolic pressure

動脈弁狭窄の圧較差は36mmHgとなった(表1).肺動 脈弁狭窄の解除は,右室造影上不十分であったが,低 体温と徐脈をきたし患児の全身状態が悪化したため,

これ以上の継続は危険と判断し中止した.中止後,同

部位にcatecholamine等のルートとして中心静脈

ルートを4日間留置した.左右心臓カテーテル検査お よびPTPVのあわせた所要時間は4時間40分であっ た.終r後,ヘパリンの中和は行っていない.

 初回PTPv終了後, Lipo・PGE1は中止可能となり,

心エコー検査にて動脈管の閉鎖と順行性の肺血流を確 認できた.また,PTPV終了後に左下肢の静脈うっ血 を認め左大腿静脈閉塞が疑われたがヘパリン等は投与 せず,また血栓溶解剤や抗凝固剤等の投与もしていな い.初回PTPV後10日目に,大腿静脈開存の有無を調 べるため,RI venographyを施行したが,左大腿静脈 の閉塞と右大腿静脈の開存を認めた(図2A, B).

 その後,心エコー検査上,右室流出路狭窄を認めβ プロッカーを内服していたが肺動脈狭窄の改善傾向が 認められず,右室圧は低Fしなかった,生後3ヵ月時 に再度PTPVを試みたが,両側腎静脈分岐より下部の

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図3 初回PTPV後の下大静脈造影.両側腎静脈分岐  部(白矢)より末梢に閉塞による側副血行路をみと

 める.

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下大静脈閉塞を認めたため心臓カテーテル検査を中止 した(図3).心臓カテーテル検査後に追加したRI venographyでも,下大静脈の閉塞と発達した側副血 管を認めた(図2C).経過中,下大静脈閉塞を示唆する 臨床症状および所見を認めていなかった.

 その後,Dopplerエコー上,肺動脈弁狭窄が進行し

(PTPV直後3.5m/sec,2ヵ月後4.7m/sec,5ヵ月後 7。6m/sec),改善していた三尖弁逆流が再び増強して

きた.さらに,肝腫大の進行や哺乳力低下等の右心不

響鞭欝

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図4 経左内頸静脈アプローチによるPTPV.

 め,同 waist の消失を確認した.

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       が       咋㌔ 影        臨        」パ

\心

直径12mmのバルーンに waist を認

i

(4)

全症状を認めた.そのため,生後6ヵ月時に経内頸静 脈アブP一チにより再度PTPVを試みた(図4).所 要時間の短縮のため通常の心臓カテーテル検査を省略 し,PTPVのみ行った.当初,右内頸静脈よりのアプ ローチを予定していたが穿刺できないため,左内頸静 脈よりのアブP一チとなった.左内頸静脈に6Fのシー

ス(長さ5cm)を挿入し,シースの先端は上大静脈と無 名静脈の合流部付近に達した.肺動脈弁口は2mmで,

ガイド・ワイヤーの肺動脈弁口の通過は6F先穴Ber・

manカテーテルを用い, small J (O.035inch, Cook)

を右肺動脈に固定した.肺動脈弁輪径7.5mmに対しバ ルーン径10mm,12mmのTyshakカテーテルを用い,

それぞれ2回ずつinflateし, waist の消失を認めた,

PTPV直後の収縮期右室圧は140mmHgから40 mmHgに低下し,肺動脈弁狭窄の圧較差も122mmHg

から26mmHgに減少し(図5,表2),肺動脈弁逆流は

表2 経内頚静脈アブP一チによるPTPV前後の血  行動態の変化

Before balloon   dilatation

After balloon  dilatation

RV pressure(mmHg)

Transvalvular   gradiellt(mmHg)

140/−4EDP=17

      122

40/3EDP=7

    26

RV=right ventricle

極軽度認められた.左内頸静脈をアプローチ部位とし たことによる気胸や血胸等の合併症は認めず,PTPV の所要時間は2時間であった.なお,アプローチとし て使用した左内頸静脈のその後の開存は確認していな

い.

      考  案

 カテーテル・インターベンションにともなう合併症 は,新生児期に施行される重症大動脈弁狭窄や重症肺

元 ㌻ 醜

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図5 経内頸静脈アプローチによるPTPV前後の右室造影. PTPV施行前は三尖弁  逆流が強く,肺動脈弁の可動性は非常に悪いIA, B), PTPV後,肺動脈弁の可動  性が良くなり,肺動脈への順行性の血流も増加した(C,D).

(5)

平成6年8月1日

動脈弁狭窄に多い7)8).今後,新生児に対してもカテー テル・イソターベンシ・ンが施行される機会が増加す ると考えられその合併症に対する対策が重要となる.

 われわれの症例は,初回PTPV施行に際し大腿静脈 の温存のため5Fのシースを使用し,さらにヘパリンも 投与されたが術後に大腿静脈や腸骨静脈のみならず両 側腎静脈分岐部より末梢の下大静脈の閉塞をきたし た.その原因として,短期間ではあったが初回PTPV 後に留置した中心静脈ルートと肺動脈弁狭窄の解除が 不十分であったため残存した三尖弁逆流による高い中 心静脈圧のため下大静脈がうっ滞しやすくなったこと が考えられた.カテーテル・イソターベンション施行 後の血管損傷は,新生児・乳児においてより合併しや すく細心の注意が必要である4)5).

 今回,下大静脈閉塞のため大腿静脈からのアブPt 一 チができない患児に対し,経内頸静脈アプローチによ り,再度PTPVを施行することができた.新生児期の 重症大動脈弁狭窄に内頸動脈をもちいてカテーテル・

インターベンシ・ソを施行することは既に報告されて おり,まだ症例が少ないものの重症の合併症はきたし ていない9).経内頸静脈アプローチによるPTPVの報 告例も少なく,従来の大腿静脈をアプローチとする方 法と比較し利点,欠点を評価することは困難である.

今回のわれわれの左内頸静脈を穿刺した症例において は,血管損傷に注意をはらい,長さの短い5Fのシース を使用することにより気胸や血胸等の合併症をきたさ なかった.また,内頸静脈を用いたアプローチは大腿 静脈よりのアプローチに比べ,ガイド・ワイヤーの肺 動脈弁狭窄への挿入は容易で,比較的短い所要時間で 満足できる効果がえられた.内頸静脈を用いたアプ ローチは小児においても比較的安全に施行でき,両側 大腿静脈を使用できない症例のカテーテル・インター ベンシ・ンにおいてはアプローチ部位の一つとなりう

ると思われる10).

 新生児期,乳児期に施行されたカテーテル・インター ベンショソの長期予後については,依然不明であ る3)4).狭窄を解除後の再狭窄や残存狭窄の進行の可能 性が考えられる新生児期の重症大動脈弁狭窄や重症肺 動脈弁狭窄に対し,カテーテル・インターベンシ・ン 施行後の血管開存の重要性は増加するものと考えられ る.そのため新生児・乳児期のカテーテル・インター ベンションでは,より細いシャフトのバルーン・カテー テルを使用するなどの工夫が必要である.また,カテー テル・インターベンション後には,アプローチ部位の

311−(81)

血管損傷に充分注意し,強い静脈うっ血症状等を認め る場合,術後の再出血の危険もあるが血栓溶解療法が 必要になる事もあり,アプローチ部位の術後の注意深 い観察が重要と思われた.

本稿の要旨は第5回日本Pediatric Interventional Car diology研究会(1994年1月,倉敷)で発表した.

      文  献

 1)0 Connor BK, Beekman RH, Lindauer A, Roc・

  chini A:Intermediate−term outcome after   pulmonary balloon valvuloplasty:Comparison   with a matched surgical control group. J Am   Coll Cardiol 1992;20:169−173

 2)Masura J, Burch M, Deanfield JE, Sullivan ID:

  Five−year follow−up after balloon pulmonary   valvuloplasty. J Am Coll Cardiol 1993;21:132    −136

 3)Zeevi B, Keane JF, Fellows KE, Lock JE:

   Balloon dilation of critical pulmonary stenosis   in the first week of life. J Am Coll Cardio11988;

   11:821−824

 4)Ladusans EJ, Qureshi SA, Parsons JM, Arab S,

  Baker EJ, Tynan M:Balloon dilatation of   critical stenosis of the pulmonary valve in   neonates. Br Heart J l990;63:362−367  5)浜岡建城,坂田耕一,大持 寛,神谷康隆,福持   裕,尾内善四郎:新生児期および乳児期早期の重   症肺動脈弁狭窄に対するballoon valvuloplasty    の効果と問題点.日児誌 1991;95:886−893  6)Hanley FL, Sade RM, Freedom RM, Black−

  stone EH, Kirklin JW, the Congenital Heart   Surgeons Society:Outcomes in critically ill   neonates with pulmonary stenosis and intact   ventricular septum:Amultiinstitutional study.

  JAm Coll Cardiol 1993;22:183−192  7)Rocchini AP, Beekman RH, Shachar GB, Ben−

  son L, Schwartz D, Kan JS: Balloon aortic   valvuloplasty:Results of the valvuloplasty and   angioplasty of congenital anomalies registry.

  Am J Cardiol 1990;65:784−789

 8)Stanger P, Cassidy SC, Girod DA, Kan JS,

  Lababidi Z, Shapiro SR:Balloon pulmonary   valvuloplasty:Results of the valvuloplasty and   angioplasty of congenital anomalies registry.

  Am J Cardiol 1990;65:775−783

 9)Fischer DR, Ettedgui JA, Park SC, Siewers RD,

  Del Nido PJ:Carotid artery approach for   balloon dilation of aortic valve stenosis in the

  neonate:Apreliminary report. J Am Coll   Cardiol 1990;15:1633−1636

 10)先崎秀明,磯田貴義,菱谷 隆,石沢 瞭,小池一   行:肺動脈balloon拡大術における内頚静脈アプ    ローチの経験.日小循誌 1993;9:351

(6)

Balloon Dilatation Via Internal Jugular Vein of Critical Pulmonary Stenosis in        Infant with Inferior Vena Cava Obstruction

      Shinichi Tsubata, Fukiko Ichida, Yuji Hamamichi, Ikuo Hashimoto, Toshio Okada,

       Arata Murakami*, Shigeyuki Echigo**, Koj i Kimura***and Naofumi Kitano****

Department of Pediatrics and First Department*of Surgery, Toyama Medical and Pharmaceutical University        Department of Pediatrics**and Radiology***, National Cardiovascular Center

      Department of Pediatrics, Toyama Municipa田ospital****

   We experienced further percutaneous transvenous pulmonary valvuloplasty via internal jugular vein for six−month・old infant with critical pulmonary stenosis, because of inferior vena cava obstruction after initial balloon valvuloplasty at the 25th day of life. In this maneuver, a guide wire was easy to cross the pulmonary valve and well positioned in the right pulmonary artery. The diameter of the used balloons were 10 mm and 12 mm, which to pulmonary valve annulus ratio were 1.3and 1.6, respectively. Immediately after dilatation, right ventricular systolic pressure decreased from 140 mmHg to 40 mmHg and transvalvular pressure gradient decreased from 122 mmHg to 26 mmHg. No complication of balloon dilatation via internal j ugular vein occurred.

   The long−term outcome after balloon dilatation for critical pulmonary stenosis in neonate and infancy still remains unknown. Careful maneuver is recommended to reduce venous occlusion at puncture site after balloon dilatation in neonatal case, in which re・stenosis may occur frequently.

Catheter intervention via internal jugular vein may be performed safely and satisfactory even in neonates and infants with critical pulmonary stenosis.

参照

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