• 検索結果がありません。

 片山 博視1) 里見 元義2) 中沢  誠   中西 敏雄  門間 和夫

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア " 片山 博視1) 里見 元義2) 中沢  誠   中西 敏雄  門間 和夫"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本小児循環器学会雑誌 11巻4号 511〜517頁(1995年)

Jatene術後の肺動脈狭窄

(平成6年11月22日受付)

(平成7年5月8日受理)

   東京女子医科大学日本心臓血圧研究所小児科

 片山 博視1) 里見 元義2) 中沢  誠   中西 敏雄  門間 和夫

1硯 大阪医科大学小児科,2硯 長野県立こども病院循環器科 key words:完全大血管転換症, Jatene手術,肺動脈狭窄,ドプラ心エコー

      要  旨

 完全大血管転換症に対するJatene手術の重要な合併症として肺動脈狭窄があげられる.1982年から

1992年まで当施設で施行されたJatene術後症例198症例につき,437回のドプラ心エコー図を行い,後方 視的に肺動脈狭窄の合併とその進行の程度を経時的に検討した.主肺動脈または左右肺動脈での連続波 またはパルスドプラによる計測での最大流速を,肺動脈拡大術を必要としたPS群,肺動脈拡大術を施行

しなかったnon−PS群の両群間で比較検討した.なお,肺動脈拡大術は狭窄前後の圧較差が20mmHg以

上の症例に施行された.その結果

 (1)PS群はJatene術後早期より肺動脈血流速度がやや加速している症例が多い.

 (2)PS群では, Jatene術後1年以内に肺動脈狭窄病変が急速に進行し,その後狭窄の進行は緩徐にな ることが多い,との傾向が認められた.

 さらに,d臓カテーテル検査施行時とほぼ同時期にドプラ心エコー図検査を行った55例に対し両検査か ら得られた圧較差を比較検討したが,相関係数r=0.90と両者の相関は良好であった.また術後1年を経 過した時点で3m/s以上の加速した肺動脈血流速度が肺動脈拡大術の適応の決定の指標になるかどうか を検討した.PS群42例中,3m/s以上の肺動脈血流速度を認めた症例は35例, non−PS群79例中,3m/s 未満の肺動脈血流速度の症例は71例で,同評価の検出度,特異度はそれぞれ83.3%,91.0%と良好であっ た.以上の結果は,Jatene術後の管理方針として術後1年で肺動脈血流速度を計測し,3m/s以上の血流 速度のある症例では心臓カテーテル検査を行う必要があること,またその時に経皮的バルーン肺動脈拡 大術の適応となることが多いことを示唆している.

         緒  言

 完全大血管転換症(TGA)に対するJatene手術の長 期生存例が増加するに従い,術後の肺動脈狭窄が注目 されるようになってきた1)一一8).近年Paci丘co法9)などの 術後の工夫によりその発生率の低下が認められてはい

るものの,依然肺動脈狭窄は本手術後の重大な合併症 の一つであることに変わりはない.これらの肺動脈狭 窄に対し,近年,経皮的バルーン肺動脈拡大術が施行

別刷請求先:(〒569)大阪府高槻市大学町2−7      大阪医科大学小児科    片山 博視

されるようになってきた1°)11).しかし,Jatene術後,

長期間を経た症例ではバルーン肺動脈拡大術の成功率 が低いことが報告されている8)11)12).また,Jatene術後 の肺動脈狭窄は進行性であるとの報告もある1)3)4}7}8).

Jatene術後の肺動脈狭窄の進行の程度を経時的に把 握することは,心臓カテーテル検査及び経皮的バルー ン肺動脈拡大術施行の時期決定の上で重要である.今 回,当施設のJatene術後患児のドプラ心エコーでの肺 動脈最大血流速度の変化を経時的に検討した.

         対  象

 1982年から1992年まで当施設で施行したJatene術

(2)

 (m/s)

7

6

 り      ハ     ウ 

提目×嘔蟹翻握

1

0 0

1   1

 ●

 ●

■F  ●   、

 ●

 ●  ,

:)  ●

1

●●

  ●・

﹂●●

・ ●

・ ●  ●

●● ●     ●・・

i「) (9  ● ㎡・ ⊃ o  ●

o   ●

 ●●

、8°

・  oぽ

・ 、  ¶

, ●

・   ●

●  8

●・    ・   ●、     ●

0●o

    oo・8 ④(9

転毫。き

,●〔品oo●o   o  oo

  oo8°.3

o ・●oo   o  ●

  oo o

● o

  o9㊤●

うθ 08

o o

o qgoo

θ6)o

瞬}0  0D  o O o   o⊃o  o (

  (o

  o   ℃・ ・駕・

o●     o

惜 Ooo

o

 一

o o o  o o

1 2 3 4    5    6

  術後年数

7  8    9    10

。Non−PS   (年)

●PS        図1 肺動脈血流速度とJatene術後年数の関係

Jatene術後症例198症例に対し,437回にわたり肺動脈最大血流速度が計測された.年 数が経過するに従い,PS群とnon−PS群の肺動脈最大血流速度の差は大きくなってい

る.PS群:Jatene術後症例のうち,何らかの肺動脈拡大術が必要であった症例. non・

PS群:肺動脈拡大術を施行しなかった症例.

後症例のうちドプラ心エコーで肺動脈最大血流速度を 計測し得た198例に対し,437回のドプラ心エコー図検 査を行った(図1).疾患は198例中,TGA I型(心室 中隔欠損を伴わないTGA)が134例, TGA II型(心 室中隔欠損を伴うTGA)が53例,(10例に大動脈縮窄 症を合併),両大血管右室起始症またはTaussig−Bing 奇形が7例,TGA III型(肺動脈弁狭窄を伴うTGA)

が4例であった.一期的Jatene手術は97例で,54例が 新生児Jatene手術であった.このうちAubert法が2 例,Pacifico法が3例であった.二期的Jatene手術(肺 動脈絞拒術+Blalock−Taussig shunt後のJatene手 術)は101例(Aubert法1例, Pacifico法1例)に施行 された(表1).これらのJatene手術症例に対し,心 臓カテーテル検査にて20mrnHg以上の圧較差があり,

血管造影にて有意な狭窄を認めたものに肺動脈拡大術 が施行された.198例中,バルーンカテーテルまたは開 胸術にて肺動脈拡大術を施行したものは45例であっ た.(開胸術のみの症例が6例,バルーンカテーテルの みの症例が36例,開胸術およびバルーンカテーテルを 施行した症例が3例であった.)一期的Jatene手術後 の肺動脈狭窄は34例(新生児Jatene手術は14例,その うちAubert法が1例),二期的Jatene手術後は11例 であった.肺動脈拡大術を必要とした45例をPS群と し,肺動脈拡大術を施行しなかった153例をnon・PS群

とした.

      方  法

 ドプラ心エコー図はアロカ社製SSD870,東芝社製 SSH160Aを用いた.肺動脈弁を含む右室流出路長軸 断面を用いて,サンプルポイントを主肺動脈または左 右肺動脈に置いて,連続波またはパルスドプラにて計 測し,そのうちの最大流速をその症例の最大血流速度

とした.

 (1)術後3カ月未満,1年未満,1〜2年,2〜3 年,3〜5年,5年以上の各時期での最大流速を両群

間で比較検討した.両群間の有意差の検定には

student s t−testを用いた.

 (2)PS群のうち経時的に肺動脈血流速度を計測し 得た19例に対して,その流速が3m/sを超えた時期を 検討した.

 (3)術後1年を経過した時点で,ドプラ心エコー図 検査で計測上3m/s以上の肺動脈血流速度を認めた症 例がそれぞれの群でどれほどあるのかを検討した.対 象は術後1年以上経過して計測した121例で複数回計 測した症例は術後1年に最も近い計測を対象とした.

 (4)心臓カテーテル検査施行時とほぼ同時期にドプ ラ心エコー図検査を行った55例に対し,カテーテル検 査での右室流出路肺動脈間の圧較差とドプラ心エ

コー図から推定した圧較差を比較検討した.

(3)

平成7年7月1日

表1 対象

 一期的Jatene−−F−一一一一一一一一一一=≡一≡一一 一

 (新生児Jatene)

 37−P−一一一一一一一

 (33)

TGA(1)

(n=111) 二期的Jatene 69

Pacifico 4

Aubert 1

 一期的Jatene−一一一一一一一一一一一一一一一 ■ 一一■

 (新生児Jatene)

 16−一㊨・合一A−一一一

  (3)

Non−PS群

(n=153) TGA(II)

(n=27)

二期的Jatene 10 Aubert 1 期的Jatene 1 TGA(II)+CoA

  (n=7)

二期的Jatene 6 期的Jatene 5 DORV, T・B

 (n=7)

二期的Jatene 2 TGA(III)

 (n=1) 期的Jatene 1

新生児Jatene 12 TGA(1)

(n=22) 二期的Jatene 9

Aubert 1

(n=45)PS群 TGA(II)

(n=17) 期的Jatene 17

期的Jatene 1 TGA(II)+CoA

  (n=3)

二期的Jatene 2 TGA(III)

 (n=3) 期的Jatene 3

Non−PS群:肺動脈拡大術を実施しなかったグループ. PS 群:肺動脈拡大術を実施したグループ.

TGA(1):完全大血管転換症1型. TGA(II):完全大血 管転換症2型.TGA(II)+CoA:完全大血管転換症2型兼 大動脈縮窄症.DORV:両大血管右室起始症. T−B:Tausig−

Bing奇形. TGA(III):完全大血管転換症3型

       結  果

 (1)Jatene術後3カ月未満の時期にnon−PS群の 最大流速は,1.78±0.73m/s(平均値±1標準偏差)で あったのに対し,PS群の最大流速は,2.40±0.89m/s と有意に高値を示した(p=0.0002).以下1年未満,

1〜2年,2〜3年,3〜5年,5年以上の各時期の

PS群, non・PS群の最大流速は,それぞれ3.99±0.84 m/svs1.89±0.75m/s,3.45±1.20m/svs2.08±0.73 m/s,3.53±0.94m/svs2.21±0.73m/s,4.25±1.00 m/svs 1.88±0.60m/s,および4.19±0.94m/s vs 2.27±0.61m/sといずれの時期もPS群が有意に高値

を示した(いずれもp=0.0001)(図2).

 (2)経時的計測を行った19例中1年未満に3m/sを

513−(31)

 (m/s)

6.0

  5.0

魍4・o 1く3.o

田隆

繍2・o   LO

層田駕\∈弓幽

 0

    0・3m  4−12M  1−2y  2・3y  3−5y   5y<

       術後年数     ・、p.D.OOO I        **:p=0.0002

図2 Jatene術後の各時期の肺動脈最大血流速度の 比較

PS(+):PS群, PS(一):Non−PS群.いずれの時 期にもPS群はnon−PS群より肺動脈最大血流速度は 有意に高値を示した.またPS群の肺動脈最大血流速 度は術後1年までは急速に増大し,その後徐々に速く なっている.

100

80

60

40

20

(%)

O

O 1 2

術後年数

3 4 5

(年)

 図3 肺動脈最大血流速度が3m/sを超えた時期 PS群のうち経時的に肺動脈血流速度が計測された19 例につき検討した.19例中13例(68%)がJatene術後 1年以内に,また16例(84%)がJatene術後2年以内 に3m/s以上となった.

超えた症例は13例(68%)であった.術後1〜2年の 時期に3m/sを超えたものは3例(16%),2〜3年,

3〜5年はそれぞれ1例(5%)および2例(11%)

であった(図3,4).

 (3)術後1年を経過した時点でPS群が42例中,3 m/s以上の肺動脈血流速度を認めた症例は35例,non−

PS群79例中,3m/s未満の肺動脈血流速度の症例は71 例で,同評価の検出度,特異度はそれぞれ83.3%,

(4)

      ヨ      ウロ

ぴ増裾昌彪苗識

(m/s)

0 1 2      3      4

  循後●数

5

図4 19症例の肺動脈最大血流速度の経時的変化

(mmH9)

140

120

100

 808 5  60

40

20

6降

 0 0      20     40     60     80     100    120    140        PG      (mmHg)

図5 右室流出路 肺動脈間の心臓カテーテル検査時  とドプラ心エコー法による推定圧較差の比較  PG:心臓カテーテル検査にて計測した右室流出路   肺動脈間の圧較差Est.PG:ドプラ心エコー法に  よる推定圧較差.ドプラ心エコー法による推定圧較  差は若干過大評価する傾向にあったが,相関係数は  r=0.90と良好な相関が得られた.なおPG=20  mmHgのラインは経皮的バルーン肺動脈拡大術の  適応の圧較差を,Est. PG=36mmHgのラインは3  m/sの肺動脈血流速度の推定圧較差を示している.

y=0.87x+12・O

r=α90 O

o 8

0 o

O

Φo o

O

o o

o o o

u o

oo

91.0%と良好であった(表2).

 (4)心臓カテーテル時の圧較差Xに対するドプラ 心エコーによる推定圧較差Yの相関は,回帰直線Y=

0.87X+12.0とドプラによる推定圧較差は若干高く評 価される傾向にあったが,相関係数はr=0.90と非常 に良好であった(図5).

      考  察

 近年,完全大血管転換症に対するJatene手術の長期

表2 術後1年以上経過した症例の肺動脈血流速度と  肺動脈狭窄の関係

肺動脈血流速度

  く3m/s 肺動脈血流速度

 ≧3m/s 合計

Non−PS群 71 8 79

PS群 7 35 42

合計 78 43 121

PS群42例中,3m/s以上の肺動脈血流速度を示した症例は 35例であった.一方NOn・PS群の79例中,3m/s未満の肺動 脈血流速度を示した症例は71例であり,この評価の感受性,

特異性はそれぞれ83.3%,9].0%であった

手術成績は著しく向上してきている2)一一6)13)〜16).それに

伴い遠隔期の術後合併症の問題が注目されるように なってきた.Jatene術後の合併症の一つに肺動脈狭窄 がある.肺動脈狭窄はJatene術後症例の7〜28%に合 併するとされている1){8).当初,Jatene術後の肺動脈狭 窄に対して,経皮的バルーン肺動脈拡大術は有効でな いとの報告1°)もあったが,近年,経皮的バルーン肺動脈 拡大術によって解除されたJatene術後の肺動脈狭窄 症例も増加している.Nakanishiら1 )はJatene術後 3.5年未満であれば,経皮的バルーン肺動脈拡大術の成 効率は高かったと報告している.また桃井12)は,術後長 期間経過した症例では肺動脈の伸縮率が低下してお

り,血管周囲の線維化の進行が経皮的バルーン肺動脈 拡大術の成功率の低下の原因であると報告した.肺動 脈狭窄の原因は,Lecompte法で肺動脈を大動脈の前 方へ持ってくることにより,肺動脈が前後方向へ過剰 に進展されること,肺動脈が後方の大動脈に圧迫され ること,肺動脈形成において使用された異種心膜が成 長に伴って発育しないことなどが考えられ,肺動脈狭 窄は進行性であると報告されている )3)4}7)8).従って Jatene術後の肺動脈狭窄の程度を経時的に把握する

ことは経皮的バルーン肺動脈拡大術の適応および時期 決定の上で重要である.

 今回の我々の検討の結果を要約すると,次のとおり であった.(1)PS群はJatene術後早期より肺動脈血 流速度がやや加速している症例が多い.(2)PS群で はJatene術後1年以内に肺動脈狭窄病変が急速に進 行し,その後狭窄の進行は緩徐になることが多い.津 田ら7)は肺動脈狭窄はJatene術後2カ月頃に認めら れ,その後徐々に進行すると報告している.また瀬口 ら8)も心臓カテーテル検査によるデータから肺動脈狭 窄はJatene術後1年以内に既に出現しており,その後 進行すると報告している.今回我々の結果はこれらの

(5)

平成7年7月1日

報告を経時的な,より多数例での観察によって確認し

た.

 では経皮的バルーン肺動脈拡大術の適応の決定の為 の心臓カテーテル検査はいつ頃行えばよいであろう か? その時期は非侵襲的に予測できるであろうか?

今回の結果では経時的に計測し得た19例のPS群の 68%は術後1年未満に最大流速3m/sを超えていた.

また術後1年を経過した時点でドプラ心エコーでの3 m/s以上の肺動脈血流速度が肺動脈拡大術の適応の 決定の指標になるかどうかを検討した結果,この時点 で3m/s以上の肺動脈血流速度を認めた症例は, PS群 で42例中35例,non・PS群79例中8例で,同評価の検出 度,特異度はそれぞれ83.3%,91.0%と良好であった.

この方法は心臓カテーテル検査,経皮的バルーン肺動 脈拡大術の適応および時期の決定に有用であると思わ れた(表2).

 Changら17)はドプラ心エコーでのJatene術後の肺 動脈狭窄の推定は心臓カテーテル検査の結果と良好な 相関を示したと報告している.今回の我々の結果にお いても,ドプラによる推定圧較差は若干過大評価する 傾向にあったが,相関係数はr=0.90と両者の相関は 良好であった.しかし肺動脈弁上部狭窄の一部は管状 狭窄であり,このような形態の狭窄はドプラ心エコー では圧較差を過大評価する可能性がある.一方,Jatene 術後の肺動脈は胸壁の直下にあり,肺動脈を明確に描 出できない症例もある.さらに左右肺動脈の末梢狭窄 において肺動脈の走行と超音波のビームの方向が一致 しない症例も認められる.これらの症例では圧較差を 過少評価する可能性がある.このように個々の症例で

はドプラ心エコーでのJatene術後の肺動脈狭窄の推 定には様々な要因が影響しており,肺動脈狭窄の重症 度評価はBモード心エコーでの心室中隔の形態等を 含めた総合的な判定が必要である.

 また経皮的バルーン肺動脈拡大術の適応自体も一定 ではない.Zeeviら1°)は右室圧が大動脈圧の60%以上 ある症例または右心不全をきたした症例を経皮的バ ルーン肺動脈拡大術の適応としている.Nakanishi ら11)は20mmHg以上の圧較差がある場合や血管造影 にて形態的に狭窄のあるものにも積極的に行ってい る.近年,術後長期間経過した症例では経皮的バルー ン肺動脈拡大術の成功率が低いことがわかってき た8)1 ).そのため,最近は比較的軽度の肺動脈狭窄に対 しても経皮的バルーン肺動脈拡大術を早めに施行する 傾向にある.ドプラ心エコーによる肺動脈血流速度測

515−(33)

定はそのスクリーニングに役立つといえる.

 今回の検討では,PS群の肺動脈血流速度は術後早 期より加速しているものが多く,肺動脈狭窄のハイリ スク群の予測は可能であると考えられた.瀬口ら8)は 聴診所見と心電図所見によって肺動脈狭窄はある程度 予測可能であったと報告している.これらの所見は簡 便な検査のみで得ることができ,外来でのスクリーニ ングとして適している.聴診,心電図で異常を示した 症例には直ちに,そうでない症例は術後1年頃に肺動 脈血流速度を計測することによって,心臓カテーテル 検査の時期を決定することも可能と思われる.Jatene 術後の肺動脈狭窄症例では,乳幼児期より頻回に手術 や心臓カテーテルを受けなければならず,大腿静脈が 閉塞している症例にもしばしば遭遇する18)19).今後,長 期生存例が増加してくるに従って,このような症例は

ますます増加することが予想される.従って,心臓カ テーテル検査を適切な症例に適切な時期に行うことは 極めて重要である.

      結  語

 (1)PS群では術後早期から肺動脈血流速度が加速 している症例が多く,肺動脈狭窄のハイリスク群の予 測は可能であると考えられた.

 (2)肺動脈狭窄はJatene術後1年までは急速に進 行し,その後徐々に進行するものが多かった.

 (3)術後1年で肺動脈血流速度を計測し,3m/s以 上の血流速度のある症例では心臓カテーテル検査を行 い,経皮的バルーン肺動脈拡大術の適応の有無を決定 することが望ましいと思われた.

 本稿の要旨は第29回日本小児循環器学会総会(1993年7 月,横浜)で報告した.

      文  献

 1)Yacoub MH, Bernhard A, Radley−Smith R,

   Lange P, Sievers H, Heintzen P: Su−

   pravalvular pulmonary stenosis after anatomic    correction of transposition of the great    arteries:Causes and prevention. Circulation    1982;66(Suppl I):1−193−1−197

 2)Norwood WI, Dobell AR, Freed MD, Kirklin    JW, Blackstone EH:Intermediate results of    the arterial switch repair. A 20−institution    study. J Thorac Cardiovasc Surg l988;96:854    −863

 3)Wernovsky G, Hougen TJ, Walsh EP, Sholler    GF, Colan SD, Sanders SP, Parness IA, Keane J,

   Mayer JE, Jonas RA, Castaneda AD, Lang P:

   Midterm results after the arterial svgritch opera一

(6)

   tion for transposition of the great arteries with

   intact ventricular septum:Clinical,

   hemodynamic, echocardiographic, and electr(.)−

   physiologic data. Circulation 1988;77:ユ333−

   1344

4)Yamaguchi M, Hosokawa Y, Imai Y, Kuros.

   awa H, Yasui H, Yagihara T, Okamoto F,

   Wakaki N:Ear]y and midterln results of the    arterial switch operation for transposition of    the great arteries. J Thorac Cardiovasc Surg    1990;100:261  269

5)Losay J, Planche C, Gerardin B, Lancour−Gayet    F,Bruniaux J, Kachaner J:Midterm surgical    results of arterial switch operation for trans−

   position of the great arteries with intact    ventricular septum. Circulation 1990;82(Suppl    IV):IV−146−IV・150

6)Krian A, Kramer HH, Quaegebeur J, Oster−

   meyer J, Korbmacher B, Godehardt E, Bircks    W:The arterial switch−operation :Early and    midterm(6 years)results with particular refer−

   ence to technica]problems. Thorac Cardiovasc    Surgeon 1991;39(SupPl):160−165

7)津田悦子,小野安生,新垣義夫,越後茂之,福島英    樹,高橋長裕,神谷哲郎,八木原俊克:大血管転位    に対するJatene手術前後の心挙動:とくに術後    にみられる肺動脈弁状狭窄について.JCardiol    l991;21:141  150

8)瀬口正史,中沢 誠,中西敏雄,門間和夫:完全大    血管転換症のJatene手術後の肺動脈狭窄.日小児    会誌 1994;98:27−32

9)Pacifico AD, Stewart RW, Bargeron LM Jr二    Repair of transposition of the great arteries    with ventricular septal defect by an arteriaI    switch operation. Circulation 1983;68:II−49−

   II−55

10)Zeevi B, Keane JF, Perry SB, Lock JE: Bal−

   loon dilation of postoperative right ventricular    oufflow obstructions. J Am Coll Cardiol 1989;

   14:401−408

11)

12)

13)

14)

15)

16)

17)

18)

19)

Nakanishi T, Matsumoto Y, Seguchi M, Nak−

azawa M, Imai Y, Momma K:Balloon angio−

plasty for postoperative pu]monary artery

stenosis in transposition of the great arteries. J Am Coll Cardiol 1993;22:859−866

桃井伸緒:動脈スイッチ手術後の肺動脈狭窄に対 する経皮的バルーン肺動脈形成術の効果一伸縮率 との関連について一.日小循誌 1993;9:451−

458

Castaneda AR, Trusler GA, Paul MH, Black−

stone EH, Kirklin JW:The early results of treatment of simple transposition in the cuttrent era. J Thorac Cardiovasc Surg 1988;

95:14−28

Planche C, Bruniaux J, Lacour−Gayet F, Ka−

chaner J, Binet Jp, Sidi D, Villain E:Switch operation for transposition of the great arteries in neonates. A study of 120 patients. J Thorac Cardiovasc Surg 1988;96:354 363

Quaegebeur JM, Rohmer J, Ottenkamp J, Buis T,Kirklin JW, Blackstone EH, Brom AG:

The arterial switch operation:An eight・year experience. J Thorac Cardiovasc Surg 1986;92:

361 384

Backer CL, Ilbawi MN, Ohtake S, DeLeon SY,

Muster AJ, Paul MH, Benson DW Jr, Idriss FS:

Transposition of the great arteries:Acompari−

son of results of the Mustard procedure versus the arterial switch. Ann Thorac Surg 1989;48:

10−14

Chang AC, Vetter JM, Gill SE, Franklin WH,

Murphy JD, Chin AJ:Accuracy of prospec−

tive two−dimenional/Doppler echocardiography in the assessment of reparative surgery. J Am Coll Cardiol 1990;16:903−912

森 善樹,門間和夫,中沢 誠,松本康俊,富松宏 文,中西敏男:完全大血管転換症の経動脈心臓カ テーテル法.日小循誌 1992;8:271277 富松宏文,中沢 誠,門間和夫:新生児期重症心疾 患の診断と治療.小児科 1992;33:519−529

(7)

平成7年7月1日 517 (35)

Pulmonary Stenosis after the Arterial Switch Operation for       Transposition of the Great Arteries

Hiroshi Katayama, Gengi Satomi, Makoto Nakazawa, Toshio Nakanishi and Kazuo Momma

      Department of Pediatric Cardiology, The Heart Institute of Japan,

       Tokyo Women s Medical College

   Pulmonary stenosis(PS)is one of the important complications after the arterial switch operation(ASO)for transposition of the great arteries. Balloon angioplasty has been recently attempted for PS after ASO. However, the time course of development of PS is still unclear. The goal of this study is to reveal the time course of the development of PS after ASO non−invasively and to determine the timing of the cardiac catheter and balloon angioplasty.

   Four hundred and thirty seven Doppler echocardiographic examinations were performed to measure the maximum velocity in the pulmonary arteries in 198 patients who undergone ASO between 1982 and 1992. Forty five patients with pressure gradient more than 20 mmHg under−

went pulmonary angioplasty(PS group)and the intervention was not indicated in 153 patients

(non−PS group).

   The maximum velocity in the pulmonary arteries in the PS group was higher than that in the non−PS group.(2.40±0.89 m/s(mean±1SD)vs 1.78±0.73 m/s within 3 months,3.99±0.84 m/svs 1.89±0.75 m/s in 3−12 months,3.45±1.20 m/s vs 2.08±0.73 m/s in 1−2 years,

3.53±O.94m/svs2.21±0.73m/sin2 3years,4.25±1.00m/svs l.88±0.60m/sin3−5

years, and 4.19±0.94 m/s vs 2.27±0.61 m/s over 5 years after ASO).

   Doppler estimates were highly correlated with catheterization−derived measurements of pressure gradient between the right ventricular outflow tract and the pulmonary arteries(r=

0.90).In the PS group, the maximum velocity in the pulmonary arteries was already greater than 3m/s at the time of l year after ASO in 350f 42 cases. In the non−PS group, the maximum velocity was less than 3 m/s in 710f 75 cases in the same period. The results indicate that the maximum velocity more than 3 m/s at the time of l year after ASO is a good indicator for balloon pulmonary angioplasty.(Sensitivity and specificity of this indicator were 83.3%and gl.0%, respectively).

   In conclusion,(1)PS progresses rapidly within l year after ASO and thereafter deteriorates gradually.(2)Pulmonary flow was accelerated in early period after ASO in most of the PS group,

therefore a high risk group for PS will be detectable.(3)Doppler echocardiography should be performed at the period of l year after ASO. The maximum velocity more than 3 m/s in the pulmonary arteries will be a good indicator for the balloon pulmonary angioplasty.

参照

関連したドキュメント

口頭発表の審査会において、安田慶秀教授より対象とする血管

のあるところである.肺動脈弁下狭窄と弁上(主肺動脈) 狭窄はカテーテル治療の適応とならない.小児期以後で

さて, Shimizu 論文は, WS に最も頻度の高い大動脈弁上部狭窄や肺動脈狭窄は認めず,下行大動脈の狭窄(低

 1)の有益性からは,肺静脈を同定することが求めら

 小児の肺動脈弁狭窄における経皮的バルーン肺動脈

(PVO)の進行と吻合部狭窄が最も重要である. PVO

群であった(表5).1例はIc型の三尖弁閉鎖で姑息手

 肺動脈弁上狭窄についてLangeらは,16例中1例の