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有限世界での経営学の役割

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(1)

有限世界での経営学の役割

1)

‑資源を"もつ

''

̀ ̀ っ くる' ' ̀ ̀ っかう' ' ことの意味再考 ‑

海老津 栄 一

要 旨

自由競争が許 され る社会では、それが資本主義であれ、共産主義で あれ、資源 を必要以上に使 って、 ときに無駄 に使 って競争優位 にたつ ことを使命 とす るところがある。 そ してで きれば "一人勝 ち" を続 け たい、 とい う考 えが頭の どこかによぎる。確かに競争が新たな活力や 経済力を生み出す ことはあるだろう。 しか しこのような独 りよが りな 発想 を世界中の ヒ ト達や企業が一様 にもった ら、地球 は どうなるであ ろうか。先進国のみな らず途上国 も含 めて、資源の過剰消費や浪費 に は、 目にあまるものがある。本稿ではこの ような流れにサオをさす こ とを主た る使命 とす る。

経営の原点 を探 るために、

2

本 のサオ を使 う。 1本 は、経営行為 の 原点 を "もつ、つ くる、つか う"にお く。 もう1本 は経営主体 を "私 人、公人、共人" にお く。 この二軸 を分析枠組み として使 い、有限資 源 との取組みを有機的、体系的、全体的に展開す る。取組みを支 える 柱 は、必ず しも明示的ではないけれ ども中庸、相補、合生の

3

点 にお かれ る。結論部分で表面 に浮上す るよう、心がけている。

キー ワー ド :中庸、相補、合生

l本稿の発想 は 『日本経営教育学会』第63回全国研究発表大会の統一論題で2011618 に報告 した内容に基づいている。

59

(2)

国際経営 フォーラムNo.22

1. はじめに

1 8

世紀の後半イギ リスで始 まったのは、それ までの手作 りによる少量生産か ら機械 による大量生産‑の ̀̀革命的"一大変化であった。その結果 は欧州、米 国、東南アジアな ど、やや大 げさに言 えば世界中の国民の仕事への取組みや、

家族意識、生活習慣、価値 のおきどころ、な どにまで大 きな社会構造の変化 を 生み出 した。背景には家内的手工業か ら近代的大型 自動工業へのシフ トがあ り、

合理化、効率化、能率化 な どの言葉で代表 され る大量生産 の基盤づ くりを可能 に した。企業が社会の中核 に位置づ けられ、近代資本主義経済が確立 した。 と きに企業社会 とい う表現 も使われ る

。21

世紀 に入って も、 この先端技術 をベー スにした近代化社会の仕組みは、依然 として世界の主流 を占めてい るといえよ

う。

しか しこの大 きな流れの中で忘却の彼方 におかれていた問題が徐々に表面化 してきたの も

、2 0

世紀後半に入ってか らの ことである。大 きな くくりでは、資 源問題である。希少や処女資源の枯渇化現象、適切 な消費量 をはるかに超 えた 大量生産や販売システムの確立、必要以上 に購入する消費や浪費行動、モ ノを 大切 にしない使い捨て文化の浸透、ある部分捨て るために製造、輸送、保管、

販売、購入す る "愚かな''生 きものの行動、な どはいつか致命的な問題 を人類 に投げかけることになるか もしれない。

本稿では、加工過程 に投入 され る原材料やエネルギー、製品 として市場 に算 出され る製品や商品は当然の ことなが ら、サービスや表象、技術、情報 な どの ような、間接的に加工過程 を支援 し促進す る要素 も資源 として とらえることに す る。 その うえで、資源の保有や所有形態、資源の利用や使用、活用形態を経 営学の視点か ら見直す ことを とお して、ある種の行動指針づ くりを目的に して みたい。

論 を進めるに当たって分析視点にしたのは、 1つはいずれか一方の論理のみ に片寄 るのではな く双方の立場 を考慮することによってよ り大 きな視点か ら見 直す中庸思想である また この中庸思想では、いずれかを正、他 を誤 とす る二 分法で論理的に切 り分 けてい くのではな く、全体 システムのなかでそれぞれの 機能 にふ さわ しい役割 を動態的に担 う。 もう 1つは異な りを相互 に認 め合い、

(3)

相互に補完 し合 うことにより新 しい全体 を作 り直す相補思想である。

世界中を揺 るが している福島原発の問題 もある意味、近代社会 に固有の問題 であ りかつ従来か らある共通の問題で もある。資源 を誰が "もつ''か、誰が

"っ くるか"、誰が ̀̀っか う''か、 とい う究極の課題 に帰着す る2)。禅 の世界 ではものごとの本質 を探 るには、一度動 きを止めて静かに考 えることが必要で ある、 とい う。そしてそれが正 しい道であるとする3)。 これには、酒落がある。

すなわち正 ‑ 一 十 止 (一度止める) となる。

企業 による資源私物化行動や環境破壊行動そしてわが ままな消費者 による資 源放置行動や資源浪費行動などは、現代社会がかかえる病理現象の 1つ とみて よいであろう。いわゆる産業社会問題 は、経営学の範噂で議論 され るべ きテー マの 1つになってきている。本報告で一連の資源活用 を とりあげることにした 大 きな理由の 1つはここにある。

2.

資源概念 とその とらえかた

2.1 環境に対 して閉 じた社会、そ して開いた社会

鎖国時代のわが国は環境 に対 して閉 じている閉鎖国家であ り、保護貿易を国 策 として とっている国 も同様 に閉鎖国家である。外部資源に対 しては貴欲 に取 り込み、内部資源の外‑の流出は厳 しく取 り締 まる。独 りよが りな論理である。

高度成長期 までのわが国の企業間連結 は、取引関係が硬直的、固定的な結びつ き中心であ り、企業独 自の臨機応変な対応 は少な くとも、あま り存在 しなかっ た。閉鎖的、囲い込み

( e nc l os ur e)

中心の行動が 目立つ。閉鎖社会 は自己防衛 中心であ り、死なない程度に生命 を保持するのには適 している。 しか し外部 と 多接点をもち積極果敢 に提携や連結な どを繰 り返 してい く前向きの行動は著 し

く制限される。

2) ̀̀有''には、保有、私有、共有、所有な どさまざまな意味を含 む。 ここでは、包括概念 として ̀̀もブ 'を用 いる。 また..つ くる''について も作 る、造 る、創 るの3つの表意をl の "つ くる"で包括す る。 さらに'用"について も使用、私用、公用、活用のようなさまざ まな "用"がある。"有''と同様、 ここでは ̀̀用"の包括概念 として "つか う"で代弁 させ ることにしよう。

3)WEDGE,June2011,49ページ.

61

(4)

国際経営 フォーラムNo.22

これに対 して戦国大名 による楽市楽座や秀吉、家康時代の直轄領である堺の 自由都市、海外では古代 ギリシアの代表的都市アテネ、古代 ローマ帝国、など は外部 との接触が比較的自由であ り、物資のみな らず情報 も自由に交流 した。

環境 に対 して開いていること

( di s c l os ur e)

が最大の特徴である。 このような開 放社会 は環境対応力があ り外部資源 との接点 も柔軟であった。言い換 えると選 択肢が固定化 していない、 という特徴がある。環境摩擦 を含む危険度 は閉鎖社 会 に比べて高 くなるけれ ども、活力あふれ る文化形成の寄与率 も高 くなる。

Bada r acco

(バ ダラッコ) は、前者の閉鎖型都市 を要塞型

( c i t ade l )

組織、

後者の開放型都市を都市国家型

( c i t ys t a t e)

組織 と名づけた4)。閉鎖型社会や 組織では、内部の資源 を他 に頼 らずに自分で保有す る必要がある。つ ま り"自 前‖主義が行動前提 になる。

閉鎖型組織では手持ち資源の範囲内での戦略行動が中心にな り、その範囲を 超 えることができに くくなる。 また個々の組織や社会がそれぞれ独 自に資源を 保有すると、地域内や地域間、国内、国家間、大陸間などで僻轍す るとかな り

の重複やムダが生 じて くる。地球資源が無尽蔵 に存在することを前提 にすれば、

利己的企業や国家行動で も、問題 は生 じないか もしれない。 しか し有限資源の もとでは現実的ではない。

特定問題 を大 き くし影響範囲を広げる閉鎖性の拡大化現象は、資源取込みを もっぱら自己都合で展開 し、規模の拡大 を図 る組織や国にみ られ る5)。一般的 な表現を用いれば、地球のモノや皆のモノを熊手でかき集め自分のモノにす る 利己的、 自我的思想や行動は、 コモンズの悲劇 を防排 させ る6)0

1 9 9 6

年に出版 されたワケナゲル

( Wac ke mage

l) らの 『ェコロジか レ・フツ

4)Badaracco,J.L.,Jr.(1991),TheKnowledgeLl'nkIHow Fl'zmsCompetethzough StTategl'cAlll'ances,HarvardI3usinessSchoolPress.(バグラッコ、J.L.,Jr.中村

元一、黒田 哲彦訳 (1991),知識の連鎖‑企業成長のための戦略同盟』ダイヤモン ド社.)

5)ジ ョージ、S.、M.ウルフ(2002)、『グローバ リゼーシ ョンー賛成/反対』作品社、13,14ペー ジ.(George,S.&M.Wolf(2000),Pouz・&Contze:LaMondl'all'sat1'onLl'beTale,白ditions Grasset良Fasquelle.)

ステイ‑ガ一、M.B.、横井 公人、他訳(2010)、『新版 グローバ リゼーシ ョン』岩波書 店 、 56‑899ペ ー ジ .(Steger,M.B.(2009,2nd.ed),Globall'zatl'on.A VeIy Shoz't lhtTOductl'on,oxfordUaiv.Press.)

6)ostrom,E.(1990),Goveming the Commons:TheEvolutl'on oflhstl'lutl'onsfor Collectl'veAct1'on,CambridgeUniversityPress.

(5)

トプリン ト』 は、経済 と環境 との関係 に関心 をもつ世界 中の人々 に衝撃 的な話 題 を提供 した7)。 この概念 は 「ある特定の生活様式 を永続 的に支 えてい くため に必要 な土地面積 を定量化 す ることによって、人類が物質的な面で 自然界 に依 存 し続 けなければな らない存在であることを知 らせ る基礎 データの ことであ る8)。 日本人一人当た りの資源消費のエ コロジカル ・フッ トプリン トは、東京 ドーム とほぼ同 じ

4 . 7

ヘ クタールで あ り、環境収容力 を公平 に割 り当てた とき の

2 . 3

倍 に達 す る。世界 中の人々が 日本人 と同 じ消費水準 を保 つためには、地 球

2 . 3

個分が必要 にな る、 とい う考 え方であ る9)0

合法的強奪 ともいえるこれ らの行動 は個人、社会、組織、国家 な ど、地球存 続 と等 しくかかわってい る先進国を中心 に展開 されてい る。関係者 は相互 に戒 め る方法 を構築 してい くことが強 く求め られてい る。今 こそ、地球上で生 きて い る生命体 すべてが、 それぞれの持 ち場 を意識 し、今西錦司のい う "棲 みわ け

( ha bi t a ts e g r e g a t i on) '

'を意図的 に、具体 的 に展 開す るこ とが生命 圏の共通 基盤 を担 う生 きもの として必要 になってい るので はないだ ろ うか10)0

個々の組織がある程度 の しなやか さや大 らか さをもつためには、 自分 の強み を明 らか に し、 その強み同士 を出 し合 うことが肝心 となろう。強みが何 もない 組織 は殻 に閉 じこもって じっ としてい るかあ るいは吸収 されて しまうか、の方 法が残 されてい るか も しれない。 しか し "生命体" として何が しかの "強み"

があれば、 その強みを相互 に分かち合 うことによって、新 たな価値 を生み、恵 みを生み出す関係 を形成 で きる。

砂漠で夜 中にじっ と逆立 ちを して朝方の露 を背 中に受 け、流れて くる一滴 を なめる昆虫がい る。人間 にはで きない芸当である。 それ に着 目したあ る日本人 がアフリカの住民に住居 の外壁 に斜 めに板 をお き、露 を受 ける皿 を地べたにお くことを勧 めた。 そ して朝 を迎 える と皿のなか に水がた まっていた。 この事例

7)ヮケナゲル、M.

、W.

リース、和田 喜彦監訳 ・解説、池田 真理訳(2006)、『ェコロジカル ・ フットプリントー地球環境持続のための実践プランニング ・ツール』合同出版、第2刷.

(Wackernagel,M.,&W.Rees(1996),OuI‑EcoJogfcalFootpn'nt:ReducingHuman ImpactontheEaIlh,New Society Publishers.)

8)ヮケナゲル、M.、他、前掲書、38ページ.

9)ヮケナゲル、M.、他、前掲書、和田書彦解説、275ページ.

川)今西 錦司(1994)、『生物社会の論理』平凡社、初版第1刷、89191ページ.

63

(6)

国際経営 フォーラムNo.22

で は虫 に何 もお礼 をす ることので きない人間が、虫から学ぶ ことによって十分 とはいえないまでもわずかの水 を手に入れることができる。 この日本人はわが国の 空気清浄機販売で トップシェアをとったかつてのベンチャー企業経営者である。

J a me s

(ジェームス) によれば、た とえ競争相手で も共存、共生が可能 に なるとい う。 ビジネスの世界 を生態系 として とらえると、多様性一創造性一共 生関係が共通 にみ られ、お互いに生か し合 う機会が得 られ る11)0

イ ノベーシ ョンのルー ツについて も興味のあ る考察が あ る。

Che s br o ug h

(チェスプロウ) によればイ ノベーシ ョンは秘密主義の研究室 とい うよ りはむ しろ、つかみ損ねていた例外事項や埋 もれている知財、常識的な判断で見逃 し ていたアイディアな どのように分散的なきっかけによって生成 され る、 とい う。

つ ま りイノベーシ ョンはこだわ りを超 えたオープンな雰囲気の中で も生 まれ る ことを強調 している12)0

これ ら一連の事例の共通項 は、個々の生命体が もつ個性 と生命体同士の協働 性、 そ してそれ ら生命体 同士の連結や関係機会 を可能 にす る開放性である、 と

いえるか もしれない

1 3 ) 。

2.2 資源について

戦後のわが国を支 えてきた経済至上主義、 自由競争原理、資本主義経済のよ うな標語 は

、2 0

世紀後半か ら

2 1

世紀 に入 り陳腐化 の程度が加速化 しつつあるよ

ll)James,G.(1996),Busl'nessWisdom oFtheElectTOnl'cEll'le,Random House.

(ジェームス、G.仁平 和夫訳(1997)、『生か し合 う企業vs.殺 し合 う企業』 日経BP社、初版 1刷.)

12) Chesbrough,H.,W.Vanhaverbeke,an d J.West(2006),Open lhnovat1‑on:

Reseaz'chl'ngaNew Paradl'gm,OxfordUniversityPress,pp.47,2,56,113,173, 187,205,209,217,229‑36,294,297.(チェスプロウ、H.、W.ヴァンハバーベク、∫.ウェ ス ト、PRTM監訳、長尾 高弘訳(2008)、『オープン イノベーシ ョン』英治出版.)

13)Archer,M.S.(1995),Reall'sfSocl'alTheory.・theMozphogenetl'cAppz・oach, CambridgeUniversityPress,pp.294‑344.(アーチャー、M.S.、佐藤 春吉訳 (2007)

実在論的社会理論一形態生成論アプローチ』青木書店,422‑92ページ.)

リブ トン、B.、西尾 香南訳 (2010)、『思考のすごい力‑心はいかにして細胞をコン トロー ルするか』PHP研究所.(Lipton,B.H.(2005),TheBl'ologyofBell'ef・Unleashl'ngthe Powez‑ofConscl'ousness,MatteI‑andMl'TaCles,EliteBooks.)中にある、̀̀賢 くなる ために共同体 をつ くる細胞""限界 はない。 自分で限界があると考 えているだけだ""地球 1つの生命体" といった節見出しは .t自分が認識できる範囲内で環境 と関係性 をもつ人 間行動rlと相似である、 とみてよいであろう。その関係幅は小 さ くもな り大 き くもなる。

(7)

うに思われ る。 その 1つは

、t r i pl ebot t om l i ne( TBL)

である。持続可能性 に 必 要 な

3

つ の柱 として、

economi cal l y vi a bl e

,

s oci al l y r es pons i bl e

,

envi r onment a l l y s ound

をあげて い る。 また

Wi ki pedi a

は、

economi

c,

s oci al ,ecol og i cal

,の

3

要素を

bot t om l i ne

として提示 している14)0

両者の違いは

envi r onme nt al

ecol og i cal

にある

。TBL

の含意は

、economi c

wor k

あるいは

pr of i t

(仕事を とお した付加価値生成) として

、s oc i al

f ol k

あるいは

peopl e

(人間) として、 さらに

e nvi r onme nt al l y

ecol ogi cal

pl ace

あるいは

pl ane t

(空間、場所) として、読替え可能である。 ここでの議 論は経済至上主義か らの脱皮 にあ り、

3

つの要素の違いを明確 にすることでは ない。 む しろ

e nvi r onment al l y

(環境)、

ecol ogi cal

(生態系) は、 共 に

oi cos

つ ま り秩序だった生産、消費活動 とかかわっている15)。 さらに

economy

ecol og y

の接頭辞 は共 に

eco‑ ∽ oi cos

であ り、 自然界 の秩序 を意識 した 有機的統一体 も

eco

一に含 まれている。

三要素は収益性や成長性のみな らず、発展や改善のような どちらか というと 質の向上をも取 り込んだ枠組みの設定が特徴 になっている。特 に資源循環 を軽 視ない し無視 した消費、浪費行動 は社会の長期存続性や持続可能性 を削 ぐもの であ り、生命の生存期間を縮 めることになる。本文

7 0 0

ページを超 える大著 を 著 した

Rai ne y

(ライニー) は、 書名 に もな ってい る

SBD ‑ Sus t ai na bl e Bus i nes sDe vel opme nt

を提唱 している。 そのなかで、環境、人間、社会経 済の健康維持にかかわる共通の要素 として資源をあげている16)0

14)http://ww .novonordisk.co.in/documents/article‑page/document/Sustainability.

asp,2010/10/01.

http://en.wikipedia.org/wiki/Triple‑bottom‑line2010/10/01.

15)Drengson(ドレングソン)の文献で も、ecologyenvironmentは、相似的 に使用 され て い る.Drengson,A.良 Y.Inoue(eds.)(1995),The D eep Ecology MovementI An lhtTOducloTy Anthology,NorthAtlanticBooks. (ドレングソン、A.井上 有

‑共編、井上 有‑監訳(2001)、『ディープ ・エ コロジーー生 き方か ら考 える環境 の思想』

昭和堂、初版第1、2007年初版第4刷.)

16)Rainey,D.L.(2006),Sustal'nableBusl'nessDevelopment.・Inventl'ngtheFutuz'e lhz・oughStTalegy,Innovatl'on,andLeadeTShl'p,Cambridge,p・558・

SBDと同様 の発想 に利益性 と安全性 、 利便性 と共生性、BCP(‑BusinessContinuity Plan)の ような考 え方 もある。関連文献 は次の通 り。稲盛 和夫 「利益 な くして安全 な し

『日経 ビジネス』2011516日号、78‑81ページ/ 環境 ビジネス編集 「行 き過 ぎた利便性 の排除」 『環境 ビジネス』2011年6月号、44‑5ページ/ 日経 トップ リーダー編集 「急がれ る BCP対策 に会社 まるごとレツツノー ト」『日経 トップリーダー』20116月号、63ページ.

65

(8)

国際経営 フォー ラムNo.22

以上の "拡大"TBLか ら導 き出され る人間の ミッシ ョンは、持続可能性 を意識 しなが ら資源 をいかに有効 につか うか、に帰着す る。そ してその資源利用 ・活 用 について、ワイツゼ ッカー らはファクター

4

の概念のもとに ̀̀豊かさを

2

倍、

資源消費 を

1 / 2

に" を提唱 している17)。 まさに資源分析 に対す るエールである。

ヒ トを資源 とする考え方は人的資源 として経営学の 1つの領域 を形成 している。

そ して この人的資源は、組織の知識ベースあるいは資源ベース としての潜在性 をもち、現実の知識の相互関連のみな らず、将来の展開 までをも含む潜在可能 性 として、創発性や創造性 を育む有力な候補 として期待 され る8)

資源の 「資」は、貨幣を意味す る "負" に、"吹"が音符 としてつ く。"吹"

ほ とりつ くろわない、ゆった りとした人の象形である。 この ことか ら‖資‑tは無 理 に他か ら調達す ることを しないで、手持ちの もとか らある財貨の ことを意味 す る。 「源」 は水 の流れ出 るもとの ことである。資源 は したがって、 もともと そこにある財貨や物資の ことを意味す る。英語の

r e s our c e

、r e ‑ + ‑ s our c e

(

‑s ou T d

z・e

,s u z ge T e

湧 きあが る、立ち上が る)に語源 をもつ。 日英 ともに、

資源 その ものには "そこに自ら存在"す る、 とい う内容が合意 されている。人 的資源を除き、資源 には本来意志や意思がない。資源 を利用、活用す るヒ トの 論理で、薬 にも毒 にもなる。

資源はつか う主体 によって、意味が まった く異なる。 またつか う意思がある かないかによって、そこに "在 るが まま"なのか "在 るが ままでない"のかの 選択肢が表面化す る。馬に とって念仏 は意味がまった くない、 また猫 に とって 小判 はまった く意味がない、が通常の判断である。 しか し馬 によっては人間以 上 に念仏の意味が解 るか もしれない し、夏 目軟石の猫であれば小判の意味が解

るか もしれない。

逆 に狭隆な経験や片寄 った判断にもとづ く資源使用 は、資源の付加価値 を増 幅す るどころか減衰す ることにもな りかねない。純粋無垢 に "まっさら"な判

17)ヮイツゼ ッカー、E.U.、A.B.ロビンス、L.ロビンス、佐々木建訳(1998)『ファクター 4‑豊か さを2倍 に、資源消費を半分 に』省エネルギーセ ンター.(Weizsacker,E.U.Yon, etal.(1995),FAKTORVIER,ErnestvonweizsackerandRockyMountainInstitute.)

18)Bierly,P.E. R.W.Kolodinsky(2007),̀̀StrategicLogic:TowardaWisdom‑

BasedApproach to StrateglCManagement,"in Kessler,E.H.良 ∫.R.Bailey (eds.),IJandbook ofOzganl'zal10nalandManagen'alWl'sdom,SAGEPublishers, p.63.

(9)

断が公平で正当な判断を可能 にする。意識 しないこと

( uncons ci ous )

つ まり無 意識状態が理論の進化や統合化 に貢献する、 とい う議論 もある

1 9 ) 0

意識 しない とい うことは枠 をもたないことを意味 し、広が る可能性 ももち合 わせていることになる。逆説的な言い方をすれば意識 しない ことを意識するこ

との意味を考 えてみることも話題提供 になるか もしれない。

一つの積極的展開を想定すれば、 自己資源 と他資源 との間で何 らかのつなが りをもち、関係性を模索することにより、ネ ッ トワーキング化、提携化、連携 化 などを進めることができる。ある意味、資源の共有化、共用化 を とお して、

従来型ではない新 しいビジネス創出を可能 にする20)0

資源 にかんする組織戦略論では、

Pf e f f er良Sal anci k

(フェフア,サ ランシッ ク)の資源依存論

( r es our cede pende ncet heoⅣ)

が議論 にな る21)。彼 らの 論調は、 どの資源をどの程度操作できるかによって組織パワーの大 きさが決まっ て くる、 とい うところにある。 しか もその資源が貴重で戦略策定上重要であれ ばあるほ ど、 その資源の流れをどの程度 コン トロールできるかが問題 になる。

最近の話題でいえば、希土

( r ar eear t h)

が好例である。ハイテク機器の製造 に とって欠かす ことので きない材料いや ̀̀財料"は、定常状態で供給 されて初 め て組織戦略が機能す る。

しか しこの希少性 は希少であるがゆえに危険性 も伴 う。中国が漁船の船長の 強制送還 を迫 った政治の駆 け引きに希土をつかったのは記憶 に新 しい。 まさに もろ刃の刃 (やいば)である。わが国のエネルギー源である石油 も同様の論理 が当てはまる。

手元にどの資源が どれだけあるか、またその資源の需要はどの程度なのかは、

まさに意識や認識、価値の世界のことが らである22)。そしてその際重要なのは、

資源獲得 に対する私利私欲の認識ではな く、資源の公共性や生態系のなかでの 位置づけ認識であろう。

r9)Miner,J.B.(2011),Ozganl'zal1'onalBehav1'01・6:LnlegTated Theozy Development and theRoleoFthe Unconscl'ous,M.E.Sharpe.

20)Gulati,R.(2007),ManagingNelwoz*Resources:Alll'ances,AITl'll'alJ'onsandOlheT Relatl'OnalAssets,OxfordPress.

21)pfeffer,I.& G.R.Salan cik(1978),TheExtem alControlofOzganl'zatl'ons.・A Resolute D ependencePeTSPeCtl've,Harper良 Row.

ZZ)campbell,J.,良R.tenBos(eds.)(2007),Ph110sophyandOTgan1'zatl'on,Routledge.

67

(10)

国際経営 フォーラムNo.22

資源調達 には所定のコス トがかか る。そのコス トは通常、組織の支払い能力 の制約 された範囲内で支払われ る。所定の範囲を超 えた機関や組織か ら、た と えば従前の取引のない国の企業か ら危険を冒 してまで取引を拡大す ると、機会 の増大 に伴 って コス ト増大の危険 も増大す る23)。 この考 えは機会性 と冒険性や 危険性 とは、相似形の関係 にあることを意味す る。過度 に機会性 を追求す ると 投資額 も高額 にな り危険性 も増幅す る。逆 に小 さな投資では小 さな機会 しか入 手できない。

データ解析結果 を中心に した戦略投資 は判断材料 にはなるものの、決断や英 断を支援す る材料 にはな らない。資源のすべてを自前で準備す るとその コス ト は膨大 にな り、大 きな決断はで きな くなる。つ ま り自前の資源 に引きず られ安 定指向にな り視野 は狭 くなる。逆 にすべて他人の資源 を利用 して経営機会 を構 築す ると、̀̀ただ乗 り"的に投資 コス トは低 くなるけれ ども、安定度 は極端 に 低 くなる 言い換 えれば "‑か八か"的思考 と行動が主 になる。バーチャルカ ンパニーにみ られ るように、組織 の長期安定性や持続可能性 はあま り期待でき ない。サーファーに とって、いつ も無料で波 に乗 る "フリー ライダー''は、た だ乗 りの域 を脱 しきれない。適切 に波 を起 こす技 をもつ ことが求め られ る。つ

ま りある程度の "苦労感"や "苦心感''"念入 り感''は必要であろう。

3.

経営学固有の特質

3.1 経営の意味

経営の 「経」には、糸を上か ら降 ろしなが ら編 んでい く行為が表意 されてい る 筋道 を とおす。経度や経理、経路な どにその意味が反映 されてい る。一方

「営」 は "ツ''冠ではな く、火がふたつの "火"冠がルーツである。 また火冠 の下のワ冠 のなかにある口の形 を した象形文字 は、部屋 を意味す る。 "口"と"

口"とをわたす"ノ"は廊下 を表わす。つ ま り松明をたいて家や家族 を守 ること が宮の発生 (はっしょう)である。経営 とはしたがって、生活維持 を意識 した

23)Williamson,0.E.(1985),771eEconoml'cInstl'tutl'onsofCapl'tall'sm.・Fl'zms,Mazkels, andRelationalContTaCtl'ng,TheFreePress.

(11)

資源利用 を伴 う生産活動を とお して、秩序ある行動を展開す ることが語源か ら くる本来の意味になる。そしてその秩序ある行動では、 自然 との共生 を前提 と す ることが求め られ る。

英語の

ma nageme nt

の語源をみると、

ma nag e

‑((manegg1'aTe,Lmanus, 手、手を くだす、何 とかす る)である。馬の手綱 さばき、調教が もとの意味で ある

。Ic anma nage

it.には、"何 とかやってみよう" とい う響 きがある。

やや広域的に とらえれば、 日英 ともに "遣 り繰 り"表現が似合 う。経営にはヒ トの認識力や伝播力の違いによって、その範囲は狭 くも広 くもなることが分か る。つま り現実の記述 と方向性や指導性 を示す規範 とが同居 している。経営に かかわるヒ ト達の意識や指向、能力、価値、認識の違い、な どによってその成 果 も大 き く異なることを示 している。本稿では以上の考察 をもとに して、経営

を以下のように定義づ けてお こう24)0 経営 とは、

限 られた地球諸資源の持 ちかたや作 りかた、使 いかたに携 わ るヒ トたち が それ らを機能的、有機 的、体系的に関係づ け、問題処理や解決、発見、

創造 な どに当た りなが ら、長期 にわたって存続す ることを可能 にす る協 働作業、

のこと。

近代経営では

Be r l e‑Me a ns

(バー リ‑ ミ‑ンズ)の主張 に代表 され る所有 と 経営の分離が伝統的経営 との分岐点になっている25)。確かにそれぞれの専門領 域に専念す ることによって得意技が発揮でき、経営の視点か らは有効性や合理 性が発揮で きるであろう。その意味で経営学の近代化 を理論的に推進 した とい う点での評価 はある。 しか し同時に所有 と経営 とが未分離で も成功 している企 業事例 は数多 くあるのは周知の とお りである。 また所有者 と経営者 とがそれぞ

24)海老滞 栄一編著(2007)、『魅力ある経営』学文杜、7ページをもとに、作成.

25)Berle,A.A.良 Means,G,C.(1932),Modem Coz'poTal1'onandPn'valepropel‑ty, Macmillan.(バー リ、A.A.、G.C.ミ‑ンズ、明治大学経済研究会訳(1958)、『近代株式 会社 と私有財産』文雅堂.)

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Pfeffer,J.(1997),New Dl'TeCtl'onsfoI‑OIganl'zal11on Theory.'PTOblems and prospects,OxfordUniversity Press,p.141.

69

(12)

国際経営 フォー ラムNo.22

れ部分最適行動 に専念す ることにより、企業の外側つ ま り社会や環境の側への 配慮が滞 ることも懸念 され る。 ここで もそれぞれ部分的に正 しくて部分的に誤

りがある、 といえよう。

やや乱暴 な考 えを述べれば、現実 と理想 との間には隣の領域 に入 り込む こと によ り相互刺激 を受 ける部分 と、それぞれ固有の役割があ り不可侵の部分 とが あるように思 う。現実 を "である論"、理想 を "すべ き論" に置 き換 えてみ よ う。殺人が存在す ることは現実 には認めざるをえない。 しか し理想ではヒ トを 殺 してはな らない、正義の殺人 はあってはな らない、 となる。経営概念 には、

現実 も理想 も共 に含 まれ る。理想 を無視 した現実 は応用性 に欠 け、現実 を無視 した理想 は説得性 に欠ける。

現実 の複雑で矛盾 に富んだ問題 は、解決不可能なまま推移す ることが多い。

つ ま り多重的、多角的に、ある意味では隣で発生す るで きごとを横 目でみなが らつ ま り未解決のまま、 自分の課題解決に奔走す る共時的な行動が 日常的に起 こっているといえよう。現実 も理想 も多様である、 とい うのが正 しい見方であ るか もしれない。

しか しこれが結論 とい うことにはな らない。なぜな らば ̀̀何で もあ り''を認 めると "何 も認 めない"の と同じにな り、学問や理論研究の進歩発展 につなが らないか らである。理念 を‖あるべ き姿"ととらえると、そこには何 らかの主義、

主張が必要 となる。哲学 と言い換 えて もよいか もしれない。

現実 に存在する、ある現象を見つめた り観察 した りするとき、なぜその対象を 見つめるのか、分析するのかが問われる。 しかもその観察事象 は日常茶飯事に発 生するので、毎回 "何 とな く" とか "面 白そうなので" といったランダムな言動 では、説得力は生 まれない。た とえ日常行動であっても、 ある信念や本質的な 考え方が どうしても必要 となる。 これは理念 にもとづ く理論でも同様である。

理論

( t heor y)

の語源は、L

t he o n' a

,Gr

t he o n' d ‑s pec t acl e,cont empl a t i on

,

cons i de r a t i on,t os e e,be hol d,vi e wi ng

な どがあ り、総括す ると

t he at e r

に帰着す る。つ ま り "眺めること、観 ること、観察す ること、観賞す ること"

の意味になる。正 しく観 るためには、種々の現実か ら共通の因子 を抽出す る必 要がある。多少の誤解 を承知の うえで集約す ると、現実の抽象化、一般化が理 論であるともいえる26)。"である論"の事例 を記述 中心 とすれば、"すべ き論"

(13)

は規範 中心になるとい う見方 も可能である。共に相手を補強する機能を果た し ているともいえよう。

3. 2

もつ、つ くる、つかう対象

経営活動の本質は何かをつかって‑しか もその前提 として誰かが もっている 何かを誰かがつかって一何 をつ くるのか、 しか もそれは誰かが何かをつか うこ とを前提 にして誰かがつ くるのか、であろう。つ まり生産、消費の主体の違い による活動の連鎖がその根底 にある。

整理す ると、資源をもつ主体は私人か他人かあるいは公人かの

3

つに分類可 能である。次に資源をつ くる主体 も、私人、他人、公人の

3

つに分類可能であ る。 さらに資源をつか う主体 も私人、他人、公人の

3

分類が可能である。 この うち私人、他人はもっぱら個人だけで資源をもっていた り、つ くった り、 さら にはつかっていた りす るのか、あるいは共同で もっていた り、つ くった り、つ かった りす るのかに再分類可能である。

そして両者の問にあるのが、共 (とも)に と公 (おおやけ)の

2

つである。

"ともに"は、共同で もち、つ くり、つか う動作を伴 う。具体的には、資源を 共同で仕入れ、生産 し、運搬 し、販売 し、貸 し付 けた りす る。"ともに" には 仲間である契約者 を保護 し、非契約者 との間に一種の差別化 を図ろうとす る意 図がある。共同組合や買い物共通カー ド、 クレジットカー ドな どは、一種の差 別化戦略になる。"ともに" は私人の集合体であ りなが ら相互の利便性 を補完

しあうことを前提 として行動す るので、私人の共人化が進む。

後者の "おおや げ'では資源 をもつのが市役所、県、独立公共機関、国家機 関に代表 され る公人つ ま り非営利団体であることが多い。 ここでサービスを享 受するのは、つま りつか うのは、利用権 をもつ私人である。 ここでは私人の公 人化が進む。

問題 を複雑 にしているのは、"おおやげ'の扱いである。"公共"施設 とい う 言い方があるように、公民館や公園、市営図書館、博物館のような■t公共‑■施設

26)Ackroyd,S,̀̀critical Realism,Organization Theory,Methodology,andthe EmergingScienceofReconfiguration,"in Koslowski,P.(ed.)(2010),Elements

ofaPh110sophy ofManagementand OTganl'zatllon,Springer,pp.47‑77.

71

(14)

国際経営 フォー ラムNo.22

は、おおや け (公) と とも (共)の

2

つの性格 を同時にもつ ことが多い。

ここでは現実 の複雑怪奇な現象を大 きな くくりで、以下の ように整理す るこ とに したい。 その整理の基準は、 まず資源を "もブ 'ことと "つか う''ことと の識別である。ついでその資源 を "もブ 'と "つか う''との間に加工 を とお し て付加価値 をつ けるための ̀̀っ くる"が入 る。 資源軸 を "もつ''̀̀っ くる''

"つか う"の

3

つに設定 してみよう。

次 に資源 をもち、つ くり、つか う主体 の分類が必要 となる。典型的なパ ター ンは自給 自足 にみ られ るようなすべて 自分 あるいは自分たちが担 うパ ターンで ある。その逆 は、 もつ、つ くる、つか う、のすべてを他 に依存す るパ ターンで ある。構想や企画、関係づ けのみを自分たちが担当す る。 アウ トソーシングや バーチ ャルの考 え方 は、 このパ ターンに属す る。"すべて 自分 たち、すべてあ なた任せ''は、前者が閉鎖的で資源浪費型の利己的経営 とい う意味で、 また後 者 は過度 に開放的で現実軽視型、理念追求型の利他的経営 とい う意味で、共 に 問題がある。資源利用 に工夫がみ られず、長期持続性 は、共 に低 くなる。 また 共通 に欠落 しているのは、経営の社会性 ・公共性や共同性である。

主体 を整理す ると、 まず私人の部分があ り、ついで公人の部分がある。 あら ゆる地球資源が有限であるという前提 にたてば、 この

2

つは、資源有効利用の 命題か らみて も、公人の部分で 自助努力す ることが求められている。 さらに重 要なことは、お互いに協力 し合 って、 より "豊かな"あるいはよ り "安心''し た生活が送れるようにできるところか ら ̀̀ともに''を意識することも、前二者 に 劣 らず重要な役割をもつ ことになる。 これを "共人" として位置づけてみよう。

この "共人"機能 は、私人 にも公人 にも必要な機能 になる。つ ま り私人が複 数集 まって共 同作業す るときは多かれ少なかれ ̀̀共 (き ょう)"の部分が必然 的に入 り込んで くる。 また社会性 をもった公の仕事で も、"共 (とも)" に力を 合わせて作業す ることが要求され る。

以上の ことを整理す ると、個々の人間には、分布の多少を無視すれば、

3

つ の属性すなわち私人、公人、共人の部分を兼ね備 えてお り、必要 に応 じて機能 発揮す ることが求め られ よう。

公人や共人 につ いては、先 の

「 2.

1環境 に対 して閉 じた社会、 そ して開い た社会」で述べた 「コモ ンズの悲劇」で も明 らかなように、限 りな く私人 に特

(15)

化 した人間が周囲にいると、公や共の部分 を私物化 して しまうことになる。山 形県長井市で展開されている農作物、家庭 ゴミを主軸 にした循環型社会追求型

「レイ ンボープランでは、契約農家の畑の化学肥料混在程度 を定期的に、オ ンブスマンが調査 している。一人 ぐらい約束をほごにして、た くさん作物を作っ て も問題 はないだろう、 とい う抜 け駆 けを回避す るための方法であ り、 「コモ

ンズの悲劇」防止策の 1つである。

資源分類 と主体分類か ら導 き出されたのが、表 1である。世代の違いか ら今、

"もヅ ことへの興味か ら "つ 1 資源をもつ、つくる、つかう主体の体系化 か う" ことへの興味に、興味シ

フ トがみ られ る27)。 しか もこの

"つか う" ことへの興味シフ ト は、̀̀もつ''ことへの興味シ フ

トにも回 りまわって、変化 を促 す。つま り専 らもつ ことか ら、

関係主体

も つ つくる つかう

私 人 A

共 人 D

公 人 G

B C

E F

H I

共同で もつ ことへの噂好変化が生 まれている28).

さらにアメリカでは

1 9 9 0

年か ら

2 01 0

年代にかけて政府関連のガスや電気施設、

27)Associe,2011.06.21.

28) Botsman,R.and R.Rogers (2010),Whal's Ml'ne l's YouzIS: The Rl'se of CollaboTatl've Consumpt1'on,HarperCollinsPublishers,pp.4114,55‑8,67194,71‑5, 125‑6,129,130,151‑81,185‑97,199‑200,211‑5,223‑5.(ポッツマン、R.、R.ロジャース、

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(16)

国際経営 フォー ラムNo.22

病院、福祉セ ンター、廃棄物処理場な どの経営が民間に委託 されてお り、公共 サービス施設 をもってはいて も サービスを "つ くる" ことか ら離脱 し始 めて いる29)

1

の分類 によれば、従来 よ くみ られたパ ターンは、私人中心の

A‑ B‑ C

や 公人中心の

G‑ H‑ I

であったのが、

A‑ B‑ F

G‑ H‑ F

パ ターンのような、いわば

"共同利用"の動 きが出始めた ことに注 目していきたい。

大河 にならな くて も、せせ らぎ程度の流れにはなるのではないだろうか。そ の流れを支援す る動 きとして、①生命体 として資源枯渇の速度を弱めることへ の何 らかの貢献、②経営戦略上での共同利用 によるコス ト削減効果、③希少資 源を中心 とした価格高騰への共同仕入れ体制 にもとづ く防御対策、④危機管理 や安全管理対策 としての

BMP( Bus i nes sManageme ntPl an)

BCP( Bus i nes s Cont i nui t yPl an)

振興、⑤利他主義 を通 じた経済的利益の相互確保、⑥循環 促進や環境共生を認識することによる自然 との宥和性推進 (環 には一定の区域 を識別す ると同時にその識別 された周辺 を周 るとい う意味がある :

c i r c ui t

,

t ur n a r ound)

、 ⑦公 私 の相互刺激 運動

( publ i c‑ pr i vat e moveme n

t

:P‑ P move ment )

による変質醸成の可能性、⑧顧客 も従業員 も会員制の資源節約型

ミニスーパー 『ピープルズ ・スーパーマーケ ッ ト』、⑨里地里山にみ られ る自

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海老津 栄一 、3月号、6

日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞 日本経済新聞

(2011)、 「営業 占有/占用一共有/共用 の共存」『QLTコミューン』QLT読書 ページ.

震災が問 う情報管理‑急がれ るクラウ ドの活用」201151日.

カーシェア拠点倍増1500ヶ所『日本経済新新聞』20115月13日.

カーシェア『日本経済新新聞』20115月29日.

シェア』品目多彩 に『日本経済新新聞』20116月1日.

三浦 展 (2011)、『これか らの 日本のために 「シェア」の話 を しよう』、NHK出版.

zg)cooke,0.D.(2008),Rethl'nkl'ngMunl'clj)alPTIvat1'zatl'on,Routledge,p.2.

(17)

然 と人 間 との共 生 、 ⑬ 安 寧 性

( we l l ‑ be i ng)

を意 識 した社 会 市 民性

( s oc i al c i t i z ens hi p)

、⑪

I T

を中心 としたクラウ ドコンピューティングの動 き、⑫マン シ ョンでのシェア部分の増強によるコミュニケーションや コミュニティづ くり、

な どがある30)0

3.3 決断力 と協働力

ある新聞の記事によれば 「変化の時代」には、

4

つの潮流が同時に押 し寄せ ているとい う。 1つはマクロ経済における金融危機後の反動 と修正、

2

つ 目は メガ トレン ドとい う長期にわたる変動、3つ 目は技術革新の波、4つ 目は国際 情勢や災害であ り、いずれ も誰で もが認識できる潮流である。 しか し

4

つの う ちの どれがいつ起 こるかは誰にもわか らない。 もしその流れが同時に発生する ことを想定す ると、経営の意思決定者 にとって何ができるであろうか。おそら

くその解 は結果が出て初 めてわか る程度であろう。

いまわれわれに必要なのは、冷静な説得性のある判断ではな く、"エイヤッ"の 決断ではないだろうか。つまり経営には、 ときに撤密性や論理性を超えた決断が 必要になるということである。その決断のタイミングについて少 し考えてみたい。

【ティッピングポイン ト

( t i ppi ngpoi nt )

を伝える決断力】

セーラー服 に白いルースソックスは、今や女子高校生のスタイルの定番 にす らなっている。あのルースソックスは、 日本 を代表す るデザイナーが発想 した ものなのだろうか。原宿の真冬の寒い路上でアイスクリームを並んで買い、車 の中ではな く外で食べ る光景はアイスクリーム屋 さんが考 え出 したのだろうか。

ベル リンの壁を最初 にノミとハ ンマーでたたいたのは、西側のCIAか ら依頼 さ れたプロの工作員だったのだろうか。その答 えは、いずれ も "ノー"である。

30)PRESIDENT,2011,5,16. WEDGE,July,2011.

稲盛和夫 「利益な くして安全 な し」 日経 ビジネス、2011年516日.

環境 ビジネス、2011.6

日経 ビジネス、2011613日.

日経 ビジネス、201174日.

理想 のスーパー」誕生 の秘話 『sOTOKOTO』June2011.

生物多様性 を守 る人‑ 日然 の隣 に自分 を置 こうチ ビコ ト』201012月号、月刊 ソ ト コ ト12月号別冊付録、10‑13ページ.

75

(18)

国際経営 フォーラムNo.22

いまある状態を正 とすれば、そうではない状態 は誤ではな くとも少な くとも 正ではない。十代の女子生徒の妊娠や高校生の喫煙な どは、通常の状態 とは異 なった現象であることは間違いない。世界 中を震摘 させ る鳥インフルエ ンザ も 通常ではない状態で発生 し瞬 く間に蔓延す る。

津波のようなあるいは堤防の決壊 のような現象 は、 どこを起点にして発生す るかは誰 にも分か らない。突然起 こる自然や社会現象 は、論理的に証明す るこ とは難 しい。 しか し変化がある点に達 した ときに、変態 ともい うべ き大 きな変 化が起 こることがさまざまな事例で証明されている。 そのポイン トをティッピ

ングポイ ン トとい う。最初 に公 に したのは、

Gl adwel

l(グラッ ドウエル)だ といわれている3

1 ) 0

ティッピングポイン トの基準は、

5

パーセ ン ト前後であることも証明されて いる。 しか しこの数値の もつ意味は、いつ も

5

パーセ ン トで十分であるとい う ことではな く、いまある状態を変 える力は全体の

5

パーセ ン トあれば可能であ る、 ということを表 している32)0

wes t l ey(

ウエス トリー)らの書のなかに、ジ ョー ジア州ア トランタ郊外の緑 あふれた住宅か ら中心地 にあるス ラム街 に居 を移 し た大学教授の話がでて くる。異常な決断を したのである。最初 は興味深 くみて いるだけであった住人達 はあいさつをす るようにな り、話 をす るようにな り、

応接間で コー ヒーを飲むようになった。それを聞いた大学の同僚たちのなかに、

ス ラム街 に引っ越 しをす る者が現れた。 とい う話である33)。

31)Gladwell,M.(2000),TTlbpl'ngPol'nt:HowLl'ttleTh1ngsCanMakeaBl'gDjhference, Little,Brown.(グラッ ドウエル、M.、高橋 啓訳 (2000)、『ティッピング ・ボイン トーい かにして 「小 さな変化」が 「大 きな変化」を生み出すか』飛鳥新書.)

32) westley,F.,B.Zimmerman ,and M.Q.Patton(2006),Gettl'ng to Maybe:

How the WoIldl'sChanged,VintageCanada,pp.1617.(ウェス トリー

、F.

、B.ツイ マ‑マン、M.Q.バ ッ トン、東出 顕子訳(2008)、 『誰が世界 を変えるのか‑ソーシャルイ

ノベーシ ョンはここか ら始 まる』英治出版.

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関 美和訳 (2010)、『シェア :<共有 >か らビジネスを生み出す新戦略』NHK出版.)

33)westley,F.,B.Zimmerman,andM.Q.Patton(2006),op.°it.pp.15,6.

(19)

現状の変革には、誰がみても明 らかな現状否定的革命お よび少 しずつ変わっ てい く暫時的変化の、大 き く分 けて2つの方法がある。本稿で指向す るのは、

大胆な現状否定ではな く、微妙な変化 を繰 り返 しなが ら従前 とは結果 として大 きな違いが生 まれて くる増分型変化である。

この増分型変化では、気づいた ヒ トが自ら発信 し周囲に知 らせ ることによっ てコミュニケー トを試み る。多発信型の ̀̀っぶや き''で も構わない。気づ きで ヒン トになるのは、

Lave ‑

Wenger(レイヴ‑ウェンガ‑)の周辺か らの参画

( per i pher alpar t i c i pat i on)

である34)。 これはもう一人の 自分 を異なった視点 か らみることによって、現状の見直 しを可能 にす る。

La ve

らは ̀̀バル コニー か ら自分 をみつめ直す" とい う比職を使っている。裏側で もよい し鳥の目や虫 の目で も構わない。 とに角、今 いる中心点 とは異なった視点をもつ ことによっ て、ティッピングポイン トがみつか るであろう。

同書では、単純なあるいは特定化 された専門性ではな く、 さまざまな行為か ら生 まれ る相互作用過程 を重視する。それぞれの作業担当者 は多中心になる。

また彼 らは相互の学習過程 を重視する。そ して学習基盤では、 コー ド化 された 言語や構造の共通性 を提供するのではな く、共同参加できる共通能力を提供す

る。 そのためには、現在 ある規則や制度を離れて、外側 に転がす

( abduc t i on)

試みもときに必要 になる。多少のゆれや遊びは、 ブリコラージュ

( br i col age)

によってある程度正当化 されている。 コースを外れ ること

( di s cour s e

:言説) によって も、 ものの本質がみえて くることがある。

ちなみにブリコラージュには、無秩序な効果のような意味がある。̀̀手元 に あるあ り合わせでや りくりする''ことが合意 されている。 日本語では "みづ く ろう" とい う言い方 もある。 フランス語の

ho T Sdl oe uv T e

S(オー ドブル) に も、"とりあえずメニ ュー"のような響 きがある。有限世界での経営学ではあ る意味器用 さが求められ る。その場で リアルタイムに適合す るとか、智恵を出 し合 うことによって瞬時に対応することがある程度可能になる。

ブリコラージュはあらか じめ準備できていない ところで、何 とかや りくりす

34)Lave,J.,E.Wenger(199I),S1'tual1'onalLeaml'ngILegl'tl'matePeIllbheTalPaI・tl'cl'patl'on, CambridgeUniversityPress.(レイヴ.、E.ウェンガ一、佐伯 肝訳 (1993)、 『状況 に埋 め込 まれた学習 :正統的周辺参加』産業図書.)

77

参照

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