九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
フェノール樹脂接着剤の硬化速度に関する研究
塔村, 真一郎
九州大学農学研究科林産学専攻
https://doi.org/10.11501/3060357
出版情報:Kyushu University, 1991, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第j章 アルカリ/ブェノールモル比と硬化速度
レ ゾールの硬化速度は, 中性条件よりもある程度アル
カリが存在する条件下での方が大きいが, アル カリが多 すぎると小さくなる。 こ の ことはよく知られ ているが,
ア ル カリ量と硬化速度に つい ての定量的関係に つい ては,
まとま っ たデータが発表され ていない。
反応速度に対するアル カリの影響をみるとき, アル カ
リ/フ ェ ノール モル比を尺度とする場合と, pHを尺度と
する場合がある。 研究内容によ っ ても変わ っ てくるが,
一般にはpHと硬化速度との関係を調べたものが多い。 し
かし, p Hを尺度とした研究の結果を実際のフ ェ ノール樹
脂接着剤に適用しようとするときは, 樹脂濃度との関連 に注意する必要がある。 たと えば, トリメチ ロ ール フ ェ
ノールの縮合速度は pH8あたりで極大となるという報告
4 9 )があるが, 実際のフ ェ ノール樹脂接着剤は, p H 8では
沈澱凝固し てしま うし, 極大となるpHはも っ と高いと こ
ろに ある。 これは樹脂濃度の違いによるくい違いである。
前述のトリメチ ロ ールフ ェ ノールの縮合反応実験はo . 4
一 58 -
mol/lとい うかなり低い 濃度で行われたもの であるが . 通
常の フ ェ ノール樹脂接着剤の濃度はは るかに高く, フ ェ
ノールとし ての濃度で3mol/l前後である。
本章では樹脂濃度の影響に左右されない アルカリ/ フ
ェ ノールモル比を尺度とし て硬化速度との関係を調べた。
なおアルカリの種類とし ては, フ ェ ノール樹脂接着剤の
アルカリ触媒とし て最もよく使用される水酸化ナトリウ
ムとした。 したが っ て, 以後アルカリ/ フ ェ ノールモル
比をNaOH/Pモル比と記す こ とにする。
また硬化速度とNaOH/Pモル比との関係を説明するため
にモデル化合物とし て, 2 • 4 . 6 -トリメチ ロ ール フ ェ ノ
ルを用い た実験を 行 っ た。
4 . 1 実験方法
4 . 1 . 1 NaOH/Pモル比およびpH一定で樹脂濃度と硬化
速度との関係を調べるための試料の調製
F/Pモル比2, NaOH/Pモル比o . 3 5で, 6 0 oC, 6 0分間の反
応により調製した メチ ロ ール化 フ ェ ノールを減圧濃縮し
nHu phju
た。 NaOH/Pモル比一定の条件下での実験には これをイオ
ン交換水で希釈し て試料とし た。 pH一定の条件下での実
験に は希釈時に pHメータで pHを10. 2に調製( 2 8 %水酸化
ナトリウムを使用)し た試料を用い た。
4 . 1 . 2 NaOH/Pモル比と硬化速度の関係を
調べるための試料の調製
先ず, NaOH/Pモル比を0.05.F/Pモル比を1 . 5から3ま で
4種類変えて . 6 0 oC . 1 2 0分間の反応でメチ ロ ール化フ ェ ノ
ールを調製し た。 これらのそれぞれから, 一定量( O. 0 5
molの フ ェ ノールを含む) ずつをとり, 10mol/lの水酸化
ナトリウム溶液とイオ ン交換水を所定量加えて, 一定容
積とし た。 最終的な樹脂濃度はフ ェ ノールとし ての濃度
で2mol/lである。
4 . 1 . 3 硬化速度およびゲル化速度の測定
硬化の方法や, ゲル化時間の測定は既述のとおりであ
る。 ゲル部率は, 時間短縮のため以下の手順でアルカリ
- 60 -
抽出液中の フ ェ ノール濃度から算出した。 まず所定時間 硬化させた試料を ア ン プルから取り出し, 乳鉢で粉砕す
る。 4%の水酸化ナトリウム溶液で粉砕物をトール ビーカ ーに流し込み, 全溶液量を約10 0 m 1にする。 24時間 . 3 0 oc
で撹梓抽出を行 っ た後, 全溶液(沈澱物があるときはそ れも一緒に ) を10 0 0 m 1容メ ス フ ラ ス コ に イ オ ン交換水で 流し込む。 全溶液を1000mlに希釈し, よく混ぜた後し ば らく放置する。 上澄みから約50 m 1を取り, これをガラ ス フ ィ ルターでろ過する。 ろ液中の フ ェ ノール濃度を既述
の方法に より測定した。
ゲル化直後の試料(完全に4%水酸化ナトリウム溶液に 溶解する) の フ ェ ノール濃度を基準にし て アルカリ不溶
部率, すなわちゲル部率を算出した。
4 . 1 . 4 Cannizzaro反応に よ っ て生成するギ酸の測定
フ ェ ノール樹脂の F/Pモル比が高く, NaOH/Pモル比が 高いときには, 硬化反応以外に アルカリと遊離のホルム アルデヒ ドに よるCannizzaro反応が起こ る ことが考えら れる。 この反応は次のとおりである。
- 61 -
2HCHO + NaOH 一 一ー > CH30H + HCOONa
Cannizzaro反応がどの程度起 こ っ てい るのかを調べる ため .硬化時間を0分, ゲル化時間の半分, ゲル化時間の 3点とり, これらの試料に つい て酸滴定を行 っ た。
試料 3m 1をガラ スア ン プルから取り出し, メタノール で約10 0 m 1に希釈する。 O.5mol/lの塩酸標準溶液で滴定 し, メチルレ ッ ド で赤変し たと こ ろを終点とする。 硬化 試料の場合は色が見分けに くくpHの飛躍も小さい ため,
pHメータを用い て変曲点を終点とし た。
4 . 1 . 5 2 • 4 • 6 -トリメチ ロ ール フ ェ ノールおよび3 • 5 •
3' • 5' -テト ラ メチ ロ ール -4 • 4 'ージヒ ド ロ キ シ ジ フ ェ ニルメタ ン の合成
モデル化合物の合成はFreeman82)の合成法を改良し て 行 っ た。
2 • 4 • 6 -トリメチ ロ ール フ ェ ノール(TM P)の合成
F/Pモル比 3の溶液に, NaOH/Pモル比1となるように水
- 62 -
酸化ナトリウムを氷冷しながら徐々 に加え, その後2 0 oc
で 3日間反応させる。 この溶液に イ ソプロ パノールを加
えると沈澱を生じる。 この沈澱物をろ別採取し, アセト
ンで洗浄する。 その後, アセトン中に分散させ, 酢酸を
加えて中和する。 生じた酢酸ナトリウムを除去し, アセ
トン溶液を ロ ータリーエパポレ ーターを用い て濃縮する。
濃縮液を冷却し, 放置しておくと結晶が生成する。 これ
を再びアセトンに溶解し, 再結品させる。 再結晶を 2回
繰り返して精製する。 フ ェ ノールからの収率は約 6 0完で
あ っ た。
3.5.3'.5'-テト ラメチ ロ ール - 4 . 4 ' -ジ ヒ ド ロ キシ ジ フ
ェ ニルメタン(TMDPM)の合成
TMPの合成反応 をさらに 2 0 OC で1週間続けると, 淡黄
色の沈澱を生ずる。 ご の沈澱物を採取し, エタノールで
洗浄する。 その後, アセトンに分散させて酢酸で中和し,
酢酸ナトリウムを取り除く。 残 っ たアセト ン溶液を濃縮
し, 生じた結晶を メタノールに溶解する。 この際, 溶液
を活性炭で脱色した。 再びメタノールで再結品を 2回繰
り返す。 フ ェ ノールからの収率は約5%であ っ たが, 反応
時間をも っ と長くすれば, 収率は上がると思われる。
- 63 -
各化合物の分析結果を以下に示す。
2 • 4 • 6 -トリメチ ロ ール フ ェ ノール(TM P) : 融点85 oc
lH-NMR (DMSO-d6) Ò ppm: 4.38 (2H. s. P-CH20H), 4. 54 (4H. s,
O-C!!20H), 7. 09 (2H,s,Ar-H); 13C-NMR(DMSO-d6) Ò ppm:
59. 1 ( 0 -C H 2 0 H) .62 . 9 9 (p - C H 2 0 H) . 124 . 4 8 (C 2 , C 6) . 127 . 6 1 (C3.C5).132.53(C4).150.49(C1); GC-MS:137(100).91 (94).77 (90),107 (69).53 (55) .120 (50).79 (47) .109 (44).
166 (43).66 (42).184 (37).56 (30) .108 (26),165 (25)
3.5.3'.5' -テト ラメチ ロ ール ー4, 4' -ジ ヒ ド ロ キシ ジ フ ェ ニルメタ ン(TMDPM): lH-NMR(DMSO-d6) Ò pp m : 3. 71 (2H.
S, P-C!!2-P). 4. 50 (8H, s. O-C!!20H). 7.00 (4H. s, Ar-H) ;
13C-NMR (DMSO-d6) ò þpm:40. 61 (p-CH2-p), 59.43 (o-CH20H).
126.11 (C2. C6) .127.99 (C3, C5) .132.29 (C4), 149.87 (C1) NMRス ペクトルのケ ミ カルシ フトを文献値3 1・ 35 , 3 6 )と 比較検討し た結果, 両物質ともほぼ純品である こ とを確 認し た。
4 . 1 . 6 酸滴定および遊離ホル ム アルデヒ ドの定量
トリメチ ロ ール フ ェ ノールは縮合し て二つのメチ ロ ー
- 64 -
ル基からメチ レ ン結合を l個生成するとホル ム アルデヒ
ドが l分子遊離し てくる。 このホル ム アルデヒ ドは メチ
ロ ール化することはないので, 遊離のまま存在する。 し
たが っ て, この遊離ホル ム アルデヒ ドを定量すれば, そ
の時点でのメチ レ ン基 の生成量が求められる。
アルカリの高い系の場合は, メチ レ ン結合の生成にと
もない, Cannizzaro反応が起こる可能性がある。 このと
き, 遊離のホル ム アルデヒ ドは消費されるため, ホル ム
アルデヒ ドの定量にはかか つ て こない。 したが っ て,
の分を補正する必要がある。 そこで, 本実験では一つの
試料で二段階の分析を行 っ た。 まずはじめに, 系中のア
ルカリ量を酸滴定に より測定し, その中和した試料 を用
い て 塩酸ヒ ド ロ キシル ア ミ ン 法で遊離のホル ム アルデヒ
ドを測定した。
以下に操作手順を記す。
所定時間ア ン プル中で硬化させた試料 3m 1を, メタ ノ
ールで溶解しながら取り出し , 溶液量を約5 0 m 1とする。
pHメーターを用い てpH6まで lmol/l塩酸で滴定した。 コ
ン ト ロ ールとの差で, Cannizzaro反応に より生じたギ酸
量を求めた。
phd 戸hU
つぎに, こ の試料にlmol/l水酸化ナト リウム溶液10m 1
と1.8mol/l塩酸ヒ ド ロ キシル ア ミ ン溶液 6m 1を加え, 室
温で 1時間放置後lmol/l塩酸で滴定した。 これも コ ント
ロ ールの滴定値との差から遊離ホルム アルデヒ ド量を求
めた。 この二段階定量法に より, 全ホルム アルデヒ ド量
がわかり, これと等価である メチレ ン結合量は次式から
計算できる。
[-CH2-]
4 . 2 結果と考察
[HCHO] + 2 [HCOONa]
4 . 2 . 1 NaOH/Pモル比一定とpH一定試料での硬化速度
の樹脂濃度依存性
NaOH/Pモル比を一定とした場合とpHを一定とした場合
の二つの場合につい て, メチ ロ ール化 フ ェ ノールの硬化
速度の濃度依存性を比較した結果をF i g. 1 1 に示す。
NaOH/Pモル比を一定とした場合にはゲル部率が 50%に
達するに要する時間の逆数は樹脂濃度に比例し, 反応速
- 66 -
〆ー\ 2
,吋
し3<l) ..._, ∞
×
}一 J}\ 。凶 円() 【
4
(mol/l)
「lJnドa
2rtEL
。。
[P]-dependence of the curing-rate Comparison of the
11.
Fig.
under the condition of a constant NaOH/P molar ratio with that under the condition of a constant pH.
(0.35).
ratìo Under a constant NaOH/P molar
Legend: 。:
1200 C.
(10.2).
Curing temperature:
Under a constant pH 2.0.
- 67 - F/P molar ratio:
ム:
Notes:
度が樹脂濃度に関する二次式に従うとい う関係が成立す
る。 これに対してpH一定とした場合はその関係が成立せ
ず, 樹脂濃度の低いと こ ろ ではNaOH/Pモル比を一定にし
た場合に比べて速度は小さくなる。
pHを一定にした場合はNaOH/Pモル比が樹脂濃度によ っ
て変化する。 その結果, 解離した フ ェ ノールと未解離の
フ ェ ノールとの比率が変わ っ てくる。 アルカリ滴定から
求めた解離 フ ェ ノールと未解離 フ ェ ノールの存在比率と
樹脂濃度との関係、 をFig. 12に 示す。
図からわかるように, pH一定の場合 フ ェ ノールの解離
比は樹脂濃度によ っ て大きく変化する。 一方, NaOH/Pモ
ル比一定の場合のそれ は樹脂濃度によ っ てさ ほど変化し
ない。 この フ ェ ノールの解離比は反応速度とも関係があ
ると思われる。 すなわち, フ ェ ノールが解離するとその
フ ェ ノール核上の反応位(メチ ロ ール基や未置換のオル
ト位やパラ位) の反応性が変わるからである。
以上の こととNaOH/Pモル比が樹脂組成とい う観点から
も重要である こと を考え併せ, 以後NaOH/Pモル比を尺度
として, 硬化速度との関係を調べる ことにする。
- 68 -
1.0
0.5
。
。
{由。]\[lS]
3 4
(mol/l) 2
、EEE,d nド& FE'z,、
ionized phenolic ratio of
the molar ln
Changes Fig. 12.
with to un-ionized phenolic nuclei (φ)
nuclei(φ-)
resin concentration.
the
(0.35).
Systems with a constant NaOH/P molar ratio
(10.2).
Systems with a constant pH
- 69
。:
ム:
Legend:
4 . 2 . 2 NaOH/Pモル比と硬化速度 および F/Pモル比との関係
Fig. 13 , 14, および15は, F / Pモル比の異なる樹脂の
NaOH/Pモル比とゲル化, ゲル部率50% , および80先に達す
る速度との関係を表し たものである。 NaOH/Pモル比の影
響はF/Pモル比によ っ て異な っ てい る。
まずFig. 13のゲル化速度の NaOH/Pモル比との関係に
おい て, F / Pモル比が 2. 5や 3のように高い と こ ろ では,
NaOH/Pモル比の増加とともにゲル化速度は増加し , 0 . 3と
o . 5あたりに それぞれゲル化速度の極大点をも っ て . それ 以上では急激に減少する。 一方F/Pモル比が2以下の場合 .
ゲル化速度はNaOH/Pモル比の増加とともに次第に減少す
るような傾向がある。
これをFig. 14およびFi g. 1 5のゲル部生成速度でみた
場合, Fig. 14 (ゲル部率50%に達するのに要する時間の
逆数でみた場合) の方は上述の傾向と ほと ん ど変わらな
い が, Fig. 15 (ゲル部率80%) の方は F/Pモル比の低い
場合にもNaOH/Pモル比の低い と こ ろ で速度の極大点が現
れた。 そし て この極大点はF/Pモル比の 1 . 5から3への増
ー 70 -
F/P 3.0 2.5 2.0 1. 5
2
〈H10ω∞)
凶 +-'
\、、
nCH
×
....-i
。
。 1.0
ratio 0.5
molar NaOH/P
rates Relationships between NaOH/P molar ratios and the
Fig. 13.
of gelation.
1200 C.
Gelation time.
Curing temperature:
ー 71 ta::
Legend:
Note:
F/P
3.0 2.5 2.0 1.5
〈HlU心的〉判凶。
2
、\
円{〕一{
,・4
×
。 。 1.0
ratio 0.5
田olar NaOH/P
Relationships between NaOH/P molar ratios and the Fig. 14.
fractions required for the gel
reciprocals of times 50χ.
reach to
reach 50%.
fractions to required for the gel
1200 C.
Curing temperature:
tóo: Times Legend:
Note:
ー 72 -
F/P 3.0 2.5 2.0 1.5
(Hlouω)
2
。∞パ戸
...
何{)【
×
...
。
。 1.0
ratìo 0.5
回olar NaOH/P
ratios and the Relationships between NaOH/P molar
Fig. 15.
fractions for the gel
required reciprocals of times
reach 80χ.
to
reach 80%.
fractions to for the gel
1200 C.
required Curing temperature:
Times tso:
Legend:
Note:
司l 町、u
加に伴い, 高NaOH/Pモル比の方へ o . 1からo . 5へと シ フ ト した。 o . 5以上の高NaOH/Pモル比側の傾向はゲル化あるい
は5 0完ゲル部率の場合とよく似ている。
以上の結果から, 三つのポイ ン トを挙げる こ とができ る。
まず第一に, ゲル化時間でみた速度と一定のゲル部率 に 達する時間でみた速度の NaOH/Pモル比およびF/Pモル
比依存性の違いについてである。 F/Pモル比が小さく,
NaOH/Pモル比の低い状態で硬化を進めると, 溶解性が低 下し, 流動性が悪くなる。 本研究では流動の停止をゲル 化と見なしているため, 見かけ上ゲル化が速ま っ てい る こ とが考えられる。 したが っ て, ゲル部(三次元架橋し た部分) の生成速度でみた場合の方が .NaOH/PおよびF/P モル比の影響をよりよく反映していると思われる。
第二に, 各F/Pモル比に共通して現れる傾向として,
NaOH/Pモル比 o . 5での速度の急激な減少についてである。
高アルカリ側ではCannizzaro反応の発生により, ホル ム アルデヒ ドが消費されている可能性がある。 こ の こ とに
ついてはHse83)も指摘しているが, 実際に硬化反応の過 程で, どのくらいCannizzaro反応が起こ っ ているのかを
- 74 -
調べてみた。
結果を Table 1に 示す。 これはゲル化時間までに生成 したギ酸量と それから算出したフリーのホル ム アルデヒ
ドの消費量を示したものである。 この表から F/Pモル比 が高い ほど, またNaOH/Pモル比が高い ほどCannizzaro反 応によるフリーのホル ム アルデヒ ドの消費が多い ことが わかる。 第2章でも述べたように, フ リーのホル ム アル デヒ ドはメチ ロ ール化の反応体としてだけではなく, 硬 化を促進させる物質としても硬化反応に関与してい ると 思われる。 したが っ て, ホル ム アルデヒ ドが多く消費さ れる高アルカリの条件下では促進作用が小さくなり, 結 果として低NaOH/Pモル比側に比べ, 硬化速度が小さくな
るとい うことが考えられる。
第三は, 硬化速度とF/Pモル比および NaOH/Pモル比の 関係に つい てである。 ごれには硬化反応の反応機構が深 く関わ っ てい ると考えられる。 現在のとこ ろ この複雑な 関係を総括的に明確にすることはできない が ,F/Pモル比 3 のような特別な条件 (フ ェ ノール核の未置換のオルト 位やパラ位がなく, メチ ロ ール基のみで構成されてい る とみなせること) で話を簡単にした場合に つい ては考察
Fhd ヮ,,
『斗 0'コ
Table 1. Amounts of formic acid formed and formaldehyde consumed at gelation points. (mol/l)
F/P 1.5 2.0 2. 5 3.0
NaOH/P I HCOOH HCHO HCOOH HCHO HCOOH HCHO HCOOH HCHO
O. 1 0.00 O. 00 0.00 0.00 0.02 0.04 O. 05 O. 10
0.2 0.00 0.00 0.04 0.08 O. 05 O. 10 O. 10 0.20
0.4 O. 01 O. 02 O. 11 0.22 0.23 0.46 O. 31 0.62
0.6 O. 01 0.02 O. 13 0.26 0.32 0.64 O. 50 1. 00
0.8 O. 01 O. 02 O. 16 0.32 0.34 0.68 O. 51 1. 02 1.0 0.03 0.06 0.22 0.44 0.40 0.80 O. 55 1. 10 Notes: Reaction temperature: 120. C. Res in concentration: 2mol/1.
する こ とができる。 そ こ で次節では, F / Pモル比3の場合
のモデルとして, 2 • 4 • 6 -トリメチ ロ ール フ ェ ノールの系
をとりあげた。
4 . 2 . 3 トリメチ ロ ール フ ェ ノールの縮合反応速度
これまでは, メチ ロ ール化 フ ェ ノールを用いて, 硬化
速度に影響を及ぼす因子に ついてそれぞれ調べてきたが,
F/Pモル比3の場合のモデルとして2 . 4 . 6 -トリメチ ロ ール
フ ェ ノール ( T M P ) を用いて . 縮合反応速度あるいは反応
機構に ついてさらに詳しい検討を行 っ た。
4 . 2 . 3 . 1 メチ レ ン結合生成速度
TMP 系での遊離ホル ム アルデヒ ド , ギ酸 , および ご の両
者の量から計算されたメチ レ ン結合の濃度の経時変化の
一例をFig. 16に, TMDPM系のものをF i g. 1 7に示す。
このようにして, い ろい ろな反応条件を変えた場合に
ついて, メチ レ ン結合の生成速度を測定し, 速度論的な
解析を行 っ た。
円tg門,t
。
•
0 0
0 0 ・ 0 ・ (盲 ハ匝 門町 (》圃 0・ ・
• 圃 トー
トー
1.5
1.0
(円\目。自)
己O刊村何'HH己UU己OU
@ 0.5ド
A
。
. Â
A A 企企企企ÁÁÂ
t
A且。
。 RV 10 15
。
(m i n) Reaction ti皿e
formic formaldehyde,
Changes of the concentrations of 16.
Fig.
in a TMP system.
acid and methylene bonds
(calculated value).
Methylene bonds 0:
Legend:
Formic acid.
Free formaldehyde. Â:
. :
1100 C.
2mol/l.
Curing temperature:
concentration([TMP]o):
0.4.
NaOH/P molar ratio:
Initial Notes:
- 78 -
1.5
。
1.0
〈日\-o自)
。 園 園
ー
0.5 省
<ïr
ロO一一.H伺」村口ωυ己OU
A A
。
。 15
(min) 10
t i回e 5
Reaction
formic Changes of the concentrations of formaldehyde,
17.
Fig.
a TMDPM system.
1n acid and methylene bonds
(calculated value).
Methylene bonds 0:
Legend:
Formic acid . formaldehyde. .À:
Free . :
0.4.
NaOH/P molar ratio:
1100 C.
Curing temperature:
1mol/l.
[TMDPM]o:
Notes:
ー 79
TMP の濃度を変えたときの メチレ ン結合生成経過を
Fig. 18 に示す。 ゲル化時間はTMPが 2mo1/1. 1.5mo1/1.
1mo1/1でそれぞれ4 3分, 5 7 分, 8 5分であり, メチレ ン結
合は このカーブにしたが っ て増加した。 このデータを用
い て種々 の解析を行 っ た。
まず, メチレ ン結合生成反応の次数を決定するために
フ ェ ノール核あたりの メチレ ン結合量を反応度とし て算
出し .反応時間に対し てプロ ッ トした。 結果 をFi g. 1 9に
示す。
この図でみた場合, 一次反応であれば一定の反応度に
達する 到 達時間は初濃度によらず一定なので, 一本の線
になるはずである。 しかし, 三本の線は一致せず, 一次
反応であるとはいえない。 一 方, 二次反応であれば, 到
達時間は初濃度に反比例するので, 初濃度と一定反応度
に 到 達する時間の積は一定になるのである が, これも一
致しない。 この結果か らは, 一次とも二次とも断定でき
ず, 計算では約1. 5次とな っ た。
また, TMP 濃度に関し て一次(Fig. 20) . および二次
(Fig. 21) のプロ ッ トを行 っ た結果 , どちらの場合も直
線にはならず , アルカリ条件でのTMPの縮合反応は一次式
-80 -
2.0
1_0
(日\日0自)
日)口ODむロUHhZパザUZ
。 。 40 50
(m i n) 30
time 20
Reaction 10
ln the methylene bonds formation of
Time-course of the 18.
Fig.
TMP systems.
1.5mol/l.
[TMP]o:
ム:
2.0mol/l.
[TMP]o:
0:
Legend:
1000 C.
Curing temperature:
1.0mol/l.
0.4.
[TMP]o:
NaOH/P molar ratio:
81 口:
Notes:
1.0
0.5
υ判Hocω乙己 吋ω一{υ
コロ
。 +..l
むロωHhzμω自むこ一日
匂吋
。
OHμ吋'H
'M何円oz
∞【)己02
40 50 30
20 10
。
。
(m i n ) time
Reaction
ratios of the methylene bonds to in the molar
Changes 19.
Fig.
in the TMP systems.
phenolic nuclei with reaction time
1.5mol/l.
[TMP]o:
2.0mol/l. ム:
[TMP]o:
Legend: 。:
1000 C.
Curing temperature:
1. Omol/l.
0.4.
[TMP]o:
NaOH/P molar ratio:
82 口:
Notes:
。
(【\【O日)
ー0.5
[仏Z'F]凶o-
。 10
(min) time
Reaction
for the concentration of a TMP rate plot
First-order 20.
Fig.
system.
1000 C.
Curing temperature:
0.4.
NaOH/P molar ratio:
2mol/l.
[TMP]o:
Notes:
- 83 -
6 5
,..‘、
� 0 目
、、、
�
、.__;
4
3 2
[門ごムト]\日
10
。
。
(min) time
Reaction
for the condensation of a TMP system Rate plot
21.
Fig.
according to a second-order equation expressed ln terms of the concentration of TMP.
1000 C.
Curing temperature:
0.4.
NaOH/P molar ratio:
2mol/l.
[TMP]o:
Notes:
84
に従うとい う Jones49)の実験結果とは異な っ た。 J0 n e s の場合反応条件がTMP初濃度o . 4 m 0 1 / 1 , 4 0 oc であり, 本実
験とは大きく異なるが, もし TMP濃度の影響がない とす
れば反応温度によ っ て, 官能基の反応性が変わ っ てくる ことが考えられる。 すなわち ,TMPのオルト位のメチ ロ ー
ル基と パラ位のメチ ロ ール基の反応性が大きく異なり,
パラの方がかなり速い とすると, こ の反応性の差異の影
響は反応温度が低い ほど大きくなる こ とが考えられる。
つぎにメチ ロ ール基濃度でメチ レ ン生成速度をみた場
合, 速度式は次のように表せる。
dx/dt
kt
k (a-2x) 2
x/a (a-2x)
( 4 - 1 ) ( 4 -2 )
aはメチ ロ ール基初濃度. xはメチ レ ン結合の濃度を表
す。
反応時間tと x/a (a-2x) の関係をFig. 22に示す。
反応度約 50%ま ではメチ ロ ール基の二次式にしたがう
結果とな っ た。 しかし, こ の傾きから算出した二次反応
速度定数は. T M P初濃度2mol/lで5.73xlO-5, 1.5mol/lで
- 85
ノノ∞
/ ノ ノ ノ
ムOノノ 口
0.2
0.1
(円。目\円)
(XNl吋〉吋
><
。
。 40
(皿in) 30
time 20
Reaction 10
Rate plot for the condensation of the TMP systems 22.
Fig.
in terms according to a second-order equation expressed
groups.
of the concentration of methylol
1. 5mol/l.
[TMP]o:
ム:
2.0mol/l.
[TMP]o:
0:
Legend:
1.0mol/l.
[TMP]o:
口:
groups.
concentration of methylol Initial
a:
1000 C.
Concentration of methylene bonds.
Curing temperature:
0.4.
x:
NaOH/P molar ratio:
- 86 Notes:
7.00xl0-5, 1 mol/lで 8 . 9 3 x 1 0 -5と初濃度が低い方が速
度定数が大きくな っ た。 しかも, 反応が進むにつれて二
次式に合わなくなり, 速度定数が増大する傾向がある。
TMPにはオルト位のメチ ロ ール基が2個と, パラ位のメ
チ ロ ール基がl個あるが, その反応性が異なるとすれば,
反応の初期におい て反応速度がメチ ロ ール基に関する二
次式に合うのはおかしい こ とになる。 しかし結果は二次
に合い, 見かけ上は反応性に差がないという こ とにな っ
た。
反応性に関し て は, オルト位と パラ位では差があり,
一般には パラ位の方が高いと されている 10 . 21. 49)
こ の こ とを確かめるため, オルト位に2個, パラ位にl
個のメチ ロ ール基をもっTMPと, 4つ のメチ ロ ール基がす
べてオルト位にある TMDPMを用いて両者を比較した。
前図と同様メチ ロ ール基に関する二次プロ ッ トの結果
をFig. 23に示す。
両者とも直線関係となるが, 明らかに速度には差があ
り, T M Pの方が速度定数にし て約2. 6倍大きい こ とがわか
っ た。 直接的なオルト位, パラ位の反応性比は不明だが,
少なくとも パラ位の反応性の方がオルト位より高い こ と
87 -
0.10
ム
J 〆
dF
dF 4F
ム
0.05
(HO日\円
)
(XNl吋)同
><
。 。 10
(皿in) 5
time
Reac
t'i
0n
rate of condensation of TMP with Comparison of the
23.
Fig.
that of TMDPM.
TMDPM system.
TMP system. ム:
Legend: 0:
Initial concentration of methylol groups.
a:
Concentration of methylene bonds.
x:
1000 C.
Curing temperature:
lmol/l.
0.4.
[TMDPM]o:
88 - NaOH/P molar ratio:
2mol/l.
[TMP]o:
Notes:
が考えられる。
こ のように, オルト位と パラ位のメチ ロ ール基には反 応性の差がある。 しかし, こ の差は TMPのメチレ ン結合 生成反応には現れずに, 反応性に差がないかのように見 える。 これは反応の進行とともに反応が加速されていく
ザ とによるものと思われる。 実際に, T M P系においても,
TMDPM 系においても, メチ ロ ール基に関する二次速度式 の速度定数は反応後期で増大し ている。
4 . 2 . 3 . 2 ホル ム アルデヒ ドの触媒作用
縮合反応速度が次第に加速されていく原因とし てはホ ル ム アルデヒ ドの促進作用が考えられる (第3章参照)。
そ こ で, TMPおよびTMDPMに フ ェ ノール核1 m 0 1 あたりo . 5
m 0 1のホル ム アルデヒ ドを添加し て縮合反応を調べた。
Fig. 24 にメチ ロ ール基に関する二次速度式によるプ
ロ ッ トを示す。
明らかに初期からメチレ ン結合の生成はホル ム アルデ ヒ ド添加系で速くな っ ており, 縮合反応を促進している
ことがわかる。 こ の傾きから求めた二次速度定数はTMP
89
/ ノ ノ
0.10
• ノ ノ
ノ
0.05
(【O目\円〉
(xNl同)吋
><
0
0 10
(min) 5
time Reaction
Effect of the addition of free formaldehyde on the 24.
Fig.
systems.
in TMP and TMDPM formation of methylene bonds
TMDPM system.
ム:
TMP system.
0:
Legend:
TMDPM + HCHO system . .Â.:
TMP + HCHO system.
.:
concentration of methylol groups.
Initial a:
Concentration of methylene bonds.
x:
lmol/l.
[TMDPM]o:
2mol/l.
[TMP]o:
Notes:
lmol/l.
1100 C.
Curing temperature:
formaldehyde added:
0.4.
free NaOH/P molar ratio:
Concentration of
90
系では, ホルム ア ルデヒ ド添加系が コ ント ロ ールの1 . 3 2 倍, TMDPM系が同じく1 . 6倍となる。
したが っ て, ホルム アルデヒ ドの縮合反応促進作用が パラ位のメチ ロ ル基の反応よりも, オルト位のそれに 対して大きいようである。
TMPあるい はTMDPM系では, 縮合によ っ て遊離したホル ム アルデヒ ドは, メチ ロ ール化して反応系に入る こ とは もちろんなく, それ以外の反応生成物の構成要因とな っ ている ことも考えにくい。 あるとすれば, Scheme 1の反 応(g)のようなメチ ン化であるが . メチ レ ン基の求核試薬 としての反応性 は フ ェ ノールの未置換のオルト位やパラ 位あるいはメチ ロ ール基の酸素のそれに比べてはるかに 小さいと考えられるので, 少なくともゲル化までは起 こ らず, ゲル部率100完に到達した後も っ と過剰に硬化を進 めたとき (架橋がほとん どメチ レ ン結合で満たされた状
態) はじめて起 こ ると思われる。
したが っ て, ホルム アルデヒ ドはメチ ロ ール基間の縮 合反応に対して触媒的な作用をしている可能性が非常に
高い。
- 91 -
4 . 2 . 3 . 4 TMP 縮合反応速度に及ぼすNaOH/Pモル比の
影響
F/Pモル比3のメチ ロ ール化 フ ェ ノールを用いたときの
ゲル化速度と NaOH/Pモル比の関係(Fig. 13の再掲) と
TMP系を用いたときのそれとを比較し たものをFig. 25に
示す。
樹脂系は系中に遊離のホル ム アルデヒ ドを含むため両
者の速度の直接的な比較はできない が, NaOHjPモル比の
依存性は両者でほとん ど同じ傾向であることがわかる。
つまり, 樹脂に おけるNaOH/Pモル比と ゲル化速度との関
係がJ T M Pモデルでよく表され ているとい うことである。
この関係は反応機構とも強く関わ っ ているものと思われ
るので, これま での実験結果を基にいくつかの仮定をた
て反応機構につい て理論的な考察を試みた。
いま, 硬化反応はメチ レ ン結合生成反応であると考え
メチ ロ ール基問での S N 2機構によ っ てのみ起こると仮定
すると .TMPの場合は次の三つのタイプの反応が考えられ
る。
- 92
2.0
1.0 1.5
0.5
〈Hluω凶)
_,
+-J
\、、
何OH
×
,ー・4
。
。 1.0
ratio 0.5
国olar NaOH/P
the TMP system compared NaOH/P molar ratio-dependence of
25.
Fig.
resin system with a F/P molar ratio of 3.
with that of a PF
gelation time.
ta:
resin system.
ロ: PF TMP system.
0:
Legend:
• 円luo nHU 噌a『A噌IB--
Curing temperature:
(TMP system):
Notes:
0.4.
NaOH/P molar ratio:
2mol/l.
[TMP]o:
1100 C.
Curing temperature:
0.4.
NaOH/P molar ratio:
system) : 2mol/l.
(PF resin
P& F・E・E・‘
93 -
nu つι ハU H
2 'T Hn nU + nn ハu pu nn H C + nn - 4・
,AY
,AY 内正 司ノ
Hn Hn fu 円し
,AY
,AUF
\ノ
\ノ
Hn
nU Hn 2 ハU H
2 pu nn 一 円EU
,AY
,州WF ふh '+I Hn Hn nu nU 円ノ色 円ノ- Hn Hn 円lu 円し
,AY
,AY ) )
・lA 内/M
( 4 - 3 ) ( 4 -4 )
3 )併一ーCH20H+ 併一ーCH20H - ー> <ti--CH2-<ti-+HCHO+H20 (4-5)
こ こ で φ は未解離の フ ェ ノール核を , φ ーはイオ ン化し たフ ェ ノール核を表し ている。
メチ ロ ール基の反応性は, オルト位とパラ位で異なる と考えた場合 , 全メチレ ン結合生成速度( R )は上の三つの 反応に よるメチレ ン結合生成速度の和とし て次式で表せ
る。
+・つ』司lIJMM nU 46
,11L 11」
O -
o M
2 nr LK
r』』』'T句B『E'Ea司・EE,,d
MM Mm nu pA
,・・ZEE‘,EEEE・‘
P 1lJ 0 Mm 1 O LK rlL 4・
P 114
0 一
円4 Mm LMA nHU sT rBl、
内ノ』
句aEEEEd--EEE・d
MM UM DA Da
p'・a'』,b・・8』
o p p・
p・
4L 内ノ- Ln LR + +
可.E'.ad、aE'』'』,'
M例 HM npνA nU
,r.'lEL,r''l'.L 、‘l.』'且A,司aaEE'4 M附 M例 p.且&
ハU
,目EE目E』,E'.目'
p
。 P
。 4よ 4よ iK 1K
一=一nn
k3pp [PM-] 2+k30p [OM-] [PM-] +k3oo [OM-] 2 ( 4 -6 )
こ こ で [ 0 M ]と[P M ]はそれぞれ, 未解離フ ェ ノールに付 いたオルト位あるいは パラ位のメチ ロ ール基濃度, [OM-]
と[P M -]はそれぞれ, 解離フ ェ ノールに付いたオルト位お よびパラ位のメチ ロ ール基濃度であり, k1pp, k1po・・・
k 3 0 0は各反応に対する反応速度定数である。
- 94 -
また, フ ェ ノール濃度の初期値をP, NaOH/Pモル比をN とすると解離, 未解離の フ ェ ノールに付い た オルト位,
パラ位のメチ ロ ール基の初濃度は次のように表せる。
、‘,.,,M川口
、B』J
M川H
1i -
rtE、
1i
nr
nr PA Il、
M川
M円
M円
nr
η/』
円/
=
=
=
一一 ハ〉
ハU
111」
ハ〉
守』i」
ハV
- 1-64
- 可1』A MM
MM
M問
MM ny
pa
nU
ハU [
[
[
[
( 4 -7 ) ( 4 - 8 ) ( 4 -9 ) ( 4 -10)
ある微小単位時間で反応時間を区切 っ て反応の進行を 追うと, 第一単位時間の反応が起こ っ たときの各メチ ロ ール基の濃度は, つぎのように表される。
[PM-] 1= [PM-] o-k1 P P [PM] 0 [PM-] o -k10 p [OM] 0 [PM-] 0 -
2k3p p [PM-] 02-k30 p [OM-] 0 [PM一]。 ( 4 -11 )
[PM] 1 = [PM] o-k1 P P [PM] 0 [PM-] o-k1 P O [PM] 0 [OM-] 0-
2 k 2 P 0 [ P M] 0 2 - k 2 0 P [ 0 M ] 0 [P M ] 0 ( 4 -1 2 )
[OM-] 1 = [OM-] o-k1 P O [PM] 0 [OM-] o-k1o o [OM] 0 [OM-] 0-
k30 p [OM-] 0 [PM-J 0-2k3o o [OM-] 02 ( 4 -13)
phd nu.u
[OM] 1 =[OM]0-kl0P[OM]o[PM-]0-kloo[OM]o[OM-]0-
k20p [OM] 0 [PM] 0-2k2oo [OM] 02 ( 4 - 14)
これらの速度式をもとに コ ン ビ ュ ータ を利用してメ
チ レ ン結合生成の様子をシ ミ ュ レ ートすることを試みた。
その際, 次のような条件を与えた。
1 )すべての速度定数は分子サイズには影響されない (反
応、 が進ん でも変わらない)。
2 )フ ェ ノール核あたりのメチ レ ン結合量の比がo . 9 5に 達
したときゲル化が起 こ る。
3 )遊離のホルム ア ルデヒ ドは反応に 関与しない。
プロ グラム の流れは以下のと おりであ る。
まず, 必要な初期値(フ ェ ノール濃度t NaOH/Pモル比,
速度定数)をイ ン プ ッ トし, 式(4-11)'-"'" (4-14)を基に各
反応位の濃度を計算する。 次 に これを式(4 -6 )に代入し,
メチ レ ン結合の生成量を計算する。 反応を2回t 3回 -
i回と繰り返す (このとき, 式(4-11)'-"'" (4-14)中の [ ] 1 t
[ ] 0の添え字はそれぞれ[ ]ぃ[ ] 1 -1という関係になる)。
そして, 反応毎に算出されたメチ レ ン基量を累積したも
のが, 反応i回に おける メチ レ ン結合濃度となる。
96 -
これが, フ ェ ノール初濃度の 95%にな っ たとき計算を スト ッ プし, このときの反応回数iをゲル化時間とした。
メチ ロ ール基聞の反応は全部で式( 4 - 6 )に示した 1 0種 類があるが, こ こ では, 仮に解離 フ ェ ノールと未解離 フ
ェ ノールに付いたメチ ロ ール基間で反応性が異なるとし,
式( 4 - 6 )中の速度定数比を次のように設定した。
k 1 p p k 2 p p k 3 p p = k 1 0 p k 2 0 p : k 3 0 p = k 1 0 0 k 2 0 0 k 3 0 0
= 1 : 0 . 1 : 0 . 0 5
この速度定数比はTMPのゲル化速度がNaOH/Pモル比0のと
き (外挿値) とo . 5および1のときの実験値の比を基に定
めた。 すなわち, NaOH/Pモル比0のときはすべてのTMPが
解離していない状態, o . 5のときは解離TMPと未解離TMP
が半々, 1のときはすべて解離しているとみなす。
まず, オルト位と パラ位でメチ ロ ール基の反応性が異
なるとした場合の例として, パラメチ ロ ール基間, オル
トと パラのメチ ロ ール基間, オルトメチ ロ ール基間の反
応速度定数の比を次のように仮定した。
k 1 p p k 1 0 p k 1 0 0 = k 2 p p : k 2 0 p • k 2 0 0 = k 3 p p k 3 0 p k 3 0 0
= 1 : 0 . 6 : 0 . 4
こ の条件でシ ミ ュ レ ートを行 っ たときの, ゲル化速度
- 97 -
に及ぼすNaOH/Pモル比の影響をFig. 26に示す。
この図の縦軸はNaOH/Pモル比 0のとき のゲル化速度を
i とした相対値で表している。 理論曲線は実測値の傾向
F/Pモル比3の樹脂) と非常によく一致している ことが
わかる。 この理論計算には ホル ム アルデヒ ドの触媒作用
は考慮に入れられていないが, この触媒作用がNaOH/Pモ
ル比に依存しないとすれば相対値で表した全体の傾向は
変わらない。 実験に おける NaOH/Pモル比o . 5以下の領域
では, Cannizzaro反応による ホル ム アルデヒ ドの消費も
小さいので理論値の傾向とよく一致しているが, NaOH/P
モル比 o . 5以上の領域での不一致は, Cannizzaro反応に
よる ホル ム アルデヒ ドと アル カリの消費のため であ ると
考えられる。
オルト位, パラ位間のメチ ロ ール基の反応性比をい ろ
い ろ変えても同じ結果が得られる。 メチ ロ ール基の反応
性をすべて等しい とし, 速度定数比を次のように設定し
た場合でも,
k 1 p p k 1 0 P k 1 0 0 = k 2 p p • k 2 0 p k 2 0 0 = k 3 p p k 3 0 p k 3 0 。
= 1 : 1 : 1
Fig. 27に示すようにFig. 26の理論値と全く同じ結果に
98 -
-(円luω凶)
×
bO +-J 的{)円
2
。 3
2
ロO吋以吋【
U凶
斗4 0
むぺvdLむ〉吋叫吋HU出
,
�
y
Theoretical
。
Experimental
0': O 1.0
ratio 0.5
皿olar NaOH/P
F/P molar
for the resin system with Experimental values
26.
Fig.
rates of gelation for the
and theoretical values ratio 3
groups para-methylol
the case where the reactivity of ln
ortho-methylol groups.
from that of is different
ratios of the rate constants:
The Note:
k�pp:k�op:k�oo=k2Pp:k2op:k2oo=k3Pp:k3op:k3oo=1:0.6:0.4,
k�pp:k2Pp:k3Pp=k�op:k2op:k3op=k�oo:k2oo:k3oo=1:0.1:0.05
99
ロ 3
。
...吋 +-) cd
� Q.) b.O 斗4Cコ 2
Q.) +-) cd '-'
Q.) .�→ 〉 +-) 吋
� Q.) o:!
。。ド 0.5 1.0
NaOH/P molar ratio
Fig. 27. Theoretical values for the rates of gelation in the case where there is no difference in the reactivities of methylol groups.
Note: The ratios of the rate constants:
k1PP:k10P:k100=k2PP:k20P:k200=k3PP:k30P:k300こ1:1: 1,
k1PP:k2PP:k3PP=k10P:k20P:k30Pごk1oo:k2oo:k3oo=1:0.1:0.05
100 -
なる。 こ の こ とは . オルト位 . パラ位メチ ロ ール基間の反 応性の差は, 反応初期にはメチ レ ン結合生成速度に大き
な影響を及ぼすが, ゲル化点(ご の計算では反応度o . 9 5
のと こ ろ のよう な反応後期に おい てはその差が速度に
影響しなくなる。 すなわち, ゲル化, あるい はそれ以降
までの硬化反応の速度をみるときは, オルト, パラ位メ
チ ロ ール基間の反応性の差異はあ っ てもなくても同じ こ
とになる。 しかし, フ ェ ノールの解離状態によ っ て反応
性が異なると い う こ と は, NaOH/Pモル比の依存性を考え
ても明らかなように, 硬化速度に大きな影響を及ぼす。
したが っ て , 式(4 - 3 )は次式のように書き換える こ とがで
きる。
R = k 1車[φ 一CH20H] [φ 一ーCH20H] +k2車[φ -CH20H] 2+
ーァ ..,.
1....- 1....-
k 3車[φ 一-CH20H] 2 ( 4 - 1 5 )
でk 1車, k 2 * . k 3車は . 反応する二つのメチ ロ ール基が付
い てい る フ ェ ノールの解離状態で決まる速度定数である。
Scheme 1 (p. 1 0)の反応(a )と(b)は, どちらも未解離 フ
ェ ノールに付い たメチ ロ ール基と解離 フ ェ ノールに付い
- 101 -
た メチ ロ ー ル基間での反応を示し てい る。 反応(a) は解 離のフ ェ ノールに付い た メチ ロ ール基の酸素の電子密度
が未解離フ ェ ノールに付い た メチ ロ ール基の酸素のそ れ
より高いと考え, この酸素が求核的に未解離フ ェ ノール
に付い た メチ ロ ール基炭素に反応するとし たものであり,
反応(b)は解離フ ェ ノールの 2位また は4位の炭素の電子
密度が増大し て, これが未解離フ ェ ノ ルに付い た メチ
ロ ール炭素に対し て求核的に反応するとし たものである。
もちろん, 未解離フ ェ ノールに付い た メチ ロ ール基ど
うしあるいは解離フ ェ ノールに付い た メチ ロ ール基どう
し でも反応が起こることは考えられるが, 有機電子論的
な見方をすれば, 反応(a)や(b)のような場合が一番反応
に有利な電子状態であろうと思われる。
し たが っ て, 式(4 -4 )中の速度定数の値は , k 1車> k2本>
k 3車 のJl債となるのが妥当であると考えられる。 そし て,
い ろいろな値を入れ て計算し た結果, 速度定数比をk1 * :
k 2車:k 3車= 1 : 0 . 1 : 0 . 0 5と設定し たときに最も実験値に近く
なることがわか っ た。
以上のように, 硬化速度のNaOH/Pモル比依存性は ,F/P
モル比3の場合は, T M Pのモデルによ っ て理論的に説明す
- 102 -
る ことができた。 しかし .F/Pモル比がも っ と低い と こ ろ では, 反応系がモ ノ マーのみで構成され ているとし ても,
メチ ロ ール フ ェ ノール類だけで 5種類あり, メチ ロ ール 基の他に フ ェ ノ ル核の未置換のオルト位やパラ位も反 応体とし て考慮し なければならない。 さらに, メチ ロ ー ル基ど うしの縮合によ っ て生成する遊離のホル ム アルデ ヒ ドは, 未置換の フ ェ ノ ル核のオルト位やパラ位に付 力目し て メチ ロ ル基となるため, 化学量論的関係が F/P モル比によ っ てそれぞれ異なる こ ととなり, 非常に複雑 となる。 したが っ て, こ の問題に関し ては今後 コ ン ビ ュ タ シ ミ ュ レ ーシ ョ ン 等によ っ て さらに検討を行う
こ ととしたい。
4 . 3 まとめ
メチ ロ ール化 フ ェ ノール, および TMPのNaOH/Pモル比 と硬化速度の関係を調べた結果, 以下の諸点が明らかに な っ た。
1 )硬化速度のNaOH/Pモル比依存性は . F / Pモル比によ っ て
傾向が異なり, あるNaOH/Pモル比で極大を示すような
103 -
カーブとなる。 そし て こ の極大値は F/Pモル比の減少 に つれ て, 低アル カリ側ヘシ フトする。
2 )ゲル化速度とゲル部生成速度でNaOH/Pモル比の影響を みたとき . F / Pモル比およびNaOH/Pモル比の低いと こ ろ で溶解性が悪くなり, ゲル化が見かけ上理論的なゲル 化点より速く起 こ っ ている ことが考え られる。
3) NaOH/Pモル比o . 6以上の高アル カリ側ではCannizzaro 反応が起 こ っ ており, これはNaOH/Pモル比およびF/P モル比が大きい ほどより多く起 こ る。
4 )メチレ ン結合生成速度はTMPに関し て . 一次とも二次と もいえない。
5 )メチ ロ ール基濃度に関し ては, 見かけ上二次にし たが うが, 反応の進行とともに加速される傾向に ある。
6 ) T M P系とTMDPM系の縮合速度の比較によ っ て, オルト位 のメチ ロ ール基と パラ位のメチ ロ ール基の問には反応 性に差があり, パラ位の方が速い。
7 )ホル ム アルデヒ ドには触媒的に メチレ ン化を促進させ る作用があり, この作用はオルト位のメチ ロ ール基間 に対し てより効果的である。
8 )ゲル化速度のNaOH/Pモル比依存性はF/Pモル比が3のと
104 -
きTMPモデルと よく一致し . 主要な反応が解離 フ ェ ノ ー ルと未解離 フ ェ ノールに付い た メチ ロ ール基聞のS N 2
機構に よ っ て進行するとし た理論式で説明できた。
- 105 -