論文 接着樹脂層の厚さに伴うせん断接着強度の変化 黒澤
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(2) 表-1 組骨材の最大 スランプ 寸法 (cm) (mm) 20. 12 表-2. 圧縮強度 (N/mm2). 発生強度 2. (N/mm ) 8. 単位量 (kg/m3) セメント 細骨材 粗骨材 C S G. 水セメン ト比 (%). 空気量. 細骨材率. (%). (%). 水 W. 45. 1.5. 40.5. 157. 350. UFC の物性値. ひび割れ. 180. コンクリートの配合. 表-3. 引張強度. 弾性係数. (N/mm2). (N/mm2). 8.8. 766. 4.6×10. 混和剤 A. 1127. 3.85. 含浸接着剤の物性値. 圧縮降伏強さ(N/mm2). 57. 2. 37. 2. 引張強さ(N/mm ). 28.75. 引張伸び(%). 4.02. 曲げ強さ(N/mm ). 4. 2. 引張弾性率(N/mm ). 760.4. 2.2 試験供試体 表-4. 試験体は,断面寸法 80mm×70mm×60mm のコンクリ ートブロックおよび UFC ブロックの両側面を接着して. 試験体名. 静的試験結果. 接着樹脂厚さ. 終局荷重. 終局変位. (mm). (kN). (mm). 作製した。コンクリートブロックおよび UFC ブロックの 表面は,接着前にディスクサンダーでケレンが施されて. R1-S. 1. 45.43. 0.65. いる。各ブロックは,コンクリートの表面にプライマー. R2-S. 2. 46.78. 0.96. を塗布したのちに一定期間の養生を経て,デンカハード. R5-S. 5. 40.36. 0.98. ロックⅡDK550-04(アクリル樹脂)を用いて接着した。 50. 本来は UFC 並びにコンクリートと同様 80mm の高さを. 45. 持つ接着樹脂層の上下両端を削り取ることで,接着長を. 40. 70mm とした。なお,幅方向には削り取らず,接着幅は. 35. 60mm とした。各物性値を表-1,2,3に示す。. 30. 荷重 (kN). また,接着樹脂に直接載荷板が接触することを防ぐため,. 3. 実験結果. 25 20 15. 3.1 静的試験. 1mm. 10. (1) 終局荷重 試験結果を表-4に示す。終局荷重を比較すると,樹. 5. 脂厚さが 2mm の場合が最も強度が高い結果となったが,. 0. 1mm の場合と比較すると大きな差は見られなかった。一. 2mm 5mm 0. 0.5 1 変位 (mm). 方,5mm の場合は他の 2 つに比べて終局荷重が小さくな. 図-2. 1.5. 荷重変位曲線. っており,樹脂厚さの強度に対する影響が見受けられる。 (2) 荷重変位曲線 荷重変位曲線を図-2に示す。なお,本試験における. ①. 変位は載荷点の変位量を表しており,また載荷初期のあ. 被着材 ②. そび部分の影響は補正してある。いずれの樹脂厚さの場. ③. 合においても,終局荷重時に急激に剥離破壊が起こった ため,軟化域は存在しない。また,樹脂厚さが 1mm の. ⑤. 母材. 場合と 2mm の場合においては,荷重変位曲線はほぼ線 形挙動を示したまま破壊に至っており,塑性域が存在し なかった一方で,5mm の場合は 37kN 近傍以降の荷重に おいて初期剛性より低い剛性を示しており,接着面が塑 性域に入っていることが観察できる。. 接着剤. ④. ①:被着材の凝集力 ②:被着材と接着剤の界面結合力 ③:接着剤の凝集力 ④:接着剤と母材の界面結合力. (3) 破壊形態 一般的に,接着理論において接着状態は図-3に示す ような Five Links Theory によって表現される 6,7) 。この. -1460-. ⑤:母材の凝集力 図-3. Five Links Theory 概念図.
(3) 表-5 試験体名. 疲労試験結果. 接着樹脂厚さ. 静的終局荷重. 疲労上限荷重. (mm). (kN). (kN). R1-F90. 疲労上限. 疲労下限. 荷重比. 荷重比. (%). (%). サイクル数. 破壊形態. (cycle). 27.26. 90. 11. A. 31.80. 80. 1,954. A. 36.34. 70. 165,810. A. R1-F60. 40.89. 60. 257,283. B. R2-F90. 28.07. 90. 64. A. 32.75. 80. 304. A. 37.42. 70. 1,921. A. R2-F60. 42.10. 60. 278,612. A. R5-F90. 24.22. 90. 23. A. 28.25. 80. 1,042. A. 32.29. 70. 15,748. A. 36.32. 60. 135,751. A. R1-F80 R1-F70. R2-F80 R2-F70. R5-F80 R5-F70. 1. 2. 5. 45.42. 46.78. 40.36. R5-F60. 10. ※破壊形態 A:含浸接着剤とプライマー間の界面破壊,破壊形態 B:コンクリート要素内の凝集破壊. 写真-1. (疲労上限荷重)/(静的終局荷重). 1. 破壊断面(R5-S). 0.9. 0.8. 0.7 1mm 2mm 0.6. 5mm 1mm(破壊形態B) 0.5 0. 2 4 log(サイクル数) 図-4. 6. S-N 線. 3.2 疲労試験 静的試験を行った試験体と同様の諸元において,荷重 振幅速度を 5Hz と設定したうえで疲労試験を行った。試 験結果を表-5に示す。変動荷重は,先の静的試験で得 られたせん断接着耐力をもとに荷重比を与えた。なお, 写真-2. 破壊形態 A は静的試験結果と同様に含浸接着剤とプライ. 破壊断面(R5-F60). マー間の界面破壊,破壊形態 B はコンクリート要素内の 場合,破壊形態は被着材,接着剤,母材のいずれかの材. 凝集破壊(図-3中の⑤)を示す。破壊形態 B の破壊面を. 料そのものが壊れる凝集破壊と,接着界面が壊れる界面. 写真-2に示す。本破壊形態は,試験体を拘束する治具. 破壊の2つのタイプに分けられる。本試験においては,. に沿ってコンクリート要素が凝集破壊しており,試験体. いずれの供試体においても含浸接着剤とプライマー間の. の回転を拘束することによって局所的に生じた引張力が. 界面破壊(図-3中の④)が観察された。本破壊形態の一. 原因で破壊に至ったと考えられる。 S-N 線を図-4に示す。なお,樹脂厚さが 1mm の場合. 例として,R5-S の破壊面を写真-1に示す。. -1461-.
(4) については,静的試験時と破壊形態が異なる R1-F60 の 結果を除いた上で S-N 線を示している。この図より,樹 脂厚さが最も小さい 1mm の場合は他の 2 つの場合に比 べて耐疲労性能が向上していることが見える。 4. FEM 解析 先の実験結果より,接着樹脂厚さの変化に伴うせん断 接着強度の挙動を定量的に観察することができた。次に, 補強材が剥離する過程における,補強材とコンクリート 間の接着応力分布から剥離破壊特性を評価するため,有 限要素法(FEM)による数値解析を行った。 図-5. 4.1 プログラム概要. 表-6. 要素分割図を図-5に示す。なお,コンクリート要素. 弾性係数 (N/mm2). 部材. 部の表面で破壊が起こると仮定し,接着樹脂側の要素は. 鋼. その他に比べて細かく設定し,詳細な破壊形態を表現で. UFC. きるようにした(図-5のピンク色の部分)。. 要素分割図. 鋼材,UFC の部材特性. 2.0×10. 0.26. 4.6×10. 3. 0.2. 表-7. 本解析では二次元要素を用いており,載荷鋼板,UFC,. ポアソン比. 6. コンクリートの部材特性. コンクリート,接着樹脂のモデル化には 4 節点アイソパ. 弾性係数(N/mm2). 3.0×104. ラメトリック平面応力要素(Q8MEM)を用い,また鉄製の. ポアソン比. 0.2. 拘束具のモデル化には 2 節点梁要素(L4TRU)を用いた。. 2. 34.3. 2. 圧縮強度(N/mm ). 異種材料要素間の接合は共有節点による完全付着とし,. 引張強度(N/mm ). 4.09. 非線形解析手法には修正 Newton-Rhapson 法を用いた。な. 引張破壊エネルギー(N/mm). 8.82×10-2. お,解析プログラムは DIANA である。. 圧縮破壊エネルギー(N/mm). 5.15. 4.2 各部材特性. 35. (1) 鋼材と UFC. 30 引張応力(MPa). 鋼材と UFC においては,コンクリートと樹脂に比べて 強度が非常に高いため,線形等方性弾性モデルを仮定し た。各部材の弾性係数およびポアソン比を表-6に示す。 (2) コンクリート. 両引き 試験値 1mm. 20 15 10. 2mm. ,圧縮軟 化曲線を. 5. 5mm. を用いて表現した。コンクリートの材. 0. ひび割れモデルとして Total strain crack モデル 8)を用い, 引張 軟化曲線を Hordijk モデル Parabolic モデル. 25. 9). 10). 0.0. 料特性値を表-7に示す。なお,引張強度および引張破. 0.1. 0.2. 図-6. 示方書[設計編]に基づき,以下の式より算定した。. 𝐺𝑡 =. √𝐷𝑚𝑎𝑥 ∙ 𝑓𝑐 ′ 100. (2). ここに,𝑓𝑡 :引張強度(N/mm2),𝑓𝑐 ′ :圧縮強度(N/mm2) 𝐺𝑡 :引張破壊エネルギー(N/mm) 𝐷𝑚𝑎𝑥 :最大骨材寸法(mm) また,圧縮破壊エネルギーは中村モデルを用いて以下 の式から算定した。 𝐺𝑓𝑡 = 8.8√𝑓𝑐. ′. 推定ヤング率 E (N/mm²). (1). 3. 0.4. 0.5. 0.6. ひずみ. 壊エネルギーは 2007 年制定土木学会コンクリート標準 𝑓𝑡 = 0.7√𝑓𝑐 ′. 0.3. 1000. 100 𝐸 = 300 (1 − exp −0.143 ∙ 𝑡 1.13 ) 10. 0. ここに,𝐺𝑓𝑡 :圧縮破壊エネルギー(N/mm2) 図-7. 本研究で使用した接着樹脂は,厚さが薄い場合には接. -1462-. 解析による推定値 推定関数. 1. (3). (3) 接着樹脂. 接着樹脂の引張応力-ひずみ関係. 2. 4 6 接着層厚さ t (mm). 8. 10. 解析値による推定ヤング率と接着層の厚さ の関係.
(5) 40 35 荷重(kN). 30 25 20. 15. 1mm. 10. 2mm. 5. 5mm. 0. 0.5 1 変位(mm) 図-8 荷重変位曲線(解析値). 1.5 図-9. 4. 4. 2. 2. 0 -2 -4. 1mm. -6. 2mm. -8 0. 1mm. 5mm. 0. -2 -4 -6. -10. 20. 40. 60. 0. 80. 20. コンクリート表層の引張応力分布. 10 8. 40. 60. 80. 下端部からの距離(mm). 下端部からの距離(mm) 図-10. 2mm. -8. 5mm. -10. 破壊時における主ひずみ図. (接着樹脂厚さが 5mm の場合). せん断応力(MPa). 引張応力(MPa). 0. 図-11 10. 1mm 2mm. 8. 5mm. コンクリート表層のせん断応力分布. 1mm 2mm 5mm. 6. 6. 4. 4. 2. 2 0. 0 図-12 コンクリート表層の最大引張応力(MPa). 図-13. 着面のクリープの影響で見かけのヤング率が小さくなり,. コンクリート表層の最大せん断応力(MPa). 同様,5mm 厚の場合に最も低い接着強度が計算された。. 11). 厚くなるにつれて本来のヤング率に近づく傾向がある 。. また,本解析においてはいずれの樹脂厚さの場合におい. したがって,解析上は両引き試験より得られた本来のヤ. てもコンクリート要素のうち最も接着樹脂要素に近い部. ング率を修正した物性値を用いている。引張試験より得. 分(以下コンクリート表層)において剥離破壊が生じた。. られた接着樹脂の引張応力‐ひずみ関係および各樹脂厚. 代表例として,樹脂厚さが 5mm の場合の破壊後におけ. さのモデルにおいて用いた接着樹脂の引張応力‐ひずみ. る主ひずみ図を図-9に示す。. 関係を図-6に,解析より得られた推定ヤング率と接着. 以上より,いずれの樹脂厚さの場合においても最大荷. 樹脂厚さの関係を図―7に示す。. 重値に近い 30kN 載荷時のコンクリート表層の引張応力. 4.3 解析結果. 分布およびせん断応力分布に基づいて,接着樹脂層の厚. 本解析より得た荷重変位曲線を図-8に示す。実験と. さの変化が接着界面のせん断接着強度に与える影響の検. -1463-.
(6) 討を試みた。. 謝辞. 荷重が 30kN の時のコンクリート表層の引張応力分布. 実験で用いた接着樹脂,UFC ブロック,コンクリート. ならびにせん断応力分布を図-10,11に示す。引張. ブロックはデンカ(株)に提供して頂きました。また,. 応力分布において,1mm と 2mm の場合は下端部側から. 古内仁助教(北海道大学大学院工学研究院)には実験,. 上端部にかけてゆるやかに引張応力が減少していく傾向. 解析において多くのアドバイスを頂きました。ここに記. が見られるが,5mm の場合はそのような傾向は見られず,. して厚く御礼申し上げます。. 断面全体にほぼ一様な引張応力が生じていることがわか る。また,せん断応力分布においては,いずれの樹脂厚. 参考文献. さの場合においても下端部付近に応力集中が生じている。. 1). 荷重が 30kN の時の各樹脂厚さにおけるコンクリート 表層の最大引張応力および最大せん断応力を図-12,. 道路構造物の今後の管理・更新等のあり方提言, 2003.. 2). Ko, Hunebum, et al. "Development of a simplified bond. 13に示す。最大せん断応力は樹脂厚さの増加に伴い大. stress–slip model for bonded FRP–concrete interfaces.". きくなっている一方,最大引張応力においては樹脂厚さ. Construction. に伴う有意な差はみられなかった。剥離は最大せん断応. 142-157.. 力発生箇所付近の表層コンクリートを起点として生じた。. 3). これらの結果より,樹脂厚さが増すにつれて最大せん. 68. (2014):. Dawei Zhang. “research on PCM=concrete interface and PCM-strengthened. 断応力が大きくなり,強度が低下してしまう傾向がある といえる。. and Building Materials. RC beam”. Doctoral. thesis at. Hokkaido University (2009) 4). 田中浩, et al. "純せん断力を受けるコンクリート要 素の強度に関する実験的研究 ." 土木学会論文集. 5. 結論. 746 (2003): 205-214.. 本研究は,接着工法における接着樹脂層の厚さ(1mm,. 5). 社団法人日本コンクリート工学協会:JCI 規準集 (1977~202 年度),pp.235-236,2004 年 4 月. 2mm,5mm)がせん断接着強度に及ぼす影響を試験,数 値解析の両側面から解明することを目的に行ったもので. 6). 芝崎一郎. "接着百科 (上)." (1976).. ある。本研究の範囲内で得た結論を以下にまとめる。. 7). 佐川康貴, 松下博通, and 岳尾弘洋. "炭素繊維シー. (1). 本研究では,超高強度繊維補強コンクリートをコン. ト接着工法における付着性状および剥離耐力向上. クリートに接着した供試体を用いて,静的及び疲労. 方法に関する研究." 土木学会論文集 669 (2001):. 直接圧縮せん断試験を行った。その結果,疲労試験. 71-83.. の一体を除き,接着樹脂とプライマーの界面におけ. 8). る破壊が見られた。接着樹脂厚さが厚くなると静的. Deformed Concrete Tunnel Linings Due to a Vertically. せん断接着強度が低下する傾向にあることが示さ. Concentrated Load." 土 木 学 会 論 文 集 794 (2005):. れた。疲労強度は,厚さが 1mm の時が,2mm と 5mm の時より大きくなった。 (2). 21-32. 9). 有限要素解析により得られた破壊面の応力分布よ. Hordijk, P. A.: Local Approach to Fatigue of Concrete, Doctoral Thesis, Delft University of Technology, 1991.. り,剥離は最大せん断応力の発生箇所に端を発した. 10) Vonk, Rene Alfred. Softening of concrete loaded in. 破壊によって引き起こり,最大せん断応力は接着樹. compression. Diss. Technische Universiteit Eindhoven,. 脂厚さが厚くなるほど大きくなることが示され,こ. 1992.. れによりせん断接着強度が低下すると考えられた。 (3). 何偉, and 呉智深. "Compressive Failure Mechanism of. 11) 高橋順, 宮本文穂. "コンクリート床版を保護する防. 実験結果のせん断接着強度より解析結果の方が小. 水材の輪荷重を想定した性能評価の解析的検討.". さく,また,実験結果と解析結果の剥離箇所は同じ. コンクリート工学論文集 17.2 (2006): 43-53.. であるが,実験結果は接着樹脂とプライマーとの界 面の剥離破壊であり,解析結果はコンクリートの表 層破壊である。これらの差を解明すべく,さらに研 究をする必要がある。. -1464-.
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