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<資料>EU司法裁判所民事手続規則関係判例概観(2015年)(I)

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a) 自然人の身分,権利及び行為能力並びに法定代理,夫婦財産制,遺言 法を含む相続法の領域 b)c) 省 略 d) 仲 裁 # 省 略 (ブリュッセル$a 規則第1条第1項・第2項) & 面会交流権のための強制金の取立てとブリュッセル$規則等(EU 司法裁判 所2015年9月9日判決―Bohez, Case C−4/14, ECLI : EU : C : 2015 : 5633 【判 旨】 !ブリュッセル$規則1条は以下のように解釈される。父母の監護権の権利者 による面会交流権を確保するために,別の加盟国で下された父母の監護権と面会 交流権に関する裁判中で強制金が確定された場合には,本規則はある加盟国にお ける強制金の執行には適用されない。 "当該の権利の有効性を確保するために,面会交流権に関する本案の裁判をし た原裁判国の裁判所によって課された強制金の取立ては,この強制金でもって確 保された面会交流権に関する裁判と同一の執行の規律に服する。それ故,この強 制金は,ブリュッセル%a 規則中で定められた規定に従って執行宣言を付される。 #ブリュッセル%a 規則の枠内においては,強制金の支払を命ずる外国の裁判 は,強制金の額が原裁判国の裁判所によって最終的に確定された場合にのみ,執 行加盟国において執行しうる。 【事実の概要】 B 氏と W 夫人は1997年にベルギーで婚姻し,2人の子をもうけたが,2005年 に離婚し,W 夫人はフィンランドに移住した。2007年3月28日,ゲント(ベル ギー)第1審裁判所は,これらの子に関する父母の監護権,面会交流権等に関す る決定(原決定)を下した。さらに,同裁判所は,この決定中で,B 氏の面会交 流権の実現のために,子が彼に引き渡されない場合,1日の面会交流日,子1人 当たり1,000ユーロ(上限は25,000ユーロ)の強制金の支払をなすべき旨を定め

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の裁判所を信頼して執行裁判所の本案に対する干渉を禁止し,この領域での裁判 のために統一的で簡素な執行方法を設けようとした EU 法の立法者の意思に反す ることになると指摘する(本判決理由第52節)。 最後に,!の問題の第2は,強制金の支払を命ずるブリュッセル#a 規則の枠 内の外国の裁判は,強制金の額が原裁判国の裁判所によって終局的に確定してい る場合にのみ,執行加盟国において執行しうるかを問うものである。本判決はま ず,ブリュッセル"規則49条とは異なって,ブリュッセル#a 規則にはこれを明 示的に肯定する規定は存在しないが,執行前に強制金を(執行加盟国で)確定し なければならないとするならば,それは強制金のセンシティブな性格と調和しな いという(本判決理由第56節・第58節)。すなわち,そのためには面会交流権に 対する義務がどのように違反されたか,その理由はどのようなものであったかの 審理が必要であり,そういったことは,本案の管轄裁判所である原裁判国の裁判 所によってのみなされるべきであるからである(本判決理由第59節)。 $ ブリュッセル"規則と訴訟差止めの仲裁判断(EU 司法裁判所2015年5月13 日判決―Gazprom, Case C−536/13, ECLI : EU : C : 2015 : 3165

【判 旨】 ブリュッセル"規則は以下のように解釈される。それは,ある加盟国の裁判所 に対し,当該加盟国の裁判所に一定の申立てをすることを禁止する仲裁判断に関 する承認と執行,または承認と執行の拒絶を妨げない。なぜなら,本規則は,あ る加盟国における,他の加盟国において仲裁廷によって下された仲裁判断の承認 と執行を規律していないからである。 【事実の概要】 Ld 社の株主はドイツ法上の会社 R 社と G 社およびリトアニア・エネルギー省 (によって代表されたリトアニア政府)であった。2004年3月24日,3者は株主 間合意をし,この合意に関連して発生する紛争に関しては仲裁手続によって解決 すべき旨を約した。2011年3月25日,リトアニア・エネルギー省は,ヴィリニュ

5 本判決の判例研究として,Thode, jurisPR−PrivBauR 11/2015 Anm.1 ; Bernstorff, AW−Prax 2016, 29 ; Wiegandt, RIW 2015, 430 ; Wais, EuZW 2015, 511 ; Pickenpack, EWiR 2016, 61.

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認と執行を求められている加盟国の国内法とそれが加入している条約の規定によ るのであり,ブリュッセル!規則によるのではないことになる(本判決理由第41 節)。

EU 司法裁判所は,かつて,加盟国の国家裁判所による訴訟差止命令はブリュッ セル!規則に反するものであり(Judgment of 24 July 2004, Turner, C−159/02, EU : C : 2004 : 28, para. 276,そのことは,本案の判断権限が仲裁廷にある場合 であっても同様である(Judgment of 10 February 2009, West Tankers, C−185/07, EU : C : 2009 : 69, para. 287)旨を判示していた。これは一見すると本判決と矛盾 するように見えなくもないが,学説は,これらの間に抵触はないものと評価して いる8。なぜなら,本件事案では,本案手続が係属する加盟国と仲裁判断の承認 ・執行が問題となっている加盟国とが同一の国であるから,原告は承認・執行手 続の枠内においてその国での法的審問の機会を有していたし,承認は他の加盟国 の裁判所の判断権限を犯すものではなく,自国の裁判所の判断権限に干渉するも のであるに過ぎないからである。West Tankers 事件では,イギリスでの仲裁手 続が合意されていたにもかかわらず,イタリアの裁判所で訴えが提起されたため に,イギリスの裁判所で訴訟差止命令が求められていた。 第5条 加盟国の領域内に住所を有する者は,以下のときは,それぞれ当該 箇所に定める他の加盟国の裁判所において訴えられうる。 1.a) 契約又は契約に起因する請求が手続の対象となっているときは,義務 が履行された又は履行されるべき地の裁判所 6 この判決の詳細については,安達栄司「ブリュッセル条約における訴訟差止命令 の不許容」野村秀敏=安達栄司編著『最新 EU 民事訴訟法判例研究!』83頁以下(信 山社,2013年),小田司「ブリュッセル条約(ブリュッセル!規則)の下における 訴訟差止命令の許容性」石川明ほか編『EU の国際民事訴訟法判例"』270頁以下(信 山社,2013年)参照。 7 この判決の詳細については,安達栄司「仲裁合意を貫徹するための訴訟差止命令 の可否」野村=安達編著・前掲注(6)91頁以下参照。

8 Wais, a.a.O.(Fn.5),S.512 ; Pickenpack, a.a.O.(Fn.5),S.62.

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b) 本規則の意味において――かつ,別段の合意のない限りにおいて―― 義務の履行地とは,以下の地をいう。 ――動産の売買については,それが契約に従って引き渡された又は引き 渡されるべきであった加盟国の地 ――役務の提供については,それが契約に従って行われた又は行われな ければならなかったであろう加盟国の地 c) b が適用されないときは,a が適用になる。 2. 省 略 3. 不法行為若しくは不法行為に等しい行為,又はそのような行為に起因す る請求が手続の対象であるときは,損害をもたらす出来事が発生した又は 発生するおそれのある地の裁判所 4.∼7. 省 略 第6条 加盟国の領域内に住所を有する者は,以下のときも,それぞれ当該 各号に定める他の加盟国の裁判所において訴えられうる。 1. 複数の者がまとめて訴えられるときは,別々の手続において矛盾した裁 判がなされうることを回避するために,共通の弁論と裁判が命ぜられてい ように見える程に訴えの間に密接な関係がある限りで,被告の1が住所を 有する加盟国の裁判所 2.∼4. 省 略 (ブリュッセル!a 規則第7条第1号・第2号,第8条) " インターネットによる著作権侵害と不法行為地の国際裁判管轄(EU 司法裁 判所2015年1月22日判決―Hujdk, Case C−441/13, ECLI : EU : C : 2015 : 289 【判 旨】

ブリュッセル!規則5条3号は以下のように解釈される。提訴を受けた裁判所 の加盟国において保護される著作権や著作類似権の侵害が主張される場合,この 裁判所が,損害結果の実現の地との結び付きによって,その管轄区域内でアクセ

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第15条! 消費者である者が,その者の職業又は事業活動と関係あるものと はみなされえない目的のために締結した契約又はそのような契約に起因す る請求が手続の対象であり,かつ,以下のいずれかに該当するときは,第 4条,第5条第5号のほか,管轄は本節〔消費者契約事件の管轄を定める 第2章第4節〕の規定による。 a) 動産の割賦販売が問題であるとき b) その種の物の売買のための金融を目的とした,分割返済される消費 貸借契約又はその他の信用取引が問題であるとき,又は c) その他のすべての場合において,他の契約当事者が,消費者が領域内 に住所を有する加盟国において職業若しくは事業活動を行い,又は何ら かの方法で当該加盟国若しくはその国を含む複数の国に向けてそのよう な活動を行うときであり,かつ,当該契約がこの活動の範囲内に入ると き "# 省 略 第16条! 消費者から他の契約の相手方に対する訴えは,その領域内にその 契約の相手方が住所を有する加盟国,又は契約の相手方の住所にかかわり なく,消費者が住所を有する地の裁判所に提起されうる。 "# 省 略 (ブリュッセル$a 規則第17条第1項・第18条第1項) % 無記名債券の発行者に対する損害賠償請求訴訟の国際裁判管轄(EU 司法裁 判所2015年1月28日判決―Kolassa, C−375/13 : EU : C : 2015 : 3714,15 14 この判決の詳細については,野村秀敏「無記名債券の発行者に対する損害賠償請 求訴訟の国際裁判管轄」国際商事法務43巻10号1574頁以下(2015年)参照。 15 本判決の判例研究ないし本判決を契機とする論文として,Steinrötter, jurisPR−IWR

1/2015 Anm. 2 ; ders., RIW 2015, 407 ; Freitag, WM 2015, 1165 ; Müller, EuZW 2015, 218 ; Mülleans, GWR 2015, 189 ; von Hein, JZ 2015, 946 ; Müller, NJW 2016, 2169 ; Wendelstein, GPR 2016, 140 ; Staudinger/Bauer, IPRax 2016, 107 ; Bach, NZG 2016, 794.

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" 先行の消費者契約との密接な結び付きと消費者事件の国際裁判管轄(EU 司 法 裁 判 所2015年12月23日 判 決−Hobohm, C−297/14 : ECLI : EU : C : 2015 : 84416,17 【判 旨】 ブリュッセル!規則15条1項 c は,当該契約が,職業または事業活動を行う者 による,消費者の住所地国たる加盟国に「向けて」の職業若しくは事業活動の範 囲内で締結された契約と関連している限り,同規則16条1項とともに,以下のよ うに解釈される。消費者と職業または事業活動を行う者との間で締結され,かつ, それとしては,職業または事業活動を行う者による,消費者の住所地国たる加盟 国に「向けて」の職業または事業活動の範囲には入らないが,それ以前に同一の 当事者間でそのような活動の範囲内で締結されていた別の契約と密接な結び付き を示す契約に適用になりうる。そのような結び付きを根拠付ける事情,特に,双 方の契約の当事者の法的または事実上の同一性,同一の具体的な目的物に関わる それらの契約で追求された経済的な成果の同一性,および,第1の契約で追求さ れた経済的な成果の実現に役立つべきであるとの理由での,第1の契約との関係 での第2の契約の補充的性格が存在するかを検討するのは,国内裁判所の役割で ある。 【事実の概要】 スペインで職業活動を行っている K 氏は,2005年に,ドイツの建築施工業者 がデニア(スペイン)に建築を予定している分譲リゾートマンションの一室の取 得を H 氏と KI 社との間に仲介した(以下「本件仲介契約」)。このリゾートマン ションに関しては,特にドイツにおいて,ドイツ語のパンフレットを利用して販 売活動が行われた。2006年6月17日,建築施工業者(売主)と H 氏(買主)は, 建築中の上記マンションの一室に関して売買契約を締結した(以下「本件売買契 約」)。 H 氏が総額6,290ユーロの中間金を支払った段階で,2008年に建築施工業者は 16 この判決の詳細については,野村秀敏「先行の消費者契約との密接な結び付きと 消費者事件の国際裁判管轄」専修ロージャーナル14号201頁以下(2018年)参照。 17 本判決の判例研究として,Peschke, jurisPR−IWR 2/2016, Anm. 3 ; Brosch, ELR

2016, 20 ; Wagner, EuZW 2016, 269 ; Heinze/Steinrötter, IPRax 2016, 545 ; Mank-owski, NJW 2016, 699 ; Kodek, RIW 2016, 223.

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第22条 住所にかかわらず,加盟国の以下の裁判所は専属的な管轄権を有す る。 1. 不動産に対する物権及び不動産についての使用又は用益賃貸借を対象と する手続については,当該不動産の所在する加盟国の裁判所。 (第2 文 省 略) 2.∼5. 省 略 (ブリュッセル!a 規則第24条第1号第1段落) " 共有不動産分割の申立てと不動産所在地国の裁判所の専属管轄(EU 司法裁 判所2015年12月17日判決―Komu and others, Case C−605/14, ECLI : EU : C : 2015 : 83321 【判 旨】 ブリュッセル!規則22条1号1文は以下のように解釈される。受託者が実施を 委託される売却による共有共同体の解消を求める申立ては,本規則の意味におい て「不動産に対する物権……を対象とする」訴訟のカテゴリーに入る。 【事実の概要】 いずれもフィンランドに住所を有する P 氏,J 夫人,R 夫人,V 夫人,H 夫人 は,トレビエハ(スペイン)に所在する不動産(家屋)を共有しており,R 夫人 は,V 夫人と H 夫人の共有持分に対する登記された利用権も有している。R 夫 人,V 夫人,H 夫人は,彼女らの共有持分の分割を要求し,南サヴォー(フィン ランド)第1審裁判所に,当該不動産の売却のために受託者として弁護士を選任 し,当該物件の裁定売却価格を決定することを求める申立てを行った。これに対 し,P 氏と J 夫人は,ブリュッセル!規則22条1号を援用して,当該申立ては不 動産所在地であるスペインの裁判所の専属管轄に属するとして,その却下を求め た。第1審裁判所はフィンランドの管轄を認めて申立てを認容したが,東フィン ランドの第2審裁判所は上記規則22条1号を適用して申立てを却下した。R 夫人 らの上訴を受けたフィンランド最高裁は管轄の問題を EU 司法裁判所に付託した。

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【解 説】

本判決は,共有不動産の分割を求める申立てはブリュッセル!規則22条1号の 「不動産に対する物権を対象とする」訴訟に該当する旨を肯定したものである。

本判決はまず,先例(Judgment of 3 April 2014, Weber, C−438/12, EU : C : 2012 : 212, paras. 41 to 43)の立場を何点か確認する(本判決理由第25節∼第27節)。す なわち,上記規定の専属管轄の趣旨は,所在地裁判所が,場所的近接性のために, 事実関係についてよく知ることができ,所在地国の法規や慣習を適用できる立場 にあるという点にある。また,その専属管轄は,不動産の範囲もしくは存続また は所有権,占有もしくはそれに対するその他の物権の存在を決定することに,他 方で,これらの権利の権利者にその法的地位と結びついた優先権を保全すること に向けられている訴えにのみ関連する。そして,物権と人的な請求権との差異は, 物権はすべての者に対して作用するのに対して,人的な請求権は債務者に対して のみ主張しうる点にある。 その上で,本判決は,上記の点に鑑みて,本件申立ては物権に関わるものであ るとする。また,上記規定の基礎にある秩序的な司法運営の視点も,そのような 専属管轄を認めることに有利であるとし(本判決理由第29節・第30節),以下の ように指摘する(本判決理由第31節・第32節)。問題の物件の所有権の移転には, 上記規定によって確認された連結点,すなわちこの不動産の所在地に固有な事実 的,法的な事情の考慮を必要とするからである。このことは特に,この不動産に 関する所有権とその上の利用権はスペイン法によってスペインの登記簿に登記さ れているという事情,または,場合によっては競売によることにもなる,この不 動産の売却は所在地国の手続によるとの事実,あるいはさらに,争いのある場合 には,所在地への近接性によって証拠調べが容易であるとの事実について当ては まる。先例(Judgment of 18 May 2006, CEZ, C−343/04, EU : C : 2006, 330, para. 29)上,不動産の物権に関する紛争は,一般に,不動産所在地国の法規定に従っ て判断されるべきであり,しばしば,現場で行われなければならない確認や検査, 鑑定の取寄せを必要とさせると言われており,この判例は,本件事案にも及ぼさ れるべきである。

EU 司法裁判所は,本判決の数年後,Iliev 事件判決(Judgment of 14 June 2017, Iliev, C−67/17, EU : C : 2017 : 45922)において,夫婦が婚姻中に取得した動産の 分割に係る事件はブリュッセル!(a)規則1条2項 a の夫婦財産制に関する事

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でも考慮することを認める。ただし,当該条項が競争法違反行為を理由とする責 任に起因する紛争に関連している場合に限る。 【事実の概要】 本件は"事件と同一事件であるが,そこでは,被害者である企業と被告らとの 間の化学製品の納入契約中に合意管轄条項と仲裁条項とが含まれていた。そこで, これらの条項によって,提訴を受けたドイツ裁判所の管轄が排除されるのではな いかも問題とされた。 【解 説】 本判決はまず,ブリュッセル!規則の適用範囲に入らない契約条項(仲裁条項 と非 EU 加盟国への管轄条項)に対しては,EU 司法裁判所は回答するに十分な 情報を有しないとする(本判決理由第58節)。

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" 普通取引約款のクリックラッピングと管轄の合意の方式遵守(EU 司法裁判 所2015年5月21日判決―El Majdoub, Case C−322/14, EU : C : 2015 : 33423 【判 旨】 ブリュッセル!規則23条2項は以下のように解釈される。基本手続におけるよ うな電子的方法で締結された売買契約の場合,普通取引約款のテキストのプリン トアウトと保存が契約の締結前に可能であれば,いわゆる「クリックラッピング」 によって,合意管轄条項を含む普通取引約款を契約内容に含めることは,この規 定の意味における当該合意の継続的な記録を可能とする電子的な伝達である。 【事実の概要】 K 氏はケルン(ドイツ)に所在する自動車取引業者であり,インターネットを 通じて,アムベルク(ドイツ)に所在する W 社から電気自動車を安値で購入し た。ところが,W 社は当該売買契約を取り消したとして,自動車を引き渡さな いので,K 氏は,クレフェールト(ドイツ)地裁に,当該自動車の所有権移転を 求めて訴えを提起した。W 社は,インターネットによって締結された当該売買 契約の普通取引約款中に W 社の親会社の所在地であるルーヴェン(ベルギー) の裁判所を管轄裁判所とする合意管轄条項があるから,ドイツの裁判所には管轄 がないと争った。これに対し,K 氏は,この管轄の合意は,以下のような理由に より,ブリュッセル!規則23条1項 a の書面方式を満たしていないから,売買契 約中に有効に含められていないと主張した。すなわち,普通取引約款を掲載した ウィンドウが被告のインターネットサイトにアクセスしたときにも,個々の取引 を進める過程でも自動的に開くことがない。むしろ,「新しいウィンドウ中の引 渡・支払条件を開くためには,ここをクリックして下さい。」との指示のあるボッ クスをクリックしなければならない(いわゆる「クリックラッピング」)。しかし, 上記23条1項 a の要件は,普通取引約款のウィンドウが自動的に開かれる場合に のみ満たされているというべきである。 クレフェールト地裁は,K 氏の主張の当否に関する問題を EU 司法裁判所に付

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参照

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