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(1)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任 : 反 トラスト法遵守における取締役の会社に対する義務 と責任を中心に

著者 至田 圭佑

雑誌名 同志社法學

巻 61

号 1

ページ 295‑350

発行年 2009‑05‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011732

(2)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任二九五同志社法学 六一巻一号

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任 ―

反トラスト法遵守における取締役の会社に対する義務と責任を中心に

至   田   圭   佑

  (二九五)

                                   

(3)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任二九六同志社法学 六一巻一号

                                                            調                         

  (二九六)

(4)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任二九七同志社法学 六一巻一号 第一章  問題の所在   昨今、わが国では企業不祥事の問題が連日のように取り沙汰されている

社れでのもるいてわる使てし指をとあ一たす会、でとこる覚方発が為行法違、こし行い覚内部でわれてた違法行為が発 業事祥不。企のこいと会う言葉は、一般に社 1)

は次のような財産的損失を被ることとなる。すなわち、信用失墜に伴う利益の損失、違法行為により損害を被った被害者に対する補償、違法行為に対して課せられる行政罰としての課徴金、および刑事罰としての刑事罰金の支払い等であ

る。それらは結果として会社の株主に損害を与える。然るに、企業不祥事の問題は、違法行為を原因として会社に生じた損害についての取締役の対会社責任の問題に波及する。

  そこで、取締役の対会社責任追及の手段として株主代表訴訟が用いられる。本制度は、平成五年商法改正により訴訟提起の手数料が一律八二〇〇円と定められたことを契機として

さ用にうよるれた利っに的極積り、よな 2

。このこと自体、 3

株主代表訴訟における民事責任の追及を通じた取締役の違法行為抑止の観点からは

。もは会社の法令遵守に繋がるのいとして評価することができるてひ法遵、対して令守を促すことで の務業、社会行執にに際し、取締役 4)

  しかしながら、﹁大規模会社﹂において行われた違法行為を原因として会社に生じたあらゆる損害について

株、主代 5)

表訴訟を通じて取締役の対会社責任が厳しく追及されることがある。このような場合、取締役が個人として負うべき民事責任が問われるように思われる。

  その最たる例として、日本航空電子工業株主代表訴訟事件

表おらげ挙が件事訟訴代る主株行銀和大びよれ 6)

事役被った損害について、取締等社の対会社責任が追及されたが会た法社内で行われていり違行為が発覚したことによ 事両。件は、 7)

例である。両事件において、裁判所は取締役が個人として負担するには不合理とも思われる巨額の損害賠償を命じたこ

  (二九七)

(5)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任二九八同志社法学 六一巻一号

とが注目される

を主額であったため、株代に表訴訟制度の在り方巨りはまに大和銀行事件で、。その賠償責任額があ特 8

含め大きな波紋を投げかけた

9)

  これら判例が、取締役等に巨額の責任を課したことにより、取締役等の責任額をいかに制限すべきかとの観点からの 議論や提言が行われ

定おるよに会総主株びよ)任項六一らか項二一条六責制二を一でとこるすに能可)限項七条六六二法商旧(六法旧(商 責り対に社会の役締取によ正改法商年三一成す任る責定設の限上の額任る、よ款定、はていつに平 10

の立法的解決が図られることとなった。

  他方、平成一三年改正は、取締役の免責要件(旧商法二六六条七項)として、﹁職務を行うにつき善意でかつ重大な

過失がないとき﹂と規定したために、取締役が違法な行為であると認識していた場合は救済とならない。

  また、判決が出てから事後的に免責することは、﹁法律とは最終的に裁判所が拠るべき判断基準を示すものであり、 あるべき基準によると裁判所が誤った判断をするから、これを私人が否定してよいというような法律はあり得ない﹂として批判もなされている

11

  本稿では、取締役の対会社責任の問題について、日本航空電子工業事件および大和銀行事件において、取締役等の損害賠償の範囲として責任額の根拠とされた会社に生じた損害の大部分が、法人の刑事責任として米国において法人を名

宛人として科された会社の刑事罰金であったことに着目する。つまり、法人を名宛人とした財産的制裁により会社に生じた損害についても、取締役個人に対し補填させるべく株主代表訴訟の提起が行われているのであるが、会社の刑事罰

金を民事責任として取締役個人に賠償させることに問題はないのであろうか。

  他方、取締役の会社に対する責任について、会社法四二三条一項は役員等の任務懈怠責任として規定している。その

﹁本質は委任契約の受任者である取締役の債務不履行であ﹂り

締っ取のていつに金罰事刑た払支が社会、てっがたし、 12

  (二九八)

(6)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任二九九同志社法学 六一巻一号 役の民事責任の問題は、それが債務不履行に基づく損害賠償請求に関する請求原因の要件を満たすのか否か検討されることとなる。この点、﹁罰金が課せられる類の法令違反については、行為における注意義務違反か従業員等に対する監 視義務違反が問われることが多い﹂こと

に社す当該が金罰事刑るれらせ課と会こはていつに害損たじ生に社会、る 13

果こて関係を否定するとのは難しいことが指摘因とれっりおの会社が支払た害罰金も違法行為と損さ 、そ 14

、会社の刑事罰金 15

について取締役は民事責任を負うべきであるとの見解が多数を占めていると思われる。

  また、この問題はすでに平成一三年商法改正において立法的に解決された問題であり、同様の規定が会社法上四二五

条および四二六条において設けられていることからも、それら規定によって救済されないような取締役等の行為については、﹁原則として会社法により特に手当てすべき対象だと考えられていない﹂として、責任を負わせることを問題視

する必要がないのかもしれない

16

  しかしながら、会社に科された刑事罰金について取締役の民事責任が認められている現状に対しては、会社法制定以

前から刑事法および商法の観点から以下の問題が指摘されていた。

  すなわち、刑事法の観点からは、﹁会社が支払った罰金額の取締役に対する求償が認められていることが重要である﹂ として、法人に対する刑事罰金の取締役に対する求償の問題が指摘されていた

刑点の人法、﹁はらか観の法商、方他。 17

事責任としての会社の刑事罰金といった会社の損害も、社内で行なわれていた違法行為に関する取締役の任務懈怠がなければ生じることはなかった﹂として、﹁会社に生じた損失についてその損害相当額を取締役個人に補填させるべく株

主代表訴訟を通じた取締役の対会社責任を追及が行われていることで取締役が会社に対して個人保証させられている﹂との問題が指摘されていた

18

  このような指摘がなされていた一方、わが国においてこの問題を論じている判例および文献は多くはなかった

。他方、 19

  (二九九)

(7)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇〇同志社法学 六一巻一号

アメリカでは、﹁会社の刑事訴追手続きが一般的になればなるほど、この種の訴訟は増加傾向にあ﹂り

、会社の刑事罰 20

金について、取締役に対し損害賠償責任を追及する訴訟は一般に行われていることが指摘されている

21

  そこで、本稿ではアメリカにおける判例の整理を通じ、会社の刑事罰金は取締役が任務懈怠責任に基づいて補填すべ

き民事責任を負うのか否かについて示唆を得たいと考える。なお、そのような訴訟の多くは、取締役の反トラスト法違反行為により法人の刑事責任として科された会社の刑事罰金を含めた会社の損害について問題とされていたことから、

この問題について反トラスト法遵守における取締役の義務と責任を中心に検討する。

1) 

2。() 

3――﹄() 

4﹄()  5) 

- 六

6) )、

7)  8) 

  (三〇〇)

(8)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇一同志社法学 六一巻一号 ︿﹀(

9) ﹄(

10)  11) 

5

12﹄() 

13)﹂) 

14) 

15) 

13

- 四

16)() 

17、佐) 

18) 

5

19) 

20S AGINTIFH SSTO LETAROFERN ODESA BSIORTUCESOR PPONerR CA “r.,, JebC W I.darhic, RITICALART INF OTNEMSSESS AeeS)  CORPORATE WRONGDOINGS”, 18 DEL. CORP. L. 35, 41-42. 1993.

 ...” 71 B.U.L.Rev24197, 269. 199190 21IMUR-8819S, TROE CLAREDE F CTHHMARK A. COEAN ” CORPORE TEEDP UN: ATNIMTHISNU PDN AAE INGEICTCAR PIN OCETNE SNN) 

  (三〇一)

(9)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇二同志社法学 六一巻一号

第二章  反トラスト法違反を惹起させた取締役の対会社責任   反トラスト法遵守における問題として次の二点が指摘される。一点目として、反トラスト法は、競争の保護を理念と し、会社および株主保護を目的とする法ではない

事反人と法人それぞれに刑罰の金を科すことを規定する個 法違ト法ス点目として、反トラストは。、刑罰法規であり、反トラ二 22

23

  つまり、反トラスト法において、会社および株主はその保護の目的とされていないところ、反トラスト法違反を惹起させた取締役の対会社責任に関する条項は、反トラスト法それ自体には規定されていない。

  しかしながら、会社に科された刑事罰金も、取締役と会社および株主との関係においては、取締役の反トラスト法違反行為によって、会社に生じた損害に他ならないことから、株主代表訴訟を通じて、取締役の民事責任の追及が行われ

ている。

  このことについて、以下の二つの判例を取り上げ、反トラスト法には直接規定されていない会社の刑事罰金と取締役

の民事責任の問題について検討する。

第一節  違法行為の行為者としての取締役の責任ウィルシャーオイルテキサス社対ライフル(

W ils hir e O il C om pa ny o f T ex v . R iff e

19 69

))

︹事実の概要〕

  本件は、デラウェア州の会社である

W ils hir e O il C om pa ny o f Te x

︿以下﹁

W ils hir e

﹂という。﹀が、元従業員︿役員を

含む﹀等に対して、様々な州と連邦の反トラスト法違反に関与した結果として負った刑事罰金、制裁金、およびその他

  (三〇二)

(10)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇三同志社法学 六一巻一号 の支出金の損害賠償を求めた訴訟である。

 

W ils hir e

は、元従業員等がカンザス州とミズーリ州で販売されたアスファルトの価格を固定することを共謀したこと

により、連邦反トラスト法違反として刑事告発された。会社は、ミズーリ州裁判所において不抗争の答弁し、カンザス州の地区裁判所において有罪と決定された。その罰金額は一万ドルであった。

  このことにより、

W ils hir e

は、上記の罰金額を含み刑事罰金、民事損害賠償金、和解、および訴訟代理人の報酬等の総額を支出として支払った。

  そこで、

W ils hir e

は、その支払いに付随する責任は、三人の元従業員等の許可されていない行為として、もっぱら支払われるべきであり、従業員等の﹃誠実性に欠ける行為﹄の結果として費やされた、また費やすことが求められうる総 額すべてについて彼らから回復する権利があると主張した。︹第一審判旨

24

  第一審において地区裁判所は、会社がそれらの法律︿反トラスト法﹀の違反によって科された刑事罰金を回復することを認めることは、一般的な公序良俗に違反し、反トラスト法の目的を阻害することになるという理由に基づいて申立

てを却下した。

︹第二審判旨

25

  控訴裁判所は次のように判示した。   ミズーリ州の連邦地方裁判所において不抗争の答弁の後で支払われた一万ドルの罰金について、会社がこれを取り戻すことを認められないことは同意できない。

  第一審で認められた原告の申立てにおける公序良俗は、衡平法における古くからの起源をもつ﹃クリーン・ハンド原

  (三〇三)

(11)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇四同志社法学 六一巻一号

則﹄違反に基づくものであり、一般化されたそのルールは、﹃請求に基礎付けられる取引との関係における原告の行為

が違法または犯罪である場合、裁判所は救済を否定するだろう﹄というものであるが、このルールが本件において適用できないことは明らかである。そして、株式会社の刑事責任は、本質的に代位的なものであり、それは会社の従業員の

行為によってのみ生じたものである。

  これに対して、従業員に次のような手段を認めることは、循環論法の行使となる。すなわち、自分たち︿従業員等﹀ の違法行為が、同じ行為によって引き起こされた損害を回復するための会社の権利を無効にさせると。(

Id a t 12 83 .

)   これに対して、

W ils hir e

は、ただその従業員の行為の結果による違法行為に対して課された損害を取り戻そうとして いるだけである。⋮⋮独占禁止法上の救済は制定法によって与えられるという事実は、権限外の行為をした従業員によって生じさせられた損害を回復するための伝統的なコモンロー上の権利を

W ils hir e

から奪うことを認めているのではな

い。(

Id a t 12 84 .

)   なお、この点について言われることは、控訴裁判所は申立ての却下を認めた際、不用意に地区裁判所が依拠した

W ils hir e

の請求の狭い理論に対し適切に答えることである。   しなしながら、それはきわめて明白である。すなわち、従業員の責任の存在が、それらの損害の賠償を

M as te rs on

︿被 上訴人である元従業員の一人﹀に要求しているという法的根拠を提供する場合を除き、損害の独立の項目についてつなぎ合わせる必要はない。⋮⋮繰り返していうことには、

W ils hir e

は、反トラスト法違反が会社を民事と刑事責任の服さ

せた従業員に責任を負わせるために信認義務の法を持ち出すことを試みている。(

Id a t 12 85 .

)   法人処罰として会社が支払った刑事罰金について、個人である違法行為者に対する民事責任の追及はもちろん

  (三〇四)

(12)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇五同志社法学 六一巻一号

W ils hir e

判決以前から行われていた

26

  他方、

W ils hir e

判決は、取締役を含む従業員等が違法行為に関与していた場合、その違法行為を原因として会社に生

じた損害は、法人の刑事責任として会社に科された会社の刑事罰金であっても株主代表訴訟における損害賠償の対象となること、および原告は従業員等が会社に対して負っているコモンロー上の信認義務違反に基づき、刑事罰金相当額の

損害について民事責任の追及を行うことができることを明示した点において重要な意味を持つ。

  しかしながら、

W ils hir e

判決に対しては、﹁

W ils hir e

判決の問題は、従業員等が反トラスト法に違反した時、その損害

について会社による当該会社の従業員に対する訴訟の私権を認めるべきかどうかであった。シャーマン法とクレイトン法はそのような訴訟上の権利を与えない。しかしながら、裁判所は、制定法がそのような救済を与えないところ、連邦

制定法違反について民事訴訟を認めている﹂として以下の二つの問題が指摘されていた

たしことを予定していないが、果たてす犯罪行為に及んだ会社の株主のる護ンイーマ保及びクレ法ト法)は、株主をン れ一に、﹁こシら法律(ャ。第 27

めに提起されうるであろうか﹂と。第二に、﹁反トラスト法の目的との調和において、この私法上の訴訟は許されるのであろうか﹂と

28

第二節  監視義務違反の取締役の責任グラハム対アリスチャルマース社(

G ra ha m v . A llis -C ha lm er s M fg . C o.

19 63

))

︹事実の概要〕

  本件は、

A llis -C ha lm er s M fg . C o.

︿以下﹁

A llis -C ha lm er s

﹂という。﹀に代わって、

A llis -C ha lm er s

の取締役と四人の取

締役でない従業員に対して行われた株主代表訴訟である。

  (三〇五)

(13)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇六同志社法学 六一巻一号

  申立ては、

A llis -C ha lm er s

と四人の取締役でない従業員が起訴に対し、有罪の答弁をしたことに基づく。

A llis - C ha lm er s

と四人の取締役でない被告が有罪の答弁をした起訴は、連邦反トラスト法に違反する以下の行為を摘発するものである。それは、一九五六年から行われた会社と取締役でない被告人等が、民間の電気事業会社と政府機関への入 札を操作し、価格を固定するために他のメーカーおよびその従業員と共謀したことである。本訴訟は、これら法違反により

A llis -C ha lm er s

が被ったと主張される損害賠償金の回復を求めるものである。

︹第一審判旨

29

  第一審において、原告は以下のように主張した。すなわち、﹁価格固定は

A llis -C ha lm er s

の製品の購買者に直接的な損 失を与えただけでなく、

A llis -C ha lm er s

の株主に間接的な損害を与えた。それは、不正を正す目的のために連邦反トラスト法の下で提起される政府執行訴訟によるものであった。(

Id a t 32 9 .

)﹂と。

スしるあでのもるれらめ求生す派に社会らか役締取て。なづ行ラト反の等員業従︿為のわ連一、は役締取社会、ちい基   ﹁第づ基に弁答の罪有に一、罰は済救るれらめ求でこくこにて由理の次は償賠害損、しのそ。たじ生てっよに課賦金

ト法違反行為﹀が、会社と株主に相当の損害を引き起こしていることについて知っていたか、または合理的な注意の下で知っているべきであったと。しかし、取締役は会社の役員、代理人および従業員を適切に監督できていなかった。取

締役等は、一連の行為︿従業員等の反トラスト法違反行為﹀をもたらし、不問にし、黙認し、その行為に参加した。そして、会社の業務上の問題に関し、不作為または不誠実であった。(

Id a t 32 9 .

)﹂と。

、れこの下以、とご合場るさが張主を為作不、ちわなと考。れ模規、質性の務業、はそ慮。いならなばれけなれさするあ   ﹁れらめ求に役締取社会、ていおに督監と択選の員業る従注らでり通の次は素要るれ得のらか例判るす連関と度程意

程度、方法、そして実行権限の委任の合理性であり、取締役が義務を果たす際の目的の正直さと熱心さの有無である。

  (三〇六)

(14)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇七同志社法学 六一巻一号 ⋮⋮法が今、あらゆる状況において会社従業員の不正行為のために責任を負う可能性から一般的に自分自身を守るためのスパイ行為のシステムを設けることを明確に求めていない一方、具体的な場合において払われる注意の程度は、その

取り巻く状況と事実による。言い換えれば、従業員による不法行為は、一般的な命題として先手を打つことを求められない。そして、従業員の不法行為の状況と事実が明らかであるところについてのみ、法が責任を課すことを求める、注

意を欠くまたは怠惰な取締役に対して非難が与えられる。(

Id a t 33 2 .

)﹂と。︹第二審判旨

30

  義務の不履行によって、会社の損失について責任を負うことになるかどうかという問題は、状況によって決まる。もし、無責任にも明らかに信頼するに値しない従業員に信頼を置いていた場合、取締役としての義務の履行を傲慢にも拒

絶ないし無視した場合、また従業員による不正行為の明らかな危険サインを故意にないし不注意によって無視した場合、法は責任を負わせるだろう。しかしながら、疑いに基づく証拠が明らかになると取締役会は速やかにそれを終わら

せるための行動をとり再発を防止した。原告は、疑いがない場合であっても、以前からこれらの措置が取られるべきであった主張する。しかし、我々︿当法廷﹀はそのように考えない。そして、会社取締役に次のように仮定することを求

めることは正当性を伴わず、それを求める法の支配を知らない。すななち、すべての会社従業員は法違反者の発端であ

り、手綱がなければ、不法な性質を現すであろうと。(

Id a t 13 0 - 13 1

) 我々︿当法廷﹀は、したがって以下のように主席判事代理の決定を支持する。個人である被告取締役は法律上の問題として責任を負わない。それは会社を損失に服さ しめる反トラスト法に違反したことを知らなかったという理由からである。(

Id a t 13 1 .

)﹂

  デラウェア州最高裁判所は、﹁原告は、法律上の問題として、会社取締役はコモンロー上、積極的に会社の活動を経

  (三〇七)

(15)

会社の刑事罰金についての取締役の民事責任三〇八同志社法学 六一巻一号

営し、監督する義務の明白な不注意のために会社が被った損失について責任があるという法律上の陳述だけによること

を強いられる﹂と判示した

戻のンモコるす対に社会役ー締取、はに主株、もロ上っ会り取を金罰事刑の社、のきづ基に反違の務義てあで合場いな

ra m ha G

から、役とこの判決のように取締個人がれが拠証なうよるさ。訴起上事刑てしとこ 31

す私法上の権利が認められる。なお、

G ra ha m

判決では、従業員等の違法行為に対する取締役の積極的な監視義務は否定されたが、取締役は、従業員等の不正行為に対する危険サインを故意に、または不注意によって見落とした場合、会

社の刑事罰金について損害賠償責任を負うことになろう。

第三節  小括   反トラスト法違反を惹起させた取締役の対会社責任の問題に関し、会社の刑事罰金について取締役は民事責任を負う のか否かの問題は、自身の違法行為により会社に生じた損害について、取締役は民事責任を負うのか否かの問題である。この問題について、

R ob er t T ho m ps on

は、﹁役員は、会社の代理人として、会社のさまざまな日常業務を遂行する。役

員の実体および義務は、通常、会社法によって規定されるが、会社の義務に対する役員個人の責任は、主としてコモンローから導かれる﹂ことを指摘する

32

  そこで、上記の指摘と第一節における

W ils hir e

判決に対する問題点に基づき、以下の順に検討する。第三章では、会社の刑事罰金について、法の保護の対象とならないものによる取締役に対する損害賠償責任の追及が認められる根拠に

ついて、反トラスト法遵守における取締役の会社および株主に対する義務の問題を検討する。第四章では、法人の刑事責任として、会社に科された刑事罰金について、取締役に民事責任を負わせる訴訟は、反トラスト法の目的および法人

処罰制度と整合性するものであるのか否かについて検討する。これら検討をふまえ、その罰金相当額の損害を最終的に

  (三〇八)

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