【同志社大学労働法研究会】就業時間変更に関する 団交拒否等と不当労働行為の成否
著者 山本 陽大, 土田 道夫
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 8
ページ 495‑522
発行年 2009‑03‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011711
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
四九五同志社法学 六〇巻八号 ◆同志社大学労働法研究会◆就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否 ―兵庫県・兵庫県労委(みのり農協労働組合)事件
平成一九年九月一一日神戸地裁判決平成一八年(行ウ)第一八号、不当労働行為救済申立棄却命令取消請求一部認容、一部棄却〔控訴〕労働判例九五〇号三一頁、《労委命令》兵庫県労委=平成一七年九月一五日命令、労働判例未掲載、別冊中時一三三四号一七六頁
山 本 陽 大 土 田 道 夫
(四七六七)
【事実の概要】
南北平成一二年四月三日に、りはりま農業協同組合、三木市、あ組(は、農業協同で合以⑴下﹁農協﹂という。)A
1
等者事当.農業協同組合、美嚢吉川町農業協同組合、加東郡農業協同組合(以下﹁旧四農協﹂という。)を合併して設立された。
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
四九六同志社法学 六〇巻八号⑵ X労組は、Aの職員によって組織された労働組合である。X組合内部には、﹁女性会﹂として、女性組合員の代表
者及び執行部三役で構成する会議が置かれている。
基を﹂書定協本以取す関に分身用るり﹁交わして労働協約を締結した(雇け労成付組とAは、平一⑴五年一月一六日X
2
ていつに更変間時業就のAL.下﹁基本協定﹂という。)。基本協定では﹁職員の労働条件の変更については、Aは、X労組と事前に協議をする﹂とされている(協定書第一項)。
⑵ Aにおいては、農協共済契約の獲得を主たる業務とする職員がライフアドバイザーと呼ばれている(以下﹁LA﹂ともいう。)。
⑶ LAについては、共済契約獲得のため、顧客との面談が行いやすい時間帯(顧客が帰宅している午後六時から午後九時まで)における時間外勤務が恒常的に見られた。そこで、Aとしては、過重労働等によりLAの心身の健康が
損なわれないよう配慮する必要があった。また、LAの一部からも、残業した日の翌日に定時出勤すると疲労が蓄積するので出勤を遅らすような制度を導入して欲しい旨の要望があった。そのため、Aは、LAについて時差出勤
を導入すべきであると考えていたが、一か月の変形労働時間制については労使協議中で直ちに採用することができない状況にあった。
⑷ Aの就業規則二八条一項は、職員の始業・終業時刻を定めており、LAの始業・終業時刻及び労働時間は、通常の職員と同様、始業が八時四五分、終業が一七時一五分、休憩が六〇分、労働時間が七時間半であった(LAは一般
の職員に含まれる。)。ところで、就業規則二八条二項は、﹁始業および終業時刻は、業務の都合により、事前に予
(四七六八)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
四九七同志社法学 六〇巻八号 告して当該勤務日の所定労働時間の範囲内で、職場の全部または一部もしくは各人において変更することがある﹂としている。⑸ Aは、西脇労働基準監督署の課長や顧問弁護士に相談した後、就業時間の変更は、就業規則二八条二項所定の始業・終業時刻の変更権を根拠とするものであること、本件変更は、始業と終業時間は変更するが所定労働時間を変更す
るものでもないことから、本件変更が労働条件の変更に該当するものではなく、業務命令によって実施が可能であるとの結論に達した。
⑹ Aは、平成一五年九月一二日、各統括支店長を通じ、LA各自に対し﹁就業時間帯の変動(時差出勤)について﹂と題する文書により、平成一五年九月二二日から就業時間に関する本件変更を実施する旨を通知し、実際にも、同
日から実施された。本件変更の後、LAの時間外労働時間は減少した。X労組は、平成一五年九月一六日付け﹁み農労発〇〇二号﹂により、LAの就業時間の変更につき抗議するとともに団体交渉の開催を申し入れ、同月二九日
に開催された団体交渉の席上、Aに対し、LAの就業時間の変更について、就業規則の一方的な変更をせず、基本協定に従い、改めてX労組と事前協議(団体交渉)するよう求めたが、B総務人事部長及びC専務は、業務命令で
実施するとして団交要求を拒否した。
3
.脱退勧奨等について⑴ Dは、平成一六年五月二一日、E部長に誘われ、F課長、G係長及びHの三人と食事をしたところ、食事の席において、F課長は、Dに対し、X労組に加入していることを確認した上で、﹁西脇支店の中で労組に加入している人は、
ごく僅かだ。過去に加入していた人も多数脱退している。加入していても意味がないのではないか﹂﹁農協の役員
(四七六九)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
四九八同志社法学 六〇巻八号も労組員と非労組員と一線引いている。加入していても得にならないと思うよ﹂等と言った。また、G係長も﹁僕
も以前は加入していたが、だいぶ前に脱退した。入ってたら得はないからやめた方がいいのと違うか﹂等と言った。⑵ Iは、平成一六年五月二〇日ころ、業務終了後、西脇支店において、J支店長から﹁君は四月の移動で一旦、融資
への内示がでているように、上から目を掛けられている。不当労働行為の地労委申立ての傍聴に参加していると、次の移動で融資窓口への道が閉ざされる恐れがあるので、自重してはどうか﹂等と言われた。
⑶ D及びIに対し労働組合からの脱退勧奨がされた事実を知ったX労組は、平成一六年七月二九日付け﹁み農労発第〇四九号﹂を発し、Aに対し、不当な脱退勧奨であるとして抗議した。これに対し、Aは、平成一六年八月二〇日
付け﹁みのり農発一四四号﹂により、﹁事実確認まではいたりませんでしたが、管理者に対して、不当労働行為についての周知徹底文書を配布いたしました﹂と回答するとともに、同日付で、B総務人事部長が、管理職宛に、不
当労働行為について注意するよう文書で警告した。
りを済センター等の多数の事業所し有農ているが、事業所間で遣り取経、営に⑴Aは兵庫県下、、店店、複数本の支
4
て.つに止禁用利便ルーメいする文書等の配送を運送会社に請け負わせており、その配送システムが﹁メール便﹂と呼ばれている。Aは、業務外の私用文書の配送にメール便を利用することを原則的に禁止していたが、メール便で配送される個々の文書の中
身を確認することが困難なため、私的なメール便利用についてAから注意がされることはなかった。⑵ X労組の前身である﹁北はりま農業協同組合職員組合﹂は、労働組合間の文書等の遣り取りにメール便を利用して
おり、北はりま農協側は、これに異議を述べることはなかった。また、X労組は、合併後もメール便を利用して、
(四七七〇)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
四九九同志社法学 六〇巻八号 労働組合員に対し、文書等を配布しており、全職員に対しても、平成一二年に三回、平成一五年三月に一回、文書を配布していた。⑶ メール便の運用は、概ね、次のとおりである。すなわち、配送業者は、本店(又は巡回配送先の事業所)において、宛先事業所ごとに仕分けがされた文書等を受領し、予め決められた事業所(小規模な事業所への巡回はされない。)
を巡回して各事業所に配送し、Aの担当職員が、巡回先事業所に配送された文書等を引き取って、さらに、これを宛先である各職員に配布するという手順になっていた。本店でメールの仕分けを担当しているのは総務課職員であ
り、例えば、X労組が、メール便を利用してAの全職員宛てに文書を配布しようとすれば、総務課職員にはその分の仕分けの負担が生じるし、宛先事業所の担当職員にも、全職員に当該文書を手渡す負担が生じる。
⑷ X労組は、平成一五年六月一八日、﹁労働組合は、なぜ今コンプライアンス闘争なのか!﹂と題する書面を、メール便を利用して、全職員に送付した。Aは、今までX労組が労働組合員を対象にメール便を利用して文書の遣り取
りをしているとの認識はあったものの、X労組がメール便を利用して、全職員に宛てて文書を送付しているとの認識はなかったところ、この事実につき報告を受けたAは、平成一五年六月三〇日付け文書を発し、メール便の利用
を許可制にした。
⑸ しかし、X労組は、Aの申入れを無視し、Aの許可を得ることなくメール便を利用し、平成一五年八月六日付けの二つの文書、すなわち﹁職員のみなさまへ 労組は、JAの民主的で健全な運営を求めています﹂と題する文書及
び﹁みのり農協労組への加入のお誘いについて﹂と題する文書を全職員に配布した。⑹ Aは、平成一五年八月二八日付け文書により、﹁就業時間中、職員は農協の業務命令に従って職務を誠実に遂行す
る義務を負っていますので、原則として就業時間中の労働組合活動は禁止します。よってメール便など農協施設の
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就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇〇同志社法学 六〇巻八号使用については、当然就業時間中の使用になるため禁止しますのでご注意下さい﹂として、X労組によるメール便
の利用を禁止する旨通告した。もっとも、この通告は、X労組によるメール便の利用を一切禁止したのではなく、上記⑷許可制の運用を厳格なものとする旨の警告であった。
⑺ X労組は、平成一五年八月二八日の団体交渉において、メール便利用禁止の理由を問うたところ、B総務人事部長及びJ総合企画室長は﹁事前ないし事後に承諾をということで認めてきた﹂﹁全職員にメール便でいくというのは
はじめて判った﹂等と回答した。このようなやりとりは、平成一五年九月四日、同月二九日及び同年一〇月二日の団体交渉においても繰り返された。
⑻ なお、Aは、その後現在まで、X労組が組合員を対象として文書を配布する場合にはメール便の利用を許可しているし、その許可を与える際、当該文書の内容を閲覧するようなこともしていない。
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.平成一三年協定の解約について⑴ X労組とAは、平成一三年七月九日付けで、労働協約を締結した(以下﹁平成一三年協定﹂という。)。平成一三年協定には、団体交渉におけるAの出席者を原則として常勤、役員全員とすること(以下﹁協定条項︿一﹀﹂という。)、
女性会を就業時間内に開催することを容認すること(以下﹁協定条項︿二﹀﹂という。)が合意内容として含まれていた。
⑵ Aは、平成一五年八月一二日付け文書により、X労組に対し、平成一五年八月一二日以降の団体交渉では、A側の出席者を総務人事部長、総合企画室、該当室・部・次長、総務人事部次長とすることを通知した。
⑶ X労組は、平成一五年八月二八日、団体交渉において、この問題を取り上げたが、Aからはいずれの役員も参加し
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就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇一同志社法学 六〇巻八号 なかった。出席したB総務人事部長は、出席職員は全権委任を受けているわけではなく、交渉の内容によっては、その場で回答できるものとそうでないものとがある旨の説明をした。⑷ C専務は、平成一五年九月四日に開催された団体交渉に出席し、X労組に対し、平成一三年協定を破棄することになる旨を述べた。
⑸ Aは、平成一五年九月一七日付け文書により、X労組に対し、﹁本日から九〇日を経過した日をもって、平成一三年七月九日付け協定書のうち組合長ら常勤役員の団体交渉出席及び労働組合の女性会の就業時間内開催についての
条項を解約することを申入れます﹂と通知した。⑹ もっともAの役員は、平成一三年協定を解約した後も、できる限り団体交渉には出席しており、役員が出席しない
部長のみによる団体交渉は一、二回行われただけで、これにより、団体交渉に著しい支障が生じたことはなかった。
)、年六一成平)、六号第)不(年五一〇成年号三第)不(六月一成平(日四一平⑴五労組は、平成一年(一二月一六日X
6
令命び及て立申済救為行働労当不.平成一六年一一月一二日(平成一六年(不)第五号)の三回にわたり、Y県労委に対し、不当労働行為の救済命令
の申立てをした。X労組が申し立てた救済命令の内容は、別表の申立て〔一〕ないし〔七〕のとおりである。⑵ Y県労委は、平成一七年九月一五日付けで、別表の申立て〔二〕だけを認容して救済命令を発し、それ以外のX労
組の申立てをいずれも棄却する旨の命令を発した(以下﹁本件命令﹂という。)。本件命令の命令書の写しは、平成一七年九月二六日、X労組に送達された。
(四七七三)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇二同志社法学 六〇巻八号(別表)申立て〔一〕Aは、ライフアドバイザー(LA)の始業・終業時刻の変更について、X労組と誠実に交渉しなけれ
ばならない。
申立て〔二〕Aは、平成一六年九月二一日付け﹁時間外労働に関する要求書﹂についてX労組と誠実に交渉しなければならない。
申立て〔三〕Aは、X労組の発行する文書の内容に干渉し、その内容を理由にしてX労組のメール便の利用を制限することにより、X労組の活動に支配介入してはならない。
申立て〔四〕Aは、X労組の組合員に対してX労組からの脱退を勧奨したり、労働組合活動を行うことで人事上不利益を受ける旨を告知することにより、X労組の活動に支配介入してはならない。
申立て〔五〕Aは、Aの会議、朝礼等でX労組の活動を誹謗中傷することにより、X労組の活動に支配介入してはならない。
申立て〔六〕Aは、平成一三年七月九日付け協定(平成一三年協定)のうち、A側の団体交渉出席者に関する条項(協定条項︿一﹀)及び女性会の就業時間内開催を容認する条項(協定条項︿二﹀)を解約することに
より、X労組の活動に支配介入してはならない。申立て〔七〕謝罪・誓約文の手交及び掲示
(四七七四)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇三同志社法学 六〇巻八号 【争点】・Y県労委による申立て〔一〕、〔三〕、〔四〕、〔五〕、〔六〕、〔七〕棄却部分の当否※但し、脱退勧奨に関する申立て〔四〕及び〔五〕に関しては専ら事実認定上の問題である為、本稿では検討を省略
する。
【判旨】 一部認容、一部棄却第
2
〔一〕棄却部の分当否)について立申の表別(更変の間時業就のALて﹁
1
Aの就業規則二八条二項の規定は、字句だけを素直に読めば、就業規則の変更という手続によらず、Aの一方的な意思表示だけで、労働者の始業・終業時刻を恒常的に変更することができるかのようにも理解できるし、Aはそう解
釈するようである。しかし、労働基準法(以下﹁労基法﹂という。)八九条一号は、就業規則の必要的記載事項として始業・終業時刻を掲げているから、そのような解釈は、明らかに労基法に違反する事態を招来する。Aの就業規則二八
条二項の規定は、労基法に違反しないよう解釈・運用がされなければならないから、この規定は、業務命令により応急
的、一時的な始業・終業時刻の変更を許容した規定と解釈・運用しなければならない。﹂
﹁
2
LAの就業時間に関する本件変更は、恒常的なものであるから、これを実施するためには就業規則の変更手続を
踏まなければならない。また、本件変更は、一部のLAについては夜間の時間帯にまで就労を義務付けることになるから、労働条件に重大な影響を及ぼすことが明らかである。使用者は、労働者の労働条件に関する事項であって、使用者
に処分権限がある事項については、団体交渉に応じる義務があると解される。就業規則の変更に関する事項はもとより、
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就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇四同志社法学 六〇巻八号原告の組合員との労働契約の内容に関する事項なども団体交渉の対象となるのであり、したがって、LAの就業時間の
変更の問題についても、Aは、当然、X労組の団体交渉に応じる義務がある。﹂
﹁
3
Aは、LAの就業時間の変更につき、X労組に説明をし、X労組の意見を聴いており、団体交渉も行ったと主張
するが、上記認定事実に照らせば、LAの就業時間に関する本件変更を実施する際のAの対応は、LAの就業時間の変更を既定のこととし、あくまで、業務命令によって実施するとの姿勢に終始しているのであって、このような対応をも
って、この問題につきAが団体交渉に応じたと評価することなどできない。﹂
﹁
4
したがって、LAの就業時間に関する本件変更について、Aは、X労組から団体交渉を求められたが、就業規則
二八条二項の解釈を誤り、正当な理由なしに団体交渉を拒否したものと認められる。そして、この団交拒否が労組法七条二号所定の不当労働行為に該当することは明らかであるから、本件命令のうち別表の申立て〔一〕を棄却した部分は、
労組法七条二項の解釈適用を誤った違法があり、取消しを免れない。﹂
第
4
いつに)否当の分部却棄〕三〔て立申の表別(限制用利便ルーメて﹁
1
Aが、平成一五年六月三〇日付け文書により、以後、X労組によるメール便の利用を許可制にしたことは前記認
定のとおりである。労働組合による企業施設等の利用は、本来、使用者との合意に基づいて行われるべきものである。使用者が企業施設等の利用を労働組合に許諾するかどうかは、原則として、使用者の自由な判断にゆだねられており、
使用者がその利用を受認しなければならない義務を負うものではないから、権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、使用者が利用を許諾しないからといって、直ちに不当労働行為を構成するということは
できない。本件においては、X労組とAとの間において、X労組によるメール便の自由な利用に関する合意がされた事
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就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇五同志社法学 六〇巻八号 実を認めるに足る証拠はないし、Aによる、メール便利用の制限が権利の濫用に当たるとの特段の事情もうかがえないから、Aによるメール便利用の制限は不当労働行為ということができない。したがって、本件命令のうち別表の申立て〔三〕棄却部分の取消しを求めるX労組の請求は理由がない。﹂
﹁
2
X労組は、北はりま農協と労働組合との間のメール便自由利用に関する合意が、合併の効果としてAにも承継さ
れたと主張するようであるが、そもそも、旧四農協のうち北はりま農協以外の三農協は、メール便の制度がなかったのである。また、旧四農協が合併されたことにより職員数と営業地域が著しく拡大したのであって、X労組の実施するメ
ール便は、運営規模の点で、北はりま農協のメール便よりも著しく拡大したのである。したがって、北はりま農協時代のメール便とX労組が運用するメール便とを同一のものとみなすことは困難であり(労働組合によるメール便利用がX
労組の業務に与える影響も増大していると考えられる。)、北はりま農協時代に労働組合のメール便の自由な利用が許容されていたという事実だけから、Aが、X労組によるメール便の自由な利用を受認すべき義務と考えることは困難であ
り、北はりま農協時代のメール便に関する合意が、当然に、X労組にも承継されたと考えるべき根拠は乏しい。したがって、合意の承継をいうX労組の主張は失当である。﹂
﹁
3
X労組が合併後もメール便を利用していたこと、Aがこれを黙認していたこと、Aがこれを黙認していたのはX
労組の組合員同士の文書の遣り取りに利用されているだけであるとの認識によることは前記のとおりである。Aによる黙認期間が合併後三年程度であり、かつ、黙認の理由も前記のとおりであることに照らせば、その黙認は、X労組によ
るメール便の自由利用を許容するAの姿勢の現れと理解することはできないから、X労組とAとの間にメール便自由利用に関する黙示的合意が形成されたとはいえないし、平成一五年六月三〇日付け文書によってメール便の利用を許可制
にしたことが、信義則や禁反言則に反するものとして権利の濫用に当たると解すべきでもない。﹂
(四七七七)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇六同志社法学 六〇巻八号﹁
4
なお、メール便を利用してX労組が全職員に文書を配布する場合、Aの職員が、それらの文書の仕分け等のため
に労力を割かなければならないことは明らかであり、それらの作業が業務に与える影響は無視することができるほど小さいものとは考えにくい。したがって、X労組によるメール便の自由利用を許容しても、Aの業務への影響が僅少であ
るとはいえず、影響が僅少であることから、メール便の自由利用を禁じたAの行為が権利の濫用であるとすることも困難である。﹂
第
5
〔六〕棄却部の分当否)について立申の表別(約解の定協年三一成平て﹁
1
労働協約の解約は、労組法が認める権利の行使であるから(労組法一五条三項、四項)、平成一三年協定の解約が権利の濫用にあたると認められる特段の事情のない限り、その解約が不当労働行為に該当することはない。﹂
﹁
2
これを本件についてみるに、協定条項︿一﹀を解約した後においても、常勤役員の団体交渉出席の事実が認められること等に照らせば、協定条項︿一﹀の解約の理由は、常勤役員全員の出席可能な日程が決まらないために、団体交
渉の日時が先送りになることを回避するためであるとのAの主張を、団体交渉を空転させ、形骸化させようとの意図を隠ぺいするための虚偽の主張ということはできず、かつ、協定条項︿一﹀を解約されたことによりX労組に特段の不利
益が生じているとは認められない以上、Aが、団体交渉を空転させ、形骸化させようという意図を有していたと認めることもできないから、協定条項︿一﹀を解約したことが不当労働行為に該当しないことは明らかである。﹂
﹁
3
また、女性会の就業時間内開催についても、女性会が就業時間内に開催されることにより業務に支障が生じることは明らかであるうえ、女性会を就業時間内に開催しなければならない合理的な理由も認められないのであるから、協
定条項︿二﹀を解約することが不当労働行為に該当するという特段の事情は何ら認められない。﹂
(四七七八)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇七同志社法学 六〇巻八号﹁
4
したがって、平成一三年協定の解約を不当労働行為ということはできず、本件命令のうち別表の申立て〔六〕棄却部分の取消しを求める原告の請求は理由がない。﹂
第
6
て〔七〕棄却部分の当否)につい立の申の謝罪・誓約文手表交及び掲示(別てね者交手の文約誓・罪謝に用び使、めたるす止防を発及掲の委委に量裁な汎広の会員働示労、はかうどかるず命を再為 ﹁にが為行働労当不はにAかめ確、りおとの示説に上認以行を働労当不の種同、め戒為れ行働労当不の去過、がるら
られている。したがって、本判決により、本件命令の一部が取り消され、処分行政庁が取り消された部分について改めての判断を行う際、処分行政庁は、謝罪・宣誓文の手交及び掲示を命ずるかどうかも改めて判断すべきことになる。本
件では、これを命じなければ救済の実効性がおよそ確保されないとの特殊な事情もうかがえないのであるから、当裁判所が、本判決の際、処分行政庁の裁量を否定し、謝罪・宣誓文の手交・掲示命令の発令を義務付ける趣旨で、別表の申
立て〔七〕棄却部分が違法であるとしてこれを取り消すことは相当ではない。﹂
【研究】 判旨の一部に疑問
1
.本判決の意義本件は、農業協同組合であるA(被告補助参加人)の職員によって組織されたX労働組合(原告。以下、﹁X労組﹂)
がなした不当労働行為の救済申立につき、Y県労働委員会(被告。以下、﹁Y県労委﹂)が平成一七年九月一五日付の命令において、申立の一部を棄却したことから、X労組が当該棄却部分の取消しを求めて、訴えを提起したものである。
本判決は不当労働行為法上のいくつかの重要な論点を含有している。まず、ⓐLAの就業時間の変更については、始
(四七七九)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇八同志社法学 六〇巻八号業・終業時刻の恒常的な変更の問題を義務的団交事項と解したうえで、Aの主張は就業規則二八条二項の解釈を誤った
ものとして、団交拒否を不当労働行為(労組法七条二号)と評価した。次に、ⓑメール便の使用禁止が支配介入(労組法七条三号)に該当するかについては、これを使用者の施設管理権と組合活動の競合問題に関するいわゆる許諾説の枠
組みを援用したうえで、その権利濫用性を否定している。更に、ⓒ協約の解約による不当労働行為が成立するかについてはこれを否定し、ⓓ不当労働行為の救済手段に関する労働委員会の裁量を広く認めたものである。
本稿では上記の順に従い、従来の議論状況を踏まえつつ、本判決について検討を行うこととしたい。
2
ていつに)否当の分部却棄〕一〔立.間LAの就業時の申変更(別表のて⑴ 義務的団交事項該当性
およそ団体交渉は、広くは﹁労働組合ないしそれに準ずる団体が、代表者を通じて、使用者または使用者団体と労働条件等の問題をめぐって交渉すること (
当な動権の一環をす体。もっとも、不行団法る定義され、憲二﹂八条が規定すと 1)
労働行為制度による救済範囲という視点でもってみると、その拒否に対して不当労働行為法上の保護が与えられるという意味においての団体交渉は、上記・定義におけるそれよりも一層狭いものとなる。
すなわち、我が国において労組法七条二号は、﹁使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと﹂を不当労働行為の一つとして規定し、団体交渉過程についても法的サポート (
を行っているのであ 2)
るが、不当労働行為法上の保護が与えられる団体交渉の範囲を画するメルクマールの一つが﹁義務的団交事項 (
行組てうことを労法渉により義務付けを交れす項事るいこれはな体わち、使用者が団ら ( ﹂。るあで 3)
であって、これら以外の事項(任 4)
意的団交事項)については、例え使用者に団交拒否があったとしても、不当労働行為法による救済は認められない (
。 5)
(四七八〇)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五〇九同志社法学 六〇巻八号 では、﹁義務的団交事項﹂とはいかなるものを指すのか。我が国においては労組法その他の法律に明文規定は存在しないが、この点につきおよそ学説は当該事項が①組合員たる労働者の労働条件その他の処遇又は集団的労使関係の運営に関わる事項であること、及び②使用者の処分が可能であることを要求する点において一致している (
旨同であり ( 。また、裁判例も 6)
般労判平一九・七・三一判京九四六号五八頁)は一高東ば(近の裁判例でも例え根、岸病院事件高裁判決最 7)
論として、﹁義務的団交事項とは、団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇、当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものと解するのが相当で
ある﹂と述べているのである。
団体交渉権は、労使間で合意に達した事項について労働協約を締結すること、及びそれは規範的効力をもつことまで
がその内容なのであるから (
、合目的的な解釈といえよう。 8)
⑵ 誠実団交義務(労組法七条二号)
労働組合の団体交渉権 (
意れ応諾義務が設定さる団こととなるが、合交にの的反射として、義務団者交事項につき使用 9)
の達成を目標とする団体交渉権の性質上、団交応諾義務の本質的内容として使用者には労働者の代表者と誠実に交渉に
当たる義務がある。これを﹁誠実団交義務﹂(
ba rg ain in g oo d fa ith
)といい、具体的内容としては使用者の﹁労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務﹂であって、﹁誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務﹂である (
者務用使ら専、は反違義交団実誠、てっ従。 10)
の当該団体交渉における交渉態度を関心の対象とするものといえよう。
(四七八一)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一〇同志社法学 六〇巻八号⑶ 本判決(判示部分第二)の評価 LAの就業時間変更の問題に関する本判決の論理構造は次のように整理できる。すなわち、本件就業時間変更を就業規則二八条二項により一方的決定が可能であるとするAの主張は違法であるというところを出発点とし(判示部分第二
―一)、本件変更は就業規則の変更により行わなければならないのであるから、本件変更は義務的団交事項に当たり(判
示部分第二―二)、そうである以上、本件変更を業務命令により行うという姿勢に終始したAの対応は団体交渉に応じ
たと評価できないとしたものである(判示部分第二―三)。
そしてこれを前提に、﹁したがって、LAの就業時間に関する本件変更について、Aは、X労組から団体交渉を求め
られたが、就業規則二八条二項の解釈を誤り、正当な理由なしに団体交渉を拒否したものと認められる﹂とする結論部分(判示部分第二―四)に照らしてみると、本判決は、本件変更を就業規則二八条二項により一方的決定が可能である
とするAの主張が違法であるという判断を分岐点に、二通りの理解が可能であるように思われる。
一つは、本判決は判示部分第二―一及び判示部分第二―二を合わせて義務的団交事項に関する判断を行ったものと捉
える理解である。まず、判示部分第二―二は、義務的団交事項の射程範囲につき、学説・裁判例と同様の見解に立つものであるところ、本件においてLAの就業時間変更の問題について、争われているのはその変更手続の在り方である。
すなわち、就業時間の変更に関してAは業務命令による一方的変更を主張し、対してX労組は改めて団体交渉を開催することを求めている。
そして仮に、本件変更を一方的意思表示のみで可能であるとする使用者側の主張を、就業規則二八条二項を根拠として本件変更は義務的団交事項に該当しない旨を主張する趣旨であると捉えるのであれば、判示部分第二―一は、それに
対して応答したものと理解することができる。思うに、労基法八九条一号が﹁始業及び終業の時刻﹂を絶対的必要記載
(四七八二)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一一同志社法学 六〇巻八号 事項としたのは、当該事業所の所定労働時間の始期と終期を明示させ、休憩時間の規定と相まって所定労働時間の長さと配置を明示させようとするものであり (るるが影響を受けこ可ととなるのであ否の如、変はてっよに何更続手更変のそ 11)
から、本件変更を義務的団交事項に当たると解した点については妥当であるといえよう(もっとも、AとX労組間においては、﹁職員の労働条件の変更については、Aは、X労組と事前に協議する﹂旨の基本協定があったのであるから、
当該協定の締結の経緯や運用実態しだいでは、本件変更のような事項は義務的団交事項としないとする当事者間の合意が、当該協定の解釈の結果として導かれる可能性はあり得る。従って、裁判所はこの点についても認定判断を行うべき
であったように思われる)。
そして、かかる理解を前提としたうえでの判示部分第二―三の判断なのであれば、本判決は労組法七条二号の解釈と
して正当と評価することができる。
しかし他方、もう一つの理解の仕方として、誠実団交義務(労組法七条二号)成否の判断に、判示部分第二―一が影
響を及ぼしているとみることも可能である。とりわけ、結論部分(判示部分第二―四)の﹁Aは、⋮⋮就業規則二八条二項の解釈を誤り、正当な理由なしに団体交渉を拒否したものと認められる﹂という点を強調すれば、このような理解
に親和的となろう。
そして仮に、主張の労働基準法違反性が直ちに労組法七条二号違反を導くと解釈するとすればそれは誤りであるといわねばならない。前述の通り、団体交渉権は、労働者団体が使用者と対等の立場で交渉し、労働条件の自主的決定の確
保を実現させるものなのであり (
。たを及ぼそうとしも規のに他ならない制てはい組法七条二号そ、のプロセスにつ労 12)
とすれば、仮に本件においてAが自身の就業規則二八条二項につき、自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要
な資料を提示するなどしていれば (
は力ゆえに規範的効を違認められないの反法て基意の結果としの、労働協約が労合 13)
(四七八三)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一二同志社法学 六〇巻八号別段 (
価評ずはるうりあもとこるれ免はるのあ反違務義交団実誠もとくな少、で 14)(
。 15)
使用者による主張の実体法上の違法性は、不誠実な交渉態度の動機の一つを形成することはあるとしても、それ自体が法的非難の対象となるわけではない。すなわち、後者の理解はこのような実体的判断と手続的判断との混同を生じさ
せるものであり、到底妥当であると評価することはできないのである(逆を言えば、使用者の主張が実体法上適法であるという前提のもとでは、誠実団交義務違反を否定する方向に作用しかねない)。
従って、本判決は前者の理解によるのであれば正当化しうるけれども、後者の理解は労組法七条二号の解釈の枠組みを逸脱するものである。しかし、このような理解の仕方も、なお不可能ではないという点において、本判決は誤解を招
きかねない憾みがある。評者としては裁判所はこの点を明確にすべきであったと考える。
3
〔いつに)否当の分部却棄〕三て.立申の表別(限制用利便ルーメて⑴ 施設管理権と組合活動
およそ労働組合の活動は、団体交渉や争議行為に限られるものではなく、憲法二八条はこれら以外に団結の維持・強化あるいは、宣伝活動等の日常的な組合活動についても一定の保護を及ぼしているものと解される (
。 16)
そして、企業別組合が多くを占める我が国においては、かかる組合活動は必然的に企業施設を利用して行う必要性が高い。しかし他方、企業は自己の有する企業施設につき市民法上の保護(例えば、所有権や占有権等)を与えられてい
るのであるから、ここにおいて組合活動の保護と、使用者の施設管理権の対立構造が浮かび上がることとなる。
従って、施設管理権と組合活動という論点はそれらの優劣あるいは調整の問題であるところ、この点につき学説にお
いては伝統的に受忍義務説と違法性阻却説という二つの立場が対立してきた (
法働憲(権結団は合組労、ばれよに者前。 17)
(四七八四)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一三同志社法学 六〇巻八号 二八条)に基づき企業施設を一定の限度で利用する権限を有し、使用者はこの利用を受忍する義務を負うこととなる (行はない以上、市民法上本来違を法であるが、それが団体得諾利許方、後者は企業施設を用した組合活動は使用者の他 。 18)
動権の適正な行使であると認められる限りにおいて違法性が阻却されると説く (
。 19)
これらに対し、最高裁はいわゆる許諾説と呼ばれる立場を堅持している。その契機は、国鉄札幌運転区事件最高裁判
決(最三小判昭五四・一〇・三〇民集三三巻六号六四七頁)であり、判旨は一般論として﹁労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設であって定立された企業秩序のもとに事業の運営の用に供されているものを使用者の
許諾を得ることなく組合活動のために利用することは許されないものというべきであるから、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで⋮⋮企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さな
いことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限
を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない﹂と判示した (
。 20)
⑵ 不当労働行為事件と救済の観点
ところで、前掲・国鉄札幌運転区事件はビラ貼りを行った労働組合員に対する懲戒の無効確認が争われた事案であっ
た。また、施設管理権と組合活動が抵触する場面においては、使用者が労働組合に対して行う損害賠償請求(民法七〇九条)の当否が争われることもある (
ずび益と労働組合及労の働者の利益はい利者型用れらの紛争類に。ついては、使こ 21)
れも私法上の権利義務関係を超えるものではない。従って、使用者による施設管理権の濫用性の判断においても純粋に
(四七八五)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一四同志社法学 六〇巻八号私法上の問題として捉えればよく、かつそれで足りる。
しかし最高裁レベルではこのような私法上の権利義務関係の存否よりも、むしろ企業施設を利用した組合活動に対し、使用者が労働組合あるいは組合員に対し何らかの不利益な取扱いを行った場合、労働組合を弱体化させるものとし
て﹁支配介入﹂(労組法七条三号)の成否が争われることが多い (
枠い上記・許諾説の組てみを維持しているも ( にお件か事して、最高裁はかる。不当労働行為救済そ 22)
。 23)
例えば、済生会中央病院事件最高裁判決(最二小判平元・一二・一一労判五二二号一〇頁)は前掲・国鉄札幌運転区事件最高裁判決を引用し、﹁労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利
用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、
企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当たらない﹂と判示しており、また唯一のセーフティネットである﹁特段の事情﹂論についても極めて厳しい判断がなされている (
。 24)
しかし、多くの学説が指摘するように、施設管理権と組合活動の抵触が私法上の権利義務関係の形式で問題となる場面と、不当労働行為の成否について問題となる場面とでは、軸を異にするものであって、判断構造を同一に考えるべき
ではない (
正秩常な集団的労使関係序﹁の迅速な回復、確保るは図に。すなわち、労組法お度ける不当労働行為制を 25)(
救い置かれているわけではな。眼またそうであるからこそ、が主上にめのものであり、私法の権利義務関係の存否確定 ﹂た 26)
済機関である労働委員会は不当労働行為制度の目的に即した、およそ裁判所が為し得ない、多様な是正措置 (
がでるあでのるとき ( こるず講を 27)
。 28)
そうすると、企業施設を利用する組合活動に対する使用者の措置が﹁支配介入﹂(労組法七条三号)として不当労働
(四七八六)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一五同志社法学 六〇巻八号 行為を構成するか否かについても、企業施設利用の私法上の正当性に加えて (のなならなばれけれ。さ断判らか点い学うは側合組働労、に説的体具ばれよに観いの成労使関係形を阻害するか否かと 者措の団用使該が置的対等・公正な集、当 29)
当該企業施設利用の必要性、業務上・施設管理上の支障、使用者の措置の相当性などを総合的に考慮するという判断枠組みを用いるべきであるとされる (
判衡係の形成を利益量使的枠組みにより関労ば的れらは、いわ対。等・公正な集団こ 30)
断するものといえよう (
。 31)
⑶ 本判決(判示部分第四)の評価
以上を踏まえて本判決を分析してみたい。まず、形式面についてみると本判決は判示部分第四―一において、本件の
ようなメール便の利用制限についても上記・許諾説の枠組みを援用している。従来、判例において主として問題となってきたのは、従業員食堂などの企業における物的施設の利用であったのに対し、本判決は﹁企業施設等﹂という表現を
用いることにより、本件メール便のようないわば企業のシステムの利用についても、施設管理権の範囲を拡張せしめたものである。
本件メール便のような企業のシステムも、企業の財産的価値の一部を構成するものとして、およそ私法上の権利義務
関係のレベルにおいては、保護を受けることとなるのであるから、組合活動の必要性との調整の対象として、許諾説の枠組みになじみやすいものと考えられる。しかしながら、企業の施設管理権の客体が、本件メール便のような企業のシ
ステムであろうとも、それは不当労働行為救済事件において考慮すべき事情に影響を与えるものと解するべきではなかろう。
そうすると、まずは使用者の施設管理権の濫用と見うる﹁特段の事情﹂が存しない限り、Aによるメール便利用制限
(四七八七)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一六同志社法学 六〇巻八号は支配介入(労組法七条三号)に当たらないこととなる。この点につき、まず判示部分第四―二および判示部分第四―
三は、企業施設利用に関するA・X間の合意の存在を否定している。両当事者間に合意があったといえるか否かは、例え不当労働行為救済事件であろうとも、あくまで意思解釈レベルの問題に留まるのであり、またそうである以上、合意
の存在を否定した本判決の結論はやむを得ないように思われる。
しかしとりわけ重要であるのは、判示部分第四―四であろう。同判示部分は﹁特段の事情﹂の存否につき、実質的に
は上記・判断枠組みを意識した判断がなされている。すなわち、全職員に対する文書配布の手段としてのメール便利用は使用者の業務に与える影響が少なくないこと、あるいはメール便を許可制にすることがX労組に与える影響の僅少性
を述べており、上記・判断枠組みに従えば前者は業務上・施設管理上の支障を、後者は使用者の措置の相当性を基礎付けるものといえる。
なお、判示部分第四―二および判示部分第四―三は先に述べた通り合意の存否に関するものではあるが、その判断内容としてはA・X間における労使関係の展開面の検討を行っている。このような検討は上記・判断枠組みにおける総合
考量の一要素として位置付けるべきであろう。対等・公正な集団的労使関係の形成を阻害するか否かを判断する為には、害される対象としての労使関係が従来いかなるものであったかを審査することが有用であるといえるからである。
本判決は結論としては不当労働行為の成立を否定したものの、およそ私法上の権利義務関係紛争においては殆どと言って良いほど機能していなかった﹁特段の事情﹂論が不当労働行為事件においては、実質的な意味を有するようになっ
てきているという傾向 (
。とうよきでがとこるす価評てしのもるえ加け付を例事一、きつに 32)
(四七八八)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一七同志社法学 六〇巻八号4
ていつに)否当の分部却棄〕六〔立.定平成一三年協の申解約(別表のて期間の定めのない労働協約は、当事者の一方が署名しまたは記名押印した文書で、少なくとも九〇日前の予告をすることによって、これを解約することができる(労組法一五条三項前段及び四項)。この解約には特別の理由は要求され
ていない為、労使は自由な解約権を有することとなるが、解約権は形成権でありその行使は権利濫用(民法一条二項)による制限を受け、労使関係の安定を著しく損なう解約は権利濫用として無効となる (
。 33)
他方で、労働協約とは労働組合が使用者との団体交渉を経て得た成果物なのであるから、使用者による一方的解約は、労働組合を弱体化させる﹁支配介入﹂(労組法七条三号)として不当労働行為を構成することがある (
。 34)
そうすると、解約権濫用性と不当労働行為の成否との関係が問題となるところ、上記・
正っ労働行為の成否の判断にあたて不は、その制度目的から対等・公当、妥のてもち当するもとお思われる。すなわい
3
にここがとこたべ述で.⑵な集団的労使関係の形成を阻害するか否かという観点から判断されなければならない。
この点につき、本判決をみると形式的には権利濫用構成を採用しているが、﹁特段の事情﹂に関する実質的判断とし
て労使間の利益考量を行う必要があろう。まず、協定条項︿一﹀については、団体交渉出席者に関するものであるところ、本判決は本件解約により、X労組に特段の不利益は無く団体交渉を空転させたり形骸化させるものではない旨認定
してる。それに加えて、本判決は明確にしてはいないが、使用者側にとって常勤、役員全員の日程調整が困難であることも不当労働行為成立を否定する要素となろう。また、仮に団体交渉に交渉権限者が一人も出席しない事態となれば、
労働組合は別途、誠実団交義務(労組法七条二号)違反を主張しうる (
よる構較比の障支じが生にAと性要必造明側価きでがとこるす評確とるいてっなにの組約ての解につ労いの判断は、X きべす慮条考も点うあで項る。他方、協定と︿二﹀い 35)
う。
(四七八九)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一八同志社法学 六〇巻八号しかし、そもそも本件において解約が問題となっている協定条項︿一﹀及び︿二﹀は、平成一三年協定に含まれてい
たものなのであるから、その解約はいわゆる一部解約に他ならない。労働協約は一体的な契約であるから、当該条項が他の条項からの独立性が強く、他方当事者が予想していない不利益を与えない等の特段の事情がある場合を除いては、
協約の一部解約は無効であるというべきであり (
る有解部一、りおてしをに性連関と項条の他約よ項て蒙を益利不いないしり想予が者事当方他が条当、もどれけいな該 七直配支にち約が効無の入解部介条(労組法、三号)を導くわけでは一 36)
など、一部解約の無効を根拠づける事実が存在する場合には、当該事実は使用者の組合弱体化の意思を推認させる間接事実として機能することとなろう。
にもかかわらず、本判決はこの点については何らの認定判断も行うことなく、単に﹁労働協約の解約は、労組法が認める権利の行使であるから(労組法一五条三項、四項)、平成一三年協定の解約が権利の濫用にあたると認められる特
段の事情のない限り、その解約が不当労働行為に該当することはない﹂と判示するのみであって、不十分なものといわざるを得ない。
従って、本件解約が一部解約として認められるか否かも含めて、﹁特段の事情﹂に関する実質的判断としての労使間の利益衡量が検討されるべきであったといえよう。
5
部て〔七〕棄却分申の当否)につい立の.の謝罪・誓約文手表交及び掲示(別て個々の事案においていかなる救済命令を発するかにつき、労働委員会の判断に裁量を認める点については特段争いはみられない。最高裁も第二鳩タクシー事件(最大判昭五二・二・二三民集三一巻一号九三頁)において、﹁法が、⋮⋮(評
者注:労組法二七条により)労働委員会に広い裁量権を与えた趣旨に徴すると、訴訟において労働委員会の救済命令の
(四七九〇)
就業時間変更に関する団交拒否等と不当労働行為の成否
五一九同志社法学 六〇巻八号 内容の適法性が争われる場合においても、裁判所は、労働委員会の右裁量権を尊重し、その行使が右の趣旨、目的に照らして是認される範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるものでない限り、当該命令を違法とすべきではない﹂と判示する。
従って労働委員会による救済命令の具体的内容は、裁判所により濫用と評価されうることはあるとしても、少なくと
も労働委員会には第一次的な判断権は保障されていなければならない。そうでなければ、労使関係に関する専門的知見を有する労働委員会により、個々の事案に応じた適切な是正措置を命じる権限を委ねた不当労働行為制度の趣旨・目的
を没却することとなろう。判示部分第六は、不当労働行為救済命令に関し労働委員会の裁量をいい、労働委員会の判断を経ない裁判所による救済命令の発令を排除するものであり、妥当と評価できる。
以 上
(
(
1
西閣。頁三八二)年六〇〇二、斐谷) 〕﹄(版二第〔法合組働労﹃敏有(
2
諸社法総論・労使関係法﹄(新世、労二〇〇〇年)二八〇頁参照。働﹃外る国における団体交渉に対す法) 規制の外観については、盛誠吾(
3
﹁、法〔第二版〕﹄(有斐閣一組九九六年)一六一頁。合働命る令的事項﹂とも呼ばれ。) 例えば、山口浩一郎﹃労(
4
菅堂。頁七七)年八〇〇二、文野) 〕﹄(版八第〔法働労﹃夫和弘5
学法働労の紀世一二座講﹃編会法) 働労本日﹂否拒交団﹁人眞谷新((
8
有斐閣、二〇〇)﹄(年)二一八頁。〇6
) 西谷・前掲注(1
)書二九九頁、菅野・前掲注(4
)書五三四頁、山口・前掲注(( 文土田道夫﹃労働法概説﹄(弘堂頁、二〇〇八年)三五八頁等。、二一)年五九九一一
3
、井下書頁一六一史隆)﹃労使関法﹄(有斐閣、係( 判一三・一〇・一労八判二〇号四一頁)等。平
7
事・)事件(神戸地ーエ・トンウス本エ、他ののもたげ掲に中文本訴(件労(東京地判平九・一〇・二九判ス七二五) 一五頁)、本四海峡バ号(
8
野〇四版〕﹄(有斐閣、二〇〔七年)五〇五頁。第Ⅰ中高俊彦=中村睦男=橋) 和之=高見勝利﹃憲法9
本﹁団体交渉権の法的構造﹂日労哲働法学会編﹃講座二一世紀の也幸) 展我が国における団体交渉権の開道に関する基本的文献として、労(四七九一)