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勝 俣 純

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Academic year: 2021

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作文・綴り方指導研究

一大正自由教育期における芦田恵之助を中心に一一 教科・領域教育専攻

言語系(国語)コース 勝 俣 純

1.研究の目的

本研究の目的は,子ども主体の生き生きとし た魅力ある国語教室づくりのあり方を,作文指 導に焦点を当てて明らかにすることである。

作文を学習する過程において,子どもは,学 力を形成するための基本となる文章を綴ること の意義を認めるだけでなく,人間形成にもつな がる自己発見と自己を確立する学びを体験する ことになる。作文指導の充実は,国語教育のみ ならず,すべての学習の基礎基本を盤石にする ことといえるO

本研究では,芦田恵之助氏の「随意選題j論 に着目し,学ぶ楽しさを知ることや学習意欲を 向上させる源となる学習体験とはし、かなるもの かを検証する。「随意選題jによる芦田恵之助 氏の綴り方教授実践には,現代の国語教師が学 ぶべき,普遍的な子どもの発達段階のとらえ方,

子ども理解のあり方,評価と指導のあり方を認 めることができる。

芦田恵之助氏の「随意選題」による綴り方教 授からは,作文教育に関することだけでなく,

教育全般の基礎基本となる子ども観,教師の修 養観,教育観を検証し,真の意味での子どもの ための教育,子ども主体の教育とは何かを明確 にとらえ,教師が子どもと共に学び成長できる 教室づくりを目指してし、く。

2 .

研究の方法

第一章「芦田恵之助氏の綴り方教育の創成と 深化」では,芦田恵、之助氏の提唱した「随意選 題j論の本質に迫るために,芦田恵之助氏の個 体 史 を 検 証 す る だ け で な く 随 意 選 題 」 の 創 成の過程を明治期から大正期にかけての教育界

指導教官 村 井 万 里 子

の思潮や教育界に影響を与えた社会的な要因を 踏まえながらひもといていく。「随意選題j の 深化の過程については,芦田恵之助氏との間に 随意選題論争を展開した友納友次郎氏らの論文 にも注目しながら考察する。

第二章「大正期における芦田恵之助氏の綴り 方 教 授 の 探 求j で は 随 意 選 題 」 論 を 芦 田 恵 、 之助氏の授業実践に着目して検証する。綴り方 における子どもの発達段階に関する芦田恵之助 氏の主張が,実践から生み出され,再び実践を もって裏付けされて確固たる理論に成長してい く過程を,明治期から大正期にかけての芦田恵 之助氏の投稿論文や著作から考察する。この章 では,大正7年から 10年の聞にかけて刊行さ

れた『尋常小学綴方教授書~ (巻ーから巻四) の 実 践 記 録 を 検 証 し 「随意選題」が綴り方だ けでなく,学びの構造を踏まえた教授論であり,

教育理念でもあることを明らかにしていくO

第三章「作文学習における子どもの実態調査J では,現代の子どもたちの作文に関する意識調 査の分析及び考察を行う。芦田恵之助氏の措定 した綴り方における子どもの発達段階を現代の 子どもを対象に検証することがねらいである。

現在,子どもの間に作文離れが進んでいると いわれているが,その実態は明らかではない。

作文に関する子どもの認識をアンケートによる 調査で把握し,その実態を分析する。中高生に 対しては,作文学習の目的を問うことで,中高 生が作文学習をし1かにとらえているのかを把握

したいD

以上,三章の考察をとおして,現代の国語科 教師としてだけでなく,授業を創るすべての教 師が必要とする修養を明らかにしていく。

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研究の結果と考察

第 一 章 に お い て

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随 意 選 題 」 論 の 創 成 と 深 化 の 過 程 を 検 証 す る こ と に よ り 随 意 選 題j

論には,綴り方指導に関することだけでなく,

人間理解・子ども理解のための要素,教えるこ と・学ぶことのメカニズム,発達段階を踏まえ た教授法などが内包されていることが明らかに なり,人間形成のためのさまざまな教育的要素 を「随意選題Jの中に認めることができた。

綴り方では「綴らんとする心の培養Jである と芦田恵之助氏が説いているように,どの教科 でも授業の出発点は,子どもの「発動的な態度」

づくりにあるといえる。この「発動的な態度j

を最重要視し,これを喚起して,教授の基本に 位置づけたものが f随意選題j であるo 芦 田 恵 之助氏が教育において第一義としたのは,児童 の発動性,即ち,自ら学ぼうとする意欲であっ た。「随意選題Jに よ る 作 文 教 育 と は , 子 ど も 主体の学習,子どもが主役の学びの場を保証す る教育実践であることが明らかになった。

第二章では,芦田恵之助氏の「随意選題Jに よる授業実践を検証した。子どもが主体的かっ 意欲的に精一杯を尽くそうとしている「真の子 どもの姿j を 見 る こ と な し に は 真 の 綴 り 方 における子どもの発達段階Jを把握できないこ とが実感できた。したがって,子どもに「生き るカj を 育 む た め の 系 統 的 な 学 習 指 導 は 随 意 選 題j によって見出された「真の綴り方にお ける子どもの発達段階j に基づいて,初めて構 築されていくものであるということが明らかに なった。

第三章では,平成 15年 10月に小学 1年 生 か ら高校3年 生 ( 総 人 数 1636人)を対象に実施 したアンケート調査の結果の分析及び考察をま とめた。

現在の児童に対して,芦田恵之助氏の措定し た発達段階を適応することは可能といえるもの の,児童がそれぞれの発達段階に到る年齢が 1 年程度早まっていることをうかがわせる調査結 果を得た。

子 ど も の 主 体 的 な 学 び を 支 え る も の の 一 つ に,学びの目的意識がある。作文学習の目的に 関する調査では,作文学習が「役に立つ」と感 じる生徒の比率は,中 1 (68 % ) よ り , 中 2

(72 %)中3 (77 %)と増加する。高 1にな ると (66% ) と 数 値 は 一 度 下 が る も の の , 中 学生が見せた傾向と同じように,高2 (71 %)  高3 (79 % ) と 増 加 す る 。 推 移 の 傾 向 が , 小

5か ら 概 ね 一 定 の 上 昇 傾 向 に あ る と す る な ら ば,作文学習が自己の人間形成を支えるもので あるという自覚が,成長と共に高まり,それが はっきりとした意識となって表れたと理解する ことができる。しかし,数値は,中 3から高 1 の間に約1 1 %下降するo 小学生は中学生にな るために(なったとき因らないようににするた めに), 中 学 生 は 高 校 生 に な る た め に , と い っ たふうに,それぞれ次の段階の学校に進むため の一つの手だてとして,受験のために「やらな ければならなしリものとして作文学習をとらえ ている実態がデータから推測できた。一方で,

中高生が作文学習の目的として最も多く挙げた 理由は「自分の想いを書けるようになるためj

であった。これこそが作文学習のねらいである。

自分を見つめ,自分の想いを誠実に表現できる ことは,自己の人間形成の為に大いに役立つだ けでなく,健全な社会生活を送るためのコミュ ニケーションの基本をなすものであるO

剥落を起こさない学力を子どもに身につける ためには,子ども自身が発動的に,身をもって 発 見 や 気 づ き の 体 験 を す る こ と が 不 可 欠 と な るo 学習において,子ども自身が体験しなくて はならない発見や気づきを体感するまでの過程 をし1かにっくり,そこへ子どもをし、かに導き,

そこで子どもの学びの営みに意義づけをするこ とが教師の役割である。指導の基点を子どもた ちの活動の中に見出すべきである。子どもたち と共に,もう一度,学習の意欲づけ,学習の目 的観から振り返り,子どもが自ら学ぶことので きる教室を,子どもと共に創り上げていくこと が魅力ある国語教室づくりの出発点である。

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参照

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