子どもが興味・関心をもって学習する授業づくり
高度学校教育実践専攻 実習責任教員 小 坂 浩 嗣 教 員 養 成 特 別 コ ー ス 実習指導教員 木 下 光 二 永 松 克 朗
キーワード:興味・関心 発問 対話 授業づくり 1.課題設定の理由
筆者は,児童に学習の意欲づけを行うことが 学習指導において大切と考える。基礎インター ンシップで実践した授業では,児童に興味・関 心の低下が見られた。原因は,あいまいな学習 課題を設定したり,一問一答による授業展開に なったりしたためと考えた。児童の学びを深化 させていくためには,児童の内発的動機を刺激 し,自己内対話や対人対話による学習活動を行 うことで児童の学びは深まっていくと考えて いる。児童の興味・関心といった内発性を刺激 し,対話を生み出すためにも,児童が興味・関 心を抱き,学習したいと思える学習課題を提示 することが必要であると考える。
以上から,学習する単元に応じて,子どもが 興味・関心を抱く学習課題を設定し,対話によ る学習課題の解決を組み入れる授業づくりを 課題とし,その授業効果について検証すること を本研究の目的とした。
2.基礎インターンシップでの授業実践の概要 附属小学校第2学年において,「森のともだ ち」を教材に道徳科の授業を行った。
1)授業で見えた課題
授業分析から3つの課題が見出された。1つ 目の課題は,児童の実態に沿った課題を設定し なかったことである。本授業の教材では,泣い ている主人公に焦点を当てる場面と,森のどう
ぶつたちが相談している場面の2つの山場が 考えられた。筆者は,一貫して主人公に着目さ せることにより,心情を考えやすいと考え,前 者の山場を実践した。しかし,実際の授業では,
発言する児童が固定化し,最後まで心情を考え ようとしたのは数名程度しかいなかった。
2つ目の課題は,児童の意見を深める場を工 夫できなかったことである。学習課題に対して,
児童同士で考えを述べ合う場や全体で考える 場を設けていなかった。そのため,児童一人で 考えるだけの授業になってしまい,発表も一問 一答になり意見交換の活性化が見られなかっ た。ペアやグループなどで意見を述べ合う場を 設けることや役割演技といった活動を工夫す ることが考えられた。自分の意見と他の意見を 比較して考えることができれば,児童個々の考 えを深めることにもつながると考えた。
3つ目の課題は,児童の思考を深める指導言 を活用していなかったことである。児童が考え て発言したことに対して,その発言者に問い返 しを行うことやその発言から他の児童に考え させる問いを行うことがなかった。指導言にあ る3つの機能のうち,発問と指示に着目し工夫 することで,児童の思考を活性化したり,課題 への探究心を刺激したりすることにより,学習 活動を活性化しうると考えた。
2)課題への取組と評価
取組の1つ目は児童の実態に沿った学習課
題を設定することである。授業中の児童の発言 や行動に注意を向け,どのような課題で児童の 思考が活性化するのかを関与観察していく。ま た,児童の学習レベルにあった課題設定を行う ために,教材研究をしっかりと行っていく。学 習課題を設定する上で,3つの視点に留意する。
1つ目は,児童の経験や生活体験に基づく課題 である。2つ目は,児童の生活や経験から導か れる疑問やズレからくる学習課題である。3つ 目は,絵や図,資料等を用いた学習課題である
(有田,1987)。
取組の2つ目は,学習課題と対話の活動を結 びつけることである。教材研究から設定した学 習課題と学習活動との関連性を考えて授業を 組み立てたい。学習課題に対して,どのような 活動を行えば,学習が活性化するのかを考えて いく。個人で学習するのか,ペアやグループで 共同学習するのか,全体で交流するのか,など 学習課題の解決に効果的な学習活動を考え実 践していきたい。
評価として,プロトコル分析やエピソード分 析,児童の事例分析から検証していく。授業実 践後にプロトコルを起こして,児童の発言回数 や発言時間を比較することで,児童の課題への 興味・関心度を測る。また,教師の指導言と児 童の発言内容について,プロトコルから抽出し た場面をエピソード分析により検証していく。
事例分析では,授業などで活発に発言する児童 や内向的で発言の少ない児童などを比較対象 とし,どのような学習課題で,どのような学習 活動を行うと変化が見られるのか,関与観察の 記録やノートやワークシートの記述を分析す ることにより検証していく。
3.総合インターンシップⅠでの実践と省察 鳴門市内小学校第4学年において,「何倍で しょう」の単元で算数科の授業を行った。本授 業は,問題文の数量関係を関係図に表し,関係 図をもとに「まとめて何倍になるのか」を考え て問題を解くことを目標にした。筆者は,実践 授業で2つの取り組みを計画した。
取組①:児童が問題に関心をもつことができる ように,導入時にイラストを用いながら問題の 関係図を捉え,問題を意欲的に解くことができ ることを意図した。
取組②:児童の学びを深めていくために,ペア 活動を行ったうえで全体活動へとつなげる流 れで授業を構成した。
1)実践授業の成果
授業における成果が,2つあった。1つ目は,
学級のほとんどが問題文の内容を理解して問 題を解くことができたことである。導入時にお いて,問題文から読み取れることに線を引く活 動を行い,問題文の数量関係を丁寧に確認して いく活動を行った。児童個人の活動と学級全体 の活動が繋がったことにより,問題文を理解し て解くことができたと考える。また,イラスト を用いて数量関係が分かるように板書したこ とで,数量関係を視覚的に捉えることができ,
問題を解くことにつながったと考える。
もう一つの成果は,理解に伴うつぶやきとし て自己内対話が生まれたことである。授業実践 でのプロトコルを分析すると,「わかった」や
「なるほど」といったつぶやきが見取れた。こ のつぶやきは個人学習でも見られたが,多く見 られたのは,児童が作った式を発表していく全 体学習の場面である。つぶやきが生じた要因は,
児童が多くの式を発表したからであると考え る。なぜなら,全体で活動する中で,他の児童
の考えを見たり聞いたりすることで,他者の考 えを知り,自分の考えを広げることができたと 考える。また,児童同士の発表を通して,児童 自身の中で,式の正当性などを吟味するような 自己内対話が生まれたものと考える。
2)実践授業での課題
課題として挙げたのは,2つである。1つ目 は,適切な課題設定と,その課題に沿う適切な 発問をすることである。問題を解くことができ ることを課題設定にしてしまい,考え方や求め 方などを深くまで考えることができていなか った。ほとんどの児童が問題を解くことができ たことを成果に挙げたが,学びたい,考えたい と思うような学習意欲を刺激する課題設定に なっていなかったと省察した。導入に着目して プロトコル分析を行うと,「なぜ」や「どのよう に」といったような児童が考えられるような発 問がなかった。考えさせる発問を適切に行い,
考える内容を明確にすることで,児童の思考を 深めることができると考える。
もう1つの課題は,児童の発表を多く取り上 げるために,児童が発言できる場を多く設定す ることである。本授業では,ペアでの活動を踏 まえた上で,全体学習へとつなげることにして いた。しかし,問題文を関係図に表す活動に時 間を使い過ぎてしまい,ペアで活動する時間を 確保することができなかった。ペア活動などの 児童同士で発表し合う場をできるだけ多く設 けることで,児童の発言内容が児童の中で精査 されたり,各児童の考えを練り上げたりするこ とにつなげられると考える。
3)総合インターンシップⅡでの取組
総合インターンシップⅡにおいて,2つの取 り組みを計画した。
取組①:児童が意欲的に考えることができる適
切な課題を設定する。
児童の考える意欲を駆り立てるために,まず,
適切な課題の明確化を行う。さらに,課題の提 示の仕方を工夫したり,課題に対して考えたい,
学びたい意欲を喚起する発問を考えたりして いく。特に導入に重きを置いて,児童の意欲を 高められるようにしていく。
取組②:児童の思考を促すペアやグループ活動 を組み入れる。
活動の中に全体活動だけでなく,ペアやグル ープで活動できる場を設定する。こうした共同 学習を通して,児童自身の考えを伝えたり,他 の児童の考えを聞いたり,自身の考えと比較で きることを促す。また,児童が自分の考えと比 較できるような声かけや支援を行い,思考を深 めることができるようにする。
4.総合インターンシップⅡでの授業実践 総合インターンシップⅠと同じ小学校第4 学年で算数科「割合」の授業実践を行った。本 授業の目標は,ある2つの数量の関係と別の2 つの数量とを比べる際に割合を用いれば簡単 であることを理解することである。本授業では,
上記で述べた取組を計画し実践に臨んだ。
1)実践授業の成果
実践した授業での成果を2つ挙げた。1つ目 は,児童が自分の意見を持つことができたこと である。導入場面にて,3つの選択肢を提示し,
児童の意見がどれに当たるのかを問うた。する と,多くの児童が3つの選択肢から選んで手を 挙げていた。また,本授業での児童のノートを 見返すと,ほとんどの児童が自分の考えをノー トに書くことができていた。個人で考える時間 に自分の考えを書けていない児童もいたが,授 業後のノートでは,他の児童の考えを自分の意
見として書くことができていた。自分の意見を 持つことができた要因は,選択肢を与えたこと だと考える。選択肢を与えることで,児童自身 の中で考えが絞られ,考えやすくなったものと 思われる。
2つ目は,児童が興味・関心をもったと思わ れる考えの変化を見取ることができたことで ある。1名の児童に着目してプロトコル分析し た結果,自分の考えを変化させていた。この変 化が見られたのは,他の児童の意見を聞いた時 や,個人で考えた場面である。他の児童の考え を聞いて,自分の考えを比較させたり,自分の 考えを検証したりすることで考えに変化が起 きたものと推測する。児童が課題に対して興 味・関心をもったため,考えの変化につながっ たと考える。成果の1つ目とも関連するが,自 分の考えを持つことで自分の考えの正当性を 考えるような課題解決へと意識が向いたと考 える。他の児童においても考えの変化が見取ら れたため,興味・関心をもって課題に取り組め たと推測する。
2)実践授業の課題
課題について2つ挙げた。1つ目は,問題文 の内容を十分に理解できていない児童がいた ことである。プロトコル分析で,問題文を理解 できていない発言が見取れた。問題文が理解で きていない要因として,問題文を共通理解させ ることができなかったことだと考える。本授業 は,2つのものを比較する問題であった。比較 する問題であるとの共通認識はできていたが,
どのような比較問題であるのかを共通認識で きていなかった。そのため,児童は問題の解き 方を導きにくくなったと考える。そこで,どの ような問題であるのかを問いかけたり,実物を 見せて視覚的に分かりやすくしたりする工夫
が必要であったと考える。
もう1つ目は,3つの選択肢の意見を広げて 比較できなかったことである。本授業で考えを 変化させた児童は多くいたが,児童の考えが変 化したことに対して,「なぜ変わったのか」を問 い返すことがなかった。そのため,同じ意見を 持っている児童や,他の考えを持っている児童 の学習理解へとつながっていないと考えた。さ らに,3つの選択肢を与えたが,それぞれの選 択肢について比較・検討ができていないことも 挙げられる。そこで,3つの考えやその理由に ついて,全体共有の場面で比較・検証する必要 があったと考える。自分の考えと比較させたり,
違いを見つけさせたりすることができていれ ば,学習意欲の向上につながったものと考える。
5.今後の展望
授業実践を通して,児童が課題を十分に理解 しておくことが大事であると実感した。課題を 理解し自分の考えを持つことで,課題への興 味・関心をもつことにつながると考える。さら に,児童それぞれの考えを比較させたり追究さ せたりすることで,児童の学習理解につながっ ていくと考える。児童の学習理解を深めること は,学びへの興味・関心を強め,学習意欲の向 上につながると考える。本研究で,学習課題と 対話との関連性を検証する予定であったが,検 証できなかった。しかし,全体共有の場での児 童の発表やつぶやきなどから,興味・関心をも って学習していると思われる児童を確認する ことができた。学習課題により,対話が必要な 場面とそうでない場面があると考える。そのた め,課題での対話の必要性を教材研究しておく ことが大切であると考える。