9. 免疫
自分とよそものを見分ける仕組み
9-1.
外界からからだを守る仕組み「免疫とは」
われわれを取り巻く環境には、ウイルス、細菌、カビ、原虫、寄生虫といっ た病原体や、花粉、ハウスダストといった物質が、異物として数多く存在し ています。免疫とは、こうした異物からからだを守る仕組みのことです。 免疫は、まず異物を「非自己」として認識することから始まり、さまざま な細胞や分子が相互に関与しながら、これら非自己を排除しようとする複雑 なネットワークを形成しています。9-2.
わたしたちは2種類の免疫をもつ「自然免疫と獲得免疫」
免疫には、体内に侵入した異物を認識してただちに排除する「自然免疫」と、 侵入した異物の情報をリンパ球が認識し、その情報に基づいて特定の異物を 排除する「獲得免疫」が存在します。それぞれの免疫で、主役となる免疫細 胞の種類は異なります(次ページ図.免疫細胞の種類)。 また、ここ三十年ほどの間に、自然免疫による異物の認識という段階がな ければ、獲得免疫が始動しないことが分かり、自然免疫と獲得免疫が相互に 補完して私たちの体を守っていることが明らかになりました。 研究者コラム エドワード・ジェンナー 「種痘~近代免疫学の父」 牛の乳搾りをして いて手の傷から牛 痘 に 罹 っ た 人 は、 その後天然痘に罹 らないという農民 の 言 い 伝 え か ら、 ジェンナーはこれ を天然痘の予防に使えないかと考 え、1796 年牛痘にかかった女性 の水疱から取り出した液体の一部を 8 歳の少年に接種しました。少年は 若干の発熱と不快感を訴えました が、深刻な症状にはなりませんでし た。その後、細心の注意を払って天 然痘を接種したところ、少年は天然 痘には罹りませんでした。この試み によって、牛痘による天然痘予防法 が成功しました。1798 年、この成 果を発表し、ジェンナーの種痘法は 急速に普及し、彼は「近代免疫学の 父」と呼ばれるようになりました。 その後天然痘ワクチンは改良されて 1980 年には WHO(世界保健機関) は天然痘撲滅を宣言しました。 93細胞傷害性T細胞, ヘルパーT細胞 制御性T細胞,NKT細胞 B細胞 T細胞 NK細胞 形質細胞 多能性造血幹 細胞 自己複製 リンパ系共通 前駆細胞 骨髄系共通 前駆細胞 顆粒球共通 前駆細胞 赤芽球 巨核球 単球 マクロファージ 血小板 赤血球 好中球 好塩基球 好酸球 NK/T細胞 前駆細胞 赤血球系共通 前駆細胞 未知の前駆細胞 樹状細胞 肥満細胞(マスト細胞) 免疫細胞の種類 TLR1、TLR2 TLR4、TLR5 サイトカイン 貪食受容体 ファゴソーム 細菌 細菌 ファゴリソソーム 病原体特異的成分 エンドソーム TLR3、TLR7 TLR8、TLR9 病原体の DNA や RNA インターフェロン 貪食作用の亢進 細胞内シグナル伝達の誘導 マクロファージ 94
Pick Up from MBL 抗 TLR/Mincle 抗体 MBL では、自然免疫系の受容体で ある TLR や Mincle に対する抗体を 揃えています。 ・Anti-Mincle(Mouse) mAb の使用例 サイトカイン・増殖因子関連製品 MBL では、サイトカインや増殖因 子に対する抗体やキットを揃えてい ます。 IL-33 ELISA キット・抗体 IL-33 は、様々な白血球に作用し、 主に Th2 型のサイトカイン産生を 誘導し、主に寄生虫感染に対する防 御機構に関与しています。 IL-37 ELISA キット IL-37 は、自然免疫の過度の炎症反 応に対するサプレッサーとして重要 な役割を担っていることが示唆され ています。 関連製品の詳細につきましては MBL ラ イ フ サ イ エ ン ス サ イ ト(http:// ruo.mbl.co.jp/product/ cytokine/)をご覧下さい。
自然免疫
自然免疫とは、受容体を介して、侵入してきた病原体や異常になった自己 の細胞をいち早く感知し、それを排除する仕組みです。生体防御の最前線に 位置している仕組みともいえます。ひとつの分子が、多種類の異物、病原体 の分子に反応することができますが、特定の病原体に繰り返し感染しても、 自然免疫能が増強することはありません。ここで活躍している免疫担当細胞 は、主に好中球やマクロファージ、樹状細胞といった食細胞です。 病原体を排除する基本的な方法は大きく分けて二つあります。 1) 抗菌分子が、直接病原体に作用し、穴をあける、融解するなどして病原 体を処理する。 2)食細胞が、病原体を貪食、処理する(前ページ図.マクロファージ)。 病原体を直接攻撃する分子には抗菌ペプチド、リゾチーム、レクチン、補 体といった分子があります。 レクチン、補体などは、病原体に結合することにより、食細胞の貪食作用 を促進させる作用も持っています。こうして、病原体が貪食されやすくなっ た状態のことを「病原体がオプソニン化された」と表現します。 自然免疫系では、特定のグループの病原体に共通した分子や構造を認識す る「パターン認識受容体」を介して、病原体の侵入を感知します。パターン 認識受容体には複数の種類があり、病原体を感知した後、貪食を促すタイプ、 細胞内シグナル伝達を起動させるタイプがあります。細胞内シグナル伝達の 結果、サイトカインなどの発現が誘導され、自然免疫系の活性化や適応免疫 系との連携が生じます(前ページ図.マクロファージ)。 受容体の種類 認識する物質 受容体の例 スカベンジャー受容体 変性 LDL など SR-A, CD36 など Toll 様受容体 (TRL) 細菌、ウイルス TLR1, TLR2 など ヒトでは 10 種類NOD 様受容体 (NLR) 細胞内寄生細菌 NOD1, NOD2, Nalp3 など ヒトでは 23 種類
RIG-I 様受容体 (RLR) 細胞内ウイルス RIG-1, MDA-5, Lgp2
C 型レクチン受容体 (CLR) 真菌、結核菌 Mincle, Dectin-1, Dectin-2 など 17 種類
獲得免疫
獲得免疫とは、感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶することで、 同じ病原体に出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組みです。適応免 疫とも呼ばれます。自然免疫に比べると、応答までにかかる時間は長く、数 日かかります。ここで活躍している免疫担当細胞は、主に T 細胞(細胞障害 性 T 細胞※ 1、ヘルパー T 細胞※ 2など)や B 細胞といったリンパ球です。 獲得免疫の主な特徴は、大きく分けると以下の通りです。 1) 特異性と多様性:病原体は無数に存在しますが、生体はそれら全てに対 してそれぞれに特異的に反応できる分子を持ちます。どのような病原体、 異物にも反応できますが、自分自身(自己)には反応しません。これを 自己寛容といいます。 2) 免疫記憶:一度感染した病原体を記憶し、再び同じ病原体に遭遇した際 には感染・発症を防ぎ、あるいは発症しても軽度で済むことができる迅 速で効果的な免疫応答が発揮されます。自然免疫と獲得免疫の相互作用
自然免疫において、末梢組織内に存在する樹状細胞は、病原体を貪食して 取りこみ、それらをペプチドに分解します。そして、リンパ節や脾臓に移動 して、獲得免疫で働く T 細胞に、抗原ペプチドを提示します(抗原提示)。 樹状細胞から提示された抗原に対して反応することのできる T 細胞のうち、 ヘルパー T 細胞は、自然免疫で病原体を貪食する食細胞に対して、その免疫 反応を増強させるようにも働きかけています(図.自然免疫と獲得免疫の相 互作用)。 MHC クラス II MHC クラス I CTL Th1 細胞 Th1 細胞 IFN-γ IL-2 樹状細胞が MHC と共に提示する ペブチドを T 細胞が認識 Th1 がサイトカイン を産生 IFN-γファージが活性化によりマクロ CTL が IL-2 により活性化、増殖 エフェクター CTL 異常細胞 マクロファージ CTL は Perforin、Granzyme、IFN-γ、TNF-α な どを産生し、異常細胞にアポトーシスを誘導 マクロファージの活性酸素や分解酵素の産生能が 高まり病原体を殺傷 ※ 1 細胞傷害性 T 細胞(CTL、またはキラー T 細胞)とは、抗原を認識すると活性化し、 同じ病原体に感染した細胞を攻撃・排除 する T 細胞です。 ※ 2 ヘルパー T 細胞とは、抗原を認識すると 活性化し、同じ病原体を攻撃できる抗体 を産生する B 細胞を選択的に活性化する T 細胞です。 細胞性免疫 969-3.
わたしたちはなぜ予防注射で感染症から身を守れるのか?「獲得免疫と抗体」
獲得免疫は、活躍するヘルパー T 細胞の種類や作用の仕方によって、さら に「細胞性免疫」と「液性免疫」に分けられます。細胞性免疫
局所的に起こる免疫反応で、CTL やマクロファージが直接細胞を攻撃する 免疫反応です(前ページ図.細胞性免疫)。ヘルパー T 細胞の1種である「Th1 細胞」が、樹状細胞が提示する抗原を認識して、サイトカインを産生し、そ のサイトカインによって、マクロファージ、細胞傷害性 T 細胞(CTL)など の細胞が活性化されます。活性化された CTL やマクロファージは、低分子を 分泌して、病原体に感染した異常細胞を攻撃・排除します。一部の CTL は、 メモリー T 細胞となって、異物に対する細胞傷害活性を持ったまま宿主内に 記憶されます。液性免疫
液性免疫は、B 細胞と抗体が中心となる免疫反応です。ヘルパー T 細胞「Th2 細胞」の産生するサイトカインにより、B 細胞が刺激されると、B 細胞が形 質細胞へと分化し、大量の抗体を産生し、抗体は体液中を循環して全身に広 がります。また、刺激された B 細胞の一部は、抗原の情報を記憶しているメ モリー B 細胞となって、再度の感染の際には、最初の反応より迅速に、そし てより抗原に親和性が高い抗体を大量に産生することができます。 抗体の役割には下記のようなものがあります(図.抗体の作用)。 1)抗体は病原菌に結合し(オプソニン化)、食細胞の貪食を助けます。 2) 抗体には、ウイルスや毒素に結合することで感染力や毒性を失わせる作 用(中和作用)を持つものがあります。 3) 抗原と結合した抗体は補体経路を活性化します。補体はオプソニン化、 食細胞の炎症部位への誘導、血管拡張、溶菌、細胞傷害などをひきおこ します。 Fc レセプター 細菌 抗体 食細胞 オプソニン化 中和抗体 正常細胞 ウイルス 感染細胞 ウイルス 活性を失った ウイルス C1 C4 C2 C3 補体の活性化 細菌 オプソニン化、食細胞の動員 膜障害複合体 (MAC) 形成による溶菌 補体には 9 つの主成分がある 3 つの経路があるが、抗体は補体 C1 から 次々に補体を活性化していく 食細胞は、Fc レセプターによって細菌 表面に結合した抗体に結合し、効率的に 貪食 補体 抗体の作用 97遺伝子再編成
獲得免疫では、多種多様な病原体に対してそれぞれ特異的に反応できる T 細胞や B 細胞が同じく多数存在します。これは、多様な抗原受容体をもつ T 細胞や B 細胞が存在しているためです。T 細胞の抗原受容体を T 細胞受容体 (TCR)、B 細胞の抗原受容体を免疫グロブリン(Ig)※ 1と呼びます。抗原受 容体の多様性は「遺伝子の再編成」によって実現されています(図.遺伝子 組換えによる免疫グロブリンの多様性)※ 2。遺伝子の再編成では、胸腺や骨 髄で T 細胞や B 細胞が分化する過程で、それぞれの細胞の抗原受容体の遺伝 子の切り貼りがおこなわれ、抗原受容体に膨大なレパートリーがつくられま す。 免疫グロブリンは、2 本の重鎖(H 鎖)と 2 本の軽鎖(L 鎖)の計 4 本の ポリペプチド鎖が S-S 結合でつながれた分子で、抗原はアミノ酸配列に多様 性がある可変領域(V 領域)に結合します。H 鎖可変領域(VH)の構造・配 列は、たくさんある V、D、J の遺伝子群からそれぞれ 1 個の遺伝子が、L 鎖 可変領域(VL)は、V、J の遺伝子群からそれぞれ 1 個の遺伝子が選ばれて再 編成されます。両者の組み合わせで計算上 1 千万種類以上の多様性が生み出 されます。TCR も、同じような仕組みで抗原認識部位の多様性が生み出され ます。TCR は免疫グロブリンと異なり、抗原分子そのものに直接結合するの ではなく、主要組織適合性複合体(MHC)分子上の抗原が分解されたペプチ ドを認識します。自己反応性細胞の除去
遺伝子再編成によって、多種多様な抗原にそれぞれ特異的に反応する免疫 細胞が生み出されますが、その中から、自己に対して反応してしまうような 免疫細胞は、早期に排除されます。 ① T 細胞の場合 胸腺上皮細胞の細胞表面には主要組織適合性複合体(MHC)が発現してお り、そこには自己に由来するペプチド(自己抗原)が乗っています※ 2。この MHC と自己抗原の組み合わせに強く結合してしまう T 細胞は、自己を攻撃 する恐れがあり、アポトーシスで排除されるようにプログラムされています。 逆に、MHC が認識できない T 細胞はやがて死んでいきます。 H 鎖遺伝子 VH1 VH2 VH3 VH D1~25 JH1~6 Cμ (x100~300) 再構成 VDJ C 遺伝子の組換え 遺伝子組換えによる免疫グロブリンの多様性 Pick Up from MBL 抗免疫グロブリン抗体 MBL では、各種免疫グロブリン(イ ムノグロブリン)に対する抗体を揃 えています。IEP(免疫電気泳動) に使用可能です。製品ラインナップ の詳細につきましては MBL ライフ サイエンスサイト(http://ruo.mbl. co.jp/sch/?g=17) をご覧下さい。 抗マウス β5t 抗体 胸腺皮質上皮 (cTEC) におけるポジ ティブセレクション(自己 MHC 拘 束)に関わる、胸腺特異的プロテア ソームの新規サブユニット β5t に対 する抗体です。 <参考文献>Murata S, et al. Science 316, 1349-1353 (2007) ※ 1 免疫グロブリンは放出されると、抗体と 呼ばれます。 ※ 2 免疫グロブリン遺伝子の再編成メカニズ ムを解明した利根川進博士は 1987 年の ノーベル生理学・医学賞を受賞していま す。 Fc ドメイン 抗原結合部位 H 鎖の可変部 Fab L 鎖の定常部 H 鎖の定常部 L 鎖の可変部 免疫グロブリンの構造 98
② B 細胞の場合 B 細胞も T 細胞と同様に、自己反応性の恐れのあるものは分化の過程で排 除されます。骨髄で、未熟な B 細胞の受容体に周囲の細胞の表面分子や体液 中の分子が強く結合すると、その B 細胞は死んでしまいます。結合がそれほ ど強くない場合は、もう一度遺伝子再編成がおこなわれます。 このようにして、選別された T 細胞や B 細胞は、胸腺や骨髄から出てリン パ節に運ばれます。
リンパ節での免疫細胞の出会い
リンパ管は、先端の閉じた管として組織中にはりめぐらされています。毛 細血管からにじみだしてきた組織液はリンパ管壁の細胞の間を通ってリンパ 管に流れ込みます(図.リンパ液と血液の循環)。リンパ管にも、弁が付いて いて筋肉の運動によって体の中心に向かって流れるようになっています。リ ンパ液は、リンパ節のような二次リンパ器官※ 1に流れていきます(図.リン パ節の構造)。二次リンパ器官には、抗原を提示した樹状細胞も移動してきて おり、T 細胞や B 細胞などの免疫細胞が効率よく出会える仕組みになってい ます。 樹状細胞は、輸入リンパ管を通ってリンパ節の T 細胞領域に移動します。 抗原特異的な T 細胞が樹状細胞と出会い、活性化されるとエフェクター機能 を持つようになります。エフェクター細胞となったキラー T 細胞とヘルパー ※ 1 二次リンパ器官にはリンパ節の他に、脾 臓、腸管のバイエル板が含まれます。抗 原がリンパの流れに乗ったものはリンパ 節で、血液にはいったものは脾臓で、腸 管にはいったものはバイエル板で捕捉さ れます。 心臓 動脈 組織 毛細血管 組織液 リンパ管 リンパ節 静脈 輸入リンパ管 輸出リンパ管 高内皮静脈 リンパ管には静脈と同じように弁が 着いていて逆流を防ぎます。 胸管 リンパ液と血液の循環 輸入リンパ管 輸出リンパ管 髄洞 高内皮細静脈 B 細胞領域(濾胞) T 細胞領域 髄策 T-B 境界領域 辺縁洞 濾胞樹状細胞 胚中心 リンパ節の構造 Pick Up from MBL 抗 CD93 抗体 MBL では、ヒト臍帯血由来ナイー ブ T リ ン パ 球 (CD4+CD45RA+細 胞 ) に 反 応 す る CD93 抗 体 (mNI-11) を販売しております。この抗体 は、ヒト臍帯血中のリンパ球 ( 特に、 ナイーブTリンパ球 ) の新たな機能 解析、新生児の免疫システムの解明、 さらには再生医療分野での応用に有 益な抗体であると考えられます。 99T 細胞の一部はリンパ節から出て胸管から血液に入り、組織に運ばれて機能 を発揮します。 活性化した一部のヘルパー T 細胞は T-B 境界領域に移動します。抗原を捕 捉した B 細胞は T-B 領域で、あるいは、高内皮細静脈を介してリンパ節に入り、 T 細胞領域を通る時に、T 細胞と出会う機会を得ます。このとき、抗原を捕捉 している B 細胞と、その抗原に特異的な T 細胞がうまく出会うと、互いに活 性化し合います(図.リンパ節内でのリンパ球活性化)。こうした相互作用の 結果、さらに分化が進み、親和性の高い成熟した質の優れた抗体を産生する ようになります。
9-4.
臓器移植をかんたんに行うことができない理由「自己と非自己」
MHC (Major Histocompatibility Complex; 主要組織適合性複合体)
私たちの細胞の表面には、MHC という糖タンパク質がたくさん(細胞1つ あたり 10 万の単位で)発現しています。ヒトにおける MHC のことを HLA (Human Leukocyte Antigen; ヒト白血球抗原)といいます。HLA を規定し ている遺伝子領域は第 6 番染色体短腕にあり、タンパク質の構造および機能 の違いから、クラス I(HLA-A、-B、-C など)、クラス II(HLA-DR、-DQ、 -DP など )、クラス III の遺伝子領域に分類されています。HLA はヒトのな かで最も多型性(個人差)を示す遺伝子で、現在、HLA-A、-B、-C および -DR で 1 万種を超える遺伝子型が知られています(2015 年 4 月、http:// hla.alleles.org/nomenclature/stats.html)。そのため、個体によって細胞表 面に発現している HLA 分子 は非常に多様性に富んでいます。これにより、 自己と非自己(外来の細菌やウイルス)を識別し、免疫反応を開始できます。 骨髄移植や臓器移植では、白血球の HLA 型が一致しない移植片は非自己と みなされるため、HLA 型の一致・不一致が治療効果に大きく影響を与えます。 Pick Up from MBL ジェノサーチ ™ HLA ver.2 Luminex® 機器で、短時間で HLA 遺 伝子型を判定する試薬です。 ジェノサーチ ™ HPA ver2 血小板の表面抗原にも様々な遺伝子 型があり、血小板輸血のときには拒 絶反応を防ぐため正確に判定する ことが必要です。「ジェノサーチ ™ HPA ver.2」は血小板の表面抗原の 複数の遺伝子領域を「ジェノサーチ ™ HLA ver.2 」と同じ原理で検査する試 薬です。 動脈 取り込んだ 抗原の断片 輸入リンパ管 輸出リンパ管 静脈 心臓へ 形質細胞 B 細胞 T 細胞 抗原(病原体の一部など) 抗体 高内皮細静脈 リンパ節内でのリンパ球の活性化 100MHC に抗原ペプチドをのせる
すべての有核細胞は、MHC クラス I 分子を持っていて、細胞内の抗原物質 をペプチドに分解し、MHC クラス I 分子とともに提示します。また、樹状細胞、 マクロファージ、B 細胞は、MHC クラス II も発現していて、外来性の抗原ペ プチドを MHC クラス II とともに提示します。これらの細胞を抗原提示細胞 と呼んでいます。 細胞内抗原タンパク質(例えばウイルスが感染した細胞内で合成したウイ ルスタンパク質)は種々のタンパク質分解酵素をもつプロテアソームでペプ チドに分解されます。抗原ペプチドは小胞体膜に存在する抗原処理関連トラ ンスポーター(TAP) により小胞体内に運搬されてクラス I 分子に結合し、ゴ ルジ体を経て細胞表面に運ばれます(図.MHC クラス I と細胞内抗原ペプチ ド)。 細胞外の抗原(細菌、ウイルス粒子、可溶性タンパク質等)はエンドサイ トーシスやファゴサイトーシスによって細胞内に取り込まれます。このよう な小胞はリソソームと融合し、結果として細胞外抗原由来のペプチドを生成 します。新しく合成された MHC クラス II 分子の α 鎖と β 鎖はリボソームか ら小胞体に移動し、蓋の役目をするインバリアント鎖と会合します。抗原ペ プチドが膜融合によって入ってくると、インバリアント鎖がはずれ、抗原ペ プチドと結合した MHC クラス II 分子は小胞輸送で細胞表面に運ばれます(図. MHC クラス II と細胞外抗原ペプチド)。 MHC クラス I と細胞内抗原ペプチド MHC クラス II と細胞外抗原ペプチド MHC クラス I エキソサイ トーシス小胞 ペプチド インバリアント鎖 CLIP エキソサイ トーシス小胞 細胞内抗原 プロテアソーム ペプチド TAP β2m MHC クラスⅠ ゴルジ体 小胞体 MHC クラス II エンドソーム エキソサイ トーシス小胞 ペプチド ゴルジ体 MHC クラス II インバリアント鎖 小胞体 リソソームと融合して ペプチドの合成 CLIP 細胞外抗原 エンドソーム 101MHC と T 細胞
T細胞は、T 細胞受容体 (TCR) だけでなく、補助受容体である CD8、CD4 と共に MHC 分子に接触します。細胞傷害性 T 細胞(CTL)は表面に CD8 を 発現しており、クラス I MHC 分子と結合します。CTL は、ウイルス感染細胞 などの標的細胞を認識することでパーフォリンやグランザイムを放出し、直 接アポトーシスを誘導して傷害します。 ヘルパー T 細胞(Th 細胞)は表面に CD4 を発現し、クラス II MHC 分子 を表面に発現した細胞と結合します。Th1 細胞は IL-2 や IFN-γ を産生し、 CTL やマクロファージ、NK 細胞を活性化します。Th2 細胞は IL-4 などのサ イトカインを産生し、B細胞を活性します。Th17 細胞は IL-17 を産生し、 炎症に関与します。制御性T細胞(Treg)は TGF-β や IL-10 を産生し、いっ たん始まった免疫応答を能動的に終結させる機能をもっていると考えられて います。がんワクチン
がん細胞では、細胞内でがんに特異的なタンパク質がペプチドまで分解さ れ、がん細胞表面にある MHC クラス I 分子と共にがん抗原ペプチドとして 提示されます。それを認識するがん抗原ペプチド特異的な細胞傷害性 T 細胞 (CTL)が活性化され、がん細胞を攻撃します。しかし、CTL の数と力(免疫 力)が十分でない場合、がんは増殖と転移を続けて悪性化します。がんワク チン療法は、抗原ペプチドを患者の血管内に投与し、がんに特異的な CTL を 強力に誘導することでがんを治療する方法です。がんワクチン療法の効果を 更に強めるため、がん抗原ペプチドを提示する樹状細胞などの抗原提示細胞 を用いた工夫や、遺伝子治療との併用などの研究が進められています。 Pick Up from MBL T-Select MHC tetramer MBL の MHC テトラマーは、MHC とペプチドの複合体を 4 量体(テト ラマー)化することで、TCR との安 定的な結合状態を維持し、抗原特異 的 T 細胞を検出できるツールです。 T-Select MHC Tetramer は、FITC、 PE あるいは APC(allophycocyanin) といった蛍光物質で標識されている ため、フローサイトメーターを用い て、抗原特異的 T 細胞の検出が可能 です。 がんワクチン療法の研究などに使用 されています。さらに、健常人の末 梢血からがん抗原特異的 CTL を誘 導することにも成功しています。 T-Select MHC class II Tetramer MBL で は、 ヒ ト お よ び マ ウ ス の MHC ク ラ ス II の テ ト ラ マ ー を 開 発・販売しています。抗原特異的な CD4+T 細胞を検出できる本試薬は、 液性免疫や細胞性免疫の関係する 様々な分野において重要な解析ツー ルとなることが期待されます。 Th2 Th1 Treg NKT 標的細胞 細胞死 MDSC B 細胞 CD4+T 樹状細胞 CD8+T IL-2 IFN-γ TNF-α IL-4 IL-5 IL-10 IL-13 IL-17 IL-4 IL-12 抗体 IL-10 TGF-β IL-6+TGF-β TGF-β S100A8/A9 パーフォリン グランザイム IFN-γ TNF-α 病原体 TLR CTL MHC分子 ペプチド 蛍光標識物 T細胞受容体 抗原特異的T細胞 β2m T-Select MHC Tetramer MHC class II CD1d MHC class I Th17 1029-5.
腸管は最大の免疫器官「腸管免疫」
近年、免疫学において、最も注目されている分野の一つが「腸管免疫」です。 腸管免疫の特徴として、「免疫細胞の数が多いこと(特に IgA 産生細胞と CD4+細胞が重要な役割を果たします)」と、「感染症に対する防御のために 免疫を活性化する一方、栄養成分を摂取するために腸内細菌や食物に対して は免疫を抑制すること」などが挙げられます。 ヒトの腸管には、500 種類以上、約 100 兆個の腸内細菌が生息し、消化 されなかった食物繊維などを発酵によって代謝しています。腸内細菌は、一 定の構成比を保った腸内細菌叢(腸内フローラ)を形成しており、「もう一つ の臓器」と呼ばれることもあります。 最近の研究で、腸内細菌が、腸管における免疫系の成熟(T 細胞の分化の 完了)や、その機能維持に寄与していることが分かり、その詳細なメカニズ ムが明らかになってきています。例えば、マウスを使った実験では、腸内細 菌の代謝産物の一つである酪酸が、制御性 T 細胞の分化誘導を促進している ことが報告されています。酪酸には、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害作用 があることが知られており、酪酸によって、未成熟な T 細胞の DNA のうち、 制御性 T 細胞への分化誘導に重要なFoxp3 遺伝子領域のヒストンのアセチル 化が促進され、遺伝子の発現がオンに切り替わることで制御性 T 細胞へと分 化することが明らかになりました。 消化管の慢性炎症であるクローン病や潰瘍性大腸炎は、近年の食生活の欧 米化に伴って、日本でも患者数が毎年増加しています。これら炎症性腸疾患 の患者の腸内フローラに異常が認められることから、自己免疫抗体検査と合 わせて、腸内フローラを調べることによって、発症メカニズムの解明、治療 法の確立が期待されています。 また、腸管の内壁に散在する M 細胞は腸内の消化物から様々な物質を取り 込み、粘膜直下の免疫細胞に渡す役割を担っています(図.腸管免疫)。M 細 胞の抗原伝達機構の解明や、経口摂取ワクチン(食べるワクチン)の開発が 行われています。 Pick Up from MBL 腸管免疫関連抗体 MBL では、腸管免疫に関連する M 細胞関連抗体を開発・販売してお ります。詳細は MBL ライフサイエ ン ス サ イ ト(http://ruo.mbl.co.jp/ news/immunology_news/1.html) をご覧下さい。 抗原(病原体の一部など) 抗原(病原体の一部など) パイエル板 M 細胞 B 細胞 T 細胞 胚中心 IgM IgA 胸管 血流 輸出リンパ管 T 細胞領域 B 細胞領域 樹状細胞 B 細胞 IgA 産生 形質細胞 IgA 活性化 ヘルパー T 細胞 腸上皮 腸管免疫 103Pick Up from MBL 制御性 T 細胞関連抗体 MBL では、自己免疫疾患と関わる、 制御性 T(Treg)細胞関連抗体を開 発・販売しています。マウス生体へ の投与で抗腫瘍活性を示す機能抗体 や、転写因子 Foxp3 をはじめとす る Treg マーカー分子に対する抗体 も多数揃えています。
IgG サブクラス BS-NIA IgG4 MBL では自己免疫性膵炎の診断基 準に採用されている血中 IgG4 の測 定試薬を販売しています。
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自分が自分を攻撃する「自己免疫疾患」
自己免疫疾患とは、免疫細胞が自己の物質を攻撃してしまうことで起こる 疾患の総称です。全身の組織に炎症が起こる「全身性自己免疫疾患」と、特 定の臓器を攻撃する抗体によって臓器の機能がおかされる「臓器特異的自己 免疫疾患」に大別されます。両者は、発症機序も異なると考えられており、 前者は体中のどこにでもあるような抗原に免疫反応が起こり、発症します。 一方、後者は、それぞれの臓器の中の特定の組織中の抗原に対して自己免疫 反応が起こり、発症します。どちらの場合も、標的となった臓器や組織に慢 性的な炎症が起こってリンパ球や食細胞が浸潤し、組織が破壊されます。 自己の物質に対しては、免疫系は反応を起こさないように出来ているにも 関わらず、なぜ自己免疫が働いてしまうのでしょうか?多くの自己免疫疾患 で、発症機序や病態は未だ不明のままですが、以下のような発症機序が明ら かになっています。 一つは、自己に対して反応してしまう免疫細胞を除去する仕組みが上手く機 能しない場合です。これは基本的に遺伝子の先天的な変異によって起こります。 例えば、免疫 性 多腺性内分泌 不全 症(Autoimmune polyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystrophy; APECED) は、全身の腺組織に自己免 疫反応が起こります。この原因遺伝子はAIRE で、AIRE が欠損すると末梢特異 的遺伝子の胸腺での発現が失われるために自己免疫反応性 T 細胞の除去がう まく行われません。 二つ目は、免疫システムでバグが起こる場合です。例えば、普段、免疫系 から隔絶されている組織(脳神経系、眼、精巣など)の抗原(隔絶抗原)を誤っ て攻撃してしまう場合や、普段はタンパク質分子の内部に隠れている部位を 抗原として誤って攻撃してしまう場合、病原体と似ている自己の抗原を誤っ て攻撃してしまう場合などがあります。 また、制御性 T 細胞の機能が失われることにより、自己免疫疾患が発症す る場合もあります。X 連鎖多腺性自己免疫不全症(Immune dysregulation polyendocrinopathy, X-linked:IPEX) は、種々の自己免疫性炎症疾患を発症 しますが、この原因遺伝子は制御性 T 細胞(Treg)の分化に重要なFoxp3 遺 伝子です。制御性 T 細胞の機能が失われると、T 細胞の恒常的な活性化が起 こります。 △自己免疫疾患検査フロ-チャートポスター、下敷き △ 「自己免疫疾患の診断基準と治療指針」第 7 版 監修 順天堂大学医学部附属順天堂医院 膠原病・リウマチ内科教授 髙崎 芳成 先生 104Pick Up from MBL MBL と自己免疫疾患 自己免疫疾患と、血液中に現れる自己抗体には、密接な関連性がみとめられることから、自己抗体の検出は、自己免疫疾患 の診断の補助として非常に有用です。多くの自己免疫疾患の診断基準に、疾患特異的な自己抗体の検出項目がとりあげられ ています。 MBL では、創業以来、免疫学・分子生物学の成果を取り入れ、多数の自己免疫疾患の自己抗体検査試薬を開発してきました。 MBL 製品は、国内外の多くの病院、検査センタ―、大学で使用されています。ベットサイドで手軽に行える簡便な検査から、 全自動機器によって短時間で多項目を同時に検査できる試薬まで、様々なニーズに応えられる試薬を揃えています。 MBL 臨床検査薬サイト(http://ivd.mbl.co.jp/)でも検査試薬、疾患の特徴、測定原理などをご紹介しています。 間接蛍光抗体法による抗核抗体検査試薬 “フルオロ HEPANA テスト” ヒト咽頭がん由来の HEp-2 細胞を固定して貼り付けたスラ イドグラスに、患者血清を反応させると、HEp-2 細胞内の 抗原分子に自己抗体が結合し、蛍光色素標識二次抗体で検 出すると様々な染色パターンが得られます。染色パターンに よって自己抗体の種類を推測できるので、自己免疫疾患の一 次スクリーニング検査として使用されてきました。MBL の フルオロ HEPANA テストは染色パターンが明確で、発売と 同時に国内外の多くの病院、施設で使用され、自己免疫疾患 診断の補助に貢献してきました。HEp-2 細胞は核が大きく、 種々の細胞周期の細胞が含まれているため、タンパク質の分 布、発現、機能の解明、さらに未知のタンパク質の発見と分 子生物学の研究にも使われています。 自己免疫疾患と感染症の症状に関わるデスモグレイン 天疱瘡は皮膚および粘膜を標的とする臓器特異的自己免 疫疾患の一つです。粘膜および皮膚の弛緩性水疱とびら ん面を特徴とする尋常性天疱瘡(PV)と小水疱と落屑 を伴う紅斑を特徴とする落葉状天疱瘡(PF)に分類さ れます。PV 抗原、PF 抗原はそれぞれデスモグレイン 3 (Desmoglein 3:Dsg3)、デスモグレイン 1(Desmoglein 1:Dsg1) と命名されています。また、皮膚では Dsg1 が Dsg3 よりも高発現していますが、粘膜では Dsg1 の 方が Dsg3 よりも明らかに発現レベルが低くなっていま す。MBL では抗 Dsg1 抗体および抗 Dsg3 抗体の検査 試薬を開発・販売しております。これらの検査試薬は、 天疱瘡の診断または経過観察中の治療効果判定を目的と した測定に使用されています。さらに、抗 Dsg1 抗体、 抗 Dsg3 抗体を高い感度および特異的に測定することに より、天疱瘡の病型の血清学的鑑別が可能になりました。 一方、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(Staphylococcal Scaled Skin Syndrome: SSSS)や水疱性膿痂疹(と びひ、Bullous impetigo)は、黄色ブドウ球菌が産生 する外毒素(exfoliative toxin)により引き起こされる水疱性疾患です。外毒素がこれらの疾患の水疱形成に関与することは 1970 年にすでに報告されていましたが、その発症機序は長い間、解明されていませんでした。近年になり、慶應義塾大学 の天谷雅行教授らによって、外毒素が Dsg1 の 381 番目のグルタミン酸の直後を切断するセリンプロテアーゼ活性をもち、 SSSS の皮膚症状を引き起こす可能性が示されました。自己免疫性皮膚疾患である天疱瘡と感染症である SSSS において、標 的分子が同一であったことは、臨床的に非常に興味深い知見です。 抗 Jo-1 抗体 対応抗原:ヒスチジル tRNA 合成酵素 (細胞質に細かな顆粒状染色がみられ る。) 抗セントロメア抗体 対応抗原:セントロメアタンパク質 (CENP-B, CENP-A, CENP-C) (間期核は 40~80 個の微細な顆 粒状の染色を認める。M 期クロモ ソーム部に顆粒が配列するのが特 徴である。) Dsg1 ET MBLでは 抗Dsg1抗体および 抗Dsg3抗体の検査試薬を 開発・販売しております。 105
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過剰な攻撃「アレルギー」
アレルギーでは、花粉や食べ物、薬剤に対して、過剰な免疫反応が起こり、 鼻水、下痢、蕁じ ん ま し ん麻疹などの症状が出て、ときには命を失うこともあります。 このアレルギー反応は、IgE 抗体によって引き起こされます。IgE 抗体は血中 の好塩基球や皮下や組織にいる肥満細胞の表面にある Fc 受容体に結合してお り、この IgE に抗原が結合すると好塩基球と肥満細胞から細胞内の顆粒が放 出されます(図.IgE と肥満細胞によるアレルギーの発生機序)。顆粒中には ヒスタミンやセロトニンなどの炎症を起こす物質が大量に含まれており、血 管の拡張や平滑筋の収縮を引き起こします。それが鼻水、蕁麻疹、嘔吐、下 痢の症状となります。抗原が大量に血中に入った場合は、全身の血管が拡張 することによって急激な血圧低下、呼吸困難というアナフィラキシーショッ クの症状を引き起こし、死に至る場合もあります。IgE は、1960 年代にア レルギー患者さんの血中にアレルギーを誘導する物質に結合する分子がある ことが発見され、その分子は新しいタイプの抗体である IgE であることがわ かりました。IgE は、血中には微量にしか含まれていません。IgE は、消化管 に線虫などの寄生虫が感染したときには重要な役割を果たします。寄生虫に 特異的な IgE が肥満細胞を刺激し、寄生虫の腸管内定着を防ぎます。最近は 腸内に寄生虫を持つ人は少なくなり、寄生虫に対する IgE より花粉に対する IgE の相対的な量が増え、花粉に対する肥満細胞の反応が活発化されたとも 考えられています。9-8.
抗体医薬の開発も行われています「感染症」
感染は病原体が宿主に侵入し、病原体の感染力が宿主の免疫防御能力を上 回ったときに成立します。免疫能や栄養状態によっては感染しても病原体を 研究者コラム 北里 柴三郎 「予防医学の礎を築く」 1885 年より ドイツのベル リン大学へ留 学し、細菌培 養法の基礎を 確立したコッ ホ( 炭 疽 菌、 結核菌、コレラ菌を発見)に師事し ました。1889 年に世界で初めて破 傷風菌だけを分離して培養する純粋 培養法を開発し、1890 年には破 傷風菌抗毒素を発見しました。さら に、血清療法という、菌体を少量ず つ動物に注射しながら血清中に抗体 を産生させる画期的な手法を開発し ました。これにより、破傷風の予防 が可能になったのです。1890 年 には血清療法をジフテリアに応用し て同僚であったベーリングと連名で 「動物におけるジフテリア免疫と破 傷風免疫の成立について」という論 文を発表しました。1892 年帰国し、 1894 年にはペストの蔓延していた 香港に政府によって派遣され、病原 菌であるペスト菌を発見しました。 IgEと肥満細胞によるアレルギの発生機序 抗原(アレルゲン) B 細胞 形質細胞 IgE Fc レセプター 肥満細胞 架橋 IL-4 など Th2 細胞 化学伝達物質(ヒスタミン , ロイコトリエンなど) の放出 抗原(アレルゲン) 気道収縮 , 炎症反応 アレルギー症状 抗原に特異的な抗体がつくられる 感作 抗原抗体反応によって症状が 誘発 ヘルパー T 細胞のうち Th2 と呼ばれる細胞は IL-4n などを産生し、IgE 産生 B 細胞への クラススイッチを促します。 106罹患 B 細胞 融合 + 回復に関わった抗体 (中和抗体) 回復・未発症 重篤化 SPYMEG 抗体産生細胞 抗体調製 エピトープ解析 治療抗体への応用 感染症の機序解明 ワクチン開発 中和抗体を産生する ハイブリドーマを確立 感染症に対する抗体医薬 Pick Up from MBL 感染症関連製品 MBL では 1980 年代に新生児感染 症で上昇する 3 種類の血漿タンパ ク質をベッドサイドで微量の血液 から迅速に検査できる APR ラテッ クスを開発しました。新生児の場 合、早期に発見することが予後に 大きく影響することから、現在も 改 良 品 APR-D ラ テ ッ ク ス が 多 く の病院で使われています。EB ウイ ル ス(Epstein-Barr virus) 検 出 試 薬、クラミジア・ニューモニエ感染 検査試薬も販売しています。最近で は、ヒトヒュージョンパートナー SPYMEG を利用し、デング熱、イ ンフルエンザウイルスの治療用抗 体、ワクチンの開発に取り組んでい ます。 排除したり、病原体を体内に保ったまま発症しないこともあります。病原体 は様々な臓器に感染し、炎症を起こすので、症状や所見は臓器毎に異なりま すが、一般的には発熱、全身倦怠感、CRP(C- 反応性タンパク質)産生、赤 血球沈降速度(血沈、赤沈)の亢進、白血球異常がみられます。
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抗体を用いた検査薬の開発も行われています「生活習慣病」
生活習慣病として厚生労働省のホームページに糖尿病、脳卒中、心臓病、脂 質異常症、高血圧、肥満があげられており、生活習慣病は日本人の死亡原因 の 2/3 を占 めています(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/ seikatu/)。糖尿病
小腸からブドウ糖が血管に取り込まれて血中ブドウ糖濃度が上がると、膵 臓 β 細胞からインスリンが分泌されます。組織の細胞表面のインスリン受容 体にインスリンが結合すると、体細胞はブドウ糖を吸収して血糖値を下げま す。しかし、生活習慣の影響で血糖値が上がっても膵臓 β 細胞がインスリン を分泌できくなったり、細胞のインスリン受容体の数が減ったり、あるいは 働かなくなると糖尿病になります(2 型糖尿病)。また、自己免疫反応によっ て膵臓のメタボリック β 細胞が壊されてもインスリンの産生量が低下し、糖 尿病は発症します(1 型糖尿病)。脳卒中
脳卒中は大きく脳梗塞と脳出血に分けられます。脳梗塞は、脳の血管が細 くなったり,血栓で詰まって起こります。脳出血では、高血圧や加齢によっ 感染症に対する抗体医薬 107ビスファチン アディポネクチン FABP4 RBP4 AIM CRP PCSK9 V C C RAGE V C C sRAGE CML S100A12 抗 CML 抗体 Chitotriosidase 脂肪細胞 マクロファージ 肝臓 膵臓
肥満
糖尿病
動脈硬化
紺: PCSK9(LDL 受容体の分解を促進) 水色 : 終末糖化産物関連 赤: アディポカイン ( アディポネクチン、ビスファチン) 緑: 脂質代謝関連 茶: 炎症関連RAGE: Receptor of AGE AIM: Apoptosis inhibitor of macrophage
CML: Nε-(carboxymethyl)lysine FABP4: Fatty acid binding protein 4 RBP4: Retinol binding protein 4 生活習慣病関連分子 て脳の血管がもろくなって細い血管が破れて起き、周囲の神経細胞が死んで 麻痺や失語症などの症状がでます。