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自分にはセンスがある、ということを自分で信じるセンス(<特集>子どものためのデザイン02)

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全文

(1)

自分

に

は

セ ン

ス

が あ

る

、

と

い

う

こ

とを

自

分

で

信

じる

セ

ン ス

lBelieve

 

in

 

l

 

Have

 

a

 

Sense

後

藤

博

史

 

へる す 出 版 編 集 部

GOTOH

 

Hiroshi

Herusu

 

Publishing

,

lnc

.

1.

編集者

に とっ て

必 要 な

t センス

’

と は

 

か れこれ

30

年 以

上 も

、

編 集者

と して原

稿 執 筆 依 頼

をつづ け てきた

。

今回

、

岡崎 先 生 から

’

原稿 執 筆 依 頼

’

をいた だい て

、

迷 う ことな く 「

快諾

」 の返

信

を さ せて いた だいた。 といっ ても

書

き た く て書き た く て ウズウズし て

、

依 頼を心 待ち に し て い た と い う ことで は決してな く

、

断

られ た と きの気 分 を 知 り尽 く して い るから でも あ り

、

罪滅 ぼし の意 も ある

。

      *

 

編

集者

にとっ てな に が 必 要 か

・

…・

・

。

ひと言で言 え

ば

」

センス

’

であ る

。

[

セン ス

’

に尽 き る

。

文

章

に対 する セン ス

、

レ イ ア ウ ト に 対 す る センス

、

カバ

ー

デ ザ インな ど 装 幀 に 対 す るセンス

、

書

名 や タ イ トルに 対 して のセン ス

、

締め切 りを す ぎて も 原 稿が届 か ない

、

送っ た と 執 筆 者の言 う校 正 紙 が 戻っ てこない

、

など の 督 促 を す るときのセン ス

、

いやいや

、

そ れ 以 前 に人 に 対 す るセ ン ス

、

これ が ないと すべ ては始 まらない

。

 で も

、

それら が まっ た くな くて も

、

あるいは ほ と ん ど な くて も 書 籍

・

雑 誌 はでき あ が る

。

書籍

や

雑 誌

は

作

る もの では も ち ろ ん あ るが

、

同 時 に 書 籍 や 雑 誌 はできてし ま う ものなのだ

。

当 た り前 といえ ば 当 た り 前では あ る

。

      *  い ち ば んこだ わっ てき たのはな ん だろう

……。

や は り文 章で あ る

。

自分の書 く もの では も ち ろ ん な く

、

原 稿 (

[

玉 稿

’

:ぎょ くこ う

、

という)

。

人さ まの書いた文 章であ る

。

数 十 年

、

毎 日

毎

日

、

書

いて いた

だ

いた 文

章

を

読

み

、

読

み な がら原

稿 整

理を 続けてき た

。

意 味が通る か

、

読 者に通じ る か

、

誤 解さ れ な い か

、一

文 が 長 す

ぎ

ないか

、

改

行が

少

な す

ぎ

ないか

、

誤っ た

漢字

を 使っ てないか

、

語 句 を 漢 字 に した り平 仮 名 に した り していな いか

、

表 と 本 文で言い回 し が 違っていないか

、

表と本 文の数 値 が 違っ てはいないか

、

カッ コ内の百 分 率 は 正 しいか

……。

さ ま ざ ま なことを 考えなが ら赤 字を入 れたり

、

著 者 校正時に確 認す る た め 鉛

筆

で コメン トを 記 し た り しなが ら

、

原

稿整

理 や 原

稿

と の付 き あ わせ をつづけてき た。 知ら

ず

知ら

ず

の う ち に人を傷つ けて しまっ ている よ う な 言い 回 しな

ど

に も

注 意 を払

う。

や

は

り

‘

セン ス

’

であ る

。

  著

者

校

正時に

執 筆

者に確 認 する

、

と 記 し た が

、

尋 ね 方 に も

‘

セ ン ス

}

が 問 わ れる

。

明 ら か な 誤 記であっ ても

、

初 校 に 朱 記 す る の で はなく

、

鉛 筆 書 き を する のが 基 本であ る

。

気 を 遣う の は

、

意

味の通 ら ない

文 章

の

場合

で あ る

。

誰

しも

自分

の

書

い た

文

章

に ケ チ はつけ ら れ た くない

。

咎め られた く は ない

。

た と え 「文 意 が 通 じ ない箇 所 」 が あっ た と しても

、

「文

意 が

通 じ ませ ん。

再考

を」 と鉛

筆 書

き が あ れ ばい い気 持 ち は し ない

。

「文 意 が通 じ な い」 こ と は もちろ ん しっ か り伝え

、

書 き 手 に ム カッと 感 じさ せ ないよ う な 尋 ね 方 を す る

。

      *

 

’

編 集者

に とっ て のセン ス

’

につ い てあ れこれ 考 えつづ けてき て

、

そのなか で も もっ と も

必

要 な

’

セ ン ス

’

に気づいた

。

それ は L 自 分に は セン ス が あ る

、

と い う こ と を自 分で信じ る セ ン ス

’

。

言いふ ら すこ と では もち ろ んないが

、

密

か に

自分

の セ ン スを

信

じることであ る

。

やは り

、

こ れ が な い と すべて は

始

ま らない

。

  自

分で

自

分の

‘

センス

’

を

信

じ る。 な か な か む ず かし い。 それ もい っ ときで はな く

、

信じっづけ る こ と は か な り むずか し い

。

それで も

、

信じつづ ける。

意

地で も

信

じつづけ る

。

そ のことが 何か を創り出す と き に とっ て も た い せっ なこ と であると

、

ぼ く は

信

じて いる

。

2 .一

枚 の ク ロッキ

ー

 新 卒

で入

社

し たの

が

医

学書 専

門

出版 社

の

書籍 編集 部

。 た ま た ま受かっ た出 版 社が

、

医 学 書 専 門の出 版 社だっ た と い う

話

で あ る

。

入 社 して半 年ころ までは

、

慣ら し運

転

の よ う な も のだっ た の だ ろ う

、

シ リ

ー

ズ

書 籍

の

編

集に携わ っ た

。

装 幀はも ちろん

、

目

次

か ら

本文

の

組

み

方

まで

決

まっ て い て

、

そ れ を 踏

襲

す る だ け だっ た

。

1

年

ほどし て か ら シ1丿

一

ズで はない書 籍の編 集に携 わ るよう になっ た

。

 

も ち ろ ん

出

版

社

の

規模

にも

よ

る だろ うが

、

ブックデザ インな ど の装 幀は担 当 編 集 者の仕

事

の う ち で

、

外部

に 発注す る こ と は まっ た くなかっ た。 担

当者

が

装幀 案

を

考

え

、

それ を

社

長

(

ほ と ん ど の出 版

社

は規

模

が 小さ い の です

)

に 見 せ

、

検 討し

、

最 終 的 に

決

め て いた。

数

冊の

書籍

を

作

っ た 後 に

、

自分の担 当の書 籍 だ けでは な く

、

他

の ス タッフ の書 籍の装 幀 も 任 さ れるよ う に なっ た。

小学 生

の

頃

か ら

図

工が

好

きで

、

そ れ も

何

かのテ

ー

マに 沿っ てあ れこれ 考え

、

ポ

ス タ

ー

を

創

り あ げ る こ とが 好き で

、

そ の書

籍

に あっ た

ブ

ッ ク デザインを

考

え る のは

楽

し かっ た

。

 読 者対 象

は ほ と ん ど が 医

師

だっ た

。

装 幀の良 し悪 しで書 籍の 売り 上 げ が左

右

さ れ る こ と はなく

、

外 部に装 幀 を 依 頼 する必 要

46

デ ザ イ ン 学 研 究 特集号

Spacial lssue ot Japanese Seciety for the Science of Design

)ol

.

21

・

1  Ng

.

81  2014

(2)

NII-Electronic Library Service

も な く (お 金 を 掛 ける必 要 は な く

)

、

社

内

で装

幀

を 考 え る

(

印

刷 所

に入

稿 す

るた めの

版 下

だ け は

作 成

しても らった

)

、 という

自然

の流れだっ た

。

      *

  担当者

か ら渡 さ れ た

書名

・

執筆

者

名

な ど

、

表

紙

に盛 り込 む 要

素

の メ モと

初 校

ゲラを

前

に

、

あ

れ

これ 思いを め ぐらす。

本

文

中

に

表 紙

に た え ら れ る よ う な 写

真

や 図 が

あ

れ

ば

コピ

ー

をと る。 こ れ はとい う 写 真 や 図がな け れ ば

、

た と えば 「泌 尿 器 関 連 」 の

書

籍であ れ ば 「腎 盂 や 尿 管 」 の

X

線 写 真 を ア レンジ した イ ラ ス ト を ざっ と描 く

。

ま た

、

書 名 な ど何 本 か 写 植 を 発 注 す る

。

そ れ ら を すべて揃 え

、

判 型 に 併 せ た 黒 枠 内 に

、

福 笑いよ ろ し く並べ て

位 置

を

決

め

、

な ん ど も な ん ど も

、

あ あでも ない こ うでも ない と

社

長 と検

討

した

。

具体 的に は書 名 を

1

ミ リ左にずら し て み て

、

著 者名

を

下

に

0.

5

ミ リ

下

げて み て

、

等 々

。

そ う した

作 業

をつ づ け

、

そ の たびに

fl

多

正 し

、

最

終

的 な

形

を

作

り上 げる

……。

パ ソ コ ン

な

ど まった く

使

って い

な

い

時代

の こ と で

あ

る。

 

とい う の が

、

当

時のぼ くの

働

いて い た

出

版

社

での

装 幀決

定ま で の や り

方 だ

った。 入

社

して

数年

の

編 集 者

と

社

長と 「

1

対

1

」 で すべ て を す すめ

、

決 定 まで こ

ぎ

つ け る

。

い くつ もい くつ も 「

案

」 を 出 し

、

そ れでも 決 ま ら

ず

、

刊 行 期 日 が 迫っ ている と担 当 者 か ら言 わ れ

、

そ れ は そ れでか な りの プ レッシャ

ー

では あっ た

。

  在 職 中 に

30

点 ほ どの書 籍のブッ クデザ インを

、

そ れこそ 唸 り な が ら絞 りだ し た が

、

多 くの こと を 学 ば せても らっ た

。

いま だに意 識 して い る のは

、

「

1

点 を め ざ す 」 とい う こと

。

スペ

ー

ス に 「

書 名

・

執 筆者 名

・

社 名

」な ど をレイアウ トすると き に

、

それ ら が ピタッ と お さ まる のは 「

1

点 」の みだ とい うこと

。

お そ ら く 「そ の辺 り 」 には お さ まっ ていた か も し れ ないが

、

「そ の

1

点」 に は お さ まっ てはいな かっ た だろう

。

め ざ しつづけて はいた が 叶 わ な かっ た と 思 う

。

      *  そ の年の年 末

、

K

市 に越 してき た

。

歩い て数 分の とこ ろを

T

川 上 水 が 流 れてお り

、

雑 木林

に

囲

ま れ た 上 水

沿

い の遊

歩

道 を

、

1

歳 を む か え た ば か りの娘 と歩 くのは 気 持 ち よ く

、

晴 れ た 朝に は

M

美 大 近 く まで足 を 伸 ば した

。

 毎 年

、

秋

の連

休

の

頃

に

‘

藝祭

’

が あっ た。

M

美

大の

文化 祭

であ る

。

4

日 ほど 通し て開 催 さ れて

、

毎 年

、

家 族で出 か け た

。

図書 館で の

特

別 展 示

、

教 室で展 示 してある学 生 た ちの油

絵

、

日

本

画

、

エ ッチング

、

織 物 な ど を 見てま わ り

、

中 庭の屋 台

、

フ1丿

一

マ

ー

ケット

、

焼 き ものに ふ れ るのも 楽 し かっ た

。

  ある教 室 に 入っ た

。

学 生のグル

ー

プ 展 だっ た

。

1

枚のクロッ キ

ー

に 惹 きつけ ら れ た

。

同 じタッチの

絵

が 数

枚

、

展 示 してあっ た

。

凄 かっ た

。

い い デッサンだ と思っ た

。

  受 付 にいた 学 生 に

、

こ の絵 を 描いた 人 に 会いたい

、

と 話 を し た

。

し ば ら く して

、

彼 が

現

れ た

。

180

センチ は あると思 わ れる 大 柄 な 男 性

。

彼 が

N

くん だっ た

。

      *  でき れ ば 譲っ て ほ し い

……。

  彼

は 身

体

を か が めるよ う に ぼ くの話 を 聞い て いた

。

笑っ ては いた が

、

明 らかに戸 惑っ て い るよ うでも あっ た

。

 

ぼ く は

、

毎 年

、

」

藝 祭

に

来

て い るけ ど

、

こう 思っ たのは

初

め て の こ と

、

い い と思っ た から ほ し い と思っ た だ けの こ と

、

な ど を話し た

。

  大 学 近 く の

、

上 水 沿いの

、

路 地 を 入っ た ところ の アパ

ー

トを 訪 れ たのが

、

その 日 だっ たの か

、

あ るいは 別の休 みの 日だ っ た のか

、

まっ た く記 憶 が ない

。

 

ぼ く か ら

描

いているものが あ れ ば

見

て みたい

、

と言っ たの か

、

N

く んから描いた ものが あるから 見 て くだ さい

、

と言っ て くれ たのか

、

まっ た く

記

憶 が ない

。

  彼

の ア パ

ー

トの

部

屋 に 入 り

、

畳の上に

積

みか さ ねてあっ た ク ロッ

キ

ー

(

何 枚 あ

っ たのか

わ

からない。 た だ

、

70

セ ン チ ほど の

高

さ に積み 上 げ られた クロ ッキ

ー

の山 だっ た

)

を

1

枚

1

枚

み て

、

最

終 的

に

5

枚

のデッサンを 選ん

だ

。

N

くん にい く ら

渡

し た の かも 記 憶にない

。

   

・

30

数 年

前

の秋の出 来

事

。

その後

、

年 賀 状のや りと り も せ

ず

、

そ も そ も 名 前 が 本 名 な の か も 分 か ら

ず

、

いや

、

その と き に 尋 ね たのか も しれ ないが

、

まっ た く 記 憶 に ない

。

  覚 えて いる 数 少 ない ことの

一

つ

。

サ インを してほ しいと 話 を したら

、

N

くんは表に は いやです と応え

、

裏に

1

枚

1

枚

、

名 前 と

年 号

C81

)

を

記

して く れ たこと

。

どうやっ て

描

くの ?

 

と い う

間

の抜 け た

問

いに 「え ん ぴつ を 回しな がら

描

き ま す」 と

応

え て くれ たこと

。

      *   担 当 者 が 定 年で辞 め

、

著 者

S

先 生 と以 前に仕 事 をしたこと も あっ て

、

刊 行 まで の編 集

作 業

を 引 き

継

いだのが

、

今 か ら

2

年

ほ ど前

。

それ からす ぐに校正刷 りを 読み

、

読みな がら装

幀

につ い て

考

え は じ め

、

しば ら く して

N

く んのクロッキ

ー

を

表紙

に 入 れ たいと思 い 至っ た

。

『

“

生 きる か らだ

”

に向 き 合う ;身 体 論 的

看

護の試 み』 という 書 名の看 護 書

。

と り あ え ず

8

月 に 迫っ た 学 会 のた め にリ

ー

フ レットを

作

る こと に し た。 リ

ー

フ レットに はカ バ

ー

デザイ ン も盛 り込 む

。

パ ソ コ ン で ク ロッキ

ー

を取り 込 み

、

ラ フ デザ イン の リ

ー

フ レッ トを

作

り

、

S

先

生に流し

、

7

解

を

求

め た

。

S

先 生 から承 諾 も 得られ

、

後は

N

くん と連 絡 を取れ ばい い段 階 と なっ た

。

      *

 

その晩

。

タ

食

後 に

部

屋 に 戻 り

、

パソ コ ンを 立 ち 上 げ

画 面

を

見

て いたら

、

急に連 絡し て みよう

、

と い う気になっ た

。

気 が 重い というの では な かっ た が

、

は た して教 えてもらった 連

絡 先

に

N

くん

(

五

十

を す ぎている

彼

を くん づ け

、

とい う のも な ん と な く

黼

 

1

:

1

:

1

∵ ∴

慝

(3)

妙

だ が

、

ぼ く が

出会

っ た と きに は

彼

は

美大

生 だっ た し

、

まあ

、

い いだろ う

)

は いるの かど うか

、

話 を しても あ のとき のこと を 覚えて いる だ ろ う か

、

それ よ りもなによ りも 表 紙に使 うことを

断

ら れ た ら

……

な ど

、

さ ま

ざ

ま なこと に思いを め ぐ ら せて

、

な か な か 電 話 を か け ること ができ な かっ たの である

。

  ま あ

、

断 ら れ た ら

、

そのと き は そのと きで

、

別 な 案 を 考 え れ ばい い

、

そん な 気 分でも あっ た。

 

連 絡 先 は 友 人の

画

家

K

から教え て も らっ た

。

た ま た ま

7

月の

初

めに

数 年

ぶ りに

銀座

で

個

展 を

開

くと

案 内

が 届 き

、

初

日に

出

か け

、

そ こ で

M

美 大

卒

の

K

に事 情を 話 し

、

も し わ か れば 教えて ほ しい

、

と

頼

ん だのだ。

富 凵

」に

戻

った その 日に

K

は メ

ー

ル で

連

絡 先

を

教

えて くれた

。

三重 県 在 住

。

あるいは実 家か

。

も ち ろ ん わか ら ない。       *   呼 び 出 し音 が 鳴 りつづける

。

い つにな く ドキ ドキ する

。

しば ら く して女

性

の声

。

名乗

っ た 後 に

、

N

さ ん はい らっ しゃ いま す か?  と 尋 ね た

。

いかにも 怪 訝そ うな 声

。

M

美 大 卒 業 という こ と を

確

認 し

、

30

数

年

前 に 藝 祭でクロッキ

ー

を

5

枚 買

っ たこと

、

それ を 現 在

、

編 集し て い る単 行 本の表

紙

に使いたい こ と

、

そ れ で

N

さ ん と

連 絡

を

取

りたい こと を

手

短に

伝

えた

。

女 性

は

妹

さ ん

だ

っ た

。

兄 は

東 京

に

住

ん で いると

応

え

、

連 絡 先

を

教

え て く れ た

。

ぼ く の自宅 と局 番が同じで

、

住 所を伺う と

、

そ う 遠 く ない

地 域

と い う こ とが わかっ た。

 

話し て い る う ち に

、

N

氏 が 「あ の

N

く ん 」 と い う こ と を

確信

し た。   すぐ に電 話 をか け る

。

なんどか の呼 び 出し音

。……

女 性 が 出 る。

名 乗

り

、

「お 主 人 」

(

とい っ てから 「

N

さ ん 」 と

本 名

を

告

げ る

)

お出で で しょう か ?

 

と 言 い

、

手 短に 電話を し た 要件

、

経

緯

な ど を

話

した

。

 

しばら く し て

N

く んが 電

話

に

出

た。

 

「へ るす

出 版

の

後 藤

で す。 久し ぶ り で す。

覚

え て い らっ し ゃ いま

す

か?」

 

「あ あ

、……一

度

、

お宅に伺い ま し た よ ね」

 

N

く んの

第

一

声

。   クロッキ

ー

を 表 紙に使 わせ て も ら う こ と はあっ さ り了解 がと れ た。

校

正

紙

を 送る こと、

刊 行

したら

見本

を 送る こと

、

な ど を 伝えた

。

  個 展

の

予

定 が 近 々 あ れ ば

、

案 内

が

欲

しい こと

、

そ のと きに で もゆっ くり

話

をし ま し ょ う

、

と言い

、

互い の

連 絡 先

を

教

え

合

い

、

「あ り が と う 」 と言っ て 電話を 切 っ た

。

  満

た さ れ た

感 覚

。

穏

や か な 気

持

ち。

嬉

しくて

、

楽

しくて

、

誰

彼 なし に

、

伝えたく てた まらな かっ た

。

      *   住 所

、

電 話 番 号

、

メ

ー

ルア ドレスを 伝 え あっ た

。

携 帯 電 話 は

48

デ ザ イン学 研 究 特 集 号

Speclal Issue DfJapanese  Socletyforthe Sc[ence et Design

Vol

.

21

・

1 No

.

81 2014

持

っ て いないんで す

、

と尋 ね る

前

に

N

くんは 言い

、

ら しいね

、

と

ず

っ と会っ ていない の に応 え

、

メ

ー

ル も 滅 多 に み ま せ ん か ら 期 待 し ない で待って く だ さい

、

と遠 慮 が ち にっづ け た

。

 「表 紙 」 と 「1丿

一

フレッ ト1 の初 校 が 印 刷 所 か ら 出 た その晩

。

自宅 か ら

N

くん あてに

、

初 校 が ま と まっ たこと

、

郵 送 する つも り だっ た け どバタバタ して送 れ ず

、

来

週 にでも

直 接持 参

して そ の

場

で

初 校

をみ て いた だ け ないだろ うか

、

と

書

き

、

そ の

後

に 長々 と こ れ ま で の

経 緯

などを記し た メ

ー

ル を流し た

。

 

N

くん か らは 翌 日に返

信

が 届い た。 その

一

節

。

   

・

これで

、

先 日の 「電話」 に 至 る までの経 緯が

概

ね 理

解

で き る

よ

う に な り ま した。

突 然

の

、

数十 年

ぶ

り

の 「

電話

」 に

驚

い たこ と は事 実 (当た り前です ね )ですが

、

なぜ か

、

どういう わ け か

、

左 程 驚 き を 感 じ な かっ た 気 分 も 混 在 していま した

。

  予 感 や 霊 感では な く

、

そこに 出 来 した 「事 件 」 が

、

日 常の延 長にすっ ぽ り とパズル のピ

ー

ス のよう に うま く八 マっ て し まっ た と。

(

こ の

言

い方で

伝

わるとい いんです が

)

 五十 年 以 上 も 生 きていると最 早 驚 くこと も ない

、

と 達 観 して おる ぞ と

自慢

したいとこ ろ です が

、

不

思

議

な 事

柄

が 不 思

議

でな かっ たこ と に 不 思

議

がっ てお ります

……。

      *

 

い く ら か 早 く

会 社

を

出

て

、

K

駅 に

向

か う。

約 束

の

10

分

ほ ど 前に着く

。

ほ ど な くこち ら を み な が ら 近 づい て く る 大

柄

の 男

性

。

N

く んだっ た。  駅近く の コ

ー

ヒ

ー

専門店に 入 る

。

 

30

数年

ぶ りの

再 会

。  こ の 間 の突 然の連 絡の話か ら は じまっ た

。

 

「ふ つ うだ とx×さ ん から電

話

っ て

言

わ れて

、

そ の人 を 思い 出す の に時間がか か る じゃな い で す か

、

え え と

、

誰 だっ け か な みたいに

。

で す け どこ の

間

、

ゴ トウ さん からっ て

受話 器

を 渡 さ れた と き に

、

あ あ

、

あの ときのゴトウ さんっ てす ぐに そ う思い ま し た」

 

あの とき ぼく は

、

電 話

口 に

出

た

N

くんへ 「

覚

えてい らっ しゃ い ま す か ?」 と問い か け

、

「お 邪

魔

し て食 事を い ただき ま した よ ね」 が

N

く んの返

事

だっ た

。

 「意 外で はな か っ た?」

 

「な か っ たです ね」       *

 

それ か ら

、

藝祭

で の こと

、

N

く んの アパ

ー

トで の こと

、

ぼ く の

自宅

で

夕飯

を

食

べたこ と

……

い ろいろな

話

をした

。

そ のすべ て が

、

N

く ん の覚え て い る こ と とぼく の覚え て い る こ とが 微 妙 に違っ た。

当

た り

前

といえ ば

当

た り

前

で

、

た だ

、

そ のず れ を二 人 と も 面 白 がっ た

。

 「ア パ

ー

トで何 枚 も の クロ ッキ

ー

を 見せてもら っ て

、

そ れで

5

枚

、

選 ん だ ん だ け ど

……

」

一

(4)

NII-Electronic Library Service

 

「そ う で した っ け ?

  藝 祭

で選んだん じ ゃあり ま せ ん で し た か?」

 

アパ

ー

トに

伺

っ てた く さ ん の クロッキ

ー

を み せても らっ たこ とを

、

N

くんは まっ た く覚 えていな かっ た

。

これ は ま ち がい な い

。

ぼ

くの 完 勝

1

 「ア パ

ー

トに 伺 っ てクロ ッキ

ー

を 見 せても らっ たこと は ま ち がいないん だ け ど

、

ぼ くか ら 見 せて欲 しいっ て言った と 思 う ? そ れとも 見 に きてく だ さい っ て

言

っ てく れ た?」

 

「ぼ く か ら お 話しする ことはあ りえない で す ね 」

 

「そう か

、

や っ ぱ りこっ ち からか。

昔

はか な

り強 引

だっ た ん だ ね え」 と二 人で笑う

。

      *

 

「初 日 に 選 んで

、

最 終日 に 函 を お 持 ちに なっ た ん で す よ J

 

「う ん ?

……

」

 

まっ た く記

憶

に な い

。

藝祭

は

4

日 間で

、

初 日 に話 を して選 ん で

、

4

日 目にクロ ッ キ

ー

を

収

める た めの函 を 持 参 して持 ち 帰っ た

、

と いう

。

 「ゴ ッホの 画 集の ?」 (何 と な く思い出 した が

……

)

 

「そ うで した ね

、

大 型 本の外 函でし た ね」       *

 

「作 品 に お 金 を 渡 す

、

ということ に な ん とな く

抵抗

が あっ て

、

そ れで呑 むのな らt い いお

酒 (

ウ イス

キ

ー

)

’

で も

渡

そ うと

考

え て呑 む か ど う か を 尋 ねて

、

呑まないっ て

聴

いて

、

それでお金を 渡 し た ん だ け ど

……

」

 

「あ く まで作 品 を

[

買

うっ て い う よ り も

、

将来

の きみの た め の

応

援 金

’

のよ う なことで いた だいた よ う に 思いま

す

」  「当 た り前 だ け ど 値 が 上 がると か

、

まし て装 幀の た め に と か では まっ た く な くて

、

た だ

、

欲 しい

、

ど う しても

欲

し いと 思っ た んだ よね」       *

 

その

N

く ん と

会

っ てか ら

、

あっ と い う ま に

1

年

が す

ぎ

た

。

た だ

、

残 念 な がら いま だに刊

行

に 至っ て い な い。

事 情

があ り

、

ス トップし た ま まである

。

ま あ

、

年 内

に は できるだろ う。 でき あ がっ た ら

N

く ん に 会 う

。

*追 記:お か げ さ まで

、

2014

年

1

月 に な ん と か 上

梓

でき ました 。

3 .

編

集者

と は

……

 

ぼ く が 中 途 入 社で現 在の出 版 に入 っ た と き

30

も

半

ばを すぎ て いた

。

そ の 年の正 月 休 み 明 け が 初 日 と なっ た

。

10

歳

ほ ど

年

上の痩せ型の

、

物 静 かで

、

動 き も ど ち ら か とい うと

ゆ

っ た

り

と し た 編

集

者 が 同 じ編 集 部 にいた

。

H

氏である

。

先

輩

の編

集 者

で あ る が

、

仕 事につ い て 打 ち合 わ せ を し た り

、

確 認

した り する こ とも な く

、

朝 晩 に 挨 拶 を 交 わ す 程 度で

、

仕 事も私 的な こ と も ほ と ん ど 知 ら ない仲 だっ た

。

 

その

H

氏 が

5

月 の 連 休 明 け に 自 宅で

療 養

生

活

に 入 る

、

そ ん な 話 を 聴いた

。

膵 臓 が んの手 術 をし た後に 退

院

し

、

自

宅に戻る と いうこと だっ た。 「が ん

末期 医療

に

関 す

るケア の マニ ュ ア ル」 とい う小冊 子が厚生

省 (

当 時)

で ま と め ら れ

、

発 行された頃

。

MS

コ ンチンが

発 売

さ れて しばらく たった 頃。 平

成

の

初

めの頃 である

。

ほ と ん どの人 が

病院

で 亡 く な る

、

そ んな 時 代だっ た

。

 

H

氏

の

評判

は

芳

しく

な

かっ た

。

校

正 漏 れの

赤 字

を

1

本でも 見 つ け ると

、

棘

のあ る

物

言いで

、

嫌 味 を 長 々 と 言 う

。

けっ して

部

下に慕わ れ る人 柄で はなかっ た

。

少 な くとも 勤 め は じめて半 年 が たっ て

、H

氏 に 対 す るスタッフ のそ ん な 思いを 感 じて いた

。

      *

 

H

氏と会

社

をつな ぐ メッセンジャ

ー

に な ろ う

……。

そ う 思い は じ め たの は ゴ

ー

ルデン ウィ

ー

ク も 終 わ り

、

H

氏 が

自

宅で生

活

を は じ め た 頃 だっ た

。

H

氏 も 編 集

部

の スタッフ も 互 い に知りす ぎていて

、

さ ま ざ ま な

感情

が あるため に

素直

に思いを

伝

え るこ とができ ないだろ う

。

H

氏はぼく を知らず

、

も ち ろ ん編 集 者と して の力 量 を 知ら

ず

、

ぼ くはぼ くで

H

氏

の編

集 者

としての 腕 も 人

柄

も知ら な い

。

だか ら返っ て メッセンジ ャ

ー

にな れ る

。

そ ん なこと を

考

えた。

  会社

の

会議

室。 あ る朝

、

上司に そ の話を した

。

お話 が あ り ま

す

、

と

言

い

、

二

人 だ

けで

会 議 室

に 入っ た

。

思って い る こと

、

思 いつづ けて いること を 話 す

。

話 を 聴 き お えて

、

「あ りが とう 。 そ う 言っ て く れて

、

ぼ く と しては あ り が たい

。

ぜひ メッセ ン ジャ

ー

に なっ てほ しい

。

も し会

社

の

誰

か が

、

それ を

咎

め るよう なことが あっ た ら

、

ぼ く が きみを 守る」 と 言っ た

。

長 い間

、

H

氏

のもと で働いてき た

W

氏の言 葉 だっ た

。

      *

 

「あの手

紙

は 親 切の押 し売 りだ な

……

」

、

初め て訪 れた

H

氏 宅

。

ぼ くを見た

H

氏の第

一

声 だっ た

。

 

上 司 に 話 を 通 してか ら

、

ぼ くは

H

氏に手 紙を書い た

。

定期的 に メッセンジャ

ー

と して伺いたい こと

、

前

日に連

絡

をし て

体

調 を 伺い

、

そ れ か ら 伺 うことな ど

、

手 紙に記した

。

そ の手

紙

に対 す る

H

氏 の 感 想 だっ た

。

  水 曜 日の午 前 中

。

自 宅 か ら会 社 に 寄 らず 直 接 伺 うことになっ た。       *

 

自宅

で

、

ベ ッ ドの上で死 を 迎 える人 は

、

いっ たい

何

を想う の か

……。

ぼ くは個 人 的 に

H

氏 に 尋 ね た かっ た。 「あ な たに と っ て死と はなんです か ?」

。

も ちろんい き な りそれ を 尋ね る わ け にはいか ない

。

当 た り前であ る

。

 い くつかの質 問 を 考 え た

。

最 初の質 問 は 「編 集 者と はなん で すか ?」。       *

 H

氏

の

自宅

に は

、

6

月 半 ば か ら 師 走の半 ば 頃 まで

、

毎

週

水

曜

繍

鞭

∵ ∵

鉱

鰾

(5)

日の

午 前 中

に伺っ た

。

会 社

か ら の

伝 言

や 書 類 が な くて も

、

あ るい は

H

氏

か ら

会社

に

伝

え る

、

ある いは手

渡

す

書類

な ど な くて も

、

当 日 の 朝 に 体 調の

確

認の

連 絡

を し

、

伺

っ た。

H

氏

は

12

月 半 ば に 容 態 が 悪 化 し た が

、

数え年で

50

歳の 正月を

向

か え

、

そ の月の

終

わ り に 亡 くなった

。

葬 儀 の 朝 は

、

東 京 は何

十 年

ぶ りと い う大 雪 が 降っ た

。

今でも 雪 が 振ると金 沢 生 ま れ だっ た

H

氏を 思い出 す

。

 

あ るシ

ー

ン。

H

氏 宅

の

2

階居 間

。 身

体

を 起こ して

、

ベ ッ ドに 何 枚か の 写

真

を並べ

、

そ れ を か わ るが わる手に取 りな が めてい る

H

氏

。

H

氏

の肩

越

しから

奥

さ ん がそ の写

真

を 見て いる

。

「こ の写 真の ほ う が い い じ ゃ な い」

、

奥

さ んが 話 す

。

「お 前 はセ ン ス が ない

。

これのほ う がい い に

決

まっ て い るだろ う」 「そう ? でも やっ ぱ りこっ ち じ ゃ ない ?」

。

ぼく は そ ん な 二 人 の や り と りを 苦 笑 しな が ら 聞いていた

。

  写 真 は

、

ぼ くの友 人のカ メ ラマ ンの作 品

。

ヨ

ー

ロッパ の風 景 と 人 々 を 写 したモ ノクロの写 真

。

H

氏の選んだ

1

枚

を オリジナ ルプリ ント に してプ レゼン トす るつも りだっ た

。

  や がて奥 さ ん は 写 真 を 選ぶこと に 飽 き たのか

、

隣の部 屋で新

聞

を

広 げ

、

読

みは じ め た。

H

氏 は ま だ 広 げ た 写 真 を な が めてい る

。

ぼく は

、

ベ ッ ド の 足 元 の畳の上に大 型 本 を 広 げ

、1

ペ

ー

ジ

1

ペ

ー

ジ

括 り

つづ けて い る

。

そ の

本

は

、

H

氏の友 人 が 数 日 前 に 届 けてく れた と い う

、

あ る

前 衛華

道

家

の

作 品集

。

H

氏 が 「見て みな」 と今 朝いっ て く れ た のだ

。

 

そ れ ぞ れが まっ た く

別

なこ とをしな がらも

、

それでも 互いに どこかで つ な がっ て い る こ とが わ かっ て い て

、

といっ ても そ ん なこ と は お くびに も

出

さ ず

、

そん な 素 振 りも まっ た くみ せ ず

、

ただ

、

解

け合っ て い るような

、

そん な 静 か な 時 間 だっ た

。

      *

 

そ の質 問を いつ し た の か

、

覚

え て いない

。

も ちろん 伺いは じ めて し

ば

ら く

経

っ た 頃にま ち がいないが

、

そ れ がい つ頃 だっ た か は まっ た く

覚

えて い

な

い。

 

おそらく唐 突な

質

問 だっ た のだろ う と 思 う

。

あ ま りに青 臭 く

、

ダ

イレク トす ぎて

、

今

思う ど セ ン ス

’

のか けらも ない問い で あ る

。

 

「

編集 者

って

、

な んです か ?」

 

H

氏は まっ た く

考

え る こ と もなく

、

言い よ ど むこと も な く

、

ひ と言

、

ある言

葉

を 口 に した。  「あ あ

、

そ う な ん で す か

……

」

。

 

H

氏の

答

え に

、

そ んな返

事

を 返 し たことだ け は 覚 えている

。

 

H

氏 が 亡 く なっ た

後

も

何

か の ときに

、

ふと

H

氏の その答 え を 思い出 した

。

答え が な ん と な く しっ くりこな かっ た

。

とい う よ り

、

腑 に 落 ち な かっ た。 と い うよ り

、

正

直

、

そ の言 葉の意 味が わ か らな かっ たの だ と思う。       *

50

デザイ ン学研 究 特集 号

Special lssueofJapaneseSocletyf 〕rtheScienceofDes 「gn VDI

.

21

−

1 No

.

81 2014

 

そ の日の夕 方

、

打 ち 合 わせの た め に

S

氏と会

議

室に 入 っ た。 打 ち 合 わ せ が 終 わっ てか ら な ん と な く

H

氏の

話

に なった。

S

氏

は

H

氏

の こと を

良

く知っ ていた し

、

部 下として働い て い た時 期 も あっ た と い う

。

 

「

編 集 者

と はなん です か?」 と

H

氏 に 尋 ね た 話 を した

。

 

あえて

H

氏の 口 に し た言

葉

を す ぐ に は言 わ ず

、

何 だ と 思 う ? と尋 ねた

。

 

S

氏は考え込ん だ ま ま

、

な に も言わない

。

 

ぼ く は 我

慢

しき れ なくなっ て

、

「

動 詞

だっ た」 と ヒン トを 付 け 加え た

。

 

二人 だ けの

夕方

の

会議 室

。

 

二人 と も 考 え込 ん だ ま ま

、

静 か な

空

間 だっ た。

 

ぼく は

、

それ までと 同 じ よ う に

、

H

氏の 口に し た

答

え を頭の な かでな ん ど も な ん ど も く りか え してい た

。

 

……

そ うな ん だ

、

いま

、

俺 が

、

俺 た ちが して い るこ と な ん だ

。

 唐 突

に そ う思い 至 っ た

。

      *

 

「編

集者

っ てなん で

す

か?」 という ぼ くの問いか け に

、

その とき

H

氏は 「待っ こと 」 と ひ と言 だけ答えた

。

 

「編 集 者 と は

待

っ こ と 」

……

。

 

そ れは

、

原 稿を待つ

、

校正 の 戻 り を待つ

、

そ んなこ とでは な くて

、

看護

界 全

体

の

成 熟す

る のを

待

つ

、

いや

、

そ ん なことでも ない よう な気が し た

。

考

え ながら待つ

、

話しな が ら待つ

、

聴 き な がら

待

つ

、

歩

き な がら

待

つ

……。

 

そ れ は 「死ぬ と い う こ と は ? 」という問いの答 えでも な く

、

「生 きる と いうこと は ?」 と い う問い の答 え だっ たのだ

、

と思 い至 る の は

、

10

年

ほ ど

経

っ てから の こと に な る

。

4 .

創

る こ

と が

で

き

るこ

とは す ば

ら しい

 

創 るこ と は

楽

し い。

考

え

、

考

えつづ け

、

や がて浮 か ぶ

。

メモ を と り

、

パ ソコ ンを立 ち 上 げ

、

あ れこれ

試

みる

。

最 寄 りの駅 に 向かいな が ら

、

学 校 帰り の 子ども たちの嬌 声 を 聴 き な が ら

、

つ り

革

につ か まり

流

れる

家

々 を

見

送 り な が ら

、

部 屋の灯 り をつ け

、

パソコン の スイッチを 入 れ

、

コ

ー

ヒ

ー

を 淹 れ

、

飲 み なが ら あ れこれ 試 みる

。

飯を

食

べ

、

風 呂 に 入 り

、

湯 舟の中でぼ ん や り 考 え る

。

閃 き

、

バ ス

タ

オ ルを

巻

き な がらキ

ー

ボ

ー

ドをた た き

、

カ

ー

ソ ル を動かす

。

決

ま る

。

いやいや

、

な に か が ち が う

。

ど

こ か が ち が う。 そう し て また

試

み る

。

ま た 考 え

、

新 た に 思い つ き

、

あれこれ試み る

。

 

創 るこ とができ る こ と はす ば ら しい

。

そ れ も 力 タ チ あ る モノ に創り あ げ る こ とがで きる のは

、

とっ ても す ばら しい

。

      *

 

長い間

、

月

刊誌

の

編 集後 記

を 書い てき た

。

500

字 程

度

の

、

読

一

(6)

NII-Electronic Library Service

者で あ る 看 護 師 さ ん 向 けのメッセ

ー

ジ

。

書 き は じめてす ぐ に 周 りの目 が 気 に な ら な くなっ た

。

何 を 書い てもい いと 思いは じめ た。

家 族

の こと

、

出会

っ た

人

の こと

、

読

ん だ

本

の こと

、

ど ん な こ と を書い て も

、

そ れ は すべ て看 護 師さ んへ の メッセ

ー

ジにな る

、

と思っ た。 も ちろんそ のつも りで

書

いていた。   何 人か編 集 後記 の感 想 を 知ら せ く くれる人 ができ た

。

目次 を 読 む 前 に

編

集 後

記

を 読 んでく れる人 ができ た

。

密 か に さ ま ざ ま なこと を 試みた

。

まっ た く主 語 を入れ ない後 記

。

最 後 まで改 行 せ ず

、

読 点

でつな げ

、

唯

一

の句

点

を 打 ち

、

終

え た

後 記

。

 

一

人の人 だけ に向 けて の手 紙は何回か 書いた

。

彼 女に

、

ある いは

彼

に 向 けて の想いや 感

謝

。

友 人の

親

父 さ ん ん が 亡 く な り

、

彼 女

か ら

聴

いたエ ピソ

ー

ドを

盛

り込 み

、

戒 名

を 入 れ た

後

記。

  忙

し く

、

連 日連

夜

、

遅 く ま で仕

事

をつづけ

、

そ れ で も終わ ら

ず部

屋の ソ ファ

ー

で眠る

、

そ んな

教員

の

彼 女

に

、

今

日は

、

なに がな ん で も すべて を放り

出

し

、

携 帯

も

切

っ て

、

街

に く りだそ う。

美味

し いものを

食

べ

、

温

かい コ コ アを

す す

り

な

がら

、

ほ お づえ をついてぼん や り し よ う

……。

別に

真 新

しい趣

向

で も な い が

、

文 章

の頭

を拾

うと

彼 女

の

氏名

に

な

る

よ

うに

書

い た

後

記。

毎

号

、

献 本 して い て

、

手 元につ い た そ の朝

一

番に電 話が入 り

、

「あ りが とう 」 という

一

言 は

今

でも 耳に

残

っ て いる

。

彼 女だけ が わ かっ て くれ れ

ば

そ れでい い と

、

そ ん な

気

持 ちで

書

いた が

、

そ れ は 見 ず 知 ら ずの読 者の方 に も 届いた と 確 信 してい る

。

 

口 に は 出 さ な かっ た が

、

め

ざ

していた 編 集 後 記の究 極 は

、

不 遜と言え ば不 遜だ が

、

読 み 終 わっ た後に

、

よかっ た と か

、

い い

後

記

だ

っ た と か の

感 想

す ら 口 に

出

せ ない

後

記

。

そ ん な 後 記 を

1

本でも書き た かっ た が

、

そ れは叶 わ なかっ た だ ろう

。

  書籍

を 編

集

し

、

月 刊

誌

を 編

集

し

、

そ う した 日 々 を 送っ てき た が

、

前に編 集 した書 籍 よ り読 み や す く

、

わ か りや す く

、

な に か 新 しい 工 夫 が あ る よ う な

、

そん な

書

籍 を 編 集 したい と思い つづ けてき た

。

た と え 定 形の月 刊 誌でも

、

前 月 号 よ り親 切で

、

たっ た

1

行でもい い

、

人 生 を 変 えて し ま う よ う な

1

行 が あ る よ う な

、

そ ん な 月 刊 誌 を 編

集

したい と 思い つ づけて き た

。

果 た し て

、

いず れ も 叶 わ なかっ たのかどう か

、

わ か らない

。

      *   何かを 創 ることは 楽 し く

、

何 か を 創 るこ と ができ ること は す ば ら しい

。

ま して

、

創っ たモ ノ が

一

人 にでも使っ てよ かっ た

、

楽し か った と思っ て も ら えれ ば

、

そ れ は さら にす ば ら しい

。

そ ういうこと に取 り

組

んで い るという

誇

り と

使命

を も ち

、

そ れ 以

前

に

謙 虚

さ を も ち

、

そ う して

’

自 分 に はセンスが あ る

、

とい う こ と を

自

分で信じ る セ ンス

’

を も ちつづ け

、

い い仕 事をこれか ら も

産

み だし てほし い。 了

繍

簾

搾:

1

:

1

∵

1

:

誹

1

誌

参照

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