症候性側弯症に対して体幹装具と座位荷重バランス練習を併用した2 症例の報告
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(2) 266. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. てもよいが,十分な科学的根拠はない」とされ,いずれ 13). 節し骨盤の傾きを調整できる。端座位にて腰椎の可動性. 。症候性側弯症を呈する疾患. と骨盤の左右・前後傾斜と回旋を評価したうえで,端座. は脳性麻痺以外でも多岐にわたり,臨床では側弯進行に. 位と車いす座位にて右坐骨にかけることができる圧を圧. 伴う様々な二次障害を予防すべく運動療法やシーティン. 力分布測定器で確認した。クッションの空気量を圧力分. グなどが,側弯進行の防止,呼吸機能の維持,座位姿勢. 布の測定をしながら右側を減らし調整した。3 ヵ月後に. の安定化,介助量軽減などを目的として行われている。. は装具装着で Cobb 角は 21° から 18°,PO は 10° から 5°,. 症候性側弯症に対して理学療法と継続的なかかわりが. TS は 14 mm から 2 mm となり姿勢の安定,改善につ. 必要とされる一方,症候性側弯症に対するアプローチの. ながった(図 1)。. もグレード C1 である. 実際と効果を示した報告は少ない。各症例の経過を詳細 に報告することは小児理学療法における臨床実践として. 2.症例 2. 寄与し得ると思われる。今回,症候性側弯にて装具療法. 横断性脊髄炎,17 歳女性。弛緩性対麻痺で T10 以下. とともに運動療法とシーティングを実施した 2 症例につ. 感覚脱失,膀胱直腸障害を呈していた。車椅子移乗・移. いて,側弯悪化防止が示唆されたとともに姿勢の改善が. 動可能。理学療法は外来で 2 単位を月 2 回実施していた。. みられたので報告する。. 頸部は伸展し右側屈,脊柱は前弯・側屈し重心は左に偏. 症例の紹介と経過. 移し,左肘掛けにもたれて車椅子座位姿勢を保持してい た。頸部の MMT は屈曲 2 に対し伸展は 4 であった。. 症例報告にあたり,倫理的配慮として理学療法評価お. 座位では頂椎 T9 の左凸の側弯をみとめ側弯に対し介入. よび経過について記載することならびに写真の掲載につ. を開始した(介入期間 4 ヵ月) 。DSB 装着を開始し,装. いて各症例と保護者に説明し同意を得た。また,鳥取県. 具装着により Cobb 角は 51° から 40°,PO は 25° から 19°,. 立総合療育センター倫理委員会の承認(承認年月日:令. TS は 139 mm から 37 mm に改善した(図 2) 。. 和元年 6 月 17 日)を得ている。. しかし,側弯は矯正され左方への重心偏位は改善した. 症例は症候性側弯を呈し,装具療法開始前より理学療. が対応しきれず,頭部がさらに右方に傾斜し,矯正に対. 法を継続的に実施し,経過を詳細に追え,X 線撮影条件. 応して頸部を中間位に保持することができず装具装着が. も同じで,共通のアプローチとして装具療法とともに運. 困難であった。そこで,圧力分布測定を実施したところ,. 動療法とシーティングを実施した 2 症例とした。評価と. 装具を装着しない端座位では,脊柱前弯・骨盤前傾位で. して,X 線にて定期的に脊柱を撮影し,それぞれ Cobb. 姿勢を保持し,その姿勢では左の坐骨に圧が集中してし. 角,PO,TS を計測した。いずれも平坦な座面に端座位. まっていた。背もたれにもたれることで装具装着が可能. で座り,前額面より撮影した。. となり,脊柱のアライメントは改善し,座面圧も左右に 分散され小さくなることを確認した(図 3) 。しかし,頸. 1.症例1. 部の筋力のアンバランスから背もたれにもたれて頸部を. 重度精神運動発達遅滞 11 歳女児。理学療法は外来で. 屈曲した姿勢を保持することができなかった。そこで運. 月 1 回 2 単位実施していた。日常は車いす座位が多く,. 動療法では体幹伸展・骨盤前傾位での姿勢保持に対し. 四肢体幹ともに低緊張で知的障害は重度である。ADL. て,車いすキャスターを上げ車いすを後方に傾け,背も. は全介助レベルだがセットすれば手すりにつかまって立. たれにもたれながらも頸部を屈曲した姿勢を保持し,吹. 位保持可能である。Hoffer 座位能力分類 1。座位にて頂. き戻しを吹くことで頸部・体幹屈筋群の筋力強化を行っ. 椎L 2 の左凸の側弯をみとめ,側弯に対し介入を開始し. た。また,背もたれにもたれて学校でも授業が受けられ. た(介入期間 3 ヵ月) 。側弯に対し DSB が処方され,装. るように環境を調整したことで,日中装具装着が可能と. 具装着により Cobb 角は 36° から 21°,PO は 13° から 10°,. なった。シーティングではほぼ毎日,日中使用している. TS は 10 mm から 14 mm となった。しかし Cobb 角の. 車いすの角度を 5 度チルトし,座面クッションをプロ. 改善に対し PO と TS の改善は不十分であった。そこで,. フォーム NX® に変更し,圧力分布測定器で確認しなが. 運動療法として圧力分布測定器で確認しながら横座りや. ら空気量を調整した。4 ヵ月後には装具装着下にて Cobb. 端座位にて,挙上側である右坐骨への体重支持を促すと. 角は 33° ,PO は 2° ,TS は 39 mm となり,姿勢は改善. ともに,適切な立ち直り反応を誘導した。また,歩行器. し安定した。車いす座位姿勢も改善し,ほぼ正中位で姿. 歩行訓練を開始し,右下肢での体重支持を促した。シー. 勢保持することができるようになっている(図 4) 。. ティングではほぼ毎日日中使用している車いすの座面 クッションをプロ・フォーム NX®(株式会社ユーキ・. 考 察. トレーディング,バリライトシーティングシステム)に. 症候性側弯症に対するリハビリテーションは,その介. 変更した。このクッションは左右の空気室の空気量を調. 入方法が確立されておらず,施設ごとに様々な工夫がな.
(3) 症候性側弯症に対する体幹装具と座位荷重バランス練習の効果. 267. 図 1 症例 1 の脊柱 X 線画像 Cobb 角はカーブの上部と下部にある最大に傾斜する椎体の上縁の下縁に平行線を引 き,それらの線が交差する角度,PO は腸骨稜を結ぶ線と水平線のなす角度,TS は C7 椎体中央からの垂線と S1 棘突起からの垂線との距離である. 症例 1 は DSB 装着により Cobb 角は改善したが,骨盤は傾いたままであった.介入 3 ヵ 月後には Cobb 角 PO および TS とも改善している.. 図 2 症例 2 の脊柱 X 線画像 介入前は TS139 mm と大きく左に偏移していた.DSB 装着により側弯は矯正されるも 座位姿勢を保持することができなかった.背もたれにもたれることで装具装着が可能 となり,4 ヵ月後には座位の脊柱アライメントが改善した.. されているのが現状である。今回,骨盤傾斜を伴う側弯. する体幹装具は行ってもよいが,十分な科学的根拠はな. を呈した症例の,装具療法および運動療法,シーティン. い(グレード C1)」とされている. グを実施した 2 症例について検討した。. 症は一度発症すると,その非対称な脊柱を重力に抗して. 脳性麻痺の側弯症に対する装具療法はリハビリテー. 支 え る た め に, 非 対 称 な 筋 収 縮 が 生 じ た り 骨 の. ションガイドラインによると,「脳性麻痺の側弯症に対. remodeling により椎体の変形が生じたりすることがあ. 13). 。背景には,側弯.
(4) 268. 理学療法学 第 47 巻第 3 号. 図 3 装具を装着しない端座位では,脊柱を前弯させ左に重心は偏移していた(装具なし) .背もたれ にもたれることで装具を装着して座位が可能となり,座面圧も左右に分散し小さくなった(背もたれ・ 装具あり).. 合し,弾力性がある。柔らかい素材で痛みも生じにくく, その動的な矯正力により体幹による立ち直り機能の促通 が期待される装具である. 17)18). 。しかし,その装具の装. 着による瞬間的な矯正は有効である一方で,長期的には 側弯自体の進行は続いてしまうので. 19). ,さらなるアプ. ローチが求められる。 今回,症候性側弯により崩れた座位姿勢を学習してい た症例に対し,DSB を用いた装具療法とともに,座位 荷重バランス練習として対称性姿勢や重心位置の再学習 を運動療法で促した。装具療法として DSB を使用し, 脊柱アライメントを整え体幹の安定性を得たうえで, シーティングを行った。シーティングではプロフォーム NX® を使用し座面を左右に調整することで,座位にて 図 4 介入前は背もたれにもたれられず,車いすの肘掛けに もたれて姿勢保持していた.介入後には背もたれにもたれ, ほぼ正中に座位姿勢保持できるようになった.. 重心を側方偏位し姿勢保持した状態から反対側への荷重 を促した。また,両坐骨にて体重支持できているか確認 するためには,圧力分布測定器で測定しながら調整する 必要があった。DSB の処方により座位保持装置の処方. る. 14). 。一旦生じた側弯は,重力および成長が増悪因子. 数が減ったという報告もみられるが. 20). ,環境調整とし. となって進行し,装具療法を行っても進行を止めること. てのシーティングや,対称性姿勢再学習のための運動療. は困難である。矯正には手術治療が必要とされるが,実. 法は,DSB による矯正を効果的にすると考える。. 際には神経筋疾患等に起因する症候性側弯症は,側弯症. 今回の報告では,それぞれの効果について比較検討す. 以外にも多くの合併症を伴うこともあり保存的治療が選. ることができなかったこと,X 線による評価が前額面の. 択されることが多い。. みとなり,矢状面での評価が行われていなかったこと,. 従来側弯に対しては Milwaukee Brace を基礎として,. 2 症例と症例数が少ないことが課題である。疾患に伴い. 様々な Underarm Brace が開発されたが,その強固な. 発症する症候性側弯症の症例に対しては,装具療法に併. 固定のためか一般にアドヒアランスは高くはない。これ. せ座圧を確認しながら座位荷重バランス練習などの運動. に対し柔軟な素材で装着しやすい DSB が 2007 年に開発. 療法や,クッションの調整などのシーティングも行って. されると,その矯正効果の大きさやアドヒアランスのよ. いくことが効果的であると考える。. さから急速に使用例が拡大している. 15)16). 。DSB はポリ. カーボネイト製の支柱で,側弯凹部の上部胸郭と腸骨外 側と側弯凸部の肋骨隆起の押さえを三点支持の原理で結. 結 論 症候性側弯症を呈する症例に対して,装具療法ととも.
(5) 症候性側弯症に対する体幹装具と座位荷重バランス練習の効果. に運動療法およびシーティングを実施した。従来側弯症 に対する理学療法および装具療法,姿勢保持具は「十分 な科学的根拠はない」とされてきた。しかし,それらを 組み合わせ,さらに体圧分布測定やクッションの工夫を 合わせることで,Cobb 角等脊柱アライメントや姿勢 の改善が得られた。体幹装具だけでも側弯は矯正される が,それだけでは座位は安定せず,効果が十分に発揮で きない。荷重量を目安に座位保持の改善に努めると安定 性が高まり,改善効果を期待できることが示唆された。 利益相反 本報告に開示すべき利益相反はない。 文 献 1)二見 徹:小児整形外科疾患の現状と展望 1.小児脊柱変 形治療の現状と今後の展望 4)脳性麻痺の側弯症.整形外 科.2004; 55(11): 1493‒1502. 2)Berven S, Bradford DS: Neuromuscular Scoliosis: Cause of deformity and principle for evaluation and management. Semin Neurol. 2002; 22: 167‒178. 3)日本側彎症学会(編):側弯症治療の最前線−基礎編.医 療ジャーナル社,大阪,2013,pp. 69‒71. 4)日本小児整形外科学会,日本小児整形外科学会教育研修 委員会:小児整形外科テキスト(改訂第 2 版).メジカル ビュー社,東京,2016,pp. 228‒231. 5)佐伯 満:脳性麻痺の股関節脱臼.重症心身障害の療育. 2008; 3(2): 191‒198. 6)小﨑慶介:オーバービュー−小児の麻痺性脊柱変形とは. 臨床リハ.2016; 25(7): 644‒649. 7)Saito N, Ebara S, et al.: Natural history of scoliosis in spastic cerebral palsy. THE LANCET. 1998; 351: 1687‒ 1692.. 269. 8)星野弘太朗,中寺尚志:脳原性重度身体障害者における麻 痺性側弯の長期経過.日本脳性麻痺の外科研究会誌.2015; 25: 67‒71. 9)福元真一,松尾 隆,他:脳性麻痺における脊柱側弯症の 年齢的経過.日本小児整形外科学会雑誌.2001; 22: 149‒154. 10)Campbel RM Jr, Smith MD: Thoracic insufficiency syndrome and exotic scoliosis. J Bone Joint Surg Am. 2007; 89: 108‒122. 11)Koumbourlis AC: Scoliosis and respiratory system. Paediatr Respir Rev. 2006; 7: 152‒160. 12)Pehrsson K, Larsson S, et al.: Long-term follow up of patients with untreated scoliosis: A study of mortality, causes of death, and symptoms. Spine. 1992; 17: 1091‒1096. 13)公益社団法人日本リハビリテーション医学会,他(編): 脳性麻痺リハビリテーションガイドライン(第 2 版) .金 原出版,東京,2014,pp. 186‒187. 14)島津 晃,浅田莞爾:バイオメカニクスよりみた整形外科 (改定第 2 版).金原出版,東京,1993,pp. 285‒299. 15)吉田清志,鈴木恒彦,他:脳性麻痺の脊柱側弯変形に対す る動的脊柱装具(Dynamic Spinal Brace)の治療成績.日 本脳性麻痺の外科研究会誌.2015; 25: 79‒83. 16)森本時光,森口 悠,他:6 歳未満の症候性側弯症に対す る装具治療と矯正にかかわる因子の検討.日本小児整形外 科学会雑誌.2013; 22(2): 302‒308. 17)梶浦一郎,森口 悠,他:脳性麻痺にみられる側彎に対す る新しい装具(Dynamic Spinal Brace)による治療報告 (第一報).脊柱変形.2009; 24(1): 65‒69. 18)梶 浦 一 郎, 森 口 悠: 幼 児 期 発 症 の 側 彎 変 形 に 対 す る DSB(愛称プレーリーくん)による治療の試み(第一報) . 近畿小児整形外科.2011; 24: 29‒32. 19)中 村 直 行, 奥 住 成 晴, 他: 麻 痺 性 脊 柱 側 弯 症 に 対 す る Dynamic Spinal Brace の 治 療 効 果. 日 小 整 会 誌.2013; 22(2): 335‒340. 20)鈴木恒彦,松山元昭,他:動的脊柱矯正装具(プレーリー くん)の処方によって減少をみた大規模座位保持装置の処 方.Jpn J Rehabil Med.2013; 50: S324..
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