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香川県におけるカワムツA型 (Zacco sp.) とB型 (Z.temminckii) の分類形質の検討-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香川県におけるカワムツA型(ゐccosp.)と

B型(Zね椚∽g乃C彪∼)の分類形質の検討

大 高 裕 幸

〒76卜0113 香川県高松市屋島西町2469 高松市立屋島西/ト学校

安 芸 昌 彦

〒760−0068 香川県高松市松島町1−18−54 香川県立高松商業高等学校

TheexaminationoftaxanomiccharaCtOrSOfZbccosp.andZtemminckii

inKagawaPrefbcture,Japan

HiroyuはOtab,】匂5ん‘朋α−〝∼5最古ね仇e乃fdJγ∫cゐ00ん花々α椚α′叫肋gα〝α乃ノー仇り・ヲ,ノ甲α〝 MasahikoA貼,rbたα朋αお〟Co肌用e′C∼dJ跳が∫c/‡00ん㍑烏α椚α加,肋g‘押α乃0−0∂β&ノ呼α乃

も日本産のカワムツは1種であり,Z..

ね机酢飯d晶の学名のみが長い間使用されてきた (宮地ほか,1975;中村,1975;川郡部・水 野,1989など)。 ところが,渡辺・水口(1988)は,長期の 飼育観察にもとづいて,カワムツには2型が

あると述べた。すなわち,背鰭の鰭膜が透明

で薄く赤みのかかるものをA型(側線鱗数53 ∼63,モー・ド59),鰭膜が黄色で不分枝軟条部 分のみ赤く染まるものをB型(側線鱗数46∼ 55,モ・−ド48)に分けた。さらに,水口ほか

(1989)は,カワムツA型とB型の側線鱗数

の地理的変異を検討し,Temminck etSchlegel (1843−1850)の原記載論文からA型(濃尾平 野から瀬戸内海沿岸の河川に分布)にはZ. 5ね占0肋∫を,B型(静岡・富山以西の本州およ び四国,九州に分布)にはZ“ね椚椚j〝Cたg‘の学 名を採用しようとした。一・方,OkazakieJdJ (1991)は,背鰭と胸鰭の色の違いで分けた カワムツA型とB型の間には種レベルの遺伝

は じ め に

水口ほか(1989)によれば,日本産カワム ツの原記載は,シーボルトらが採集した標本

により,Leuciscus temminckiiTemminck et

Schlegel,1846と L.siebohiiiTemminck et

Schlegel,1846の2種であった。その後,

JoI・dan efαJ.(1913)は,属名を ZαCCO に変 え,Z..扉dね血損をZ“ね〝肌血戊∼fのシノニムと

し1種とみなした。しかし,Boeseman

(1947)は,シー・ボルトらの標本を再検討し た結果,鱗の数と大きさが違うので1種とす ることを留保した。さらに,中村(1969) は,カワムツの学名にZ“伽肌如dg∼を使用し たが,翳鰭の形態,雄の頭部にある追星の分 布および側線鱗数などの違いから,いくつか の種または亜種に細分する必要があるとも考 えられると述べた。 しかし,Boeseman(1947)や中村(1969) の指摘は検討されることなく,それから以後 − 45 −

(2)

数が53以上,背鰭分枝軟条数を9のタイプを A型とし,生時の胸鰭と腹鰭の前縁部の色が 薄黄色で,側線鱗数が51以下,轡鰭分枝軟粂 数が10のタイプをB型として−いる。 そこで,本研究では,香川県産のカワムツ を用いて−渡辺・水口(1988)と細谷(1993a) の2種の識別形質の妥当性を検討するととも に.,従来は2型の識別形質とはされていない 側線上方横列鱗数,側線下方横列鱗数および 背鰭前方鱗数の3つの形質についても新しく 識別形質として用いることが可能かどうかを 検討した。 材料および方法

カワムツ2種の採集は1977年6月7日から

11月9日にかけて行った。採集場所は,香川 県内の19河川とその支流の125地点である(図 1)。採集には,投網(網目12nm)と玉網(綱 目4皿m)を用い,採集地点の状況によって両 方あるいはいずれかを使用した。各地点では おおよそ30分間調査を行った。採集されたカ ワムツは,はじめに渡辺・水口(1988)にし

的差異があると報告した。これらの発表以

後,カワムツはA型とB型とに分けて扱われ

るようになった(川郡部・水野,1989;渡

辺,1992;川那部,1993など)。 細谷(1993b;1259貢)は,学名は検討中と しながらも,ライデン自然史博物館のシーボ ルトコレクションは,A型をまZ.5feみ0肋∼にB 型はZい fe肌用f〝Cたよよによく−・致すると述べてい る。その後もまだ学名については正式に検討 した論文は出ていないが,両者は.別種として

扱われ,A型にはZ小 Spい を,B型にはZ.

fe〝‡椚よ〝C妨 を用いている(細谷,1993a;益 田・小林,1994など)。 このように,現在ではカワムツの2型を別 種とする考えが−\般的である。しかし,両者 の形態的な区別点については,重視する形質 は研究者によって−異なっている。前述の渡 辺・水口(1988)では背鰭の鰭膜の色である が,細谷(1993a)は,生時の胸鰭と腹鰭の前 縁の色 側線鱗数および暫鰭分枝軟条数を用 いている。すなわち,細谷(1993a)は,生時 の胸鰭と腹鰭の前縁部の色が桃色で,側線鱗 図1..香川県におけるカワムツA・B型の採集地点(●は採集地点を示す). − 46 一

(3)

側線上方横列威数 従来の識別形質および新しい3形質による両 型の比較 全地点で合計1074個体のカワムツ2型が採

集された。そのうち側線鱗と暫鰭分枝軟粂,

側線上方横列鱗,側線下方横列鱗および背鰭 前方鱗の完全な958個体について,その識別形 質を検討した。 渡辺・水口(1988)にもとづいて背鰭の鰭 膜の色によって識別すると,A型は340個体,

B型は618個体となった。一・方,細谷

(1993a)にもとづいて,生時の胸鰭と腹鰭の 前縁の色のみによって識別すると,A型は344 個体,B型は614個体となった.。両者は完全に は→∵致せず,渡辺・水口(1988)でB型と識 別された背鰭の鰭膜が黄色の個体の中に,細 谷(1993a)によるA型の特徴である胸鰭と腹 鰭の前線が桃色の4個体(0..4%)が含まれて いた。 つぎに,渡辺・水口(1988)にもとづいて 背鰭の鰭膜の色によって識別した2型と,細 谷(1993a)にもとづいて生時の胸鰭と腹鰭の 前線の色のみによって識別した2型の,側線

鱗数はか5形質について比較検討した。ま

ず,これら5形質と体長との関係を調べたと ころ,いずれも相関は認められず,体長に よって変化する形質では/ないことが確かめら れた。そこで,渡辺・水口(1988)および細 谷(1993a)にもとづいて識別された型ごとに 全採集個体をまとめて,5形質の頻度分布を 作成しA型とB型とを比較した。 側線鱗数では,渡辺・水口方式および細谷 方式ともA型をま60,B型は50をモードとする 山に明瞭に区別され,両型の平均値の間に有 意差がみられたが(渡辺・水口:t=65.8;

p<0..001,細谷:t=62り5;p<0.001),渡

辺・水口方式では変異域54∼57で,細谷方式 では変異域51∼57で重なった(図3)。また,

側線鱗数が57以上ではA型が多く,56以下で

はB型が多かった。これらの値を仮に側線鱗

脚線下方横列鱗数 図2..カワムツ2型の計測部位 たがって,生時に背鰭の鰭膜が透明で赤色を 帯びたタイプ(A型)と,背鰭の鰭膜は黄色 で不分枝軟条部分のみ赤く染まるタイプ(B 型)の2つに分けた。つぎに,細谷(1993a) にしたがって,胸鰭と腹鰭の前縁の色が桃色 のタイプ(A型)と蒋黄色のタイプ(B型)

を識別

法によっても明らかに2つの型に区別するこ とができた。その後,標本を70%エチルアル

コ、−ル溶液に入れて持ち帰った。実験室で

は,細谷(1993a)の識別形質である側線鱗数 と背鰭分枝軟粂数を実体顧微鏡を用いて数え た(図2)。また,新しく識別形質として用い ることが可能かどうかを検討するため,従来 は2型の識別形質とはされていない3形質の

測定をおこなった。すなわち,側線上方横列

鱗数(背鰭基部から小鱗も含めて後ろ下方

へ,側線鱗の1つ手前の鱗まで走る1横列の

鱗数),側線下方横列鱗数(腎鰭基部から小鱗 も含めて前上方へ,側線鱗の1つ手前の鱗ま

で走る1横列の鱗数)および背鰭前方鱗数

(背鰭基部から後頭部に至る正中線上のすべ ての鱗数)もあわせて数えた。さらに,それ ぞれの形質がカワムツのサイズによって変化 する形質かを調べるため,体長をノギスを用 いて0..1mmの精度で測定し,湿重量をデジタル 上皿天秤(精度0..1g)によって測定した。 − 47 −

(4)

180 1ヰ0 128 100 墓80 ¢0 40 20 0 渡辺・水口(1988)による区分 8 0 10 11 腎鰭歓条敵 細谷(1993a)による区分 二 腎鰭散集散 800 ヰ00 狐㈱300紺Ⅷ。 度数 800 200 100 0 図4..渡辺・水口(1988)および細谷(19g3a)の 方式によって識別したA型(白抜き)と B型(斜線)の背鰭分枝軟条数の度数 分布. 48 48 50 52 糾 56 58 80 62 64 86 88 70 側線鱗数 160 140 120 100 霊80 80 48 20 0 細谷(1983a)による区分 9101112181ヰ1618 側翰上方横列燐教 組谷(柑938)による区分

・委I耕

F 8 4 6 側棉下方横列鱗数 渡辺・水口(1988)による区分 ∞加 馬Y ▲4

⋮叫h■ 800 200 100 0 0101112 相 川1618 側線上方横列鱗敷 浪辺・水口(柑88)による区分 ) 3 ヰ 6 側線下方横列鱗数 4¢ ヰ8 50 52 5ヰ 58 58 60 紀 64 68 88 70 側線鱗敵 国3.渡辺・水口(1988)および細谷(1993a)の 方式によって識別したA型(白抜き)と B型(斜線)の側線鱗数の度数分布.

数のA型とB型の識別値であるとすると,渡

辺・水口方式では13個体(1.4%),細谷方式 では17個体(1小8%)が色による識別と−・致し ない個体となった。渡辺・水口(1988)にお

いて背鰭の鰭膜の色の形質でB型と識別さ

れ,細谷(1993a)において胸鰭と腹鰭の前線 の色の形質でA型と識別された4個体の側線 鱗数(51∼52)は,細谷方式では両型の変異 域の重なり(51∼57)に含まれ 渡辺・水口 方式では変異域の重なり(54∼57)よりも少 ない完全なB型の側線鱗数を示した(図3)。 細谷(1993a)において取り上げられて−いるA

型とB型の側線鱗数の識別値(A型:53以

上,B型:51以下)では,色による識別と大 きく食い違っていた。 簡鰭分枝軟粂数は,渡辺・水口方式および

細谷方式とも,A・B型のいずれも9である

個体が最も多く,変異域は8∼11であって, 両型の変異域は完全に重なっていた(図4)。 両方式ともB型の方がやや多い傾向が認めら

れ 平均値の間に有意差がみられたが(渡

辺・水口:t=6..90;p<軋001,細谷:t=

800 ヰ00 200 0 8∝ 庶咄○ 敢2∞ 0 図5.渡辺・水口(1988)および細谷(1993a)の 方式によって識別したA型(白抜き)と B型(斜線)の側線上方横列鱗数と下方 横列鱗数の度数分布.

7.06;p<0.001),細谷(1993a)によるA型

とB型の区別点である腎鰭分枝軟条数(A

型:9,B型:10)では,2型は識別できな

かった。 側線上方横列鱗数は,渡辺・水口方式およ び細谷方式とも,A型は13,B型は11をモ・一 ドとする山に区別され,両型の平均値の間に

有意差がみられたが(渡辺・水口:t =

54..9;p<0..001,細谷:t =53.0;p<

0“001),11∼13で変異域が重なった(図5)。

側線上方横列鱗数が13以上ではA型,12以下

ではB型が多かった。これらの値を仮に側線

上方横列鱗数のA型とB型の識別値であると

する と,渡辺・水口方式では28個体

(2..9%),細谷方式では32個体(3..3%)が色 による識別と一・致しない個体となった。 − 48 −

(5)

丁 6 5 4 3 クー■1 0 1 .1 1 1 1 .1 ▲l l 側線上方拭列銃数 250 200 度150 数l00 50 0 45 50 55 60 65 70 側線鈍数 側 35 加 25 加 持 背鰭前方鱗敢 181920212223糾25282728293031さ233糾358637 背鰭前方鋭敏 図6“渡辺・水口(1988)および細谷(1993a)の 方式によって識別したA型(白抜き) とB型(斜線)の背鰭前方鱗数の度数 分布ル 側線下方横列鱗数は,渡辺・水口方式およ

び細谷方式とも,A型は5,B型は4をモ、一

ドとする山となり,両方式とも平均値の間に

有意差がみられたが(渡辺・水口:t=

24.8;p<仇001,細谷:t =24‖4;p<

仇001),A・B型とも変異域が3∼6であっ

て,両型の変異域は完全に重なった(図5)。 背鰭前方鱗数は,渡辺・水口方式および細 谷方式とも,A型は25,B型は22をモ・−ドと する山に区別され,両型の平均値の間に有意

な違いがみられたが(渡辺・水口:t=

41い9;p<0‖001,細谷:t =41..2;p<

0.001),渡辺・水口方式では変異域22∼26

で,細谷方式では変異域21∼26で重なった

(図6)。背鰭前方鱗数が24以上ではA型,23 以下でiまB型が多かった。これらの値を仮に 背鰭前方鱗数のA型とB型の識別値であると

すると,渡辺・水口方式では67個体

(7.0%),細谷方式では71個体(7一.3%)が色 による識別と一・致しない個体となった。しか

しながら,背鰭前方鱗数が24の個体は色に

45 50 55 60 65 70 側線鱗数 7 6 5 4 3 2 1 1 一l 一l 一l l 側線上方横列妓数 15 20 25 30 35 40 背蟻前方鱗故 国7..側線鱗数と側線上方横列鱗数(上),側線 鱗数と背鰭前方鱗数(中)および背鰭前 方鱗数と側線上方横列鱗数(下)の関係り 渡辺・水口(1988)の方式によって識別し たA型を白丸,B型を黒丸で表す..破線 と右下がりの実線については本文を参照 のこと よってA型と判断された個体が多いものの, B型と判断された個体も同数程度見られた。 以上で見てきたように,色以外の5つの形 質のうち,側線鱗数,側線上方横列鱗数およ び背鰭前方鱗数の3つの形質は色による識別 − 49 −

(6)

の割合は変わらなかった。これらの識別ライ

ンより右上にA型,左下にB型と色によって

識別された個体の大部分が含まれた。 単独分布河川と共存河川との形質の比較 2型が共存して分布することでお互いの形 態的形質の違いが明確になるかどうかを検討 す−るため,渡辺・水口(1988)にもとづいて 背鰭の鰭膜の色に.よって識別された2型の色 以外の形質のうち,色による識別と−・致する 個体の多かった側線鱗数,側線上方横列鱗数 および背鰭前方鱗数を単独分布河川(カワム ツA型のみあるいはカワムツB型のみ採集さ

れた河川)と共存河川(カワムツA型とB型

の2型が採集された河川)に分けて−比較検討

した。単独分布河川のカワムツ2型の合計個

体数は350個体,共存河川では608個体であっ た。 側線鱗数では,単独分布河川および共存河 川とも,渡辺・水口の方式によって届転別した A型は60,B型は50をモ、−ドとする山に明瞭 と一・致する個体が多かった。そこでこれらの 形質の間の関係として−,側線鱗数と側線上方 横列鱗数,側線鱗数と背鰭前方鱗数および背 鰭前方鱗数と側線上方横列鱗数の関係を調べ

た。渡辺・水口方式にもとづいて色による

A・B型の区分を白丸と黒丸で区別し,側線

鱗数によるA型とB型の識別境界として仮定

した識別値を破線で示した。また,渡辺・水

口方式でB型,細谷方式でA型と識別された

例外個体を白三角(黒丸と重なっている)で 示した(図7)。 同じ値の個体が多いため傾向を見ることし かできないが,3つの形質は相伴って増加す

る傾向が見られた。また,これまでの結果か

ら当然のことであるが,いずれの値も色で分

けたA型で多く,B型で少ない傾向が見られ

た。ただし,例外個体は特に側線鱗数との関

係からは大きくはずれていた。側線鱗数によ

るA・B型の識別値付近では,側線上方横列

鱗数と背鰭前方鱗数のいずれの値も,大きい ところで側線鱗数が識別値より少ないA型, /トさいところで側線鱗数が識別値より多いB 型が出現した。また,色によって分けたA型 とB型の重なりも同じところに出現した。 そこで,図7で右下がりの実線で示した直 線をA型とB型の境界であると仮定す−ると, 色による識別と一・致しない個体は,側線鱗数 と側線上方横列鱗数あるいは背鰭前方鱗数の 関係の場合はわずか10個体(1り0%)であっ た。背鰭前方鱗数と側線上方横列鱗数の関係 では,23個体(2.4%)であった。いずれの場 合も,単一・形質で識別するよりも色による識 別と一・致しない個体は少なくなった。図7の 右下がりの直線は,側線鱗数と側線上方横列 鱗数の関係では,側線鱗数+側線上方横列鱗 数=67..5,側線鱗数と背鰭前方鱗数の関係で は,側線鱗数+背鰭前方鱗数=79..5,背鰭前 方鱗数と側線上方横列鱗数の関係では,背鰭 前方鱗数+側線上方横列鱗数=36..5で表せ た。ただし,側線鱗数+側線上方横列鱗数= 68..5としても色による識別と一・致しない個体 50 40 度30 数之0 10 0 明 朝 50 52 糾 56 58 60 62 帥 86 68 70 側線談数 100 80 鹿60 数朝 20 0 46 4さ 50 52 54 56 58 60 62 84 66 68 70 側線妹敵 国8= カワムツ2型の単独分布河川と共存河川 における渡辺・水口(1988)の方式によっ て識別したA型(白抜き)とB型(斜 線)の側線鱗数の度数分布仙 − 50 −

(7)

200 160 度120 数80 ヰ0 0

250 200 150 100 50 0 側線上方横列鱗致 5 A・ ▲J 12 11 10 9 9101112 柑141516 9101112131ヰ1516 側線上方横列鰭敵 側繰上方榛列腐数 図9..カワムツ2型の単独分布河川と共存河川 における渡辺・水口(1988)の方式によっ

て識別したA型(白抜き)とB型(斜

線)の側線上方横列鱗数の度数分布. J持 50 55 60 65 70 側線鱗致 側線上方横列鱗数 70 60 50 度胡 散30 20 10 0 45 50 55 60 側線解散 85 ‘70 】8192021訟232ヰ252627282g30313233343536釘 背箆前方鋲致 図11.カワムツ2型の単独分布河川と共存河川 における渡辺・水口(ユ988)の方式によっ て識別したA型(白丸)とB型(黒丸) の側線鱗数と側線上方横列鱗数の関係.. 破線と右下がりの実線については本文を 参照のことい 140 120 100 度80 致60 ヰ0 20 0 1819之021222くさ2ヰ252827282930さ132333435383■7 背盆前方鮫数 図10… カワムツ2型の単独分布河川と共存河川 における渡辺・水口(1988)の方式によっ

て識別したA型(白抜き)とB型(斜

線)の背鰭前方鱗数の度数分布 に区別され 色によって識別した両型の平均 値の間に.有意差がみられた(単独分布河川: t=36い1;p<0い001,共存河川:t=57い7; p<0一.001)。単独分布河川でiま54∼57で変異 域の重なりがみられたが,共存河川ではA型 は57以上B型は56以下となり,色による識別 と完全に−・致した(図8)。また,側線鱗数の 平均値は,単独分布河川に対して共存河川の

方が,A型では増加し,B型では減少し,単

独分布河川と共存河川の平均値の間には有意

差がみられた(A型:t=6..02;p<0.001,

B型:t=2…03;p<0小001)。 側線上方横列鱗数は,単独分布河川ではA

型は13,B型は11,共存河川ではA型は14,

B型は11をモ、一ドとする山に区別され,色に よって識別した両型の平均値の間に有意差が みられたが(単独分布河川:t=34..5;p<

0¶001,共存河川:t=42い9;p<0.001),単

独分布河川で12∼13,共存河川で11∼13で変 泉城が重なった(図9)。また,側線上方横列 鱗数の平均値は,単独分布河川に対して共存

河川の方が,A型では増加し,B型では減少

したが,A型のみ単独分布河川と共存河川の

間に有意差がみらゎた(t=1小77;p<

0..1)。 背鰭前方鱗数は,単独分布河川ではA型は

25,B型は22,共存河川ではA型は26,B型

は22をモ・一ドとする山に区別され,色によっ ー 51−

(8)

となった。色による識別と他の形質による識 別の一・致ということを重視するならば,渡 辺・水口方式がよりすぐれて−いると判断せざ

るをえない。4個体はいずれも同じ河川で採

集された個体であり,採集地固有の性質であ るのかどうか再検討する必要があるものと考 えられる。 色以外の5つの形質のうち,背鰭分枝軟粂 数および側線下方横列鱗数は,渡辺・水口方 式および細谷方式の色で分けた両型の変異域 は完全に重なっていた。したがって背鰭分枝 軟条数および側線下方横列鱗数では2型を完 全に識別することはできず,識別形質として 用いることはできないものと考えられる。 その他の側線鱗数,側線上方横列鱗数およ び背鰭前方鱗数の3つの形質は色による識別 と−∵致する個体が多く,2型を識別する有効 な形質としてとり扱うことができ,渡辺・水 口方式の色に.よる識別と一・致する個体の割合 は,側線鱗数で賂.6%,側線上方横列鱗数で 97..1%,背鰭前方鱗数で93叶0%となり,この 順に2型を識別するのに有効であると考えら れる。 側線鱗数と側線下方横列鱗数,側線鱗数と 背鰭前方鱗数および背鰭前方鱗数と側線上方 横列鱗数の関係を調べると,3つの形質は相

伴って増加する傾向が見られた。そのため,

これらの形質は独立に変化するものではない

と考えられる。側線鱗数だけでなく,側線鱗

数と側線下方横列鱗数の関係,側線鱗数と背 鰭前方鱗数の関係も考慮すると,色による識 別との一・致がわずかながら改善され,それら の組み合わせは有効な識別手段であると考え られる。背鰭前方鱗数と側線下方横列鱗数の 関係についても同様の結果となったが,色に よる識別と−・致しない個体は側線鱗数単独で 識別する場合より多く,有効な識別手段とは いえない。

細谷(1993a)はカワムツのA型とB型の区

別を,生時の胸鰭と腹鰭の前線部の色,側線 鱗数および唇鰭分枝軟粂数によって行ってい て識別した両型の平均値の間に有意差がみら

れたが(単独分布河川:t=23.4;p<

0い001,共存河川:t=34.9;p<0..001),単

独分布河川で23∼25,共存河川で22∼26で変 異域の重なりがみられた(図10)。また,背鰭 前方鱗数の平均値は,単独分布河川に対して

共存河川の方が,A型では増加し,B型では

減少したが,B型のみ有意差がみられた(t

=2−.47;p<0..02)。 側線鱗数と側線上方横列鱗数の関係を単独 分布河川と共存河川で比較したのが,図11で

ある。図7と同様に,側線鱗数によるA型と

B型の識別境界として仮定した識別値を破線 で示し,側線鱗数+側線上方横列鱗数=67.5 の識別ラインを右下がりの実線で示した。単 独分布河川での関係は図7に示した場合と同 じような関係となった。共存河川では,A型 は57以上B型は56以下となり完全に分離した が,側線上方横列鱗数についてはそのような 分離は見られなかった。識別ラインによる分 離も見られず,識別ラインよりはずれる個体 数は単独分布河川で3個体(仇86%),共存河 川で7個体(1..15%)であった。図には示さな かったが,側線鱗数と背鰭前方鱗数の関係も 同様の結果となった。 考 察 渡辺・水口(1988)の識別形質である背鰭 の鰭膜の色および細谷(1993a)の識別形質で ある胸鰭と腹鰭の前線の色による識別では, 中間型は出現せず,カワムツ2型を完全に識 別することができた。両者の方式は完全には 一・致せず,細谷方式でA型と識別された個体 の中に,渡辺・水口方式でB型と識別された 個体が4個体(0..4%)含まれていた。これら の4個体は背鰭分枝軟条数lま9,側線上方横 列鱗数は11,側線下方横列鱗数は4で,側線

鱗数は3個体が51,1個体が52,背鰭前方鱗

数は3個体が23,1個体が21であった。色以

外の形質についての仮の識別境界値にしたが

えば,A型とは大きくはずれ いずれもB型

ー 52 −

(9)

る。すなわち,生時の胸鰭と腹鰭の前縁部の

色が桃色で,側線鱗数が53以上,簡鰭分枝軟

粂数を9のタイプをA型とし,生時の胸鰭と

腹鰭の前線部の色が薄黄色で,側線鱗数が51 以下,啓鰭分枝軟負数が10のタイプをB型と

している。だが,すでに見てきたようにこれ

らの形質は一・致せず,機械的に適用すると, いずれの型にもあてはまらない個体が多数出 現することになる。今回のカワムツの資料に

当てはめてみると,958個体中,A型が271個

体,B型が139個体,どちらにもあてはまらな い個体は548個体となった。 このように多数のあてはまらない個体が出 現する原因は,側線鱗数の境界値をA型が53 以上,B型を51以下としたこ.と,背鰭分枝軟 粂数を識別形質としたことである。いずれの

型にもあてはまらない個体を少なくするに

は,側線鱗数が57以上をA型,56以下をB型

とす−る必要がある。また,常勝分枝軟粂数は

色によって分けたA・B型で変異域が完全に

一・致するため,識別形質としては採用できな い。以上のことから,細谷(1993a)によるA 型とB型の識別方法は誤りであるといわざる

をえない。今回の結果だけでなく,徳島県吉

野川支流の淡水魚を調査した佐藤(1995)も 細谷(1993a)の方法ではいずれにもあてはま らない個体があることを指摘している。 側線鱗数だけでなく,側線鱗数と側線下方 横列鱗数の関係,側線鱗数と背鰭前方鱗数の 関係も考慮すると,渡辺・水口(1988)によ る色による識別との一・致がよくなったとはい

え,完全には一・致しなかった。しかしなが

ら,単独分布河川と共存分布河川に分ける

と,単独分布河川に対して共存河川の方が, 側線鱗数,側線上方横列鱗数および背鰭前方

鱗数は,A型では増加し,B型では減少する

傾向が認められ,側線鱗数については,共存

河川ではA型は57以上B型は56以下となり完

全に.分離した。 常識的に考えると,単独分布河川より,共 存河川の方が交雑により,中間型が多くなる と考えられるが,今回の結果はそれとは逆と なった。酒井ほか(1992)は,山口県のオイ カワ族魚類を調べ,オイカワとカワムツA型

の雑種の出現を指摘している。また,渡辺・

水口(1988)は.,形態的見地からオイカワと カワムツ(型は不明)の交雑魚がいることを

報告している。しかしながら,いずれの場合

もカワムツA型とB型の交雑魚は見られな

かった。そして,OkazakieJαJ(1991)は,A

型とB型の間に交雑の見られないこ.とを遺伝 学的に確認している。 今回見られたような,近縁する2種が単独 で分布する地域より共存して分布する地域の ほうが2種の形質の分離が見られるような現

象を,BrOWn andWilson(1956)は形質置換と

呼んでいる。彼らは,形質置換とは「近縁な

2種が重複した分布域をもつ場合,−−・方の種 だけが分布する地域では他種に類似し,互い に区別することが難しくなる。重複分布域で はより分化し簡単に区別できる。両種は形態 的,行動的,または生理的に置換した形質を もち,その形質は遺伝的な基盤をもつ」と定 義している(細谷,1987)。淡水魚における形 質置換の例として,細谷(1987)は,タモロ コが,ホンモロコのいない湖ではホンモロコ 化(体高と尾柄高が低く,−・縦列鱗数・脊椎 骨数・鯉紙数が多く,口ひげが長く,不対鰭 の後線が鋭く切れ込む)し,ホンモロコのい る琵琶湖では,よりタモロコらしくなる(体 高・体幅が大きく,不対鰭の後縁がまるみを 帯び,鯉兜数が少なく,口ひげが短くなる) ということをあげて−いる。 共存河川の方が単独分布河川より,側線鱗

数,側線上方横列鱗数および背鰭前方鱗数

は,A型では増加し,B型では減少する傾向

が認められたのは,交雑が起こらないよう分 化しているのではないかと考えられる。今回 の結果が形質置換によるものであるかどうか は,取り上げた形質が少なく,生態や行動の 違いも明らかではないので即断はできない。

今後,A・B型間の形態と生態,および行動

− 53 −

(10)

をお互いに関連させた調査・研究を行って,

A・B型間の種間関係を調べる必要があるだ

ろう。 カワムツを色以外の外部形態を組み合わせ

てA型とB型に区別することは,共存河川の

個体でのみ可能である。その場合,背鰭の鰭

膜が透明で薄く赤みのかかり,側線鱗数が57 以上のものをA型,背鰭の鰭膜が黄色で不分 枝軟粂部分のみ赤く染まるり,側線鱗数が56

以下のものをB型に分けることができる。単

独分布河川においてもこの方法で90%以上の 個体を分けることができるが,さらに側線鱗 数で識別する代わりに,側線鱗数と側線下方 横列鱗数の関係から,側線鱗数+側線下方横 列鱗数>67..5をA型,側線鱗数+側線下方横 列鱗数<67..5をB型とする,側線鱗数と背鰭 前方鱗数の関係から側線鱗数+側線下方横列 鱗数>79.5をA型,側線鱗数+側線下方横列 鱗数<7凱5をB型とすると,識別可能個体の 割合は高くなるものと考えられる。 謝 辞 本研究は著者のひとり,大高が香川大学大 学院教育学研究科で研修中に行ったものであ る。本研究をすーすめるにあたり,懇切丁寧な 指導をしていただいた香川大学教育学部金子

之史教授に心から感謝します。また,広い視

野から的確な助言をしていただいた香川大学 教育学部末広喜代−・教授,農学部渡辺直教授 に心からお礼を申し上げます−。さらに,魚類 の採集に協力してくださった香川大学付属高 松/ト学校倉沢均教諭,綾歌町立綾歌中学校大 久保仁教諭,当時香川大学教育学部大学院生 西土井誠氏にお礼を申し上げます。最後に, 2年間の研修へ派遣していただいた香川県な らびに高松市教育委員会,研修の機会を与え ていただいた当時高松市立木太小学校上川教 生校長,研修期間中あたたかい言葉をかけて くださった当時高松市立三渓小学校川東孝子

校長をはじめ教職員のみなさんに感謝しま

す。 要 約 1.香川県産のカワムツ958個体を用いて, 渡辺・水口(1988)と細谷(1993a)で取り上

げられたA・B型の識別形質の妥当性を検討

した。また,従来は2型の識別形質とはされ ていない3形質(側線上方横列鱗数,側線下 方横列鱗数および背鰭前方鱗数)についても 新しく識別形質として用いることが可能かど うかを検討した。 2.渡辺・水口(1988)にもとづいた背鰭

の鰭膜の色の形質に.よる識別および細谷

(1993a)にもとづいた生時の胸鰭と腹鰭の前 縁の色の形質による識別では中間型は存在せ ず,2型に識別することができた。しかしな がら,両者の方式で識別した結果は完全には 一散せず,0.4%の不一・致個体が見られた。 3い 腎鰭分枝軟粂数,側線下方横列鱗数で

は2型の変異域が完全に重なり識別できな

かったが,側線鱗数,側線上方横列鱗数,背 鰭前方鱗数の順に90%以上の個体で色による 識別との一・致が見られた。 4.側線鱗数と側線上方横列鱗数,側繚鱗 数と背鰭前方鱗数の関係を考慮すると,さら に色による識別との一・致率が高くなった。

5.細谷(1993a)による3つの形質でカワ

ムツのA・B型を識別する方法を機械的に適

用すると多くの個体がいずれにも当てはまら ず,細谷(1993a)の識別方法は誤りであると 判断された。 6..単独分布河川と共存河川に分けて比較 すると,単独分布河川に対して共存河川の方 が,側線鱗数,側線上方横列鱗数および背鰭 前方鱗数は,色により識別したA型では増加 し,B型では減少する傾向が認められ,共存

河川では側線鱗数が57以上がA型,56以下が

B型となり,色により識別した型と完全に−・ 致した。 7..共存河川でA・B型が分離する原因, カワムツを色以外の外部形態を組み合わせて

A型とB型に区別する方法について,議論し

ー 54 −

(11)

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参照

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