*金沢大学大学院医学系研究科病態検査学〔〒920-0942 金沢市小立野 5-11-80〕
Department of Clinical Laboratory Science, Graduate School of Medical Science, Kanazawa University 〔5-11-80 Kodatsuno, Kanazawa, Ishikawa, 920-0942, Japan〕
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◆診断・治療・技術講座◆
はじめに 臨床の現場で凝血学的検査を行う場合は,出 血性疾患の精査と血栓性疾患の精査の二つに大 別できる.前者は,①臨床症状として出血傾向 を認めその原因検索をする場合,②術前検査な どで偶然凝血学的異常を認めその原因検索をす る場合,とがある.一方後者は,①若年性ある いは再発性の血栓症を認め血栓性素因の検索を する場合,②術後の肺血栓塞栓症の発症予防を 目的として術前検査を行う場合,とがある.特 に,2004 年に「肺血栓塞栓症 / 深部静脈血栓 症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」が発 表されて以降,血栓止血外来は術前における血 栓性素因の検索を依頼する紹介患者が急増し, 凝血学的検査の重要性が認識されつつある. そこで本稿では,特に先天性血栓性素因の原 因検索を行う上での凝血学的検査の注意点や臨 床上の問題点などについて,述べてみたい. (1)血栓性素因の診断の流れ(図 1) 血栓性疾患の原因検索を行う場合,まずは表 1 に示したような臨床症状・所見のポイントを チェックし,先天性血栓性素因なのか,あるい は抗リン脂質抗体症候群(APS)に代表される 後天性血栓性素因なのか,あるいは動脈硬化性 病変を基盤として発症した血栓なのかを判断し なければいけない.一般的には糖尿病,高脂血 症,高血圧などの動脈硬化性疾患を合併してい る場合は,血小板を主とした動脈血栓が発症す る場合が多い.一方,先天性血栓性素因では通 常は静脈血栓を起こし,APS では脳梗塞のよ うな動脈血栓も深部静脈血栓(DVT)も両方 発症する. 臨床所見として,①40 歳代以前に静脈血栓 症を発症したり,②再発性であったり,③まれ な場所(脳静脈洞血栓,門脈血栓,腸間膜静脈 血栓など)に発症したり,④家族歴に若年性の 血栓症の発現がみられる,⑤習慣性胎児死亡な どの場合(表 2)には,先天性血栓性素因があ ることを予測して血液検査をすすめる.通常, 先天性血栓性素因のヘテロ接合体患者は幼少時 には血栓はみられないが,血栓症の70~80% が40 歳以前に発症するという.しかし,欠損 症患者でも血栓症をおこさない症例もあり,発 症には引き金となる他の危険因子(外傷,手先天性血栓性素因の診断の進め方
森 下 英 理 子*Clinical manifestation and laboratory findings of thrombophilia
Eriko Morishita*
Key words: thrombophilia, blood coagulation study, gene defects
森下英理子 金沢大学大学院医学系研究科病態検査学 准教授 1986年 日本医科大学卒業 1988年 金沢大学医学部第 3 内科医員 1993年 金沢大学医学部臨床検査医学 助手 1997年 金沢大学医学部病態検査学 助教授 2005年より現職
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いない.同様に,tissue factor pathway inhibitor (TFPI)欠損による血栓症家系の報告もみられ るが,血栓性素因としての意義はまだ確立され ていない.昨年度の血栓止血学術集会,胎児性 陳旧性脳梗塞を認めたトロンボモジュリン異常 症(Gly412 → Asp)ホモ接合体の症例報告が あり,注目される. ②線溶能の低下 本邦では,プラスミノゲン(Plg)異常症(栃 木型:Ala601 → Thr)の遺伝子変異の頻度は一 般住民の3.9%と欧米(0.3~0.5%)に比して 著しく高く2),いわゆる遺伝子多型と考えられ ている.線溶反応はフィブリンが形成されてか ら開始されるため,Plg 異常症では必ずしも血 栓症をきたすとは限らず,他の要因による凝固 亢進状態が加わったときに血栓症を発症する. 日本人一般住民を対象とした検討では,Plg 異 常症の頻度は一般住民群と深部静脈血栓症患者 群とで有意差を認めず2),Plg 異常症は血栓症 の危険因子とは考えにくい.ちなみに,先天性 術,感染,妊娠,ホルモン補充療法や経口避妊 薬の内服など)の存在も重要である. (2)先天性血栓性素因の要因 現在,先天性の血栓性素因としては表 3 に 示すような凝固制御系因子の欠乏,線溶活性化 能の低下,第VIII 因子(FVIII)やプロトロン ビンなどの凝固因子の増加など,多くの要因が 提唱されている. ①凝固制御因子の欠乏 ア ン チ ト ロ ン ビ ン(AT), プ ロ テ イ ン C (PC),プロテイン S(PS)活性が正常の 50% 程度に低下(ヘテロ接合体)すると,血栓傾向 を認める.AT 欠損症のホモ接合体は致死的で あるため生まれてはこないが,PC や PS 欠損 症のホモ接合体および複合へテロ接合体では, 新生児期より皮膚の壊死を伴う電撃性紫斑病 や,重篤な静脈血栓症を呈することがある.凝 固 第V 因 子(FV)Leiden 変 異 は,FV の 遺 伝 子変異(506Arg → Gln)により PC の抗凝固作 用に抵抗性を示し(活性化PC 抵抗性)易血栓 性をきたす.欧米人の静脈血栓症の約20%を 占めるが1),本邦での報告はない. ヘパリンコファクターII(HC II)は AT に 次ぐヘパリン依存性のトロンビンインヒビタ ーであり,欠乏症家系では血栓症をきたした 報告もあるがホモ接合体でも無症状の症例も あり,血栓症との直接的な関連性は確立されて 表 1 チェックポイント ① 年齢:40 歳代以下の若年性発症か ② 血栓の種類:動脈血栓か,静脈血栓か ③ 発症部位:好発部位か,まれな部位か ④ 発症状況:術後,外傷後,長期臥床,ロング フライト,妊娠 ⑤ 既往歴:血栓症を繰り返しているか(再発性) 習慣性胎児死亡などの既往があるか ⑥ 家族歴:若年性の血栓症があるか ⑦ 生活歴:薬剤(経口避妊薬,ホルモン補充療 法),喫煙 表 2 先天性血栓性素因を疑う所見 ① 40 歳代以前に発症 ② 再発性 ③ まれな部位(脳静脈洞,門脈,腸間膜静脈など) に発症 ④ 家族歴で若年性の血栓症がある ⑤ 習慣性胎児死亡 ⑥ 抗凝固療法中に再発する血栓症またはワーフ ァリン投与後の皮膚壊死 図 1 先天性血栓性素因の診断手順 వᄤᕈⴊᩖᕈ⚛࿃䈱⇼䈇䇭䇭 䇭䇭䇭䇭䇭䇭䇭䇭 ᵴᕈ䈱ૐਅ ㆮવሶᬌᩏ 㪘㪫㪃㩷㪧㪚㪃㩷㪧㪪ᵴᕈ䊶᛫ේ㊂䈱᷹ቯ వᄤᕈⴊᩖᕈ⚛࿃䈱⸻ᢿ䇭䇭 䇭䇭䇭䇭䇭䇭䇭䇭 ᓟᄤ⊛䈮ૐਅ䈜䉎∛ᘒ䈱ᬌ⸛ ኅ♽ౝ⺞ᩏ ⴊᩖ∝ ⥃ᐥᚲ䈱䊘䉟䊮䊃䉕䉼䉢䉾䉪䋨㪈㪃㩷㪉ෳᾖ䋩
Plg 欠損症のヘテロ接合体では血栓症はみられ ず,ホモ接合体で眼瞼結膜にフィブリンを主成 分とする偽膜性結膜炎(リグニアス結膜炎)を 合併することが報告されている. また,線溶能低下をきたす病態である組織プ ラスミノゲンアクチベーター放出障害や,プラ スミノゲンアクチベーター・インヒビター1 過 剰症において,血栓症家系の報告があるが,血 栓性素因としての位置づけはまだ確定していな い.ヒスチジンリッチグリコプロテイン(HRG) は,Plg のフィブリンとの結合を阻害し線溶能 を低下させることから,HRG 増加症は血栓症 の原因となる可能性が指摘されている.HRG 増加症家系では若年性血栓症を認めているが, 一方で血栓症の危険因子としての否定的な検討 結果も報告されている. ③凝固因子の増加 プロトロンビンの遺伝子多型G20210A 変異 を有する者は,血中プロトロンビン濃度が130 %程度まで増加している.欧米人の血栓素因と して重要であるが,日本人にはみられない. また,第VIII 因子活性(F VIII:C)の増加 は静脈血栓塞栓症(VTE)の危険因子と考えら れており,F VIII:C が 10 IU / dl(10%)増加 するとVTE のリスクが 10%増加するといわれ ている3).F VIII は VTE 急性期に急性炎症反応 として上昇するので,F VIII:C の測定は少な くとも3 ヶ月以降に行い評価したほうがよい4). 現在のところ遺伝子変異部位は不明であるが, F VIII 増加症は先天性血栓性素因として確立さ れつつある. ④その他 先天性フィブリノゲン(Fbg)欠損症は無 Fbg 血症,低 Fbg 血症,異常 Fbg 血症に分類 されるが,無Fbg 血症患者は中等度から重症 の出血傾向を示す.一方,Fbg 異常症は Fbg 活 性が低下しているが,出血と血栓傾向の片方あ るいは両者の症状を認めることが知られている. 第XII 因子(F XII)欠損症と血栓症について は,第一例目のHageman 氏が肺塞栓症で死亡 表 3 先天性血栓性素因 ① 凝固制御因子の低下 アンチトロンビン欠損症 プロテインC 欠損症 プロテインS 欠損症 第V 因子 Leiden 変異(活性化プロテイン C 抵抗性)(日本人にはない) トロンボモジュリン異常症*
tissue factor pathway inhibitor(TFPI)欠損症 * ② 線溶能の低下 プラスミノゲン異常症* 組織プラスミノゲンアクチベーター放出障害* プラスミノゲンアクチベーター・インヒビター-1 過剰症 * ヒスチジンリッチグリコプロテイン増加症* ③ 凝固因子の増加 プロトロンビンG20210A(日本人にはない) 第VIII 因子増加症 第XI 因子増加症 * ④ そのほか 異常フィブリノゲン血症 第XII 因子欠損症 * 高ホモシステイン血症 高リポ蛋白(a)血症 * 血栓性素因としての意義が不確定なもの
したことからその関係が注目された.しかし, 他の数十家系の欠損症患者では全く無症状であ り,現在のところ因果関係は明らかではない. 高ホモシステイン血症をきたすホモシステイ ン尿症(ホモシステインを分解する酵素シスタ チオニン β シンターゼの欠損)はまれな先天 性代謝異常症の一つであるが,心筋梗塞,脳梗 塞,VTE などの動静脈血栓症を起こすことが 知られている.この所見より,高ホモシステイ ン血症と動脈硬化および血栓症との関連が近年 注目されるようになってきた.ホモシステイン 関連酵素については本学会誌5)に詳述されてい るので,参照されたい.動脈硬化,血栓症の発 症機序としては,過剰なホモシステインによ り血管内皮傷害をきたしトロンボモジュリン, PC,PS 系の抗凝固活性が低下したり,血小板 が活性化されることが考えられている. 高リポ蛋白(a)[Lp(a)]血症は,動脈硬化お よび血栓症の危険因子と考えられており,心筋 梗塞の発症率やPTCA 後の再閉塞率を上昇さ せる.Lp(a)は LDL のアポリポ蛋白 B-100 に apo(a)が S-S 結合した脂質で,apo(a)は構造 上Plg と非常に類似しており,Plg のフィブリ ンへの結合を阻害してプラスミンの生成を抑制 するので結果として線溶能が低下する.Lp(a)濃 度は優性遺伝し,一般人の1 / 4~1 / 3 が高 Lp(a) 血症を呈する. (3)検査 先天性血栓性素因の多くの要因について前述 したが,実際にその意義が確立されているもの はそんなに多くはないといえよう.したがっ て,臨床現場で先天性血栓性素因を疑った場合 には,まず診断の手順として抗凝固阻止因子で あるAT・PC・PS の活性,抗原量を測定する. 通常,これらの因子活性が正常の50%以下に 低下した場合先天性欠損症を疑うが,後天性に 低下する要因をできる限り除外する必要があ る.また,血中ホモシステインやLp(a)濃度 の測定も行っておきたい. ① AT 血中AT 活性の測定は,ヘパリン存在下での トロンビンまたはXa 阻害効果を合成基質を用 いて測定する方法が一般的である.抗原量は, 抗AT 抗体を用いた免疫学的方法により測定す る.先天性AT 欠損症 II 型は分子異常症であ り,抗原量は正常でも活性低下を示すので,抗 原量測定しか行わないと見落としてしまう.し たがって,必ず活性測定を行う. AT は肝臓で産生されるため,肝の未発達な 新生児では低値を示す.ヘパリン使用時に採血 すると,AT 活性が低下しデータの信頼性が落 ちるので注意が必要である.血中AT 活性の低 下を認めた場合は,先天性欠損症のほかに,後 天性に低下する要因として凝固活性化による消 費,炎症性サイトカインによる産生低下,炎症 による血管外への漏出,肝障害(肝硬変,劇症 肝炎,肝不全)による産生低下などを考えなけ ればいけない.DIC では,トロンビン生成によ る消費性低下もわずかにきたすが,むしろ敗血 症性DIC などでは血管外への漏出による低下 が顕著である.ネフローゼ症候群では尿中に失 われることにより低下する.また薬剤の影響と しては,ホルモン剤(エストロゲン)投与など で約10%減少し,L-asparaginase 投与でも AT 活性が低下する. ② PC PC 活性の測定には,凝固時間法と合成基質 法とがある.両者ともに蛇毒由来PC activator (プロタック)で血漿中PC を十分活性化し, 生じた活性化PC(APC)による APTT 延長効 果をみる方法が凝固時間法であり,発色合成基 質の分解能をみる方法が合成基質法である.合 成基質法では,ワーファリン内服患者において PIVKA-PC も測り込むため偽高値を示したり6), 先天性血栓素因の原因検索の際に,Gla ドメイ ンなどに変異がある先天性PC 異常症では PC 活性値が偽高値7)となり診断を見落とす可能性 がある点に留意すべきである.PC 抗原量の測 定は,総PC 濃度測定法と,正常な Gla を有す
るPC を特異的に測定する方法とがあり,共に ELISA を用いる. PC は肝臓で産生されるため,肝機能障害や 肝の未発達な乳幼児では,後天性に血中PC が 低下する.また,PC 分子の Gla 残基の合成に はビタミンK(VK)が必要なため,抗生物質 の長期連用による腸内細菌の破壊,胆道閉塞 での胆汁不足によるVK 吸収障害などで VK が 欠乏したり,抗凝固剤であるワーファリンを 使用すると,Gla の合成が不完全な異常分子 PIVKA-PC が生成され,PC 活性が低下する. たとえばDVT 症例にワーファリンを投与して しまってから血栓性素因の精査を行うと,先天 性欠損症との鑑別はきわめて困難となってしま う.したがって,臨床サイドも検査部サイド も,血栓性素因が疑わしい症例ではワーファリ ン投与前の検体保存を心がけるべきである.他 に,DIC や APS などで消費のみによる軽度減 少する場合や,さらに消費のほかに血管内皮細 胞傷害に基づく血管外漏出や産生低下が加わ ることにより,さらに著明な低下を示す場合が ある. ③ PS 血中PS の約 60%は補体制御蛋白の一種であ るC4b 結合蛋白(C4BP)と結合しており,約 40%が遊離型として存在する.活性化 PC に対 する補酵素活性を有するのは遊離型のみで,こ の遊離型の低下が血中PS 活性の低下につなが ると考えられている.C4BP との複合型 PS は, 遊離型PS の補酵素活性を阻害する.したがっ てC4BP 値の増減が,血中 PS 活性に影響する. たとえば新生児では血中C4BP 値が低値である ため相対的に遊離型PS が増加し,PS 活性が 高値を示す. 血中PS 活性は,APC のコファクター(補助 因子)活性を凝固時間法で測定するが,残念な がら現時点では保険適用外の検査である.PS 抗原量は,総PS 抗原濃度,遊離型 PS 濃度, C4BP 結 合 型 濃 度 を ELISA 法 に て 測 定 す る. 通常は遊離型PS 抗原量が PS 活性を反映する ため,遊離型の測定に意義があり保険適用にな っている.遊離型PS 抗原量は,女性が男性よ りも低値である.日本人に多いPS 分子異常で
あるPS Tokushima 変異(155 Lys → Glu)のヘ
テロ接合体ではPS 活性が低下しない場合もあ り,一方健常者でもPS 活性が低下する場合が あり,PS 活性測定による欠損症の診断には限 界があることが指摘されている. PS も肝臓で産生され合成に VK が必要なた め,肝障害やVK 欠乏時,ワーファリン使用 時にはPC と同様に低下する.上記の病態以外 に,エストロゲンはPS の産生を制御するため, 妊娠中や経口避妊薬使用時に血中PS 活性が低 下することは,知っておかなければならない. 正常妊婦を対象としてPS 活性の変動を検討し た報告8)によると,陣痛発来時には20~40% にまで著減するが,分娩翌日には30%台に,4 日後には40~70%台に回復する(図 2).また, 全身性エリテマトーデス,APS,ステロイド内 服,ネフローゼ症候群などでもPS 活性が低下 する. 先天性PS 欠損症の発症頻度は 1.12%と欧 米人(0.16~0.21%)に比べて明らかに高く9), 中でもPS Tokushima 変異は一般人口の 5%に みられ,日本人の遺伝子多型と考えられてい る10). 㪧 㩷㪪 㩷ᵴ ᕈ 㩿㩼 㪀 㪉㪇 㪋㪇 㪍㪇 㪏㪇 㪈㪇㪇 㪉㪐ㅳ 㪊㪎ㅳ㒯∩⊒᧪ ಽᇂ⋥ᓟಽᇂ⠉ᣣ㪋ᣣᓟ 㪈ᓟ 㪇 図 2 正常分娩例における PS の動態(Kurasawa G, et al : Aust N Z J Obstet Gynecol 47 : 213-215, 2007 を一部改変)
(4)診断 以上のように血液検査を進めていき,結果と していずれかの凝固阻止因子活性の低下を認め ても,短絡的に先天性欠損症と診断せずに,後 天性に低下している可能性がないか十分に考慮 する必要がある.実際に臨床の現場では,それ が先天性欠損によるものなのか,後天性による ものなのかを判断することは容易ではないし, 両者が合併している場合もある.筆者らは, APS と 先 天 性 PS 欠 損 症 や AT 欠 損 症 の 合 併 例を何例か経験しており,ループスアンチコア グラントを含めた抗リン脂質抗体の検査と先天 性血栓性素因の検索は,同時に必ず行うべきで ある. 最終的には家族を含めた遺伝子レベルでの検 索が可能であれば,診断は確定する.しかし, 遺伝性疾患であるため患者一人の検査結果がそ の家族に波及することになり,慎重な対応と同 時にカウンセリングなども必要となる.一方で 遺伝子検査の最大のメリットは,家系内におけ る同変異を有する保因者を検索し,血栓症を起 こし易い状況を避けるような生活指導をおこな ったり,血栓予防の対策を事前に講じることが できる点といえよう. 文 献
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