CIM構築における階層構造概念の一考察
法 雲 俊 邑 1 は じ め に CIM(Computer Integrated Manufacturing:コンピュータ統合生産) システムとは,受注,設計,製造,検査,出荷までの一連の生産過程の管理を 一元化し,メカトロニクス技術とコンピュータ技術,ネットワーク技術,を駆 使して自動製造ラインを実現するためのコンピュータ統合生産システムである。 従来までの企業内情報システムは,OAとしA, FAを別々の観点から把握 してそれを開発し構築する傾向にあった。しかし,CIMの概念は,これらの 情報システムを統合し,経営計画,受注・販売計画から,製造過程を経て製品 出荷に至るまでの,全社の情報の流れと物の流れを一体化して管理することが その目標である。 FA(Factory Automation) }ま,プロセス工業などのオートメーション化 という概念よりも,機械工業を中心とする分野において工場全体の自動化を指 して用いる場合が多い。つまり,FAによって,素材から完成品に至るまでの 物の流れと,それに必要な生産情報の流れの一体化を図り,工場全体を一貫し た高度な自動化システムで構成する製造システムであるといえよう。 このような高度な自動化システムの構築には,工場内の各工程に導入されて いる工作機械と,それを制御するコンピュータをネットワークで接続し,情報 の流れと物の流れを同期化し,一体化するCIMが必要・不可欠である。 ここ1∼2年前から,製造業におけるCIMへの関心が急速に高まり,企業 側では,その構築に向けての条件が整備されつつあり,学界でもCIMに関す る論議が活発に行われだした。CIMが注目されだした理由は,つぎのような140 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) 点に起因すると思われる。 (1)FA化のグP一バルな概念だけ・では,抽象的な概念が多すぎて, FAの 実現に向けての具体的な技術が蓄積されにくい。 (2)CAD/CAM(Computer Aided Design:コンピュータ設計支援シス テム/Computer Aided Manufacturing:コンピュータ製造支援システム), CAE/CAT(Computer Aided Engineering:コンピュータ試作・予測支援 システム/Computer Aided Testing:コンピュータ検査支援システム), FMS(F1exible Manufacturing System)などに関する個別的な技術はほぼ 成熟してきたが,これを工場全体のシステムとして統合化する技術が未だ確立 していない。 (3)製造業を取り巻く経済的,社会的,経営環境1が国際化し,産業構造が大 きく変化し,早期FA実現への期待が高まっている。 特に近年,わが国の製造業界を取り巻く経営環境は大きく変化しつつある。 国内人件費の高騰による海外生産の増加,円高の影響,貿易摩擦,国際間取り 引きの増加などから,国際分業化と協調の時代へ入り,その対応策として,高 品質,多品種少量,低コスト,高付加価値な製品を短期間で生産するには,F A化が有力な手段である。 また,わが国の内需拡大策の推進により,国内市場は成熟と飽和の状態に達 している。そして,高度情報化の進展に伴う情報量の増大と,世界規模のコン ピュータネットワークを利用した情報の処理と伝達のスピードアップ化は,ま すます顧客ニーズの多様化と個性化を促進している。このような市場構造の変 化への対応策として,製造業の生き伸びる道は,製品開発サイクルを短期化し, 多品種少量生産による製品を市場へ投入する方策を取らざるを得なくな:ってき ている。 国際企業による国内市場での競争がますます強まる傾向にあり,情報処理技 術の進展,経済環境の変化,市場構造の多様化により,企業側は,生産活動全 体の合理化と効率化,高度情報システムの構築による最適な意思決定の選択と 行動の迅速化,新製品開発の強化と短期化によって対応する必要がある。
製造業を取り巻くこれらの経営環境から,CIM構築への期待が寄せられて いるが,システム規模があまりにも膨大であり,従来のごとき単体の工作機械 を導入するのとは比較にならないほど,費用も期間もかかり,どこから着手す れぽ良いかが全く検討が付かない状態である。先進的企業もCIM導入の計画 を始めたばかりで,その構築方法に関する事例も皆無に等しい。 今後,CIMを構築する企業が,技術交換や機器導入,ソフトウェアの導入, 共通的な論議,などを行う場合,その手掛かりとなるCIMの共通的な枠組み を設定した概念がなけれぽ,それらを行うことが非常に困難なことが予想され る。 本稿では,このような事情を考慮して特に製造関係を中心とするCIM構築 への手掛かりとなる,階層構造的コンピュータネットワークと,CIMを階層 構造的に分割したレベル概念について論じる。 II CIMの形成過程と導入効果
1.CIMの形成過程
生産工場のオートメーション化の歴史は,加工,搬送,マテリアル・ハンド リング(マテハン),組み立て,などの個々の設備の自動化に端を発してきた もので,単能機の自動化に重点が置かれてきた。 旋盤が加工作業ごとに機能分化して,ボール盤,フライス盤中ぐり盤など に発展し,18世紀の産業革命の頃から汎用手動式工作機械として,広く一般の 工場で使用されている。これにメカニカルな自動制御機能が加わって,トラン スファーマシン,紙テープ式NC(Numerical Contro1)工作機械など各種の 専用工作機械を誕生させ,コンベア搬送システムと組み合わせた,大量生産シ ステムが稼動する。 このシステムの量産によるコストダウン効果は,経済活性化に大きな影響を 与えたが,その反面,量産出荷により飽和状態に達した市場へ同一製品を送り 続けたため,ダンピング販売による値崩れを起こし採算が合わなくなる。 また,各工程間の仕掛品,半製品の大量ストックは,経済的損失の大きな要142 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) 因になるという反省から,カンパン方式やMRPシステムによるJIT(ジャス ト・イン・タイム)生産方式が実施されることになる。 この頃,米国のインテル社によって開発されたマイクロプロセッサは,ME (マイクロエレクトロ=クス)革命を引起こす大きな起爆材となり,各種の工作 機械がME化されていった。コンパクトなマイコンを組み込んだCNC(Com− puterized NC),ミニコンによる群管理数値制御を行うDNC(Direct NC), 工具の自動交換を実現したMC(Machinning Center)などの誕生である。 これらの工作機械が,過去の工作機械と大きく異なる点は,リレー式接点や歯 車を用いたメカニカルな自動制御方式から,コンピュータ機能を有した自動制 御方式へと進歩した点である。 また,米国のロッキード社によって開発されたCADAM(Computer Graph− ics Augmented Design and Manufacturing)は, CAD/CAMの第2期 ブームをスタートさせ,LSI製造企業では,設計から製造までの一貫したコ ンビ=一タ支援ンステムを実用化する。特にCADは,当初,自動車の外形デ ザインや航空機の機体デザインに利用されたが,今日では,広く一般の企業で も使用されることになる。 その後,コンピュータ支援の自動製造システムはさらに進展し,CNC, DN C,MC等を組み合わせた自動製造セルの離れ小島(Automation Island) を工程の各所に作り出すとともに,コンベア,ローラ,ロボットなどによる自 動搬送システムの構築,ワーク(工作物)を工作機械に着・脱するマテリア ル・ハンドリングの自動化が実現する。これらの機能を数台の工作機械ととも に統合したFMCが誕生し,さらに,工程全体の自動化製造システムを実現す るためのFMSが実用化されるに至った。 産業用ロボッ1・は,限られた数種類の作業だけを繰り返す固定シーケンスロ ボットから,プログラムの入れ替えによって多様な作業を行う汎用ロボット, マニピュレータの移動だけではなく,触覚,視覚,聴覚,などのセンサー機能 や知能機能を備え,移動作業も可能なニューロ・ロボットが実用化されている。 今日のFMSは,これらの各種の自動工作機械や産業用ロボット,自動搬送
システム,自動倉庫などを中央のコンピュータで制御し,資材の投入から部品 加工の工程,組み立て工程,検査,自動倉庫への納入までを,自動的に行う生 産システムとして定着し普及しつつある。
2.CIMの構成概念と導入効果
CIMは,従来の工場設備のように単体の機械や,数台の自動化マシンを導 入するような単純なものではなく,前記したCAD/CAM, CAE/CAT,ま た,CNC, DNC, MCなどを組み合わせた自動製造セル,さらには,それに 諸設備を接続したFMSをもサブシステムとする概念である。言い換えれば CIMは,コンピュ 一一タネットワークを用いて,工場の様々な自動工作機械や 諸設備を統合して,生産ラインを省力化,自動化するとともに,経営計画や販 売管理をも含む全社的なシステムを構築するのが最終的な目標である。CIMの 構成要素としてのOA, LA, FAの概念と,その概要図を図1に示しておく。 (1)OA:管理情報システム(経営管理,人事管理,生産管理,販売管理, 財務管理,などのOA分野の情報を中心としたもの) (2)LA:設計・技術情報および工程準備情報システム(LA(研究所のOA 化)にともなうR&D関係の各種のシミュレーションや,CAD/CAM, CAE /CAT, FMSなどの工程管理やプnセス管理に関する情報) (3)FA:製造情報システム(製造作業と進捗情報,工作機械や諸設備の制 御情報,検査情報,工場設備全体の管理など) ところで,CIMを構築し,それを利用することによって,どのような効果 が期待できるのかを次に述べてみよう。 (1)CAD/CAM, CAE/CAT, FMSの連携システムによって,設計作 業,製造準備作業,製造作業,を一貫自動化システムとして運用でき,製品開 発期間の短縮生産段取り時間の短縮生産リードタイムの短縮による効果は 大きい。 (2)日程計画に基づくラインバランシング,サイクルタイムが決定すれば, 自動化,省営化によるジャスト・イン・タイム加工が開始でき,資材や仕掛晶, 製品在庫の削減とPットサイズの削減化が図れ,需要中心型の生産活動が展開小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) 144 区溶出e譲一Q 一区 O畠 ×く﹂ 食一券 く○ ロトーい O Qへ 畠○↑ 麟 11t二 厳 ±ltl一 窯く日 園灘匿禄 <∩ 娘隆・圓鞍 ・諮叢・蹄く ︵記鴇講静︶ ∩あ¢ oト ?ュ ョミ 聾謬のき 国ぎ毫ぎぎζ\憲。僅く・昏Q略● ● 国く。 ([ v塗≒蒸占鴨経︶ 二号直霞㍗霊経 氏○ミ ΣくQ の津 Σくミく喝藁。 仙くΣ 誰響Qり≧臨く口 ∩く︵一︶ <目 z<目 OZ 畳佃 QZ 三囲 みら箭ロ OH山 OH氏 O目q Aロ訴ミ<h の≧旺くh 山くΣ OΣh Zく同 の芝h 轡匙理H 臣 のき 罰漕超州 (『 v簸繋H︶ 2く臼象輪 縣望節溢 #蟹。忘課㌍ 賀虚 日ノ ◎ 恥・つ E9装 §二∼マ 粒菩じ 繋曇 。 ︵田謎#嶋︶ 園蝋似州輪トざ邸牧ホミレ 図蓮姻 即題 覇回ミ紘紮や駅塑崔 鰹軽似ル鯉ミ肱駆や鮎 誰選。 重︻轟誰灘・ 重﹁舶選麗鳴 気︵冊らいみ・ 聖王・国在恕︺[・ 電謎・ 課竃・駅霞・ 騨麺・圓粧腿朝・ 器溢・ 廻㍊・ 溶瀞・ ︵遡珊︶翌灘 遡珊麗競 土間駅
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1.CIMの階層モデルの概要
CIMの構築には,コンピュータネットワークと処理業務を,階層別に分け たレベルの概念が必要である。各階層別の概要を次に述べよう。 第1層の工作機械または装置のレベルは,それぞれの機器単位の情報処理で, 加工・組み立て指示情報や使用治工具と経路選択,進捗情報,あるいは試験機 器,自動倉庫,搬送機などの情報を,機器に組み込まれたマイコンが処理する。 たとえば,A/D(アナログ/ディジタル), D/A変換や各種のセンサーによ る計測および自動制御である。 第2層の製造セルとパーソナルワークのレベルは,工程におけるショップ単146 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) 位や工程グループ単位に設置された製造セル単位の情報処理で,加工・組み立 て指示情報や進捗情報の全体調整,工作機械の群管理制御,工程間および工程 全体の物流管理や設備の監視を行うコンピュータとそのネットワークである。 オフィスでは,個人ごとに使用するパソコンやワープロのネットワークである。 第3層の工程・設備管理と業務処理のレベルは,工場における製造セル全体 の管理や諸設備の群管理を行うコンピュータとそのネットワークである。オフ ィスでは,販売・経理などの定常業務の処理を行うコンピュータとそのネット ワークである。 第4層の工場部門,研究所部門,オフィス部門の各レベルは,それぞれの主 要箇所に配置された中規模クラスのコンピュータを部門毎に統合するネットワ ークである。工場・研究所部門では,生産計画,設計・技術,工程管理などの 情報処理を行う,数台のエンジニアリング主体のAI型コンピュータとそのネ ットワークである。オフィス部門では,経営計画,財務,生産,販売などの管 理と,意思決定や計画立案を支援するAI型コンピュータとそのネットワーク である。 第5層の企業全体のレベルは,大規模のコンピュータを用い,社内全体の情 報システムを統括するとともに,社外のVANなどのネットワークにも接続さ れる超ホスト的情報システムである。 ところで,CIMの構築には,自動工作機械のシステム間相互接続技術やL AN技術を応用したコンピュータネットワーク技術が不可欠である。 アメリカのGM社は,各種・各メーカー一の自動工作機械を離れ小島状(自動 製造セル)に導入してきたが,これを統合するた1め’のMAP(Manufactur− ing Automation Protocol:工場自動化用通信プロトコル)を提案し, ISO 規格のOSI(Open System Interconnection:開放型システム間相互接続) モデルとして実用化しつつある。また,BCS(Boeing Computer Systems) 社は,TOP(Technical&Othtce Profoco1)を提案し,オフィス用コンピ ュータの通信プロトコルも標準化されつつある。 ワークステーションとしてのパソコンは,16ビットのCPUから32ビットの
CPUへ移行しつつあり,メインメモリも4Mb以上を標準装備する機種が増 えてきた。また,数社のメーカだけではあるが,OSIやMAPのボードを装 着できるコンピュータを出荷する計画を立てている。このような情報機器や情 報通信の規格・標準化に加え,ハードウェアのコスト・パフォーマンスの向上 は,CIMの構築と実用化に大きな可能性を与えるものである。 2.第1層目ベルのネットワーク機能 第1層の対象は,各所に配置されている工作機械単位やパソコン単位のレベ ルである。LANを構築するために必要なコンピュータ間の互換性の問題と, 各機器単位のデータ処理の問題がこのレベルで取り扱われる。管理サイクルは, 数マイクロ秒から数分間単位に情報の伝達が行われる。第1年頃ベルの概念図 は,図2の通りである。 各種の工作機械に組み込まれたコンピュータや,LA分野のワークステーシ ョン,OA分野のパソコンなどは, OSIに準処したMAP, TOPの仕様に基 づくインタフェースが組み込み型のボードとして準備されつつある。 各機器単位のデータ処理の問題は,マルチタスクのOSが標準装備されてお り,LANに接続できる条件の整っていることが前提となる。データ処理の内 容については,OA分野は特に問題ないが, LA分野とFA分野の接点にある 機器や,FA分野の各種の工作機械およびそれに関係する装置には多様なもの が多く,特に互換性と拡張性の観点から留意する必要がある。 これらの若干の技術について述べておこう。 工作機械や各種の装置は,主として計測と自動制御を中心とする技術である。 それは,工作物を加工・組み立てする技術,工具の動作と取り換え・経路に関 する技術,工作物のハンドリングと運搬経路に関する技術,作業順序に関する 技術である。 たとえば,旋盤は,工作物に回転運動を与えるとともに,工具(バイト)に も送り運動と切り込み運動を与え,円筒内外面や図面などを切削する機械であ る。また,ボール盤は,工作物を静止させ,工具(ドリル)に回転運動と直接 送り運動を与え,穴あけなどの加工をする機械である。これらの工作機械や機
148 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) 器製品の制御には,マイコンを組み込んでディジタル式の処理を行う,つぎの ようなメカトロニクス技術によって自動化されている。 NC工作機械は,旋盤部, NC制御部,汎用シーケソサと呼ばれるPC(Pro・ gammabl Contro1)部によって構成されている。汎用シーケンサは,制御の 内容をプPグラムの形でメモリーに記憶し,それを順次,読み出して実行する。 そのプPグラムは,APTなどの言語を用いて製作図面から切削条件(主軸回 転数や送り速度),加工条件(寸法,工具,工具経路など),部品形状などを記 述したもが作られる。NC制御部は,操作盤,表示部,を備えるコンピュータ の中枢部であり,ここから各種のコントロールが行われる。たとえぽ,機械の 動作過程で生起した情報は,位置,温度,速度,圧力,流量などの種々の物理 量(アナPグ信号)が,センサーで感知される。センサーは,機械動作に関す る量を検出し,そのデータをアナログ信号からディジタル信号に(A/D)変 換して,マイコンの入力ポーbへ送る。 マイコンのでは,このデータをプログラムにより,条件に応じて計算処理し, その結果(パルスモータの回転数やバルブの開閉信号など)をディジタルコード の形で出力ポートへ送る。出力ポートから出た制御パルス信号は,(D/A)変換 して,電圧,油圧,空気圧などの形で各種のアクチュエータに伝達する。駆動部 は,アクチュエータが受けた制御量をサーボ機構のモータにより機械に働きか けてコントロールできるだけの動力に増幅し,それで機械を制御するのである。 ところで,NC工作機械には,工具回転の起動・停止,冷却油の流入・停止, 工具交換機構の自動制御,等々,切削・加工動作に付帯するさまざまなON・ OFF制御が必要であり,これらの情報が設計図面からすべてプPグラムとし て与えられねばならない。これが,後に述べるCAMの役割になる。 工作機械の自動制御のための主要な機能は,計測制御,工具管理,適応制御, 自己診断,油滴セル(Cell:細胞)の構成などで実現される。 計測制御は,加工済のワークにプローブ(測定端子)と呼ばれる端子を触れ させて,その加工精度を測定すると共に,工具の自動補正と交換を行うもので ある。自動運転しているNCには,ワークをロボットやローダ・アンローダ,
コンベアなどで自動供給するのが普通であるが,つぎつぎと無人で加工される。 ワークは,工具の磨耗などにより誤差が生じ,寸法精度が一定に保てなくなる。 このため,一定サイクルで計測を行い,工具の位置を自動補正するとともに, 計測した精度データを記憶装置に転送・蓄積する。 測定には,プP一ブが用いられ,加工物や工具のさまざまな状態測定が行わ れる。たとえば,プローブの動きをあらかじめプログラムすることにより,次 々とプローブを当てて行くだけで,複雑な立体形状のワーク(測定対象物)の 寸法を簡単に測定する三次元測定がある。また,ワークや測定作業の内容が変 われば,測定に適したプローブを自動交換する機構も実用化されている。つま り,このような装置がMCに付いておれぽ,加工品は同一品である必要はなく, 加工物の識別装置からの識別信号を受けて,記憶装置内にある対応するプログ ラムを取り出して,その命令手順に従って工具を選択し,加工を行う。 適応制御は,ワークの加工始めや工具の自動補正と交換時に,工具を破損さ せないように,主軸モータやサーボモータの回転速度を状況に応じて変化させ, 最:適化を図るものである。また,自己診断機能は,制御基盤,各種のイソタフ =一ス,コンピュータなどのIC部品をはじめ,モータや工具のハード部分な どのNC構成要素の信頼性と安全性を高めるために,障害や異状がないかをチ ニックする機構である。 MCは,「工作物の取り付け交換なしに2面以上について,それぞれ多種類 の加工を施す数値制御工作機械,工具の自動交換機能または自動選択機能を備 える」 (JIS)もので,多種類の加工を他面的に行う機械である。前記のNC 工作機械は,穴あけ,切削,フライス削りのように,限られた切削加工しかし ないが,MCは,自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)を 取り付けて,加工・工作の種類に応じて工具の選択・交換から,切削加工まで を自動的に行い,APC(Automatic Pallet Changer)を装備した,多機能 型のNC工作機械である。 製造機械のオートメーション化の始まりは,小品種の部品を大量に加工する 自動化技術の実用化からであった。たとえば,トランスファーマシン,専用自
150 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) 第1層 LANノード 第2層 LAN FA ソール O各種の工 作機械 Oロボノト 車体 。監視器貝 。搬送器量 など ISOtAtL= OSIモデル に4処 MAP ×/ TOP fMk 仕様 TOP MAP 仕徳 OA ツール Oパソコン Qワープロ Oオフコン OFAX Q電話 など FA O工作機械 LAN O搬送装置 LAN o監視苫理 機構LAN Oロボソト など マルチメディア PBX型 課 ネノトワーク 単位 のLAN工程単 による盾報 位のLAN ネソトワークによる・情報 OZZ:]:メー,レ ネソトワ Oパソコン ーク 彫翻1通儒 単位よたは,o電話 CAD,CAMなど 会譲 の業務ごとのLAN による帖報不ソトワーク ソール LA早瀬アリング’ワークステHション Q試験機帳など OA Oパソコン LAN Oワープロ LAN など 図2 第1層の概要 OワークステーシgンLAN LA O宍験’試験機器LANなど 図3 第2層の概要 第3層 LAN 入工知能による業務・ 作業支援型不ソ FMs トワーク 業務 を榊」k 部単位 するLAI の不ソト 搬迂.加工. ワーク人寡齢 塗装.瓢L立. 財務’購買。 桝L. 販売など 倉IAIL 一貫し の笈理業 務 た研究・開 発単位のLAN またはCADとCAM の夢合によるLへN巻ど 第4層 LAN FA Oミニコン LAN o群F貸理 コンビ」 一瓢 LAN OA O中型また はオフコ ンのLAN Oパソコン 群のLAN Oワープロ 舞のLAN O一閲した研洗・閃発jil位のLAN LA oミニコンLAN OワークステーシNン11FのLAN FA FMSに各 種の管理・ 監視二どの 諸設燭を減 合する工場 全体のLAN 意志決定支援型 生 ネノトワーク . 心二管 経 理,生 冨計 心二丁画, 画,DSS, 製造管理を 督]Tl理 統合した受 各巨噛し門真 }コ:から出 f彪を統合し 荷よでの た”Ltソト 不ット ワーク ワー 研究・聞ヲ芒・ ク 設計・製造玄援を 統合した・,一ノトワーク OA 業務部単位 のLANを 統’合する オフィス全 体のLAN 図4 第3層の概要 基礎研究,応用研究,閉発研究を統合する LA ラホ全体のLAN 図5 第4層の概要 第5暦 LAN FA カ庄管理 O製造機能 射/統合LAN+ @ 拡域ネソト @ ワーク 金融, 涛メ蝋 など 弔許, 扱術7新製 品情服など OA 囓搦ハ;務機 ¥ 図6第5層の概要
動機械などである。上記のように工作機械は,生産能率を向上させるために一 種の部品を大量に加工する専用自動機から,生産のフレキシビリティを重視し た多品種の部品を少量ずつ加工する汎用自動機に,その重点が移行しつつある。 以上のように工作機械の自動化技術は複雑で,メーカ毎に多様な自動化方法 を取っている。このため,多数の工作機械を配置して一貫した作業を行うCI Mの場合は,第1層のレベルで,特に互換性,拡張性の面からみた標準化に留 意する必要がある。 IV.5階層モデルとネットワークの関係 1.第2層とネットワーク機能 第2層は,LANのノードをネットワーク化する技術のレベルを対象とする。
OA分野では,パソコンやFAXなどに関する課単位のLANの構築レベルで
ある。LA分野では,ワークステーションをCADやCAEの単位で結ぶLA
Nの構築レベルである。FA分野では,個別単位の工作機械を,ショップ単位 や工程グループ単位にネットワーク化して,自動製造セルを形成するレベルで ある。管理サイクルは,数ミリ秒から数時間の単位で行われる。 第2層に属するシステムとして,自動搬送装置,DNC,製造セル,中央の コンピュータと接続された産業用ロボット,CAD/CAMなどをあげることが できる。 まず,自動搬送装置には,パレットループライン,自動モノレールシステム, パレット搬送台車,ロボットなどが使われる。たとえば,パレットループライ ンは,複数のパレットがワークを乗せた状態で,次々と移動するように作られ ており,パレットチェンジャを介して工作機械に供給される。また,パレット 搬送台車は,自動倉庫などにある部品をパレットに乗せて工作機械まで運ぶ役 割を果たす。 また,DNCは,単体のNC能力以上に,生産量の拡大を図る観点から,一 台のホストコンピュータに複数台のNCを接続したものである。ホストコンピ ュータからは,それぞれのNCが必要とする切削・加工の作業虚報やパートプ152 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) Pグラムを供給する。つまりNCプPグラムを共通の記憶装置に内蔵して,集 中的に各NC機械を制御するものである。このシステムでは,製造のスケジュ ーリングや実績集計なども行える。 加工セル・組み立てセルは,ホストコンピュータに各種のNC工作機械やロ ボットおよびATC,自動搬送装置などを組み合わせて,ジョブ・ショップ単 位や工程グループ単位の生産を自動的に行う。いわゆる,自動化セルの離れ小 島といわれ,一つのまとまった作業をこなす自動製造システムであり,無人で 長時間運転が出来る生産の高いシステムである。 製造セルの型を分類すれば,つぎのような組み合わせが考えられる。 機器構成からの製造セルの分類は,(1)CNCセル型(CNC数台またはDNC を組み合わせ,その間に搬送システムを接続して,流れ作業を自動的に行うシ ステム), (2)MCセル型(MC数台に搬送システムを取り付けたシステムであ る。MCは,ドラム状に数十本の工具がセットされ,治工具が作業内容に応じ て自動的に交換され,加工処理ができる複合加工機で,加工物の自動脱着機能 を有する機種もある),(3)CNC・MC混合セル型(CNCとMCを混合して組 み合わせ,その間に搬送システムを接続して,流れ作業を自動的に行うシステ ム)などである。 また,ライン編成からは,直線型,ループ型,ランダム型,ロボット型に製 造セルの分類をすることができる。 産業用ロボットは,プログラマブルな機械として構成されており,その特徴 の一つに汎用性をあげることができる。ロボットに作業を教え込むことを,プ Pグラミソグと呼び,そのプPグラムを入れ替えれば,さまざまな作業を実行 させることができる。その方法には3つのアプローチがある。 すなわち,ティーチングプレイバック方式は,ロボットを動かしながら各間 接のデータを読み取って記憶させる。作成したデータの系列を順序よく与えて 動作させる方式である。マニピュレータ方式は,CADで設計した製品のデー タを用いてロボットの動くべき位置と姿勢を計算し,教示データを自動的に生 成する方式である。ロボット言語方式は,記号を用いてロボットの動作を記述
していく方法である。ロボット言語とデータベースを組み合わせれば,同一の プログラムで,形状の異なるものを加工することや,異なった部品の組み立て 作業を行うこともできる。Pポットに高度の汎用性を持たせるうえで,今後の 発展が最も期待される。 このように,第2層は,単体で作業をする機器を他の機器と接続して,課単 位やショップ単位にネットワークを形成するレベルである。このレベルで留意 すべき事項は,単体の機器をどのLANに接続するかである。いくつかの課単 位や工程グループ単位のLANが形成されるので,その接続先を誤ると上位の ネットワークの形成にまで多大な影響を及ぼすことになる。 将来の上位ネットワークの拡張:方向,作業内容との関連,工場レイアウトな どを十分に考慮する必要があるが,工場計画や経営ポリシーにまで波及する問 題であり,慎重なネットワーク設計を考えねばな:らない。 2.第3層とネットワークの関係 第3層は,ショップ単位のLANを工程全体のLANに統合するレベルであ る。OA分野では,課単位のパソコンLANを各業務処理毎に統合し,部単位 のLANを構築するレベルである。 LA分野では, CAD/CAM, CAE/CA Tあるいは,研究分野や開発部署の単位に,関連のあるネットワークを構築す るレベルである。 FA分野では,工程全体の管理および諸設備管理のレベルである。それは, いくつかの製造セルや諸設備を統合して群管理を行うためのコンピュータのネ ットワークとなる。製造関係のネットワークでは,FMSがこのレベルに属す る。管理サイクルは,数時間から数日単位の情報伝達が行われる。 FMSは,各種の工作機械,産業用ロボットなどをベースにして高度に自動 化した設備を配置し,コンピュータと接続することによって,同一ラインで部 品形態の変化や製造品種の多様さに柔軟に対処できるようにした多品種少量生 産システムのことである。このシステムは多品種少量生産という,フレキシビ リティに特徴がある。 FMSを構成する製造セルの基本的な形態は,ショップ単位や工程グループ
154 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) 単位に,ワーク(被加工物)を供給する自動搬送システム,ワークの自動装着・ 脱着装置(ロボットやAPCを利用),ターン・デーブル自動装置,産業用ロ ボット,自動保守・点検システム,これらを運用するコンピュータのハード・ ソフト,全体を管理する中央管理システム,などの要素を組み合わせて,流れ 作業を自動化して連続加工が出来るように構築したシステムである。この製造 セルをいくつか連続して組み合わせ,セル問を自動搬送システムで結び,系統 的に生産工程を制御し,生産の高度な自動化を図る無人化に近いコンピュータ 主導型のシステムがFMSである。 さらには,事前に計画された工程計画に従って,加工機械の選択,作業の優 先順位,加工順序,加工時間,待ち時間,運転時間などがコンピュータで制御 されるものである。また,作業の進捗管理や,割り込み・加工優先順位による 加工スケジュールがフレキシブルに変更可能な機能も持つことになる。 CADは,設計作業にコンピュータを用いて,設計老がディスプレイ上の画 面を見ながら,対話形式で設計業務を効率的に行おうとするシステムである。 その導入目的は,製品の品質向上と安定,設計作業の省力化,設計者の単純作 業からの開放,設計期間の短縮標準化の促進,製品の多種多様化への対応, デザイン思想の一元化,設計と生産の一貫システム化を実現することである。 CAMは, CADで出来あがつた設計情報とその図面のデータに基づいて, 自動的に物を加工できるようにした,設計から生産までの自動化を図るシステ ムである。つまり,CAMは, CADと不可分の連続したプロセスとしてとら えることが本来的で,その内容は,設計工程準備段階での加工手順決定,機械 の選択,素材の設計などと,作業技術決定段階での,加工物の固定法,切削様 式と順序,工具選択,工具経路の決定などを中心とした,生産準備から製造に 至る過程の合理化と効率化である。 CAE蔓は,機器の概念設計の段階において,機能や構造を決定し,そのモデ ルをコンピュータ内に作りあげ,シミュレートすることによってその機械の特 性や性能を評価するシステムである。CATは,加工・組み立てによって出来 上がった製品を,各種のセンサーを使って形状や強度,耐久性などの性能特性
を検査するシステムである。 このように,第3層は,オフィス部門の業務部単位の処理,設計・開発部門 のCAD/CAMのように関連する業務単位,工場部門の工程全体の単位毎にネ ットワークを形成するレベルである。 このレベルで留意すべき事項は,中型クラスのコンピュータまたは,群管理 制御クラスのコンピュ・’一タをどのLANに接続するかが問題になる。いくつか の部単位やライン全体のLANが形成されるので,その接続をいかにうまくグ ループ化するかがこのレベルを構築するポイントになる。 ネットワーク設計の一つの手掛かりとして,上下関係の接続はほぼ自動的に 決定されるが,業務部単位やライン全体をどのようにグループ化するかという 横関係の情報伝達が最も重視されねばならない。また,実際の情報処理作業は, このクラスのコンピュータに最も負担がかかる場合が多い。 将来の上位ネットワークの拡張方向,作業内容との関連,などを十分に考慮 するとともに,工場計画や経営ポリシーに合致したネットワークを計画しなけ 矛しぼならない。 3.第4層とネットワークの関係 第4層は,工場部門と設計・開発部門,オフィス部門の主要な箇所に配置さ れたコンピュ・一一タを,それぞれの部門単位に統合するためのネットワークレベ ルである。管理サイクルは,数日から数週間の単位で行われる。 オフィス部門は,業務部単位のLANを事務部門全体のLANとして統合す るレベルである。DSS(Decision SupPort System),経営管理,人事管理, 販売管理,財務管理などのOA分野の情報システムを統合し,事務部門全体の 情報を有機的に結び付けるものである。 工場部門では,生産管理,生産計画,工程管理,などの情報システムと製造 ラインごとの制御用コンピュータや諸設備管理用のコンピュータを統合し,工 場全体のLANを構築するレベルである。
設計・技術部門は,LAの情報システムとCAD/CAM, CAE/CATなど
のコンピュータを統合した,研究開発作業全体のLANの構築になる。156 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) この第4層のネットワークの特微は,AIに関する情報システムや膨大なデ ータベースを取り扱う点にある。特に,マルチメディアの情報が多く取り扱わ れることから,機器やLA:Nの構成にも種々の工夫を必要とする。 今ここで,工場部門における最先端技術の事例を一つあげておこう。 (注) CAPS自動プログラミングでは,つぎのような順序で設計から製造までを自 動化している。 (1)仕上げ形状の図形定義一→グラフィックカーソル使用のドローイング方式 により,図面の寸法にとらわれず,複雑な仕上げ形状であってもイメージ的に 入力し,図形を定義する。 (2)図形寸法の定義一→直線,円弧などの図形を構成する各要素の識別はCA PSが行い,カーソルが点滅する必要な箇所へ寸法を入力すれば,仕上げ図面 が完成する。 (3)素材形状のパターン作成一→仕上げ形状のデータから素材形状を半自動で 作成する。それは,丸尽,均一聖代を含む6種のメニューから近似パターンを 選択し,形状を定義する。鋳造や鍛造の抜き勾配と角度を指定して素材形状の パターンを仕上げる。 (4)加工方法とツールの選択一→外形,内形の荒加工や仕上げ加工,ミゾ,ネ ジ,タップ,ドリルなどを,CRTのメニューから選択する。端面,外経複合 パターンや,段差のある位置でのミゾ入れ加工などの,高度なNCプPグラム を容易に作成する。 (5)加工工程の編集一→加工工程一覧表に,加工工具と加工パターンが表示さ れ,一回の工程作成で,最大24工程までの工順を決定する。この画面により, 加工順序の変更,工程の消去・挿入などの編集を行う。一覧表には,タレット インデックス用のX,Z軸ごとの戻り位置,最:高回転数クランプ出力, X軸反 転出力などの設定項目もある。 (6)コンパイルー→入力した形状データと加工データに基づいて,自動的にN 注CAPS(Computer Auto Programming System)は,㈱森精機製作所が開発し た工作機械用の自動プログラミングである。
(1)仕上げ形状の図形定義 (3)素形状のパタン作成 (4)加工方法とツールの選択 (7)シミュレーション (5)加工工程の編集 (8)加工作業 写真提供 ㈱森精機製作所
158 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) Cプログラムを生成し,コンパイルする。 ⑦ シミュレーションー→作成したNCプログラムにより, CRTで動画によ るシミ=レーションを実行し,加工状態をチェックする。工具軌跡を描画チェ ック機能によって確認するとともに,ツールレイアウトや干渉チェックも行う。, (8)加工作業一→チェック済のNCプログラムを直接,各種のNC装置に転送 し,加工作業を実施する。ツールの位置決めは,専用ツールプリセッタによっ て刃先位置を測定し,そのデータに基づきプログラムで計算する。 設計図面の作成から製造までを,以上のようなシステムで自動化して,FMS の各種の工作機械を稼動させている。また,このような種類のシステムを組み 合おせて,自動倉庫から資材を自動搬送車が運び,加工・組み立てを行い,完. 成製品を自動搬送車が再び自動倉庫へ運ぶごとき,無人化工場を実現している. 企業も出現している。 このように,第4層では,生産管理,生産計画工程管理,などの情報シス テムと製造ラインごとの制御用コンピュータや諸設備管理用のコンピュータを 統合し,工場全体のLANを構築するレベルである。このレドルでは,メディ アの違いやデータ伝送方法の違うものが混在し,ネットワーク構築にはさまざ まな面に留意する必要がある。 4.第5層とネットワークの関係 第5層の企業全体のレベルは,大規模のコンピュータを用い,社内全体の情 報システムを統括するとともに,社外のVANなどのネットワークにも接続さ れる超ホスト的コンピュータによる情報システムである。 管理情報システムとしての経営管理,人事管理,財務管理,購売管理,販売 管理,などのOA分野を中心とするネットワーク化された情報システムを, F AおよびLA分野の情報システムに,有機的に結び付けるものである。また, 工場部門におけ’る生産情報システムは,生産管理,生産計画,工程管理,製造 情報などのFA分野の情報システムに, OAおよびLA分野の情報を有機的に 結び付けるものである。設計・技術管理情報システムでは,特許・技術情報の ほか,基礎・応用・実用に関する研究・開発情報,などのしA分野全体の情報
と,OAおよびFA分野の情報を有機的に結び付けるものである。 特に,需要予測,経営計画,各種の意思決定や計画立案を支援する情報シス テムが,この第5層レベルのネットワークで取り扱われる。しかしながら,本 社の管理部門,研究・開発部門,工場部門,営業所などの各機関は同一地域に 集合していないのが通常である。CIM構築に向けて,本社機能と研究・開発 部門,工場部門などを同一地域に統合する企業も出始めているが,多くの企業 ・は,そこまでに至っていない。 企業の各機関が各地域に散在している場合は,専用回線で結んだ企業情報ネ ットワークを構築する必要がある。この場合,従来の数値情報の送受信には何 ら問題はないが,マルチメディア情報の送受信は情報量が膨大になるため,そ の実現にはISDNの技術が必要となる。 また,社外のVANなどのネットワークへの接続により,取り引き先との受 注・仕入れ情報,市場情報,金融・経済情報,特許・技術情報など,社外の経 営環境を取り巻く各種の情報が送受信される。 V CIM実現に向けての課題 今後,オフ4スのワーカー1人に対し,1∼1.5台の割合でコンピュータ機 器類が使用され,工場のオートメーション化には大量の制御用パソコンが必要 になる。全社的に見た場合,そのコンピュータ機器類の設置台数は,現状の数 倍に達することが予想される。 そして,これらのコンピュータを有効に活用した経営活動を行うには,CIM の概念を導入した,コンピュ 一一タネットワークを構築することが望ましい。 コンピュータは,ネットワーク化して,ハード・ソフトの資源を共有化し効 率的に利用する方が,経済性,便益性などの面から,単体として利用する以上 に,はるかに大きな効果が期待できる。また,ネットワーク化による分散処理 は,集中化に伴うオーバーヘッドの回避や,危険の分散,レスポンスタイムの 向上など,いくつかの利点が予想できる。 そして,実務的な面からは,前記したCIMの利用効果以外に,(1)事務処理
160 小倉榮一郎教授退官記念論文集(第255・256号) と業務処理の正確性,迅速化,省力化,(2)情報の有効利用と情報を武器にした 経営活動の展開,(3)経営戦略の早期計画化と早期実現および市場への柔軟な対 応,(4)他企業との連携の強化,などの利点をあげることができる。 しかしながら,何でもネットワークに結び付ければよいというものではない。、 たとえぽ,ここで述べた5階層のLANをすべて同じレベルの一つのネットワ ークで実現したら,膨大なデータベースをアクセスするのが困難になる,タ ン’アラウンド・タイムが遅くなる,回線が麻痺する,機密の漏洩と危険性の 回避が困難になる,システムの信頼度が上げにくい,など,さまざまな悪影響 が起こることは日を見るより明らかである。 したがって,社内の各部門に置かれている多数のコンピュータ機器類を統合 し,全社的なネットワークを構築しようとする場合には,本稿で提案してきた ような第1層から第5層までの階層構造の概念を導入した構築技術が不可欠に なってくる。つまり,上記で述べたコンピュータネットワークの関係は,縦の 企業組織と命令系統を関係付ける縦型ネットワークの概念と,横の業務処理ま たは製造作業を関係付ける水平型ネットワークの概念を統合するものである。 CIMの構i築には,システム間相互接続技術やLAN技術を応用したコンピ ュータネットワークと企業組織や処理業務を有機的に結び付けて,階層別に分 けたレベルのLANを統合するという概念が必要である。 1 参 考 文 献 法雲俊邑著,企業情報システムー高度情報化の展開とその対応一,1987,杉山 書店。 2. MAP Specification−V. 2. IA & 2. 2; General moters, 1986. 3. General moters, Manufacturing Automation Protocol−A Communication
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Network Protocol for Open Systems lnterconnection−Version 3.0, 1987. 法雲紀州稿,パソコンLANの開発とCAIへの応用,彦根論業第250号,1988。 通商産業省編,コンピュータネットワーク,1987,政府刑行会。 大特集:ネットワークアーキテクチャ(開放型システム問相互接続)の標準化動向,nt 情報処理,VoL 26, No.4,1985. 7.富士通ジャーナル,No.156,1988。8. John K. Krouse, ComputerdAided Design and Computer−Aided Manufactur−
ing, Marcel Dekker, lnc., 1982.
謝辞本稿の作成にあたって,㈱森精機製作所から写真,資料等の提供を賜わった。 ご好意に厚く感謝したい。