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アメリカ独禁法における消費者救済制度

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アメ リカ独禁法 における消費者救済制度

I 問 題 関 心 アメ リカ独禁法 における民事的救済制度 については,次 のような問題関心 に 1 ) 端 を発 して,精 力的な紹介 ・検討が行 われて きた。アメリカにおいては私人に よる訴訟提起が活発 に行 われてお り,現 にそれを通 じて私人は救済 され,違 反 は抑止 されている。それに対 してわが国においては,私 人による訴訟提起 は活 発ではな く, したが って私人が救済 された り違反が抑止 された りすることはあ ま り期待で きない。そこで,わ が国において も,ア メリカ法か ら示唆 を得 るこ とによって,私 人による訴訟提起が活発化 し,私 人の救済 とともに違反の抑止 が図 られる制度 を構築する必要がある。 しか し,ア メリカにおいて も事業者が提起する訴訟 はともか くとして,消 費 者 自身が提起する訴訟 はそれほ ど多 くはな く,消 費者救済はむ しろ,行 政機関 が関与することによつて実現 される面が大 きい。本稿ではこの ことを再確認す 2 ) るとともに,消 費者救済の具体的様相 を明 らかにする。 1)例 えば,田 中英夫 「二倍 。三倍賠償 と最低賠償額 の法定(1)一― 『法の実現 における私 人の役割』補説 そ の 1-一 」法学協会雑誌89巻10号51,73-99頁 (1972年),布 村勇二 「反 トラス ト法 と三倍額賠償請求訴訟 (序説)」公正取引283号2頁 (1974年),同 「反 ト ラス ト法 と三倍額賠償請求訴訟一一訴訟提起一一」公正取引290号18頁 (1974年),根 岸哲 「反 トラス ト法上 の三倍額損害賠償制度」 山木戸克己教授遺暦記念 「実体法 と手続法の交 錯 (上)』145頁 (1974年),谷 原修 身 『独 占禁止法 と消費者訴訟』 (1983年),同 『独 占禁 止法の史的展 開論』296-327頁 (1997年)を 初め とする同教授 の一連の論文 (後掲 (注12) な ど),松 下満雄 『アメ リカ独 占禁止法』393-426頁 (1982年)。 2)し たが って,連 邦政府 (司法省)が 提起す る民事訴訟 については,触 れない。 また,事 業者が提起す る訴訟 については,消 費者 自身が提起す る訴訟 との関わ りで簡単 に触れるに とどまる。 作 耕 田 内

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働 叙述 は,以 下の順序 による。 まず,本 題 に入 る前 に,や や紙幅 を取 るがアメ リカ独禁法の施行,私 訴 (州司法長官以外の私人が提起する訴訟)に ついて概 観す る。その後,本 題 に入 り,消 費者 自身が提起する訴訟が私訴 において どの ような位置 を占めるのか,明 らかにする。続いて,父 権訴訟制度,連 邦取引委 員会の消費者救済制度 を取 り上げ,消 費者救済が行政機関の関与 によって実現 されている現状 を明 らかにする。そ して最後 に,ま とめをするとともに,日 本 法への示唆 について考 える。 なお,本 稿の検討 は個 々の論点 には立 ち入 らない。 また,叙 述は概括的であ る。それは,本 稿の 目的が,消 費者救済 を実現するとともに違反抑止 に資する 制度のあ り方 を模索す る とい う,制 度論の展 開にあることによる。 エ ア メ リカ独禁法の施行 アメ リカ独禁法,施 行機関,施 行手段の順 に概要 を述べ る。 1.ア メ リカ独禁法 アメリカ独禁法 には連邦法 と州法 とがある。以下,連 邦法 に限定 し,か つ本 稿 の 目的に必要 な範囲で,そ の概要 を述べ る。 4 ) (1)構 成 連 邦の独禁法は,次 の3つ の柱からなる。①シャーマン法 (1890 年),② クレイ トン法 (1914年),③ 連邦取引委員会法 (1914年)。クレイ トン 法はシャーマン法違反を未然に防止するために,連 邦取引委員会法はシヤーマ ン法,ク レイ トン法違反を萌芽のうちに摘み取るために,制 定された。その後, クレイ トン法はロビンソン ・パ ットマン法 (1936年),セ ラー ・キーフォーバー 法 (1950年)に より,連 邦取引委員会法はホイラー ・リー修正法 (1938年)に より,実 体規定に変更が加えられた。 (2)禁 止行為 シ ャーマン法においては,取 引制限(1条),独 占行為(2条) 3)な お,本 稿 は,「経済活動法 リス トラ研究会」 (1995年10月∼1996年7月 )の 「報告書」 (三菱総合研 究所 1997年 )の 分担箇所 (「アメ リカ独禁法 における民事的救済制度の展 開一一 消費者救 済制度 に限定 して一―」)を 書 き改 めた ものであ り,研 究会,会 員の活発 な議論 に負 うところが大 きい。記 して感謝の意 を表す る。 4)他 に,修 正法,補 完法が多数ある。

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が禁止 されている。 クレイ トン法 においては,価 格差別(2条 ),抱 き合わせ, 排他条件付取引(3条 ),合 併 ,株 式 ・資産の取得(7条 ),役 員の兼任(8条 )が禁 止 されてい る。連邦取引委員会法においては,不 公正 な競争方法,不 公 正な行 為 P 慣行 , 欺 臨的な行為 娯 釈 5 籍 が 尋 上 謎 号と ピ桂命 としていば七①競争 (3)使 命 ア メリカ独禁法 は,今 日 維持,② 消費者保護。このうちす競争維持に関 しては,シ ヤーマン法,ク レイ トン法,連 邦取引委員会法 (とくに不公正な競争方法の禁止)が 問題になり, 消費者保護に関 しては,連 邦取引委員会法 (不公正な行為・慣行,欺 硫的な行 為 ・慣行の禁止)が 問題になる。 “)違 反行為類型 と独禁法の適用関係 競 争維持に関しては,シ ヤ マ ン

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る とき,裁 判所 は きわめて広い解釈 を いて反競争的 とされる行為だけでな く,反 競争的な 『性向』をもつ活動のほか,

通常ほとんどの連邦反 トラス ト法

の対象とされるすべての活動を対象とし

てい

る。

他方,消 費者保護に関しては,連 邦取

引委員会法が適用されるが,近 年,次

のような行為が問題にされるようにな

つた七広告慣行の関連では,食 品

・栄養

広告,「900」

電話番号 (わが国のダイヤルぱ),環境主張

。サービス産業慣行の

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関連では,投 資商品 ・サービスの販売 における不実表示。マーケテイング慣行 の関連では,消 費者商品 ・サービスの詐欺的テレマーケテイング。クレジッ ト 慣行 の関連では,信 用報告のプライバ シー,信 用への平等 なアクセス,公 正な 取立慣行 ,真 実の貸付慣行。 2.施 行機関 アメ リカ独禁法の施行機関には,司 法省,連 邦取引委員会,私 人がある。本 稿 では,私 人 とは,事 業者,消 費者,父 権者 としての州司法長官 などの連邦政 D 府以外 の もの を総称す る もの として用 いる。 独禁法 と施行機関 との関係 は,次 の ようである。シャーマ ン法の主たる施行 機 関は司法省 であ り,私 人 も施行機関 となる。 クレイ トン法の主たる施行機関 は司法省 と連邦取引委員会であ り,私 人 も施行機関 とな り得 る。連邦取引委員 会法の施行機関は連邦取引委員会であ り,私 人は施行機関 とな り得 ない。その 詳細 は,表 の通 りである。 表 ア メ リカ独禁法 と施行機 関 ・施行手段 ア メ リ カ 独 禁 法 シャーマ ン法 ク レイ トン法 連邦取引委員会法 施 行 機 関 司 法 省 刑事訴訟(§1,2) 衝平法上の訴訟(S4) 三倍額損害賠償訴訟 (クレイ トン法 §4 Al

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刑 パ 衛 三 × 委 員 会 連 邦 取 引 × 一般に審判手続(§11) 一般に審判手続(§5) 私 人 事 業 者 ・消 費 者 衝平法上の訴訟 (クレイ トン法 S16) 三倍額損害賠償訴訟 (クレイ トン法 §4) 衝平法上の訴訟( §1 6 ) 三倍額損害賠償訴訟 ( §4 ) × 州 司 法 長 官 衝平法上の訴訟 (規定 な し) 三倍額損害賠償訴訟 (クレイ トン法 S4C) × × 〔出典〕伊従寛 (編)『日本企業と外国独禁法』14頁 (1986年)に 依拠 しているが,大 幅な変 更を加えている。 8)マ ッ ト・前掲 (注5)147,191-92頁 参照。なお,私 人の概念は,立 場 によって異な る。例えば,中 藤力 「アメリカの反 トラス ト法運用の現状 と日本への影響」自由と正義45 巻 4号 23,26-27頁 (1994年)は ,州 司法長官を私人から除外 し,政 府機関として司法省, 連邦取引委員会 と同列に位置づける。他方,石 田英遠 『独禁政策強化の波 を乗 り切るJ45 頁 (1994年)は ,消 費者などを私人 と理解 しているように思われ,私 人,私 企業,州 政府 などが提起する民事訴訟 を私訴 と呼んでいる。

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3.施 行手段 アメリカ独禁法の施行手段 としては,① 刑事訴訟,② 衡平法上の訴訟,③ 三 倍額損害賠償訴訟,④ 審判手続,⑤ その他がある。独禁法 と施行機関・施行手 段の関係は,次 のようである。司法省は,シ ヤーマン法,ク レイ トン法を施行 するため,刑 事訴訟,衡 平法上の訴訟,三 倍額損害賠償訴訟を提起する。連邦 取引委員会は,ク レイ トン法,連 邦取引委員会法を施行するため,一 般に審判 手続を開始する (なお,連 邦取引委員会のその他の施行手段については,後 述 する)。私人のうち事業者,消 費者は,シ ヤーマン法,ク レイ トン法を施行す るため,衡 平法上の訴訟,三 倍額損害賠償訴訟を提起することができる。他方, 父権者 としての州の司法長官は,シ ヤーマン法を施行するため,三 倍額損害賠 償訴訟,衡 平法上の訴訟 (明文の規定はない。)を 提起することができる。そ の詳細は,表 の通 りである。 口 私 新の概観 9 ) 本題 に入 る前 になお,私 訴 について概観 してお くことが有益 である。 まず私 訴の概要 について,続 いて私訴が シヤーマ ン法,ク レイ トン法の施行 において 重要な役割 を担 うことがで きる背景・理由について述べる。 1.私 訴の概要

叙述は,以 下の順による。①私訴が認められる場合,② 私訴が占める位置,

③私訴の類型,④ 私訴と政府勝訴判決の関連,⑤ 私訴の結末。

(1)私訴が認められる場合 私 訴が認められる場合は,① シヤ

ーマン法違

反,② クレイトン法違反に限定される。連邦取引委員会法違反については,私

訴は認められなばとそれは,次 の理由による。①私訴を認める規定が存在しな

い。②私訴を認めることは,連 邦取引委員会の設立目的 (シヤ

ーマン法,ク レ

イトン法違反を萌芽のうちに摘み取ること)に 違背する。③私訴を認めないと

9)反 トラス ト法違反が抗弁 として用いられる場合については, 10)詳 しくは,拙 稿 「消費者による連邦取引委員会法の執行」 巻 2号338頁 (1984年), 5巻 3号 397頁 (1985年)参 照。 触 れない。 香川法学 3 巻 3 号 3 9 7 頁, 4

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して も,コ モ ンロー上 の救 済が なお存在 す る。 もっ と も,連 邦取引委員会法違反 の場合 ,違 反行為 が競争維持 に関連 してお れ ば,シ ャーマ ン法 ,ク レイ トン法 の規制対 象 と重複す る限 りで,そ れぞれの 法律 に違 反 す る もの と して私 訴 は提 起 され得 る。 しか し,違 反行為 が消費者保 護 に関連 してお れ ば,私 訴 は認 め られ ようが ない。

(2)私訴が占める位置 反 トラス ト事件における政府提訴 (民事,刑 事)

1 1 ) と私訴の割合 は,平 均すれば約 1対 10である。 しか し,詳 細 にみれば私訴は, 次 の ような件数の変化 を示 している。1 9 6 0 年代後半 に増加 し始め,1970年代 に 激増 して ピークを迎 える。1980年代 に入 ると漸減の傾向を示 し始め,後 半 には 激減す る。1990年代前半 に至 ると,年 間450∼650件 で横這 い となる。 1 2 ) 変化の理 由は,次 の ところに求めることがで きる。1960年代 には,原 告側 に 有利 な判決が連続 して下 されるとともに (当然違法の原則の適用範囲の拡大 ・ 合理の原則下での違法性判断基準 の簡素化 による立証負担の軽減,同 罪の原則 ・禁反言の原則 ・クリーンハ ン ドの原則 などの契約法上の法理に基づ く抗弁の 援用の制限),訴 訟制度が原告 に有利 になるよう改正 された (ディスカバ リー 制度,ク ラスアクシ ヨン制度 な ど)。 しか し,1970年 代後半以降,原 告側 に不 利 な判決が続 き (合理の原則の適用範囲の拡大,合 理の原則下での多様 な要因

を考慮に入れる違法性判断への転換,原 告適格 〔

広義〕の厳格化),提訴の意

欲 が削 が れ た。 なお , 私 訴 と比べ て政府提訴が少 な く, ほ ぼ一定 ( 近時 は約9 0 件) で あるの 11)反 トラス ト事件数の推移については,や や古いが,伊 従 ・前掲 (注6)16頁 参照。また, その後の推移については,上 杉秋則 「米国のカルテル規制 と是正措置に関する考察 (上)」 N B L465号6,7頁 (1991年),同 「最近の米国反 トラス ト法違反事件の動向一―父権者訴 訟 を中心 に一一」ジュリス ト988号66,66頁(1991年),栗 田誠 「米国反 トラス ト法の最近 の動向について (下)」公正取引487号54,62頁(1991年),公 正取引委員会事務局官房渉外 室 「最近の海外競争政策の動向 (上)」公正取引519号73,77頁(1994年)な ど参照。 12)村 上政博 『アメリカ独占禁止法一― シカゴ学派の勝利一一』185-88更 (1987年),同 『独 占禁止法の日米比較 〔下〕』109-10頁 (1992年)参 照。 また,谷 原修身 「反 トラス ト 法 における損害賠償制度改革論争(1刈南山法学11巻4号 103,113-15頁 (1988年),同 「反 トラス ト法における私的訴訟論の新展開」経済法学会年報 9号 181,183-84頁 (198 8年)参 照。

(7)

アメリカ独禁法における消費者救済制度 45 は,政 府提訴 を重大 な事件 に限定 し,あ とは私訴 に任せ る とい う方針が採 られ 1 3 ) てい るこ とに よる。

(3)私訴の類型 私 訴には,① 衡平法上の訴訟,② 三倍額損害賠償訴訟が

ある。しかし,そ のほとんどは三倍額損害賠償訴訟であり,衡 平法上の訴訟は

1 4 ) 少 ない。 なお,衡 平法上の訴訟 においては差止請求がなされるのが一般的であ る。 律) 私 訴 と政府勝訴判決の関連 私 訴の多 くは政府勝訴判決後 に提起 され 1 5 ) ている。 このことは, 私 人による独禁法違反の立証 には困難が伴 うことを示唆 する。 また, 私 訴の提起が政府勝訴判決後である限 りで, 私 人のイニシアティ 1 6 ) ブの発揮 は限定的である。 (5)私 訴の結末 大 多数は取 り下げにより終結 しているとその うち,和 解 によ り解決 をみた ものが 3割 強 を占めると推定 される。和解のこの割合は,私 訴が原告 に とって相当に魅力的であ り,濫 用の危険があることを示唆すると 2.私 訴が重要な役割 を担 える背景 ・理由 私訴が シャーマ ン法,ク レイ トン法の施行 において重要な役割 を担 えるのに は,次 の ような背景 ・理由があると 第 1は ,ア メリカが訴訟社会であるとい うことである。弁護士 に成功報酬が 認め られていることが,訴 訟社会 を助長する。 第 2は ,独 禁法 を自ら施行 しようとする熱意が国民 にあるということである。 13)上杉秋則 「米国司法省における事件処理手続 (下)一―その特色と意義―一」公正取引 514号57,62頁 (1993年)参 照。 14)村 上政博 『アメリカ独 占禁止法―― シカゴ学派の勝利一―』186頁 (1987年)参 照。 15)小 原喜雄 「諸外 国の独禁法制 と消費者保護 (1)一 一 アメ リカ」加藤一郎 ・竹内昭夫 (編)F消 費者法講座 3』 307頁 (1984年)参 照。 16)村 上政博 『独 占禁止法の 日米比較 〔下〕』114頁 (1992年)参 照。 17)上 杉秋則 「米国反 トラス ト法 と日本企業一一 日本企業の視点か ら一―」公正取引432号 4,5-6頁 (1986年)参 照。 また,伊 従 ・前掲 (注6)17-19頁 参照。 18)も っ とも,こ の ことは,消 費者 自身が提起する訴訟,父 権訴訟 には当てはまらないよう に思 われる。 とい うのは,前 者の件数 は少数 にとどまってお り,ま た後者がみだ りに提起 されているとも言 えないか らである。 19)主 として,石 田 ・前掲 (注8)47-55頁 に依拠 した。 また,伊 従 ・前掲 (注6)24頁 , 石 田英遠 「米国独 禁法民事訴訟の留意点 (上)十 一損 害賠償額の認定 をめ ぐって一一」公 正取引489号 4,4-8頁 (1991年)参 照。

(8)

第 3は ,訴 訟提起のインセンテイブが与えられているということである。イ ンセンテイブとしては,① 三倍額損害賠償制度,② クラスアクシヨン制度など がある。また,訴 訟費用が少な くてすむこと (100ドル前後のフアイリング ・ フィー)も ,訴 訟提起のインセンテイブとなる。 第 4は ,訴 訟手続において原告にア ドバンテージが与えられているというこ とである。ア ドバンテージとしては,次 のようなものがある。①政府提訴の刑

事訴訟,衡 平法上の訴訟において最終判決がな

されている場合,半J決は 「

一応

有利な証拠」となり,違 法性の推定が行われ

ると②デイスヵバリ

ー制度が存在

する。③証明の程度は低くてよく,原 告はす

べての要件について証拠の優越の

程度 (50%超:日本は70∼80%)ま で立証すれ

ば足りる。④損害額に関する証

明の程度については,公 正かつ合理的な推定

であれば数字が概算であつても構

わない。③原告が要求すれば必ず陪審員を

つけなければならず,陪 審員は

一般

に原告に同情的である。

IV 消 費者 自身が提起 する訴訟 まず概要 について述べ,そ の後,訴 訟数が少ない原因を解明す る。 1.概 要 消費者自身が提起する訴訟は,水 平的価格設定,共謀 ・取引制曝・独占行為, 抱 き合わせ ・排他条件付取引,切 仲差別,取 引拒絶,略 奪的価格設定に関する ものなど,多 方面にわたつている。 しかし,そ2 2 )れは私訴の 1割 にも満たず,あ との 9 害J強は事業者の提起 に係 るものである。 2 . 訴 訟数が少 ない原因 消費者 自身が提起す る訴訟が少 ない原因は,次 の二つに求めることがで きる。 20)な お,同 意判決,刑 事訴訟 における 「不抗争の申立て」に基づ く有罪判決 は,「一応有

酬 蹴 軌

鞘鱗 錨 麟 讐薔 暴

[墨

楓承

曜終

(9)

- つ は実際上の原因であ り,そ もそ も訴訟 には費用 ・時間がかか り面倒 である ということである。そ してもう一つは,原 告適格の制約があり,ま た違反行為 の存在,損 害の発生,違 反行為 と損害 との間の因果関係,の 立証が常に容易 と は限らないということである。 こういった原因の多 くは事業者が提起する訴訟の場合にも当てはまるが,消 費者の場合にはより顕著 となる。本稿では,① 原告適格,② 違反行為の存在の 立証,の 問題のみ取 り上げ,若 干の検討を加える。 2め (1)原 告適格 原 告適格(広義)の考慮要因となるのは,次 の三つである。① 原告が被っていると申し立てた損害の性質,そ の反 トラス ト法の目的との関係 (反トラス ト法上の損害),② 重複的な回復の可能性,損 害賠償の思弁的な推 測,③ 原告の損害 と被告の行為 との遠近 (狭義の原告適格)。各要因は相互に 関わ り合つてお り,単 独では自足的な基準 とはならない。実際には,① を考慮 の中心 とし,各 要因を均衡させるアプローチが採 られている。 消費者の原告適格に関 して問題 となるのは,と りわけ②である。消費者は直 接購買者である場合には原告適格を有するが,間 接購 易声である場合,損 害賭 償を請求する限 りで一般に原告適格を有 しないとされる。 それは,次 の理由による。一つに,流 通連鎖の川下の者への超過請求の転嫁 の理論を認めれば,重 複的な回復の危険がある。二つに,直 接購買者から中間 業者 ・最終消費者までの,超 過請求を部分的に吸収する可能性のある全ての潜 在的な原告の間で回復 を配分することは,多 大な努力を必要 とし,訴 訟の効果

23)原 告適格の理解については,C.Douglas Floyd&E.Thomas Sullivan,Private Anti― trust Actionさ§6.2(1996)に依拠 した。なお,石 川正 「米国独禁法における原告適格(Stand― ingl及び 『独禁法上の被害』 (Antitrust lniury)の概念の最近の展開について」三ケ月章 教授古稀祝賀 F民事手続法学の革新 (上)J361頁 (1991年)を も参照。 24)な お,差 止めを請求する場合には,消 費者が間接購買者であつても原告適格は否定され ない。それは,次 の理由による。①重複的な回復の危険,破 減を招 く回復の危険は存在 し ない。②複雑で憶測的な分析 (例えば複雑な損害配分)に 審理力説悩まされるおそれはない。 ③損害賠償の請求の場合 とは異な りどのグループも提訴のインセンテイブを有するので, 訴訟の実を上げるために原告適格 を限定する必要はない。④差止めの請求を政府・直接購 買者の自発性 だけに依拠することは,反 トラス ト施行の仕組みに由々 しい空白を残す。 Floyd & Sullivan, supra note09, at §6.3.2.

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48 彦 根論叢 第 316号 を大 きく減 じる。三つ に,直 接購買者の方が間接購買者 よ りも提訴のインセ ン テ イブが大 きく,超 過請求 に対する全回復 を直接購買者 に集中させれば反 トラ ス ト法の より効率的な施行 に帰結する。 このことにより,消 費者 自身が提起する訴訟の数は大 きく減 じられる。 ( 2 ) 違 反行為の存在の立証 消 費者が独 自に違反行為の存在 を立証するこ とには困難が伴 う。 この点,私 訴の多 くは政府勝訴判決後 に提起 されてお り│ この ことか らすれば,消 費者 自身が提起する訴訟の多 くも政府勝訴判決後 に提 起 されている と推察 される。その限 りで,消 費者 自身が提起する訴訟の件数は 政府勝訴判決の件数 に大いに依存する。 近時,ク リン トン政権下の1994∼95会計年度 においては,政 府提訴の刑事事 件 の割合が減少 して民事事件の割合が増加するとともに,民 事事件 において同 意判決が多用 されるようになったと この ことは,「一応有利 な証拠」 となる判 決の減少 を意味する。 こういつた傾向が続けば,私 訴 (したがって消費者自身が提起する訴訟)の ‐層の減少に帰結する。 V 父 権訴訟制度 まず制度の概要について,続 いて運用の現状 について述べ る。 1.制 度の概要

父権訴訟 (parens patriae suit)とは,州 の司法長官が,父 権者 として,

2 7 ) 州 に居 住 す る 自然 人 に代 わ って提 起 す る民 事 訴 訟 を指 す 。 そ の提 起 は,州 に居 住 す る 自然 人 が ,シ ャー マ ン法 違 反 に よって,そ の財 産 に損 害 を被 っ た場 合 に 限 られ る。 請 求 は,規 定 上 は三倍 額 損 害 賠 償 と明示 され て い るが ,差 止 も認 め られ る。 もっ と も,父 権 訴 訟 と して一般 的 なの は,消 費 者 の た め に亘倍 額 損 害 25)こ の点については,前 述田 1。(4)参照。 26)粕 測功 「クリントン政権下における司法省の反 トラス ト政策の動向について」公正取引 555号45,47-48更 ,556号59,59頁 (1997年)参 照。 27)父 権訴訟については,谷 原修身 F独占禁止法 と消費者訴訟』20-52頁 (1983年),上 杉 秋則 「最近の米国反 トラス ト法違反事件の動向―丁父権者訴訟を中心に一―」ジュリス ト 988号66頁 (1991年)参 照。

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賠償 を求 め て提 起 され る もので あ る。

父権訴訟制度は,1976年の強化法により導入された。導入の背景には,次 の

二つの事情があった。①反 トラス ト法強化の機運が高まっていた。②当時のク

ラスアクシヨン制度は大規模の消費者損害の回復には不適であることが判明し

ていた。

なお, 父 権訴訟制度の導入は, 新 しい反 トラス ト法上の権利 を創設するもの 2 8 ) ではない。 したがって,消 費者が間接的購買者である場合,州 の司法長官が消 費者 に代 わって訴訟 を提起す ることはで きない。 2 . 運 用の現状 父権訴訟の今 日までの件数は不明である。 しか し,1980年代半ば以降,そ れ 2 9 ) は再販 に係 る ものを中心 に増加 した。その契機 は,司 法省 ・連邦取引委員会が 再販事件 を積極的に扱 わな くなったことであった。 このことは,父 権訴訟の提 起が,直 接的な消費者救済 とい うよりも,違 反抑止 に動機づけられていること を示唆する。 しか し,動 機のいかんにかかわ らず,父 権訴訟の増加は疑い もな く消費者救済 に資す る。 父権訴訟 は和解 によ り解決 を見 ることが多い。回復 された賠償金は,消 費者 一人当た りの返還見込み額が少額にとどまり返還が不経済 となる場合には,関 連 を有する公益 目的のチ ャリテイー ・プログラム,基 金 などに分配 される。 Ⅵ 連 邦取引委員会の消費者救済制度 連邦取引委員会法違反 については私訴の道は閉ざされてお り,消 費者 自身が 連邦取引委員会法違反 を理由に救済訴訟 を提起することはで きない。 しか し, 連邦取引委員会は,そ の 「消費者保護」使命 との関わ りで,消 費者救済の道 を 3 0 ) 模 索 して きた。 28)マ ッ ト ・前掲 (注5)191頁 参照。 29)中 藤 。前掲 (注8)30頁 ,上 杉 ・前掲 (注27)66頁 ,村 上政博 「執行力の 日米比較」経 済法学会年報13号49,66頁 (1992年),山 本顕 一郎 「米 国反 トラス ト法 にお ける再販売価 格維持規制 について(2氾六 甲台論集41巻 4号 117,128頁 (1995年),佐 藤潤 「最近のアメ リカにおける再販規制の動向 〔1〕 ・ 〔4〕」公正取引566号57,57,60,62頁 (1997年), 569号53,57-59頁 (1998年)参 照。

(12)

1.法 的根拠

根拠規定 とされたのは,連 邦取引委員会法の次の条項であった。① 5条(a)項 (2)号。(b)項,② 19条,③ 13条(b)項。

(1)5条 (a)項(2)号・(b)項 連 邦取引委員会は,違 反行為に対 して排除措置 を命 じる権限を有 している。そこで,こ の排除措置命令 (cease and desist order)の中で,消 費者救済 (消費者返還)を 図ることができるか否かが問題 になる。この点,1970年代に入ると,連 邦取引委員会は,消 費者返還命令を発 する権限があることを認めるとともに,い くつかの事件で返還命令を実際に発 3 1 ) した。 3 2 ) しか し,1974年,ヒ ーター事件において,控 訴裁判所は,委 員会が返還命令 を発する権限を有 しないと判示 した。その理由は,主 として,返 還命令は遡及 的な救済手段であ り,違 反抑止 という連邦取引委員会の目的と一致 しないとい うことであった。 それに対 し,連 邦取引委員会は,19条 の追加を企図する強化法 (後述(2》力ざ 審議中であったこともあ り,最 高裁判所の判断を仰がなかった。そこで,当 該 の判決は確定 した。 しか し,連 邦取引委員会の信念は,一 貫 して,返 還命令を発する権限を有す るということであるように思われる。 もっとも,そ の後,返 還命令は一般に発 せ られていない。 (2)19条 19条 は,1975年の強化法により追加 されたものである。本条に よれば,連 邦取引委員会は,次 の二つの場合,消 費者救済を求めて民事訴訟を 提起することができる。①不公正なまたは欺脳的な行為または慣行に関する規 則 (実体的規則)の 違反が行われている場合,② 不公正なまたは欺臨的な行為 30)こ の点 については別稿で詳細 な検討 を予定 していること 限 に とどめてい る。 31)詳 しくは,拙 著 『広告規制の研究』104-06,132-37頁 32)Heater v.「 rC,503F.2d321(9th Cir.1974).拙 著 参照。 33)救 済 は,厳 密 には,消 費者損害の救済 に限定 されない。 れる (19条(b)項)。 もあ り,以 下の叙述は必要最小 (1982年)参 照。 。前掲 (注31)211頁 注(2)をも 会社 な どの損害の救済 も認め ら

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また は慣行 が行 われてお り, か つ それ に適用可能 な排 除措置命令 が過去 に発せ られて確定 している場合。なお,② の場合,救 済が認め られるのは,次 の場合 に限定 される。合理的な者であれば,当 該排除措置命令が関係する行為 または 慣行が,当 該事情の下 において不誠実であ り詐欺的である と知 り得 る場合。 救済 としては,懲 罰的損害賠償 を除いて限定はな く,契 約の破棄 ・修正,代 金の返還,資 産の返還,損 害額の支払いなどが認め られる。 もっ とも,19条 が適用 された事件 は,極 めて少ない。それは,19条 に基づ く 消費者救済は手続が複雑で時間がかかることによる。 (3)13条 (b)項 13条 (b)項は,1973年 の強化法 により追加 されたものである。 その関連部分 は,次 の ように規定 されている。連邦取引委員会は,適 切 な事件 では,本 案的差止命令 (permanent iniunCtiOn)を求めることがで き,裁 判所 は,適 切 な立証が行 われたのち,そ れを発す ることがで きる。そこで,1980年 代 になる と,連 邦取引委員会 は,消 費者救済のために本案的差止命令 を求めて 訴訟 を提起するようになったと19条が消費者救済手段 として使 いがたいことが, 理 由の一端であった。 本案的差止命令が消費者救済 として機能す るのは,次 の ような解釈が採 られ てい る ことによる。本案的差止命令 を行 う権限 には,衡 平法上の補助 的救済 (解除,金 銭の返還 な ど)を 命 じる権限が含 まれる。 また,本 案的差止命令 を 行 う過程 で,一 方的緊急差止命令 (temporary restraining order),暫定的差 止命令 (preliminary ttunChOn)が行 われ,資 産の凍結 な どが なされ得 る。 2.運 用の現】犬 実際 にも,1980年 代末以降,お びただ しい数の事件が提起 され,そ のほとん どが和解 によ り解決 されている。そこでは,金 銭 などを消費者救済のために支 払 うことが違反行為者 な どによ り合意 され,実 際 に回復 された消費者救済基金 34)さ しあたり,拙稿 「連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済一一旅行代理店の詐 欺的慣行の場合一一」彦根論叢278号93頁 (1992年),同 「テレマーケテイング詐欺に対す る連邦取引委員会の戦い」彦根論叢281号123頁 (1993年),291号81頁 (1994年),295号75 頁 (1995年)参 照。また,栗 田誠 「連邦取引委員会による 『不公正な競争方法」の規制の 新展開(5)一一人工栄養 ミルク事件を素材に一一」公正取引517号52,52-54頁 (1993年) 参照。

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は二般 に消費者 に返還 されてい る。 そ こで,連 邦取引委員会 に よる消費者救済 の ほ とん どは,今 日,13条 (b)項を根拠 に してい る と見 るこ とがで きる。 W I l まとめと日本法への示唆 アメ リカ独禁法 における消費者救済制度のまとめをするとともに,そ れが 日 本法 に与 える示唆 を明 らか し,本 稿 を終 える。 1 . ま とめ アメ リカ独禁法 における消費者救済制度 についての検討は,以 下の ようにま とめることがで きる。 ① シ ャーマン法違反,ク レイ トン法違反に対 しては私訴が認められるが, 連邦取引委員会法違反に対 しては認められない。 もっとも,連 邦取引委員会法 違反の場合,違 反行為が競争維持に関連 しておれば,シ ャーマン法違反,ク レ イ トン法違反 として私訴が提起 され得る。 ② シ ャーマ ン法, ク レイ トン法 の施行 において私訴は多大 な役割 を果たす ことが期待 され,ま た実際 にも相当の役割 を果た して きた。 しか し,1980年代 に入るとその件数は漸減 し,今 日では往時の半分 にまで落ち込 んでいる。 しか も消費者 自身が提起す る訴訟 は,事 実上 ,法律上の制約 もあ り,私 訴の 1割 に も達 していない。

③ 私 訴の多くは取り下げにより終結しており,消 費者自身が提起する訴訟

も,同 様 であ る と推 察 され る。 ④ 私 訴のうち衡平法上の訴訟は少なく,ほ とんどが三倍額損害賠償訴訟で ある。 しかもその多 くは政府勝訴判決後に提起 されている。消費者自身が提起 する訴訟 も,同 様であると推察される。このことは,消 費者のイエシアテイブ には限界があるとともに,消 費者救済には行政機関の関与が不可欠であること を示唆する。 ③ 父 権訴訟は,消 費者自身が提起する訴訟を補完する機能を有する。のみ ならず,そ れは,連 邦機関による施行が後退する局面においても活発に提起 さ れてお り,特 果性を有する。父権訴訟は和解により解決を見ることが多いが,

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消費者救 済 は現実 の もの となってい る。 ⑥ 連 邦取引委員会法違反 に対 しては,私 訴は認め られない。 しか し,連 邦 取引委員会は消費者保護関連の分野 において消費者救済 に腐心 してお り,実 際 に もそれが有する救済制度 を駆使 して消費者救済が図 られている。 ① ∼⑥ を総合すれば,ア メリカにおいて も消費者が 自ら救済 を実現すること は容易ではな く,消 費者救済はむ しろ行政機関の関与 によって図 られている面 が大 きい。 これが本稿の最終の結論 となる。 2.日 本法への示唆 アメ リカ独禁法 における消費者救済制度 は,日 本法 に対 しては次の二つの こ とを示唆する。 一つは,消 費者 自身が提起する訴訟を実効あるものとするためには,訴 訟提 起 のイ ンセ ンテ ィブの付与,立 証の容易化 を含めて,相 当の手当てをする必要 があると言 うことである。確かに,ア メリカ独禁法の経験 は,こ の手当てをし て も消費者 自身が提起する訴訟の実効性 には限界があることを示唆する。 しか し,今 日までの 日本法 における努力 は十分ではな く,一 層の努力の余地は大 き い。 そ して もう一つは,消 費者救済 を十全 なもの とするためには,消 費者 自身が 提起す る訴訟 に任せ るだけではな く,行 政機関 (とくに公取委)力ざ積極的に消 費者救済 に乗 り出す必要がある と言 うことである。 もっ とも,こ の二つのことは二者択一の関係 にあるのではない。両者は並行 して追求 されなければならない。そ うして初めて,消 費者救済は十全 なもの と 3 5 ) な り, 違 反は抑止 されることになる。 35)拙 稿 「独禁法違反行為の民事救済」法律時報70巻10号38頁 (1998年)参 照。

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