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結核化学療法剤特にPAS服用後の糖尿について

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17 (東京女医:大誌・第24巻第6号頁219−222昭t和 29年12月)

結核化学療法剤特にPAS服用後の糖尿について

緒 笹 ササ 有 アリ 東京女子医科大学中山内科教室(主任 中山教授) 井 イ 村 ムラ 順 スナ 久 tサ 子 コ 代 ヨ

多 々 良 和 子

タ タ ラ カズ コ 歯 内 ナイ 福 フク (受付 昭和29年7月24日) 近時結核の化学療法が発達し結核治療に対して 新らしい光明が見出されているが,之等の物質は 人体に対して全く無害のものではなく種々の副作 用が認められている。PASの副作用としてば胃 腸障碍が最も著明であるがこの場合は患者自身が よく認めて服用を中止するので大事に到らない。 最近PAS服用者の尿中に二vランデル反応を 陽性にする還元物質が排泄される事が多数の学者 によって注目され,これが葡萄糖尿によるもので あるや否やが論議されている。而も西村は動物実 験で家兎に相当量のPASを投与してその膵臓の 組織像に退行性変化を来すことを認め,又Do− magkはTBIの大:量が膵臓障碍を起すことを報 じている。これらから推考するに膵機能に多少と も低下をもつもの,例えば老年者や生来膵機能の 低下しているものが結核に罹患した際,PAS投 与はその機能障碍を来す怖があるので充分慎重を 期さなければならなV・。 私共はPAS服用後の還元物質の排泄状況膵機 能に及ぼす影響等について検索し,いささか所見 を得たので報告する。・ 1.PAS, TBI,INAH服用肺結核患者の 糖尿頻度

本院入院中の肺結核患者でPAS, TBI, INA H服用中の43名及対照として非服用者58名計101「 名の毎食後2時間目の尿について3∼4日間,=・:・一 ランデル法でその還元物質,(以上一応糖尿と記 述する)の出現頻度を検索した。その成績は第1. 表の如「くで服用者でぱ9名20.9%,非服用者では 藤 トウ た み

島 雅 子

シマ マサ コ 4名6.9%で明らかに服用者に高率にみられ,しか も非服用者の糖尿陽性者4名にりいてみるに1名は 6ケ月一にPASを,他の1名は5ケ月前にINAHを 服用していた。即ちPAS, INAH, TBI等の

服用者にぱ糖尿の出現するものが多い。 第 1表 PAS,TBI,INAH 服 用 者 .検査人員.陽性者数 t

非服用者

髄唄「騨函

’ 140才以上 男 …_t l40才以下 女 計 40才以上 40才以下 4 20 3 16 1 5 o 3 43 9 3 27 6 22 58 o 3 o 1 4 次に年令についてみると本尿糖ぱ40才以上では 9名簿1,4『才以下では36名中8名で却って若年者 に多いの・は:普通の糖尿病の糖尿頻度が年令の増加 に伴って頻発すると対比して興昧があり,糖尿病 の糖尿と何等かの差異がある事を思わしめる。 性別についてみるに,男子24名中6名,女子19 名中3名でや玉男子に多いが症例が少ないため速 断することは許されない。 2.PASの膵機能に及ぼナ影響 肺結核患者でPAS服用中糖尿陽性であった2 例について,坂口試験食時の糖同化能曲線と坂口

食にPAS59を併用負荷した場合の糖同化能曲

線とを比較した結果は第1図に示す如くで血糖曲 線はいつれも正常で差異はなかったが,糖尿は両 例ともPAS併用時には陽性となったQ 一一 219 im

(2)

18 300 200 ノbo 0 第 症 イ9i] シ≡義診 (=) イ麦 ○ ⑦坂暴食 rf@’uxGfiBi,’,pA,s.sz, :一“:’J’一E :一一一一

ll

trct 30’60’qo’ /20’ttt /80’

羅⑦(一)(一)・一・・一)

f/bcll@ (”] 0・21 0.20 o,23 1 300 ’200 /00 0 症 i列1 玄F∼ ○ノし○子 ⑦域⊂]食 rf②坂・面一・一 PAS 5 Eii 一一一一一. ,ハ矯、一、■ 二〆 、転層一嘱一晒_ 〃㌧乞 30’ 60’90ノ 尿⑦(一〕 (一フ 糟

触②←} ω

/20’ノ50ノノ80’ (一) (一) 0. 25 0. 23 次に肺結核と糖尿病とを合併した1例について 前同様に坂口食と,坂口食にPASを併用した場 合とを比較した結果は第2図の如くで,両者の血 糖曲線にぱ差異ぱないが,PAS併用時には糖尿 が高濃度に排泄されてv・る。 第 2 図

症例 甲○徳○

4 00 300 200 /00

⑦坂□食

②坂〔]三一f−i’A559 /■ノ / ノ rt tioz 30’ 60’ 90’ /20’ /50’/80’ 」maiZ. O IO8 /.32 //3 0.83 E/IEzQ@/・47 2.27 5. o 5.0 肺結核を合併しなV、糖尿病2例につV、て前同様 に比較した成績ば第3図の如くで血糖曲線には大 差ないがPAS併用時には糖尿が認められた。 以上のように5例とも血糖曲線に大差はない が,PAS併用時にはいつれも糖尿の出現或は高 濃度排泄を認め得た事は本糖尿が糖同化能が障碍 されて起る過血糖によるものではなく糖排出閾の 低下によって起るものと思考される。 3.PAS糖尿とグルクロン酸 以上のようにPAS服用者には二・・ランデル反 応陽性のものが高率にみられるが,その本態に関 してKleman,楠,館石ら多数の学者はこの二一 ランデル反応陽性物質は主としてブドウ糖による ものであることを醗酵試験,オナゾン形成試験等 で証明しているが,福井等はグルクPン酸とPA Sが抱合されて尿中に排泄され,これが二”ラン デル反応を陽性にするものであるといってV?る。 又田坂教授はグルクロン酸が種k’の薬剤の副作 用防止即肝臓庇護に役立つことを提唱している。 そこで私等はPAS糖尿に対しグルクロン酸が如 何なる影響を与えるかを4例について検索した。 実験方法として次の3通りの揚合について毎食 後2時間目の尿について糖尿の排泄状況を観察し

た。即ち(i)PASのみ1日1Cgを5回に分服

した揚合,(ii)これに上訴的にグルクロン酸カ ルシウムを朝食及昼食後に39つつ計69併用した 場合,及び,(iii)PAS服用とグロンサン200 mg筋注とを併用した揚合の3つの揚合について 3日∼5日間観察した。 一 220 一

(3)

19 fnld/if

症例腰○吉○

飾20分(肝1瑠ノ鋤

3酬

秩m麟認拶郡署長チ

200 ノ00 ノ 鴨嚇、㌔一’一、 ’ 、 ノ 、 ノ ヘ ノ へ

、、 o グ:m 30’ 60’ 90’ ノ20’/50’/80’ 潔のぐ一) (一1 (一ノ (つ 糟 S/ne@ (一) 〈一 o.// (一)

第2表の一

二ご廼彫陣門陣餓昼酬夕鍛

3 ”Y2,d(e 300 200 ノ00 o 図

症例力00元○

食前20fr1(督至1多多l/三三 ⑦O’ゆ食270S+卵2ノ・一一一w−a

②かゆ食2709+卵2今+ρA∬チ 幽 t’ ソ銘30’ 羅⑦卜・

麹②〃/

60, 90’ 120’ /50’/80’ (一) (一) C−J

LII 2,0 1,66

ノぐ .ス 服 用 時 パクル用 ス・シ三 三ンウ グ酸ム ルカ服 パ注 ス 及 グ ロ射 ン サ 馳ン旧 離1目 第2日 第3日 第1日 第2目 第3目 第1目 第2日 第3日 第4目 第5日 O.22 O.22 O.27 O.24 O.15 O.16 .一 @1. o.40 一 i O.22 一 1 O.13 O.18 O.28 O.16 0.19

詫.\

O.18

第2表の=

一壷旧館陣已降餓夕鍛.

ノぐ ス 服 用 時 第1目 串2目 第3日 バク,レ用ge・1・H ス・シ一 三ンウ 第2ロ グ酸ム 7レヵ月山 第3日 パ注 ス 及 グ ロ射 ン サ ン時 第1日 第2日 第3日 第4日 第5日 O.20 O.25 0.33 O.47 O.33 O.32 O.42 O.43 O.40 O.33 O.19 1 O.16 O.20 i O.22 O.19 1 O.22 O.33 O.18 O.21 O.62 O.10 O.21

第2表の三

O.22 O.2 O.28 O.28 O.11 O.15 0.16 O.23

x

x, /

x

O.58 O.33 O.21 O.33

第2表の四

\調彫陣三朝鍛昼餓[夕簸

ノぐ ス 服 用 時 パ注 ス 及 グ射

3

3時 第1目 第2日 0ユ5、 第3日】一 第1目 第2日 O.27 O.22 O.15 O.22 第3口 第4目 第5日 O.43 O.37 0.25 O.27 O.22 O.22 O.31 O.40 O.22 O.35 O.27 O.20 O.50 O.22 O.40

尺く三三鞭前轍後昼磁夕飯

ノぐ ス 服 用 時 パ注

ζ射 写 ン時 第1日 第2日 第3日 第1日 第2日 第3日 第4日 第5日 O.26 O.29 O.35 O.33 O.42 O.32 O.40 O.29 O.33 O.28 O.25 O.27 O.31 ’一Q21一

(4)

20 この成績を表示すれば第2表の一,二,三,四 の如くであり,第一一一i例(第2表の一一でぱ,グル クロン酸投与によって糖尿が減少しているかの印 象を与えるが第二例(第2表の二)第三例(第3 表の三)では大差なく,第四例(第2表の四)で はむしろ増加している傾向が見られ,即ち全例を 大観すればグルクロン酸による影響は著明でない ことを認めた。樹グルクロン酸単独投与による糖 尿の出現を知るためこのうちの二例ICついて,グ Pンナン200mg単独筋注して糖尿の有無を4日問 観察したが,この程度の注射量では,ニーランデ ル反応は陽性に出るごとはなかつ元。 以上の如く経口投与に於ても注射によってもP AS糖尿はグルクロン酸によって著しい影響がみ られなかった。

之は外から考えられたグルクpv酸がPASを

直接抱合して排泄されるものではなく,むしろ休 内に於てPASは糖1燐酸エステルと抱合してグ ルクロン酸に酸化されて排泄されるものと老える :方がi至当の様に思われる。 結 論 最近PASを初め結核治療剤の副作用としての 糖尿について,多数の研究癸表がなされているが 私等もこれに注目して若干検索してみたので報告 しtc fi 次にその結果をまとめると

1) PAS, INAH, TBI等を服用した患者の 糖尿頻度をしらべたが明らかに非服用者群IC比べ て高率であ珍,しかも若年者に多くみられた。次 に肺結核患者でPAS糖尿陽性者,肺結核と糖尿 病を合併したもの,及真性糖尿病患者のそれぞれ について膵機能と糖尿との関係をしらべたが,P AS服用時の糖尿の出現乃至増強は過血糖による ものではなく,糖排出域低下による腎性糖尿であ ることを認めた。 2)次に,最:近グルクロン酸が種々の薬剤の副作 用防止及肝臓庇護に役立つことが提唱されている ので,グルクPン酸を経口投与乃至注射し,これ にPASが抱合されて,糖尿排泄量が影響される や:否やを検討したがPAS糖尿はグルクロン酸投 与によつて大して影響をうけない事を知った。 文 献 楠 :目本内科学会雑誌 41巻 5号 1952 〃 :臨躰と研究 30巻 5号 1953 〃 :生化学 24巻 別冊 9∼10頁(昭27・5) 館石:日本内科学会雑誌 41巻 11号 1953 ” :治療 35巻5号 1953 西村:日本病理学会総会講演 1953 軍門:日本医事新報 No.1378 1950 Kleman:Lancet No. 6573 1949 根岸:治療 32巻 12号 1950 上田:臨黙内科小児科 6巻 11号 1951 iヒ本 :臨駄 3巻 1950 伊藤:日本内科学会雑誌41巻12号1953 田坂:日本臨1休 10巻 2(・4号 山埼:日本内分泌学会雑誌 29巻 1∼2号 笹本:日本医事新報No.13441950 吉原:臨駄内科小児科 &巻 9号 1953 吉川:臨駄医化学 三山:医化学 Dornagk : Beitf.Klin. Tbk. Bd. 101, 365. 1948 ・ 一 222 一

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