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急性および慢性妄想と Schneider K. の精神分裂病一級症状 : 単一精神病的観点からの妄想に関する研究

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原 著

〔翻繕、2無籍63劉1言〕

急性および慢性妄想とSchneider K.の精神分裂病一級症状

一撃一一精神病的観点からの妄想に関する研究一

巻京女子医科大学 神経精神医学教室(主任:柴田収一教授) イワ イ カズ マサ 岩 井 一 正 (受付 昭和63年7月8日)

Acute and Chronic Delusion and Schneider’s First Rallk Symptoms; Study of De藍usion from a Viewpoint of Endogenous

Unitary Psychosis

Kazumasa IWAI

Department of Neuropsychiatry(Director:Prof. Shuichi SHIBATA)

Tokyo Women’s Medical College

The forms of delusional phenomena in 23 cases of endogenous psychoses were devided into two

types, acute delusion and chronic delusion.

Chronic delusion differs from acute delusion in the point of stable clinical course and systematized or fabulized structure. Acute delusions,which are unsteady and demonic but easy to fade out, depend on acute, occasionally confusional course of psychoses. In contrast to this,chronic delusion reflects the transformation of personality structure, which the long course or repeated attacks of psychoses can also make. Regardless of.clinical diagnosis,for example, mania, depression or schizophrenia, acute and

chronic delusional structure are uniform. This dividing, based upon the concept of‘‘endogenous

unitary psychosis, is today no longer common, but we found it usefu11, because phenomenology of

delusion is today discussed not as a whole, but in each detail of diagnostic categories, which

contradictory depend in a part on the form of delusion. Schneider’s first rank symptoms, special signes

of delusional hallucinatory symptoms, which are used for the diagnosis of schizophrenia, were

discussed in the point of clinical course from acute to chronic delusion.

緒 言 精神科的症状学の中で妄想が重要な位置を占め ることは,言うまでもない.古来,狂気の典型と みなされたのは,感情性要素の薄い「さめた狂気」 すなわち慢性に続く妄想であった.このパラノイ アを始めとする妄想症候群の位置づけは,精神医 学の体系学にとっても重要で,疾病分類の様々な 変革はここを軸にして展開してきた.心気症,抑 うつ症,暴狂,妄想狂,慢性狂気,或いは荒廃な どの精神病の種々の現象像を各々異なる疾病とは みず,経過段階の相違に基づく病型の差異とみな した単一精神病理論1>は19世紀後半に衰退した, 代わって隆盛した疾病分類的指向は,純医学的な 疾病単位設立の悲願の下に,個々の患者が現在呈 している横断面像と今後の経過との間には常に一 定の連関が存在する(一定理論)と想定して,病 癖の相違に経過,予後ひいては疾病そのものの相 違を求めた.以来こ.の主旨での疾病分類の境界線 の縄張り争いは妄想症候群の精神分裂病圏への帰 属を巡って行われてぎた.内因性精神病の分類を 病因分類に発展させようとしたかっての目論見が 消裾した今日もなお,この争いは続いている.近 年のDSM−IIIなどの操作的診断基準における躁う つ病圏の拡大は,それまでは精神分裂病圏に容れ 一1113

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られていた妄想症状を持つ感情精神病を取りこむ ことによってなされたものである, 視点を精神分裂病の側に変えると,この診断を 下すには歴史上二つの道筋が存在した.一方では 現在の操作的診断基準にも生かされているよう に,感情性障害の併存が除外診断的に作用した。 しかしまた一方では病像を特徴づける「分裂病症 状」に診断的優先性が与えられてきた.経過を含 めて診断する場合には,大雑把に「欠陥」とまと められる状態像の出現が,想定上の分裂病疾病過 程の露呈としてこの役割を担った.しかし純横断 面的,すなわち欠陥が未だ出現していない初期段 階においても精神分裂病を特徴づける症状は求め られ続けた.それは疾病分類的志向の最大の課題 であったといえよう.Kraepelin自身によるこの 種の症状の探索は成功しなかった.彼の早発性痴 呆概念に特徴的と思われる横断面症状で,予後良 好たる奮うつ病には全く欠如した症状は輪郭づけ られなかったからである.内因性精神病を躁うつ 病と精神分裂病とに分ける二分法は,初期横断面 像から結末までの経過全体を貫徹せずに終ってし まった2)3).その存在が無条件に結末を決定するよ うな特定の横断面的個別症状は,未だに見つかっ ていない.まもなく早発性痴呆概念のもつ経過拘 束性が緩められ,横断面像を重視し,経過にとら われぬことを明言した分裂病概念が提唱された. この構想に基づく分裂病の特徴を症状学的に結晶 させたものがK.Schneider4)の分裂病の一級症状 である.すなわちここにおいて初めて,精神分裂 病は内因性精神病の一類型として独自の横断面的 特徴を症状レベルで獲得できた.これに属するの は,思考鳥声,対話および批判形式の幻声,意志 および身体的な被影響体験,思考伝播,思考奪取, 思考吹入,それに妄想知覚である. 近年一級症状は分裂病の鑑別診断の上で信頼に 足る症状として再び注目され‘)6),DSM−HI7>, RDC8)などの英米圏の操作的診断基準にも採用さ れている.しかしながらそれらの項目総体は,必 ずしも一級症状と完全に一致はしない.例えば, RDCでは,一級症状的な記述項目の他に,「身体 的,誇大的,宗教的,虚無的,或いはその他の妄 想で,被害的或いは嫉妬的内容を持たないもの」, 「患者に話しかけてくる感情と調査しない言辞的 幻聴」などの項目が採用されている.一見して, 分裂病診断は概ねやはり妄想幻覚の様式を巡って なされていることが分かるが,しかしその観点か ら見ると,妄想の内容的側面,例えば主題や内容 の特徴と,一級症状のような形式とが入り乱れて いる.またこのような特殊な妄想幻覚性症状が感 情性障害と同時に起こっているか否かが鑑別類型 的に重要とされるが,前者の輪郭は後者ほど秩序 づけられぬまま,個々の側面が思い付きのように 列挙されている.他方では,Heidelberg学派が分 裂病性の妄想の特徴として中核的な意味を置いた 妄想知覚が基準項目から脱落している.妄想知覚 の評価は判定者間によって異なるため信頼性が乏 しいからかもしれぬが,このような精神病理学的 に重要な症状を断念するのは,診断基準そのもの が一般的な類型の病期描写を網羅するものではな いという限界性を明らかにしている. 類型分類の要石であった妄想症状は,新しい診 断基準でも決して整理はされておらず,むしろ もっとも統一性が損なわれた箇所であることを 我々はみてぎた.しかレこれは診断基準設定者の 怠慢に基づくものではなく,問題が未解決である ことの反映といってよかろう.さしあたり我々は, 妄想という現象を一級症状のような結晶化した特 殊な症状から切り離し,また構造の細目にこだわ ることなく,もう一度より大きな統一的な視点に たち戻って見直すことから始めたい.またここか ら振り返ることで,精神科診断学上もっとも精密 化された一級症状の位置づけも明らかになろう. このような視点から,観察が密な症例について 妄想症状を包括的に考察してみる.我々が今回の 出発点としたいのは,単一精神病的想定に基づく 経時的観点からの妄想の形態の相違である.精神 医学体系が成立して以来,妄想症状については各 臨床単位ごとの特徴は論じられていても,妄想の 経時的変態については必ずしも明確にされてはい ないように思われるからである. 材料と方法 昭和62年6月から63年5,月までに東京女子医大

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神経精神科3階男子閉鎖病棟に入院した臨床診断 が内因性精神病圏内の患者73名の中,この観察期 間中に検討が可能な程度に妄想ないし幻覚症状を 呈した者30名,これに昭和62年6月以前から63年 5月末現在も人院中の患者2名を加え,計32症例 を母集団とした.このうち,妄想が初発ではなく, 再燃して今回の観察に至った21例については,そ のうち他院入院などによって経過観察が中断され ているもの9例を除外したので,計23例について 検討する.観察された妄想幻覚症状を慣習的疾患 分類によらず,妄想発生の経時性によって急性妄 想と慢性妄想とに分類する.特に急性妄想につい ては,初発の妄想と経過途中の再燃期の妄想とに 分け,前者は慢性妄想との静止的な観点で比較し, 後者については経過における妄想形態の変遷を短 期的ながら動的観点で検討する. 結果および考察 今回の入院の時点で,既に1年以上固定した妄 想形式を持っていたものは全32例中4例あった. 残り28例は観察に至るまでの1年間に,妄想症状 に何らかの変化,すなわち妄想の消長や構造上の 大きな変化などを呈した.両者の比率ば,対象の 選択方法や入院施設によってもかなり相違するは ずである。ちなみに原,岩井9)の調査した高尾保養 院の10年以上の在院患者を対象とすると,両者の 比率は大きく逆転する. 4例にみられた固定した妄想形式を慢性妄想, 変化を呈した28例の妄想の内,今回が初回の妄想 表1 慢性妄想 発症年齢 妄想の構造 妄想の構成要素 症例 観察月 年齢 精神病 ^妄想 分類 診断名 iRDC) 社会適応 幻覚 主題 組織化 巻き込 噛み合 解 釈 の v 素 着想 作話 K.Schneider フ一級症状 錯乱 妄想の ]帰 マー1 63.2. 29歳 23/23 慢 特定不能の精神病 良 一 迫 什 十 十 正知 一 消失 マー2 63.5. 50歳 19/20 慢 躁病 劣 誇,愛 一 一 一 十 升 『 不変 マー3 62,6. 52歳 49/49 慢 定型うつ病 劣 一 心 一 十 十 正知 十 不変 マー4 62.12. 22歳 20/20 慢 反社会型人格 劣 体感症 心 十 十 十 体感症 十 不変 略語の説明 分類:急一急性,慢一慢性,再一再燃./診断名:特定不能の精神病一特定不能の機能性精神病,/主題:心一心気,誇 一誇大,愛一被愛,罪一罪責,迫一迫害・被害,貧一貧困./妄想講造:巻き込一人格全体の巻き込み,噛み合一環界との噛み合い. 解釈の要素:正知・知一正常知覚,気配;気一気配体験,影一被影響体験,幻一幻覚. 表2 急性妄想 発症年齢 妄想の構造 妄想の構成要素 症例 観察月 年齢 精神病 ^妄想 分類 診断名 iRDC) 社会適応 幻覚 主題 組織化 巻き込 噛み合 解 釈 の v 素 着想 作話 K.Schneider フ一級症状 錯乱 妄想の ]帰 キー玉 63.2. 60歳 60/6G 急 焦燥型定型うっ病 良 心,貧罪 一 什 廿 正知 十 一 十 消失 キー2 63.4. 23歳 23/23 急 分裂感情病 可 一 愛 一 升 十 升 一 消失 キー3 62.9. 49歳 49/49 急 躁病 劣 一 誇,迫 一 升 升 正知 十 一 消失 キー4 63,1. 58歳 58/58 急 分裂感情病 良 一 罪,迫 一 廿 升 正知,気配 十 ? 十 消失 キー5 62.10. 56歳 56/56 急 焦燥型定型うつ病 良 心,罪 一 什 “ 正知 十 一 消失 キー6 63.5. U3.5. Q9歳 書冊 ェ裂感情病 .星

} @十 @? 一=. 立升 土紳 ウ知,気配 .亡一 Dト マ想知覚,被影 ソ,批判幻聴 チ失 キー7 62.10. 24歳 24/24 急 うつ病 良 罪 升 十 正知 十 消失 略語の説明 分類:急一急性,一一慢性,再一再燃./診断名:特定不能の精神病一特定不能の機能性精神病./主題:心一心気,誇 一誇大,愛一被愛,罪一罪責,迫一迫害・被害,貧一貧困./妄想構造:巻き込一人格全体の巻き込み,噛み合一環界との噛み合い. 解釈の要素:正知・知一正常知覚,気配・気一気配体験,影一被影響体験,幻一幻覚. 1115

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産出とみられるもの7例を急性妄想の典型とし て,両群を比較してみる. 1.慢性妄想と急性妄想 表1,2,および4には症例の,個人的,疾病 的,および社会的データと共に,Bernerlo)の妄想 症候群の構造研究に基づいた原,岩井の妄想構造 分析のメルクマール11)と一級症状とについて一覧 してある.また社会的データとしては観察前1年 間の社会参加度を3段階で評価した. 妄想の結末は,半年以内に消えたものを消失, 形態を変えたものを形態変化,また半年以上続く ものを遷延として分けた. 1)慢性妄想:4例(表1) r7−1 (29歳) 昭和56年8月大学在学中恵愛妄想.2年間大学 診療所で治療を受けた.61年春研究所に就職.秋 から職場での人間関係に悩む.62年1月職場の42 歳の女性と結婚するよう皆に仕組まれていると感 じ始める.3月転職.62年5月職場の同僚上司に よる強姦のでっち上げ事件を心配.濡れ衣から身 を守るために,弁護士を探し,ビデオカメラでア リバイを残す算段.62年7月当科初診.通院中も 職場でのいろいろな意地悪を訴える.63年1月に は父もグルで,父が,ある女性に子供を産ませ, 患者のせいにして患者を婿養子に出そうとしてい るとまで発展.緊張が高まり,2月入院,病棟内 では穏やか.妄想の新たな発展は認められぬが, 確信は堅固.しかし消極的ながら次第に病識も出 現し,退院. マー2(50歳) 昭和31年暮れ(19歳,大学1年)発病.以来2 ∼3年の間歓期を挾みっつも躁うつ両病相を繰り 返し,30年余を経過する.当科入院は計11回に及 び,他に他病院入院も10回近く.最近8年間殆ど 入院生活.慢性躁病の心像を呈している.経過中 細像は概ね耳うつ病圏に留まる.ただし昭和44年, 約3年間の寛解期の後に,気配体験を主とした急 性幻覚妄想状態を呈したことがある.今回の第12 回当科入院は,11回退院後マンションに独り暮し ていたが,不安緊張が高まり不眠がちになってぎ たため,兄弟の配慮で早期に入院.この数年続い ている「檀ふみと結婚する」或いは,「もう結婚し ている」との被愛誇大妄想を呈す.根拠は「テレ ビで合図されたことがある,今はない.檀ふみは K大の後輩.芸能界のただ独りの処女.電話を家 にかけたことがある.お母さんもこちらを知って いる」.また普段は口にしないが,水を向けるとた わいもない誇大な内容をとうとうと弁ずる.「資労 主義(!)が全世界で評価され出した.自分が大 学時代考えた.短い論文にしたことがあるかも知 れない.世界平和のために貢献している.財閥を 作る.資本金は1千万円.株を売れば大丈夫.更 に増える」等.やさしい人柄で,病棟でも他の患 者に頼られる存在だが,空想的な誇大妄想以外の 現実の関心は,大学時代の思い出,躁うつ病発症 当時の思い出に限られる. マー3(52歳) 昭和59年4月同僚と韓国に買春ツアー.本人に とっては海外旅行も買春も初めての経験.帰国後 発熱,皮疹.以来易疲労,意気消沈,性病への不 安.検査で異常無しといわれたが,納得せず病院 巡り.精神科も受診した.「胃の周りにぽい菌がつ いて腐ってきた.手も細くなった」と家で大騒ぎ. 病気のことしか関心がなくなる.62年3月退職. 62年5月当科初診.6月入院.うっ状態.自発性 を欠き,病棟では友人もなく孤立.微熱の心配, 買春への後悔.肥りすぎのため,減食を命じたが, 少し痩せると「エイズ」のせいだと嘆息.気分転 換に外泊も勧めたが,病気が治るまではと帰らず. 今回の事件以来,家族からも孤立している様子. 微熱は原因が見つからず,抗うつ治療でやや下が る.しかし心気妄想は堅固. 妄想主題は症例毎に様々ではあるが症例内では 経過を通じて一貫している.また特定の主題に限 定されることが特徴である.妄想がその個人に与 える影響を見ると,対象中には妄想が何の影響も 及ぼさず,現実に対して完全な二重帳薄ができて いる症例はない.患者は病院受診(マー3,マー4), 或いは弁護士に相談(マー1)など妄想の主題に 沿った行動をとる.しかし後述する急性妄想の場 合のように,人格が忘我の状態に陥り妄想に全く

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受身に振り回されることはない.各例で妄想の構 造を見ると,マー1では場面場面の出来事を正常に 知覚しながら,それがその都度妄想的に解釈され 続け,妄想と環界とはしっかりと噛み合いながら, しかし結果として確固たる迫害妄想の体系が一貫 して作り出される(組織化).一方全く対照的に, マー2のように全く浮世離れした,典型的な空想作 話型の妄想12)も存在する.この場合のたわいもな い誇大妄想では,折々の場当り的な妄想着想や, 或いはそれが長年重嬉しつつ加工されてきた(作 話)ものが主体になっており,妄想と環界との噛 み合いは全くみられない.このように妄想が物語 化しつつ確定する傾向は,マー3,マー4の慢性化 した心気妄想の症例でも強く窺える.この2症例 では心気妄想の成立そのものは,特定の事件(梅 毒の誤診マー4,実際の身体所見マー3)に基づき, 現在も存在する体感症,発熱によって妄想が根拠 づけられているとみなせる.しかし明白な論理の 齪爵を指摘しても動じない,通常のうつ病性の心 気症状には見られぬ妄想の確信性は,この物語化 によって保護されているのである. すなわち慢性妄想の構造的特徴は,一方では組 織化(体系化),他方では物語化,作話化にみられ る.いずれにせよ妄想加工(Wahnarbeit)と呼ば れる妄想の歴史化の作業が主体をなす.このよう な妄想加工を可能にするのは,背景に一貫して存 在する人格構造に他ならない. この形式の妄想症状を治療的に取り除くのは難 しい.かつての単一精神病の段階学説では,これ らは一次性の感情障害から既に遊離した二次性の

不可逆的な衰弱状態の一形式である慢性狂気

(VerrUcktheit)などとみなされた. Kraepelin以 降,精神科に体系学ができた後の古典的分類でも, パラノイア,或いはパラフレニーに整理され,や はり固定したものとみなされたであろう.薬物療 法が進歩した今日でも,事情は変わらない.むし ろこれらの症例で実際に治療効果の上がらないこ とから,「向精神薬のターゲットは,あくまでかっ ての段階学説における一次性感情障害の範囲内に 留まる」とのJanzarik13)の指摘が支持されるよう に思われる.マー2のみ短期に寛解した.この結果 を,パラノイアに隠れて存在する躁病性要素に神 経遮断薬が有効だったと解釈するか,或いは緊張 をはらんだ現実の状況が,入院によって一次的に 棚上げされたことが妄想消失を導いたととるのか は現時点では決められず,今後の経過に待つより ない.他の3例を含めて,これらを現代の診断慣 習に基づいて何と命名しようが,ここに挙げた妄 想に現れているのは,単一精神病的な視点では, 変動性の感情障害から区別される回復不能な固定 状態と考えられた現象である.患者はそれぞれ日 常生活では受身に終始し,妄想以外には没個性的 となる.かえって堅固に作り上げられた妄想の中 に,空転した個人の歴史性が織り込まれて現れる. すなわちそこには,人生の葛藤や,憧れた目標や 理想像から遠ざけられた苦渋や,挫折を容認しよ うとしない自己欺隔或いは現実欺隔の反映が窺わ れる.慢性妄想は,その発生時点はともかくとし て,固執しつつ加工されて成立してきたこの形態 は,自我の妄念の煮こごりとも見られよう.柴田14) は慢性の,特に空想的な妄想状態に,一人合点で 高上がった孤立性エゴイズムの動向,すなわち Idiotismを認めている.彼は, Idiot(白痴)の言 葉の原義である「私人」或いは「独りで暮らす者」 を生かして,慢性妄想者を「愚者の楽園」に安住 するものと特徴づけた. さてここに挙げた症例は,マー4のRDC診断が 明らかにしているように,診断基準によっては, 性格障害とみなされるものもある.我々も人格構 造の問題を慢性妄想の特徴として挙げてきた.し かしそれらは,とりわけマー2の空想作話性妄想の 症例が明らかにしているように,内因性精神病の 長期経過からも成立し得るのである.また次に述 べるサー12のパラノイア性妄想の急性増悪が明ら かにしているように,一見人格障害として見える パラノイア型のものも内因性精神病と全く無関係 ではあり得ない. 2)急性妄想:7例(表2) キー1(60歳) 昭和62年10月から初めてのうつ病.外来治療を 受けたが,心気的不安が続く.63年2月,目が見 一11!7一

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えなくなったと不安がる.このため退職を決意. 2月9日退職届け.翌日突然興奮見捨てられる という不安が募り,妻に対する激しい嫉妬,暴力. 入院後も焦躁卜うつ病像で被害妄想,貧困妄想, 罪責妄想が出没.おけもなく看護婦にしがみつい たり,不穏.更に誇大罪責的に発展.「自分は宇宙 人だ」,「核戦争は自分のせいだ」,或いは「既に自 分は死んでしまった,みんな死んだ」とコタール 症候群を呈した.一過性に悪性症候群を呈した後, 単純なうつ病像に変わり,退院. キー4(58歳) 昭和62年11月並に喋らなくなり,また会社で ぽ一つとしていることがあった.当科初診.うつ 病の診断で治療開始.徐々に改善.63年1月13日 から急にトンチンカン.罪責感を訴え,自ら頭を 丸める.困惑し,「申し訳ない,もうだめだ」と繰 り返す.いつも世話している足腰の立たぬ母を湯 船に残して,急に家を飛び出したり,夜眠らず, 「ワイシャツとネクタイをつけると120万.:丸首だ と駄目だ」,「夜中に食事をしているのを写真にと られた」などと意味不明な言辞.同じ動作や姿勢 を何度も繰り返したこともある.入院後不安,緊 張,富谷がち.徐々に緊張は取れたが,病棟で皆 が自分の悪口を言っているとの関係づけがしぼら く残った.十分な回想は得られず,一過性の躁状 態を経て羽うつに転じ,これが改善して退院. キー6 (19歳) 昭和63年5月4∼6日大学の旅行サークルの合 宿.この時から様子がおかしい.大声を出したり, 何度も自己紹介.5日には「某先輩が山小屋にい る」と言ってしきりに行こうとする.周りが「彼 はいま遠隔地で別に合宿しており,ここにいるぱ ずがない」と諌めたが,全く聞ぎ分けない.また ボートが湖に浮かんでいるのを見て,「自分を見 張っている,自分に適性があるかどうか」と.し きりに山小屋に行こうとするのを大勢でなだめて ようやく帰京.ペットショップと言う言葉を耳に して「自分を試している」.と解釈する.感激しや すく,興奮がち,不眠.クラブの全責任を勝手に 独りで背負って,「いま部室に行かぬとクラブが潰 れる」と緊張する.入院1後速やかに鎮静.しか し退院註すぐに再燃.期待感,妄想知覚と共に幻 聴も出現.操られるままにピョンピョン跳んだり もした.懸念していた山小屋を求めて信州各地を さまよい歩く.入院II.今回も速やかに妄想は消 えたが,病識出現は遅れた. 患者はいずれも妄想に強く巻き込まれ,不安, 緊張,或いは高揚感の中で激しい行動をおこす. 例えば罪責的な4例では,飛び降りなどの自殺企 図(キー5,7),頭を丸めた(キー4).誇大迫害 主題の窺われた1例は,憤怒の大暴れ(キー3). 周囲に期待されているのを感じた1例は,闇雲に 山小屋に行きたがる(キー6).すなわち妄想観念 に人格全体が激しく巻き込まれ,妄想と人格とを 別個に捉えるのが困難なことが急性妄想の第一の 特徴といえる.かつての精神医学の全体性狂気と 部分性狂気という区別でみるならぽ,慢性妄想は 後者の知的部分性狂気に,急性妄想は人格の知, 情,意すべての要素に及ぶ全体性狂気の中に位置 づけられる.全体性狂気における感情障害の重要 性は単一精神病的段階学説からの伝統的視点であ る.これらの症例においても情動推進面の変化, Janzarik15>が力動の産出的逸脱と名付けている古 典的な意味でのうつ,躁の感情精神病性要素の占 める根本的な役割は指摘するまでもない. 急性妄想の主題は個々の症例の中でも多彩であ る.またキー6では妄想的な強い牽引に晒されてい ながら古典的な主題の分類にあてはめられない. 富商は異質な状況の中に投げ込まれ,日常の見当 づけを全く失い,文字どおり糸の切れた凧のよう な状態に陥る.慢性妄想の症例では見られなかっ た罪責主題を呈するもの(キー1,4,5,7)が多 いのは,うつ病によって人間の持つ原不安が露呈 したとの伝統的な捉え方もできようが,より一般 的に,患者の投げ込まれた実存の危機的立場をか ろうじて根拠づけようとする試みとの見方もでき る.逆に高揚した使命感に包まれたもの(キー3) も存在する.しかし極出には体験そのものがさら に変化し,妄想はこのような夢幻錯乱様の体験の 中に溶けこんでしまう(キー1,4)こともある. 闇雲な妄想確信は,慢性妄想とは異なった意味で

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論理性を失っている.本人自身が論理性の枠外に ある存在といってもよい.急性妄想から回復した 後は,こちらが期待するほど現実感のある病的体 験の詳細な回想は得られない.健忘を呈すること も多い.「夢のようだった」或いは「無我夢中」と の表現が回想として共通しているが,これは病中 の体験の異質性を端的に表わしている. 今回初発の妄想で入院観察に至ったこれらの症 例は,急性の妄想状態で同時に呈することが多い 幻覚体験を殆ど欠いているのが特徴的である.ま た精神分裂病に特徴的な病像は明確でなく,この 時点で診断すると躁うつ病圏に入れられるものが 多い.このような所見は,再燃例の初発期を含め ると,幾分発言力が弱まる.すなわち再燃例には, 初発から精神分裂病に特徴的な症状を備えたもの も存在する.しかし次に明らかになるようrに,今 まで述べた急性妄想の本質は再燃群の初発期にも 通用している. 急性妄想には,慢性妄想にみられたような作話 性や,或いは正常知覚からの解釈の組織化の特微 はない.ある妄想的解釈の種になる個別的な特殊 な現象を同定できず,せいぜいとるに足らぬ現実 の事象が妄想的に解釈されたものか,或いは外界 の材料なしに発生する妄想着想も多くみられる. また妄想着想と共に,知覚様式が印象性に奔放化 することから起こる,気配体験と呼ばれる妄想気 分ないし類縁の体験が,妄想形成に関与している こともある.このような体験に妄想的意味づけが 加わった時,典型的な妄想知覚が産出される16). 初発の急性妄想は,いずれも短期経過で治まり, 残遺症状を残さなかった.しかし,消失までに形 態変容を起こすものもある.キー6は急性躁病性の 高揚した気分の中での突飛な妄想的確信で始ま り,一旦速やかに鎮静後まもなく再燃.この急性 増悪で被影響体験,批判形式の幻聴などが初めて 顕現している.キー1はうつ病性の妄想が出現した 後,不安が強まり家族から見捨てられると確信. また罪責感は誇大化し,ついにはコタール症候群 を呈した.つまり慢性妄想には存在せぬ形態の可 変性も急性妄想の大きな特徴である.このような 妄想の形態の変化は,単一精神病的意味での一次 性感情障害の推移にほぼ一致していることが分か る.この意味で急性妄想は,精神病の疾病的要素 が人格全体に及ぼしたインパクトの直接の反映と みられよう. 3)急性妄想と慢性妄想の比較 我々は,慢性的に持続する妄想と急性発症の妄 想には形態の大きな相違が存在することを見た. 各症例を従来の疾患カテゴリーに従ってうつ病, 躁病,あるいは精神分裂病と区分して,同一カテ ゴリー内で妄想形態の共通点を探すよりも,むし ろ疾患分類を外して急性型と慢性型に分けた方が まとまりが明瞭である. ここに両老を対比してみると,表3のようにま とめられる. 表3 急性妄想と慢性妄想 急性妄想 慢性妄想 形 態 可 変 固 定 妄想への巻ぎ込まれ 強 い 弱 い 情動推進変化との関係 一 致 独 立 妄想構造の主たる特徴 i妄想知覚)妄想着想 組織化想作話化 本 質 急性精神病に 謔チて与えられ ス人格構造の震

人格レベルでの 燉e的加工 急性と慢性との概念的二分は,ドイツ語圏の精 神医学では単一精神病論が衰退した後は,器質性 精神病の症状学にのみ生き残ったが,フランス精 神医学では,病因を離れた精神病理学的概念とし て生き続けた.Ey17)は意識野の解体としての急性 精神病と,人格の病理としての慢性精神病とを区 別し,その各々で特徴的な妄想形態について述べ ている.両老は明らかに異なった病態として記載 されている.Janzarik13)15)の構造力動心理学に基 づく内因性精神病の研究では,前者の主要素に産 出性の力動の逸脱を,また後者の主要素に構造の 変形をあてて,やはり根本的に区別している.ち なみにここで言う急性妄想は,あくまで妄想の形 態を特徴づけたもので,フランス精神医学で急性 妄想(d61ire aigu)17>と呼ばれている悪性緊張病或 いは悪性症候群のごとき臨床像のかつての総称, 一/119

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表4 再燃例にみられた妄想構造の経過変遷 発症年齢 妄想の構造 妄想の構成要素 症例 観察月 年齢 精神病 ^妄想 分類 診断名 iRDC) 社会適応 幻覚 主題 組織化 巻き込 噛み合 解 釈 の v 素 着想 作話 K.Schneider フ一級症状 錯乱 妄想の ]帰 サー1 62.3. 24歳 22/24 @ 〃 塞一 早H心 土 チ失 U2.12, 24歳 魯再 可 一 @十 竺升 C配,正知 上続 妄想知覚,被影

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用 .十 C影 l伝播,被影響 語の説明 分類:急一急性,慢一慢性,再一再燃./診断名:特定不能の精神病一特定不能の機能性精神病./主題:心一心気,誇 誇大,愛一被愛,劃一罪責,迫一迫害・被害,貧一貧困./妄想構造:巻き込一人格全体の巻き込み,噛み合一環界との噛み合い./ 釈の要素:正知:知一正常知覚,気配・気一気配体験,影一被影響体験,幻一幻覚./一級症状:被影響一身体的或いは意志の被影 体験,批判幻一批判形式の幻聴,対話幻一対話形式の幻聴,(命令幻)一命令形式の幻聴(K.Schneider自身は命令形式の幻聴を一 症状として採用していないが,Huberはこれを入れている)18). 1120一

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すなわち“Delirium acutum”(急性画品)とば全 く異なった意味で用いている. 2.再燃例に見られた妄想構造の経過変遷 慢性妄想の4例を除く28例の内,急性妄想とし て先に呈示した7例を除く21例は,今回が初発で はなく,かつても妄想ないし幻覚症状を呈してい た.これらの症例の今回の入院で観察された妄想 を再燃期の妄想と捉える.そのうち他院入院歴の あるものを除き,初回妄想顕現から検討可能なも の12例について経過の妄想症状の変化を論じてみ る. 再燃例:12例(表4) サー2(26歳) 昭和54年5∼6月(18歳)不眠,不安な状態で 迫害的な自己関係づけと幻聴とが出現した.11月 に落ち着いたが,その後時々躁,うつの情動推進 性の変化と幻聴との再燃があったという.しかし 病院受診はせず.58年一流私大合格.60年から62 年4月までうつ状態が続き,怠惰な生活.62年5 月から躁状態に転ずる.短時間睡眠が著しくなり, 更に錯乱性の躁病像に発展.「愛と悲しみのボレ ロ」の主人公になりきって踊り狂う激しい運動興 奮,緊張病性の表現症状に加え,一時間の失見当. 体験面では妄想知覚,妄想着想,人物誤認,身体 的場影響体験など,その場その場で様々な側面が 窺える.今回の入院後速やかに諸症状は消失.、明 るい軽躁状態を経て退院. サー3(32歳) 昭和62年2月社員の様子から「うちの会社が潰 れる」と勘ぐる.このため妹に早く結婚するよう に勧めた.同年4,月夜中突然「社長になれ」とい う幻聴.さらに亜昏迷状態に至る.脳炎の疑いで, 脳外科入院.この間「頭が悪くなる前に書置きを しなくては」と遺書を書いたり,「最後の薬をく れ」,「部屋の電線で自分が見張られているよう だ」,「考えが人に伝わる感じ,コントロールされ ているよう」などと訴える.脳炎は否定され,4 ,月!6日脳外科退院.疲労感,集中力減退,要素的 断片的な幻聴,妄想気分,意味妄想,思考伝播な どが窺われた.不安,困惑が強まり61年5月第1 回入院.罪責感が強く,「チェルノブイリ原発…僕 のせいなんです.そんな気がするんです…新聞に 書いてあります.TVでも言っています」「死なな くてはいけない.理由は分からないが間違いな い」.緊張が強く,急に舌を噛もうともする.次第 に落ち着くが,被害罪責念慮,命令,批判形式の 幻聴は続く.6月中旬産出性症状がとれ,7月末 軽うつ状態で退院.62年2月から寛解状態.8,月 24日から9月7日ドイツに一人旅.9,月3日から 周りに観察されている感じ.気配体験に基づいた 様々な妄想的解釈,更に身体的被影響体験,以前 と同じ形式の幻聴,思考伝播などの症状があり, 今回のII回入院.当初,時間の失見当が目立った. 妄想幻覚は2週間で鎮まる.単純な軽躁状態に移 行.62年11月退院したが,まもなく緊張が強まる と共に,思考伝播,「ドイツ人に追われている」と の前回と類似した内容の不安が高まり,63年1月 III入院.産出性症状はすぐに消槌. サー5(34歳) 昭和60年12.月下旬急性発症.誇大迫害的,思考 伝播,作為体験,不眠.当時は妄想知覚,妄想着 想などを主体とした開花性の妄想状態で明瞭な環 界連関性を有していた.外来通院治療により回復. 62年1月急性増悪.不安,緊張の強い幻覚妄想状 態で緊張病症状も呈した.入院1.5月退院した が,その後も急性増悪を繰り返し,その間に次第 に幻聴,思考泣声が出没.62年暮れからの急性増 悪では,やはり不安,緊張,絨黙が強く入院II, 思考吹入,身体的被影響体験が前景に見られ,逆 に環界連関は喪失.治療により幻聴を含めすべて 消失. サー7(26歳) 昭和60年1月から就職問題で悩み始める.徐々 に寝起きが悪く,夜寝つけなくなってきた.1月 下旬から落ち着かず,泣いたり家を飛び出したり. 両親に唐突に,「本当に生みの親か」と問い詰めた りもした.学校を休んだ日に三越休業の新聞広告 を見つけると,「余りにも偶然だから裏があるので は」と,実際に日本橋まで確かめに行った.その 他様々妄想的に関係づける.60年2月8日関連病 院入院.幻覚は見られず,様々な側面で関係づけ が目立ち,不安,当惑.60年4月9日当院転院(1). 一1121

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急性期が終った後も,漠然として被支配感が続い た.6ユ年4月6日退院.大学院に復帰.関係づけ はありながら辛うじて通学.指導教官の理解ある 指導により62年3月修士過程終了.この間61年8 月頃からは比較的単純な軽躁状態.やや不規則な がら躁,うつが62年2月まで続いた.62年4月か ら不安緊張.思考伝播,幻聴などを訴える.第II 回入院.些細なことを種にして「余りにも偶然が 重なりすぎる,なんとなく人に操られている感じ がする」と訴え続ける.万事に自信がなく,決定 場面ですぐにパニックに陥る.次第に,自身の運 命は自分以外の外部の事象に偶然によっておまじ ない的に決定されるとの妄想が出き上がりつつあ る反面,子供じみた超能力の誇大妄想も出現して きている. サー8(44歳) 昭和30年(14歳)から39年まで長いうつ状態. 41年には3ヵ月間尊大な躁病相出現.以後意うつ 両病相が交代.当初優勢であったうつ病相は次第 に短くなり,躁病相が優勢化.また寛解期も41年 以降は無くなる.44年9月迫害念慮出現.これは 躁病の鎮静と共に消失したが,46年不眠,不安緊 張状態で入院.誇大迫害的で,幻聴や異常身体感 覚,「念疇師」に体の内圧を400ボルトにされると の被影響体験を窺わせる言辞.以後躁うつの情動 推進面の変化に伴って,妄想幻覚症状も出没.主 題は常に荒唐無稽な迫害念慮.当初は情動推進変 化の鎮静と共に鎮まっていたが,次第に極心以外 の時期にも広がる傾向.55年の当科第VI回入院以 降は長いうつ状態で外来治療.60年2月再燃し, 第V[1回入院.独語,空笑,緊張,易怒的.女性の 声の幻聴を肯定,身体的被影響体験.その後も急 性増悪を繰り返し幻聴が再燃,一方で自身の生活 史に関連づけた,たわいもない作話が目立つとき もある.これらは出没しつつも,うつ状態では消 失する, サー12(29歳) 教師となって最初の4年間は無事に勤めてい た.学年主任が変わって事ある毎にいじめられる ようになった.校長に直訴の度に説得され,思い とどまっていたが,いじめは続いていたという. 62年6月痔の手術のため1カ,月休職出て来ると 生徒の様子がおかしい.「精神病で入院した」と, ある教師が言い触らしていることが分かった.も うだめだと感じ,8月退職.11月別の学校に再就 職.一週間ほどして,職員室の雰囲気がおかしい ことに気付く.「犬」「粗大ごみ」とも言われる.

2週間で退職家ではうつ状態.63年2月再就職

の話が決まり,この頃から元気回復.3月7日か つての学校の理事の家に遊びに行ったが,そこで くだんの学年主任が栄転することを聞き,翌日か ら様子が変わる.入院時,不安緊張.筒抜け体験, 「脳波線」「おまえの両親を殺す」といって来る, と.10日目鎮静.軽躁状態に移行.急性期の体験 には批判ができるが,62年以来続いていた迫害念 慮に対しての確信は変わらない. 再燃期は何度繰り返したものであっても,初発 の急性妄想と同様に産出性症状に人格全体が巻き 込まれる.その際基底には,同じく推進の強い感 情状態が存在するが,感情の生命的な情緒面を喪 失し,不安緊張としか呼べない非特徴的な感情態 になることが珍しくない. 再燃期の妄想の形態は,先に挙げた慢性および 急性妄想の構造に比較すると,やや異なった様相 を呈する.妄想が未だ慢性化していな:い症例では, 急性初発妄想と同じく強い感情態の中で,自我の 統一性が破綻した錯乱的な体験様式が見られる (サー1,2).また一方で錯乱性運動興奮の著しく ない症例では,「開花性」と呼ばれる,気配体験を 主軸とする多彩な妄想幻覚症状が出現する(サ ー3,5).いずれも急性妄想で挙げた特徴はそのま ま保持されているが,急性および漫事妄想群では みられなかった幻覚性要素が多くの症例で出現す るとともに,K. Schneiderのあげた精神分裂病の 一級症状の出現頻度が極めて高いことが大きな特 徴である.ちなみに急性初発妄想でもみられた妄 想知覚だけではなく,それ以外の一級症状が,再 燃期になって初めて出現した症例は,急性妄想の 再燃1例を含めた計13例中7例存在する.残りの 6例は,初発からその他の一級症状を呈していた もの(サー3,5,6)3例,この他には,再燃期は

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強い錯乱病像のため被影響体験の存在が疑われな がら確たる所見として取り出せないもの(サー2), 初発の幻覚の構造が不明なもの(サー10),また再 燃期にその他の一級症状が出現しないもの(サ ー11)各1例からなる. 今回の観察に至る前に完全寛解が先行せず,妄 想幻覚は明確に認められずとも社会生活にかなり の障害が見られた症例では,再燃期病像の症状ス ペクトル内部での一級症状は更に前景化する(サ ー5,9,10).また当初は錯乱性病像を呈し,一級 症状は断片的に捉えられるに過ぎなかったもの が,次の再燃では開花性の妄想幻覚状態に移行し, 更に気配体験などの外界の知覚要素からの妄想的 解釈は背景に退き,環界連関を喪失して,一級症 状のみが目だつ症状形成になるという経過も観察 された(サー3,7,8).つまり妄想幻覚体験の全 体像は,錯乱性あるいは開花性の体験変化から, 要素的な独立した症状へと非常に貧困化する.そ の後の経過を見ると,再燃期にある妄想も,大き な形態可変性を有する.不安,緊張が鎮静し軽躁 状態を呈すると共に,妄想は急性初発群と同様に 消失することが多い(サ4−6,11)が,40%の 症例では初発群ではみられなかった遷延傾向を示 した(サー7−10,12).この場合も決して急性増悪 期と同一妄想形態が続くのではない.急性増悪後 は,先行したパラノイア性妄想の下地に鎮まって いる1例(サー12)を除いては,再燃後に遷延する 妄想形態は,いずれも作話的な妄想加工を蒙って いる.当初は思い付きのような突飛な言辞と奇妙 な表現症状で終始しており,後になってようやく 幻聴の存在が明らかになった1例(サー9)は,次 の再燃では,命令形式の幻聴や思考伝播など明ら かな一級症状を呈し,またこれに関係して衝動的 な暴力行為を伴ったが,軽躁気分にまとまると更 にこれらを基に慢性型の空想作話性妄想を発展さ せた.妄想幻覚症状,特に一級症状を呈するレベ ルのものは,たとえ一旦消画しても独自の構造を 人格内に後付けるものと考えられ,次の急性増悪 では再び同様の形式で再現されると共に,更に新 たな展開を遂げる.この際外界からの妄想知覚的 要素は次第に妄想の主要成分ではなくなり,妄想 独自の物語化が展開する.すなわち慢性妄想に近 づいてくる(サー6−10).中には,妄想性要素を欠 く幻覚症が,再燃後に遷延した症例も存在するが (サ畦0),この症例では,幻聴の中で空想作話的内 容が顕著になり,逆に一級症状の特殊構造は輪郭 の明瞭さを奪われてしまう. 再燃そのものは,急性例と同じく内因性精神病 の疾病的本質を反映する情動推進変化に規定され てのものと考えられる.再燃を繰り返す長期例に おいて,再燃と一級症状との関係を見ると,妄想 が慢性化した症例では一旦一級症状が出現すると 次の妄想再燃期にも一級症状が再来していること が分かる.一級症状のこのような再現傾向と,形 態の変遷傾向とによって急性妄想から慢性妄想な いしは幻覚症への方向づけが行われていると考え られる. 結 論 妄想の形態に主眼をおいたこの研究では,単一 精神病的観点に則り,診断慣習としての疾病分類 による区分を差し当たりは取り払い,ひとえに妄 想の経時的性質に注目した.その結果,近年はあ まり重視されない概念である急性妄想と慢性妄想 との区別が重要であることが明らかになった.ま た,従来急性の妄想形態の代表形とされている急 性幻覚妄想状態とは異なった急性妄想状態を,本 来的な急性形態として取り出した.急性妄想状態 を経た後に急性幻覚妄想状態が出現する傾向は, 二,三の症例(キー6,サー1,8)でエピソード ごとの形態変化として表1,3でも明かである. Janzarikの「妄想から幻覚へ」15)の表現も長期経 過で同様の傾向を指摘したものである.このよう に経過にみられる一定の方向性から,急性の妄想 の原型は急性妄想幻覚状態の前段階,すなわち精 神分裂病性の現象が未だ明瞭には認められず,診 断的にも多義的な状態に同定できる.この場合, 一級症状の内の妄想知覚は,急性初発期にもしぼ しぼ現れることから,急性妄想に必発ではないに せよ,固有の現象と把握できる.急性分裂病によ くみられる幻覚妄想状態は,この急性妄想を±台 にして発展した現象と捉えられる.しかし二,三 の症例は,急性初発期から多彩な一級症状を呈し 1123一

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ている(サー3,5,6).また,急性増悪に先行 して幻聴が長期に先行した例もある(サー10).キ ー6において我々は,急性初発妄想が一旦鎮静して 間もなく続いた再燃で,被影響体験,批判幻聴な どの明らかな分裂病症状が出現するのを観察し た.この症例は急性発病直後から観察されたもの であるが,病院受診が遅れていれば,初回入院時 に観察された急性妄想の中核的な病像は問題にさ れなかったであろう.サー3,5,6,10について も早期に急性妄想の原段階が乗り越えられてし まったことが想定される.たとえ一つの病心ある いはエピソードであろうと,その中での精神科的 状態像は決して一定はしていない.特に急性度が 強いほど変化は激しい.Conrad19>は急性分裂病で の初期の状態像変化を記述している.堀川ら2のの RDCによる横断面像評価の縦断的観察でも,同様 のことがいえる. 急性妄想の症例は,強い感情性要素から,うつ 盲あるいは躁病,或いは卜うつ混合状態と考えら れるかもしれないし,また時には妄想の内容に よって分裂感情病,更に精神分裂病にかろうじて 算入されるものもあろう.たとえ躁うつ病圏に帰 属されようが,それらはK.Schneider4)の穏和な 気分変動を軸にした循環病の範囲を大きく逸脱し た状態像である.柴田14)は急性期に多くみられる 不安に彩られた状態像を不安性躁病としてみてい る.単一精神病の一次性感情障害であるうつおよ び躁段階と同主旨で,躁うつ病の基本障害として は感情の生気的色彩よりも,推進面に注目しつつ, 柴田はこれらの状態を,基底となる生命層の推進 性の急激な充進とそれに翻弄される自我の不安と によって特徴づけて,不安性躁病と把握した.診 断名をどうつけるかは,当該のおよび近接の疾病 概念の慣習的境界設定に依存している.しかし急 性妄想の現実は,循環性のうつ,躁の基調気分か ら直接演繹できる,いわゆる「気分に調和した」 性質とは異なっていることは明ちかである.疾病 区分を外した時にこれらに共通しているのは,情 動推進面の急激な強い変化,Janzarikが産出性の 力動の逸脱,分けても力動の不安定と呼ぶ内因性 精神病の疾病的な要素である.急性妄想はこのよ うな生物学的レベルの変動に規定された,人格構 造の震憾と捉えられた. 急性妄想を出発点として,妄想の経時的変化を 観察すると,加工的な慢性妄想に至るまでの一定 の道筋が窺われる.妄想幻覚を中心とした産出性 症状の範囲でその道標となるのが,一級症状であ る.一級症状のうち妄想知覚は,急性初発妄想に もしぼしぼみられる.しかし妄想知覚単独ではな く,被影響体験や特殊な:形式の幻聴などが華々し く,すなわちいわぽ「一級症状群」として出現す るのは,初発時よりもむしろその後の再燃期によ り多く認められる.見方を変えれば,妄想知覚は, 他の一級症状の導入的な役割を果たしている.し かし再燃を繰り返すうちに,気配体験に基づく妄 想知覚は一級症状のスペクトルから消える.他の 一級症状のオンパレードも早晩みられなくなる. .すなわち人格構造全体の震憾としての急性妄想, 或いはそのバリエーションとしての錯乱状態,開 花性の幻覚妄想状態などは消甚し,急性再燃期で も次第に害鳥連関を喪失し,孤立した二,三の一 級症状を呈するに留まるようになる.代おって恒 常的になりやすいのは,慢性妄想として,或いは 持続性の幻覚の内容として現れる空想作話であ る. すなわち一級症状は,急激に押し寄せる急性妄 想やそれに準ずる再燃期の妄想体験の波頭に浮か びつつ,自身も変容しながら妄想幻覚を慢性型に 導く役割を果たしている.K. Schneiderの意図を 汲んだ診断基準の分類にみられるように,一級症 状の中の一つ二つが有るか無いかを診断区分に適 用する時,一級症状は決して予後指標的ではあり えない.しかし経過中のスペクトルの変化は,患 者の人格の変化を反映し,ないしは方向づけるも のとして,予後予測の資料たり得る. 急性妄想,急性増悪期の妄想および慢性妄想を 呈示する人格構造の障害のあり方に注目すると, 一定の変容が窺える.すなわち,急性妄想の忘我 状態,つまり全般性の自我の能動性障害から,再 燃期において被影響体験として雛形的に現れる, 部分的な能動性障害と他の構造部分の自主性回復 との相剋を経て,更に慢性妄想にみられる,妄想

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加工を可能にするまでの人格全体の能動性回復に いたる道筋である.但し慢性妄想における自主性 の回復は,人格構造が変形したことを通じて獲得 されたものである.その際,面々との現実的な接 触が犠牲にされ,失われていることが,慢性妄想 患者の妄想構造と生活態度から明らかになってい る.Janzarikは,一級症状,特に妄想知覚以外の ものを構造変形の早期の徴候とみている.とりわ け,急性妄想に近い,開花性の妄想幻覚構造の枠 内で顕現した多様な一級症状が,再燃を繰り返す うちに変化し,妄想形態は開花性を失うと共に, 個別化された一級症状のみの症状顕現に限定され てきFた時には,人格構造が変形していることを表 す,より直接的な微標とみられる. ま と め 1.急性妄想と慢性妄想とは構造に大きな相違 がみられる.疾病分類が現実には妄想症状の鑑別 に部分的に依拠している今日,そこから独立した 純精神病理学的概念として,妄想の慢性構造と急 性構造との区分は重要である. 2.急性妄想は可逆的であり,変容可能性をも つ.慢性妄想は固定しやすい. 3.妄想構造の相違は,人格構造が受けた変化の 相違を反映している. 4.しかし妄想の形態の相違は疾患や人格の相 違にのみ基づくものではない.両老の特性は一人 の患者の経過の中に現れることもある. 5.一級症状は急性妄想に依拠しつつ成立する が,急性の妄想現象に固有の事態ではない,むし ろ急性妄想を経た後の再燃段階でもっとも華々し く出現する. 6.妄想知覚と他の一級症状とは出現消裾の好 発時期がずれる. 7.妄想症候群内部に限って一級症状の位置づ けを考えると,一級症状は短期的には急性妄想と ともに形態可変性を有し,また長期的には再燃期 で再現しやすい.一級症状そのものは慢性妄想で はみられないが,形態変容の傾向を持ちつつ,次 の急性増悪で再現することによって,急性妄想か ら慢性妄想或いは幻覚症へ,すなわち疾病段階か ら人格変形の段階への乗り越えを指標する役割を 果たす. 稿を終えるにあたり,御校閲を賜った柴田収一主任 教授に厚くお礼申し上げます.またこの研究の土台と なる各症例の病歴の記載をされた精神科3階病棟担 当の同僚諸氏に厚く感謝いたします. 文 献

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2)Kick H:Der Forschungsansatz Kraepelins

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Psychosen im Syndrompro丘lvergleich der Kraepelinschen Krankheitsbeschreibungen.

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Schizophreniebergriffes in Krankengeschichten

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6)Kloehler K:Symptome ersten Ranges:Sind

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7)The American Psychiatric Association:

DSM・III精神障害の分類と診断の手引.(高橋三 郎,花田耕一,藤縄 昭訳)医学書院,東京(1982) 8)本多 裕,岡崎祐士監訳:精神医学研究用診断マ ニュァル(RDC)国際医書出版,東京(1981) 9)原 信行,岩井一正:産出性症状の固定化につい て.精神神経学雑誌 88:800,1986

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13)Janzarik W:Der schizoa丘ektive Zwischen−

bereich tlnd die Lehre von den primaren und sekundaren Seelenstδrungen. Nervenarzt 51:

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14)柴田収一:感情・気分の異常.現代精神医学体系

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Barcelone・Milan(1978),「精神医学マニュエル第 5版」(小池 淳訳)牧野出版,東京(!981)

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20)堀川直史,糸田川久美,加茂登志子ほか:経過か

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参照

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(注妬)精神分裂病の特有の経過型で、病勢憎悪、病勢推進と訳されている。つまり多くの場合、分裂病の経過は病が完全に治癒せずして、病状が悪化するため、この用語が用いられている。(参考『新版精神医

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⑫ 亜急性硬化性全脳炎、⑬ ライソゾーム病、⑭ 副腎白質ジストロフィー、⑮ 脊髄 性筋萎縮症、⑯ 球脊髄性筋萎縮症、⑰