総 説
〔書整綾98第難元欝〕
脳卒中の内科療法における最近の考え方と話題
東京女子医科大学 脳神経センター神経内科(主任:丸山勝一教授) ウチ ヤマ シン イチ ロゥ内 山 真 一 郎
(受付 平成元年3月6日)Current Concepts and Topics in Medical Management of Stroke
Shinichiro UCHIYAMA
Department of Neurology(Director:Prof. Shoichi MARUYAMA), Neurological Institute,
Tokyo Women’s Medical College
はじめに 脳卒中は戦後,結核に代わり,30年間にわたっ て我が国の死因の第1位を占めてきたが,昭和56 年に癌,昭和60年に心臓病に追い越され,第3位 に後退した(図1)1).これは食生活や生活環境の 変化などにより致死的な脳出血が急減したためで あり,死因としての脳梗塞の減少は窪くわずかで, 高齢者人口の増加により脳梗塞の発生率はむしろ 増加していると考えられる.したがって,今後の 脳卒中対策は脳梗塞対策が主体となるべきであ る.また,近年,脳虚血の病態に関する生化学的, 生理学的,病理学的,血液学的ならびに薬理学的 研究の進歩には目覚ましいものがある.このよう な背景を踏まえ,虚血性脳血管障害の内科療法に おける最近の考え方と話題を中心に,本教室での 蕃50 誓
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望・・ 0 脳出血 脳梗塞 昭和3234363840424446485052545658 年 図1 脳卒中,脳出血,脳梗塞死亡率の年次推移(全 国男女計) 資料:厚生省「人口動態総計」1) 成績を紹介しながら述べてみたい. 急性期の治療2)∼5) 1.Vital signのcheck 脳卒中患者が転送されてきたらまず最初に生命 維持に必要な脳心肺機能を把握するため,意識レ ベル,血圧,脈拍,呼吸,瞳孔をcheckする.意 識レベルはJapan Coma Scale(3−3−9度)よりも国際的に通用するGlosgow Colna Scaleで
表記することが望ましい.Vital signに何らかの 異常を認めた場合にはまず次のような治療を行な う.
2.Primary careのABC
1)Air way 仰臥位で頚部伸展し,肩越をして,下顎を前上 方に挙上する.舌根沈下,呼吸抑制のある患者で は口腔内を清掃し,air wayを挿入する.嘔吐する 時は誤嚥を防ぐため麻痺側を上にした側臥位の coma positionにする. 2)Breathing 上記の処置で不充分と思われる場合には気管内 挿管を行なう.通常,意識障害のある患者では PO2は70rnmHg以下に低下していることが多く, 脳浮腫を助長する要因となり,また脳組織の酸素需要からも90mmHg以上に保つことが望ましい
のでこれを目安にまず2∼31/分の酸素吸入を行な う.高齢者で気管支肺炎を合併したり,補助呼吸 が長期間に及ぶと考えられる場合には気管切開を迂
HDA*(十)一抗血栓療法は禁忌《驚ll縷1
*HDA=high derlsity area
図2 CTによる治療方針の決定 施行する. 3) Circulation 意識障害患者では翼状針による点滴は不適当で あり,患者の体動による抜去や血管外への漏出を 防ぐため静脈内留置針により確実に血管を確保 し,三方括栓をつけて血腫可能な状態とする. 3.緊急CT(図2) ここまでの救急処置を終了したら診断と治療方 針決定のため頭部CTを施行する.頭蓋内に高吸 収域を認めたら抗血栓療法は禁忌であり,梗塞に よる低吸収域は発症後早期には認め難いので,病 歴聴取により発症と経過(temporal pro負le)から 脳卒中と考えられたら,たとえ低吸収域が不明瞭 であっても高吸収域がなけれぽ虚血性脳卒中と考 え抗血栓療法の適応を考慮する.脳内に高吸収域 を認めた場合外科的治療の適応を考慮するが,血 腫の部位と大きさ,意識レベル,神経症状,年齢, 他臓器合併症により決定される5)∼7).被殻出血,小 脳出血,皮質下出血は血腫量,意識障害,神経症 状を勘案して脳外科医と協議の上適応を決定す る.意識障害のない,小出血例は内科的保存療法 を行なう.視床出血や橋出血は解剖学的位置関係 から手術侵襲が大きいため一般には開頭による血 腫除去術の適応はない.CTでクモ膜下出血が疑 われた場合には直ちに脳外科に転科させる. 4.経鼻胃管と尿道カテーテルの挿入 意識障害患者には入院時,経鼻胃管を挿入し, 吸引により胃内容物を排除し,口書気のある場合は メトクロバミド(プリンペラソ⑭)を静注する.ま た,同時に尿道カテーテルを挿入し,陰部の汚染 を防止し,検尿や尿量モニターに備える. 5.輸液4)8) 意識障害患者では自発的経口摂取が不能であ り,脳圧充進による嘔気,日区吐が経口摂取を妨げ るため脱水状態に傾いているので輸液による是正 が必要となるが,過剰な輸液は脳浮腫を助長する ので注意を要する.また,病変が視床下部に影響 を及ぼすと中枢性の水分・電解質異常を来しうる ことも念頭に入れておく.要は脳浮腫を助長する ことなく,水分・電解質の必要量を補給すること であり,1日輸液量は正常必要量よりやや少なめ にし,発作当日は電解質1号輸液(Na 65∼90 mEq〃, K O∼2mEq/1, Cl 55∼77mEq/1,糖2.5%
など)を開始液とし,1,000∼1,500mlを投与する.
2日目以降は維持輸液である3号輸液(Na 35
mEq〃, K 20mEq〃, C135mEq〃,糖4.3∼10% など)を1,500∼2,000ml投与するが,脳浮腫発生
の可能性のあるものでは2日目以降も1日
1,000∼1,500m1に抑える.ただし,高浸透圧利尿 剤投与の際は脱水や電解質異常が生じうるので 1,500∼2,000mlは必要である. 水分の経口摂取不充分,発汗による不感蒸泄の 増加,高カロリー輸液(IVH)による脱水は高張 性脱水(高Na血症)を来し,浸透圧利尿薬や SIADHによる脱水は低張性脱水(低Na血症)を 来す.意識障害を伴った脳卒中患者でしぼしぼ遭遇するSIADHではNa補給よりも水制限が必要
である.この他,一般に輸液中には向神経性ビタ ミンであるビタミンB群(B1, B6, B12)とCDP コリン(ニコリン⑪)やメクロフェノキサート(ル シドリール⑧)などの脳代謝賦活剤を入れて点滴 することが多いが,劇的な効果が期待できるもの ではない. 6.栄養9) 意識障害患者では72時間後,腹部膨満なく,腸 管蠕動が良好なら経管栄養を開始する.製剤とし てはエレンタール⑪,クリニミール⑧,ベスビオソ ⑧,ハイネックス⑪,サンエット⑧などがあるが,逆 流を避けるため1回300mlまでとし,浸透圧利尿 や下痢を避けるため低脂肪低蛋白のものがよく, 1kca1/mlになるように調整し,開始にあたっては 1/4∼1/2濃度より,下痢・亟吐・高血糖のないこ とを確かめながら1日毎に濃度を上げていく.口区吐,下痢,消化管疾患のため経管栄養ができ ない場合には高カロリー輸液(IVH)を行なう. 製剤としてはパレメγタールA,B⑭,ハイカリッ ク⑧などがある.糖濃度を10→15→20%と各濃度 最低1日以上続け,高血糖,電解質異常のないこ とを確かめながら段階的に上げてゆく.成人の投 与基準量は1日当たり水分40∼50m1/kg,カロ リー40∼50kca1/kg,アミノ酸1∼2g/kg, Na 3∼4
mEq/kg,α3∼4mEq/kg, K 1∼2mEq/kg, Ca, Mg, P各々0.5∼1mEq/kg程度と考えられてい る. 7.脳浮腫対策10)∼12). 脳血管障害に伴う病態で,予後に重大な影響を 与えるものに脳浮腫があり,意識障害を伴う脳卒 中患者では必発であると考えた方がよい.
虚血性脳卒中では初期に細胞障害性浮腫
(cytotoxic edema)をきたし,やがて血管障害性 浮腫(vasogenic edema)に移行するといわれて いる13).脳室穿破を伴う脳出血やクモ膜下出血で は間質性浮腫(interstitial edema)も生じる.脳 卒中ではこのような種々の脳浮腫が生じるので病 型に関係なく抗浮腫薬を用いることが脳ヘルニア 予防のため重要である.脳出血では発症直後より 脳圧が充進ずるが,脳梗塞では発症3∼5日後に 脳圧が最:高となる.一般に脳卒中による高度の脳 浮腫は2週間で消退するため脳浮腫治療は発症後 2週間以内の急性例が対象となる. 1)浸透圧利尿薬(高張液療法) 現在,この目的に使用されている浸透圧利尿薬 はグリセロールとマソニトールである.グリセ ロールは我が国で5%フルクトースの混合により 溶血(ヘモグロビン尿)を防ぐなど改良され臨床 的に広く用いられている.グリセロールは脳組織 で代謝され,エネルギーとして利用されるので脳 組織中と血中の浸透圧差の逆転による反跳現象が 生じにくい.また,血漿増量と.血液粘度改善によ る脳血流増加も期待できる.欧米ではこれまでグ リセロールが予後を改善したという報告がなく, 殆んど用いられていなかったが,最近,多施設共 同研究が行なわれ,脳梗塞急性例で有意な救命効 果を認めたとの報告がなされた瑚.投与法は10%溶液400∼800ml/日で,1回200m1を1∼2時間
かけて点滴静注する.大量投与時には電解質の不 均衡と脱水に注意する. 脳浮腫が発生すると種々の脳ヘルニアを生じう るが,このうちcingulate herniation lま生命には 直接影…響せず,tonsilar herniationは致命的であ り,critical careの対象として最も重要なものは uncal herniationである. Plumら15)は意識がstu−porからsemicomaで,動眼神経圧迫による病側
の瞳孔散大はあるが対席反射と痛覚に対する反応 は残存しているearly uncal herniationと, coma で完全な瞳孔散大と対光反射消失があり,除脳硬 直,中枢性過呼吸が出現するlate uncal hernia− tionを区別している.このうち1ate herniationは まず救命不能であり,critical careの対象となる のはearly herniationで,この場合,即効性があ り,強力な抗浮腫作用を有するマンニトールの適 応となる16).投与法は20%液1回5∼15ml/kgを 100ml/3∼10分で点滴静注し,1日1,000mlまで とする.あるいは,同じく利尿作用があり,髄液 産生抑制作用も有するフロセミド(ラシックス⑧) とのカクテル療法を試みる.これは,マンニトー ル60mlとうシックス40mlから成る!00ml混合液 を5ml/時間(最高10ml/時間)で持続点滴するもの である.マンニトールは,グリセロールに比し, 急速な利尿効果があり,神経症状も急速に変化し うるので,経時的に尿量,意識,瞳孔,呼吸を観 察して適宜増減し,短時間のみ使用してtapering するが,グリセロールと異なり脳組織に移行した 後代謝されないためreboundが生じやすいこと に注意し,taperingは徐々に行なうか,グリセ ロールに変更してゆく.マソニトールの使用にあ たっては急激な利尿による脱水,電解質異常,心・ 腎機能障害に充分な注意を払う必要がある. 2)副腎皮質ステロイド ステロイドは脳腫瘍に対する脳浮腫には極めて 有効であるが,虚1血性脳浮腫に対しては効果が期 待しにくく17),現在余り用いられていない.特に, 消化管出血,感染症,糖尿病がある場合にはこれ らを悪化させる危険性があるので用いない方がよ いエ8).用いるとすれぽデキサメサゾソかベータメ
サゾンを初回10∼12mg静注し,以後2∼8mgを3 ∼6時間毎に筋注(または静注)し,1∼2日毎 に半量ずつに減量してtaperingする. Tapering に要する期間は重症度,臨床経過,合併症により 考慮するが,10日間以上は漫然と使用するべきで はない.
3)抗酸化薬free radical scavellger
虚血性細胞障害の原因として活性酸素(free radical)による膜障害が注目されている19).これ に対し,各種の抗酸化薬がfree radicalを補足す ることが知られている.グリセロール,マンニトー ル,ステロイドにもこの作用があることが知られ ているが,その他にビタミンE20), barbiturate19), superoxide dismutaseL1), naloxone21)などが報告
されている.Suzukiら20)はビタミンE,デキサメ サゾン,マンニトール(例えば各々800mg,16mg, 300ml×2/日)から成る仙台カクテルを推奨して いる. 4)カルシウム拮抗薬22) フルナリジン,ニフェジピン,ニカルジピン, ニモジピソはCa23>の細胞内流入を阻止し,ミトコ ンドリア呼吸障害を予防し,抗低酸素作用,細胞 膜保護作用,抗血管玉縮作用を有することが報告 されている.このうちフルナリジンはベントバル ビタール,ニゾフェノン,ジアゼパム,フェニト イン,グルタメート拮抗剤とともに脳血流再開後
の遅発性神経細胞壊死(delayed neuronal
death)24)を阻止することが報告されている25).し かしながら,Ca拮抗薬には血圧降下作用があり, steal現象を惹起するとの報告もあるので,急性期 に抗浮腫薬として使用するには今後更に検討が必 要であろう. 5)アラキドン酸カスケード阻害薬23)アラキドン酸カスケードから産生される
thromboxane A2(TXA2), leukotrien C4・D4は 強力な血管作動性物質であり,血管収縮,血管透 過性西進を惹起し,脳微小循環や脳代謝を障害す るとともに脳浮腫の進展,増悪をもたらす.これを阻止するため各種TXA2合成酵素阻害薬,
cyclooxygenase阻害薬,5−lipoxygenase阻害薬 などの投与が考えられ,一部の薬剤は我が国でも 臨床治験が開始されている. 8.血液希釈療法26) 急性期脳梗塞患者ではヘマトクリット(Ht)が 上昇しているため,血液粘度の上昇していること が多い27).血液粘度上昇は脳血流量を減少させ,脳 虚血を増悪させる.それを是正するための治療法 が血液希釈療法で,これには潟血と血漿代用薬の 投与がある28).我が国では三門療法は一般化して いないが,血漿代用薬の投与はよく行なわれてい る.希釈には通常低分子デキストランを用いるが, ヒドロオキシエチル澱粉(ヘスパンダー⑧)も用い られる.いずれも1回500mlを点滴静注する.低分 子デキストランには赤血球や血小板の凝集抑制作 用もあることが知られている.血液の希釈により 脳血流が増加しても動脈血酸素(ヘモグロビン) 含量も減少すれぽ脳酸素供給量(=脳血流量×動 脈血酸素含量)は必ずしも増加しないので,これ を最大にする最適のHtが問題となり,40∼45% が推奨されている.しかしながら,血液希釈療法 の有効性については否定的な報告29)もあり,まだ 評価は定まっていない. 9.抗血栓療法(図3) Temporal pro丘leから脳卒中が疑われ,頭部 CTで頭蓋内に高吸収域を認めなかった場合には 脳梗塞とみなし抗血栓療法の適応を考える.抗血 栓療法には抗血小板療法,抗凝固療法,血栓溶解 療法があるが,抗血小板療法は慢性期に再発予防 のために行われる治療法であり,急性期に行なわ 損傷血管への血小板の粘着 } 抗血小板療法 血小板の凝集(白色血栓) 十 抗凝固療法 フィブリン形成(赤色血栓) 血栓溶解療法 フィブリン溶解 ×阻止 ○促進 図3 抗血栓療法の種類れるのは抗凝固療法と血栓溶解療法である. 1)抗凝固療法 脳血栓症に特徴的とされる進行性脳卒中(pro− gressing stroke)には抗凝固療法の適応がある30). 抗凝血薬としてはheparinを用い,補液(例えば 5%ぶどう糖液)500m1に混合し,持続注入装置を 用いて1日1万単位前後から開始し,部分トロン ボプラスチン時間(APTT)で1.5∼2倍にコント ロールするように投与量を増減する.出血合併症 が生じたら直ちに投与を中止する.大量出血時に は硫酸プロタミソで中和する.投与目標は,7∼10 日までとし,以後ワーファリン,抗血小板薬へと 切り換えていく.最近,ヘパリン誘発血小板減少 症を生じにくい低分子ヘパリンの皮下注療法が注 目されている.また,抗トロンビン薬(MD・805) も開発され,臨床治験が行なわれている. 脳塞栓症では出血性梗塞を生じる危険性がある ので抗血栓療法の適応から除外した方がよいとい う考えが日本では根強いが,一方脳塞栓症は発症 直後程再発頻度が高い(発症後2週以内10∼20%) ので,再発予防のためには発症早期より抗凝固療 法を開始すべきであるとする考えが米国にあ る31).しかし,早期治療を行なう場合でも,発症後 48時間にCTで出血性梗塞を生じていないことを 確認してから開始することや,大梗塞例や高血圧 合併例は避けるという条件を指摘しているものが 多い32)陶35).また,胸部enhanced CT,心エコー, 111Pn標識血小板シンチなどで心腔内血栓が確認 されたら,直ちに抗凝固療法を開始すべきである (図4).また,TIAのうち発作が多発し(multiple TIA),発作間隔が短くなり,発作の持続時間が長
くなる症例(increasing TIA, crescend TIA)は 切迫梗塞(impending stroke)として緊急入院さ せ,heparinの持続注入療法を行なった方がよい. 2)血栓溶解療法(図5)36)37) 古典的な血栓溶解薬としてはストレプトキナー ゼ,ウロキナーゼ,プラスミンがあり,それぞれ 米国,日本,欧州でよく用いられてきたが,これ らの経静脈投与による有効性には特に欧米におい て否定的意見が多く,少量では血栓溶解作用が発 揮されず,多量では出血合併症が増大するという Case 61F(88・2345) 臨agnosis:Cerebral embolism
Mitral StenOSiS a日d regUrgitatiOn Atrial fibrillation
Therapy;Warfarin+Ticlopidine 100mg
Platelet lvsis:7.7%→3.6% Platelet survival:5.6 daVs→6.6daΨs
Platelet imagi胸g with l盲lln tropolone
毒
Pre
CT with contrast e哺aocement
▲
Post 、 Pre Post 図4 心源性脳塞栓症例における心腔内血栓の抽出と 抗血栓療法の効果 Ul In血小板標識法により左房にhot spotが描出さ れ,胸部enhanced CTによりこれがcold spotとし て左心耳にあることが確認されたが,ワーファリン とチクロピジンの併用療法後血栓は消失し,血小板 融解率は減少し,血小板寿命も軽度延長した. ジレンマがある.しかしながら,発症後6時間以 内のいわゆるgolden timeに10∼25万IUのウロ キナーゼかストレプトキナーゼを動脈カテーテル から血栓閉塞部位に直接注入すれぽ有効であろう という37). 従来の血栓溶解薬に対し,tissue plasminogen activator(t−PA)やprourokinase(pro−UK)は フィブリン親和性が高く,血栓形成部位に直接作 用し,全身線溶に影響を及ぼしにくいので,強力 な血栓溶解作用を有し,出血合併症を生じにくい といわれ,現在種々の製剤の臨床治験が盛んに行 なわれている. 血栓溶解療法を行なう場合にはCTで出血がな(循環血液中) β(血栓上)
P19
畦講論
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A:UKの血栓溶解メカニズム 循環血液中 t−PA聯
r コ 浜:2 Pro−UK話
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匹血栓上 { 』i 遷 { FDP B:しPAあるいはP−UKによる血栓溶解メカニズム 図5 血栓溶解薬の作用機序 松尾理36)より いことを確認することが大前提となる.また,脳 塞栓症は適応から除外される.脳血栓症の中でも 進行性脳卒中が最もよい適応と考えられる, 10.合併症対策 意識障害を伴う脳卒中患者では種々の合併症を 生じて状態が悪化するので,これらに対する治療 の成否が患者の予後を大きく左右する.「 1)高血圧 脳出血5)6)や特にクモ膜下出血38)では急性期の 血圧管理は厳密に行なう必要があるが,脳梗塞で は発症後2週以内では特に血圧に対する脳の自動 調節能(autoregulation)が障害されていることが 多いので,過度の降圧は脳の潅流圧を低下せしめ, 脳血流を減少させるので避けるべきである39).虚 血周辺部では可逆的脳障害部位が存在し,虚血半 影(ischemic penumbra)40)と呼ばれるが,降圧薬 によるこの部の潅流圧の低下は梗塞巣の拡大を招 来する.脳梗塞急性期の血圧上昇は生体の代償機 転という面もあり,脳血流を増加させるため昇圧 療法が試みられることさえある.しかしながら, 極度の高血圧も血管の過剰伸展による脳血流の異 常増加(break−through現象)41)をもたらし,脳圧 を充進させ,脳浮腫を助長する42).一般的には,収縮期圧200mlnHg,拡張期圧110mmHg以上の場
合にのみ降圧療法を行なうべきであるとする意見 が多い42). 降圧薬としては,レセルピン(アポプロン⑧) 0.1∼0.5mg筋注,ヒドララジン(アプレゾリン⑪) 20mg静注,ニフェジピン(アダラート⑧)10mgカ プセルのchewing(かみくだき舌下)か,中味の 胃管からの内服,ニトログリセリン(ミリスロー ル⑪)0.5∼5mg/kg/分の微量点滴を高血圧の程度 に応じて施行する. 2)感染症 意識障害を伴った脳卒中患者に呼吸器,尿路感 染症は必発なので,予め予防的に広域スペクトラ ムのペニシリン系,セフェム系抗生物質を2g前後 経静脈的に投与する.脳卒中患者では脳圧充進に よるロ区吐や球麻痺,仮性球麻痺による嚥下障害の ため誤嚥を生じやすいが,嚥下性肺炎が疑われる 場合には嫌気性菌を念頭に置いて抗生剤を選択す る.また,神経因性膀胱や尿道カテーテル,褥瘡 による汚染のためグラム陰性菌尿路感染症を併発 しやすい.滋雨,咽頭,中間尿培養の感受性テス トの結果により抗生物質は適宜変更する.膀胱洗 浄は頻回に施行し,尿道カテーテルは定期的に交 換する. 3)消化管潰瘍 意識障害のある脳卒中患者では大多数で胃十二 指腸にストレス潰瘍(Cushing潰瘍)43)を生じると いわれているので最初から予防的に抗潰瘍薬を投 与する.治療法は日米共通で,マーロックス⑪(水 酸化アルミニウムゲル,水酸化マグネシウム配合) を胃管より1回4∼8ml,1日4∼6回投与すると ともにヒスタミンH2拮抗薬(タガメヅト⑪,ザン タック⑭,ガスター③)の常用量を経管的または経 静脈的に投与する.便潜血は毎回必ずチェックし, 血色素の低下や尿素窒素の上昇に注意を払う. 4)痙李 脳卒中における痒変の合併頻度は病型によって 差があり,脳梗塞では10%前後との報告が多く,それほど頻度の高い合併症ではないが,合併した 場合には脳虚血や脳浮腫を増悪させ,予後に重大 な悪影響を及ぼすので,その治療は臨床上重要で ある44).脳梗塞の中でも前頭葉をはじめとする大 脳皮質を巻き込む脳塞栓症では頻度が高く,40% 以上に合併するとの報告もある44). 脳卒中に合併する1茎李には脳卒中発症後2週以 内に生じるinitial seizureとそれ以後に生じる
1ate seizureとがある. Initial seizureには通常の
抗痙李薬が効きにくく,その代わりジアゼパム(セ ルシン⑪)が有効である.まず,ジアゼパム5∼10 mgを呼吸抑制に注意しながら,ゆっくり静注し, 不充分なら1時間後に更に10mgを追加する.痙 変重積状態にはジアゼパム40∼601ngの原液を微 量点滴する.これが無効ならリドカイン(キシロ カイン⑭)50mgを血圧低下に注意しながら2分以 上かけて静注し,有効なら4mg/kg/時で持続点滴 する45).これでも無効な症例は極めて予後不良で あるが,完全呼吸管理下にチオペンタール(ラボ ナール⑪)やベントバルビタール(ネンブタール⑪) などの全身麻酔薬を投与する. これに対し,late seizureには通常の抗痙奪薬 が有効であり,大発作や部分てんかんにはフェニ トイン(アレビアチン⑧)が且rst choiceであり, 125∼250mgを血圧低下に注意しながら静注し, 予防には胃管より0.2∼0.3gを分3で投与する。 肝障害でフェニトイソが投与できない時はフェノ バルビタール(フェノバール⑧)50∼200mgを1日 1∼2回皮下または筋注し,予防には胃管より 0.1∼0.2gを分3で投与する.また,長期投与には
副作用の少ないバルプロ酸(デパケン⑧)
400∼1,200mgを分2または分3で経管または経 口投与する.側頭葉てんかんにはカルバマゼピン (チグレトール⑭)300∼600mg/日,分3の内服, ミオクローヌスにはクロナゼパム(リボトリール ⑧)1∼2mg/日,分2または分3で静注または内服 する.これらの薬剤は再発の有無,脳波,血中濃 度をみながら至適量を決め,発作が消失してから 3年経過したら,再発の有無と脳波をみながら慎 重にtaperingしていく. 5)糖尿病 意識障害を伴った脳卒中患者では一般に血糖値 が上昇しやすいが,これは生体のcrisisに対する 一種の代償機転であり,グルコースは脳組織に とって殆んど唯一のエネルギー源であることを考 えれば安易に血糖降下をはかるべきではない.し かしながら,本来,顕在性,潜在性の糖尿病のあ る患老では脳卒中発症後著しい高血糖を呈し,こ れが血管内凝固を促進し,感染症を増悪させる危 険性があるのでインシュリン療法の適応がある. ただし,低血糖は脳卒中の予後を極めて悪くする ので血糖値の降下は200mg/dlまでを目安にす る. 重症脳卒中患者では高浸透圧性高血糖性非ケト ン性糖尿病性昏睡(hyperosmolar hyperglycemic nonketotic diabetic coma)が発生しうることに 注意する.この病態ではしぼしぼ局所的な神経症 状を呈するので脳卒中発作と問違えられ,診断を 誤まると予後に重大な影響を及ぼす46).治療はま ず脱水に対して低張輸液を投与し,血清Naを130 mEq/1以下に下げ,高血糖に対して速効性インス リンを投与し血糖値を300mg以下にする8). 慢性期の治療 1.基本的考え方 脳血管障害患者では血管支配領域の脳組織が損 傷するため急性期を脱しても種々の後遺症を残 す.これらの後遺症による自,他覚症状の治療に は基礎にある脳循環・代謝の低下に対して脳循環 代謝改善薬を投与し,それでコントロールできな い症状に対しては更に対症療法的薬剤を必要に応 じて追加するのが原則となる.また,再発予防の ためには危険因子のコントロールとともに血栓の 発生を阻止する抗血栓療法も行なう必要がある. このような考え方に基づき,著者はまず原則と して3種類の薬剤を基本薬として投与することに している.すなわち,脳1血管拡張薬と脳代謝賦活 薬を1種類ずつ選択して投与し,これらに再発予 防のため抗血小板薬または抗凝血薬を1種類併用 する.これらは単独で効果が不充分なときは,も う1種類他心を併用するか,他剤に切り換える, これらの基本的投与薬でコントロールがでぎない 症候に対しては対症療法として個々の症状に対する薬剤を併用する. 2.脳循環代謝改善薬 脳循環改善薬は以前は脳血管拡張薬と呼ばれた が,最近開発された薬剤には脳血管拡張作用の他 に血小板凝集抑制作用,赤血球変形能改善作用, 赤血球凝集抑制作用,血液粘度低下作用,脳虚血 保護作用,赤血球酸素解離増加作用などを併せも つとされている薬剤が多く,これらの総合作用に よって脳循環を改善するという意味で,脳循環改 善薬と呼ばれるようになった47)48). 脳代謝改善薬は脳代謝賦活薬とも呼ばれる.脳 循環と脳代謝との間には密接な関係があり,脳循 環の減少は脳代謝を低下させ,脳代謝の低下は脳 楯環を減少させる.したがって,脳循環改善薬は 二次的に脳代謝を改善し,脳代謝賦活薬も二次的 に脳循環を改善するので,これらを一括して脳循 環代謝改善薬と呼ばれるようになった.しかし, 一次的な脳.血管拡張作用と脳代謝賦活作用により 分類して投与時期や適応を考えた方が合理的であ る49).これらの薬剤は重篤な副作用が少なく長期 連用が可能であるが,効果発現には4週間以上要 することが少なくなく,これ以上投与しても効果 がみられない場合には重縫を併用するか,他剤に 変更する. 1)脳循環改善薬 脳血管拡張薬は脳血管障害発症後3週間以上経 過してから投与した方がよいとする意見が多い. 脳梗塞急性期には病巣部の血流が増加し,反応性 充血(reactive hyperemia)の状態を示す場合が あり,これは虚1血による代謝障害に起因した血管 運動神経麻痺(vasomotor paralysis)が生じ,血 管の自動調節能(autoregulation)が失われるた め,血管の再開通や側副血行を介した血液流入が 生じた際に組織の需要を越えて血流が増加するも ので,ぜいたく潅流症候群(luxury perfusion syndrome)と呼ばれる50).過剰に供給された酸素 は活性酸素となり,強力な酸化作用を発揮して過 酸化脂質やfree radicalを発生し,組織障害を引 ぎ起こす47).したがって,急性期に脳血管拡張薬を 投与すると,このような現象を助長する危険性が ある.また,逆に脳血管拡張薬は健常部の血管の み拡張させ,脳内盗血現象(intracerebral steaI phenomenon)を惹起して虚血巣は一層虚血に陥 る可能性があるので好ましくないとの意見が多 い47).一方,これらの現象は塞栓症や中∼大血管の 粥状硬化に基づく皮質枝型の中等大∼大梗塞例に みられるが,穿通頭型の小梗塞には生じないので, lacunar infarctによるminor strokeには発症直 後より用いてよいとする意見もある51). 脳梗塞も発症後3週間を過ぎるとluxury per− fusionも消失し,脳組織も安定してくる.この時 期における脳血管拡張薬投与の目的は,梗塞巣周 辺の脳血流は減少しているが脳代謝は保たれてい る可逆的部位(ischemic penumbra)40),側副血行
路,慢性低潅流状態(chronic low perfusion state), misery perfusion(血液供給量が組織代謝 量に比べ異常に低下した状態)52),diaschisis(梗塞 部から遠隔部位における血流代謝異常)53)におけ る脳循環の改善にある. 脳循環改善薬の脳血管障害後遺症に対する効果 は自覚症状の改善率が特に高いのが特徴といわれ ており,自覚症状70%前後,精神症状40∼60%, 日常生活動作(ADL)30∼40%,神経症状20∼30% の改善率を示すことが多い54)。ただし,偽薬でも自 覚症状51%,精神症状41%,神経症状32%の改善 率を示すとの報告もあり55),有意ではあるにせよ, placebo効果と自然経過がかなり含まれているこ とを念頭に置く必要がある.これらの薬剤の有効 性については臨床評価だけでなく今後positron
emission tomography(PET), single photon emission computerized tomography(SPECT),
Xe CTなどを用いた脳循環代謝の客観的な評価 が必要であろう. 脳血管拡張薬は大別して平滑筋を直接弛緩する 薬剤と交感神経α,β受容体に作用する薬剤に分 類される(表1)47)48)51)56).平滑筋弛緩薬の代表は パパペリンであり,この他にニコチン酸製剤やキ サンチン誘導体などがあるが,最近頻用されてい るものにカルシウム拮抗薬がある.カルシウム拮 抗薬は降圧作用もあり,特にニフェジピン(アダ ラート⑪)はこの作用が強いので高血圧を伴った 患者によく使われるが,急速に血圧を下げすぎて
表1 脳血管拡張薬の種類 1.血管平滑筋弛緩薬 1)ニコチン酸誘導体 αトコフェロール(ユベラニコチネート) 酒石酸ニコチニックアルコール(ロニコールタイムス パン) 2)パパベリソ用作用薬 塩酸パパペリン シクランデレート(カピラン) フマル酸ペンシクラソ(ハリドール) マレイン酸シネパジド(プレンディール) 壇:酸ジラゼブ(コメリアン) 3)キサンチン誘導体 ペントキシフィリン(トレソタール) 4)カルシウム拮抗薬 塩酸ニカルジピソ(ペルジピン) トラジロール(ロコルナール) 塩酸フルナリジソ(フルナール) フマル酸プロビンカミン(サブロミン) 5)キニン系製剤 カルジノゲナーービ(カルナクリン) 6)ビンカアルカロイド ビソポセチソ(カラン) 2,交感神経作用薬 1)α受容体抑制薬 酒石酸イフェンプロジル(セロクラール) メシル酸ジヒドロエルゴトキシン(ヒデルギン) ニセルゴリン(サアミオン) 2)β受容体興奮薬 塩酸イソクスプリン(ズファジラン) 脳血流低下(めまい,ふらつき)や腎血流低下(尿 量減少,体重増加,浮腫)を来さないよう注意が 必要である.その点ニカルジピン(ペルジピン⑧) は降圧作用が穏やかで,脳血流増加作用のあるこ とが証明されており,使用しやすい.フルナリジ ン(フルナール⑭)は1日1回の投与で済む利点が あり,特に頭痛に有効である57)が,振戦などの錐体 外路症状の出現に注意する必要がある.交感神経 作用薬にはα受容体抑制薬とβ受容体刺激薬と があるが,前芸に属するイフェンプロジール(セ ロクラール⑪)は脳循環改善薬の新薬の治験に対 照薬として用いられる標準的な薬剤である.最近 発売されたニセルゴリソ(サアミオン⑪)もα受容 体抑制薬である.パパペリン様作用薬の中ではシ ネパジド(ブレンディール⑪)はうつや不安に,ジ ラゼップ(コメリアン⑪)は痴呆に改善率が高い. 2)脳代謝賦活薬 脳代謝賦活薬の作用機序は多岐にわたってい る.生化学的には脳酸素消費量の増加,脳内ぶど う糖利用の増加,ミトコンドリア機能促進とエネ ルギー産生系の賦活,神経伝達物質(ドーパミン, 口曳トニン,ノルアドレナリソ,アセチルコリン, グルタミン酸など)の増加などであり,生理学的・ 行動学的には脳幹網様体の賦活,脳波,各種誘発 電位や学習能の改善などが挙げられる47)∼49).脳代 謝賦活薬の薬効の特徴は精神症状に対する改善率 の高いことであり,脳循環改善薬が40∼50%前後 であるのに対し,50∼70%の改善がみられる49)54). 精神症状の中でも特に改善率の高いのは自発性低 下と情緒障害であり,知的機能に対しては十分と いえないのが現状である.すなわち,自発性低下 と情緒障害を主体とする精神症状のある患者は脳 代謝賦活薬の最もよい適応であるといえる.これ に対し,高度知呆例には効果が期待できない. ジヒドロヒルゴトキシン(ヒデルギソ⑭)は緩和 な降圧作用があるので,軽症の高血圧を合併して
いる症例に適している.1日3mgよりも6mgの
方が明瞭な効果を期待できる49).ホパンテン酸(ホ パテ⑪)は治験薬の二重盲検で標準薬として用い られており,代表的な脳代謝賦活薬であるが,面 立のある患者ではそれを誘発する恐れがあるので 避けるべきであるし,食事摂取・栄養状態不良の 患者,衰弱している患者,食欲不振・悪心・嘔吐, 肝・腎・肺機能障害,糖代謝異常のある患者では 代謝性脳症や低血糖を生じたという報告があるの で適応から除外した方がよい49)56).アマンタジン は従来抗パーキンソン薬として用いられてきた が,時に自発性低下に著効を示す症例があり,即 効性に特徴がある49)56>.ただし易興奮性や幻覚な どの精神症状を呈することがあるので,漫然と投 与するべきではな:く,無効なら2週間前後で中止 する. 最近発売された主な脳代謝賦活薬および脳機能 改善薬を表2に示す.このうちビソポセチン(ア バン⑭)は精神活動低下に著効例がある一方,興奮 性の精神症状を惹起する場合が稀にあり,チアプ リド(グラマリール⑧)は逆に刺激性の精神症状や 問題行動に改善率が高い.このような相違はそれ表2 最近発売された脳代謝賦活薬・脳機能改善薬 一般名 イデベノン ビフェメラン インデロキサジソ リスリ ド チアプリド 商品名 アバソ セレポート Aルナート エレンmイソ オイナール グラマリール 用 量 p 法 90mg,分3 150mg,分3 60mg,分3 0.075mg,分3 75∼150mg,分3 主な作用 @ 序 `TP産生促進ミトコンドリアの 神経終末でのアセチル Rリン,ノルアドレナ 潟唐フ合成促進と再取 闕桙ン阻害 シナプトゾームへのセ 鴻gニン,ノルアドレ iリン,ドパミンの取 闕桙ンを阻害し,脳内 ワ量を増加 ドパミンおよびセロト jン受容体刺激 j害ドパミンD,受容体 臨床効果の特徴 痴呆例,症状固定例に有効 夜間せん妄,睡眠障害にも効果 無気力,無関心の改善 抗うつ作用 問題行動,昼夜逆転ジスキネジアの改善 副作用 多動,痙享 不安,興奮,田田 不安,興奮,操状態 興奮夜間せん妄, s眠 錐体外路症状,悪性症 群 それの薬剤の薬理作用から推測できるところであ り,患者の病態に応じて使い分ける必要がある. 3.対症療法 1)精神症状 脳血管障害慢性期にみられる種々の精神症状は 脳血流,脳代謝の低下を基盤に発症する器質性精 神病(organic psychosis)なので,まず脳循環代 謝改善薬を投与し,しかるのちにコントロール不 能の個々の症状に対して対症的に向精神薬を併用 する. うつ状態に対しては従来三環系抗うつ薬が用い られてきたが,抗コリン作用による口渇,便秘, ふらつき,眠気などが出現しやすかった.最近, 抗コリン作用の少ない第2世代の抗うつ薬が開発 されたので,高齢の脳卒中患者に用いやすくなっ た58).薬剤としてはアモキサピン(アモキサン⑭) (25∼75mg),ドレスピン(プロチアデン⑭) (50∼100mg),マプロチリン(ルジオミール⑪) (20∼75mg),ミアンセリン(テトラミド⑪) (10∼30mg)などがある. 夜間ぜん妄は家族を悩ませる頻度の高い精神症 状であるが,ジアゼパム(セルシン⑪)などのべン ゾジァゼピン系薬剤やフェノバルビタール(フェ ノバール⑪)などのバルビタール系薬剤は無効な ぽかりか,症状を増悪させる場合があり,むしろ 禁忌と考えた方がよい59).ハβペリドール(セレ ネース⑭)やクロールプロマジン(ウィンタミン⑯) が有効である.セレネースは0.75∼2.25mgを分 2または分3,ウィンタミンは25∼100mgを分3 または分4で経口投与するが,症状が高度で緊急 を要する時はセレネース1回1A(0.5%1ml)ま たはウィンタミン1回10∼50mg相当量を筋注ま たは静注する.これらの薬剤は攻撃性,俳徊,幻 覚などの問題行動にも有効であるが,長期連用す ると錐体外路症状が出現したり,パーキンソニズ ムを増悪させる可能性があるので,症状が軽快し たらなるべく早期に減量,中止する. 不安,緊張,焦燥などの情緒障害に対してはセ レネースやウィンタミンよりもスルピリド(ドグ マテール⑪)やチアプリド(グラマリール⑬)の方 が有効であり6。),しかもこれらの薬剤は慢性期脳 卒中患者によくみられる各種のdyskinesiaに対 しても効果がある. 不眠に対してはminor tranquilizerや眠剤を投 与するが,慢性期脳卒中患者では持ち越し効果に より昼間の精神活動低下が増悪しやすいので,な るべくshort actingの眠剤を用いる61).半減期の 短いトリアゾラム(ハルシオン⑯)(0.25∼0.5mg) やエスタゾラム(ユーロジン⑪)(1∼4mg)が入眠 剤としてよく用いられ,熟睡障害にはこの他フル ニトラゼパム(ロヒプノール⑧)(0.5∼2mg)も用 いられる.高度の睡眠障害にはこれらは無効であ り,プロムワレリル尿素(プロバリン⑪)(0.5∼0.8 g)やアモノミルビタール(イソミタール⑧) (0.1∼0.3g)を用いざるをえないが,副作用も強 く,夜間せん妄を誘発しうるので短期使用にとど
める.いずれにせよ,この種の薬剤は程度の差は あれ,どれも習慣性ないし依存性が出現するので, 長期連用はなるべく避けるべきである,また,脳 卒中患者の中には睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)のため十七され,不眠を自覚す る例があり,著者ら62)は特にWalleberg症候群に 高頻度に認められ,ジメブリン(レメブリン⑪)が 睡眠時無呼吸と不眠に有効であったことを報告し ている.Sleep apneaに対してはこの他に三環系 抗うつ薬,合成黄体ホルモン,acetazolamide(ダ イアモヅクス⑪)63)などの効果が報告されている. ベンゾジアゼピン系睡眠薬はsleep apneaを増悪 させる可能性があるので避けるべきである61). 強迫哺泣・失笑に対しては,髄液でドパミン代 謝産物であるホモバニリン酸が低下していること を根拠にL−DOPAやアマンタジンが投与され,改 善したという報告がみられる64). 2)中枢性心痛 中枢性疹痛は脊髄,延髄,視床,大脳皮質,皮 質下などで痛覚伝導路が障害されて出現する自発 痛や痛覚過敏で,代表例は視床の障害によって生 じる視床痛であり,治療抵抗性の頑痛である65). ラェニトイン,カルバマゼピン,クロナゼパムな どの抗てんかん薬や三環系抗うつ薬のイミプラミ ン(トフラニール⑭),アミトリプチリン(トリブ タノール⑪)が単独または併用で用いられてぎた が,治療抵抗性のことが多い.この他,フェノチ ァジン系のクロールプロマジソやフルフェナジ ン,抗パーキンソン薬のブロモクリプチンやL− DOPAが有効との報告もある65).四環系抗うつ薬 のマプロチリン(ルジオミール⑪)が有効な症例も ある66). 肩手症候群(shoulder−hand syndrome)は肩の 落痛,運動制限に伴って同側の手の癖痛,腫脹 (puffy swelling),皮膚の潮紅,熱感を示すもので, 治療としては理学療法(ホットパックなど),星状 神経節ブロック,ステロイド(プレドニソ⑧30mg 前後より漸減)などがある48). 3)痙性麻痺 脳血管障害による麻痺は通常痙性であり,この 痙性が強いとリハビリテーションの阻害因子にな り,放置すると関節拘縮をきたす.運動障害を改 善し,リハビリの効率を高めるため種々の抗痙縮 薬を併用する(表3)67>68).最も強力な筋弛緩薬と してはダントロレン(ダントリウム⑧)とバクロ フェン(リオレサール⑧,ギャバロン⑪)がある. ダソトロレンは筋小胞体抑制薬で,バクロフェソ は脊髄多シナプス反射抑制薬であり,作用部位が 異なり,両者の併用で相乗効果が期待でぎる.副 作用として脱力,倦怠,ふらつきなどが出現しや すい.これらの薬剤より筋弛緩作用は弱いが,緩 徐な作用を示し,副作用が少ない薬剤にアフロク アμソ(アロフト⑪), トルペリゾン(ムスカルム ⑭),エペリゾン(ミオナール⑬)があり,これらは いずれも脊髄多シナプス反射抑制薬である. 4)神経因性膀胱 脳卒中患者に合併する神経因性膀胱は痒性膀胱 で,頻尿が特徴であり,抗コリン薬が適応となる. 従来,トリヘキシフェニジール(アーテン⑧)(3∼6 mg),プロパンチリン(プロパンサイン⑧)(15∼45 mg),プリフィニウム(パドリソ⑧)(45∼120mg) などが用いられてきた.頻尿に適応が認められて いる薬剤としてはフラボキサート(ブラダロン⑧) (600mg)が唯一の薬剤であったが,最近,神経因 表3 抗痙縮薬の種類 一般名 商品名 作 用 機 序 常用量 ダントロレン ダントリウム 筋彫胞体抑制 25∼150mg バクロフェン ギヤバロン 潟Iレサール 脊髄単,多シナプス反射抑制 5∼30mg アフロクアロン アロフト 脊髄,脳幹多シナプス反射抑制、 60∼120mg エペリゾン ミオナール 脊髄,上位中枢多シナプス反射抑制 150mg トルペリゾソ ムスカルム 脊髄多シナプス反射抑制 50∼300mg
性膀胱の治療薬として,抗コリン作用とカルシウ ム拮抗作用を併せもったテロジリソ(ミクトロー ル⑧)(24mg,分2,夕食後,就前または1回,就 前)とオキシブチニン(ポラキス⑪)(6∼9mg,分 3)が発売された.前者は長時間作用型,後者は 短時間作用型であるという相違がある. 4.再発の予防 脳卒中の臨床経過の特徴は発症直後に症状の ピークがあり,それ以後は徐々に軽快するか,後 遺症として固定するかであり,脳卒中そのものに よって症状が悪化するのは発作をくり返す場合で ある.したがって,慢性期脳卒中患者では再発の 予防(secondary prevention)カミ極めて重要であ り,このためには血栓の発生,進展を防ぐための 抗血栓療法と,脳血栓症の基盤となる脳動脈硬化 の危険因子のコントロールを行なう必要がある. 1)抗血栓療法
①TIA(transient ischemic attacks)
TIAは脳梗塞の前段階であり,放置すると脳梗 塞へ移行するが,TIAの再発を予防できれば脳梗 塞への進展を阻止することができるので,TIAの 治療は極めて重要である.TIAの病因は種々ある
と考えられるが,2大要因は微小塞栓
(microembolism)69>と血管不全(vascular insufHciency, hemodynamic crisis)70)であるといわれている.中でも大部分は微小塞栓によって生 じると信じられており,これは,内頚動脈起始部 などの頭蓋外頚部動脈壁に粥腫(artheromatous plaque)や粥腫性潰瘍(atheromatous ulcer)ヵミ 形成され,血管内皮が破壊されて膠原線維が露出 する,PGI2産生が行なわれなくなる,血流異常が 生じて高いずり応力(shear stress)が発生する, などにより血小板の粘着,凝集が起こり,それに より形成された壁面血栓(血小板血栓)が剥離し て脳内血管を閉塞させるものである71).実際,TIA 患者では種々の血小板機能検査法において血小板 活性化,集積,消費,破壊などを示唆する所見が 認められる(表4)72)∼78).このような病態に対して は抗血小板療法が最もよい適応になると考えられ る. 極めて多数の薬剤が血小板凝集抑制作用を有す 表4 当科で施行している血小板機能検査 1.血小板凝集能 1)比濁法:多血小板血漿 2)インピーダンス法:全血 2.血小板放出反応 1)βTG, PF4:ラジオイムノアッセイ 2)ATP, ADP:ルミ凝集計 3.血小板内カルシウム濃度lFura−2法 4.血小板sizing 1)直径測定:Micrometer 2)容積測定:Coulter counter 5.出血時間 1)Duke法 2)Simplate法
3)Filter bleeding time法(Uchiyama&Didisheim) 6.1Uln標識血小板シンチ 1)血小板寿命 2)血小板融解率 3)Imaging (血栓の描出) ると報告されているが,常用量の経口投与で明ら かな血ノ」\板凝集抑制を認める薬剤はそれほど多く なく,prospectiveな,二重盲検法による多施設共 同研究により脳梗塞の予防効果が証明された薬剤 は現在までのところアスピリンとチクロピジン (パナルジン⑪)のみである. アスピリンは米国79),カナダ80》,フランス81)にお ける偽薬を用いた二重盲検による多施設共同研究 で脳梗塞発症を有意に減少させることが示され た.しかし,アスピリンはcyclooxygenase阻害薬 なので,血小板において血小板凝集作用を有する thromboxane A2(TXA2)産生を阻害するが,血 管内皮においては血小板凝集抑制作用を有する prostaglandine I2(PGI2)の産生をも抑制してし まうという,いおゆるアスピリンジレンマが問題 にされ,アスピリンを少量にするとTXA2の産生 のみを抑制することからアスピリンの投与量は 徐々に少量となる風潮にある(図6). どのくらいまで減らせばPGI2産生を阻害しな くなり,どのくらい減らしてもTXA2産生を阻害 しうるかが問題となるが,著者ら82)83)の成績では
300mgではまだPGI2産生を阻害する傾向があ
り,81mg(小児用バファリン⑧)ではPGI2産生を 阻害しなくなり,しかもTXA2産生を阻害しえた (表5).現在更に40mgを検討中である.アスピリ表5 アスピリン,チクロピジンの単独,併用療法による抗血小板効果
300mgASA 200mgTC 81mg ASA/100mg TC Control
Platelet function test
N Pre Post N Pre Post N Pre Post N Value
PA to ADP(%) 14 54±25 34±19皐 21 67±20 27±22寧寧 27 58±27 20±14*艸 43 43±29 PA to AA(%) 14 54±26 9±7** 21 60±28 49±33 27 54±31 8±5*林 43 35±38 PA to PAF(%) 14 40±33 29±28 21 49±34 26±26零事 27 39±31 15±13廓** 43 34±40 β一thromboglobulin.(ng/ml) 14 87±80 70±65 21 109±78 69±50* 27 90±63 32±19榊 25 27±23 Plateiet factor 4(ng/ml) 14 49±43 38±40 21 61±52 32±27幽 27 48±32 13±17寧* 25 11±14 Thromboxane B、(P9/ml) 8 246±143 82±78虚 15 233±183 218±145 17 21ら±149 78±65* 16 125±22 6keto PGF、α(P9/ml) 8 35±13 25±15 15 30±16 32±14 17 32±15 28±15 16 20±10 Bleeding time(sec,) 9 247±60 399±12寧 16 278±100 459±92* 18 260±101 615±27P庫 14 283±105 *p<0.05 串*p<0.Ol ***p〈0.001
ASA:アスピリン, TC:チクロピジン, PA:血小板凝集能, ADP:アデノシン2燐酸, AA:アラキドン酸, PAF:血小板活 性化因子 Phospholipid TXA2 synthetδse mhl頃tor ↓ Phospholipase A2 011azep Arachido自ate ↓ CyclooxygenaSe ASplrln TXA2 sy口thetase TXA2 recepto「 antagonlS匙
漁
PO62 ↓・・…ydase PBH2 P612 synthetase τXA2 P602 ↓ ↓囮
↓ τlcl dlne ⇒ Adenylate cyclase← Activation ← Inhib}tion ↓ Dlpyrl amole Phosphodi巳sterase ↓
A丁P − Cyc「ic AMP
一AMP ↓ Ca什 ↓ Platelet aggregation 図6 アラキドン酸カスケードと抗血小板薬の作用部 位 ンもこれほどの少量になると特に日本人に多い消 化器症状も殆んどみられなくなる. 著者ら84)は世界で最初にTIAに対するチクロ ピジンの再発予防効果と抗血小板効果を検討し た.チクロピジン200mg(パナルジン⑪2錠)は3 カ.月間に2回以上の発作のあったTIAまたは
RIND患者において有意に再発とADP刺激によ
る血小板凝集能を抑制した.このpilot studyに引 き続いてアスピリンとの二重盲検による多施設共 同研究85)が行なわれ,チクロピジンはTIAにおい てアスピリンと同等またはそれ以上の脳梗塞予防 効果のあることが示された.最近,米国とカナダ で極めて大規模な,チク白ピジンの二重盲検によ る臨床治験の結果が発表され,3,000例のTIA,RINDにおいてチクロピジン500mgはアスピリ
ン1,300mgより有意に高い,3年間の脳卒中・心 筋梗塞・血管死発生予防率を認め(Ticlopidine− Aspirin Stroke Study)86),完成型脳梗塞1,000例においてチクロピジン500mgは偽薬に対し,平均 2年の観察期間に約30%の発症予防率を示した (Canadian−American Stroke Study)87).
しかしながら,これらの抗血小板薬の脳梗塞 心筋梗塞予防効果は,世界中で行なわれたran− damized trialの結果を合計すると有意ではある が,平均22%(SD 5%)にすぎない88).逆に言え ば78%の患者では予防できなかったことになる. これは,アスピリンやチクロピジンは単独では多 数ある血小板凝集経路の一部しか阻害しないこと が一因であると考えられる73)74)82)83).血小板凝集 にはADP,アラキドン酸(AA), PAFを介する, 少なくとも3つの異なった経路のあることが知ら れており89),アスピリンはADP, AA刺激による 血小板凝集は阻害するが,PAF刺激による血小板 凝集は阻害せず,チクロピジンはADP, PAF凝集
は阻害するが,AA凝集は阻害しない(表
5)74)79)80). これらに対し,アスピリンとチクロピジンを併 用するとADP, AA, PAF凝集は全て著明に抑制5)82)83).ただし,出血合併症の危険性も高まるの で併用療法の場合にはアスピリンを81∼100mg, チクロピジンを100mgに減量したが,それでも 各々の単独療法に比し,出血合併症は多く出現し, 出血時間は著明に延長した82)83).現在,アスピリン 40mgとチクロピジン100mgの併用療法を検討中 である. 実際のTIA患者の治療に際しては必ずしも最 初から併用療法を行なう必要はないと考える.ま ず,アスピリンかチクロピジンの単独療法を行な い,それでも再発を起こした場合併用療法を試み る.しかし,危険因子を多く有し,脳血管撮影で 高度の血管病変を認める症例には最初から併用療 法を行なってもよいであろう. その他の抗血小板薬ではジラゼップ(コメリア ン⑪)がかなり明瞭な1血小板凝集抑制作用があり, アスピリンとの併用により相乗効果が認められ, 現在,臨床治験が進行中である.かつては期待さ れたジピリダモール(ペルサンチン⑧)には脳梗塞 予防効果はないようである81).単独で血小板凝集 のmultipathwayを阻害するE−5510は強力な抗 血小板薬として期待され,現在,TIA患者におい て抗血小板効果が検討されているgo). TXA,合成 酵素阻害薬はアスピリンジレンマを根本的に解決 する薬剤として期待されたが,実際にはTXA2の 前駆物質で,血小板凝集促進作用を有するPGG2,
H、が蓄積増加する例では反応しない(non−
responder)ことがわかり,期待が裏切られたが, TXA2受容体阻害薬はこのような現象がないので より期待される91).また,CV・4151はTXA、合成酵 素阻害作用と受容体阻害作用を併せもつ薬剤とし て注目される.ただし,これらの薬剤はADP, PAF凝集に対する阻害作用がないか弱いのが欠 点である.TRK−100はPGI2誘導体としては極め て安定で,経口投与により抗血小板作用が期待で きる92).ただし,外因性のPGI2投与によるAAカ スケードに対するpostive feed−backに起因する と思われるTXA2の増加傾向が認められ,今後の 検討課題である. 抗血小板薬投与患者では出血合併症に準冠す る.最も多い出血合併症は上部消化管出血であり, 491 胃十二指腸潰瘍のある患者は原則として抗血小板 薬の投与は禁忌である.少なくともアスピリンや バナルジンなどの強力な抗血小板薬は使うべきで ない.抗血小板薬による抗血小板効果のモニター には血小板凝集能と出血時間の測定が有用であ る.血小板凝集能(特にADPによる)の過剰な抑 制と出血時間の著明な延長を認めた場合,抗血小 板薬は減量すべきである.逆に,抗血小板薬投与 にも拘らず血ノ」・板凝集能や出血時間が投与前から 変化しない場合には,服薬の有無(コンプライア ンス)をまず確かめ,問題なけれぽ増量すべきで ある93).ただし,出血時間は,耳朶を穿刺して測定するDuke法は感受性が低いので,前腕を40
mmHgに加圧して,disposableの器具を用いて測 定するSimplate法,または,著者がMayo Clinic において開発した勿読70の出血時間測定法であ る創ter bleeding time法76)∼78)によって評価し,これによる出血時間が前値の1.5∼2倍で,15分以内 を目安にする94). 脳血管造影で主幹脳動脈(内頚動脈,中大脳動 脈基幹部など)に高度の狭窄あるいは閉塞を合併 する場合は脳血管不全型の可能性が高い95).この 場合,微小塞栓型と異なり,脳外科手術の適応も 一応考慮する.手術としては浅側頭動脈・中大脳 動脈吻合術(EC−ICバイパス)と血栓内膜除去術 (endoarterectomy)があるが,白老は国際共同研 究96)により脳梗塞予防効果のないことが示され, 本学脳外科では行なわれなくなった.後者は特に 米国で多数例に施行されてきたが,これについて もneurologistの間には懐疑的な意見が多く,厳 密なrandimized trialを行なって再評価すべきで あるとの意見が湧き上がっている97>. 器質的心疾患や心房細動を有する例に生じた TIAは脳塞栓の早期再開通を考え,抗血小板療法 でなく,抗凝固療法を施行する.また,前述した ごとく,crescend TIAは緊急入院させ,ヘパリン 療法を行なう.以上,TIAの治療方針を表6にま とめた. ②完成型脳卒中(completed stroke) 米国79)とカナダ80>のアスピリンに関する臨床効 果にはTIAのみで脳梗塞は含まれていなかった
表6 TIAの病型と治療の適応 表7 ワーファリンに影響を与える薬剤と食品
Mi・…mb・li・m・yp・一[藁論艦儘s漏日晒愕 ・・m・d…m…yp・一豊離壽、畿認TC)and/o「
Crescend TIA Heparin infusion
Cardiogenic TIA一一→Warfarin が,フランス81)の共同研究においてはTIAのみな らず,脳梗塞にもアスピリンは再発予防効果のあ ることが示された.チクロピジンについても北米 の共同研究87)では前述したごとく,脳梗塞にも有 意な再発予防効果が示された. 一般に,外来の脳梗塞患者にはTIAと同様に再 発予防を目的として抗血小板薬を投与している. ただし,1acune(ラキューソ,ラクネ),すなおち 深部小梗塞の治療には注意を要する.Lacuneで は大部分の剖検例で大なり小なり出血を生じた所 見を伴っており,特に,高血圧のコントロールが 不良なlacuneに抗血小板薬を投与すると脳出血 を併発しやすいので,lacuneには高血圧のコント ロールが良好となってから抗血小板薬を投与すべ きである. ③脳塞栓症 脳塞栓症には心腔内血栓が脳内の血管を閉塞さ せる心心性塞栓症(cardiogenic embolism)と大 血管の転註.血栓が脳内遠位血管を閉塞させる artery to artery embolismがある98).後者は基本
的にTIAの微小塞栓型と機序は同一であり,抗血 小板療法の適応となる.これに対し,前者に対す る抗血小板療法は有効性に乏しく,抗凝固療法が 丘rst choiceとな:る35)99)∼101). 抗凝固療法はワーファリンを用いる102).ワー ファリンの投与法には急速飽和と緩速飽和がある が,外来では出血合併症を避けるための後者がよ い.これにはいくつかの方法があるが,1例とし ては10mg 1日1回経口3日間投与後トロンボテ スト(TT)を施行し,その結果により維持量を決 める.更に1週間後TTを測定し,10%台であれ ぽその量を維持し,9%以下なら減量,21%以上 なら増量し,以後2週毎にTTを測定して調節す る.TTの安定した長期投与例では4週に1度で 1.作用を増強する薬剤 1)消炎鎮痛薬:フェニルブタゾン,メフェナム酸,ブコ ローム,インドメタシン,アスピリン 2)抗生物質・化学療法薬:クロラムフェニコール,テト ラサイクリン系,エリスロマイシン,セフェム系,サ ルフア剤 3)抗うつ薬・覚醒剤:MAO阻害薬,三環系抗うつ薬,メ チルフェニデート 4)抗痙主薬:フェニトイソ 5)経口糖尿病薬:トルブタミド,クロルプロパミド 6)痛風治療薬:アロプリノール,スルフィンピラゾソ 7)その他:シメチジン,ヘパリン,ジピリダモール,エ タクリン酸,キニジン,クロフィブレート,甲状腺薬・ 抗甲状腺薬,蛋白同化ステロイド 2.作用を減弱する薬剤 1)抗真菌薬:グリセオフルビン 2)抗脂血症薬:コレスチラミン 3)抗結核薬:リファンピシン 4)副腎皮質ステロイド 5)ビタミンK含有薬 3.ビタミンKを多く含有する食品 1)野菜(100μg/100g fresh wt.以上) パセリ730,シソ650,クレソン390,ミツバ370,シュ ンギク350,カブ310,メキャベツ300,ホウレンソウ260, コマツナ280,ニラ250,ブロッコリー230,サニーレタ ス210,チンゲンサイ120,サラダナ100,キャベツ(外) 140(内)80 2)その他の食品 納豆345,牛レバー92 もよい.ただし,出血合併症や胃・十二指腸潰瘍 のある患者は禁忌であり,高血圧症合併例では良 好なコントロールがなされてから開始する.治療 中は定期的に尿,便潜血,血算,肝・腎機能を検 査し,出血合併症を生じたら直ぐに連絡するよう ムンテうしておく.出血合併症に際してはビタミ ンKを経口的または経静脈的に投与する.ワー ファリンは他の多くの薬剤と相互作用を起こし, その効果が増強したり,減弱したりするので注意 を要する(表7)103).また,食物の中でもビタミン Kを多く含むため効果を減弱させるものがあり, 納豆は食べない方がよい103).緑色野菜については 過量摂取に気をつけさせれば禁止しなくともよ い. 2)危険因子の治療 ①高血圧 高血圧は脳梗塞(脳血栓症)の最大の危険因子
脳血流量 (%) 100 0 N 正常血圧 高血圧 表8 各種降圧薬の脳血流に及ぼす影響 H SH脳卒中を伴う高血圧 0 100 200 平均血圧 〔㎜Hg) 平均血圧=拡張期圧+脈圧/3 N.H. SH.安静時血圧レベル 図7 正常血圧,高血圧,脳卒中を伴う高血圧例に おける脳の自動調節能(autoregulation) 藤島正敏蜘より 降圧薬 脳血流量 脳血管抵抗 脳代謝 サイアザイド系 ∼(↓) ↓ ∼ α 遮 断 薬 ↑ ↓ ∼↑ β 遮 断 薬 ↓ ∼↓ ↓ メ チ ル ド パ ↑ ↓ ∼ ク ロ ニ ジ ン ↓ ↑ ? レ セ ノレ ヒ。 ン ∼ ↓ ∼ ヒ ドラ ラジン ↑ ↓ ∼ Ca 拮 抗 薬 ↑ ↓ ∼ 変換酵素阻害薬 ∼ ↓ ∼ 脳血管抵抗=血圧/脳血流量 ↑増加,∼不変,↓減少,(↓)血液濃縮により減少 (藤島正敏玉》より) であり1働,高血圧の治療は脳卒中の予防に有効で ある105).しかし,過剰な降圧は脳虚血を増悪させ る場合があるので充分注意する42).血圧の変動に 対して血流を一定に保つ脳の自動調節能(auto− regulation)は強力で,正常血圧者では平均血圧が
50∼60mmHgまで下降しても脳血流は保たれる
が,高血圧患者ではautoregulationの下限域が高 い血圧レベルに偏位している(図7).脳卒中患者 では発症後2週以内はautoregulationが障害さ れやすいが,慢性期になると改善するとされてい る.しかし,脳主幹動脈閉塞患者では慢性期でも autoregulationの下限値は高血圧患者より更に 高く106),わずかの血圧低下により,第2前頭回, 側頭・頭頂・後頭三角(TPO triangle)領域の境 界面梗塞(watershedまたはborder zone infarc・ tion)や半卵円中心,尾状核頭部のterminal zone infarctionを生じうる107).また, Binswanger病(progressive subcortical vascular
encephalopathy)108)でをま白質動脈に著明な壁肥厚 が存在するので血圧を下げすぎて扇流圧が低下す ると虚血性病変が進行する危険性があり,特に, 夜間の過剰な血圧下降によるびまん性白質病変の 進行が指摘されている109). 降圧治療の開始は発症後1ヵ月からとする意見 が多い4D.降圧に際してはあせりすぎは禁物であ り,2ヵ月はかけてゆっくり降圧を行なった方がよい.これによりautoregulationの下限域に
resettingが起こり正常域に近づきうるという.ま た,外来での血圧値のみを目安にすると平常血圧 を下げすぎる危険があるので,家庭での血庄測定 を勧め,外来での参考にする42》. 用いる降圧剤としては,血圧を下げても脳血流 を低下させない,あるいはむしろ増加させる薬剤 が望ましい(表8)41)42).この条件に該当する薬剤 にカルシウム拮抗薬があるが,autoregulationの 下限域が逆に上昇するとの報告もあり4b,特にニ フェジビン(アダラート⑧)では急激な血圧の下降 が起こりうるので注意する必要があり,また,作 用時間が短く,血圧変動が大きいこともよくない ので長時問作用型(アダラートL⑧)の方が望まし い.その点,ニカルジピン(ペルジピン⑪)は繹や かな降圧作用を発揮するので使用しやすいが,高 度の高血圧には効果が弱い.ヒドララジソ(アプ レゾリン⑪)も脳血流を増加させるが,心素血量を 増加させるので心疾患合併例には使いにくい.サ イアザイド系降圧薬は利尿による脱水が血液粘度 上昇や脳血流低下をもたらす可能性があり,糖, 脂質代謝にも悪影響を及ぼすこともあるので避け た方がよい.カプトリルなどのアンギオテンシン 変換酵素障害薬はautoregulationの上,下限域を ともに低下させbreakthroughを生じやすくする という動物実験の報告41)があるが,人についての 検討はまだ充分なされていない.降圧薬を用いる にしても,食事療法を同時に行なうことが重要で あり,食塩は1日7∼8g以下とする. ②高脂血症Framinghaln studyllo)や久山町の疫学調査111) では血清総コレステロールと脳梗塞との間には有 意な相関がみられなかったが,リボ蛋白分画が詳 細に検討されるようになってからは,総コレステ ロールに対するHDLの低比率, HDL2・HDL3の 三値,リボ蛋白Aの低値,アポ蛋白Bの高値と脳
梗塞との間に相関がみられたとの報告があ
る112).我が国では皮質枝型梗塞と高しDL,低 HDL,高しDL/HDL値(atherogenic index)113), 脳梗塞とアポA−1,アポA−II低値,アポA−1/アポ AII比の卜祀114)との相関があったとの報告がみ られる. 治療は食事療法が基本であるが,2∼3ヵ月の 食事療法で改善しない場合は薬物療法を併用す る115)116).クロフェブレート系薬剤(クロフィブ レート,シンフィブレート,クリノフィブレート) は総コレステロール,LDLよりも中性脂肪, VLDLの低下に著効を示す.ニセリトロール(ペ リシット⑧)などのニコチン酸製剤は中性脂肪を よく低下させ,総コレステロールも下げるが, HDLは低下させない利点がある.プロゾコール (シンレスタール⑧,ロレルコ⑪)はより強力な総コ レステロール低下作用があるが,HDLも同時に 低下させる難点がある.この他,植物性ステロー ル(モリステロール⑭)なども用いられている.た だし,脳出血では低コレステロール血症が多く, 血管を強化するためむしろある程度の高蛋白高脂 肪食が推奨されている117). ③喫煙 これまで,喫煙は心筋梗塞の危険因子ではある が,脳梗塞とは明らな相関が証明されていなかっ た.しかし,最近,Framingham studyl18)におい て喫煙が脳梗塞の独立した危険因子であることが 証明され,喫煙本数が多いほど脳梗塞のリスクは 高まり,禁煙によりリスクが減少しうることが示 された. 喫煙はニコチンが血管を収縮させるだけでなく 血中一酸化炭素ヘモグロビンを増加させ,動脈硬 化を進展させて血小板を活性化し119),一方,Htを 上昇させて血液粘度を高める120).Heavy smorker やchain smorkerでは脳血管撮影で高度の動脈 硬化,粥状硬化所見を認めることが多く,脳卒中 患者には禁煙させるべきである.④飲酒
喫煙と異なり,飲酒は脳梗塞の危険因子になる ことは証明されていないが,逆に,脳出血やクモ 膜下出血の危険因子となるので,これら出血性脳 血管障害患者では禁酒させるべきである.また, アルコールは抗血小板薬や抗凝血薬の作用を増強 して出血合併症を生じやすくするので,これらを 服用している患者では,できれぽ禁酒した方がよ い.少なくとも,日本酒1合,ビール1本,ウィ スキー水割1杯程度までに節酒させる.更に,心 源性脳塞栓患者では飲酒により不整脈が発生しや すくなるので注意する.若年者脳梗塞の原因とし て最も重要なものの1つに僧帽弁逸脱(mitral valve prolapse, MVP)があるが, MVP患者では 飲酒後に脳血栓を発症する例が多い121)’22). ⑤心疾患 心筋梗塞患者では脳梗塞も多く,特に皮質枝梗 塞が多い.これは両者とも粥状硬化を基盤とする ものであり,両者に共通の危険因子,すなわち, 糖尿病,高脂血症,喫煙を多く有している症例が 多いことによる.急性心筋梗塞,不整脈(心房細・ 粗動,頻発する心室性期外収縮,洞機能不全症候 群,ペースメーカー),心不全,心室瘤,弁膜疾患, 心内膜炎(感染症,非感染性血栓性),心筋症101)は 心腔内血栓発生の原因となり,脳塞栓症を併発し うるので,これらの治療が重要となる(表9)101). 表9 脳塞栓症の原因となった心疾患の内訳Number of Admitted Patients(1979 to 1984) Cerebrel infarct
Cardiogenic embolism
Af alone
Cardiomyopathy with/without Af
MS with Af
Mitral valve prolapse Sick sinus syndrome
Af and PVC
Myocardial infarct with Af PVC alone