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緑内障の負荷試験とマリオ.㍗盲点の変化
第1報 實験材料,實瞼方法並に余の所謂
盲黒二階大現象に就て
金沢大学医学部眼無学教室(主任 倉知敏授)
畠 山 靖
Mi.vi.s/ti Halal e),ama
(昭和27年2月29日焚附)
1.緒 線内障,殊に輩心線内障はその特異な症歌と
して,眼圧の充進,覗野の狭窄,乳頭の萎縮・
陥凹等を來たすもので,診断は一・見容易な様で あるが,その潜伏期では,これらの特異な症状 は殆んど欠如し,自覚的に軽度の頭痛,眼痛,
眼精疲労,心墨,虹覗等を訴えるに過ぎす,し かもヒれらの丸々は線内障に特有なものとは言 えないので,その早期診断は必ずしも容易では ない,しかも本病では特に早期診断と早期治療 が大切とされているため,斯る時期の診断のた
め種々な負荷試験が工夫されて居る.即ち暗室
試験(Seidel,1920),飲かく試験(Schmidt, 1920),
散瞳試験(Gradle,1936),コーヒー試験 (L6−
hlein,1926),頸静脹圧迫試験(Wessely,1908.
Schoenberg,1925),高張食塩水結膜下注射試験
(Samoj !o ff,1926),マッサージ試験(KnapP,
1912).読書試験(Gradle,1931),更に最近発 表された不安定試験Lability test(Bloomfield,
Lambert,1945)等10数種の多数に達して居り,
tれは一面に於て如何に早期診断が困難である かを示すものと言うヒとが出斯る.ヒれら負荷 試験の殆んど全部は,当然の事ながら,或程度 の眼圧変動を以て判定基準としているが,しか
もこの際陽性とすべき変動値自体については,
諸学者間re一一定の見解を欠く憾みがある。いつ
言
れにしても3〜4mmHg(Scll16tz)の変動では陰 性と断定されている檬である.
また夏野の変化,殊にマリオット盲点(以下 マ盲点と略記する)が上下に小突起を出した場 合,即ちザイデル暗点は輩純緑内障の早期診断 に大なる価値を有するものとして,諸学者の認 めるところであるが,これと眼圧との関係に出 ては,既にSamojloff, Wegner,中島敏授等は 高張食塩水結膜下注射により,またGrantは Paredrin散瞳により,夫々眼圧上昇と共にマ盲 点の拡大することを報告してはいるが,一一般に 負荷試験を行う際には眼圧のみに留意し,マ盲 点の変化には特別な注意を払っていなV・のが現 歌である.
我々が日常負荷試験を行う場合は,他覚的所 見が一一応正常乃至略e正常であっても,緑内障 を疑うだけの根拠は何かしらあるわけであるか ら,それだけ負荷試験にかけられる期待は大き いのだが,我々の経験では,上記の規準に從え ば数種の負荷試験の結果が陰性であるにも拘ら す,確かに潜伏緑内障と考えねばならぬ場合 や,後日になって著明な眼圧充進をみる場合な
どがあるから,負荷試験の際,瞑圧の変動以外 にも何か頼るべき症歌が得られたら好都合であ ると思い,主として負荷試験前後に於けるマ盲
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23e 畠 山
点の変化を追究してみたところ,眼圧の変動は 僅少であるに拘らす,マ盲点に著しい変化の現 れる場合があり,負荷試験に当っては必ず眼圧
と共にマ盲点の変化をも槍査すべきであるとの
確信を得たので,以下報を追うて余の得た成績 を記述し,併せて負荷試験全般について考察し
てみたV・と思、う.
2.実駿材料
被樵者は昭和23年9月より昭和25年8月迄の間に金 沢医科大学眼科外回を訪れた28例の56眼で。年齢は15 歳より59歳に亘り,性別は男12例,女16例である.そ の圭な病歴,所見等を略記すれば,
第1例猪○綾○,女22巌,看護婦,
初診 昭和23年10月25日.
現病歴 以前より頭痛があったが,持病と思い放置 していたところ,約10日前より,虹親を認める檬にな り,消失しないので受診した・
高温 磁力は両眼共に1・2(眼鏡不応)・二二法では左 右共に正忌.二二とも前房の深さ正常,瞳孔反応正常,
乳頭も正常,湖辺視野では二親野,特に緑色が狡い(第 1図)V盲点の上下に自色視野に対する小比較暗点を 認める(第2図)・その程度は左限にre it強い檬である・
初診時の限圧は両眼共19mml19・両眼共に不安定試験 は陽性(第2報),暗室試験は陰性であるが,後者の場合 右心にのみ軽度ながらv盲点の変動を認めた(第3報
)・飲水回忌及び散巌試験(左眼)も陰性であるが,両試 験に際し=r盲点に変動を認めた(第4及び第5報)・眼 圧の日差は右4.・5mmElg,左4〜5mmllg(第9報).
診断:潜伏緑内瞳.
第2三二○瓶女,16歳,生徒,
初診 昭和23年9月21目.
現病歴 約1週間前より虹覗,頭痛を認め,夜間読 書の際に霞む.特に起床時に頭痛が甚しい.
現症 富力は右1・2,左1・0(共に眼鏡不応).検影 法では左右共に正覗.両眼共に前房の深さ正常,瞳孔 反応正常,乳頭正常,周辺覗野は白色の耳側が心持ち 狭いかと思われる外略e正常.マ盲点は左眼が稽ζ大 き く,両眼共に上方にザイデル襟小比較曙点(白に対 する)を紹める(第3図).初診時の眼圧は両眼共に 22mml lg .不安定試験は両眼とも陽性(第2報).病室 試験は陰性.散瞳試験(右眼)も陰挫であるが,この場 合マ盲点の変動を認めた(第5報).眼圧の日差は右5
〜12mmHg,左3〜10mmHg .(第9報).
診断=潜伏緑内障,
第3例湯○照○,女,22歳3事務員。
初診 昭和24年1月28日.
現病歴 約1カ月前より左眼が霞み,見悪く,長い 聞読書をしていると眼が疲れて干るので,某門門医を 訪れたところ,右眼に「そこひ」の気があると云われ,
治療を受けていたが良くならず当科を訪れた.
現症覗力は右0・5(LO×一1・OD).左0・3(1・0
×一M1・25D),梅影法では右は一1D,左は縦一1・5D,
二一1D・両眼とも前房の深さ正常,瞳孔反応正常,乳 頭正常,周辺二野は全般的にms it狡いかと思われる程 度(第4図).マ盲点には両眼共に余の断謂拡大現象を 認める以外に著変がない(第5図).近点の反復測定で 延長を認めず.初診時の眼圧は右17mmHg,左19m mH9・不安定試験は両眼とも陽性であり,マ盲点にも 変動を認めた(第2報).暗室試験は右眼に陽性,左眼 に陰性であるが,マ盲点の変動は反って左眼にのみ認 められた(第3報)。眼圧の日Eは右2〜6mmH9,左 4〜6mmll藍であり,日中に於けるマ盲点の変動も両 眼共に認められた(第9報).爾日差測定中に突然頭 痛,悪心,嘔吐が現れたが,眼圧の上昇は認められな かった.
診断:潜伏緑内障.
第4二宮○太○,男,40歳,敢員.
初診 昭和24年1月26日.
現病歴 昭和23年秋頃より読書に際し,短時間の中 に霞んで來る様になり,また夜間街灯に虹がかかって 見える.頭痛はない.
家族歴 母親が慢性炎性緑内障で手術を受けたこと がある.
現症i覗力は両眼共に1・2(眼鏡不応)・樵影法では左 右共に十1D・両眼共に前房はre it浅く,乳頭には生理 的陥凹程度の陥凹が認められるが,その他異常がない・
周辺親船は略ヒ正常.マ盲点は右眼正常,左眼ではそ の上下に白に対しザイデル卑小比較暗点を認める(第 6図).近点の反復測定で延長を認めない,初診時の 眼圧は右15mmH9,左13mmElg・不安定試験は両眼
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緑内障の翼荷試験とマリオット盲点の変化 231
とも陽性で,この際右眼にのみマ盲点の変動を認めた
(第2報),暗室試験は陰性.飲水試験も陰性であるが,
後者の場合右眼にマ盲点の変動を認めた(第4報),眼 圧の目差は右3〜6mmHg,左3〜4mmllg(第9報)・
診断:潜伏線内障.
第5例山Oい○,女,27歳,圭婦.
初診 昭和24年3月ユ6日.
現病歴 2〜3年前より仕事に疲れると,前額部よ り後頭部にかけ疹痛を感じ,これは特に左側に強い.
眼深部にも姦臣があり,また藩邸も認める,
現症 覗力は右0・6(1・0×一一〇・75D),左0・6(眼 鏡不応).船影法では両眼共に一1D・両限共に前房の 深さ正常,瞳孔反応正常.乳頭中央部の陥凹は此較的 著明ではあるが,樹生理的陥凹と鑑別し得ない程度で ある.周辺覗野は右眼では自色の耳f則が梢ζ狭いが,
その外は略ヒ正常(第7図),左眼は略ミ正常.マ盲点 には白色に対し右眼では下方に,左眼では上方に夫々 ザイデル檬小比較暗点を,また緑色に対しては右眼で は上下に,左限では下方に小紹対暗点を認める(第8 図).近点の反復測定で延長を認めない.初診時の眼 圧は右22mmH9,左19mml lg.不安定試瞼雌に眠室 試験は共に陰性.散瞳義血(左眼)も陰性であるが,こ の際マ盲点の変動が詔められた(第5報).
診断:潜伏緑内障の疑.
第6例藤O清○,女,25歳,圭婦.
初診 昭和24年3月工4日.
現病歴 約2年前より何等誘因なしに頭重感或は頭 痛を認める襟になり,読書や針仕事の際に駅が疲れ易
く,非常に疲れた時に帝国が現れる.
現生 覗力は左右共に0・7(1・2×一〇・5D),橡影法 でも共に一〇・5D・両眼とも武勇の深さ正常,瞳孔反応 正常,乳頭は略ヒ正常,周辺頑野は全般的に梢ζ狭い
(第9図).マ盲点には上方に緑色に対する絶対曙点が 極く軽度に詔められる(第10図),近点の反復測定で,
右は18cmより 29cm迄,左は11・5cmより19cm迄廷 長した.初診時の眼圧は右20・5mmHg,左19mmHg.
不安定試験は両眼とも陰性,暗室試験も陰性である が,後者の場合左眼にマ富点の変動が認められた(第 3報)・眼圧の日差は右8〜14・5mmHg,左5〜12・5m mHgであり,また庭中に於ける貨点の変動も認めら
れた(第9報),
診断=潜伏線内障.
等7例高○外○子,女,25巌,圭婦.
初診 昭和24年4.月7日.
現病歴 1ヵ月程前より風呂に入った後30分位の間 両眼が充血し,同時に軽い覗力障碍を認め,また時k 三舞が現れるので,:專門医を訪れたところ,緑内障と 云われ,手術をすすめられたので,精査を求めて当科 を訪れた.
現症 覗力は右0・7(1・2×一〇・5D),左1・2(眼鏡 不応)・検影法では両眼共に一〇・51)・両眼共に前房の深 さ正常,瞳孔反応正常,乳頭には生理的陥凹程度の陥 凹が認められるが,その他異常がない。周辺覗野では 白色は全般的に稻ζ狭く,色は各色共に更に狡くな っている(第11図).マ盲点では白に対し下方に絢1盲 点径のザイデル様比較暗点を認める(第12図),初診時 の眼圧は右25mmllg,左27nlmHg・不安定試1瞼は両 眼陽性(第2報),眠室試騨及び飲水試験は両眼と屯陰 性であるが,飲水試験の際マ盲点に変動を認めた(第4 報)・の日差は右5〜8mmHg,左5〜6mmllgであり,
眼圧日中に於ける盲点の変動も認められた(第9報).
診断=潜伏緑内障,
第8例 南○子,女,工8歳,生徒.
初診 昭和24年3月9日.
現病歴約1カ月前より読書に際して眼が疲れ易 く,時々虹覗を認める様になったが,その中に治ると 思い放置していたが良くならない.頭痛及び眼痛はな
い.
現症主力は右O・8,左0・9(共に二二不応).槍影 法では右は縦正覗,横十〇・5D,左は纏横とも一〇・5D・
両眼ともに前房の深さ正常,瞭孔反応正常5乳頭は略 it正常,調辺二野は全般的に梢ヒ狡く,特に耳側にそ の度が強い(第13図).マ盲点では下方に突起(白に対 しては比較,緑に対しては緬対暗点)を認め,その程 度は左眼に強い(第14図)・近点の反復測定で延長を認 めない.初診時の眼圧は左右共に17mmllg.両眼共 に不安定試験,暗室試瞼,飲永試験及び散瞳試験(右 眼)はすべて陰性であるが.然し=r自点の変動はいず れの場合にも認められた(第2,3,4及び5報).眼 圧日差は右4〜エ2mmHg,左4〜9mmHgであり,日
並に於ける盲点の変動も認められた(第9報).
診断:潜伏緑内障.
第9例 寺0清○,女,16歳,事務員,
初診 昭和23年12,月10日.
現病歴 1年古前より時 々頭痛を認めたが,余り気 にかけずにいたところ,約2ケ月前より右眼の特に耳
[ 107 )
232 畠 山
側に興国を認める檬になり,時には悪心を催すことも ある.fU 4日前に嘔吐が1回あり,某病院を訪れたと ころ,眼圧40mmHgあり,緑内瞳と診断され,当科 へ紹介された.
現症 感力は両眼共に1・2(眼鏡不応).梅影法では 両眼共に正覗.左右共に前房の深さ正當,瞳孔反応正 常,乳頭には緑内障性と考えられる程度の陥凹を認め る,周辺覗野は左眼略ミ正常,右眼は全般的に狭窄し,
山盛野の倒錯の詔められるところもあるが,他のヒス テリー性覗面変{伏は認められなかった(第15図).両眼 ともマ盲点には上下に白に対する小比較暗点を認める
(第16図).初診時の眼圧は右22mmllg,左23mmHg . 両眼とも不安定試験は陽性(第2報),暗室試験は陰性 であった,
診断=潜伏緑内障.
第10例 川Oつ○を,女,22歳,看護婦.
初診 昭和24年7月10日.
現病歴 約1ヵ月孚尼前,夜間に充血を認めたがそ のまま就黙したところ,突然眼痛と覗力障碍が現れ た.その後同檬なことが3回位あり,治療を受けてい るが,頭痛悪心が1週間位続き,圭治医より緑内障の 疑にて精査のため紹介されて來科した.虹覗も自覚す
る.
現症 脚力は両眼共に1・0(眼鏡不応)・糠影法では 両眼共に三組.左右とも前房の深さ:正常,瞳孔反応正 常,乳頭中央に直径約%乳頭径の可成り深い陥凹を認 め,その程度は左眼が梢ぐ強い.周辺覗野は白色の耳 側が僅かに狭い外に,色の配列が赤,青,緑の順であ る(第17図),然し他のヒステリー性覗野変状は認めら れず,また網膜にも病的所見はない.両眼ともマ盲点 は稽ヒ大きく,左眼では上下に白色に対するザイデル 様比較晴点を詔める(18図).また両眼共に一部マ盲点 を含み,約20度より周辺にかけ白色に対する比較油点 が存在する.初診時の眼圧は右19mmHg,左17mm Hg光押は両眼共に弥25・不安定試験は両眼とも陰 性であるが,右眼にのみ盲点の変動が軽度ながら認め られた(第2報).両眼とも暗室試験は陰性,飲永試験 は陽性(第4報),また散瞳試験(左眼).高張食塩水結 膜下竜射法(左眼)及び須田氏加圧法(右眼)も夫々陰 性.眼圧日差は右4〜5・5mmH9,左5〜6mml lg(第
9報).
診断:潜伏緑内障の疑.
第11例 橋○絹03女,19歳,事務員.
初診 昭和24年7月6日.
現病歴 本年5月頃より憶断を認める様にな肪ま た時々頭痛を覚えたが,甲医には緑内障と云われ,乙 医には規種経炎と診断されたので,精査のため当科を 訪れた.
現症 親力は両眼共に0・1(0・8×一2D)・梅影法で は面眼共に一一3D .左右とも前房の深さ正常,乳頭及 び周辺覗野も略e正常,マ盲点には下方にザイデル様 比較曙点(白に対する)を認める(第19図)、初診時の眼 圧は両眼共に22mmHg・光瀞は右Y4,左1/2・25・不 安定試験は右眼陽性,左眼陰性(第2報),暗室試験は 両眼とも陰性,飲水試験は右眼陰性,左眼陽性(第4 報),散瞳試瞼(左眼)は陰性,高張食塩水結膜下注射 法(右眼)も陰性であるが,この際マ盲点に軽度の変動 が留められた(第6報).須田氏加圧法(右眼)は陽性
(第8報).眼圧日差は右2〜8mmHg,左3〜7mmllg であり,右眼にのみ日中に於ける盲点の変動が認めら れた(第9報).
診断:潜伏緑内障.
第12例 白○武,男,23歳,学生.
初診 昭和24年7月8日.
現病歴 昭和22年10月頃,突然に右眼深部に痙痛を 覚え,悪心,嘔吐が現れたが,その際に頭痛及び虹覗 は認めなかった,その後同襟な発作が7〜8回あり,
発作の治った時に1ま何等の自覚症もないが,発作間隔 が少し短くなった標に思われるので,精査のため來科
した.曙点の檬なものは自覚しない.
現症 脚力は両眼共に1・5(眼鏡不応)。検影法では 両眼とも正覗.左右とも前房の深さ正常,乳頭及び周 辺井野も正常.マ盲点は右眼では上方に白に対する帽 子状の小比較暗点を認めるが(第20図),左眼では略k 正常,近点の反復測定で廷長を認めず,初診時の眼圧 は右13mml lg ,左14mmHg・不安定試験は両眼とも 陽性(第2報),飲水試験,散瞳試験(左眼)及び須田氏 加圧法(右眼)はいずれも陰性,眼圧日差は右1〜5mm Hg,左4〜5mmHg(第9報),
診断:潜伏緑内障の疑.
第13例 高O幸○,女,26歳3無職.
初診 昭和24年9且7日.
現病歴 8月初旬頃より上眼瞼に頭痛を覚えたが,
大したことなく放置していた.8月中旬頃より更に頭 痛を覚え,虹覗も認める檬になり浦失する襟子がない
ので來科した.
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緑内障の頁荷試験とマリオツ1・盲点の変化 233
現症 親力は両眼共に1・5(眼鏡不応).樵影法では 両眼とも正親.左右とも前房の深さ正常,乳頭も正 常,周辺覗野は各色共に耳側が稽ζ狭いかと思われる 程度で,他に異常はない.マ盲点では右眼は上下に,
左眼は主として下方に長さ約2盲点径のザイデル暗点
(白に対す る比較暗点)を認める(第21図).初診時の眼 圧は両眼共に19mmH9・不安定試験は両眼とも陽性,
暗室試験,歓水試験,散瞳試験(右眼)及び高張食塩水 結膜下注射法(左眼)はいずれも陰性である.然し上記 各試瞼の際にはいずれもマ盲点に変動が認められた
(第2,3,4,5及び6報)・眼庄日差は右2・5〜3・5 mmHg,左1.5〜2・5mmHgであるが,日中に於ける 盲点の変動が認められた(第9報),
診断:潜伏緑内障,
第14例 亀○茂○,男,22歳,印刷工,
初診 昭和24年9月1日.
現病歴 約1年前より午後になると眼が疲れ易く,
頭痛を覚える様になり,放置していたところ段々強く なって曇る様に思われるので來科した.
現症 覗力は両眼共に1・5(眼鏡不応),樵影法では 両眼とも正覗.左右共に前房の深さ正常,瞳孔反応正 常,乳頭も正常。周辺観野では右に於て緑色覗野が外 下方で青の外にはみ出ている以外には著変がなく,他 にヒステリー七変化も認められない.左の覗野は略k 正常,r 盲点は両眼とも略e正常.近点の反復測定で 延長を認めない.初診時の眼圧は両眼共に23mmllg・
左右とも不安定試瞼は陽性(第2報),暗室試験は陰 性,飲水試験も陰性であるが,後者の丁合マ盲点に軽 度の変動が認められた(第4報).散瞳試験(右眼)は陰 性,高張食塩水結膜雨注射法(左眼)は陰性であるが.
マ盲点に軽度の変動を認めた(第6報).須田氏加圧法
(右眼)も陰性.眼圧の日差は右2mmlIg,左2〜4mm Hgであるが,日中に於ける盲点の変動が認められた
(第9報),
診断:潜伏緑内隔の疑.
第15例 鶯O子,女20歳,敢員,
初診 昭和24年10月12日.
現病歴 10月8日,学校の運動会で衝突して左眼を 打ってから,左眼に富力障碍があil 」左眼の爾漫性智 慧角膜炎の診断の下に治療を受け,これは治癒した が,爾左側の頭痛と左限に虹覗を認める.
現症 覗力は右0・9(眼鏡不応),左0.5(0,6x+0。5 D)・樵影法では右は正覗,左は一〇・5D.両眼共に前
房の深さ正常,瞳孔反応正常,乳頭も正常,周辺視野 は略it正常.マ盲点は右眼略lt正常,左眼では自点の 上方には小さい,下方には長さ約4盲点径の細い白に 対するザイデル標比較暗点を認める(第22図).初診時
の眼圧は右22mmllg,左18mmHg・両眼とも不安定 試験は陽性であり,この際マ盲点に変動を認めた(第 2報).曙室試験は陰性,飲水試験及び散瞳試験(左 眼)も陰性ではあるが,この両者の場合盲点に夫k変 動を認めた(第4及び5報).読書試験及び須田氏加圧 法(左眼)も夫々陰性.眼圧の日差は右1・5〜6mmllg , 左1.5〜4mmH9であるが,日中に於ける盲点の変動 が冷められた(第9報).
診断=潜伏緑内障の疑.
第16例 杉0嗅0,女,22歳,学生.
初診 昭和24年10月6日,
現病歴 5日前の朝及び夜に眼痛を覚え,その後段 々野離が低下する様に思われる,虹覗を認めるが,頭 痛」悪心はない.
現症 覗力は両眼共に0.8(1・0×一1・5D),紅霞書去 では両眼共両眼とも一1・5D・前房の深さ及び瞳孔反 応正常,乳頭も正常,周辺視野も略it正常.ヤ盲点は 稻it大きく,右眼では上下に,左眼では下方に自に対 する小比較暗点を認める(第23図).初診時の眼圧は右 28mmllg,左23mmH9.不安定試験は両眼とも陰性 であるが,この際マ盲点の変動を認める(第2報).曙 室試験も同様に陰性であるが,マ盲点に変動を認めた
(第3報).飲水試験は陰性.散瞳試験(左眼)及び高張 食塩水結膜割注射法(左眼も)陰性ではあるが,夫々マ 盲点の変動を軽徴ながら認めた(第5及び6報).須田 氏加圧法(右眼)も陰性.眼圧日差は右3・5〜6mmHg,
左1〜6mmHgであり,日中に於ける盲点の変動も認
められた(第9報),
診断:潜伏緑内障の疑.
第17例 中0哲○,男,20歳,学生・
初診 昭和24年12月19日。
現病歴 昭和23年夏頃より読書の際に頭痛及び眼痛 を認める檬になったが,治療せず放置していたとこ ろ,段々その程度が強くなるので來秘した.
現症 覗力は両眼共に1・5(眼鏡不応).浦回法では:
両眼共に正覗.左右とも前房の深さ及び瞳孔反応正 常,乳頭も正常,周辺親野では白色は略it正常である が,色の配列に於て,特に青と赤の倒錯する部分を勧 めるが,その他にヒステリー性覗野変状を認めない.
( 109 ]
234 畠 山
マ盲点は右眼が稽ミ大きく,両眼共に盲点の上下に白 に対しザイデル檬小比較暗点を認める(第24図).近点 の反復測定で官長を認めない,初診時の眼圧は両眼共 に22mmHg・不安定試験は両眼共に陽性(第2報).
暗室試験、飲水試験,散瞳試験(左眼),読害試験及び 須田氏加圧法(右眼)はいずれも陰性.眼圧の日差は右 2〜6mmllg,左G〜5mmllgであり,日中に於ける盲 点の変動を認めた(第9報).
診断:潜伏緑内障の疑,
第18例青○利O,男,27歳,工員.
初診 昭和25年2月24日.
現病歴 2目前作業中苛性ソーダの蒸気にさらさ れジまた電気熔接を見たりした後,左眼に異物感があ ったので,診療所を訪れ結膜炎と云われ洗眼して貰っ た.その夜から眼部に激痛があり,翌日には圧迫感が あり,脳病院を訪れたところ,覗力は右1・5,左0・4 で,眼圧は左40mmH9あり,緑内隔と云われて,当
科を訪れた.
現症 法力は両眼共1・5(眼鏡不応).樵影法では両 眼共に正面.左右共に前面の深さ及び瞳孔反応正常,
乳頭も正常,周辺覗野は略k正常.マ盲点には右眼で は上方に,左眼では下方に夫々周辺に連る細長い白色 に蛎する比較暗点を認める(第25図).光紳は両眼共に 1/4・初診時の眼圧は両眼共に22mmllg.不安定試験 は両眼共に陽性であり,この際右眼にはマ盲点の変動 を認めた(第2報).暗室試瞼は両眼とも陰性.飲水試 験は両眼とも陽性であり,左眼には軽度ながらマ冒点 の変動を認めた(第4報).散瞳試験(左眼)も陽性で,
マ盲点の変動を認めた(第5報).須田氏加圧法(左眼)
は陽性(第8報).眼Eの日差は右2〜7.5mmHg,左 2〜5mmllgであり,日中に於ける盲点の変動を認め
た(第9報).
診断:潜伏緑内障,
第19例 久〇三〇吉,男,26歳,工員.
初診 昭和25年3月零0日。
現病歴 17〜18巌頃より虹覗を認め,また時々頭痛 もあるが,持病と思い放置していたが,一向に良くな らずジまた磁力も弱いので來科した,
現前覗力は右0・3(眼鏡不応),左O・3(0・5×cy1−
2・5DAX180。),橡影法では右は縦正心,横一1D,左 は縦一1D,横倒〇・5D・両眼とも前房の深さ:及び瞳孔 反応正常,乳頭及び周辺覗野も正常,・マ盲点には上下 にザイデル檬小比較暗点(白に対する)を認める(第26
図),近点の反復測定で延長を認めず.光電は両眼共 にY4.初診時の眼圧は両眼共に22mmHg・不安定試 験は両眼とも陽性であり,この際マ盲点の変動を左眼 に認める(第2報).曙町試験,飲水試験及び散瞳試験
(左眼)はいずれも陰性.須田氏加圧法(右眼)は陽性
(第8報)眼庄の日差は右6mmHg,左5〜6mmHg(第
9報).
診断:潜伏緑内障.
第20例 山O和O,男,37歳,農業.
初診 昭和25年4月17日.
現病歴 1年位前から書物を30分位読むと,左眼の 充血及び瘍痛を認める様になったが,放置していたと ころ段々強くなって摺るので來科した.また21EM艮に虹 覗を認める.
現症 暴力は右1・2,左0・04(共に眼鏡不応).樵 影法では右十〇・5D,左は約一3D(角膜片雲のため正 確ならず).両眼とも前房の深さ略e正常.左眼角膜 の瞳孔領に径約4粍の略e円形の角膜片雲を認める。
両眼とも乳頭は正常,周辺皇霊は右略it正常,左は全 般的に稽ヒ狭窄している(第27図).マ盲点には右眼で は耳側に非常に小さな白に対する比較暗点を認める外 は異常がない(第28図),左眼では盲点の位置が約5度 中心に偏して現れる外には異常がない.初診時の眼圧 は両眼共に15mmHg.不安定試験は両眼とも陽性(第 2報),野趣試験は陰性.飲水試験は陰性であるが,
この際左眼には盲点の変動が僅かに詔められた(ee 4 報).散瞳試験(左眼)も陰性であるが,軽度ながら盲 点に変動を認めた(第5報).読書試験及び須田氏加庄 法(左眼)は共に陰性.眼圧の日差は右3〜6mmllg , 左4〜7mmllg(第9報).
診断:潜伏緑華甲の疑.
第21例 要○和○,男,22歳,学生.
初診 昭和25年2月7日.
現病歴 中学生時代より物を見ると艦痒感があり,
昨年春頃より虹親を認める標になり,一・向に消失しな いので來科した.頭痛及び悪心はない.
軽症 視力は右1・2,左1・0(共に眼鏡不応)・検番 法では両眼共に正覗,左右とも前房の深さ及び瞳孔
反応正常,乳頭も正常,周辺覗野は全般的に稽々狭く なっている(第29図).マ冒点は右眼では形が梢ヒ不規 則であり,盲点の上方に長さ1盲点径大の白に対する 比較暗点があり,左眼では盲点の上下に白に対する比 較暗点を認める.また右眼の傍中心覗野の鼻側の上方
[ 110 )
緑内障の貢荷試験とマリオット盲点(b変化 235
及び下方に夫々白に対する比較曙点を認める(第30 図).初診時眼圧は左右共に15mmllg・両眼とも不安 定試験は陽性であり,この際マ盲点にも変動を認めた
(第2報).暗室試験は陰性であるが,盲点に変動を認 め(第3報),散瞳試験(右眼)も陰性であるが,盲点に 変動を認めた(第5報).読書試験は陰性.
診断:潜伏緑内障.
第22例 辻○子,女,15歳,生徒.
初診 昭和24年4月18日.
現病歴 学校の身体検査の際に,左眼の覗力が悪い と云われたので來科した.
露里 溶血は右1.0,左0.3(共1こ眼鏡不応)・1面影 法では右は縦一〇・5D,横正親,左はme一一1D,横正覗・
左眼には禰漫性廃官角膜炎の像を認める,両眼とも前 房の深さ及び瞳孔反応正面,乳頭には相当顧慮ではあ るが,生理的陥凹と鑑別が困難な程度の陥凹を認め る.周辺覗野は略it正常.マ盲点には左眼では上下に 白に対するザイデル様比較暗点を認め, また両眼共に 盲点の一部を含んで約20度より周辺にむけ自に対する 比較暗点が存在する(第31図),初診時の眼圧は右19 mmH9,左18mmH9両眼とも不安定試験は陽性(第
2報),暗室試験は陰性.
診断=左眼 禰漫性表暦角膜炎.
両眼 潜伏緑内障の疑.
第23例 上○賢O郎,男,30歳,新聞記者.
初診 昭和24年2月11日.
現病歴 6〜7歳頃よリポロプシーがあり,且近覗 性i乱覗があり,乱親治療の目的で当科に於て角膜輪部
に透熱凝固を,2月15日に先ず右眼に,i爽いで1週間 後の2月22日に左眼に行ったところ,翌23日夜左眼眼 痛を訴えたので眼圧を測定したところ,右眼17mmH 9,左眼29mmH9,更に翌日は右眼40mmHg,左眼 25mmHgとなる.その後両眼共17mmllgに落着い
た.
現症(3月2日現在) 覗力は右0・06(0・8×一一 41) .=
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1・5DAXIO。)・樵影法でも大体矯正レンズ度と一致す る近覗性乱視を証明.両軸とも前房の深さ正常,瞳孔 反応正常,乳頭も正常,周辺覗野は全般的に狭窄して いる(第32図).マ盲点には圭として下方に緑色に対す る絶対暗点を認める(第33図),不安定試験は両眼とも 陽性であil )この際マ唐点の変動を左眼にのみ認めた
(第2報).曙室試験は陰性.飲水試験も陰性である
が,両眼ともv盲点に変動を認めた(第4報).眼圧日 差は右3〜9mmH9,左6〜12mmHgであり,日中に
於ける盲点の変動を認めた(第9報).
診断;軍純緑内曝.
第24例 大○嘉○,女,50歳,主婦。
初診 昭和24年5月19日置
現病歴 約1カ月前より何等の誘因なくして,左眼 に霧覗を認め,これは特に起床時より午前申に強く,
また時々虹覗を認める.某医により緑内障と診断さ れ,手術のため來科した.頭痛及び悪心は詔めない.
現症 覗力は左右共0・9(眼鏡不応)・樵影法では両眼 共に二丁・外眼部に轡血症賦は認められず,左右共に前 房は丁々正常,左眼の瞳孔は著明に縮瞳している(恐 らく前医による縮瞳藥点眼のため).乳頭も正常,周 辺親野は白色の耳鮒が稽ヒ狡く,また色覗野の配列が 不規則であるが,その他のヒステリー性覗野変化は認 められない(第34図).両眼ともマ盲点は梢ヒ大きく,
緑に対する小絶対暗点を下方に詔める(第35図)・初診 時の眼圧は右22mmHg,左40mmHg・不安定試験は 両眼とも陽性(第2報).暗室試瞼は右眼では陽性であ り,マ盲点にも軽度ながら変動を認めたが,左眼は陰 性(第3報).眼圧日差は右5〜6mmH9であり,日中
に於ける盲点の変動も認められた(第9報).左眼は直 ちに輩角膜管錐術を行ったため,これらは測定しなか
った,
診断:右眼 潜伏緑内障.
左眼 慢性緑内隠.
第25例 奥○明,男,30歳,農業.
初診 昭和2弓年3月7日.
現病歴 一回目朝,左眼に虹規を認め,その頃より 下弓ををも詔める檬になり,暗明に上り緑内障と云わ れ,來科した.
現症財力は右0・2(1・0×一3D),左0・7(1・0×一 1.5D),梅影法では右は一2・5D,左は一1・5D・右眼 の瞳孔は正円形だが,左眼の瞳孔は長楕円形で,軽度 に拡大し対光反応は右眼では遅鈍ながら存在するが,
左眼では欠如し,左眼の角膜後面に2〜3個の小沈着 物(数日後には消失)を認めるが」毛様充血或は轡血症 状はない.両眼とも乳頭に陥凹を認め,その度は右眼 に強く,また乳頭面で網膜中心細脈の搏動を認めた.
眼圧は右29・5mmHg,左40mmHg・周辺視野は両眼 共に耳側が稽ヒ狭い程度である(第36図).v盲点には 主として下方に緑に対する絶対暗点を認め、その程度
[ 111 )
2ee 畠 山
は左眼に強い(第37図).両限とも不安定試験及び暗室 試験はいずれも陰性(但しピロカルピソ使用中に行っ た).その後眼圧は3月11日,右25mmllg,左17mm Hg・4月18日,右20 ・ 5mml19 ,左16mmllg(いずれ
も両眼ともピロカルピン使用中).
診断:軍純緑内応.
第26例 申○多O郎,男,44歳3機関士.
初診 昭和25年1月19日.
現病歴 約1カ月前石炭粉が右眼に入り除去して:貰 ったが,それ以來覗力が低下する檬に思われたので來 料した.尚以前より少し飲酒すると霧覗を認めたが,
汽車の蓮転に支障を來したことはない.
現痙 視力は右0・3(0・9×一1D),左0・3(0.8×一 1D)・橡影法では両眼共に一1D・両眼共に瞳孔反応は 遅く,乳頭には緑内隠性陥凹を認め,三二蒼白である・
光紳は両眼とも1/4・眼圧は右34mmllg ,左30mmH9.
近点の反復測定で延長を認めない.周辺親野は右眼で は丁丁の%が欠損し,且色二野が狡く,左眼でも鼻側 が稽々狡く,且色覗野も全股的に狡くなっている(第 38図).マ盲点では両眼共に固親点を囲んで輪状の
:Blerrum曙点(自に対して,右眼看は二二暗点,左眼 では比較暗点)が工められる(第39図),両眼とも不安 定試験は陽性であり,V盲点にも著明な変動が認めら れた(第2報).
診断=軍純緑内障.
第27例 未Oと○,女,43歳,圭婦.
初診 昭和24年…12月12日.
現病歴 10月中三二より急に物が霞んで見え,日に より見え工合が異なり,ガラス越しに見た方が見よい こともある.頭痛は10日程前より2〜3回認めたが,
虹蕨!は認めない。二二医を訪れ緑内障の疑の下に紹介 されて來科した.
現症 頑力は右0・3,左0・7(共に眼鏡不応).二心
法では両眼共に十〇・5D・瞳孔径は右3.5mms左2.5 mm・両眼共に前房は稽ヒ浅いが,乳頭は略it正常,
画引覗野は耳側が少し狡い外殆ど異常がない.マ蜜点 は右眼よりも左眼がas tr大きく,右眼では上下より周 辺に連なる白に対するザイデル檬比較暗点及びその暗 点に囲まれた周辺部に白に対する比較鴫点の存在を認 め,左眼では上方に長さ約1盲点径,下方に長さ約 2・5盲点径の白に対するザイデル暗点(比較暗点)を認 める(第40図).光瀞は両眼共Vl,眼日…は右23mmHg,
左19mmH9・不安定試験は両眼とも陽性であり,マ 盲点にも相当二二な変動を認めた(第2報).
診断;慢性緑内障,
第28例 湯○正○,男,59歳,柔道教師.
初診 昭和24年11月25日。
現病歴 約1年前程より霞んで見える檬になった が,放置していたところ,段々増悪し,夜になると歩 き悪いので,二二医を訪れ,軍純緑内障と診断された ので,手術のため來科した.頭痛,虹親を認めるが,
悪心はない.
現症 覗力は右0・6,左1・0(共に限鏡不応).面影 法では右は縦軸一〇・5D,横軸正覗,左は縦横共に正 覗.両眼共に前房は浅く,乳頭全面が蒼白で緑内隙性 陥凹が著明である.周辺二野は右眼では約5度に狭窄 し,色二野の測定は不可能であり,左眼では鼻上側が 約5度,その他の部は約30〜40度に狭窄している(第 41図).マ盲点は右眼では二野狡窄のため測定不可明,
左眼では盲点の二二は出來るが,濃い比較暗点が下方 は25度,その他の部は15度目り周辺に亘り存在する.
光瀞は右1/100,左測定不能.眼圧は右40mmllg,
左32・5mmHg・両眼とも不安定試験及び暗室試験陽 性(第2及び3報),
診断;二二緑内障.
3.実 験 方法
1,眼圧は,0・4%ナルカイン液を2〜3分おきに 3回点眼して麻等身」Schi6tz眼H…計を用いて測定し
た.
2.周辺視野は,:F6rster覗野計により,石原の視 標の申で,10mmの白色,青色,赤色及び緑色のもの を用い,8方向で測定した.
3,v盲点は,1mの距離より黒板覗野計で,10mm
の圭として白色,時には赤色及び緑色覗標を使用し,
圭として遠心法により測定した,
4.光帥は,15間絶対暗室で暗調応させた後,:Fδrs−
ter光臨計で測定した.
5.近点は,石原近点計を用い,約10回反復測定し て延長するや否やを観測した.
[ 112 ]
緑内障の頁荷試験とマリオット盲点の変化 23ブ
第 1 図
第 1 例 (右)
第 4 図 第 3 例 (右)
第 2 図
第1例
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第2例
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第7例
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緑内障の頁荷試験とマリオット盲点の変化 239
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240 畠 山
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緑内障の貢荷試瞼とマリオット盲点の変化 241
第29図 第21例
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第35図 第24例
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第25例
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緑内障の頁荷試験とeリオツト盲点の変化 243
第38図 第26例
(右)
第39図 第26例
(右)
第40図 第27例
(右)
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(左) (右)
[ 119 ]
244 畠 山
第42図 盲点の拡大 第 1 例
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第 2 例 左眼 右眼
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第 3 例 左眼 右眼 、
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第23例
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[ 120 ]
緑内障の貢荷試験とマリオット盲点の変化 245
4.余の所謂盲点拡大現象に就て 上記28例中15例,即ち第1,2,3,4,5,6,
7,8,15,16,17,20,21,23,25例に於て,先ず盲 点の境界を決定し,直ちに連続して再びその境 界を確認せんとした際,盲点が或る程度迄拡大
してゆくことを認めた(第42図).この盲点の拡 大の程度は各症例により異り,また同一症例で
も計測毎に異る.拡大方向も種々且不規則であ るが,上下の方向に拡大する場合が多い.tの 拡大観測に要した時点は約10分聞である.而し て以下記述する各国駝の際に採った盲点の大い
さはとの拡大後の大いさである.樹非線内障眼 では,健康眼を有する当科看護婦数名,網膜有 髄榊経線維を有する者1名,結膜疾患数名,結 核性網膜静脈周囲炎で乳頭及びその附近に変化 のない者1名に就き,同一方法で盲点計測を行 ったが,かかる拡大を示す者は1名も認められ
なかつ1た.
盲点の拡大現象は眼部或は全身的の器質的変 化,即ち網膜色素変性,梅毒性網膜脹絡膜萎縮,
網膜静脈周周炎(特に乳頭附近)欝血乳頭,覗紳 経及び覗路の変化,副鼻腔炎,脳腫瘍等で現れ るUとは勿論であるが,ζの様な器質的変化な しに現れるものとしては,小山(1940)は主とし て4D以上の調節を行った場合に,盲点が耳側
に拡大すると報告し,最:近三国・松原(1949)は ヒステリーの際に盲点が拡大し,殊に求心盲点 が拡大し,またIE常者の場合と反対に,遠心盲 点よりも求心盲点が大きいことを報告している が,これらの現象は余がここで述べた盲点の拡 大とは全くその性質を異にするものであり,ま た余の全実験例には特に調節を強要しては居ら す,ヒステリt一・・も除外出來た.而してこの様な 盲点拡大現象については余の調査した範囲内で はまだ明確な記載はない様である.
欄筆に際し,恩師倉知敢授の御指導並に御校閲を深 謝します.
(倉知敢授就任十周年記念論文)
文
1) Bloomfield: Amer.J. Ophthalm. 30, 869,
1747. 2) Gradle:Amer. J. Ophtbalm.
14, 936, 1931. 3) Gradle: Amer・ J・
Ophtha]m. 19, 31, 1936. 4) Grant: Amer.
J・ophthalm・30,1276,1947・ 5)小山 綾夫:日眼,44,258,昭.15・ 6)K:naPP:
Klin. Mbl. Augenhk. 50, 691, 1912. 7)
草間要:日眼,27,493,大.12・ 8)中島 実:中眼,24,1,昭.7・ 9)三国政吉・
松原俊es :臨眼,3,21,昭.24・ 10)
献
Samojloff: Zsehr. Augenhk. 58, 214, 1926.
11) Schmidt:Graefes Arch. 98, 569, 1920.
12) Schoenberg: Arch. Ophthalm. 1, 681,
1929. 13) Seideli: Graefes Arch. 102,
415, 1920. 14) Wegner:Zschr. Augenhk.
55, 381, 1925. 15) Lbhlein: K]in. Mbl.
Augenhk. 77, Beileg, 1, 1926. 16) We−
gner: Zschr. Augenhk. 56, 48, 1925. 17)
Wessely: Gracfes Arch. 60, 97, 1908.
( IM ]