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DICの最近の動向
松田 保(金沢大学第三内科教授)
座長 :丸山勝一(神経内科)
1.Lupus anticoagulantの存在が確認された1例
(’東京女子医大消化器病センター,
2同 臨床検査部,3同 第一内科)
金井由美子1・長原 光1・井上美幸2・
押味和夫3・溝口秀昭3・小幡 裕1
症例:40歳女性,主訴:眼球黄染,全身倦怠感.既
往歴:妊娠中期の死・流産5回,高血圧症,大動脈弁
閉鎖不全症,慢性副鼻腔炎,胆石症.現病歴:昭和62
年より血小板減少(5∼10万)とAPTTの延長を指摘
されていた.昭和63年3月,胆石手術の際の出血予防
のため新鮮凍結血漿,血小板輸血を受けたところ,1
ヵ月後急性肝炎をきたし当科入院となった.入院時所
見:眼球黄染,3LSB拡張期心雑音,肝2cm触知,両下
腿に紫斑あり.GOT 450KU, GPT 456KU, T−bil 6.1
mg/dl, Plt 6.3×!04/mm3, TT 100%〈, PT 11.4秒
(対照11,3秒),APTT 46.6秒(同32.3秒), HPT
73.2%,抗核抗体陰性,抗DNA抗体12U/ml, LEテ
スト疑陽性,ワッセルマン反応陰性.入院後経過:HB
ウイルス抗原陰性のため非A非B型ウイルスによる
急性肝炎と考えられ,約3ヵ月で肝機能はIE常化した.
この間APTTの延長と血小板の減少は変わらず認め
られた.
本症例ではAPTT 46.6秒と延長がみられ,一方
個々の凝固因子活性のうち第V,VII, VIII, IX, XI,
XII, XIII因子は正常かつ抗血VIII・IX因子抗体は陰
性であり,習慣性流産の既往があることより,lupus
anticoagulantの存在が疑われた。正常血漿とのrnix・
ing testでは,正常血漿APTT 24.6秒に対して1:1
のmixing時35.8秒と延長がみられた.患老血漿より
IgG, IgMを分画し同様にmixing testを行ったとこ
ろ,IgG分画でAPTTは47.8秒に延長した.さらに
IgGを4倍に濃縮後のmixing testでは,66.4秒と延
長がみられた.患者血清IgM分画および正常人血清
IgG分画を用いてもAPTTの延長はみられなかっ
た.
以上より,本症例ではlgG分画にlupus anticoa−
gulantの存在が確認された.現在この抗体が認識する
抗原を同定中である.流産をくり返しAPTTの延長
を認める場合,lupus anticoagulantの存在を疑うべき
である.
2.虚血性脳血管障害におけるlndium−111・
tropolone血小板標識法による血小板lysisの測定
(脳神経センター神経内科,放射線科*)
内山真一郎・堤 由紀子・長山 隆・
小林 逸郎・:丸山 勝一・日下部きよ子*
これまで生体内での血小板lysis(PL)を臨床的に評
価する方法がなかったが,標識血小板中のIndium(ln)
は極めて安定で,血小板膜のlysisによってのみ血漿
中に遊離することから血漿遊離InがPしの示標とな
ることを応用し,脳虚血患者においてPLを測定した.
対象は抗血栓療法未施行の脳血栓症(T)16例,脳塞栓
症(E)12例,TIA 2例,慢性DICによる脳梗塞3例,
海綿静脈洞血栓症1例である,PLは静脈血43mlを
ACD採血し,遠沈して得た血小板塊にluln−tropolone
を標識し輸注96時間後に静脈血9mlをEDTA採血し,
gamma well counterを用い全血に対する乏血小板血
漿中の放射活性の比率として算定した.PLはT5例,
E5例,慢性DIC 2例,海綿静脈洞血栓症1例で増加
(対照のX+SD=6.5%以上)しており,対照群(3.7±
2.8%)に比し有意にT群(5.3±2.1%,p〈0.05)と
E群(7.6±5.6%,p〈0,01)で高率であった. Tでア
スピリン300mg投与4例では7.6±2.7から4.8±
2.0%へ,チクロピジン200mg投与4例では7.3±
2.8%から5.0±1.9%へと軽度減少したが有意ではな
く,アスピリン81mgとチクロピジン100mgの併用投
与4例では7.4±2.5%から4.2±1.3%へと有意に減少
した(pく0.05).Eでワーファリン投与4例では9.2±
2.8%から6.7±2.5%へと減少傾向を示した(p〈
0.10).1UIn血小板標識法によるPしの測定は生体内
血小板破壊の示標となり,抗血栓療法の評価に有用と
考えられた.
3.血小板容積からみた体外循環の影響
(循環器内科)
.ヒ塚 芳郎・青崎 正彦・田中 直秀・
岩出 和徳・福井 尚見・細田 瑳一
(循環器外科)小柳 仁・遠藤 真弘
(心研研究部)大木 勝義
〔目的〕心臓手術における体外循環の前後では血小
板数が大きく変勤することが知られているが,その影
響が術後長時間にわたって続くことはあまり知られて
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