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日本語母語話者と学習者の意見陳述における「譲歩」を表す発話の分析

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Academic year: 2021

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(1)研究論文. 日本語母語話者と学習者の意見陳述における 「譲歩」を表す発話の分析. Analysis of concessive expressions in opinion statements by native speakers and learners of Japanese. 半沢 千絵美. 横山千聖. キーワード:譲歩、反論、意見陳述 外国語キーワード:concession、counterargument、opinion statement. 要旨 本研究では「自説と対立する立場に理解を示したり対立する立場に有利な情報を提示した りする箇所、および、自説の問題点や限界を指摘したり自説に不利な情報を提示したりす る箇所(伊集院・工藤 2014) 」を「譲歩」と定義し、日本語母語話者と学習者の意見陳述 データにあらわれた譲歩を表す発話を機能、論理展開、表現形式の点から分析した。その 結果、母語話者には相反する主張に同意して譲歩を表す機能が、学習者には自身の主張を 限定したり弱めたりすることで譲歩を表す機能が多くみられた。また、母語話者は意見陳 述の最後に自身の主張を述べる傾向があるのに対し、学習者の中には譲歩を表す発話で意 見陳述が終了しているパターンもあることが分かった。表現形式については、反論を示す 際の「でも」の使用が学習者に特徴的であることが示唆された。 The purpose of this research is to analyze concessive expressions found in opinion statements made by native speakers and learners of Japanese. In this research, concessive expressions are defined as “the parts in which a speaker shows understanding towards opposing opinion, provides beneficial evidence for opposing opinion, points out limit or weakness in his/her own opinion, or provides disadvantageous information for his/her own opinion.” (Ijuin & Kudo 2014) It was found that many of the native speakers’ concessive expressions were to show agreement towards opposing opinion, while learners’ were to limit or soften their own opinions. It was also found that the.

(2) learners’ opinion statements were sometimes ended with concessive expressions, which was not the case for the native speakers. Finally, use of conjunction expression “demo” was found to be learner’s characteristics, when stating a counterargument for opposing opinion. 1.. はじめに. 自らの考えや意見を他者に伝え相手を納得させるには、客観的データや自身の体験など を根拠として論理的に話を組み立てることが必要である。しかしながら、自らの意見が正 しいことを主張するだけでは説得力に欠ける場合もある。自分の意見とは異なる主張の存 在を認めつつその問題点を指摘したり、自分の主張にも弱点があるがそれでもその主張が 認められるべき根拠を提示することは、 より説得力のある論理展開の構築に効果的である。 日本語学習者を対象とした教材でも、論理的文章においては自身の主張と反する見解を想 定し、その見解の限界を述べた上で否定することの重要さが強調されている(大島他 2014)。 本稿では「自説と対立する立場に理解を示したり対立する立場に有利な情報を提示した りする箇所、および、自説の問題点や限界を指摘したり自説に不利な情報を提示したりす る箇所(伊集院・工藤 2014) 」を「譲歩」と定義する。以下は日本語母語話者の意見陳述 の際にみられた譲歩の例を示している。. (例 1:JNS15)注 1 JNS15: 私は勉強する時は、分からないことを勉強する時は、先生と一緒にやるほうがい いと思います。自分一人で教科書を見てやることももちろんできることはできる んですが、分かったつもりになって終わってしまうようなことも多く、実際に自 分で勉強したことを先生に教えてもらったら、あ、これ、こういう意味だったん だっていうふうに、分かった、改めて分かるようなこともありますし、本だけ読 んでいても、これどういう意味だろうって思って分からなくて途中で止めてしま ったりとかもあるので、分からないことは先生に教えてもらってやる方が効率的 ではないかなあと思います。. 勉強を一人でするほうがいいか、先生とするほうがいいかという問いに対して JNS15 は まず「先生と一緒にやるほうがいい」と自らの主張を述べている。しかし、 「一人で」とい う意見を完全に否定するわけではなく、 「もちろんできる」と相反する主張も認めている。 しかし、続く発話にて「 (一人で勉強することは)分かったつもりになって終わってしまう ようなことも多く」と相反する主張に対して反論をし、先生に教えてもらうことの利点を 強調している。このように、 「譲歩」+「反論」+「主張」の流れは、自らの主張の説得力 を高める働きがあると考えられる。本研究は意見陳述データを対象に、日本語学習者と母 語話者の譲歩を表す発話を分析するものである。.

(3) 2.. 先行研究. 「譲歩」という行為を言語的な側面から分析している研究はいずれも書き言葉を対象と したものである。石黒(2004)は肯否疑問文で表されるような話題に対して答えを述べる 形の文章を説得文とし、説得文には譲歩型の文章が有効であることを述べている。それは、 譲歩型の文章を書くことによって、自分の意見とは反対の立場の読者の存在も認めている こととなり、より説得力のある論理構成になるからだと説明している。また、譲歩型の文 章の重要なポイントとして、自身の立場の問題点を指摘したり相手の立場の優れた点を認 めた後、自説の正当性について示すことが必要だと述べている。譲歩の指標となる表現と しては「確かに」「なるほど」「もちろん」などを例としてあげている。 日本語母語話者による譲歩を示す表現を調査したものには伊集院(2010)がある。伊集 院(2010)は意見文の中の「確かに」を用いた譲歩構造(「譲歩」+「反論」 )を分析し、 母語話者の意見文では主張を明示した直後と、主張をサポートする根拠の中に譲歩表現が みられると述べている。また反論の形式としては、「確かに〜が、〜。」と「確かに〜。し かし(ながら)〜。」の形式が最も多くあらわれたと分析しているが、「確かに」に限定せ ず譲歩構造を分析した伊集院・工藤(2014)でも同様の結果が得られたことが報告されて いる。 伊集院・工藤(2014)は、譲歩を示す表現の機能についても分析し、譲歩を示す表現の 機能を 1)相反する主張の提示、2)相反する主張に有利な根拠材料の提示、3)自身の主 張と相反する状況の提示、4)自身の根拠の弱点の指摘、5)自説への注釈、6)その他、の 6 つに分類している。 日本語学習者の譲歩を示す表現については伊集院(2010)が日本語母語話者に加えて、 台湾人および韓国人学習者データも収集し、特徴を比較している。その結果、学習者には 意見文の末尾の主張の中で「確かに」を用いる傾向があること、そして表現形式には母語 話者に多くみられた「確かに〜が、〜。 」が少なく、「でも」や「けど」など口語表現の使 用があったことが報告されている。また、工藤・伊集院(2013a)では、来日時に日本語能 力試験 1 級・N1 合格またはそれと同等の日本語力を有する学習者を対象に意見文を書かせ、 譲歩とみられる箇所を抽出している。その結果、47 編中1編以外の意見文には何らかの譲 歩を表す箇所が確認できたと報告されている。工藤・伊集院(2013a)は譲歩の機能と出現 位置を分析した上で、序論、本論、結論での譲歩表現の指導方法について言及している。 さらに、工藤・伊集院(2013b)は、超上級学習者の意見文を質的に分析し、学習者の意見 文にみられる譲歩を示す表現には、 「唐突」 「反論材料が不適切」 「長すぎる」といった問題 点があると指摘している。 前述の通りこれらの研究はいずれも書き言葉を対象としたもので、話し言葉である意見 陳述内での譲歩を表す発話を対象としたものではない。本研究は意見陳述中に産出された.

(4) 譲歩を表す発話の機能と論理展開のパターン、そして譲歩を表す際の言語表現形式を解明 することを目的とする。. 3.. データおよび分析方法. 調査対象者は日本国内の大学に所属する日本語母語話者(以下、母語話者)33 名と中国 語を母語とする中上級日本語学習者(以下、学習者)13 名である。母語話者は全員大学院 生であったが、学習者は学部生 1 名、大学院生 1 名、研究生 8 名、交換留学生 2 名、研究 員 1 名と様々な身分であった。学習者の 13 名中 9 名が日本語能力試験 N1、4 名が N2 を取 得していたため、学習者の日本語能力は中上級レベルであると判断した。 各対象者に、 「テクノロジーは私たちの生活を複雑にしたと思いますか、思いませんか。 どうしてそう思いますか。理由が分かるようにできるだけ詳しく、具体例を使って、自分 の意見を述べてください」など、同意か不同意か、または三択のうちどれが一番いいかを 問う課題文を書面上で提示し、口頭で意見を述べてもらうという方法でデータを収集した。 課題文は全部で 10 種類あり、一人につき 3 種類のトピックを提示した。本研究が指す 意見陳述データとは上記の手順で収集した 99 の母語話者の音声録音データと学習者によ る 35 の音声録音データのことである注 2。 意見陳述データから譲歩を表す発話を抽出した手順は以下の通りである。まず、意見陳 述データの中から、課題内容に関して話者が自分自身の立場について言及している箇所を 主張文として抜き出した。そして、話者の立場が明確になった後、 「自説と対立する立場に 理解を示したり対立する立場に有利な情報を提示したりする箇所、および、自説の問題点 や限界を指摘したり自説に不利な情報を提示したりする箇所」(伊集院・工藤 2014)を譲 歩を表す発話として抽出した。筆者 2 名それぞれが譲歩を表す発話の抽出を行なったとこ ろ、両者の判断の一致率は 82.8%であった。意見が一致していなかった箇所については協 議の上、譲歩を表すか否かを決定した。その結果、母語話者の 99 の意見陳述データのうち、 何らかの譲歩を表す発話が確認できたのは 34 データ 35 箇所であった。学習者については、 35 の意見陳述データのうち、8 データ 9 箇所に何らかの譲歩を表す発話が確認できた。 4. 4.1.. 結果 譲歩を表す発話の機能と論理展開. 母語話者および学習者の譲歩を表す発話の機能を伊集院・工藤(2014)を参考にして分 類した。論理展開については意見陳述データの発話内容を「主張」、主張を支える「根拠」 、 「譲歩」 、「譲歩」の内容に反対意見を述べる「反論」の 4 種類に分類をし、各意見陳述デ ータにおける論理展開構成を分析した。.

(5) 4.1.1.. 母語話者の譲歩を表す発話の機能と論理展開. 母語話者の発話から抽出された 35 の譲歩を表す発話は「1. 相反する主張の提示」「2-1. 相反する主張に同意」 「2-2. 相反する主張に条件付きで同意」 「2-3. 相反する主張に有利な 根拠の提示」 「3-1. 自身の主張の限定」 「3-2. 自身の主張の緩和」に分類が可能となった。 伊集院・工藤(2014)が提示した「自身の主張と相反する状況の提示」は、話者が相反す る主張に同意していない場合は「1. 相反する主張の提示」に、一部でも同意を示している 場合は「2-1. 相反する主張に同意」 「2-2. 相反する主張に条件付きで同意」 「2-3. 相反する 主張に有利な根拠の提示」のどれかに分類されると判断をし、 「自身の主張と相反する状況 の提示」についてはカテゴリーを設けなかった。また、伊集院・工藤(2014)の「自説へ の注釈」については、自身の主張を弱めることで譲歩の姿勢を示すものとされているが、 本研究では「3-2. 自身の主張の緩和」と分類することにした。以下がそれぞれの機能の詳 細である。. 【1.. 相反する主張の提示】. 譲歩を表す発話が自身の主張と対立する主張を紹介するまでにとどまっている場合、こ のカテゴリーに分類をした。したがって、話者が相反する主張に同意するかどうかは明示 されていない。以下の例 2 のように、 「このような主張も他にある」といった表現から判断 をした。下線部分が譲歩を表している。. (例 2:JNS08) JNS08: 確かに反対意見としては、授業中にスマホを使ったり、ゲームをしたり、あるい は学校の校則で決められていたりすると、持って行けないとか、持って行くべき ではないって主張する人はたくさんいると思うんですが、携帯やスマホを単に持 って行く、持って行かないというよりは、何の用途で使うかを限定することによ って、持って行く利点を、長所、長所を生かせるのではないかと思います。. 【2-1. 相反する主張に同意】 自身の主張と相反する主張を提示し、自分自身がその相反する主張に同意できることを 示している場合、このカテゴリーに分類した。例 3 は「先生と勉強するほうがいい」とい う自身の主張とは相反する主張を示して譲歩を表している場合である。. (例 3:JNS20) JNS20: 一人で勉強するのももちろんいいと思うんですけども、でも一人だけでやってし まうと、自分の視点でしか物事が、自分の視点だけで物事を捉えがちになってし まうと思います。.

(6) 【2-2. 相反する主張に条件付きで同意】 このカテゴリーに分類される譲歩を表す発話は、「相反する主張に同意」はするものの、 ある特定の条件下で同意をすることを示す発話である。例 4 の JNS09 は「教育レベルが高 ければ高いほど人生に成功できるか」という問いに対して、 「成功をお金持ちになると定義 すれば」と条件付きで同意することで譲歩を表している。. (例 4:JNS09) JNS09: 人生の成功を、僕の考える成功ではないんですけども、仮に、お金持ちになるっ て定義すれば、比較的当てはまるんじゃないかと思うんですけど、そうとは思わ ないので. 【2-3. 相反する主張に有利な根拠の提示】 相反する主張に同意を示すという点では 2-1、2-2 と共通しているが、さらに相反する主 張に有利となる根拠を提示している場合このカテゴリーに分類をした。以下の例 5 では、 JNS02 が「コミュニケーションツールの中で、手紙、メール、電話のどれが一番いいか」 という問いに対し電話が一番いいと主張しているが、メールの良さについて言及して譲歩 を表している。. (例 5:JNS02) JNS02: なぜなら、その、やはりその手紙やメールというのは、もちろんそうい、もちろ んそのべ…メールだとその利便性があったりとか、汎用性もあったりするんでし ょうけれども、その手紙や、メールからの文面ではその人の感情とか、あるいは どれくらい急を要するのかっていうことが伝わりづらいっていう問題があると思 います. 【3-1. 自身の主張の限定】 相反する主張には言及せず、自身の主張は特定の場合には当てはまらないということを 述べることにより譲歩を表す場合はこのカテゴリーに分類した。以下の JNS01 は「小学校 や中学校に携帯やスマホを持って来てもいい」という自身の主張に対して「学校では預か ったりしたほうがいい」と、自身の主張が当てはまらない場合について言及している。. (例 6:JNS01) JNS01: その携帯やスマホを学校に持って来るのはいいと思っています。特に子どもと親 の連絡ができる通学路であったら、連絡ができる手段って、公衆電話とかが減っ.

(7) ているので、連絡ができる手段が携帯やスマホになると思います。なので必要な のかなと思います。ただ、授業で、必要でないということもあるので、学校では 預かったりとか、したりするのがいいのかなと思うので、学校に持って来ること 自体には賛成です。 【3-2. 自身の主張の緩和】 このカテゴリーには、3-1 のように具体的な条件については述べていないものの、自身 の主張が「全ての場合がそうとは言えない」ことを示している発話を分類した。以下の例 7 では、 「小学校や中学校に携帯やスマホを持ってきてもいいか」という問いに対して、 「持 ってきてもいい」という自身の主張を提示した後に、 「絶対に持って来るべきだとはまで思 わない」と譲歩を表す発話をし、自身の主張を緩和させている。. (例 7:JNS14) JNS14: はい、そうですね、携帯やスマホ、学校に、持って来るべきではないと思うんで すけど、持って来てもいいとは思います。ただ、絶対に持って来るべきだとは、 までは思わなくて、. 以上 6 つの分類の中で頻度が高かったものは「2-1. 相反する主張に同意」(10 箇所)と 「2-3. 相反する主張に有利な根拠の提示」 (9 箇所)であったことから、母語話者は相反す る主張に同意をすることによって、譲歩を示す傾向があることがうかがえる。次項の表 1 はそれぞれの分類の出現数とそれに伴う論理展開の結果をまとめたものである。 前述の通り、論理展開は「主張」、主張を支える「根拠」、「譲歩」、「譲歩」の内容に反 対意見を述べる「反論」に分類をしたが、同一の意見陳述データに複数回の主張、根拠、 譲歩を表す発話が含まれていることがある。本研究では譲歩と反論と主張の位置に焦点を 置いて分析をしたため、根拠が複数回現れる場合、 「主張→根拠→譲歩→反論→根拠→主張」 も「主張→譲歩→反論→根拠→主張」も「主張→根拠→譲歩→反論→主張」も同様のパタ ーンとして分類した。. 譲歩を表す発話が含まれる意見陳述データを論理展開の観点から分析したところ、まず は反論の有無について機能別の傾向があることが明らかになった。譲歩を表す発話のうち 機能 1 から機能 2-3 までは、相反する主張の提示または同意を示しているが、その際、相 反する主張の弱点を指摘する、つまり本研究では反論に分類される発話が続く場合が多い ことが分かった。しかしながら、以下の例のように反論がないケースもあることがデータ から示された。. (例 8:JNS23) JNS23: で、確かに先生と一緒にやるとすぐ教えてくれるので、すごいはかどるのかもし.

(8) れないんですけど、やっぱこう、自分一人でこう…やって、壁に当たって、で、 こう考えるっていう、そういうこう、その、壁にぶち当たって、まずその、壁に ぶち当たって考えるっていうところで、何かすごい自分のインパクトに残ります し、こう、そうですね、たとえこう分からなかったとしても、その考え抜くこと 表 1 母語話者の譲歩を表す発話の機能の分類と論理展開 カテゴリー 論理展開のパターン 1.. 相反する主張の提示. 2-1. 相反する主張に同意. 2-2. 相反する主張に条件付き で同意 2-3. 相反する主張に有利な根 拠の提示. 3-1. 自身の主張の限定. 3-2. 自身の主張の緩和. 出現数. 主張→譲歩→反論→根拠→主張. 3. 譲歩→主張→根拠→主張. 1. 主張→根拠 1→譲歩→反論→根拠 2→主張. 6. 主張→譲歩→反論→譲歩(機能 3-1)→根拠→主張. 1. 主張→根拠 1→譲歩→根拠 2. 2. 譲歩→主張→根拠→主張. 1. 主張→根拠 1→譲歩→反論→根拠 2→主張. 2. 主張→→譲歩→反論→根拠→主張. 6. 主張→根拠 1→譲歩→根拠 2→主張. 2. 譲歩→主張→根拠→主張. 1. 主張→根拠 1→譲歩→根拠 2→主張. 4. 主張→根拠→主張→譲歩→主張. 1. 主張→譲歩(機能 2-1)→反論→譲歩→根拠→主張. 1. 主張→ 譲歩 →根拠→主張. 3. 譲歩→主張→根拠→主張. 1. 4. 10. 2. 9. 6. 4. 合計 35. によって、思考能力とかそういうところが、あれですね、鍛えられると思うので. 例 8 の JNS08 は「勉強は一人ですべきだ」という主張をしているが、「先生とすること ではかどるかもしれない」と相反する主張への同意を示している。譲歩の発話は「けど」 で終わるため、次に相反する主張に対する反論が続くような形式ではあるが、次の発話内 容は一人で勉強するほういいと思う主張の根拠であり、先生と勉強することの問題点や弱 点に直接言及しているわけではない。したがって、反論がない譲歩も意見陳述においては 可能なことが示された。さらに、機能 3-1 と 3-2 の譲歩を表す発話に関しては、反論を表 す発話が続いていないが、これは「自身の主張」を限定したり弱めたりすることで譲歩を 表しているため、反論を提示することはかえって論理展開上問題があるためである。 次に特徴的な点として、2 件の意見陳述データを除き全ての譲歩を表す発話を含む意見.

(9) 陳述データで、話者は発話の開始部または途中で一度主張を明示したあと、最後にもう一 度主張を述べて意見陳述を終了していた。前述の例 1 が代表的な談話展開パターンであり、 最初と最後に自身の主張を明示、最初の主張の直後に譲歩と反論が含まれるというもので ある。 最後に、意見陳述の開始部の発話に着目したい。本研究では課題文が二択または三択で 話者の意見を問うものであったことから、まず始めに自身の主張を明示する論理展開パタ ーンが多くみられた。しかし、中には譲歩を表してから主張を示す場合もある。以下がそ の例である。これは自身の主張を述べる前に、意見陳述の開始部で相反する主張を提示し ている例である。. (例 9:JNS22) JNS22: 教育のレベルについてですけど、結局努力をした者が、みたいな話はありますが、 最終的には、やっぱり、その、教育のレベルっていうのは大きく関わってくるの で、教育のレベルが高ければ高いほど私は人生には成功すると思います。. 以上が母語話者の譲歩を表す発話の機能と論理展開の結果についてであるが、学習者デ ータも同様の分析を行った。以下に結果を示す。. 4.1.2.. 学習者の譲歩を表す発話の機能と論理展開. 学習者の譲歩を表す発話 9 箇所も母語話者と同様の分析を行った。表 2 はその結果を示 したものである。.

(10) 表2. 学習者の譲歩を表す発話の機能の分類と論理展開. カテゴリー. 論理展開のパターン 主張→根拠→譲歩→反論→主張. 1.. 相反する主張の提示. 主張→根拠 1 →譲歩→反論→根拠 2 →譲歩 (機能 2-3)→主張. 2-1. 相反する主張に同意. 主張→根拠→ 譲歩 →反論→主張. 2-2. 相反する主張に条件付で 同意 2-3. 相反する主張に有利な根 拠の提示. 3-1. 自身の主張の限定. 3-2. 自身の主張の緩和. 主張→根拠 1→譲歩(機能 1)→反論→根拠 2→譲歩 →主張. 出現数 1 1. 2. 1. 1. 0. 0. 1. 主張→根拠→譲歩→反論→根拠. 1. 主張→譲歩→根拠. 1. 根拠→主張→譲歩. 1. 主張→根拠→譲歩. 1. 主張→根拠→譲歩→反論→主張. 1. 2. 2. 2. 合計 9. データ数が少ないため一般化することはできないが、学習者の譲歩を表す発話の機能は 3-1 または 3-2 の自身の発話を限定したり、弱めたりする機能が約半数を占めていた。この ことから、母語話者には相反する主張に同意をすることで譲歩を示す傾向が、学習者には 自身の発話を限定したり、弱めたりすることで譲歩を示す傾向があることうかがえる。 次に論理展開のパターンについてであるが、母語話者と大きく異なる点としては、意見 陳述の終了部に主張を表す発話が欠けている点があげられる。母語話者のデータでは 2 件 を除き全ての意見陳述の終了部に話者の主張が述べられていたが、学習者の場合は、根拠 や譲歩を述べた後に終了している意見陳述があった。 以下の例 10 は学習者の意見陳述が譲歩を表す発話で終了しているものの例である。 (例 10:CNS03) CNS03:私は成功には運が必要だと思います。なぜな、なぜかというと、人生の道は誰に もわかりません。たくさん道の前で一つ選んだ結果は、結果はどうなるか誰にも わかりません。でも、運、一部分が運によって、結果も変わりません、変わると 思います。 《沈黙 5 秒》例えば私留学のことも、運がないと、こんなに進めないと 思います。最初、先生選ぶ時も、いろんな人出会って、あの時はちょっと運がな いと多分たくさんことできないと思います。でも、人生は全部運ではないと思い ます。多分一部分は運によって変わります。そう思います。.

(11) 成功には運が必要だと思うかという問いに対して、CNS03 は運が必要だと思うという自 身の主張を冒頭で述べている。そして、その根拠を述べたあと、 「人生は全部運ではないと 思います」 「多分一部分は運によって変わります」と、自身の主張を弱める発話で譲歩を表 している。この後に反論または自身の主張が再度述べられていれば、CNS03 の「運が必要 だと思う」という主張が聞き手に明確に伝わると思うが、終結部が「そう思います」で終 わっているため、最終的な話者の意見が伝わりにくい。書き言葉であれば文頭から読み直 し、筆者の意図を確認できるかもしれないが、話し言葉の場合はそれも不可能である。 同様に譲歩で意見陳述が終了しているパターンが 1 件、その他、主張をサポートする根 拠で意見陳述が終了しているパターンが 2 件確認された。. 4.2.. 譲歩と反論を表す発話の表現形式. 譲歩と反論を表す発話の表現形式については、譲歩を示す際の特徴的な表現形式と、譲 歩から反論に移行する際の表現形式に分けて分析をした。. 4.2.1.. 母語話者の譲歩と反論を表す発話の表現形式. 母語話者の譲歩を表す発話の表現形式は大きく分けて 4 つに分類することが可能となっ た。表 3 は母語話者の譲歩を表す発話の表現形式をまとめたものである。 譲歩を示す表現形式で最も多く用いられていたのは、 「確かに」 (計 5 回)と「もちろん」 (計 5 回)で、次に「やはり/やっぱり」 (計 4 回)が多く用いられていた。譲歩の機能に よって表現形式の種類は様々であることが分析から明らかになった。 表 3. 母語話者の譲歩を表す発話の表現形式の分類. 相反する主張を提示 相反する主張を認め. 表現 形式. 相反する主張に条件. するための表現. るための表現. 自身の主張を弱める 付きで同意するため ための表現 の表現. 多くの 〜みたいな話 という人も多い. 確かに もちろん やはり/やっぱり 〜自体が. 〜時 〜ば 〜と ただ. 個人的には 全部が全部 いつもというわけで はない. 少なくとも. 可能性はある. 次に、譲歩から反論への移行を示す表現形式に関しては以下の表のように接続助詞と接 続詞に分類が可能となった。 表 4. 母語話者の譲歩から反論への移行を示す表現形式の分類. 譲歩から反論への移行(接続助詞). 譲歩から反論への移行(接続詞).

(12) 表現形式. 回数. 表現形式. 回数. けど. 11. でも. 1. けれども. 7. しかし. 2. けども. 3. ただ. 3. が. 6. 一方で. 2. 計 27. 計8. 母語話者には接続詞よりも接続助詞の使用が顕著であることがデータから示された。接 続助詞の中では「〜けど」「〜けれども」「〜が」の使用頻度が高く、これらの接続助詞を 用いて一文の中で譲歩から反論への移行を示すことが多いことが明らかになった。. 4.2.2.. 学習者の譲歩と反論を表す発話の表現形式. 学習者の譲歩と反論を表す発話の表現形式についても、母語話者同様の分析を行った。 表 5 は学習者の譲歩を表す発話の表現形式をまとめたものである。学習者に特徴的なのは、 譲歩を明示的に示す表現形式の使用が少なく、種類も限られているという点である。 「〜人 (ひと)もいる」と相反する主張を提示する表現が同一の学習者によって 2 回、 「もちろん」 を用いて相反する主張を認める表現が 1 回、ある特定の状況について「〜によって(は) 」で限定している発話が 1 回確認できたのみである。. 注3. 表 5. 学習者の譲歩を表す発話の表現形式の分類. 相反する主張に条件 相反する主張を提示 相反する主張を認め 自身の主張を弱める 付きで同意するため するための表現 るための表現 ための表現 の表現 表現 形式. 〜人もいる. もちろん. 〜によって(は). 以下の表 6 は学習者の譲歩から反論への移行を示す表現形式をまとめたものである。 表 6. 学習者の譲歩から反論への移行を示す表現形式の分類. 譲歩から反論への移行(接続助詞). 譲歩から反論への移行(接続詞). 表現形式. 回数. 表現形式. 回数. けれど. 2. でも. 6. けど. 1. しかし. 1. が. 1. 計4. 計7. 母語話者の場合は反論を示す際に接続助詞の使用が顕著であったが、学習者の場合は接.

(13) 続詞、特に「でも」の使用が最も多いという結果になった。これは学習者が同一文内にお いて譲歩から反論への移行ができておらず、単文レベルの発話にとどまっていることを示 唆している。. 5.. まとめと考察. 本研究では意見陳述における譲歩を表す発話の機能と論理展開および表現形式につい て、母語話者と学習者データを分析した。その結果、母語話者の意見陳述データの約三分 の一、そして学習者の意見陳述データの約五分の一に譲歩を表す発話が認められ、話し言 葉である意見陳述においても相反する主張を提示したり、自身の主張を弱めたりするとい った譲歩行為が行われていることが明らかになった。しかし、母語話者の意見文を対象と した伊集院・工藤(2014)や学習者の意見文を対象とした工藤・伊集院(2013a)ではほぼ 全ての意見文に譲歩表現が現れており、書き言葉と話し言葉には譲歩表現の出現頻度に差 があることが示唆された。今後、同じ話題を提示した上で書き言葉である意見文と話し言 葉である意見陳述の譲歩表現を比較することで、それぞれの特徴がさらに明らかになると 考える。 譲歩を表す機能については 6 つの機能に分類が可能となったが、そのうち母語話者には 相反する主張に同意して譲歩を表す機能が、学習者には自身の主張を限定したり弱めたり することで譲歩を表す機能が多くみられた。これは、日本語が母語ではない学習者にとっ て、何の準備もなく即時的に意見を述べるというタスクは認知的にも言語的にも負荷がか かり、自身の主張とは相反する主張を提示し、さらには同意して反論するという発話行為 には困難が伴うからではないだろうか。 譲歩を表す発話の直後に、反論を示す発話があるかどうかは譲歩の機能にもよることが 分かったが、機能 2-2 や 2-3 など、相反する主張に同意した後に反論が伴うことが望まし い場合でも、反論を伴わないケースが母語話者にも学習者にもあることが確認された。た とえ反論がなくても、自身の主張の根拠を述べたり、再度主張を述べることで相手に自身 の主張を伝えることは可能ではあるが、自説の正当性を高めるという点では話し言葉にお いても反論が述べられるほうが望ましい。反論の有無による論理展開の違いについては今 後の課題としたい。 その他、 母語話者と学習者の譲歩を表す発話を含む意見陳述において特徴的だったのは、 意見陳述終結部の主張を示す発話の有無である。母語話者の場合は、譲歩を表す発話を含 む意見陳述データのほとんどにおいて、自身の主張を意見陳述の終結部で述べているのが 確認された。終結部で自身の主張を述べることによって、最終的に話者がどのような立場 であるか聞き手に明示することができることから、これは聞き手を配慮した談話構成であ ると言える。しかしながら、学習者には同様の傾向はなく、意見陳述の最後が譲歩で終わ っていたり、自身の主張の根拠で終わっているケースもみられた。これは書き言葉を分析.

(14) した伊集院(2010)で意見文の末尾に譲歩を示す表現が用いられていたのと共通する結果 である。特に譲歩の発話で意見陳述が終了した場合、話者が譲歩を示した意図が聞き手に 伝わらない可能性もある。学習者には意見を述べる際には、最後に自らの主張を述べるこ とが聞き手配慮の談話構成であることを指導する必要がある。 次に、譲歩を表す発話の表現形式についてであるが、母語話者は様々な表現形式を用い て譲歩を表しており、機能別に 4 種類に分類することが可能となった。 「確かに」と「もち ろん」が多く使われていたのは先行研究の通りであるが、1 回のみ出現している表現も多 く、譲歩の機能や談話の流れ、またトピックによっても表現形式が異なっていることが明 らかになった。それに対して、学習者が「もちろん」を使って譲歩を表していたのは 1 件 で、 「確かに」の使用は確認できなかった。伊集院(2010)では、学習者も意見文において 「確かに」が使えていたと報告がされていることから、 「確かに」の未使用は話し言葉の特 性である可能性もある。 譲歩から反論への移行の際には、母語話者は接続助詞の「〜けど」 「〜けれども」 「〜が」、 学習者は接続詞の「でも」の使用が多いことが分かった。伊集院・工藤(2014)の母語話 者データの分析からは、反論の際には「しかし(ながら)」が「〜が/けれど(も)」と同 様に頻繁に使われていたと報告されているが、話し言葉では文を完結せずに譲歩から反論 へと談話が展開していることがデータから示された。学習者に「でも」の使用が多いこと は伊集院(2010)の結果と一致するが、これは学習者が中上級レベルになっても逆説を示 すために「でも」という表現を多用していることを示している。 「でも」は書き言葉では口 語的という理由で、話し言葉でも談話の流れを維持するという点では反論を示す際には不 適切である可能性がある。学習者には「でも」以外の表現が使えるよう指導する必要があ ると考える。. 6.. 本研究の意義と今後の課題. 本研究では、話し言葉である意見陳述の際の譲歩を表す発話について、母語話者と学習 者の特徴を分析した。これまで譲歩を示す表現は書き言葉である意見文を対象として研究 がされてきたが、より説得力のある意見陳述の談話展開を知るためには意見陳述における 譲歩を表す発話についても調査が必要である。そして、調査結果を学習者に対する指導方 法の改善へとつなげることも今後は必要である。今回はデータ数が少ないため学習者の母 語別、レベル別の特徴を明らかにすることはできなかったが、中上級レベルと言われる学 習者にとって、譲歩を表す発話は母語話者のものとは傾向が異なることは示唆された。 今後の課題としては、大学院生だけではなく学部生を対象とした日本人データ、および 身分を統一した学習者データや他の言語を母語とする学習者データの収集があげられる。 また、今回は日本語能力試験(JLPT)の取得級を参考にして学習者の日本語習熟度を設定 しているが、必ずしも日本語能力試験の取得級が口頭能力の習熟度を反映しているとは言.

(15) えないため、習熟度の測定方法の検討が必要である。. 注 1.. 本研究の対象ではないフィラー「えー」 「まー」 「んー」 「うーん」 「えっと」 「あのう」 「な んか」は紙幅の都合上例から除外してある。. 2.. タスク遂行に時間を要した学習者 4 名については 2 つの課題文のみの提示とした。. 3.. 文脈より、学習者は「〜によっては(状況が違う)」と意図して「〜によって」と発話し ていたと考えられる。. 参考文献 石黒圭(2004)『よくわかる文章表現の技術Ⅱ—文章構成編—』明治書院 伊集院郁子(2010)「意見文における譲歩構造の機能と位置−『確かに』を手がかりに−」 『ア カデミック・ジャパニーズ・ジャーナル』第 2 号、101-110. 伊集院郁子・工藤嘉名子(2014)「日本人大学生の意見文における「譲歩」の論理性」 『東京 外国語大学留学生日本語研究センター論集』第 40 号、35-51. 大島弥生・池田玲子・大場理恵子・加納なおみ・高橋淑郎・岩田夏穂(2014)『ピアで学ぶ 大学生の日本語表現[第 2 版]』ひつじ書房 工藤嘉名子・伊集院郁子(2013a)「超級学習者の意見文における『譲歩』の論理性」『東京 外国語大学留学生日本語研究センター論集』第 39 号、1-15. 工藤嘉名子・伊集院郁子(2013b)「意見文における効果的な『譲歩』とそうでない『譲歩』 」 『日本語教育方法研究会誌』20、2、74-75..

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表 2   学習者の譲歩を表す発話の機能の分類と論理展開 カテゴリー  論理展開のパターン  出現数  1.  相反する主張の提示  主張→根拠→譲歩→反論→主張  1  2 主張→根拠 1 →譲歩→反論→根拠 2 →譲歩 ( 機能 2-3) →主張  1  2-1

参照

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