• 検索結果がありません。

環境大気中多環芳香族化合物および有機塩素化合物の発生原因に関する解析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "環境大気中多環芳香族化合物および有機塩素化合物の発生原因に関する解析"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)横浜国大環境研紀要17:21−33(1991). 環境大気中多環芳香族化合物および有機塩素化合物の 発生原因に関する解析 Analysis for the Origin of Environmental Pollution about Polynuclear Aromatic Hydrocabons and Chlorinated Aromaticsin the Atmosphere 加藤 龍夫*. Tatsuo KATOU* Synopsis. With respectto the broad diffusion andthe complicaton ofrecentenvironmental pollution,itisrequiredto establish a technique which can determine a pollution sourceinmenysourcesforsettingupaneffectivecounteremeasure. Inthepresenntstudy,ananalyicaltechniquewas attempedforsomecarcinogeIllC. samples.Polynuclear aromaic hydrocarbons(PAH)and chlorinated aromatic. hydrocarbons(CAH)asimportantcarcinogenswereanalyizedtogetherbyGC/MS− SIM fortimeandspatialvariations. Andtheseconstituentratioswerecomparedbetweenthesamplesfrom the environ− mentalatmosphere andthe gases generating from coal,WOOd,PetrOleum boiler, MSWincinerationplant,disselcar,tObacco androastedfish whichwere noticed as. sourcesofPAHandCAH.ItwasfoundbythesecomparisonsthatthehightemperaT ture SOurCeS SuCh as disselcar andlarge size petroleum boiler were not seemed. the main sources of atmospheric PAH but the low temperature sources such as smallsizeboilerwererathercausedthatairpollution.MSWincinerationplantwas aimportantsourceof CAH andtheseconstituentratiosweresimilarto thatofthe. airpollutants.Thistechniqueisconsideredusefultocontroltheenvironmentalpollu− tion.. 1 緒言 多環芳香族化合物は化学発癌性が最初に確認された. 汚染質であり,有機塩素化合物は近年環境中で発癌,. の時間変動と地域分布と成分構成を知る必要があるが, 前二者は単純な汚染の場合普通に取上げられるに対し 発生源が複雑になるに従って成分構成の比較が有効な. 解析方法となると考える。つまり,複数の発生源があ. 催奇性が注目されてきた汚染質である。かって,煤煙. る場合,関聯する成分の比率が異なれば,各発生源と. が酷かった時期の多環芳香族化合物,また農薬の集中. 環境試料について成分比率を比較することによって汚. 使用による有機塩素化合物の善が目立った時には,汚. 染源の特定あるいは汚染の寄与の程度を明らかにする. 染源が明瞭であって原因を特定する作業は必要としな. ことが可能である。このような発生源別に成分比を求. かった。しかし,今日様々の化学毒が広範囲に希薄状. めることは以前から自動車排気ガスや焼却炉ガスの多. 態で環境に常在する事態になると,環境汚染の防止の. 環芳香化合物について試みられてき三ただ,これ. )・3’. ためには先ず発生源を主要なものから特定することが. ら2成分間の比率の範囲を示す方法では,あまりにも. 研究として重要となる,環境汚染の解析には,汚染質. 大雑巴で環境値から発生源を特定する手段とはなりえ. * 横浜国立大学環境科学研究センター 環境基礎工学研究 室. Department of EnvironmentalEngineering Science, Institute of EnvironmentalScience and Technology,. なかった。本報では実用的な成分比率表示法として, 濃度対数折れ線グラフ表示を用い,多環芳香族と有機 塩素化合物の汚染解析手法を示した。すなわち,各成. Yokohama National University. 分を横軸に濃度を縦対数軸にとって,各試料毎に折れ. (1990年12月1日受領). 線グラフを作れば,同一汚染源からのものは同一図形.

(2) 22. ガラスろ紙. 10m ¢×邪mm. パイレックスガラス管. 活性炭ろ紙. ↓. 真空ポンプ. 図2 ガス補集管. 図1 ろ紙ホルダー. となる理屈だから,これによって汚染源の判定ができ. 取するために,活性炭,Tenax−GC吸着剤およびガ. る。この方法は自動車排気ガス汚染4). ラスろ紙を積層にして,これに吸着採取した。採取装. ,地下水の塩素. 化合物汚染5),家屋のクロルデン汚染6)などで効果を. 置はろ紙ホルダーに2種類のろ紙を装着する方式とガ. 認めており,大気環境中での発癌性成分の追求に試み. ラス管に吸着剤を充てんする方式7)を用いた。それぞ. たものである。. れ装置を図1と図2に示す。なお,このろ紙ホルダー. 2 分析対象および分析方法 環境に対する多環芳香族と有機塩素化合物の発生源. として,石炭,木の燃焼ガス,石油ボイラー,ゴミ焼. は発生源に使用したもので,環境大気を大容量吸引す る物合は同様の方式で通常のハイポリュームサンプラ を用いた。. 採取試料はすべてソックスレ一拍出後,日本電子製. 却施設,ディーゼル自動車の排ガス,タバコ,焼魚の. JEOLDX303HF型GC/MSによって分析した。. 煙を選び,また環境試料として本環境科学研究センター. 分析条件は表1に示す。. 屋上大気と⊥部他都市大気を採取した。 採取方法は揮発性の有機塩素化合物から高沸点の多. 環芳香族化合物まで,沸点範囲の広い成分を同時に採 表1 分析条件 hp−1(CrosslinkedMethylSiliconGum) カラム. Capillarycolumn 25mXO.32mmXO.52〟m. injectiontemp250℃ initialtemp80℃ GC条件. ratelO℃/min. finaltemp240℃. なお,本実験で対象とした成分についてガラスろ紙 と活性炭ろ紙に分配吸着される状況を調べた結果を図. 3に示す。PAHの低沸点成分は活性炭に高沸点成分 とくにB(e)P,B(a)Pはガラスろ紙に大部分浦捉さ れることが分かる。また,クロロベンゼン類ははとん. どが活性炭に捕捉される。フタル顔エステル掛ま両方 に別れる結果であった。 3 発生源別調査結果 3.1 石炭燃焼の煤煙 発生源実験では,まず石炭の燃焼によるPAHなど の発生を調べた。石炭を屋外の小さな炉を用いて開放. resorution1500. ionsourcetemp250℃ ionizationcurrentlOOLLA MS条件. electroneenergy70ev. conversiondynodevoltage−5kv ion multi 100. 3∼6CLBz:M,M+2 M/Z. PAH:M DOP,DBP:149. 状態で燃やし,不完全燃焼時の煤煙をガラスフィルター 1枚と活性炭フィルター1枚を装填したェアサンプラー. で15分吸引採取した。ガス採取量は積算流量計により 計測した。採取後フィルターを小さく切り刻んで円筒 ろ紙の中に入れ,トルエン100mβで3時間ソックスレ一 拍出した。抽出終了後円筒ろ紙を除いた状態で再び加 熱してトルエン溶媒を拝発させて,抽出液を5mβ程度 まで濃縮した。この濃縮液を蓋付試験管に取り,さら. 槽.

(3) 23. に抽出器のフラスコを1mgトルエンで3回洗浄して合 わせて試験管にいれ,最後にトルエンを加えて全量を 10mgに調節し,2の方法で分析した。 マスクロマトグラム例を図4に示し,測定結果は表 2に示した。. 表2 石炭燃焼時のPHA濃度 単位:〝g/d 試料1. 捕集時間[min.]. 叩ヒン n(e川 0(d)P. 120. 130. 190. 515. ビレン. 72.9. フルオランテン. 57.6. クリセン. 413. ベンゾ(e)ビレン ベンゾ(a)ビレン. 還ヨ ガラスファイバー1. 15. 15. 採取ガス量[ゼ] フェナントレン. 試料2. 65.7 179 145. 2.3. 34.8. 15.8・176. ペリレン. 5.0. 12.9. 匡冠 活性炭−2. 図3 ガラスファイバーと活性炭ファイバーの. この実験では塩素化合物は検出されなかった。. PAHに対する補集率 3.2 木材燃焼の煙 空気中において木材を燃焼させ,その時発生する煙 を上述の石炭と同様の方法を用いて,30分間ろ紙に採 取し,分析した。マスクロマトグラム例を図5に示し, 測定結果は表3に示した。. .8 蛇. S. 5・−﹂. q. 沌. 9 3 れ 5. 88. ∃ 之. ∩. 5己P. .コa8. _≡∂e. 図4 石炭燃焼ガスのマスクロマトグラム. ≡80. !e2?. 158e. 図5 木材燃焼ガスのマスクロマトグラム.

(4) 24. 表4 石油ボイラー煤煙中のPAH濃度. 表3 木材燃焼時のPAH濃度 単位:〟g/d. 単位:〟g/d. 試料1 試料2 試料3 試料4 描集時間[min.] 30. フェナントレン. 350. 418. ビレン. 101. フルオランテン. 111. クリセン. 125. ベンゾ(e)ビレン. 443. 20.2. ベンゾ(a)ビレン 106 ペリレン. 30. 30. 採取ガス量[ゼ] 350. 2.3. 試料1. 490 81.5. 48.3. 19.8. 11.0. 19.9. 10.8. 4.8. 1.7. 28.1. 11.7. 190. 30. 490 92.3. フェナントレン. 30. 30. 490. 340. 618. 1020. ビレン. 71.0. 182. 22.7. フルオランテン. 60.9. 203. クリセン. 11.0. 22.0. 2.4. ベンゾ(e)ビレン. 13.0. 16.0. 22.8. 427. 1.5. 捕集時間[min.] 採取ガス量[ゼ]. 試料2. 1.0 4.5. 3.3 石油ボイラーの排ガス. ベンゾ(a)ビレン 11.1 ペリレン. 5.1 3.2. ガスを真空ポンプを用いてろ紙ホルダーに1時間吸引. 現在の日本では石油が主要な燃料として使用されて. し,400ゼ程度のガスを採取した,採取試料は石油ボ. いて,その規模,形態も様々である。本実験では,横. イラーと同様に抽出,分析した。マスクロマトグラム. 浜国立大学の石油ボイラー燃焼排ガスを測定した。こ. 例を図7に示し,測定結果を表5に示した。. の石油ボイラーは,冬期学内暖房用に早朝7時30分か ら午後9時まで学内に蒸気を供給している。石油の消 費量は8000ゼ/日の規模である。試料の採取に当って は,煙道測定口から煙道ガスを引き,ろ紙ホルダーを. 用いて30分間吸引して300ゼ∼500ゼ程度のガスを採取 した。採取試料は3時間トルエン抽出し,分析に供し た。マスクロマトグラム例を図6に示し,測定結果を 表4に示した。. S88. 1888. 15a8. 図7 ディーゼル車排ガスのマスクロマトグラム. 表5 ディーゼル車排気ガス中のPAH濃度 単位:〝g/d 試料1. 捕集時間[min.] 51】8. 三888. 1588. 図6 石油ボイラー排ガスのマスクロマトグラム. 3.4 ディーゼル自動車排気ガス ディーゼル車排気ガスについては,排気管にガラス. 管を挿入し,エンジンをアイドリング状態として排気. 採取ガス量[ゼ]. 試料2. 60. 60. 470. 440. フェナントレン. 355. ビレン. 543‘. 81.9. フルオランテン. 304. 47.6. 349. クリセン. 24.7. 11.6. ベンゾ(e)ビレン. 10.7. 11.9. ベンゾ(a)ビレン. 4.3. 11.8. ペリレン. 0.6. 0.3.

(5) 25. 3.6 焼魚の煙. 3.5 煙草の煙. 煙草についてはMILDSEVENとHOPEの2種. 焼魚の煙試料はサンマを金網上でガス台によって家 庭で行うのと同様の状態で焼き,その時の煙を30分間. 類を1本5∼6分間の速度で燃焼させ,吸い殻の残部 が長さ3皿となるまで主流煙をろ紙ホルダーに吸引採. 吸引して200ゼ∼300ゼ程度のガスを採取した。採取ろ. 取した。これを繰り返し1枚のフィルターに10本分の. 紙を3時間トルエン抽出し,抽出液を分析に供した。. 煙草の煙を集めた。採取試料を3時間トルエン抽出し,. マスクロマトグラム例を図9に示し,測定結果を表7. 分析に供した。マスクロマトグラム例を図8に示し,. に示した。. 測定結果を表6に示した。. 1由 匂. z88 ;OM da8 Zロ. 1与. S舵. G88 ?88 ZS. つ8. 丈Z2t】.3 ちda. t ノリ. sこび. ∼雷ミ1. 図9 焼魚の煙のマスクロマトグラム. 図8 煙草の煙のマスクロマトグラム. 表6 煙草の主流煙中のPAH濃度 単位:〟g/ポ 試料1. 煙草の名称. MILDSEVEN MILDSEVEN. 試料2. 試料3. HOPE. 試料4 HOPE. 捕集時間[min.]. 60. 60. 60. 60. 採取ガス量[ゼ]. 10. 10. 10. 10. フェナントレン. 1610. 1980. 2310. 2960. ビレン. 530. 1200. 530. 530. フルオランテン. 350. 1010. 498. 305. 970. 430. クリセン. 400. 1210. ベンゾ(e)ビレン. 300. 153. ベンゾ(a)ビレン. 38. 527. 450. ペリレン. 140. 243. 200. scan R・r・. ∬さ9.

(6) 26. 表7 焼き魚の煙中のPAH濃度. 表8 電気集塵機排気ガス中の高沸点有機化合物の濃度 単位:〟g/d. 単位:〟g/d 試料1. 試料1 試料2. 試料2. 30. 30. 捕集時間[min.]. 60. 60. 採取ガス量[ゼ]. 230. 270. 採取ガス量[ゼ]. 80. 60. フェナントレン. 8.0. 80.4. フェナントレン. 1650. 4180. ビレン. 1.0. 12.7. ビレン. 443. 1320. フルオランテン. 0.9. 14.0. フルオランテン. 230. 捕集時間[甲in.]. クリセン. 31818. 213. クリセン. 65.8 178. ベンゾ(e)ビレン. 1.8. ベンゾ(e)ビレン. 22.3. 17.2. ベンゾ(a)ビレン. 11.3. ベンゾ(a)ビレン. 24.3. 16.3. ペリレン. 18.8. ペリレン. 0.4. 2.5. トリクロロベンゼン 1190 3.7 ゴミ焼却施設の排ガス ゴミ焼却施設の電気集塵機出口排ガスについては, 図2に示したガラス製吸着管を用いて,真空ポンプに. て1時間60∼80ゼを吸引採取した。マスクロマトグラ. 5.7. 1260. トリクロロフェノール. 155. テトラクロロベンゼン. 1280. 1520. 348. ペンタクロロベンゼン. 5820. 4480. ヘキサクロロベンゼン. 3430. 2130. DOP. 6560. 3680. DBP. 2250. 1720. ム例を図10に示し,測定結果を表8に示した。 この結果によると,ゴミ焼却場の排ガスから,PAH,. 塩素数3∼6のクロロベンゼン,フタル酸エステルが. 3.8 発生源試料の比較 以上,石炭,木の燃焼ガス,石油ボイラー,ゴミ焼. 検出された。このことから石炭,石油類の燃焼ガス成 分との相違が明らかになった。. 却施設,ディーゼル車の排ガス,煙草,焼魚の煙に関 する定性定量結果の比較はつぎの通りである。. まず,多環芳香族については実験したほとんどの試. 扁.丁. 料から確認することができた。これに対し,クロロベ ンゼンなど有機塩素化合物については,ゴミ焼却施設 の排ガス中にだけ見付かっている。またDOP,DBP も同様である。. B(a)Pの濃度については石炭や煙草が高いけれど も環境に対する影響は排出総量によるわけだから,現 状では他の石油燃料,自動車排ガス,ゴミ焼却排ガス. などを注目しなければならないだろう。この点で成分 ′,. −. 比解析が必要とされる。一方,有機塩素化合物の場合. ︻‘. は発生源としてゴミ焼却施設が大きな要因となってい ることが分かった。. +. 発生源別に成分濃度比率をとって,多環芳香族化合. ■こ. 物について図11に示す。またクロロベンゼン類につい .− 〓一. 上. ︳. :ZZe. 三一. ≡∼Z. 〓■. 図10 ゴミ焼却施設の排ガスのマスクロマトグラム. て図12に示した。後者はゴミ焼却施設だけである。.

(7) 27. フ1ナン. トレン. ビレン. フル寸 クリヒン ベンゾ{eIベンゾ刷 ベlルン ビレン ビレン ランチン. 図11発生源別多環芳香族類の成分比率. ドリタロロ トリクロロ テトラタロロ ベンククロロ ヘキサクロロ ベンゼン フェノール ベンゼン ベンゼン ベンゼン. 図12 発生源別クロロベンゼン類の成分比率.

(8) 28. 多環芳香族化合物で見ると,それぞれ発生源別に成. 中暖房だけが冬期に加わることになる。また,気象条. 分比の特徴が認められる。従って,予想したように発. 件に関しては季節による風向が影響する。冬期両者に. 生源別に成分比のパターンを確定しておけば,汚染経. 差が現われているのはこれらの要因が考えられる。本. 路の特定に役立ちうると考えられる。発生源全体の傾. 環境調査からはB(a)Pと共に毒性が強く農薬として. 向としては,多環芳香族化合物を沸点順に見た場合,. 禁止されたヘキサクロロベンゼンが一般大気中に常在. 木材,焼魚,煙草は各成分濃度差が少く,ゴミ焼却,. すること,そしてこれがゴミ焼却施設が発生源となれ. ディーゼル車は低沸点成分の方で濃度が高く,高沸点. ばダイオキシン類の存在と比例していることが重要な. 成分の方で濃度が低く,濃度差が著しいことが分かっ. 現象となる。この意味でB(a)Pと同時にヘキサクロ. た。例えば,フェナントレン,ビレン,とB(e)P,B. ロベンゼンの監視が必要と思われる。. (a)Pで見ると木材等では差は10倍程度であるのに対. R.T.. しゴミ焼却等では差が数100∼1000倍に達する。この ように見ると発生源別の成分比率について,これを2 つの型に分類できる。おそらく,この2つの型の違い. は燃焼温度に関係すると考えられ,前者は不完全燃焼 に対応し,後者は高温燃焼に対応するようである。あ るいは,石炭と木材はもともと同種の材料であること. が関係するかもしれない。またボイラーの排ガスは, 都市の普遍的汚染源であるが,クリセン,B(a)Pは 低く,どちらかと言えばゴミ焼却場やディーゼル排気 と同じ型に分類される。タバコは,各成分がはぼ均等 に出ており,低温発生源とされるが,クリセンが特に 高いということばない。以上は濃度対数折れ線グラフ. 表示で明瞭に判断でき,この方法が優れていることが 示された。 クロワベンゼン類はゴミ焼却施設のみであるが,や 1622. S∂e. 2. 1529. はり各成分比に一定の比率があることが看取された。 図13 大気試料のマスクロマトグラムI. 発生源として濃度はかなり高いので環境に対する寄与 は大きいと考えられる。. 弓. R.丁. 疇. 4 環境大気調査結果 4.1 環境大気の定点調査 環境科学研究センター屋上で大気中多環芳香族化合. 物とクロロベンゼン類の同時分析を行った。期間は 1989年6月∼1990年1月までとし,ハイポリウムサン プラ一によってガラスろ紙と活性炭ろ紙を用い24時間 から168時間大気を採取した。大気試料のマスクロマ. 18. !5. Z8. Z享. トグラム例を図13,図14に,マススペクトル例を図15 に示した。また,測定結果を表9に示した。. まず,季節変動を見るためにB(a)P,B(e)Pとペ ンタクロロベンゼン,ヘキサクロロベンゼン濃度を月 別にプロットして図16に示した。. 測定回数が少く変動が大きいので,正確な動態は掴 み難いが,ベンズビレン類とクロロベンゼン類の主要 a. 5己8. 1e;:e. 発生経路は異ることが観察される。大量燃焼が行われ るのはボイラー,ゴミ焼却,暖房が問題となるがこの. 図14 大気試料のマスクロマトグラムⅡ. 二5【≡己.

(9) 29. 図15 大気試料のマススペクトル.

(10) 30. 表9 環境大気試料の分析結果. 捕集時間. G:ガラス. 月,日,時間h. ランテン. G. −. 5.31.13=⇒4 6.21.13∼. G. G. A. G. A. 8.14.9′−. G. 8.21.9⇒68 9.20.9∼. 11.14.9∼. G. 0.09 A. G. 0.10. G. 12.27.13⇒68 1.18.13∼. G. 1.25.13⇒68. A. 0.16. 52.2. 0.35 A. 0.05. nd. 11.2. 4.94. nd. 0.83. nd. 0.96 0.44. nd. nd. 4.35. nd. 0.65 nd. nd 0.71 nd. 0.44 1.00. nd. nd 2.18. 9.18. 0.87. 2.17. 0.63. 0.09. nd. 0.06. 0.24. nd. O.02. nd nd nd. nd. nd. nd. nd nd. nd. nd 0.70 nd. O.03. nd. nd. 30.1 14.7 nd. 3.43. nd. l、35. nd. 4.13. 14.8. 0.12. 34.8. nd. 3.92. 0.06. nd. nd. nd. 0.54 nd. nd. A:B(a)P E:B(e)P P:ペンタクロロベンゼン H:ヘキサクロロベンゼン. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 1. 月. 園16 大気中代表的汚染質の季節変動. 凛. 152. 0.66. 0.02. nd. 5.00. 22.8 nd. nd. 0.34. 0.01. nd. nd. nd. 78.4. nd. 58.6. 0.65. nd. 0.08. 0.62. 0.10. nd. 0、17. nd. 0.87. nd. 294. 38.9. 1.08 4.12. nd. 0、06. nd. 136. 0.02. 0.01. 91.5. 46.1. 34.8 123. 4.47. nd. nd. 0.01. 0.05. nd. nd. 39,4. 74.4. 73.0. 0.06. 0.68. nd. 0.02. 0.10. nd. nd. 5.31 7.14 nd. nd. 0.25. 】1d. 0.48. nd. nd. 0.11 0.18. 6.93. 0.26. nd. nd. 0.11. 0.09. 0.18. nd 0.12. 0.02. 0.07. 3.03. nd. nd 249. nd. 0.08. 0.25. 3.62. nd. nd. nd. nd. 7.73. 0.08 1.31. 0.21 0.29. nd. nd. nd. 1.00. 0.01. 0.30. 0.97. ブタレート フタレート. 0.38. 0.56. 0.01. 0.52. nd. nd. 0.28. l.44. O,41. 0.98 1.50. 0.03. 0.細 nd. nd. nd. 0.06. nd. 0.05. nd. 5.69. 8.50. nd. 0.13. 4.93 1.03. 7.97. 0.33. nd. nd. nd. nd. 0.31 0.04. 0.53. l.01 nd. 0.17. nd. l.49. nd. 0.39 1.55. l.18. nd. 1.003.14 A. 0.02. O.58. 0.95. nd. 0.06 1.36. 0.18. nd. 4.46. 0.16. 0.44. 0.13. nd. 0.18. 8.86. nd. 0.80. nd. nd. O.83 1.06. 1.29. 0.51 0.04. 0.05. 6.05. nd. 0.06 0.24. 9.11 nd. nd. 0.14. 0.39. nd. nd. 9.60. 0.10. 0.38. 0.13. nd. 0.31 0.44. 6.19. nd. 0.03 A. 11.21.9=168 12.20.13∼. 41.2. 4.47. G. 10.29.9⇒44. エステル. ベンゼン フェノールベンゼン ベンゼン ベンゼン. 6.00 1.41 0.35. 8.75. 6.02. 0.01 0.02 A. 9.27.9∃_68 10.23.9′−. A. 0.26. ビレン. 0.59. 2.29. nd. 0.29. 0.11 0.10. 8.3.11司_68. 1.54. 0.24. nd. nd. 59.4. ビレン. 3.29. 0.29. 72.9. 0.22 A. G. 1.16. 0.12. 22.7. 0.32. 7.19.9⇒68 7.27.11∼. −. 0.31 仇55. 6.30.13司8* 7.12.9′−. 0.43. A. 6.23,13=48* 6.28.13∼. フタル酸. フェナン ビレン フルオ クリセン ペンゾ(e)ベンゾ(a)ペリレン トリトリ テトラ ペンタ ヘキサ クロロクロロクロロクロロクロロ ジオクチル ジブチル. A:病性炭 トレン. 5.30.13∼. 有機塩素化合物. 多環芳香族化合物. 吸着剤. 39.2. 3.76 O.64. 56..

(11) 31. フ1ナン ビレン フル;l クリヒン ベンゾ仙 ベンゾ1扉 ベリレン ランチン ビレン ビレン トレン. 図17 環境大気中多環芳香族類の成分比率. ドリタロロ トリクロロ ベンゼン フェノール. テトラクロロ ベンククロロ ヘキサクロロ ベン・ピン ベンリン ベンゼン. 図18 環境大気中クロロベンゼン類の成分比率.

(12) 32. 4.2 大気中PAHとクロ=ロベンゼン類の発生原因 の解析. 大気試料のPAHについて成分濃度比率を図17に示. 重要な課題である。また,B(e)PがB(a)Pより高い 一群の試料について見ると,まずB(e)P>B(a)Pの 関係はゴミ焼却場,ディーゼル,ボイラーに共通して. した。成分はフェナントレン,ビレン,フルオランテ. いるから,これら大規模発生源からの影響を認めるこ. ン,クリセン,ベンゾ(e)ビレン,ベンゾ(a)ビレン,. とができる。ただ,これらもクリセンが下がる試料が. ペリレンの順序で7成分とし,これは発生源の場合と. 見付かっていないので,この原因はまだ不明としなけ. 同じである。各試料について図中の数字は試料採取日. ればならない。ディーゼル2,ボイラー1がやや近い. で測定期間の中間日で表わした。. 程度である。. また,クロロベンゼン類について同様に図18に示し. なお,ビレンが極端に低い異常値が幾つかあるが,. た。これも沸点順にトリクロロベンゼン,トリクロロ. ビレンは活性炭に捕捉されるはずがndとなっていて. フェノール,テトラクロロベンゼン,ペンタクロロベ. 分析の誤差があったと判断される。また8月18日のデー. ンゼン,ヘキサクロロベンゼンの順である。 さて,これら環境大気の成分比の型と図11,図12に. タは,他の日のデータと比べて極端な違いがある。こ の日,クロロベンゼン類のデータも異常値を示してい. 示した発生源の型と比較して明かになった点を列記す. るから,気象や発生源に特別な事情があったかもしれ. れば以下の通りである。. ない。. まず,環境大気では,まずクリセンが高いものと低. つぎに,環境大気中クロロベンゼン類の成分比率と. いものがあることが認められる。クリセンが高いもの. ゴミ焼却場排ガスの成分比率を比較すると,全体に相. は,B(e)Pが高く,B(a)Pが低い傾向がある。また,. 関性が認められないように見える。ゴミ焼却場排ガス. クリセンが高いものはフルオランテンが低く,クリセ. はペンタクロロベンゼン,ヘキサクロロベンゼンが高. ンが低いものはフルオランテンが高い2つの型が認め. いのに対して環境では,トリクロロベンゼン,トリク. られる。非常に大づかみに見ると前者は低温発生源の. ロロフェノールが高い傾向があるからである。ただし,. 影響を,後者は石油ボイラーやディーゼル車のような. 塩素数4∼6のクロロベンゼンの比率について見ると,. 高温発生源の影響がでていると考えられる。ただ,ベ. 両者に関連があって,これはゴミ焼却場排ガスの影響. ンゾ(e)ビレン,ベンゾ(a)ビレンに注目すれば,低. とみなすことができる。トリクロロフェノールの挙動. 沸点成分と高沸点成分の量差の大きい高温で大規模燃. には明らかでない点がある。ゴミ焼却場排ガス中成分. 焼の影響が直かに現れていない。反対に,木材や魚と. としては一定性であるが,大気中ではフェノールが光. いった小規模の燃焼の影響がむしろ現われていて,こ. 化学反応で生成し,塩素化反応を受けるなど種々の条. れは新しい問題である。ゴミ焼却施設とディーゼル排. 件が関係するので発生源を特定できない。また,トリ. 気は構造上比較的均一で大量の排ガス発生源となって. クロロフェノールは木材の防腐剤としての用途がある。. いて,都市大気汚染に大きな影響を持っているが,ベ. これがどの程度消費されているかは,不明である。8. ンゾピレンなどの高沸点成分に対する寄与は大きいと. 月18日に異常値が出ているのも,発生源によるのか気. 言えない。ボイラーは広範に使用されていて,大型も. 象条件によるのか,これだけのデータからは説明でき. 小型もいろいろな規模のものがあるから,それらの成. ない。ただ,ゴミ焼却場排ガスを基準にすると,比率. 分比率はさらにデータを集めなければ,はっきり答え. からみて環境中での生成も考えられる。トリクロロベ. が出ない。今回試料を採取した横浜国立大学のボイラー. ンゼンが大気中で高い現象については,防虫剤パラジ. は大型に属し,高温で均一な燃焼が行なわれているが,. クロロベンゼンの不純物の寄与が挙げられる。ただ,. もっと小型のボイラーや家庭での小規模石油燃料使用. パラジクロロベンゼンの中にppb水準で含まれてい. を調べる必要がある。この点は未解決となった。本研. るとすると量的にはあわない。夏期に沸点の低い成分. 究の結果の範囲では,不完全燃焼の場合,クリセンと. が高くなる傾向は,気温の影響があると考えられる。. B(a)Pの存在比率が高くなると想定でき,都市環境. その他のクロロベンゼンの発生源として工業地帯を検. 大気中の多環芳香族炭化水素の汚染は低温,不均一ま. 討しなければならないが,千葉県市原市の石油コンビ. たは小規模の燃焼ガスから影響を受けていることが考. ナート地域での大気調査の結果からは,とくにクロロ. えられる。タバコや焼き魚が都市大気汚染源とはなり. ベンゼン類が集中的に排出する事実はない。. 難いし,大規模発生源のゴミ焼却場やディーゼル,大. 結局,クロロベンゼン類の最重要な発生源がゴミ焼. 型ボイラーなどの汚染と関連が薄いデータについては,. 却場であると想定すると,環境中での比率の変化に対. はかに主要発生源を探す必要が生じる。これも今後の. しては次の理由が考えられる。高温下で排出されたガ.

(13) 33. ス中に含まれるクロロベンゼン類は大気中で雨滴,塵, 土壌,植物に吸収されてその比率を変えていく。この とき当然,沸点の高いはうが吸着除去されやすいから, 比率は沸点の低いものが高く,高いものが低くなるよ うに変化するであろう。大気測定の結果はこの傾向を 示していると考えてよい。例えば,焼却場からばば同 量排出されている塩素数3のトリクロロベンゼンと塩 素数6のヘキサクロロベンゼンは,環境では10:1さ らに100:1まで変化していると説明される。この解明 は今後の課題としたい。. exhaust,].Air Pollut.ControIAssoc.15: 162−165,1965.. 3)Hangebrauck,R.P.,R.P.Lauch andJ.E.. Meeker:Emissions of polynuclear hydro−. carbons from automobiles and trucks, Amer.Ind.Hyg.Assoc.J,27:47,56,1966.. 4)加藤 龍夫・花井 義道・掘本 能之・加地 浩 成:光化学スモッグ被害原因物質の解明に関する. 研究,横浜国大環境研紀要,1,37−53(1974) 5)加藤 龍夫・朱 暁明:東京都水系の有機ノ、ロゲ ン化合物の汚染形態,横浜国大環境研紀要,16, 11−22(1989). 参考文献. 1)Falk,F.L.,P.Kotin and A.Miller:Aroma− ticpolycyclichydrocarbonsinpollutedair. 6)槌田 博・朱 暁明・加藤 龍夫:白蟻防除剤ク ロルデンの住宅汚染,横浜国大環境研紀要,16, 137−145(1990). 7)花井 義道・加藤 龍夫・井出 敬善:ごみ焼却 asindicatorsofcarcinogenichazards,Int. J.AirPollut.2:201−209,1960. 施設における塩素化合物の生成過程に関する調査 2)Hoffmann,D.,E.Theisz and E.L.Wynder: 研究,横浜国大環境研紀要,13,37−49(1986). Studies on the carcinogenicity of gasoline.

(14)

参照

関連したドキュメント

Araki, Y., Tang, N., Ohno, M., Kameda, T., Toriba, A., Hayakawa, K.: Analysis of atmospheric polycyclic aromatic hydrocarbons and nitropolycyclic aromatic hydrocarbons

The immersion tests in buffered solutions at constant pH also clarified that the effect of the Al content on the corrosion resistance is largest around pH 10, and diminished when pH

第 5

○  発生状況及び原因に関する調査、民間の団体等との緊密な連携の確保等、環境教育 の推進、普及啓発、海岸漂着物対策の推進に関する施策を講じるよう努める(同法第 22

St.5 St.22 St.25 St.35 St.10 三枚洲 St.31 No.12 葛西人工渚 お台場海浜公園 城南大橋 森が崎の鼻 大井埠頭中央海浜公園 羽田沖浅場

条例第108条 知事は、放射性物質を除く元素及び化合物(以下「化学

何人も、その日常生活に伴う揮発性有機 化合物の大気中への排出又は飛散を抑制

何人も、その日常生活に伴う揮発性有機 化合物の大気中への排出又は飛散を抑制