• 検索結果がありません。

電子回路や自動制御模型の組み立て演習を取り入れた遠隔講義の教材開発と実践

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "電子回路や自動制御模型の組み立て演習を取り入れた遠隔講義の教材開発と実践"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1. はじめに 新型コロナウイルスの世界的大流行により、人の 康被害だけでなく、感染拡大を抑制するための行動制 限が、生活や経済活動に大きな影響を与えている。教 育現場においても、 種を問わず、一時的な休 措置 が取られ、活動再開後も様々な感染拡大の防止措置が 取られている。本著者が所属する大学においても、し ばらくの間は学生の完全入構禁止措置が取られ、講義 についてはインターネットを用いた遠隔の形態でのみ 実施されることとなった。また、対面での実施が前提 となる実験や実習については、この期間実施されず、 政府が発表した緊急事態宣言が解除された後、例外的 措置として大学での対面による実施に至った。しかし、 修学期間の 長はされないことから、当面実施されな かった科目については期間後半に集中して実施され、 学生の受講負担に時間的な偏りが生じることとなった。 このような状況の中、例年では教材による演習を取 り入れた講義を実施してきた著者は、その講義形態の 特性から、遠隔形態での実施は困難と判断し、しばら くの間講義の実施を見合わせていた。しかし、上述し たように、期間後半は学生の負担が増すと予測された ため、大学が修正した学年歴よりも1か月遅れであっ たが、遠隔により講義を開始することにした。ただし、 これらの講義では、受講者自身で配線や組み立て作業 を行うことから、組み立て手順を誤ると動作の不具合 だけでなく、電子回路の配線ミスにおける過電流や発 熱に起因した感電や火傷のリスクや、電子部品や機械 部品の破損が発生する。これらの問題に対して従来は、 対面で対処していたことから、遠隔形態で全て行うに あたって、演習の指示は遠隔形態に合わせて修正し、 教材についても、学生が遠隔による指示で作業が滞り なくできるように従来用いてきたものを改良し、新た に開発することとした。 一方、教材を期間中貸出し、自由な時間に受講でき るようにしたことにより、教材を用いて自発的に発展 的な学習をする受講生もおり、このことについては当 初予想していなかった学習効果といえる。 本稿では、上述したような遠隔での講義において演 習で 用するための電子回路と自動制御の学習教材の 開発と、それらを用いた講義の実施結果について報告 する。 2. これまでの講義で取り入れてきた演習の内容と遠 隔形態へ置き換えたときの問題点 本稿で取り上げる講義は2科目であり、それぞれの 講義名およびシラバスに記載した講義概要は次の通り である。 電子回路や自動制御模型の組み立て演習を取り入れた遠隔講義の教材開発と実践

電子回路や自動制御模型の組み立て演習を取り入れた

遠隔講義の教材開発と実践

Development and Practice of Training Equipment for Electronic Circuit and

Automatic Control Systems Used for Remote Lectures

要旨

2020年10月16日受理 本稿は、従来から実施していた、電子回路や自動制御の学習のための組み立てを伴う演習を取り入れた講義を、 インターネットを用いた遠隔形態の講義に対応させるにあたって行った演習用教材の開発と、遠隔講義の実施方法 やその結果について報告する。具体的には、従来対面で対応していた演習活動の支援や、演習中に発生する様々な 問題への対応の、遠隔での実施方法や、遠隔形態に合わせた教材の開発。また、これらの講義を遠隔形態で行った ことにより得られた新たな学習効果について述べる。 キーワード:遠隔講義、教材開発、電子回路、自動制御、PBL、アクティブラーニング

井 嶋

IJIMA Hiroshi

(和歌山大学教育学部物理教室)

(講義1) 講 義 名:応用電子回路 講義概要:様々な素子を組み合わせた電子回路について その仕組みを、それぞれの素子の役割をふまえて解説す る。また、体験的に学習できるように、実際の素子を用 い、ブレッドボード上で配線する演習を毎回取り入れる。 ― 107 ―

(2)

(講義1)については前期科目であり、本稿執筆時、 評価も含め全て終了している。(講義2)は後期科目の ため、現在進行中の講義である。これらの講義概要か らもわかる通り、講義の内容を深めるにあたっては教 材を用いた演習が不可欠であり、従来の講義でも、演 習を積極的に取り入れてきた。ただし、受講生が電子 回路や機械部品を組み立て、教材として利用するにあ たっては、次のような問題が必ず発生する。 ①組み立ての間違いによる動作の不具合。 ②部品の不具合や破損。 ③教材と講義内容との関連についての認識不足。 ①や②の問題が発生した場合、教材の動作の不具合 だけでなく、電気エネルギーを 用することから、感 電や発熱による火傷のリスクがある。また③について は教員が望んでいた結果が出ているにも関わらず、そ の結果が講義中に示した理論や原理との関連付けがで きず期待した学習効果が得られないことになる。この ような問題に対して、従来は対面講義の中で個々に対 応することで解決してきた。しかし、遠隔形態の講義 においては、対面形態で実施していた時のようなきめ 細かな対応が不可能になることから、遠隔形態に対応 した新たな講義の方法や提供する教材を検討すること となった。 3. 遠隔講義方法とそれに合わせた教材の開発 2. で述べたように(講義2)は現在進行中であるこ とから、ここでは全ての講義が終了している(講義1) を中心に講義方法と教材開発および講義資料作成にお いて配慮した点を中心に述べる。実施した(講義1)の スケジュールを表1に示す。スケジュールは状況に合 わせて変 を余儀なくされたため、講義の提供として 用したLMS(学習支援システム)であるMoodleの授 業ページ最上部に常に最新のスケジュールを表示させ るとともに、変 を行った際は連絡を行った。 3.1. 講義方法 遠隔講義の方法としては、オンデマンド型とオンタ イム型のどちらかを選択することになるが、1. に示 したように(講義1)は1か月遅れての講義の開始とな り、年度当初から大学生は講義方法や学年歴の修正な ど目まぐるしい学習環境の変化に対応していることか ら、受講者個々のスケジュールで受講できるようにオ ンデマンド型を採用することにした。ただし、受講生 が2. に示した問題に直面した際、臨機応変に対応で きるようにするためマイクロソフトが提供しているコ ミュニケーションツールであるTeamsを積極的に活 用することにした。このツールはグループを作成しそ の中でチャットやテレビ会議がオンタイムで行えるこ とから、素早い情報の提供と共有が可能となり、この ツールを用いて原則いつでも質問などに対応できるよ うにした。 教材については、原則学生の大学への入構が禁止さ れていたことから、学生の入構許可書の発行を大学に 申請し、教材受け渡しを大学で行えるようにした。た だし、遠方から通学している学生や規制している学生 もいることを 慮して、大学に来られない受講生に対 しては教材を郵送することにした。 3.2. 教材の開発 配布する教材については、次のような配慮に基づい て開発した。 ①各回で必要となる電子部品を、受講生が間違えず に取り出せること。 ②大きな電気エネルギーを用いず、また発生させな いこと。 和歌山大学教育学部紀要 教育科学 第71集 (2021) (講義2) 講 義 名:制御・情報工学 講義概要:ロボットなどのメカトロニクス機器の設計で はコンピュータによる制御技術の知識が不可欠である。 本講義では、計測・制御技術の基礎知識として、機械シ ステムの動力学、制御技術とそれに関連したセンサ・ア クチュエータ技術、コンピュータとAD・DA変換につ いて講義する。また、メカトロニクス教材を用いて各要 素の接続方法およびプログラミング演習を行い、内容の 理解が深められるように授業を行う。 表1 受講生に示した(講義1)のスケジュール 受講のみ 第13回:電波の受信原理 8月4日 8月24日 第12回:光センサの応用2 7月28日 8月24日 第11回:光センサの応用1 7月28日 (教材貸出) 7/14以降 8月12日 第10回:弛張回路 7月21日 8月12日 第9回:音声増幅回路2 7月14日 8月12日 第8回:音声増幅回路1 7月14日 8月5日 第7回:マルチバイブレータ回路 7月7日 8月5日 第6回:フリップフロップ回路 7月7日 (教材貸出) 7/1以降 7月29日 第5回:インダクタと昇圧回路 6月23日 7月22日 第4回:RC直列回路と時定数 6月16日 7月22日 第3回:増幅回路の基本2 6月9日 7月15日 第2回:増幅回路の基本1 6月2日 7月15日 第1回:ガイダンス 開中 (教材貸出) 6/1以降 課題提出 締切 内 容 Moodle 掲載予定日 ※通常と異なり1回105 ×13回 ― 108 ―

(3)

③可能な限り部品点数を少なくして演習ができるこ と。 ④計測装置を用いず学習ができるようにすること。 ①および③に対する対応としては講義回数である13 回全ての講義に 用する電子部品の数は膨大なため、 3回に けて配布するようにし、講義内容も、従来の 知識積み上げ型の学習の流れを維持しながらも、同じ 部品を った演習ができる講義を続けてできるように 配慮した。②については、起電力として、単2型の2 次電池(充電池)を2本直列(合わせて2.4V)で 用す ることを基本にし、これより大きな起電力を 用する 演習を極力減らすことにした。またこの講義では正確 な物理量の測定を必要としない内容であったため、④ の対応としては従来演習で用いていた電圧・電流計、 オシロスコープを用いず、それぞれの物理量について はLEDの明るさやその時間変化を受講者の目で見て およその量が確認できるようにした。第1回目に配布 した教材を図1に示す。第2回、第3回ではこれらの 部品を入れ替えて期間中不要な部品を取り除いた。 3.3. LMSを用いた講義での配慮 オンデマンド講義の資料としてはパワーポイントに より作成したスライドとともに講義者のカメラ動画と ナレーションを埋め込んだ動画も提供し、演習を行う にあたっての注意事項の指示を行った。演習の指示の ために作成したスライドの1例を図2に示す。回路図 に従った配線はいずれの回もブレッドボードを用いて 行い、そのための配線図におけるジャンパワイヤーや ジャンパケーブル、電気抵抗器のカラーバー等の色が 付いた部品は全て配布した教材と同じ配色をスライド に埋め込んだ画像に示し、電子部品の極性や演習中に 発生する問題など注意すべき点を掲載した。 4. 講義を終えての 察と学習効果 本稿で取り上げた講義では、 ①受講者が撮影した演習の写真を提出。 ②各回にそれぞれが学んだことと理解が難しかった 点のレポートによる報告。 の2点を課題として課し、これらの課題と受講ログを 受講者の評価に用いた。著者自身初めての経験で、受 講生の理解度を測る評価が十 できているかは、まだ まだ検証の余地は残されているが、不可と評価した受 講生は幸いにして無く、講義開始当初、学習環境の問 題などで、受講を断念する受講生がいるのではといっ た懸念については、払拭される結果となった。 受講生からの質問については、先に述べたコミュニ ケーションツールであるTeamsだけでなく、課題提出 時にもLMSであるMoodleで受けるようにしたところ、 様々な質問がその課題提出時に投稿され、中には講義 で用いた専門用語の語源や、回路記号の決まりの由来 など、対面授業では受けることがなかった質問も多く あった。また、学んだことを自己申告させたところ、 講義では指示していなかった学習を受講者自身が行っ 電子回路や自動制御模型の組み立て演習を取り入れた遠隔講義の教材開発と実践 図1 1回目に配布した教材 (受講生の確認用ファイルより) 図2 演習の指示スライド(講義スライドより) ― 109 ―

(4)

た結果についての報告も多数あった。これについては 多種多様な内容があったが、大まかにまとめると次の ようになる。 ⅰ) ブレッドボードによる配線の練習のため、回路 図から自 で えて配線を行った。 ⅱ) 指示はなかった部品を取り換えて回路の振舞い がどのように変わるか実験してみた。 ⅲ) 正確な物理量を自 が持っていた計測器で測定 した。 ⅳ) 計測器がないので物理量が比較できるように提 供された教材の中で計測できる実験方法を え た。 ⅴ) 示されていた回路で起こる現象が、複数の素子 でも同時に起こるか実験してみた。 これらのような、受講生自身による学習活動は、従 来の対面講義ではあまり見られない現象である。この ような学習活動を、行えた理由としては、 ①毎回教材を回収していた対面講義と異なり、受講 生が一定期間教材を所有していたこと。 ②自 のペースで講義を受講し、演習を行えたこと。 が えられ、定められた時間に講義を受ける対面形態 よりも自 のペースで講義内容の理解を深め、演習の 中で、疑問に思ったことや えを解決するため、自身 で目標や課題を設定して、活動する機会が得られたこ とによると えられる。これらの活動は課題解決学習 (PBL、Problem-based learning)といえ、予測してい な か っ た に も か か わ ら ず、能 動 的 な 学 習(Active Learning)の効果が顕著に得られたといえる[1] 5. 補足:自動制御模型の演習を取り入れた講義につ いて 3. および4. では前期科目であった「応用電子回 路」の講義方法やその効果について報告したが、次に 現在進行中の講義「制御・情報工学」について述べる。 この講義では、自動制御とそれに関連した様々な技術 である、コンピュータ、センサ、モータなどのアクチ ュエータ、機械の機構について学ぶ内容になっている。 体系化させた講義を進めるために、この講義でも教材 を用意して演習を取り入れた方法を取ってきた。図3 は今回新たに開発した教材で、マイコンボード、距離 センサ、モータ駆動回路を含め、個々の要素と自動制 御装置としての開発手順やプログラミングの理解を得 るための演習ができるようにしている。この教材でも 電気回路を 用するため、3.2で述べた内容と同様の 教材開発における配慮を行うため、低い起電力で動作 するようにし、部品点数も少なくした。また一定期間 受講生が保有することになることから、できるだけ小 さく保管しやすいように設計した。 講義を進めていく上での問題点や学習の効果につい ては本稿を執筆している現在、講義が進行中のため、 その結果は別の機会に報告したい。 6. おわりに 遠隔講義では、情報機器やそれを用いる教員や受講 生の環境によって様々なトラブルが発生する。そのよ うな環境であるにもかかわらずあえて教材を配布し演 習を取り入れた講義を実施した。著者としては初めて の試みであり、起こりえる様々な問題を予測して準備 を行ったにもかかわらず、講義資料の誤植や、指示の 間違いが講義を進めていく中で多数確認され、このよ うな間違いの多くは受講生からの指摘を受けて修正を 行うこととなった。また受講者からの発展的な学習に ついての質問を受け、改めてその学習活動に著者自身 が興味を持つといった経験をこの授業では得る機会と なった。このような経験は講義を始める時点では想定 されなかったことであり、この講義は受講生とともに 作り上げてきたともいえる。 講義を受講し、講義作りに協力してくれた受講生全 員にこの場を借りて感謝の意を示したい。 参 サイト [1]PBL型科目、和歌山大学キャリアセンター、 https://www.wakayama -u.ac.jp/career/careeredu/ pbl.html(2020年10月16日閲覧) 和歌山大学教育学部紀要 教育科学 第71集 (2021) 図3 自動制御の学習のための演習用教材 ― 110 ―

参照

関連したドキュメント

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

実習と共に教材教具論のような実践的分野の重要性は高い。教材開発という実践的な形で、教員養

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

自閉症の人達は、「~かもしれ ない 」という予測を立てて行動 することが難しく、これから起 こる事も予測出来ず 不安で混乱

子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい

つまり、p 型の語が p 型の語を修飾するという関係になっている。しかし、p 型の語同士の Merge