心臓専用半導体ガンマカメラによる心筋血流製剤の投与量低減効果

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(1)日本心臓核医学会誌 Vol.23-1. ■ 総説：特集心臓核医学検査における被ばくについて. doi:10.14951/jsnc.23.01.07. 心臓専用半導体ガンマカメラによる心筋血流製剤の投与量低減効果 Effects of Dose Reduction on Myocardial Perfusion Imaging Using a Cardiac Cadmium-ZincTelluride Gamma Camera. 石原克 Masaru Ishihara, PhD. 兵庫県立加古川医療センター検査・放射線部 Department of Radiology, Hyogo Prefectural Kakogawa Medical Center. はじめに. 線量は負荷時と安静時の投与量を合計した 1 検査あた. 半導体ガンマカメラによる SPECT 撮像は、放射性医. りで算出した（安静時の投与量は負荷時の 3 倍）。. 薬品の投与量低減や撮像時間の短縮が可能とされてい. 201. る。今回、負荷心筋血流 SPECT 検査施行時に、心臓. MC［3］、A-SPECT で 100 counts/pixel［2］とし、負荷. 専用半導体ガンマカメラによる SPECT（cadmium–. 時投与量が 74 MBq と 111 MBq（シリンジ製剤）で. zinc–telluride SPECT：CZT SPECT）と従来型ガンマ. の基準の収集時間を算出した。必要収集心筋カウント. カメラによる SPECT（Anger type SPECT：A-SPECT）. と基準の収集時間から必要投与量と被ばく線量を算出. を同一日に連続撮像し得た被検者のデータを用いて、収. し、両装置での比較を行った。201TlCl は追加として. 集心筋カウントを考慮した必要投与量の検討を行った。. 負荷方法の違いによる必要投与量の比較を行い、さら. 得られた結果から、CZT SPECT による心筋血流製剤の. にアデノシン負荷における body mass index（BMI）. 投与量低減効果および被ばく線量低減への貢献を報告. と必要投与量の単回帰分析およびピアソンの相関係数. する。. を算出した。解析対象は安静像とし、被ばく線量は負. TlCl の必要収集心筋カウントは、CZT SPECT で 1.2. 荷時の投与量で算出した。なお、被ばく線量は「心臓方法. 核医学検査に伴う医療被ばくの最適化に関する WG 報告［4］」を参照し、算出した。. CZT SPECTはD-SPECT （Spectrum Dynamics社製）、 A-SPECT は BrightView （Philips Medical Systems 社製）. 結果. を使用した。心筋血流製剤は technetium-99m 99m. tetrofosmin（. 99m. Tc-TF）または thallium-201 chloride. Tc-TF の基準の収集時間は、CZT SPECT が約 4.5. （201TlCl）を使用した。対象は負荷先行による負荷・安. 分、A-SPECT が約 12 分であった。収集時間ごとの. Tc-TF が 22. 必要投与量と被ばく線量を表 1 に示す。CZT SPECT. 例（エルゴメータによる運動負荷が 6 例、アデノシン. を 12 分収集とした場合、A-SPECT の 12 分収集と比. 201. による薬物負荷が 16 例）、 TlCl が 52 例（エルゴメー. 較して必要投与量が有意に低値を示した（Mann-. タによる運動負荷が 12 例、アデノシンによる薬物負荷. Whitney U-test, p ＜ 0.01）。201TlCl の基準の収集時間. が 40 例）であった。. は、CZT SPECT の 74 MBq が約 9 分、111 MBq が. 99m. 静 1 日法の検査を施行した被検者で、. はじめに、必要収集心筋カウントと基準の収集時間. 約 6 分、A-SPECT の 74 MBq が約 28 分、111 MBq. を設定した。99mTc-TF の必要収集心筋カウントは、. が約 19 分であった。収集時間ごとの必要投与量と被. CZT SPECT で 1.0 million counts（MC）、. ばく線量を表 2 に示す。CZT SPECT の 9 分収集は、. A-SPECT で 100 counts/pixel［2］とし、負荷時投与量. A-SPECT の 19 分収集と比較して必要投与量が有意. が 275 MBq（1,100 MBq を 1：3 に等分）での基準の. に低値を示した（Welch’ s t-test, p ＜ 0.01）。負荷方法. 収集時間を算出した。必要収集心筋カウントと基準の. の違いによる必要投与量は、CZT SPECT の 9 分収集. 収集時間から必要投与量と被ばく線量を算出し、両装. で運動負荷が 89.0 ± 13.5 MBq、アデノシン負荷が. 置での比較を行った。解析対象は負荷像とし、被ばく. 63.3 ± 14.0 MBq、A-SPECT の 19 分収集で運動負荷. ［1］. 7. 心臓核医学vol23-1_P01-17.indd 7. 2021/02/17 14:46.

(2) 日本心臓核医学会誌 Vol.23-1. 表 1 99mTc-TF の収集時間ごとの必要投与量と被ばく線量. CZT SPECT. A-SPECT. 収集時間. 必要投与量. 負荷時と安静時の合計被ばく線量（合計投与量）. 4.5 分. 252.4 ± 70.7 MBq. 7.88 mSv （1020 MBq）. 12 分. 94.7 ± 26.5 MBq. 2.94 mSv （380 MBq）. 12 分. 270.2 ± 53.5 MBq. 8.34 mSv （1080 MBq）. 表 2 201TlCl の収集時間ごとの必要投与量と被ばく線量. CZT SPECT. A-SPECT. CZT SPECT の投与量は、4.5 分収集で負荷時を 255 MBq、安静時を 765 MBq とし、12 分収集で負荷時を 95 MBq、安静時を 285 MBq とした。 A-SPECT の投与量は、負荷時を 270 MBq、安静時を 810 MB とした。. 収集時間. 必要投与量. 被ばく線量（投与量）. 6分. 103.8 ± 26.4 MBq. 14.56 mSv （104 MBq）. 9分. 69.2 ± 17.6 MBq. 9.66 mSv （69 MBq）. 19 分. 109.1 ± 32.2 MBq. 15.26 mSv （109 MBq）. 28 分. 74.0 ± 21.9 MBq. 10.36 mSv （74 MBq）. が 151.4 ± 23.8 MBq、アデノシン負荷が 96.4 ± 21.9 MBq であり、両装置ともにアデノシン負荷が有意に低値を示した（Welch's t-test, 両装置とも p ＜ 0.01）。アデノシン負荷における BMI と必要投与量の散布図と単回帰分析を図 1 に示す。両装置ともに有意な正の相関を示した（CZT SPECT：r ＝ 0.67, p ＜ 0.01；図１アデノシン負荷における BMI と必要投与量の散布図と単回帰分析。左：収集時間 9 分の CZT SPECT。右：収集時間 19 分の A-SPECT。. A-SPECT：r ＝ 0.60, p ＜ 0.01）。おわりに今回、99mTc-TF は対象症例が少数であったため体重や BMI などの体格を考慮した検討は行わなかった. 利益相反なし. が、 9 mSv/ 検査［4］を下回る被ばく線量を基本として、被検者の体格により投与量や収集時間を調節すること. 〈参考文献〉［1］ Nakazato R, Berman DS, Hayes SW, Fish M, Padgett R, Xu Y, et al. Myocardial perfusion imaging with a solidstate camera: Simulation of a very low dose imaging protocol. J Nucl Med 2013; 54: 373-9. ［2］増田安彦，長木昭男，川渕安寿，大屋信義，片渕哲朗，寺岡悟見，他．臨床に役立つ基準画像の収集・処理・表示・出力のポイント．核医学技術 2008; 28: 13-66．［3］ Ishihara M, Taniguchi Y, Onoguchi M, Shibutani T. Optimal thallium-201 dose in cadmium-zinc-telluride SPECT myocardial perfusion imaging. J Nucl Cardiol 2018; 25: 947-54. ［4］片渕哲朗，工藤崇，鈴木康裕，竹花一哉，福地一樹．心臓核医学検査に伴う医療被ばくの最適化に関する WG 報告．心臓核医学 2019; 21: 28-31．. 201 TlCl は 20 mSv/ 検査［4］が望ましいと考える。また、. を下回る被ばく線量を基本として、負荷方法と被検者の体格により投与量や収集時間を調節することが望ましいと考える。なお、喘息などの被検者を除き、アデノシン負荷を基本とすることによって投与量と被ばく線量がより低減できる。 CZT SPECT は、A-SPECT と比較して心筋血流製剤の投与量を低減することが可能であり、被ばく線量の低減に大きく貢献することができる。謝辞. カラー図表は J-STAGE 公開版を参照. 本検討にご協力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。. 8. 心臓核医学vol23-1_P01-17.indd 8. 2021/02/17 14:46.

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