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東北6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査 ―Ⅰ. 診療内容と保険点数を中心として―

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Academic year: 2021

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(1)東北 6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査 Ⅰ. 庄司. 茂. 根本充康. 診療内容と保険点数を中心として. 満田隆之. 東北大学大学院歯学研究科歯内歯周療法学 野. A conscious survey of general practitioners at Tohoku district on endodontic present condition and solution SHOJI Shigeru, NEMOTO M itsuyasu and MITSUTA Takayuki Division of Endodntics and Periodontics, Tohoku University Graduate School of Dentistry Abstract:To appeal the importance of endodontic treatment, we surveyed a consciousness of general practitioners(3985)at Tohoku district on endodontic present condition and solution.The basic contents of this survey were office place,sex,age,opened years.M oreover this survey asked general practitioners that how to they asked and examined to endodontic patients, and did they agree with the health insurance valuation on electrical measuring root length, pulpectomy, infected root canal treatment and root canal filling. The response rate of this survey was 13.5% in Tohoku district.Almost of general practitioners asked and examined a patients by themselves.Three fourths of them didn t agree with the health insurance valuation on endodontic treatments. To solve many problems, they suggested that our dentists should recognize the proper awareness to the importance of endodontic treatment. Key words:conscious survey general practitioner endodontic (日歯内療誌 23(1):24∼36 2002). 緒. 言. 「歯内療法」が歯を保存し機能させていくうえできわ めて重要 なことを 歯学教育や日本臨床歯内療法学 会広報活動などを通して 歯科医師や一般の人々への 理解を深める努力がなされてきている しかし 歯内 療法の重要性が歯科医師のみならず社会・一般の人々 に理解され正当に評価されてきているかは 既治療歯 の再感染根管治療が多く診られている現実 から 否 定的答えしか出てこない このような現状を改善する ための方策を見出す ことと 歯内療法の重要性とそ れに要する時間的・経済的内容を一般の人々や国の行 政機関に理解してもらう活動を行うための資料を得る ために 東北地方の開業医が行っている歯内療法の現 状と今後への取り組みに関する意識調査を行った. 調査方法と対象者 アンケート調査期間は 2001年 5月 21日(月)から 26日(土)までとし ファックスまたは郵送による回 収の期限を 5月 31日とした 対象者は東北 6県の開業 医とし 各県の歯科医師会名簿をもとにアンケート用 紙を送付した (発送件数:3,985) 調査内容としては 各先生方の開業県 性別 年齢 開業年数に加えて「歯 内療法の現状」と「現在の問題点の改善策」および「将 来への取り組み」について行った 「歯内療法の現状」 :5月 21日(月)から 26日(土) までの 1日の 診療人数 継続根管治療例数 新たな 歯内療法例数(抜髄 未治療感染根管治療 既治療歯 の再感染根管治療) 歯内療法の診査として問診法 歯 髄診査法 歯内治療として 前歯や大臼歯の抜髄・感.

(2) 東北 6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査. 表. 回答者の年齢および開業年数. 年齢 若年者 高齢者 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県 6県平. 平. 年齢. 開業年数 最多 平. 最少. 32 37 29 30 32 31. 74 70 67 73 82 77. 46.7 48 46.2 46.4 48.2 45.4. 5 2 0.5 0.5 2 0.5. 49 43 40 55 47 42. 16.1 18.7 15.3 15.4 16.4 15.3. 31.8. 73.8. 46.8. 1.75 46. 16.2. 図. 東北. 県の回収率. 図. 秋田県の調査期間中の患者数. 図. 岩手県の調査期間中の患者数. 収率で 6県平 は 13.5%あった(図 1) この回収率 は 昨年 日本臨床歯内療法学会会員(1,170名)を対 象に行った同様の調査 での回収率 6.3%よりも高い ものであった. 図. 青森県の調査期間中の患者数. 染根管の 1回目の平 診療時間と根管充塡に至るまで の治療回数 「現在の問題点の改善策と将来への取り組み」:根管 長測定法と根管充塡法の現状 現在の保険評価への認 識 本来あるべき保険点数 既治療歯の再感染根管治 療を防ぐ方策 (保険点数 重要性の再認識 的評価) への評価 などについて回答を得た 得られた結果の統計的解析は 要因配置 散 析法 である Bonferroni/Dunn 検定を行った 統計的有意差 判定は 危険率 5%(p<0.005)で行った. 結. 果. 回収率 回収結果としては 東北 6県では 11.4∼15.2%の回. 回答者の平 年齢・平 開業年数 回答者の平 年齢および平 開業年数を表 1に示し た 回答者の最若年者は 29歳 最高齢者は 82歳で 6県平 :46.8歳であった この年齢構成は 統計的 検索結果では 6県ともほぼ同じであった この場を借 りて 高齢の先生方からの回答に深く感謝申しあげま す 開業年数でも最短 0.5年 最多年数が 55年で平 16.2年という結果が得られた 診療人数と歯内療法疾患患者数 調査を行った 2001年 5月 21日から 26日までの 6 日間の青森県(図 2) 秋田県(図 3) 岩手県(図 4) 宮城県(図 5) 山形県(図 6) 福島県(図 7)と 6県 平 (図 8)の結果 青森県 秋田県そして福島県での 1日平 診療人数は 6県平 を上まわっていた 24日 木曜日の診療人数は秋田県 岩手県そして宮城県で少 なくなっており 木曜日休診の医院が多いと推察され た 一方 26日土曜日は青森県 秋田県 岩手県 宮 城県そして福島県で少ない人数であった このことは 秋田県 岩手県そして宮城県では木曜日と土曜日に休 診か半日診療の先生方が他の県よりも多いものと え.

(3) 日歯内療誌. 23(1):24∼36 2002. られた ただ 青森県での回答で 1日の診療人数の一 番多かった 21日(月)での最少人数は 11人で 最多 人数は 65人であった (ただし 65人を何人の先生が診 られたかについては不明なので 1診療所当たりの診. 図. 宮城県の調査期間中の患者数. 図. 山形県の調査期間中の患者数. 図. 福島県の調査期間中の患者数. 表. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県 6県平. 療人数という表現が適切と えられる) なお 一昨年 日本臨床歯内療法学会(以下 日歯内学会と略す)で 行った同様の調査結果(図 9)と比較すると 木曜と 土曜日の休診は似た傾向を示したが 患者数全体とし ては 東北の平 数の方が上まわっていることがわ かった 1日の診療における歯内治療患者の診療人数に対す る割合 (表 2) は 一番低い宮城県で 19.6±9.6%であっ たのに対して 一番多い青森県で 26.2±15.3%であ り 6県平 では 22.5%であった このことより 歯 科医院では 1日の約 4 の 1患者が歯内関連疾患で来 院していることが判明した なお 6県相互での統計的 有意差は認められなかった 歯内疾患関連で来院してきた患者で継続的に歯内治 療を受けてい た 割 合 は 一 番 低 い 宮 城 県 で 12.4±. 図. 図. 東北 県平 の調査期間中の患者数. 日本臨床歯内療法学会調査結果. 日の患者における歯内治療患者の割合( ). 全歯内治療. 継続根管治療. 新たな歯内治療. (抜髄). (未治療歯の感染根治) (再治療歯の感染根治). 26.3±15.3 23.7±7.6 21.0±11.2 19.6±9.6 20.3±13.2 24.4±16.6. 17.8±9.9 15.6±5.4 13.3±7.3 12.4±7.4 12.8±9.8 16.4±12.5. 8.4 8 7.7 7.2 8.1 7.5. 4.2±3.5 3±2.1 3.8±4.2 3.6±2.9 3.3±2.5 4±3.5. 2.3±2.4 2.9±3.5 2.4±5 1.7±2.5 2±2.3 1.9±3.3. 2.2±3.9 2.3±2.3 2.2±2.8 1.9±2.3 2.2±2.6 3±5.5. 22.5. 14.7. 7.8. 3.7. 2.2. 2.3.

(4) 東北 6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査. 表. 歯内療法に関する問診法(. ). 問診表のみで. 歯科医師が 口頭で. 衛生士が 口頭で. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県. 4.6 4.7 0 4.1 2.6 3.6. 89.5 93 87.9 82.6 86.8 83.7. 0 2.3 6.9 13.3 7.9 12.7. 6県. 3.3. 87.2. 7.2. 表. 図. 前歯抜髄に要する回数. 各種歯髄診査法の割合 電気診. 温度電気併用. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県. 行わない 温度診 29.8 41.9 24.1 18.9 31.6 30.5. 40.4 30.2 36.2 42.1 34.2 44.1. 23.4 14 22.4 20 18.4 8.5. 4.3 14 17.2 17.9 13.2 15.3. 6県. 29.5. 37.7. 17.8. 13.7. 7.4%であったのに対して 一番多い青森県で 17.8± 9.9%であり 6県平 では 14.7%であった このこと より 1日来院患者で歯内関連治療を受ける患者の 65%は継続的に治療を受けていることが判明した な お 6県相互での統計的有意差は認められなかった 新たに歯内治療を受ける患者の 1日当たりの割合 は 一番低い宮城県で 7.2% 一番多い青森県で 8.4% 6県平 は 7.8%であった 新たな歯内治療で抜髄患者 は一番低い秋田県で 3.0±2.1% 一番多い青森県で 4.2±3.5% 6県平 で 3.7%であった つまり 新た な歯内治療患者の半数では抜髄を行っていた なお 6県相互での統計的有意差は認められなかった 感染根管治療で調査に回答の歯科医院が初めて治療 した患者の割合は 一番低い宮城県で 1.7±2.5% 一 番 多 い 秋 田 県 で 2.9±3.5%で 6県 平 で 2.2%で あった 一方 他の歯科医院で一度歯内治療を受けた ものの予後不良のため再感染根管治療にいたった患者 の割合は 一番低い宮城県で 1.9±2.3% 一番多い福 島県で 3.0±5.5%であり 6県平 では 2.3%であっ た このことより 初めて感染根管治療を始める患者 とほぼ同数の患者の再感染根管治療が行われているこ とが判明した なお 6県相互での統計的有意差は認め られなかった 歯内療法の診査 1) 問診(表 3):問診表のみで歯内治療を行うとい. 図. 大臼歯抜髄に要する回数. う回答が 6県平 では 3.3%であったのに対して 岩 手県では 0%であった 問診表よりも直接患者に質問 するのが主で 歯科医師の他にも歯科衛生士の力も借 りているようであった 一方 青森県では歯科衛生士 が口頭で行うという回答が 0%であった 青森県では 歯科医師が患者に質問し 歯科衛生士への依存度が低 いものと えられた 2) 歯髄診査(表 4):歯髄診を一番行っていたのは 宮城県で 81.1%であった ただ 一番行っていないの は青森県で 41.9%が行っておらず 6県平 では 歯 髄診を行わないのが 29.5%であった 歯髄診の内容と し て 福 島 県 で は 温 度 診 が 44.1%で あ り 電 気 診 は 8.5%であった 6県平 でも温度診が 37.7% 電気診 が 17.8% 温度電気診併用が 13.7%であった 治療回数と所要時間 日常の抜髄や感染根管治療で 日常の治療を通じて 感じられている治療回数や所用時間を調べた 1) 治療回数:前歯と大臼歯の抜髄や感染根管治療 に要する治療回数を調査したところ 回数的傾向に関 して 6県の間に大きな差は認められなかった 前歯部の抜髄(図 10)では約 75%が 1∼2回の治療 で終了し 6回以上はかからないのに対して 大臼歯の 抜髄(図 11)では 1∼2回が約 45% 3∼5回が約 50% そして 6回以上が 2%であった 前歯部の感染根管治療(図 12)では抜髄の場合とは.

(5) 日歯内療誌. 図. 23(1):24∼36 2002. 前歯感染根管治療に要する回数. 図. 大臼歯感染根管治療に要する回数. 図. 前歯抜髄に要する時間. 異なり 1∼2回で治療が終了するのは約 20%で 約 75%が 3∼5回かかり 6回以上が 4%であった 一方 大臼歯の感染根管治療(図 13)でも抜髄とは異なり 1∼2回で終了するのがわずか 10%で 大多数(70%) は 3∼5回を要し 6回以上を要するという回答が 15% であった 2) 所要時間:前歯での抜髄に要する時間(図 14) は一番短い宮城県で 15.2±7.9 で 一番長いのは秋 田県で 18.3±10.7 で 6県平 は 16.5 であり 相 互に統計的有意差はみられなかった 大臼歯での抜髄 に要する時間(図 15)は一番短い宮城県で 26.5±12.2 で 一番長いのは秋田県で 30.7±13.7 で 6県平 は 28.4 であり 相互に統計的有意差はみられな かった 前歯での感染根管治療に要する時間(図 16)は一番. 図. 図. 図. 大臼歯抜髄に要する時間. 前歯感染根管治療に要する時間. 大臼歯感染根管治療に要する時間. 短い福島県で 13±6.6 で 一番長いのは秋田県で 18.6±12.4 で 6県平 は 15.2 であった 秋田県 は宮城県や福島県に対して統計的有意に多くの時間を 要していた 大臼歯での感染根管治療に要する時間(図 17)は一番短い青森県で 23.1±10.1 で 一番長いの は山形県で 28.3±21.3 で 6県平 は 25.4 であ り 相互に統計的有意差はみられなかった 根管長測定 1) 測定方法(図 18):山形県では X 線写真のみが 17.5%と高い値を示したが 他の県ではすべて 8%以 下で 6県平 は 8.2%であった 手指感覚のみは秋田 県で 7.1% 山形県で 5%と高い値を示したが 6県平 は 3%であった そして X 線写真と手指感覚併用で は 青森県が 8.3% 岩手県が 3.5%で高く 6県平.

(6) 東北 6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査. 図. 各種根管長測定法の割合 図. 図. 各種根管充塡法の割合. 現行の根管長測定保険点数への評価 図. 現行の根管充塡保険点数への評価. 県で高く 110点以上と差がみられた 6県平 は 97.5 点であった. 図. 根管長測定保険点数として適切と. える点数. は 2.4%であった 残りの先生は他の方法と併用しな がらも電気的根管長測定器を っておられ 電気的根 管長測定器のみの方は 72.3%であった 2) 保険評価(図 19):現在の根管長測定に関する 保険評価が高すぎると答えられた方は 6県全体で一 人もおられなかった 適切と答えられた方は岩手県が 25.9%と一番高く 秋田県では 7%と低く 6県平 は 19.9%で あった 低 す ぎ る と 答 え た 方 は 秋 田 県 で 83.7%と高く 岩手県では 67.2%と低く 6県平 は 74.7%であった 3) 適切と える保険点数(図 20):この項目に関 する回答率は他の項目よりも低く 6県平 で 68.6% であった また 回答された一根管の点数が 30点から 4,000点の間で幅が大きく 平 点では北の青森 秋 田 岩手県で 75点以下と低く 南の宮城 山形 福島. 根管充塡 1) 充塡法(図 21):側方加圧根管充塡法のみを 行っている先生が福島県が一番高く 69.1% 山形県が 一番低く 51.2% 6県平 は 58.3%であった この側 方加圧法に他の方法を併用しておられるのは青森県で 27.7%と高く 岩手県が 11.9%と低く 6県平 は 17.4%であった この結果から 側方加圧を行ってお られる方は 6県平 75.7%であった 一方 垂直加 圧充塡法のみを採用なさっている先生は 宮城県と山 形県で 20%と多くみられ 他の県では 10%で 6県平 は 14.6%であった シングルポイント法は 6県平 1.4%で 加熱注入法も秋田県や宮城県で 4%であるも のの 6県平 は 2.8%であった 2) 保険点数評価(図 22):現在の根管充塡に関す る保険点数が高すぎるという回答は 6県を通して 1 件の回答もみられなかった 適正な評価と えられた 先生は 岩手県で 13.8%と高く 秋田県で 4.7%と低 く 6県平 では 10.1%であった 低すぎるという評 価は 秋田県で 86%と高く 岩手県では 75.9%と低く 6県平 では 81.5%であった 3) 本来適正と える保険点数(表 5):この項目に.

(7) 日歯内療誌. 表. 23(1):24∼36 2002. 本来根管充塡に適切と 前歯. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県 6県平. える保険点数. 小臼歯. 表 -. 大臼歯. 267.8±191.6 454.6±367.2 697.1±610.7 338.8±343.5 542.7±714.5 785.8±1094.2 414.1±671.8 611.9±1016 886.7±1703.7 437.2±560.9 696.6±890 1001.5±1253.4 381.9±397.3 537.3±499.5 829.8±1094.2 330±232.7 630.6±688.1 799.9±791.9 360.3. 574.9. 923.8. 前歯 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県 6県平. 表. 既治療歯の再感染根管治療を防ぐための保険 点数の扱いについて 上げるのが 良い. 上げても 防げない. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県. 31.9 27.9 24.1 33.7 35 20. 59.6 62.8 63.8 61.1 57.5 76.4. 2.1 0 1.7 0 2.5 0. 6.4 9.3 10.3 5.3 5 3.6. 6県. 28.8. 63.5. 1.1. 6.7. 再感染根管治療(再根管治療)を防ぐには 1) 保険点数を上げれば防げるのか(表 6):現在問 題になっている 「すでに歯内療法処置を施して あった歯の再感染根管治療(再根管治療)を防ぐには」 という質問に対して 歯内療法処置の保険点数を上げ るのが良いという回答は 山形県では 35%と高く 福 島県で 20%と低く 6県平 では 28.8%であった 一 方 保険点数を上げても防げないという回答は福島県 で 76.4%と高く 山形県で 57.5%と低く 6県平 で 63.5%とほぼ 2倍の回答があった 2) 保険点数が何点なら防げるのか (表 7-1 2):抜. 小臼歯. 大臼歯. 380.8±88.5 614±185.1 928±360 454.3±403.1 793.5±843.7 1170±1288.1 370±122.1 590.9±214.4 845.5±358.2 432.6±313.6 703.6±630.1 1038.2±940 438.4±315.7 713.7±504.3 1220.5±1081.9 392.4±290.7 626.1±449.7 1027±1004.2 404.4. 668.9. 1028.6. 表 -. 既治療歯の再感染根管治療を防ぐための感 染根管治療保険点数. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県. 342±196.2 529.6±234 810±373.1 394.8±403 740.4±842.6 1106.1±1270.5 298.3±181.5 486.3±272.4 663.3±298.9 419.7±398.3 705.4±800.4 1070.5±1207.4 415.8±433.5 671.6±610.4 1194.7±1186.6 361.1±289.9 579.6±429.6 944.3±877. どちらとも 未回答 言えない. 関する回答率は全アンケートの 6県平 で 63.7%で あった 回答で根管充塡に対して本来適正と える保 険点数は 前歯部で一番高い宮城県で 437.1±560.9 点 一番低い青森県で 267.8±191.6点で 6県平 の 保険点数は 360.3点であった 小臼歯では一番高い宮 城 県 で 696.6±890点 一 番 低 い 青 森 県 で 454.6± 367.1点で 6県平 の保険点数は 574.9点であった 大臼歯では一番高い宮城県で 1001.5±1253.4点 一番 低い青森県で 697.1±610.7点で 6県平 の保険点数 は 923.8点という結果が得られた 現行の加圧加算を 含めた点数 前歯 178点 小臼歯 220点 大臼歯 260点 とは大きな差がみられた なお 6県の相互に統計的有 意差はみられなかった. 既治療歯の再感染根管治療を防ぐための抜 髄保険点数. 前歯. 6県平. 365.6. 小臼歯. 608.6. 大臼歯. 947.3. 髄(表 7-1)の前歯部では 一番低い岩手県で 370± 122.1点 一番高い秋田県で 454.3±403点で 6県平 は 404.4点であった 小臼歯部では 一番低い岩手 県 で 590.9±214.4点 一 番 高 い 秋 田 県 で 793.5± 843.7点で 6県平 は 668.9点であった 大臼歯部で は 一番低い岩手県で 845.5±358.2点 一番高い秋田 県で 1170±1288.1点で 6県平 は 1028.6点であっ た 一方 感染根管治療(表 7-2)の前歯部では 一番低 い 岩 手 県 で 298.3±181.5点 一 番 高 い 宮 城 県 で 419.7±398.3点で 6県平 は 365.6点であった 小 臼歯部では 一番低い岩手県で 486.3±272.4点 一番 高い秋田県で 740.4±842.6点で 6県平 は 608.6点 であった 大臼歯部では 一番低い岩手県で 663.3± 298.9点 一番高い山形県で 1194.7±1186.6点で 6県 平 は 947.3点であった なお 抜髄および感染根管 治療とも 6県相互に統計的有意差はみられなかった 3) 防止策の一つとして重要性の再認識の意義(表 8):歯内療法の重要性を再認識することが 再発防止 につながると える答えは青森県で 80.9%で高く 低 くても秋田県の 72.1%で 6県平 では 76%であっ た 認識を変えるのは困難なので再発防止につながら ないという答えは 福島県で 25.5%と高いものの 6県 平 では 17%であった 実に 5倍近くの先生方が再認 識は重要であると えておられた.

(8) 東北 6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査. 表. 歯内療法の重要性を再認識してもらうことが再感染 根治の防止に役立つかについて 再認識してもらう 認識を変える どちらとも 未回答 のが良い のは困難 言えない. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県 6県. 80.9 72.1 74.1 74.5 80 74.5. 14.9 18.6 12.1 16 15 25.5. 0 0 1.7 0 0 0. 4.3 9.3 12.1 9.6 5 0. 76. 17. 0.3. 6.7. 4) 防止策の一つとしての 的機関での根管充塡後 の X 線写真評価(表 9):この方策が良いという答え は青森県で 21.3%高いものの 岩手県では 10.3%と低 く 6県平 では 17.2%であった 無理と答えられた のは一番高い秋田県では 79.1%で 低くても宮城県の 71.3%で 6県平 は 75.1であった. 察 回収率 今回の調査法 特にアンケート回収方法がファック ス返送という回答者に負担をかけるものであったた め 何人かの先生から御批判や御助言を頂いた 予算 的問題のためにとった措置とはいえ 反省すべき点が あったことは否めなかった 回収結果は 東北 6県平 は 13.5%であった この回収率は 昨年 日本臨床 歯内療法学会会員(1,170名)を対象に行った同様の調 査 での回収率 6.3%を大きく上まわった ただ 回収 率が 60%以下の調査結果は意味がない したがって調 査対象者を 100人位に って抽出し 口頭質問で回収 率を上げるべきという御指摘の手紙もある先生から頂 いた しかし 今回の目的として東北 6県全域を対象 として 多くの先生の「歯内療法」に関する意見や えをお聞きしたかったので 抽出法は採用しなかった 回答して頂けなかった先生方は 今回の調査は意味 がないとお えなのか 現在の制度に満足なさってお られるのか あるいは忙しく面倒だからなのかもしれ ない しかし われわれは今回の調査結果を回収率が 低いから意味のないものとは えない 本当に忙しい 日常診療の中で 大切な時間を割いて診療人数を調べ て頂き 診療内容へのお えを回答・記述して下さっ た先生方からの貴重な御意見をまとめたものとして認 識している. 表. 青森県 秋田県 岩手県 宮城県 山形県 福島県 6県. 防止のために 的機関が評価を行うことに ついて 良い. 無理. どちらとも言えない 未回答. 21.3 16.3 10.3 20.2 15 20. 72.3 79.1 74.1 71.3 77.5 76.4. 2.1 0 1.7 0 0 1.8. 4.3 4.7 13.8 8.5 7.5 1.8. 17.2 75.1. 0.9. 6.8. 回答者の平 年齢・平 開業年数 今回の調査では 統計的に検討の結果 東北 6県で の年齢や開業年数で差はみられず 幅広い構成のデー タが得られたと えられる 特に 高齢の先生からの 回答が 6県とも予想以上に多く得られたことは 回答 して下さった先生が長い間行ってきた歯内療法を通し て えてこられた意見を今後の日本の歯内療法発展の ために回答して下さった結果を踏まえているものとし て解釈した 診療人数と歯内療法疾患患者数 この結果への統計的検討で 東北 6県の相互での有 意差はみられなかった 診療人数を今回は回答者一人 が担当しているものとして捉えたが 回答内容を え た場合 一医院として解釈すべきであったと思われる 今後同様の調査を行う場合 診療に当たっている歯科 医師数も調査すべきと えられた 1日の来院患者数を全国的に えても一番多い月曜 日で比較した場合 一番多かった福島県が 36.7人 一 番少ない岩手県で 29.3人 東北 6県平 が 33人で 日歯内学会調査での平 が 20.5人であった この結果 は 都市部と郡部の比較調査が必要と えられるもの の 各県の人口に対する歯科医師の割合を反映し 東 北では歯科治療を必要とする患者が多いと えられ た 1日の診療人数に対しての歯内治療割合(表 2)の一 番低いのは宮城県で 19.6% 一番大きい割合は青森県 で 26.3% 東北 6県平 は 22.5%であった この結果 から 少なくても東北地方の開業医において 歯内治 療が大きな割合を占めており 誠意のある確実な歯内 治療が歯科医院の信用という面で重要であることが示 されたと えられる この歯内治療の中で 継続的に行っている根管治療 の 1日 当 た り の 割 合 で 一 番 低 い の は 宮 城 県 で 12.6% 一番大きい割合は青森県で 17.8% 東北 6県 平 は 14.7%であった この結果から 歯内治療は形.

(9) 日歯内療誌. 23(1):24∼36 2002. 成や抜歯とは異なり 治療を 1回で終えることはなく 何回かの継続的治療が行われていることが明らかに なった 現在の保険制度の下では 可能な限り早く根 管充塡を行い補綴に入るのが 出来高払いで望ましい ことはわかっている しかし 歯内治療を急げば 痛 みや違和感などの症状が発現したり 不十 な歯内治 療で 予後不良になりやすくなる このような点から も 今回の調査結果からも明らかになったように 抜 髄や感染根管治療で歯種ごとの標準根管貼薬回数に基 づいた適正な点数設定が必要と えられる 新たに歯内治療を行う患者で抜髄を要する 1日当た りの割合は 一番低いのは秋田県で 3% 一番大きい割 合は青森県で 4.2% 東北 6県平 では 3.5%であるの に対し 全国の日歯内学会会員を対象とした結果では 3.1%であった この結果から 診療人数に違いがみら れるものの 東北ではう を有しながらも症状が悪化 するまで受診しない患者が多いと えられる ただ 現在の社会経済状況で受診する時間がとれな いことや 保険給付割合の変化による支払い金額の問 題で 残念ながら今後抜髄を必要とする患者が増える ことが予想されるのは 国民の全身を含めた 康を えた場合 不幸なことと えられる 一方 新たに歯内治療を行う患者で感染根管治療を えた場合 大きな問題がみえてくる すなわち 歯 科医院に行かずに う から歯髄炎 そして歯髄壊疽 から根尖性歯周炎という通常の発症経過をたどった症 例と いずれかの歯科医院で治療を受けたものの根管 治療や根管充塡が不適切なもののため発症した根尖性 歯周炎の 2つの場合が現状ではみられる これらで 未治療歯の感染根管治療の割合で一番低いのは宮城県 で 1.7% 一番大きい割合いは秋田県で 2.9% 東北 6 県平 では 2.2%であるのに対し 全国の日歯内学会 会員を対象とした結果では 3.1%であった また 再治 療歯の感染根管治療の割合で一番低いのは宮城県で 1.9% 一番大きい割合は福島県で 3% 東北 6県平 では 2.3%であるのに対し 全国の日歯内学会会員を 対象とした結果では 4.5%であった 日歯内学会の先生のところでは他の歯科医院で治療 を行ってきたと えられる既根管治療歯への再感染根 管治療が未治療歯の 1.5倍であった 一方 東北 6県 平 では未治療歯が診療人数の 2.2%で 再感染根管 治療歯が 2.3%とほぼ同じ割合であった 全国の日歯 内学会会員は その専門性のために一般の先生と比較 して既根管治療歯の再治療を必要とする患者が多く集 まってくるものと えられる ただ 日歯内学会会員 よりはその割合が低いとはいえ 未治療患者とほぼ同 数の既治療患者の感染治療が新患として歯科医院を受 診することは大きな問題といえる このことは 少な. くとも抜髄処置を行った患者の約半 が後日再感染根 管治療対象患者として歯科医院を再び訪れる可能性を 示している 歯科医師の社会的・道義的責任 さらに は患者や社会の時間的・経済的損失を えた場合には 大きな問題だと えられる 診査 1) 問診:全体として約 90%の先生が自身で問診 をなさっていることが示された この問診で得られる 情報は 他の診療項目でのそれと比較しても 診断へ の必要度という面で決して低いものではなく 歯科医 師自身が時間を割いて問診を行っているということを 含めて 歯内療法の点数を評価する中で議論すべきだ と えられる 2) 歯髄診査:歯髄診の実施率も低く えていた 以上に電気診の実施率も低い値であった ただ AT 社 製パルプテスターを用いての電気診の精度は非常に高 いものである したがって 以前 保険に歯髄診査と いう項目があったことと 現在でも 3 の 2以上の先 生が歯髄診を行っていることが示されたので 医科と 比べて診査項目が少ない歯科において その診査精度 とその提示する意味合の高い電気診を主にして もう 一度 え直す必要があると えられる 治療回数と所要時間 1) 治療回数:抜髄では前歯よりも大臼歯の方が治 療回数が多いのは 歯の位置的困難さや根管の多さ さらには根管形態の複雑さなどが要因となっていると えられる しかし 抜髄に要すると える治療回数 で 前歯部では 1∼2回が 75% 大臼歯では 1∼2回と 3∼5回がほぼ 50%であったことから 歯科医師が適切 な治療を施せば 他の報告 にみられるように 抜髄は こじらせずに治癒が導かれることが示されたと えら れる したがって 前述の再感染根管治療の発現を防 ぐ意味でも 抜髄の治療を適切な回数で治療を終える ことを経済的にも時間的にも保証する保険点数が必要 であると思われる 感染根管治療では前歯部でも抜髄の倍の治療回数を 要し 特に 大臼歯では 6回以上の治療回数を要する という回答が抜髄の 7倍であった この結果は 感染 根管治療の難しさを歯科医師が日頃感じ 実際症状の 改善が難しいことを示したと えられる 抜髄と同様 前述の再感染根管治療の発現を防ぐ意味でも 適切な 回数で治療を終えることを経済的にも時間的にも保証 する保険点数が必要であると思われる つまり 抜髄や最初の感染根管治療の治癒率が 90% であり 再根管治療の治癒率が 70%以下というこれま での報告 からして 抜髄や最初の感染根管治療で治.

(10) 東北 6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査. 療を完全に治癒に導き 決して再根管治療に至らない 歯内療法をすすめていくためには時間的・経済的保証 がいかに重要であるかが示されたと えられる 2) 所要時間:抜髄に要する時間がわずかに長いの は 麻酔が大きな要因と えられる 特に 大臼歯の 抜髄や感染根管治療の時間が一人当たり約 30 と 各 先生が感じられていることは 日常の診療の中で こ れらが大きな割合を占め ある意味で負担となってい ることが裏付けられたと えられる 統計的には 前 歯での感染根管治療で秋田県が宮城県や福島県よりも 長い時間を要するとした以外には 有意差はみられな かった このことは 秋田県と宮城県や福島県での根 管拡大法についてさらなる 察が必要であると えら れた この所用時間に関して 河出らが行った研究 でも われわれの結果とほぼ同様の時間が報告されている 河出らの報告から 15年経過した現在でも手指での治 療に要する時間がほとんど変わらないことを える と より効率的治療法が急務であることがわかる 治療時間を短縮するために これまで超音波拡大法 など多くの研究が行われてきた その新しい流れとし て ニッケル・チタンファイルを用いたクラウン・ダ ウン法 やレーザー根管治療 が開発され 臨床応用さ れてきている ただし たとえ時間を要しても根尖か ら 3mm は手を用いた根管拡大・形成が最善であるこ とは変わらないとわれわれは信じている この時間的要素に加えて抜髄や感染根管治療に用い る機材・薬剤の経費を含めて えた場合 現行の保険 点数は実態にそったものではないと える 根管長測定 1) 測定方法:東北地方の約 4 の 3の先生が っ ておられ 実績もあがっている電気的根管長測定器は 日本で発明され発展してきた 最近は 外国の教科書 に掲載されるようになったほど その精度が世界的に も認められてきた 可能な限り患者さんの X 線被曝線 量を減らすという面からも 電気的根管長測定器を 用される先生が増えることが重要であると えられ る 2) 保険点数評価:この回答を 今後 測定方法と の関わりで解析していく必要があるものの 約 20%の 先生が現状の評価に満足なさっているようである し かし 歯周病での歯冠形態修正が 50点ということを えた場合 湾曲根管での根管長測定の困難さへの評価 が十 だとは えられない そして この作業長が歯 内療法の成功の一番の鍵をにぎっている以上 約 75% の先生と同様に評価が低すぎるとわれわれは えてい る. 3) 適切と える保険点数:この項目への回答率が 低かったのは 保険点数が低すぎると感じながらも 保険評価として えた場合の適切な点数というのが難 しかったためだと えられる 直視できない根管内で 電気的根管長測定器を用いた慎重な測定の時間的・経 済的負担を え しかもこの測定が歯内療法の成功を 決定づけること さらには 充塡形成の点数を元にし て えた場合 測定に対する責任を明確にすれば一根 管 200点が望ましいとわれわれは えている 根管充塡 1) 充塡法:私達の大学をはじめ多くの大学での教 育は 側方加圧根管充塡法を実技を含めて教育してい る これに対して 垂直加圧根管充塡法などの他の方 法は教科書的知識の教育のみである このためか 東 北 6県全体の 75%の先生が日常診療で側方加圧根管 充塡法を多く行っておられ 宮城県や山形県で垂直加 圧法が行われているものの 他の方法は少ないという 調査結果であった このことは 日本臨床歯内療法学 会会員では側方および垂直加圧充塡法がほぼ半々に行 われているという結果とは大きく異なっていた ただ 今回の結果より 95%の先生は根管充塡での加圧とい うことに重きをおかれていることが判明した 2) 保険点数評価:今回のアンケートで回答をお送 りいただいた先生の中で だれ一人現在の評価が高す ぎるという回答を寄せなかったことや 8割以上の先 生が現在の点数は低すぎると評価している点を十 に 踏まえて 今後の活動を行っていく必要があると え られる 3) 本来適正と える保険点数:この項目に関する 回答率や回答点数の幅が大きかったことを えると 保険点数が低いという意識を持っていても 実際どれ 位の点数が適切なのか迷っておられる先生が多いこと がうかがえる 根管充塡を行うことは 根尖部での歯 周組織を 全に維持していくという保証と責任を伴 い その保証のもとに築造体や被覆冠を装着していく ものである以上 それに見合った保険点数が必要であ ると多くの先生が えられていることから 今回の東 北 6県平 結果 前歯で 360点 小臼歯で 580点 大 臼歯で 930点という結果は 慮するに値する結果だ と えられる 再感染根管治療(既治療歯の再治療)を防ぐには 1) 保険点数を上げれば防げるのか:保険点数を上 げても防げないという回答が 防げるという回答の 2 倍であった 回答の中 単に保険点数の高い低いとい う問題だけではなく 歯内療法の重要性を理解し 誠 意をもった治療を各歯科医師が行っているかが問題だ.

(11) 日歯内療誌. 23(1):24∼36 2002. という指摘があった 通常の歯内療法処置での抜髄の治癒率が 90% 感染 根管治療が 85%という報告がなされている これら の報告者が歯内療法を研究者ということを踏まえて も 誠意ある治療での治癒率は高いものと えられる 高い保険点数が得られたならば それに見合った責任 を持ち 歯科治療の社会的信頼度を増すためにも 適 切な歯内療法処置を行うよう 歯科医師自身が誠意を もって努力していくことが重要であると えられる 2) 保険点数が何点なら防げるのか:歯周疾患を治 療する上では 患者との共同治療が絶対に必要で あ る意味では患者の日常ケアが結果を左右する これに 対して 歯内療法は完全に治療結果の成否は歯科医師 にかかっている この点を踏まえながら 誠実に治療 を行った結果を正当に評価される保険点数が必要で 今回の結果が示した点数は妥当なものであると えら れる ただ この「何点なら」という質問に対する全体の 回答率は 6県平 :46.5%と低く 回答点数の幅も大 きかった 抜髄や感染根管治療に関する各歯での点数 をみると 感染根管治療が抜髄よりも 50点位低いもの の すべての項目で現在の点数の 2倍∼3倍が望まし いのではないかということであった 確かに この問題は多くの難しさや重要性を含んで いることが示されたものの 保険点数を上げても防げ ないという回答が約 65%で 防げるという回答の 2倍 であった このような回答から えて この回答結果 を「防げないかもしれないが 歯内療法の保険点数を 上げるべき 上げて欲しい」いうのが先生方の思いと 解釈するのは われわれが歯内療法を専門としている からだけではないと える 3) 防止策の一つとして重要性の再認識の意義:歯 内療法の重要性を再認識することが 再発防止につな がると えられる先生が 6県平 では 76%で つなが らないという回答の 5倍以上であった 実際に再認識 する方策としては 「歯科医師会」 「学会」 「歯科大学」 「スタディグループ」さらには「歯科メーカー」などが 主催する勉強会が えられる ただこの際に重要なこ とは これまで歯内療法で片寄りがちであった「技術 や器械」 に関してだけではなく 「何故行うのか? そ の結果 何が予想されるのか? そして それは本当 に患者や歯科医師にとって意味あるものなのか?」と いう視点からの検討を踏まえた勉強が再認識につなが ると えられる 歯内療法を教えている大学人として は 重要性認識の向上に役立つならば いかなる要請 にも応えるとともに 大学での学生教育・指導の面で も えていかなければならないと思っている 4) 防止策の一つとしての 的機関での根管充塡後. 表. 前歯 小臼歯 大臼歯. アメリカにおける歯内療法の料金 一般開業医. 歯内療法専門医. $400∼600 $500∼700 $600∼800. $600∼800 $600∼800 $700∼900. の X 線写真 評 価:無 理 だ と い う 回 答 が 6県 平 で 75.1% その理由としては 的機関とはいかなるも のをさすのか? 本当にその機関が的確かつ 平に評 価できるのか? 評価結果を待たなければ次の治療に 入れないのか? 全ての症例を適切に評価できるか? などの意見がアンケートに書かれていた 高点数を得る以上 その治療内容・質に責任をもっ て評価し保証する何ものかが必要と えて 一つの方 策としてこの質問項目を作った しかし 多くの問題 点が指摘された 今後 X 線写真での治療経過に基づ いた 補綴物維持管理料のような治療「保証」という 視点が必要になってくると えている 特に 保険請 求点数のチェックが現在の方式と異なり レセプトも コンピュータ化されるとともに X 線写真画像もデジ タル化されるようになった場合には 重要な問題にな ると えられる. ま. と. め. 参 として アメリカにおける一般開業医と歯内療 法専門医の歯内療法の料金を表 10に示した 歯内療法 の問題解決策としての専門医制度も えられるが 今 の日本では実現は難しいものと えられる 今回の保 険点数に関する調査で得られた結果として 前歯の抜 髄を例にあげた場合 6県平 で抜髄 404.4点 根管長 測定 97.5点 根管充塡 360.3点で合計 862.2点だっ た これに 根管貼薬処置の点数を加えたとしても 決して多すぎる点数ではないと える ただし この 点数に伴って アメリカでの実態と同様に 大きな責 任と保証が求められるのは当然だと えられる 適切な保険点数を定めるには今回の調査に加えて より詳細な歯内療法の治療内容の時間的・経済的検討 が必要である また 歯内療法だけでなく歯科医療全 体を改善していくための今後の方策としては 1 歯科治療技術の評価と情報提供:薬価の伸びが 歯科のそれを越えた今 平成 14年 4月からの保険改正 では 医療技術の評価を高めるという方向性があった しかし 医療技術の評価が今回の改正で十 なものに ならなかった この点に関して 平成 14年 5月 2日の 朝日新聞朝刊に「医師の腕をどう評価」という記事が 掲載された 歯の矯正費用から歯の神経治療(抜髄).

(12) 東北 6県開業医の歯内療法の現状と今後への取り組みに関する意識調査. 費用についても論説しており 結論として 「 康な体 を手に入れる」という目標を実現するため医師の技術 に見合った対価を支払うため どの医師がどんな技術 を得意としているのかという情報提供が重要であると 述べている 今後も 医科の外科 眼科 耳鼻科 皮 膚科などとの連携を図りながら 歯科治療技術という ものの評価高めることや情報提供を行っていく必要が あると えられる 特に 歯内治療は対象とする根管が複雑で 治療技 術が治癒により大きな影響を与えることが示されてい る 今回の調査を通じて示された 各項目での保険点 数希望案を参 に 学会や歯科医師会を通して働きか けを行っていく必要があると えられる ただ将来的には 治療歯科から予防歯科を重点的に 進めていくという流れは間違いのないものと えられ る この流れで 20∼30年後にはう や歯周病は国民 の口腔衛生状態の向上により著しく減少し 顎関節症 などの「咀嚼傷害」 叢生や色調問題による「審美」が 歯科受診患者の大きな割合を占めてくると えられ る そして 将来的には 「インプラント」 の欠点を補っ て余りある 再生医学による失われた歯の「再生・移 植」が現実のものになってくると思われる このよう な流れの中で 歯科治療は? 歯科医師の数は? を えていくとともに 学問に裏付けられた適切で誠実 な医療技術を合わせた治療を行っていくことが いつ の時代でも常に求められ続けると えられる 2 地域実態:今回の東北地方の結果が 日本全体 特に東京などの大都市に適応することはなく 地域で の歯科疾患罹患状況を正確に把握し 対策を講じる必 要がある 例えば 現在の DMF をみても数値的には以 前と大きく変わらないというものの 内容的に対象児 童の大多数がう が少ないのに ある特定の少数の児 童が多くのう を有しているということがある この ような点から 全国平 ではなくその地域での 年代 別の細かな歯科疾患実態を把握し 将来への方策を的 確にとっていくことが 歯内療法だけでなく歯科医療 さらには歯科界全体の向上に必要だと える 3 新治療評価への対応:治療評価の変化への十 な対応が必要だと える 今後 レセプトのチェック が民間機関に移行 あるいはコンピュータでのカルテ の治療経過評価そしてデジタル X線写真のコン ピュータ評価など これまでとは異なる評価が導入さ れてくると えられる その中に 歯内療法の X 線写 真評価も確実に組込まれると思われる このような流 れでは 容易に治療経過の検索が可能になり カルテ 情報開示と併せて 今後アメリカのように頻繁な訴 がおきてくる可能性は否めない このような可能性に 十 対応可能な 適切な治療を各先生が確立していく. ことが重要だと える 4 保険契約病院:2001年 9月 17日付の朝日新聞 朝刊に 保険契約を個々に行って保険点数の割引を導 入する可能性があるという記事が載っていた 確かに アメリカでも保険会社が指定した病院でしか保険治療 を受けられない 日本でも ガン保険でガン治療に優 れた協定病院を紹介するということが行われている しかし 保険点数の割引を導入すれば「悪貨が良貨を 駆逐する」と同様の事態が生じてくると えられる 歯内療法だけではないが 「割引」制度導入を反対する だけでなく 自信と責任のある的確で適切な治療を行 い 歯をより長く保存できるということで「割増」を 訴えていくことが大切だと える 確かに適切なコス トの削減は必要だが 個々での割引制度導入は日本の 保険制度を根底から覆す可能性があり 「国の保 ・医 療」に関して患者・歯科医師・行政と他の関係機関が 十 な議論を尽くすべきであると える 5 専門医としての意識と広告:一般臨床医と大学 病院勤務医の根管充塡材の根尖までの到達度を比較し た研究 では 大学医の方が有為に根尖まで到達し ていた また 大学では既治療歯の再根管治療歯が多 いという報告 もあり より専門医という意識をもっ た治療が歯内療法担当講座では行われていると思われ る ただ 一般臨床医の中でも本学会会員は 歯内療 法を真摯に えて治療に携わっておられると思う まもなく 規制緩和の流れとして 「学会から専門医 と認定された歯科医師」という広告が可能になる 本 学会の認定医資格には 他の学会認定医制度とは異な り 大学在籍年数は関係ない ぜひ 日常の診療経過 を記録し 申請していただきたくお願い申しあげる 本学会認定医の先生が増え 適切な歯内療法が広がっ ていくことが より良い歯科医療に繋がっていくと えている 最後に 一定水準以上の歯内療法技術を有した歯科 医師が抜髄や感染根管治療(既治療歯の再根治を除く) すれば 治療後 1年以内に再発し再治療を必要とする ような経過をとることはまずありえない そして 治 療後に装着する支台築造や補綴物を長期間安定して口 腔内に保っていける この一定水準以上の誠意ある治 療技術が社会的に評価され広がっていくためにも 適 切な保険点数は重要な要因である お忙しい中 今回の調査に協力してくださった東北 地方の先生方に感謝するとともに 回答してくださっ た先生方の気持ちを有意義なものとして役立てるため にも 今後人間的 臨床的 社会的 察に基づいた広 報活動や教育を押し進めていく覚悟である 稿を終えるにあたり 本研究の調査にご協力いただいた.

(13) 日歯内療誌. 23(1):24∼36 2002. 当教室の佐藤麻美 村上. 忍. 那谷由実. 金谷 介 木村. ゆかり 渋谷夏子 玉木光裕 引地博之 深澤花恵 伊川 桂次 国井亮太郎 真柳 弦先生および井場たみ子技官に 感謝申しあげます この研究費の一部は 平成 13年度∼15年度;文部科学 省科学研究費 基盤研究(A) (1) 「高齢者の歯髄・歯周疾 患の予防と早期治療法の確立」課題番号 13307055によっ た. 文. 献. 1) 中久木一乗 東海林芳郎 中村 洋 庄司 茂 吉 田 直 人:日 本 の 歯 内 療 法 は こ れ で 良 い の か ―「歯の保存」の要― 日本歯科医師会誌 51: 125∼144 1998 2) 庄司 茂 辻本恭久 林 正規 平林正道 吉田 直人:日本臨床歯内療法学会緊急アンケート結果 のまとめ―歯内療法臨床現場の今― 日本臨床歯 内療法学会誌 19:244∼246 1998 3) 増田勝美:現代歯科医療管理論―歯科医療管理の 理論と実際― 日本歯科評論社 東京 1983 4) 増田勝美:現代歯科医療管理学―経営管理・臨床 管理・情報管理― 日本歯科評論社 東京 1988 5) 戸田忠夫:歯内療法のアンケート結果と 察 別 冊クインテッセンス 「エンドドンティクッス 21世 紀への展望」:9∼16 2001 6) 庄司 茂:わが国における再根管治療の現状 季 刊歯科医療 1998秋号「特集 再 根 管 治 療 を え る」 :5∼10 1998 7) 吉田達雄 庄司 茂 堀内 博 島内英俊:ニッ. ケルチタンファイル:タックエンドファイルの拡 大能力評価 日本歯科保存学会誌 45(3) (投稿中) 8) Shigeru Shoji,Hiromi Horiuchi,Hiroshi Horiuchi:Canal Enlargement by Er:YAG laser using a cone-shaped irradiation tip, Journal of Endodontics 26:454∼458, 2000 9) 河出任弘 竹内雅規 増田勝美 他:歯科治療の 効率化に関する臨床的研究 特に歯内療法の能率 化対策について 日歯医療管理誌 21:33∼54 1986 10) 岡田 宏:歯内治療の実態調査 平成 10年∼12 年度文部省科学研究費補助金・基盤研究(A) (1) 「歯内疾患の実態調査と治癒に関する研究」 :3 11) 田中 亨:一般臨床医と専門医の治癒成績 平成 10年∼12年度文部省科学研究費補助金・基盤研究 (A) (1)「歯内疾患の実態調査と治癒に関する研 究」:111 12) 八巻恵子:根管充塡後の X 線評価と治癒成績 平 成 10年∼12年度文部省科学研究費補助金・基盤 研究(A) (1)「歯内疾患の実態調査と治癒に関す る研究」 :37 著者連絡先:庄司 茂 東北大学歯学部第一保存 〒 980-8575 仙台市青葉区星陵町 4-1 Tel. 022-717-8336 Fax. 022-717-8339 e-mail:shoji@mail.cc.tohoku.ac.jp.

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参照

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