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下歯槽神経切断による神経障害性疼痛モデルマウスにおける三叉神経節細胞のテトロドトキシン抵抗性電位依存性Na+チャネル電流の減弱

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Academic year: 2021

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下歯槽神経切断による神経障害性疼痛モデルマウス

における三叉神経節細胞のテトロドトキシン抵抗性

電位依存性Na+チャネル電流の減弱

著者

前川 翠

52

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

歯博第893号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130047

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- 46 -

論 文 内 容 要 旨

神経障害性疼痛には電位依存性Na+チャネル(Nav)が関与しているとされているが,顔面領域にお ける神経切断時の疼痛閾値低下の詳細なメカニズムは明らかになっていない。本研究では,三叉神経 第三枝の障害により顎顔面領域に神経障害性疼痛が発生した際の三叉神経節(TG)細胞における電位 依存性Na+チャネルの役割について電気生理学的に解析した。生後8週の雄性マウスの下顎孔周辺にて

左下歯槽神経を切断した。術後4日目から14日目にわたりvon Frey hairにより下顎~頬部に機械刺激 を与え,機械逃避反射行動を経日的に観察した。下歯槽神経切断側は未手術の対照群と比較して術翌 日から術後14日目まで機械逃避反射閾値が低下した。従って,神経障害性疼痛モデルを確立したと判 断した。三叉神経節内において障害を受けた下歯槽神経由来の細胞を鑑別するため,手術時に神経切 断部に10% Rhodamine B isothiocyanate–Dextranを投与した。術後7日目および14日目にマウスの左 TGを摘出し,酵素処理にて細胞を単離した。対照群には同週齢の未手術マウスを用いた。神経障害性 疼痛モデルマウスから単離したTG細胞においては蛍光染色の有無により障害を受けた下歯槽神経由来 の染色細胞群と下歯槽神経に由来していない非染色細胞群に鑑別し,それぞれの細胞に対しホールセ ルパッチクランプ法を適用し膜電位固定下に電位依存性Na+チャネル電流を記録し,300 nM テトロド トキシン(TTX)を投与しTTX抵抗性(TTX-R)電位依存性Na+チャネル電流を記録した。両電流の 差分がTTX感受性(TTX-S)電位依存性Na+チャネル電流となる。更に,TTX-R電位依存性Na+チャ ネルは不活性化の膜電位依存性の違いからNav1.8電流とNav1.9電流に分けてそれぞれの電流-電圧関係 を解析した。染色細胞群では非染色細胞群および対照群と比較して術後7日目および術後14日目におい てTTX-R電位依存性Na+チャネルの電流密度が著しく減少した。同様にパッチクランプ法を用いて活 動電位を記録したところ染色細胞群では非染色細胞群および対照群と比較して活動電位振幅の半値幅 および活動電位間感覚が著しく減少した。非染色細胞群と対照群間では有意差は認められなかった。 氏 名(本籍)   : 前まえ 川かわ   翠みどり(宮城県) 学 位 の 種 類  : 博 士  ( 歯 学 ) 学 位 記 番 号  : 歯 博 第 8 9 3 号 学位授与年月日  : 令和 2 年 3 月 25 日 学位授与の要件  : 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻  : 東北大学大学院歯学研究科(博士課程)歯科学専攻 学 位 論 文 題 目  : 下歯槽神経切断による神経障害性疼痛モデルマウスにおける三叉神経節 細胞のテトロドトキシン抵抗性電位依存性 Na+チャネル電流の減弱 論 文 審 査 委 員  : (主査)教授 中 井 淳 一 教授 水 田 健太郎   教授 若 森   実

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- 47 - 下歯槽神経切断による神経障害性疼痛において障害を受けた神経細胞のTTX-R電位依存性Na+チャネ ル電流の減弱とそれに伴う初期活動電位発生頻度の亢進を見出した。

審 査 結 果 要 旨

インプラント埋入や下顎臼歯抜歯等の歯科治療時に下歯槽神経を損傷し,長期にわたり神経障害性 疼痛が生じることがある。神経障害性疼痛には電位依存性Na+チャネル(Nav)が関与しているとされ ているが,顔面領域における神経切断時の疼痛閾値低下の詳細なメカニズムは明らかになっていない。 本研究では,三叉神経第三枝の分枝である下歯槽神経の障害による顎顔面領域の神経障害性疼痛の発 生メカニズムを研究するため,マウスを用いて,下歯槽神経切断後の三叉神経節(TG)細胞における 電位依存性Na+チャネルの役割について電気生理学的に解析した。具体的には,マウスの下歯槽神経を 切断,蛍光色素の投与を行い,切断後7日目および14日目にTG細胞を単離し,蛍光染色の有無により 障害を受けた下歯槽神経由来の染色細胞群と下歯槽神経に由来していない非染色細胞群に分け,それ ぞれの細胞に対しホールセルパッチクランプ法を適用し,膜電位固定下に電位依存性Na+チャネル電流 を測定し,テトロドトキシン抵抗性電位依存性Na+チャネル(TTX-R)電流と,TTX感受性電位依存 性Na+チャネル(TTX-S)電流に分けて電流-電圧関係を解析した。その結果,染色細胞群では非染色 細胞群および非手術の対照群と比較して術後7日目および術後14日目においてTTX-Rの電流密度が著 しく減少した。さらに,TTX-R電流をNav1.8電流およびNav1.9電流に分けて解析したところ,TTX-R の電流密度の低下はNav1.8電流,Nav1.9電流共に電流密度が著しく減少したことによるものであった。 次に,パッチクランプ法を用いて膜電流固定下に活動電位を記録したところ,染色細胞群では非染色 細胞群および対照群と比較して活動電位の半値幅および活動電位発生間隔が著しく減少した。一方, 非染色細胞群と対照群間では活動電位の半値幅や活動電位の発生間隔に有意差は認められなかった。 本研究は,マウスの下歯槽神経切断モデルの障害神経細胞におけるTTX-Rの電流密度の減少と,そ れに伴う興奮性の亢進を明らかにした研究で,神経障害性疼痛の発症機序におけるTTX-Rの関与を示 唆したものである。歯科医療において,インプラント治療が広まるとともに,インプラント埋入時の 後遺症としての神経障害性疼痛への発症機序の理解と,治療の重要性は増している。本研究により神 経障害性疼痛の発症機序の理解が深まったとともに,治療についても本研究結果に基づいたアプロー チ方法が提案されている。 以上のことから,本研究論文は博士(歯学)の学位に値するものと判断する。

参照

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