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(1)

鈴木 慶春(千葉大学法政経学部)

入門基礎マクロ経済学

Introductory Macroeconomics

2015年12月17日

第9回 経済成長と差分方程式

第4部:経済成長

1

(2)

なぜ貧しい国と豊かな国が両方存在するのだろうか?

→ これに答えるのが経済成長理論(Economic growth theory)

イントロダクション ●○○

夜の衛星画像(出典:NASA)

2

(3)

イントロダクション

経済成長の威力(停滞の潜在的損失)

3

○●○

• 「経済成長」はどれほど重要な問題か?

• ある本の以下の文章を読んでみよう:

「この国の出生時点での平均寿命は50年を下回り、1歳にな るまでに10人に1人は死亡してしまう。90%以上の家庭に は電気が無く、もちろん冷蔵庫も電話も自動車も無い。教 育面では、高校を卒業する成人は10%にも満たない…」

• この記述はどこの国に関する文章だろうか?

→ 答えは アメリカ(19世紀末)

(4)

イントロダクション

経済成長理論への招待

4

○○●

経済成長理論…一国のGDPの時系列を描写するモデル

例)ソローモデル、最適成長モデル、内生的成長モデル

45 度線モデル…ある一時点でのGDPがどのように決ま

るかを描写する経済モデル

→ 経済が時間を通じてどのように変化していくのかは不明

→ これに代わる別のフレームワークが必要

→ まずは理論を勉強する前に、世界が経験した過去の

経済成長の事実を見ていこう

(5)

4.1 経済成長の事実

データの出典

5

●○○○○○○○○○

アンガス・マディソンによる“Maddison Project Database”

http://www.ggdc.net/maddison/maddison-project/home.htm

AD1~2010にかけての世界各国のGDPデータ

このデータは1990年のアメリカの価格で計算したもの

→ つまり購買力平価(PPP)かつ実質GDP

経済成長史に関心のある人は:

A.マディソン「世界経済史概観 紀元1年~2030年」, 岩波書店

D.コイル「GDP――小さくて大きな数字の歴史」, みすず書房

D.アセモグル&J.ロビンソン「国家はなぜ衰退するのか:権力・ 繁栄・貧困の起源」, 早川書房

(6)

0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000

1600 1700 1800 1900 2000 2100

4.1 経済成長の事実

1600 年~現在の世界各国の経済規模

6

○●○○○○○○○○

米国

中国

日本 英国

エチオピア

実質GDP(ある年次の購買力平価で計算, ドル表記)

(7)

4.1 経済成長の事実

経済成長はごく最近のできごと

7

○○●○○○○○○○

• 数世紀前まで人類は、現在のエチオピアとさほど変わら

ない極めて貧しい生活を送ってきた。

古代ギリシャや古代ローマにおける賃金と、15世紀の英 国と17世紀のフランスの賃金は、実はほぼ変わらない

• 成長が始まったタイミングは国ごとで異なる(次図)

まず英国で始まり、その後に米国で起きた

日本は20世紀に入ってから。中国はここ数十年

エチオピアは少しは成長してはいるが他の国のように

「貧困からのテイクオフ」は起きていない

(8)

4.1 経済成長の事実

1 人あたりGDPの推移

8

○○○●○○○○○○

1870 1913 1950 1973 2003 イギリス 3,190 4,921 6,939 12,025 21,310 アメリカ 2,445 5,301 9,561 16,689 29,037 フランス 1,876 3,485 5,271 13,114 21,861

日本 737 1,387 1,921 11,434 21,218

メキシコ 651 1,732 2,365 4,853 7,137

アフリカ平均 648 908 889 1,387 1,632

中国 530 552 448 838 4,803

世界平均 884 1,526 2,113 4,091 6,516

(9)

4.1 経済成長の事実

経済成長に関する事実

9

○○○○●○○○○○

1. 1 人あたりGDPの水準や成長率は国ごとで異なる

2. 世界の貧富の差は拡大している

3. それぞれの国は3つのグループに分けられる

先進国:経済成長に既に成功したグループ

アメリカ、ヨーロッパの多くの国、日本など

新興国:いま高成長の最中であるグループ

中国、インド、1960年時点の日本など

貧困国:まだ経済成長できていないグループ

タンザニア、エチオピア、シエラレオネなど

(10)

4.1 経済成長の事実

歴史的メッセージ:貧富は逆転しうる

○○○○○●○○○○

• ある国の世界経済におけ

る地位は不変ではない

• いま貧しい国でも、その

うち急速に経済成長する

可能性がある

GK法という方法を使っ

て購買力平価で実質GDP を推計すると、日本の経 済規模は既にインドに抜 かれている

0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 8,000,000 9,000,000

1950 1970 1990 2010

実質GDP(購買力平価で計算)

中国

日本

インド

10

(11)

4.1 経済成長の事実

歴史的メッセージ:貧富は逆転しうる

○○○○○○●○○○

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000

1900 1950 2000

1人あたりGDP

(購買力平価で計算)

豊かな国でも相対的貧困国

に転落する可能性がある

例)アルゼンチンは19世紀 末は世界全体で見ても豊か な国だった

 母をたずねて三千里

しかし現在は1人あたり GDPが60位前後(日本の 1/3程度に過ぎない)

イタリア

アルゼンチン

11

(12)

-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2

1870 1890 1910 1930 1950 1970 1990 2010

-0.25 -0.15 -0.05 0.05 0.15

1870 1890 1910 1930 1950 1970 1990 2010

4.1 経済成長の事実

先進国の間でも平均成長率は異なる

○○○○○○○●○○

アメリカの経済成長率 日本の経済成長率

12

(13)

4.1 経済成長の事実

成長トレンド

○○○○○○○○●○

短期的にはトレンドからの乖離(景気変動)がある

景気変動論は本講義では扱わない

長期的には経済は成長トレンド(潜在成長率)に従って動く

長期的趨勢に注目するのが経済成長理論

時間

log GDP ある国のGDP

推移

13

(14)

4.1 経済成長の事実

まとめ:我々が考えるべき問題

○○○○○○○○○●

• 経済成長に成功した国とそうでない国の違いは?

国同士の貧富の差が拡大している要因は何か?

そもそも経済成長は何が原動力となって起きるのか?

貧困国が経済成長するには?(→ 開発経済学)

経済成長は永遠に可能なのだろうか?

→ これらの問題を考える基礎として本講義ではソローモデル を学ぶ(次回)

→ 今回の残りはソローモデルを学ぶための数学的準備

14

(15)

4.2 複利計算(差分方程式)

複利の計算

●○○○○○○○

• アメリカの1人あたり実質GDPは1870年から2003年に

かけて10倍以上に増えた:$2,445→$29,037

133年かけて(約)年率1.878%で経済成長した

1870年は$2,445

1年後には$2,445×1.02

2年後には$2,445×1.02×1.02

3年後には$2,445×1.02×1.02×1.02、…

Q. 約年率2%で成長したアメリカの、1870年からt年後に おける1人あたり実質GDPはおよそいくらか?

→ t年後には

$2445 × 1.02

15

(16)

4.2 複利計算(差分方程式)

複利の計算

○●○○○○○○

Q. もしこれが年率1.5%だったら2003年のアメリカの1人 あたり実質GDPはいくらになっていただろうか?

計算式を立ててみよう:

実際の値を求めるのは手計算では大変なので、エクセル やグーグルの検索窓などを使うのが良い

�年後の数値=初期値×(1+成長率)

※経済成長率が2%なら上に「成長率=0.02」を代入

複利計算の公式

16

(17)

4.2 複利計算(差分方程式)

数式で表そう

○○●○○○○○

t年における1人あたりGDPを�と書き、年率の経済成長率を

�としよう。(� = 0.05なら経済成長率5%)

このとき、翌年のt+1年における1人あたりGDPは

�+1 =(1 + �)

同様に、さらに翌年のt+2年における1人あたりGDPは

�+2 =�+1(1 + �)

�+1に代入すると��+2 =(1 + �)2

より一般的に書くと、t年からn年後の1人あたりGDPは

�+� =(1 + �)

17

(18)

4.2 複利計算(差分方程式)

より数学的に:1階の差分方程式

○○○●○○○○

ある変数のt期における値を�とし、次の期における値��+1は 次のルール(差分方程式)によって定まっているとしよう。

�+� = �� ⋯ (�)

これは変数xの値が、前期の値の�倍に増えることを表す。

�+1 = ��,�+2 = ���+1 =,

�+3 = ���+2 =

ある初期値�0 > 0が与えられているとき差分方程式(1)の解

(�期の�の値をパラメータだけで書いたもの)は以下となる

=

18

(19)

4.2 複利計算(差分方程式)

練習問題

○○○○●○○○

ある家計がt期に持つ総資産額を�とし、資産収益率を一定の

� > 0とする。この家計は資産を取り崩すことは無く、資産収 益は全て再投資すると仮定する。

• t+1期に得る収益(財産所得)は��になる。

1. t期の資産額とt+1期の資産額の関係式を立てなさい。

2. 0期における資産(初期資産)を�0 > 0とする。1で立てた 差分方程式の解を求めなさい。

19

(20)

4.2 複利計算(差分方程式)

経済成長率が一定なのはどっち?

○○○○○●○○

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

0 5 10 15 20 25 30

経済A 経済B 時間

GDP

20

(21)

4.2 複利計算(差分方程式)

Rule of 70

○○○○○○●○

ある変数が年率�%で増加しているとする。�が小さい値で あるとき、この変数が2倍になるには約��/�年かかる

70 年ルール(Rule of 70)

• 複利を概算する便利な方法として以下がある:

Q1. いまGDPが100で年率2%で成長している経済を考え るとGDPが200になるのは何年後だろうか?

Q2.その概算が正しいことを示すには、どのような計算式 を立てれば良いだろうか?

21

(22)

両辺で自然対数を取ると、

ln 2 + ln 0 = ln 0 + � ln(1 + �/100)

⟺ ln 2 = � ln 1 + �/100

ここで近似式ln2 ≅ 0.7,また ln 1 + �/100 ≅ �/100より、 代入して� ≅ 70/�を得る。

4.2 複利計算(差分方程式)

Rule of 70 の証明

○○○○○○○●

0を初期値とする変数�が年率�%で増加しているとすると

=0(1 + �/100)

→ 2�0 =0(1 + �/100)を満たす�が、ほぼ70/�なら良い

※ln� ≡ log �であり, eはネイピア数。lnはlog naturalの意

22

(23)

4.3 数列の収束値

収束値を調べよう

●○○○○○

差分方程式�

�+1

= ��

の解である数列�

=

0

は、どこ

かの値に収束することはない(発散する)

しかし、解となる�がどこかの値に収束(Convergence)

するような差分方程式も存在する。例えば

�+1

=

12

16 � 1

ここで初期値を�0 = 0.1とする。

このとき、 �の値は0.1から時間を通じてどのように動く だろうか?どのような値に収束するのだろうか?

→ エクセルで計算してみよう

23

(24)

4.3 数列の収束値

エクセルで変数xの動きを見よう

○●○○○○

(1) A列を時間t、B列をtに おけるxの値とする

(2) セルA2に0、A3に1、 B2に初期値0.1を代入 (3) セルB3には差分方程式

「=B2^(1/2)-B2/16」 を代入

(4) セルA3とB3をドラッグ で範囲選択し、右下の

■にカーソルを合わせ てから下へドラッグ

24

(25)

4.3 数列の収束値

数値的に収束先を求めよう

○○●○○○

• この差分方程式によって定まる�は、 0.1からスタートして、最終的に約 0.9あたりに収束することが分かる

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5 10 15

25

(26)

4.3 数列の収束値

初期値と経路

○○○●○○

• 初期値を色々変えても最終的には同じ値に収束する

• ただし収束するまでの経路が異なる

-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5

0 2 4 6 8 10

x0=0.1 x0=0.5 x0=1 x0=1.5 26

(27)

4.3 数列の収束値

解析的に収束先を求めよう

○○○○●○

• エクセルを使って収束するらしいことを示したが、一体

どの値に収束するのか厳密な数値は求められていない

Q. 次の差分方程式の解となる数列の収束値は?

�+1

=

12

16 1

→ これは難しくない関数形なので計算可能。

収束値を �とすると収束先では�

�+1

=

= ��が成立。

→ つまり差分方程式の�

�+1

,

に �を代入して、

�について ̅

解けば良い 27

(28)

4.3 数列の収束値

収束値の計算と練習問題

○○○○○●

• よって差分方程式に収束値 �を代入: ̅

� = ��

12

16 1 �� ⟺ 17 16 �� = ��

12

⟺ ��

12

= 16 17

⟺ ̅� =

1617 2

≅ 0.88581…(答)

Q. 次の方程式についての収束値

�, ̅̅

はいくらだろうか? ただし�0 > 0,0 > 0とする。

(1)

�+1

=

13

− 0.5�

(2)

�+1

= 0.5

0.5

− 0.2�

28

(29)

まとめ

今後の講義スケジュール

29

第10回講義「簡略版ソローモデル」

準備として人口成長を捨象した簡略版のモデルを学ぶ。

今回学んだ数学が必要になるので授業前に復習すること 第11回講義「ソローモデル」

この講義で最も重要なモデルであり、中級マクロや応用科 目でも必要となるモデルなので、確実に習得すること

第12回講義「経済成長の決定要因」

ソローモデルを用いて、経済成長の原動力とは何か、一体 どうすれば経済規模が大きくなるのか、などを学ぶ

参照

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