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バックグラウンド汚染物質 日本海洋学会 — The Oceanographic Society of Japan

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Academic year: 2018

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(1)

海洋観測ガイドライン

第十巻

バックグラウンド汚染物質

3

日本海洋学会編

(2)
(3)

第三版への序文

気候変動、海洋酸性化等の全球規模事象へ対応することの学術的、社会的ニーズを背景と

して、Argo等の無人観測プラットフォームや化学・生物センサーをはじめとする、海洋観測

手法の技術的革新が急速に進みつつある。これと並行して、海洋観測手法や計測・分析標準

を国際的に統一し、年代・国の区別を越えてトレーサビリティや比較可能性が確保され不確

かさが明確にされた観測データを取得・流通させる動きもまた急速に進行しつつある。こう

した観測技術や標準化手法の進化に対応して、常に最新の状況を反映した海洋観測のガイド

ラインを提供するために、日本海洋学会は「海洋観測ガイドライン編集委員会」を組織し、

この委員会の下、各方面のエキスパートにより最新の知見を反映して執筆された日本語版お

よび英語版の「海洋観測ガイドライン」の編集・発行を開始した。日本語版の初版は2015年

9 月に発行され、以降一年毎に版を新しくして、内容の拡充と、技術や観測体制の変化に応

じた記載内容の改訂を行っている。

上記のように、今や海洋観測の手法や標準は日本単独で検討するものではなく、各国の

連携のもと、「国際標準」としての検討を行う体制となっている観測項目が多くなっている。

この結果、国際的な観測手法の検討結果を反映して、日本国内における観測手法にも更新の

必要が生じる場合がある。第三版では、第7巻第 5 章「海氷」について、このような国際的

な検討結果を反映した記載の更新を行った。また第3巻では、炭酸系観測に関する国際標準

マニュアルの日本語版の保管先が国際二酸化炭素情報分析センター(CDIAC)から米国大気

海洋庁(NOAA)に移管されたため、これに対応して記述の変更を行った。

また第三版では、底質分析(第5巻)バックグラウンド汚染物質(第10 巻)を中心と

して、多くの未完であった分析項目の記述を完成させ、これらの観測に対応できるようにし

た。

これらの更新・拡充内容も含め、本ガイドラインが多くの観測者に用いられ、海洋学の

進展に役立つことを期待する。

海洋観測ガイドライン編集委員会

(4)
(5)

気候変化に対する緩和策・適応策の策定が喫緊の課題とされており、海洋においても環境

変化の実態を知ることの重要性が高まっている。全球規模での環境変化を監視するためには、

適切な計測・分析標準のもとに、トレーサビリティや比較可能性 (comparability) が確保さ

れ、かつ、その不確かさ (uncertainty) が明確にされているデータの公開が不可欠となること

は言うまでもない。

近年では、各国の連携協力のもと、WOCE測線の再観測によって海洋内部の変動に関する

知見が蓄積され、気候変化に関する国際パネルの第5次評価報告書にその成果が引用されて

いる。また、気候変動研究に用いる全ての測定値を完全にSIトレーサブルにするための対策

が講じられるよう、国際度量衡会議から関係機関への勧告がなされている。さらに、栄養塩

標準物質も普及しはじめている。このように、データの比較可能性やそれが鍵となる研究、

標準物質に係る研究開発が進展している。

一方、観測や分析に用いられるガイドラインは、これらの進展を反映しているとは言い難

い。我が国においては、気象庁が1999年に発行した「海洋観測指針」が比較的広く活用され

ていたが、その記述は必ずしも最新のものとは言えず、かつ、現在は入手困難である。2010

年には、WOCE マニュアルを改訂する形で、GO-SHIP 海洋観測マニュアル (IOCCP Report

No.14, 2010) が発行されたが、これは外洋におけるRepeat Hydrography用のもので、幅広いユ ーザーを想定したものではない。また、他にも種々のマニュアルやガイドラインが存在する

が、あるものは日本語のみ、またあるものは英語のみ、といった状況であり、さらに、最新

の内容とそうでないものが混在している。

この現状を踏まえ、日本海洋学会は、海洋観測ガイドライン編集委員会を発足させ、

既存のガイドライン類を精査・整理し、必要な更新と不足を補って統合し、最新の海洋観

測法や分析法を記載した「海洋観測ガイドライン」を発行し、日本海洋学会のWebページに

おいて広く公開することとした。

本ガイドラインは逐次更新することで、常に最新のものが利用できるようにすることを意

図している。本ガイドラインが多くの観測者に用いられ、海洋学の進展に役立つことを期待

している。

海洋観測ガイドライン編集委員会

(6)
(7)

執筆者一覧(執筆時点)

青山 道夫 福島大学環境放射能研究所 /

海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

荒巻 能史 国立環境研究所

石井 雅男 気象研究所

内田 裕 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

梅澤 有 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科

太田 秀和 環境総合テクノス

太田 尚志 石巻専修大学

小川 浩史 東京大学大気海洋研究所

小澤 知史 マリン・ワーク・ジャパン

乙坂 重嘉 日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センター

小畑 元 東京大学大気海洋研究所

帰山 秀樹 水研研究・教育機構中央水産研究所

片山 健一 マリン・ワーク・ジャパン

河野 健 海洋研究開発機構

木津 昭一 東北大学大学院理学研究科

熊本 雄一郎 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

纐纈 慎也 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

小島 茂明 東京大学大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所

小杉 如央 気象研究所

小林 拓 山梨大学

齊藤 宏明 東京大学大気海洋研究所

佐々木 建一 海洋研究開発機構むつ研究所

笹野 大輔 気象研究所

佐藤 弘康 マリン・ワーク・ジャパン

佐藤 光秀 東京大学大学院農学生命科学研究科

末吉 惣一郎 日本海洋事業

須賀 利雄 東北大学大学院理学研究科

鈴木 亨 日本水路協会海洋情報研究センター

鈴木 光次 北海道大学

高槻 靖 気象研究所

髙谷 祐介 気象庁地球環境・海洋部

千葉 早苗 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

豊田 威信 北海道大学

虎谷 充浩 東海大学

中岡 慎一郎 国立環境研究所

中野 俊也 気象庁地球環境・海洋部

成田 尚史 東海大学

橋濱 史典 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科

林 和彦 気象庁地球環境・海洋部

平譯 享 北海道大学大学院水産科学研究院

牧 秀明 国立環境研究所

松永 浩志 マリン・ワーク・ジャパン

(8)

道田 豊 東京大学大気海洋研究所国際連携研究センター

宮尾 孝 気象庁地球環境・海洋部

森田 貴己 水産研究・教育機構中央水産研究所

谷保 佐知 産業技術総合研究所

山﨑 絵理子 産業技術総合研究所

山下 信義 産業技術総合研究所

横川 太一 海洋研究開発機構海洋生命理工学研究開発センター

(9)

査読者一覧(査読時点)

青山 道夫 福島大学環境放射能研究所

海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

安藤 健太郎 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

石坂 丞二 名古屋大学

伊東 素代 海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センター

植木 巌 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

植原 量行 東海大学海洋学部

牛尾 収輝 国立極地研究所・北極圏環境研究センター

内田 裕 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

梅澤 有 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科

太田 尚志 石巻専修大学

長船 哲史 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

乙坂 重嘉 日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センター

帰山 秀樹 水産研究・教育機構中央水産研究所

勝又 勝郎 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

粥川 洋平 産業技術総合研究所計量標準総合センター

川合 義美 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

川口 悠介 海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センター

日下部 正志 海洋生物研究所

熊本 雄一郎 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

纐纈 慎也 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

後藤 浩一 環境総合テクノス

小林 大洋 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

小松 大祐 東海大学

齊藤 宏明 東京大学大気海洋研究所

笹岡 晃征 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

佐藤 光秀 東京大学大学院農学生命科学研究科

佐野 雅美 東京大学大気海洋研究所

重光 雅仁 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

下島 公紀 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所

清水 勇吾 水産研究・教育機構中央水産研究所

須賀 利雄 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻

鈴木 光次 北海道大学大学院地球環境科学研究院

清家 弘治 東京大学大気海洋研究所

高槻 靖 気象研究所海洋・地球化学研究部

武田 重信 長崎大学

津田 敦 東京大学大気海洋研究所

時枝 隆之 気象大学校

中口 譲 近畿大学

中野 俊也 気象庁地球環境・海洋部

永野 憲 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

中山 典子 東京大学大気海洋研究所

成田 尚史 東海大学

(10)

仁科 文子 鹿児島大学

西野 茂人 海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センター

則末 和宏 新潟大学

橋濱 史典 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科

細田 滋毅 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

松本 剛 琉球大学

三浦 勉 産業技術総合研究所

村田 昌彦 海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター

山下 洋平 北海道大学地球環境科学研究院

横川 太一 海洋研究開発機構海洋生命理工学研究開発センター

吉川 久幸 北海道大学

芳村 毅 電力中央研究所環境科学研究所

(11)

第三版への序文

執筆者一覧(執筆時点)

査読者一覧(査読時点)

Vol. 1 品質管理と標準物質

Chap. 1 観測量と国際単位系SI G101JP:001-007 青山道夫 Chap. 2 標準機器・標準物質による精度管理 G102JP:001-009 林和彦・ 内田裕・

青山道夫 Chap. 3 目的精度別の観測法リスト(EOV) G103JP:001-006 石井雅男・

須賀利雄・

千葉早苗

Chap. 4 項目間比較による精度管理 執筆中 内田裕・

青山道夫・

石井雅男 Chap. 5 データの公開と国際交換 G105JP:001-010 鈴木亨・

道田豊 Chap. 6 海水の状態方程式(TEOS-10) 執筆中 内田裕

Vol. 2 物理観測

Chap. 1 採水 G201JP:001-019 中野俊也・ 小畑元・

片山健一・

小澤知史・

松永浩志

Chap. 2 水温 G202JP:001-002 中野俊也

Chap. 3 塩分 G203JP:001-015 河野健

Chap. 4 海水の密度 G204JP:001 内田裕

Chap. 5 透明度 G205JP:001-002 中野俊也

Vol. 3 採水分析(溶存態)

Chap. 1 溶存酸素 G301JP: 001-030 熊本雄一郎・ 高谷祐介・

宮尾孝・

佐藤弘康・

松本慧太郎 Chap. 2 ガス分画連続流れ方式の分析装置を用いた

高精度で相互比較可能な海水中の溶存栄養

塩類(N, P, Si)分析方法

G302JP:001-017 青山道夫

Chap. 3 微量金属 G303JP:001-004 小畑元

(12)

Chap. 6 pH G306JP:001

Chap. 7 CO2分圧 G307JP:001 石井雅男

Chap. 8 クロロフルオロカーボン類および六フッ化 硫黄

G308JP:001-009 佐々木建一

Chap. 9 炭素同位体比(∆14C、δ13C) G309JP:001-018 熊本雄一郎・ 荒巻能史 Chap. 10 DOC/DON/DOP G310JP:001-013 小川浩史

Vol. 4 採水分析II(粒子態)

Chap. 1 粒子態有機炭素(POC),粒子態窒素(PN),お

よび粒子態リン(PP)

G401JP:001-006 芳村毅

Chap. 2 生物ケイ酸 G402JP:001-004 橋濱史典 Chap. 3 粒子状有機物の炭素・窒素安定同位体比 G403JP:001-007 梅澤有

Chap. 4 植物色素 G404JP:001-004 鈴木光次 Chap. 5 細菌および従属栄養性微小鞭毛虫類

Chap. 5-1 細菌および従属栄養性微小鞭毛虫類:蛍光 顕微鏡による計数

G4051JP:001-006 横川太一

Chap. 5-2 細菌および従属栄養性微小鞭毛虫類:フロ ーサイトメトリーによる細菌の計数

G4052JP:001-004 佐藤光秀

Chap. 6 微小動物プランクトンの定量 G406JP:001-006 太田尚史 Chap. 7 基礎生産 G407JP:001-003 鈴木光次 Chap. 8 濁度・SS G408JP:001- 太田秀和 Chap. 9 TP、TN、COD(規制項目として) G409JP:001- 太田秀和

Vol. 5 底質分析

Chap. 1 海底堆積物採取 G501JP:001-003 成田尚史 Chap. 2 含水率・空隙率 G502JP:001-006 成田尚史・

乙坂重嘉 Chap. 3 焼却減量 G503JP:001-003 成田尚史 Chap. 4 粒度組成 G504JP:001-011 成田尚史・

乙坂重嘉

Chap. 5 主成分組成 G505JP:001- 成田尚史

Chap. 6 間隙水 G506JP:001-006 成田尚史

Vol. 6 プランクトン・ベントス

Chap. 1 プランクトンネット G601JP:001-009 齊藤宏明 Chap. 2 底生生物(ベントス) G602JP:001-006 小島茂明

Vol. 7 Underway

(13)

Chap. 6 光環境(物理、生物) G706JP:001-007 虎谷充浩・ 小林拓

Vol. 8 センサー観測

Chap. 1 TSG G801JP:001- 内田裕

Chap. 2 XBT/XCTD G802JP:001-013 木津昭一 Chap. 3 電気伝導度水温水深計(外洋観測) G803JP:001-011 内田裕 Chap. 4 沿岸域におけるCTD観測 G804JP:001- 太田秀和 Chap. 5 溶存酸素センサー(CTD 観測用) G805JP:001-018 内田裕・

高槻靖

Chap. 6 蛍光光度計 G806JP:001- 内田裕

Chap. 7 透過度・濁度計 G807JP:001- 内田裕・ 荒川久幸 Chap. 8 海洋中の光 G808JP:001-008 平譯亨 Chap. 9 降下式超音波流速プロファイラ(LADCP)

観測

G809JP:001-007 纐纈慎也

Vol. 9 天然および人工放射能

Chap. 1 海水試料中の人工放射性核種の放射能測定 法

G901JP:001-013 青山道夫

Chap. 2 海底堆積物 G902JP:001-008 乙坂重嘉・ 成田尚史 Chap. 3 大型生物 G903JP:001-004 森田貴巳 Chap. 4 プランクトン・ベントス G904JP:001-004 帰山秀樹

Vol. 10 バックグラウンド汚染物質

Chap. 1 G1001JP:001-039 太田秀和

Chap. 2

重金属

石油・炭化水素 G1002JP:001-014 牧秀明

Chap. 3 マイクロプラスチック(表層水の曳網観測)G1003JP:001-009 宮尾孝

Chap. 4 Chap. 5

浮遊汚染物質(船からの目視観測)

残留性有機汚染物質

G1004JP:001-008 宮尾孝

G1005JP:001-015 山下信義・

谷保佐知・

Chap. 6 新規残留性有機汚染物質(2013 年以降追

加物質)

山﨑絵理子

G1006JP:001-009 谷保佐知・

山下信義

(14)
(15)

重金属

○太田 秀和(環境総合テクノス)

1、はじめに

環境基準は昭和46年環境庁告示第59号として告示されその後見直しを重ねている。最新

の状況は環境省のウェブサイトの水質汚濁に係る環境基準で確認することができる。公共用

水域の水質汚濁に係る環境基準は、人の健康の保護および生活環境の保全に関し定められて

おり、Cd、Pb、6価Cr、As、総Hg、アルキルHgは人の健康の保護関連として定められてい

る。全Znは生活環境の保全関連となっている。

環境省のウェブサイト http://www.env.go.jp/kijun/mizu.html

【引用について】

本項は環境省ウェブサイトならびに日本工業規格(JIS)を引用している。JISの引用は一般財

団法人 日本規格協会から2015年8月28日附で海洋観測ガイドラインへの引用を書面で許可され

た。(承認番号:海洋観測ガイドライン第20150826号)

2、試料の前処理(JIS K 0102の5による試料の前処理、以降JISの項目番号)

5. 試料の前処理 試料の前処理操作は,各試験項目で規定するが,金属元素の試験における

前処理操作は,金属元素の種類に関係なく共通するものがほとんどであるため,一括して次

に規定する。ただし,金属元素のうちナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,

ひ素,クロム(VI),水銀,溶存マンガン及び溶存鉄の試験の前処理は,それぞれの試験項

目において規定する。

金属元素の試験の前処理は,主として共存する有機物,懸濁物及び金属錯体の分解を目的

としている。前処理には,試料に各種の酸を加えて加熱する方法を用いるが,試料の状態及

び試験の種類によって適切な方法を選択する。

5.1塩酸又は硝酸酸性で煮沸 この方法は,有機物及び懸濁物が極めて少ない試料に適用する。

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 塩酸 JIS K 8180 に規定するもの。

2) 硝酸 JIS K 8541 に規定するもの。

b) 操作 操作は,次による。

1) 試料(1) 100 mL につき塩酸 5 mL 又は硝酸 5 mL を加える。

2) 加熱して約 10 分間静かに煮沸する。

3) 放冷後,必要に応じて水で一定量にする。

注(1) 溶存状態の金属元素を試験する場合には,3.2 によってろ過した試料を用いる。

5.2塩酸又は硝酸による分解 この方法は,有機物が少なく,懸濁物として水酸化物,酸化物,

硫化物,りん酸塩などを含む試料に適用する。 a) 試薬 試薬は,次による。

(16)

2) 硝酸 JIS K 8541 に規定するもの。

b) 操作 操作は,次による。

1) 試料(2)をよく振り混ぜた後,直ちにビーカーにとり,試料 100 mL につき塩酸 5 mL 又は

硝酸 5 mLを加える。

2) 加熱して液量が約 15 mL になるまで濃縮する。

3) 不溶解物が残った場合には,ろ紙 5 種 B でろ過した後,水でよく洗浄する。

4) 放冷後,ろ液と洗液とを適切な容量の全量フラスコに移し入れ,水を標線まで加える。

注(2) 溶存状態の金属元素を試験する場合には,3.2 によってろ過した試料を用い,

5.1 の方法を適用する。

備考 塩酸と硝酸との混酸による分解が有利な試料の場合には,2)までの操作を行っ

た後,室温まで放冷する。1)で,塩酸を使用したときは硝酸 5 mL を,硝酸を使用

したときは塩酸 5 mL を加え,時計皿で覆い,再び加熱し,激しい反応が終わった

ら時計皿を取り除き,更に加熱して窒素酸化物を追い出し,約 5 mL になるまで濃

縮する。この操作で酸が不足している場合は,適量の塩酸又は硝酸を加え,同じ操

作で加熱して溶かす。不溶解物が残った場合は,温水 15 mL を加え,3)及び 4)の操

作を行う。

5.3硝酸と過塩素酸とによる分解 この方法は,酸化されにくい有機物を含む試料に適用する。

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 過塩素酸 JIS K 8223 に規定するもの。

2) 硝酸 JIS K 8541 に規定するもの。

b) 操作 操作は,次による。

1) 試料(2)をよく振り混ぜた後,直ちにその適量をビーカー又は磁器蒸発皿にとる。

2) 硝酸 5∼10 mL を加え,加熱板上で静かに加熱して約 10 mL (3)になるまで濃縮し,放冷す

る。

3) 硝酸 5 mL を加え,次に過塩素酸(4) 10 mL を少量ずつ加え,加熱を続け,過塩素酸の白煙

が発生し始めたら,時計皿で容器を覆い,過塩素酸が器壁を流下する状態に保って有機物を

分解する。

4) 有機物が分解しないで残ったときは,更に硝酸 5 mL を加えて 3)の操作を繰り返す。

5) 放冷後,水を加えて液量を約 50 mL に薄め,不溶解物が残った場合には,ろ紙 5 種 B を用

いてろ過し,水で洗い,ろ液と洗液とを適切な容量の全量フラスコに移し入れ,水を標線ま

で加える。

注(3) ケルダールフラスコに移して分解してもよい。

(4) 過塩素酸を用いる加熱分解操作は,試料の種類によっては爆発の危険性がある

ため,次の事項に注意する。

酸化されやすい有機物は,過塩素酸を加える前に,2)の操作によって十分に分解し

ておく。

過塩素酸の添加は,必ず濃縮液を放冷した後に行う。

必ず過塩素酸と硝酸とを共存させた状態で,加熱分解を行う。

濃縮液を乾固させない。

(17)

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 硝酸 JIS K 8541 に規定するもの。

2) 硫酸(11) 水 1 容をビーカーにとり,これを冷却し,かき混ぜながら JIS K 8951 に規

定する硫酸 1 容を徐々に加える。

b) 操作 操作は,次による。

1) 試 料(2)を よ く 振 り 混 ぜ , 直 ち に そ の 適 量 を ビ ー カ ー 又 は 磁 器 蒸 発 皿 に と り , 硝 酸 5∼

10 mL を加える。

2) 加熱して,液量が約 10 mL (3)になったら,再び硝酸 5 mL と硫酸(1+1)10 mL とを加え,

硫酸の白煙が発生し,有機物が分解するまで加熱する。

3) 有機物の分解が困難な場合は,更に硝酸 10 mL を加えて 2)の操作を繰り返す。

4) 放冷後,水で液量を約 50 mL に薄める。不溶解物(6)が残った場合には,ろ紙 5 種 B を用

いてろ過し,水で洗い,ろ液と洗液とを適切な容量の全量フラスコに移し入れ,水を標線ま

で加える。

注(5) 水溶液をそのまま噴霧するフレーム原子吸光法を適用する場合には,好まし

くない。

(6) 鉛が含まれていて沈殿を生じる場合には,5.3 又は次の操作を行う。

2)の操作を行って溶液をほとんど蒸発乾固し,水約 30 mL と JIS K 8180 に規定する

塩酸 15 mLとを加えて加熱して溶かす。不溶解物がある場合には,ろ紙 5 種 B を用

いてろ過した後,温塩酸(1+10)(JIS K 8180 に規定する塩酸を用いて調製する。)

で洗浄する。放冷後,ろ液及び洗液を適切な容量の全量フラスコに移し入れ,水を

標線まで加える。

5.5 フレーム原子吸光法,電気加熱原子吸光法,ICP 発光分光分析法及び ICP 質量分析法を

適用する場合の前処理 試料に含まれている有機物及び懸濁物の量,その存在状態及び適用し

ようとする原子吸光法,ICP 発光分光分析法,ICP 質量分析法などの方法を十分に考慮して 5.1

5.4 の方法のうち最適なものを選択して前処理する(7) (8)。

調製した試料をそのまま噴霧する場合においてフレーム原子吸光法又は ICP 発光分光分

析法を適用する場合には,特に断らない限り試料は塩酸又は硝酸酸性(9),電気加熱原子吸光

法及び ICP 質量分析法を適用する場合は,硝酸酸性とし,適切な濃度(10)に調節する。

注(7) フレーム原子吸光法又は ICP 発光分光分析法において,溶媒抽出法を適用す

る場合の前処理は,特に断らない限り,各試験項目のとおりとし,妨害する可能性

のある有機物その他の妨害物質を十分に分解する。

フレーム原子吸光法又は ICP 発光分光分析法において,溶媒抽出法を適用せずに試

料を噴霧する場合には,次に示す前処理によってもよい。

有機物及び懸濁物が極めて少ない試料の場合は,5.1 の操作を行う。有機物又は懸

濁物を含む試料の一般的な前処理方法としては,5.3 又は 5.4 を適用する。この場合,

白煙を十分に発生させて大部分の硫酸及び過塩素酸を除去しておく。

電気加熱原子吸光法及び ICP 質量分析法の場合は,酸の種類及び濃度によっては空

試験値が無視できないことがあるので,測定する元素についてあらかじめその影響

について調べておく。

(18)

を行い,その結果に基づいて判断するとよい。

(8) 2.の注(2)による。高純度の試薬には,JIS K 9901 に規定する高純度試薬−硝酸,

JIS K 9902 に規定する高純度試薬−塩酸,JIS K 9904 に規定する高純度試薬−過塩素

酸,JIS K 9905 に規定する高純度試薬−硫酸などがある。

(9) ICP 発光分光分析法の場合,硫酸酸性では,試料導入量が少なく感度が悪くな

ることがあるので,5.4 の適用はやむを得ない場合だけとする。

(10) フレーム原子吸光法及び電気加熱原子吸光法の場合には,0.1∼1 mol/L,ICP 発

光分光分析法及び ICP 質量分析法においては,すず及びアンチモンを対象としない

場合には,0.1∼0.5 mol/L とする。すず及びアンチモンを対象とする場合には,1∼1.5

mol/L とする。ただし,いずれの場合も,検量線作成時の場合とほぼ同じ濃度とす

る。

3、カドミウム(Cd

環境省告示は測定方法として日本工業規格(以下「規格」という。)K0102の55.2、55.3

又は55.4に定める方法を指定している。(海洋観測指針ではクロロホルムを用いた抽出方法

となっている。クロロホルムは特定化学物質に該当する。)

3-1 JIS K 010255.2による測定方法(以降JISの項目番号)

55.2 電気加熱原子吸光法

試料を前処理した後,マトリックスモディファイヤーとして硝酸パラジウム(II)を加え電気

加熱炉で原子化し,カドミウムによる原子吸光波長228.8 nmで測定してカドミウムを標準添

加法によって定量する。

定量範囲:Cd 0.5∼10μg/L,繰返し精度:2∼10 %(装置及び測定条件によって異なる。)

備考 5. 52.の備考 7.による。

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 52.3 a) 1)による。

2) 硝酸(1152.3 a) 2)による。

3) 硝酸パラジウム(II)溶液(Pd 10 μg/mL54.2 a) 3)による。

4) カドミウム標準液(Cd 1 μg/mL52.4 a) 8)のカドミウム標準液(Cd 10μg/mL)10 mLを全

量フラスコ100 mLにとり,硝酸(1+1)2mLを加え,水を標線まで加える。

5) カドミウム標準液(Cd 0.1 μg/mL) カドミウム標準液(Cd 1μg/mL)10 mLを全量フラス

コ100 mLにとり,硝酸(1+1)2 mLを加え,水を標線まで加える。

b) 器具及び装置 器具及び装置は,52.3 b)による。

c) 準備操作 準備操作は,次による。

1)試料を5.によって処理する。(本稿 2.試料の前処理)

備考 6.試料のカドミウムの濃度が低い試料で,アルカリ金属イオン,アルカリ土類

金属イオンなどの共存物質の濃度が高く,測定を妨害する場合の準備操作は 52.の

備考 6.による。

d) 操作 操作は,次による。

(19)

の操作を行う。ただし,カドミウム標準液(Cd 0.1μg/mL)を用いる。 2) 54.2 d) 2)の操作を行う。

3) 52.3 d) 1)の操作を行う。ただし,灰化温度は500∼800℃,原子化(3)温度は1 600∼2 200℃,

波長は228.8 nmを用いる。 4) 54.2 d) 4)の操作を行う。

5)カドミウムの添加量と指示値との関係線を作成し,カドミウムの量を求め,試料中のカド

ミウムの濃度(Cdμg/L)を算出する。

(3)52.の注(9)による。

3-2 JIS K 010255.3による測定方法 (以降JISの項目番号)

55.3 ICP 発光分光分析法 52.4による。

52.4 ICP 発光分光分析法 試料を前処理した後,試料導入部を通して誘導結合プラズマ中に

噴霧し,銅による発光を波長324.754 nmで測定して銅を定量する。この方法によって表 52.1

に示す元素が同時定量できる。それぞれの元素ごとの測定波長,定量範囲及び繰返し精度の

例を,表 52.1に示す。

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 銅標準液(Cu 1 mg /mLJIS K 8005に規定する容量分析用標準物質の銅を塩酸(1+3)

で洗い,水洗いし,JIS K 8101に規定するエタノール(99.5)で洗い,次に,JIS K 8103に規

定するジエチルエーテルで洗った後,直ちに上口デシケーター中に入れ,2.0 kPa以下で数分

間保った後,減圧下で約12時間保つ。Cu 100 %に対してその1.00 gをとり,硝酸(1+1)30 mL

中に加え,煮沸して溶かし,窒素酸化物を追い出す。放冷後,全量フラスコ1000 mLに移し

入れ,水を標線まで加える。

2) 銅標準液(Cu 10 μg/mL) 銅標準液(Cu 1 mg/mL)5 mLを全量フラスコ500 mLにとり,

硝酸(1+1)10 mLを加えた後,水を標線まで加える。

(20)

で洗い,水洗いし,JIS K 8101に規定するエタノール(99.5)で洗い,次に,JIS K 8103

に規定するジエチルエーテルで洗った後,直ちに上口デシケーター中に入れ,圧力 2 kPa 以

下で数分間保った後,減圧下で約12時間保つ。Zn 100 %に対してその1.00 gをとり,硝酸(1

+1)30 mLに溶かし,煮沸して窒素酸化物を追い出す。放冷後,全量フラスコ1000 mLに移

し入れ,水を標線まで加える。

4) 亜鉛標準液(Zn 10 μg/mL) 亜鉛標準液(Zn 1 mg/mL)5 mLを全量フラスコ500 mLにと

り,硝酸(1+1)10 mLを加えた後,水を標線まで加える。

5) 鉛標準液(Pb 1 mg/mLJIS K 8701に規定する鉛(99.9 %以上)1.00 gをとり,硝酸(1

+1)30 mLに溶かし,加熱して窒素酸化物を追い出す。放冷後,全量フラスコ1000 mLに移

し入れ,水を標線まで加える。又はJIS K 8563に規定する硝酸鉛(II)1.60 gをとり,硝酸(1

+1)20 mL及び適量の水に溶かし,全量フラスコ1000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。 6) 鉛標準液(Pb 10 μg/mL) 鉛標準液(Pb 1 mg/mL)5 mLを全量フラスコ500 mLにとり,

硝酸(1+1)10 mLを加え,水を標線まで加える。

7) カドミウム標準液(Cd 0.1 mg/mL) カドミウム(99.9 %以上)0.100 g をとり,硝酸(1

+1)20 mLに溶かし,煮沸して窒素酸化物を追い出す。放冷後,全量フラスコ1000 mLに移

し入れ,水を標線まで加える。

8) カドミウム標準液(Cd 10 μg/mL) カドミウム標準液(Cd 0.1 mg/mL)10 mLを全量フラ

スコ100mLにとり,硝酸(1+1)2 mLを加えた後,水を標線まで加える。

9) マンガン標準液(Mn 1 mg/mLJIS K 8247に規定する過マンガン酸カリウム2.88 gをと

り,水150 mLに硝酸(1+1)10 mLを加えた溶液に溶かす。過酸化水素水(1+9)(JIS K 8230

に規定する過酸化水素 10 mLを水で薄めて100 mLとする。)を滴加し,かき混ぜて脱色し

た後,煮沸して過剰の過酸化水素を追い出す。放冷後,全量フラスコ1000 mLに移し入れ,

水を標線まで加える。又はマンガン(99.9 %以上)1.00 gをとり,硝酸(1+3)20 mLに溶か

し,煮沸して窒素酸化物を追い出す。放冷後,全量フラスコ 1000 mLに移し入れ,水を標線

まで加える。

10) マンガン標準液(Mn 10 μg/mL) マンガン標準液(Mn 1 mg/mL)5 mLを全量フラスコ

500 mLにとり,硝酸(1+1)10 mLを加え,水を標線まで加える。

11) 鉄標準液(Fe 1 mg/mL) 鉄(99.5 %以上)1.000 gをとり,塩酸(1+1)30 mL中に入れ,

加熱して溶かし,放冷後,全量フラスコ1000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。又はJIS

K 8979に規定する硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物[ビス(硫酸)鉄(II)アンモニウム六

水和物]7.02 g をとり,塩酸(1+1)20 mL 及び適量の水に溶かし,全量フラスコ 1000 mL

に移し入れ,水を標線まで加える。

12) 鉄標準液(Fe 0.1 mg/mL) 鉄標準液(Fe 1 mg/mL)10 mLを全量フラスコ100 mLにと

り,塩酸(1+1)2 mLを加えた後,水を標線まで加える。

13) 鉄標準液(Fe 10 μg/mL) 鉄標準液(Fe 0.1 mg/mL)10 mLを全量フラスコ100 mLにと

り,塩酸(1+1)2 mLを加えた後,水を標線まで加える。

14) ニッケル標準液(Ni 0.1 mg/mLJIS K 9062に規定するニッケル(99.9 %以上)0.100 g

をとり,硝酸(1+1)20 mLに溶かし,煮沸して窒素酸化物を追い出す。放冷後,全量フラ

スコ1000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。

(21)

100 mLにとり,硝酸(1+1)2 mLを加えた後,水を標線まで加える。

16) コバルト標準液(Co 0.1 mg/mL) コバルト(99.5 %以上)0.100 gをとり,硝酸(1+1)

20 mLに溶かし,煮沸して窒素酸化物を追い出す。放冷後,全量フラスコ1000 mLに移し入

れ,水を標線まで加える。

17) コバルト標準液(Co 10 μg/mL) コバルト標準液(Co 0.1 mg/mL)10 mLを全量フラスコ

100 mLにとり,硝酸(1+1)2 mLを加え,水を標線まで加える。

b) 装置 装置は,次による。

1) ICP 発光分光分析装置

c) 準備操作 準備操作は,次による。

1)試料を5.5によって処理する。(本稿 2.試料の前処理)

備考 9.試料の銅又は測定対象元素の濃度が低い試料で,アルカリ金属イオン,アル

カリ土類金属イオンなどの共存物質の濃度が高く,測定を妨害する場合の準備操作

は,次の 1)3)の操作によるか,又は備考 6.による。次の準備操作は,亜鉛,鉛,

カドミウム,マンガン,鉄,ニッケル,コバルト,モリブデン及びバナジウムの定

量にも使用できる。

1)試料500 mL(又は100∼500 mLの一定量)をビーカーにとり,JIS K 8180に規定

する塩酸5 mLを加え,約5分間煮沸する。

2)放冷後,酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)(JIS K 8371に規定する酢酸ナトリ

ウム三水和物19.2 gとJIS K 8355に規定する酢酸3.4 mLとを水に溶かして1 Lと

する。)(*12) 10mLを加え,アンモニア水(1+1)(JIS K 8085に規定するアンモ

ニア水を用いて調製する。)又は硝酸(1+10)(JIS K 8541 に規定する硝酸を用

いて調製する。)でpHを5.2に調整する。

注(*12)この操作に用いる酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)は使用前に1-ピロリジ

ンカルボジチオ酸アンモニウム溶液,ヘキサメチレンアンモニウム-ヘキサメチレン

カルバモジチオ酸(ヘキサメチレンアンモニウム-ヘキサメチレンジチオカルバミド

酸)のメタノール溶液及びJIS K 8271に規定するキシレンを加えて振り混ぜ,精製

する。

3)この溶液を分液漏斗1000 mL(又は200∼500 mL)に移し,1-ピロリジンカルボジ

チオ酸アンモニウム溶液(20 g/L)2 mL及びヘキサメチレンアンモニウム-ヘキサメ

チレンカルバモジチオ酸(HMA-HMDC)のメタノール溶液(20 g/L)2 mLを加え

て混合した後,JIS K 8271 に規定するキシレンの一定量(5∼20 mL)を加えて約 5

分間激しく振り混ぜて静置する。水層を捨てキシレン層を共栓試験管に入れる。定

量操作は,備考 11.による。

d) 操作 操作は,次による。

1) c) 1)の準備操作を行った試料を試料導入部を通して発光部に導入し(11),各測定対象元素

の波長の発光強度を測定する(12) (13)。

2)空試験として c) 1)の準備操作で用いた試料と同量の水をとり,c) 1)及び 1)の操作を行って

各測定対象元素に相当する発光強度を測定し,試料について得た発光強度を補正する。

3)検量線から各測定対象元素の量を求め,試料中の各元素の濃度(μg/L)を算出する(14)。

(22)

て調製する。)を噴霧して測定系を洗い流す。また,各試料測定の間にも洗い流し

を行う。

(12) 備考 10.による。

(13)47.の注(8)による。

(14)47.の注(9)による。

(15)50.の注(11)による。

e) 検量線 検量線の作成は,次による。

1) a)の測定対象元素の各標準液のそれぞれ一定量をとり,希釈して一定量として混合標準液

を調製する。この混合標準液は,測定対象の元素を含み(16),測定する濃度範囲よりも高い濃

度(17)とする。

2)全量フラスコ100 mLに,測定濃度範囲を含むように,混合標準液を段階的にとり,c) 1)

試料と同じ酸の濃度となるように硝酸(1+1)(18)を加えた後,水を標線まで加える。

3) 2)で調製した各溶液についてd) 1)の操作を行う。

4)空試験として,全量フラスコ100 mLにc) 1)の試料と同じ酸の濃度となるように硝酸(1+

1)を加え,水を標線まで加えた溶液について,d) 1)の操作を行い,3)で得た発光強度を補正

する。

5)各測定対象元素について,それぞれの元素の量と発光強度との関係線を作成する。

注(16)測定対象の単独又は限られた複数の元素だけでもよい。

(17)作成する検量線の最高濃度の5∼10倍程度。

(18)又は塩酸(1+1)。ただし,指定されている場合はそれに従う。

備考 10.波長の異なる 2 本以上のスペクトル線の同時測定が可能な装置では,内標

準法によることができる。操作は,次による。なお,内標準元素は,イットリウム

(Y)のほか,インジウム(In)及びイッテルビウム(Yb)も使用できる。

1) c) 1)で処理した試料の適量を全量フラスコ100 mLにとり,イットリウム溶液(Y

50μg/mL)[47.の備考 5. 6)による。]10 mLを加えた後,水を標線まで加える。

2)この溶液について d) 1)の操作を行って各測定対象元素の発光強度及びイットリ

ウムの発光強度を測定し,各測定対象元素の発光強度とイットリウムの発光強度と

の比を求める。

3)空試験として,試料に代えて同量の水を用い,c) 1)1)及び2)の操作を行い,各

測定対象元素の発光強度とイットリウムの発光強度との比を求め,2)で得た発光強

度比を補正する。

4)各測定対象元素についての検量線から,各測定対象元素の量を求め,試料中の各

測定対象元素の濃度(mg/L)を算出する。

5) 検量線 全量フラスコ100 mL数個にe) 2)に従って混合標準液を段階的にとり,

イットリウム溶液(Y 50μg/mL)10 mL及び1)の試料と同じ酸の濃度となるように

硝酸(1+1)(*)を加えた後,水を標線まで加える。この溶液について2)の操作を行

い,各測定対象元素及びイットリウムの発光強度を測定し,各測定対象元素の発光

強度とイットリウムの発光強度との比を求め,別に,空試験として,混合標準液に

代えて水を用い,同じ操作を行って,同様に発光強度の比を求め,混合標準液での

(23)

発光強度とイットリウムの発光強度との比との関係線を作成する。

注(*) 注(18)による。

備考 11. 備考 9. 1)∼3)によって準備操作を行った場合は,キシレン層をそのまま噴

霧して測定対象の各元素の発光強度を測定して定量する。その場合の検量線の作成

は,次による。

1) e) 1)に準じ,測定対象元素を含む混合標準液を調製する。ただし,各測定対象元

素はe) 1)の混合標準液よりも低濃度(0.1∼1 μg/mL)とする。

2)調製した混合標準液を段階的にとり,水で500 mLとし,備考 9. 1)∼3)の操作及び

各測定対象元素の発光強度の測定操作を行う。

3)空試験として,水500 mLを用いて,2)の操作を行い,2)で得た各測定対象元素の

発光強度を補正し,各測定対象元素の量とその発光強度との関係線を作成する。

3-3 JIS K 010255.4による測定方法(以降JISの項目番号)

55.4 ICP 質量分析法 52.5による。

52.5 ICP 質量分析法 試料を前処理した後,内標準元素を加え,試料導入部を通して高周波プラ

ズマ中に噴霧し,銅及び内標準元素のそれぞれの質量/電荷数における指示値(19)を測定し,銅の

指示値と内標準元素の指示値との比を求めて銅を定量する。この方法によって,表 52.2に示す元

素が同時定量できる。それぞれの元素ごとの定量範囲,繰返し精度などの例を,表 52.2に示す。

(24)

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 52.3 a) 1)による。

2) 硝酸(1152.3 a) 2)による。

3) 内標準液(1 μg/mL) 内標準元素としてイットリウム,インジウム又はビスマスを用いる。

内標準液の調製には,次の3.1)3.3)に規定する溶液のうち内標準とする元素の溶液2 mLを全

量フラスコ100 mLにとり,硝酸(1+1)2 mLを加え,水を標線まで加える。使用時に調製

する(20) (21)。

3.1) イットリウム溶液(Y 50 μg/mL47.の備考 5. 6)による。

3.2) インジウム溶液(In 50 μg/mL47.4 a) 2.2)による。

3.3) ビスマス溶液(Bi 50 μg/mL) 酸化ビスマス(III)0.279 gをとり,硝酸(1+1)10 mL

を加え,加熱して溶かし,放冷後,全量フラスコ250 mLに移し入れ,水を標線まで加える。

この溶液25 mLを全量フラスコ500 mLにとり,硝酸(1+1)10 mLを加え,水を標線まで加

える。

4) 混合標準液[(Cu 10 μgZn 10 μgPb 10 μgCd 10 μgMn 10 μgAl 10 μgNi 10 μg

Co 10 μgAs 10 μgBi 10 μgCr 10 μgSe 10 μgV 10 μg/mL](16) (21) 52.4 a)1)銅標

準液(Cu 1 mg/mL),3)亜鉛標準液(Zn 1 mg/mL),5)鉛標準液(Pb 1 mg/mL),9)マンガン

標準液(Mn 1 mg/mL)のそれぞれ5 mL,58.2 a) 2)アルミニウム標準液(Al 0.5 mg/mL)10 mL

(25)

3)クロム標準液(Cr 0.1 mg/mL),7)バナジウム標準液(V 0.1 mg/mL),61.1 a) 12)ひ素標

準液(As 0.1 mg/mL),64.1 a) 5)ビスマス標準液(Bi 0.1 mg/mL)のそれぞれ50 mLを全量フ

ラスコ500 mLにとり,硝酸(1+1)10 mLを加えた後,水を標線まで加える(22)。

5) 混合標準液[(Cu 0.5 μgZn 0.5 μgPb 0.5 μgCd 0.5 μgMn 0.5 μgAl 0.5 μgNi 0.5 μg

Co 0.5 μgAs 0.5 μgBi 0.5 μgCr 0.5 μgSe 0.5 μgV 0.5 μg/mL](16) (21) 4)の混合標

準液5 mLを全量フラスコ100 mLにとり,硝酸(1+1)2 mLを加え,水を標線まで加える。

使用時に調製する。

注(20) 3種類の内標準元素は,単独又は混合して用いてもよい。ICP質量分析法で

は,主成分(マトリックス)による非スペクトル干渉の大きさは質量数に依存する

ため,測定対象元素と比較的質量数の近いものを内標準元素とするとよい。ここに

挙げた3種類以外にも,元の試料に無視できる量より少ない量しか含まれていない

ことが確認できれば,内標準元素として用いてもよい。ビスマスが測定対象元素で

あるときは,内標準元素としてビスマスを用いることはできない。

ビスマスの代わりにタリウムを用いることがある。

(21)定期的に濃度の安定性を,新たに調製した標準液と比較して確認する。特に,

濃度の低い標準液は濃度が低下しやすいため注意する。

(22)標準液は,混合したときに沈殿を生じないものを用いる。

b) 装置 装置は,次による。

1) ICP 質量分析装置

備考 12.イオン源として,高周波プラズマと同等の性能をもつものを用いてもよい。

13.試料の噴霧に超音波ネブライザー又はこれと同等の性能をもったものを用いて

もよい。この場合は,定量下限値を1桁程度下げることができる。ただし,メモリ

ー効果に注意し,十分に洗浄を行う。

14.サンプリングコーン及びスキマーコーンの材質からの汚染が認められないこと

を確認する。

c) 準備操作 準備操作は,次による(23)。

1)試料を5.5によって処理する。ただし,クロムを定量する場合は,前処理に5.3は用いない。(本

稿 2.試料の前処理)

2) 1)で処理した試料の適量(測定対象元素として0.05∼50μgを含む。)を全量フラスコ

100 mLにとり,内標準液(1μg/mL)1 mLを加え,硝酸の最終濃度が0.1∼0.5 mol/L

となるように硝酸(1+1)を加えた後,水を標線まで加える。

注(23)分析者からの汚染がないように注意する。JIS T 9107 に規定する使い捨て手

術用ゴム手袋(打粉のないもの)などを用いるとよい。

備考 15.試料の銅又は測定対象元素の濃度が低い試料で,アルカリ金属イオン,ア

ルカリ土類金属イオンなどの共存物質の濃度が高く,測定を妨害する場合の準備操

作は,備考 6.による[ただし,3.6)は除く]。得られた液は全量フラスコ20 mL に

移し入れ,内標準液(1μg/mL)0.2 mLを加え,標線まで水を加える。

d) 操作 操作は,次による(24)。

1) ICP質量分析装置を作動できる状態にし,c) 2)の溶液を試料導入部を通してイオン化部に

(26)

れの質量/電荷数(25)における指示値を読み取り,測定対象元素の指示値と内標準元素の指示

値との比をそれぞれ求める。

2)空試験として,c) 1)での試料と同量の水をとり,試料と同様に c)及び d) 1)の操作を行って

測定対象元素の指示値と内標準元素の指示値との比を求め,試料について得た測定対象元素

と内標準元素との指示値の比を補正する。

3)検量線から測定対象元素の量を求め,試料中の測定対象元素の濃度(μg/L)を算出する。

注(24)妨害物質の存在が不明の場合には,定量に先だってICP 質量分析計による定

性分析を行うことによって,測定対象元素及び内標準元素の測定質量数に対する妨

害(スペクトル干渉及び非スペクトル干渉)の有無と程度を推定することができる。

スペクトル干渉が認められる場合には,測定質量数の変更,試料の希釈又は前処理

を行って妨害の軽減を図る。スペクトル干渉のため,上記のイットリウム,インジ

ウム又はビスマスを内標準元素として使用できない場合もあるが,その場合には,

他の内標準元素を用いる。スペクトル干渉の例を,表 52.3に示す。非スペクトル干

渉(マトリックス干渉ともいい,検量線の傾きに影響する。)は,一般にこの方法

で採用している内標準法によって補正できるが,妨害物質の濃度が高い場合には,

補正が不十分となることがある。このような場合には,試料の希釈又は前処理を行

った後,内標準法を適用して妨害の軽減を図る。非スペクトル干渉の程度は,標準

液を添加して回収率を求めることによって推定することができる。すなわち,試料

(元の試料又は希釈・前処理後の試料)中の測定対象元素の濃度が 10 ng/mL 分だ

け(ただし,試料中の測定元素の濃度が高い場合には,増加分が精度よく測定でき

るように,試料中と同程度の濃度だけ)増加するように,測定対象元素の標準液

(0.5 μg/mL)の適量を試料に添加後,d)に準じた操作を行って測定対象元素の濃度

を求め,その回収率を求める。回収率が90∼110 %の範囲にあれば,非スペクトル干

渉は,ほぼ無視し得るものと考えられる。

(25)質量数を設定するには,表 52.2及び表 52.3を参考にするとよい。複数の安定同

位体がある場合,複数の同位体の質量/電荷数を用いて測定を行うことによって,ス

ペクトル干渉による妨害を推定することができる。

e) 検量線 検量線の作成は,次による。

1) a) 4)の混合標準液(各元素濃度10μg/mL)又はa) 5)の混合標準液(各元素濃度 0.5μg/mL)

いずれか(26)の混合標準液 0.1∼5 mL を,全量フラスコ 100 mL に段階的にとり,内標準液

(1μg/mL)1 mLを加え,c) 2)の試料と同じ酸の濃度になるように硝酸(1+1)を加えた後,

水を標線まで加える。使用時に調製する。

2)この溶液についてd) 1)の操作を行う。

3)別に,空試験として全量フラスコ100 mLに内標準液(1μg/mL)1 mLを加え,c) 2)の試料

と同じ酸の濃度になるように硝酸(1+1)を加え,水を標線まで加えた後,d) 1)の操作を行

って標準液について得た指示値の比をそれぞれ補正し,測定対象元素の濃度に対する,測定

元素の指示値と内標準元素の指示値との比の関係線をそれぞれ作成する。検量線の作成は,

試料測定時に行う。

注(26)a) 4)の混合標準液の調製に用いた各元素の標準液のうち,測定対象元素の各

(27)

てもよい。この混合標準液は,測定対象の元素を含み,測定する濃度範囲よりも高

い濃度とする。

備考 16. 注(24)の操作で,主成分の元素又は有機物の含有量が少なく,非スペクト

ル干渉が無視できる試料の場合は,内標準元素の添加を省略し,検量線法によって

定量してもよい。

4、鉛(Pb

環境省告示は測定方法として規格54に定める方法を指定している。(以降JISの項目番号)

54. 鉛(Pb)鉛の定量には,フレーム原子吸光法,電気加熱原子吸光法,ICP発光分光分析法

又はICP質量分析法を適用する。なお,フレーム原子吸光法は,1986年に第1版として発行

されたISO 8288,ICP発光分光分析法は,1996年に第1版として発行されたISO 11885との

整合を図ったものである。

備考

この試験方法の対応国際規格を,次に示す。

(28)

る),MOD(修正している),NEQ(同等でない)とする。

ISO 8288:1986 , Water quality−Determination of cobalt, nickel, copper, zinc,

cadmium and lead

Flame atomic absorption spectrometric methods(MOD)

ISO 11885:1996,Water quality−Determination

of 33 elements by inductively coupled plasma atomicemission spectroscopy(MOD)

54.1 フレーム原子吸光法 試料を前処理した後,アセチレン-空気フレーム中に噴霧し,鉛に

よる原子吸光を波長283.3 nmで測定して鉛を定量する。定量範囲:Pb 1∼20 mg/L,繰返し精

度:2∼10 %(装置及び測定条件によって異なる。)

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 鉛標準液(Pb 0.1 mg/mL52.4 a) 5)の鉛標準液(Pb 1 mg/mL)10 mLを全量フラスコ100mL

にとり,硝酸(1+1)[52.1 a) 8)による。]10 mLを加え,水を標線まで加える。

b) 装置 装置は,52.2 b)による。

c) 準備操作 準備操作は,次による。

1)試料を5.によって処理する(1)。

注(1)水溶液をそのまま噴霧する場合は,硫酸イオンが存在すると鉛に負の誤差を与えるので,

硫酸を用いる前処理は行わない。

備考 1.鉛の濃度が低い試料で,抽出操作を妨害する物質を含まない場合の準備操作

は,52.の備考 4.又は備考 5.若しくは備考 6.による。 d) 操作 操作は,次による。

1) 52.2 d) 1の操作を行う。ただし,波長は283.3 nmを用いる。

2)空試験として52.2 d) 2)の操作を行う。

3)検量線から鉛の量を求め,試料中の鉛の濃度(Pb mg/L)を算出する。

e) 検量線 検量線の作成は,次による。

1)鉛標準液(Pb 0.1 mg/mL)1∼20 mL(2)を全量フラスコ100 mLに段階的にとり,c) 1)を行っ

た試料と同じ酸の濃度になるように酸を加えた後,水を標線まで加える(3)。

2) 52.2 e) 2)及び3)の操作を行い,鉛(Pb)の量と指示値との関係線を作成する。検量線の作

成は,試料測定時に行う。

注(2)準備操作として溶媒抽出を適用するときは,鉛標準液(Pb 0.1 mg/mL)の量を,

適宜,減らす。

(3) 備考 1.によって準備操作を行い,酢酸ブチル層,4-メチル-2-ペンタノン層又は

2,6-ジメチル-4-ヘプタノン層をそのまま噴霧する場合の検量線の作成は,次による。

鉛標準液(Pb 0.1 mg/mL)を適切な濃度(Pb 1∼5μg/mL)に薄め,その1∼20 mLを

段階的にとり,約500 mL(又は100∼500 mLの一定量)とした後,試料と同様にc)

の準備操作を行って鉛の量と指示値との関係線を作成する。

54.2 電気加熱原子吸光法 試料を前処理した後,マトリックスモディファイヤーとして硝酸

パラジウム(II)を加え,電気加熱炉で原子化し,鉛による原子吸光を波長283.3 nmで測定

して鉛を標準添加法によって定量する。

定量範囲:Pb 5∼100μg/L,繰返し精度:2∼10 %(装置及び測定条件によって異なる。)

(29)

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 52.3 a) 1)による。

2) 硝酸(1152.3 a) 2)による。

3) 硝酸パラジウム(II)溶液(Pd 10 μg/mL) 硝酸パラジウム(II)0.108 gを硝酸(1+1)

10 mLを加えて溶かし,全量フラスコ 500 mLに移し入れ,水を標線まで加える。この溶液

20 mLを全量フラスコ200 mLにとり,水を標線まで加える。

4) 鉛標準液(Pb 1 μg/mL52.4 a) 6)の鉛標準液(Pb 10 μg/mL)10 mLを全量フラスコ100 mL

にとり,硝酸(1+1)20 mLを加え,水を標線まで加える。

b) 器具及び装置 器具及び装置は,52.3 b)による。

c) 準備操作 準備操作は,次による。

1)試料を5.によって処理する。(本稿 2.試料の前処理)

備考 3.試料の鉛の濃度が低い試料で,アルカリ金属イオン,アルカリ土類金属イオ

ンなどの共存物質の濃度が高く,測定を妨害する場合の準備操作は 52.の備考 6.に

よる。

d) 操作 操作は,次による。

1) c)の準備操作を行った試料 15 mL ずつをそれぞれ全量フラスコ 20 mL にとり,鉛標準液

(Pb 1μg/mL)を加えないものと,0.1∼2 mLの範囲で段階的に3段階以上添加したものとを調

製し,それぞれの溶液の酸の濃度が同じになるように硝酸(1+1)を加えた後,水を標線ま

で加える。

2) 1)の操作を行った試料の100 μL以上の一定量をマイクロピペットで小形の容器にとり,こ

れと同体積の硝酸パラジウム(II)溶液(Pd 10μg/mL)を加え,よく混ぜ合わせる。

3) 52.3 d) 1)の操作を行う。ただし,灰化温度は500∼800℃,原子化(4)温度は1 800∼2 500℃,

波長は283.3 nmを用いる。

4)空試験としてc)の準備操作での試料と同量の水をとり,試料と同様にc)の操作を行った後,

その15mLを全量フラスコ20 mLにとる。次に,d) 1)の溶液の酸の濃度と同じになるように,

硝酸(1+1)を加えた後,水を標線まで加える。この溶液について,2)及び 3)の操作を行っ

て,試料について得た指示値を補正する。

5)鉛の添加量と指示値との関係線を作成し,鉛の量を求め,試料中の鉛の濃度(Pbμg/L)を

算出する。注(4)52.の注(9)による。

54.3 ICP 発光分光分析法 52.4による。

(本稿では3-2 JIS K 010255.3による測定方法 55.3 ICP 発光分光分析法 52.4による。

52.4 ICP 発光分光分析法

による)

54.4 ICP 質量分析法 52.5

(本稿では3-3 JIS K 010255.4による測定方法 55.4 ICP 質量分析法 52.5による。

(30)

による)

5、六価クロム(6価Cr

環境省告示は測定方法として規格65.2に定める方法(ただし、規格65.2.6に定める方法によ

り汽水又は海水を測定する場合にあっては、日本工業規格K0170-7の7のa)又はb)に定める

操作を行うものとする。) を指定している。

5-1 JIS K 010265.2による測定方法(以降JISの項目番号)

65.2 クロム(VI)[CrVI)]クロム(VI)の定量には,ジフェニルカルバジド吸光光度法,

フレーム原子吸光法,電気加熱原子吸光法,ICP発光分光分析法,ICP質量分析法又はジフェ

ニルカルバジド発色による流れ分析法を適用する。

なお,ジフェニルカルバジド吸光光度法は,1994 年に第1 版として発行されたISO 11083

ICP発光分光分析法は,1996 年に第1 版として発行されたISO 11885,ジフェニルカルバド

発色流れ分析法は2006年に第1版として発行されたISO 23913との整合を図ったものである。

備考 この試験方法の対応国際規格を,次に示す。

なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,IDT(一致してい

る),MOD(修正している),NEQ(同等でない)とする。

ISO 11083:1994,Water quality−Determinationof chromium (VI)Spectrometric method

using 1,5-diphenylcarbazide(MOD)

ISO 11885:1996,Water quality−Determination of 33 elements by inductively

coupled plasma atomic emission spectroscopy(MOD)

ISO 23913:2006 , Water quality−Determination of chromium (VI)−Method using flow analysis (FIA and CFA) and spectrometric detection(MOD)

65.2.1 ジフェニルカルバジド吸光光度法 試料に1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド(ジフェ

ニルカルバジド)を加え,生成する赤紫の錯体の吸光度を測定してクロム(VI)を定量する。

定量範囲:Cr(VI)2∼50μg,繰返し精度:3∼10 % a) 試薬 試薬は,次による。

1) 硫酸(19JIS K 8951に規定する硫酸を用いて調製する。

2) エタノール(95JIS K 8102に規定するもの。

3) ジフェニルカルバジド溶液(10 g/L65.1.1 a) 5)による。

4) クロム(VI)標準液[CrVI2 μg/mL65.1.1 a) 7)による。

b) 装置 装置は,次による。

1) 光度計 分光光度計又は光電光度計

c) 操作 操作は,次による。

1)試料の適量[Cr(VI)として2∼50μgを含む。(例えば,25 mL)]を2個のビーカー(A),

(B)にとり,試料が酸性の場合には,水酸化ナトリウム溶液(40 g/L)[21. a) 3)による。]

で,また,アルカリ性の場合は,硫酸(1+35)[43.2.1 a) 3)による。]で中和する。

2)ビーカー(A)の溶液は,全量フラスコ50 mL(A)に移し入れ,硫酸(1+9)2.5 mLを加

える。

(31)

沸してクロム(VI)をクロム(III)に還元し,過剰のエタノールを追い出す。放冷後,全量

フラスコ50 mL(B)に移し入れる。

4)全量フラスコ(A)及び(B)を約15℃に保ち,それぞれにジフェニルカルバジド溶液(10

g/L)1mLずつを加え,直ちに振り混ぜ,水を標線まで加え,約5分間放置する。

5)全量フラスコ(A)の一部を吸収セルに移し,全量フラスコ(B)の溶液を対照液として波

長540 nm付近の吸光度を測定する。

6)検量線からクロム(VI)の量を求め,試料中のクロム(VI)の濃度[Cr(VI)mg/L]を算

出する。

d) 検量線 検量線の作成は,次による。

1)クロム(VI)標準液[Cr(VI)2μg/mL]1∼25 mLを段階的にとり,c) 2)4)の操作における

全量フラスコ(A)に対するのと同じ操作を行う。

2)この溶液の一部を吸収セルに移し,水約30 mLについてc) 3)及び4)の操作における全量フ

ラスコ(B)に対するのと同じ操作を行った溶液を対照液とし,波長540 nm付近の吸光度を

測定し,クロム[Cr(VI)]の量と吸光度との関係線を作成する。

備考 9.

試料を酸性にしたとき,クロム(VI)を還元する物質が共存する場合は,c)の操作

では定量は困難である。ただし,クロム(III)が含まれていない試料は65.1によっ

て定量する。また,妨害物質には,備考 2.に示すもの以外に次のものがある。

−鉛,バリウム及び銀イオン(塩類)の存在下で,クロム(VI)は,難溶性のクロ

ム酸塩を生じ,それらに含まれるクロム(VI)は定量されない。

−モリブデン(VI)及び水銀塩類は,試薬によってそれぞれ黄色及び青となるが,

吸収強度はクロム(VI)に比べて著しく低い。鉄(III)は1 mg/L を超えると黄色

となる。また,バナジウムは黄色になるが,やがて退色する。

−妨害金属イオンは,りん酸緩衝液(JIS K 9017に規定するりん酸水素二カリウム

348 gを水1000 mLに溶かし,pHを調節し,pH9.0±0.2とする。)の存在下で,沈

殿助剤の硫酸アルミニウム溶液(硫酸アルミニウム・18水247 gを水に溶かし,1 L

とする。)を試料1 Lについて1 mL用いて沈殿させ,ろ別して除く。このとき,

クロム(III)も沈殿除去できる。−酸化性又は還元性の物質によるクロムの原子価

の変化は,次の前処理によって避けられる。

酸化性物質は,中性とした試料に亜硫酸塩を添加して還元する。クロム(VI)はこ

の条件下では反応しない。過剰の亜硫酸塩及び他の還元性物質は,次いで次亜塩素

酸塩によって酸化する。過剰の次亜塩素酸塩及び生成したクロロアミンは,酸性下

で塩化ナトリウムによって分解し,生成した塩素は,空気で追い出す。

−アンモニア体窒素は,500 mg/L未満では妨害しない。しかし,アミン化合物は次

亜塩素酸塩によってクロロアミンに変化し,塩化物イオンの添加によって,必ずし

も分解しない。この妨害は,1,5-ジフェニルカルバジドの添加時に黄色又は茶色を

帯びた色の出現によって分かる。

−亜硝酸体窒素は,20 mg/Lを超えると赤紫のクロム(VI)-1,5-ジフェニルカルバゾ

ン錯体を生成して妨害する。

表 1  底質中の PAH の ERL と ERM (単位はいずれも ng/g 乾重) ERL  ERH  アセナフチレン 44  640  アセナフテン 16  500  ナフタレン 160  2100  2- メチルナフタレン 70  670  アントラセン 85.3  1100  フェナントレン 240  1500  フルオレン 19  540  フルオランテン 600  5100  ピレン 665  2600  ベンツ [a] アントラセン 261  1600  クリセン 384  2800  ベン
表 2-2  GC-MS SIM 分析における各炭化水素のモニター(定量)イオンと参照イオン 分析対象化合物およびサロゲート モニター(定量) イオン( m/z ) 参照イオン(m/z) 直鎖状 n- アルカン 85  71  分岐型アルカン 〃 〃 バイオマーカー類 191  アセナフテン 153  154  アセナフテン -d10  164  アセナフチレン 152  76  アセナフチレン -d10  160  ナフタレン 128  102  ナフタレン -d8  136  C1- ナフタレン 142
図 4b  海底堆積物抽出物の高分子 PAH (五~六環)の GC-MS 分析におけるマスクロマ
図 4b に図 4a と同じ海底堆積物から抽出した高分子 (五環以上の) PAH のマスクロマトグ ラムを示す。 それぞれの当該 PAH のピーク近傍に同じ m/z 値を持つものが幾つか検出される ことから、 標品の保持時間と同一なものを見分けるよう注意が必要である。 例えば図 4b の e-1 では、同一 m/Z 252 のマスクロマトグラム上に前後にベンゾ [e] ピレンとベンゾ [a] ピレンとペ リレンそれぞれのピークが相前後して現れるために、同定して面積値を求める際に間違わな いように注意が必要で
+3

参照

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