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濃度の計算は,6.4.4 で作成した検量線を用いる。検量線は,外挿して用いてはならない。試 料が着色又は濁っている場合は,次の a) 又は b) の方法で試料ブランクを補正する。

a) 方法 1

1)通常の測定条件で,試料を測定する。

2)ジフェニルカルバジド溶液の代わりに試料ブランク測定用溶液を流し,試料を測定する。

得られた測定値を試料ブランク値とする。

3)通常の測定条件にて測定した測定値から試料ブランク値を差し引き補正する。

b) 方法 2

1)試料の適量を 2 個のビーカー(A)及び(B)にとり,試料が酸性の場合には,水酸化ナト リウム溶液(40 g/L)で,また,アルカリ性の場合は,硫酸(1+35)で中和する。

2)ビーカー(A)の溶液を全量フラスコ 50 mL(A)に移し入れ,硫酸(1+9)2.5 mL を加え た後,水を加えて 50 mL にする(試料溶液)。

3)ビーカー(B)の溶液に硫酸(1+9)2.5 mL を加え,次にエタノール(95)を少量加え,煮 沸してクロム(VI)をクロム(III)に還元し,過剰のエタノールを追い出す。放冷後,全量

フラスコ 50 mL(B)に移し入れ,水を加えて 50 mL にする(試料ブランク溶液)。

4)全量フラスコ(A)の試料溶液を測定する。また,全量フラスコ(B)の試料ブランク溶液 を測定し,この測定値を試料溶液の測定値から差し引き補正する。

この方法 2 の場合は,ジフェニルカルバジド溶液を試料ブランク測定用溶液に変える必要は ない。

注記 方法 2 のクロム(VI)をクロム(III)に還元する方法を,FIA 法システム又

は CFA 法システムに組み入れた方法もある(附属書 JB 参照)。

6、砒素(As

環境省告示は測定方法として規格61.2、61.3又は61.4に定める方法を指定している。

6-1 JIS K 010261.2による測定方法(以降JISの項目番号)

61.2 水素化物発生原子吸光法 試料を前処理してひ素を水素化ひ素とし,水素-アルゴンフレ

ーム中に導き,ひ素による原子吸光を波長193.7 nmで測定してひ素を定量する。

定量範囲:As 5∼50μg/L,繰返し精度:3∼10 %(装置及び測定条件によって異なる。)

a) 試薬 試薬は,次による。

1) 塩酸61.1 a) 1)による。

2) 塩酸(1 mol/L1)の塩酸を用いて調製する。

3) 塩酸(111)の塩酸を用いて調製する。

4) 硝酸JIS K 9901に規定する高純度試薬−硝酸による。

5) 硫酸(11JIS K 9905に規定する高純度試薬−硫酸を用いて5.4 a) 2)の操作によって調製 する。

6) 過マンガン酸カリウム溶液(3 g/LJIS K 8247に規定する過マンガン酸カリウム0.3 gを 水に溶かして100 mLとする。

7) よう化カリウム溶液(200 g/L61.1 a) 6)による。

8) テトラヒドロほう酸ナトリウム溶液(10 g/L) テトラヒドロほう酸ナトリウム5 gを水酸 化ナトリウム溶液(0.1 mol/L(JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウムを用いて調製する。) に溶かして500mLとする。使用時に調製する。

9) アルゴンJIS K 1105に規定するアルゴン2級

10) ひ素標準液(As 0.1 μg/mL61.1 a) 13)のひ素標準液(As 1μg/mL)10 mLを全量フラスコ 100 mLにとり,3)の塩酸(1+1)2 mLを加えた後,水を標線まで加える。

11) アスコルビン酸溶液(100 g/LJIS K 9502に規定するL(+)-アスコルビン酸10 gを水 に溶かして100 mLとする。

b) 装置 装置は,次による。

1) 連続式水素化物発生装置図 61.3に例を示す。

2) フレーム原子吸光分析装置52.2 b) 1)による。

c) 操作 操作は,次による。

1)試料(4)の適量(Asとして0.1∼1μgを含む。)をビーカー(5) 100 mLにとり,硫酸(1+1)1 mL及び硝酸2 mLを加え,更に過マンガン酸カリウム溶液(3 g/L)を溶液が着色するまで滴 加する。

2)加熱板上で加熱(6)して硫酸の白煙を発生させる(7) (8)。

3) 2)の溶液を室温まで放冷した後,水10 mL,塩酸3 mL,よう化カリウム溶液(200 g/L)2 mL 及びアスコルビン酸溶液(100 g/L)0.4 mLを加え,約60分間静置した後,全量フラスコ20 mL に洗い移し,水を標線まで加える。

4)連続式水素化物発生装置にアルゴンを流しながら,3)の溶液,テトラヒドロほう酸ナトリウ ム溶液(10 g/L)(9)及び塩酸(1 mol/L)(9)を,定量ポンプで連続的に装置内に導入(9)し,水 素化ひ素を発生させる。

5)発生した水素化ひ素と廃液とを分離した後,水素化ひ素を含む気体を水素-アルゴン(10)フ レーム(11)中に導入し,波長193.7 nmの指示値(12)を読み取る。

6)空試験として試料と同量の水をとり,1)5)の操作を行った後,指示値を読み取り,試料に ついて得た指示値を補正する。

7)検量線からひ素の量を求め,試料中のひ素の濃度(Asμg/L)を算出する。

注(4)有機物及び亜硝酸イオンを含まない試料は 1)3)の代わりに,次のように操作 してもよい。

試料の適量(Asとして0.1∼1μgを含む。)をビーカー100 mLにとり,塩酸3 mLを 加え,沸騰しない程度に5∼7分間加熱した後,冷却する。次に,よう化カリウム溶 液(200 g/L)2 mL及びアスコルビン酸溶液(100 g/L)0.4 mLを加え,約60分間静 置した後,全量フラスコ20 mLに洗い移し,水を標線まで加える。また,多量の有 機物を含む場合は,c) 1)及び2)の代わりに,次のように操作してもよい。

試料の適量に硫酸(1+1)1 mL,硝酸2 mL及びJIS K 8223に規定する過塩素酸3 mL を加え,加熱して硫酸白煙を発生させ(*),有機物を分解する。

注(*)過塩素酸を用いる加熱分解操作は,試料の種類によっては,爆発の危険性があ るため,硝酸が共存する状態で行うように注意する。

注(5)ほうけい酸ガラスには,ひ素を含むものがあるので注意する。四ふっ化エチレ ン樹脂製ビーカーを用いるとよい。

(6)加熱中に過マンガン酸の色が消えたときは,過マンガン酸カリウム溶液(3 g/L) を追加する。

(7)硝酸が残存すると,分解生成物である窒素酸化物によって水素化ひ素の発生が阻 害されるので,十分に硫酸の白煙を発生させて硝酸を除去する。

(8)この白煙は刺激性があり,加熱分解操作はドラフト内で行う。

(9)装置によって,塩酸及びテトラヒドロほう酸ナトリウム溶液の流量及び濃度は異 なる。

(10)JIS K 1107に規定する窒素2級を用いてもよい。

(11)加熱吸収セル方式のものを用いてもよい。

(12)吸光度又はその比例値。

d) 検量線 検量線の作成は,次による。

1)ひ素標準液(As 0.1μg/mL)1∼10 mL(13)を段階的に全量フラスコ20 mLにとり,塩酸3 mL, よう化カリウム溶液(200 g/L)2 mL及びアスコルビン酸溶液(100 g/L)0.4 mLを加え,約 60分間静置した後,水を標線まで加える。

2) c) 4)及び5)の操作を行う。

3)別に,空試験として全量フラスコ20 mLに水10 mL,塩酸3 mL,よう化カリウム溶液(200 g/L)2mL及びアスコルビン酸溶液(100 g/L)0.4 mLを加え,約60分間静置した後,水を標 線まで加えたものを用い,c) 4)及び5)の操作を行って,2)で得た指示値を補正し,ひ素(As) の量と指示値との関係線を作成する。検量線の作成は,試料測定時に行う。

注(13) 注(11)によった場合は,水素-アルゴンフレームに比べて10∼50倍程度(装置 及び操作条件によって異なる。)感度がよいので,ひ素標準液(As 0.1 μg/mL)の 量を,適宜,減らす。

備考 2. c) 1)及び 2)の加熱分解操作において,循環式の分解装置を用いて分解操作

を行ってもよい。例を図 61.4に示す。この分解装置を用いる場合の分解操作は,次 による。試料50 mLを丸底フラスコにとる。JIS K 9905に規定する高純度試薬−硫

酸5 mL,JIS K 8230に規定する過酸化水5 mL及び沸騰石数個を加え,丸底フラス

コを図 61.4に示すように装置に連結する。丸底フラスコの内容物を沸騰するまで加 熱し,凝縮物を凝縮物受器に集める。硫酸の白煙が発生するまで加熱を続ける。分 解液の外観を見て,濁りがあり,着色していれば,更に過酸化水素5 mLを加え,

沸騰を続ける。分解液が無色で濁りがなくなれば,丸底フラスコ及び内容物を冷却 し,凝縮物を丸底フラスコに戻す。

備考 3.連続式水素化物発生装置の代わりに,図 61.5に例を示す水素化物発生装置を 用いて定量してもよい。この場合の操作は,次による。

1) c) 1)3)の操作を行った溶液の全量を水素化物発生装置の反応容器に移し入れる。

2)水素化物発生装置と原子吸光分析装置とを連結し,系内の空気をアルゴン(*)で置 換する。

3)コックを回転して,アルゴンで溶液をバブリングする状態にする。

4)セ プ タ ム を 通 し て シ リ ン ジ な ど に よ っ て テ ト ラ ヒ ド ロ ほ う 酸 ナ ト リ ウ ム 溶 液

(10 g/L)2mLを手早く加え,発生する水素化物を水素-アルゴン(*)フレーム(**)中 に導入し,波長193.7 nmの指示値(***)を読み取る。

5) c) 6)及び7)の操作を行い,試料中のひ素の濃度(As μg/L)を算出する。

注(*) 注(10)による。

(**) 注(11)による。

(***) 注(12)による。

備考4.ごく低濃度の水素化物を分析する目的で,水素化物を濃縮する場合には,ガ ラスビーズなどを充塡した U 字管を液体窒素中に浸したコールドトラップを用い て水素化物を捕集する。捕集後,U字管を引き上げて室温に戻し,気化した水素化 物をアルゴンでフレーム中に送り込む。

備考 5.水素化物発生法は,鉄,ニッケル,コバルト,白金,パラジウムなどの遷移 金属によって発生効率が影響される。また,アンチモン,セレンなどの水素化合物 を形成する元素によっても発生効率が低下する。よう化カリウムは,ひ素をV価か ら III 価に還元するために用いられるが,遷移金属による干渉の低減にも効果があ る。

なお,未知試料のように共存物質の影響が不明な場合は,未知試料に一定量の測定 対象元素(ここではひ素)を添加したときに得られる指示値の増加分と,同量の測 定元素を含む検量線用標準液の指示値とを比較することによって,干渉の大きさを 知ることができる。共存物質による干渉がある場合は,標準添加法を適用すると真 度が向上するが,干渉が大きい場合は,水素化物発生法は適用できない。

6-2 JIS K 010261.3による測定方法(以降JISの項目番号)

61.3 水素化物発生 ICP 発光分光分析法 試料を前処理してひ素を水素化ひ素とし,試料導入

部を通して誘導結合プラズマ中に導入し,ひ素による発光を波長193.696 nmで測定してひ素 を定量する。

定量範囲:As 1∼50μg/L,繰返し精度:3∼10 %(装置及び測定条件によって異なる。)

a) 試薬 試薬は,61.2 a)による。

b) 装置 装置は,次による。

1) 連続式水素化物発生装置61.2 b) 1)による。

2) ICP 発光分光分析装置 c) 操作 操作は,次による。

1)試料(4)の適量(Asとして0.02∼0.2μgを含む。)をビーカー(5) 100 mLにとり,硫酸(1+1)

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